特許第5767996号(P5767996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5767996
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】流体圧駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/05 20060101AFI20150806BHJP
   F04B 53/08 20060101ALI20150806BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   F04B17/05
   F04B53/08 E
   F04B53/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-75565(P2012-75565)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-204541(P2013-204541A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2013年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一成
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 新司
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/110043(WO,A1)
【文献】 特開2010−142086(JP,A)
【文献】 実開平06−051610(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/023231(WO,A1)
【文献】 特開平11−303724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/05
F04B 53/00
F04B 53/08
F04B 1/22
F04B 9/02
F03C 1/253
F16H 9/14
E02F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧アクチュエータに作動流体を供給して駆動する流体圧駆動ユニットであって、
作動流体を吸い込んで吐出する流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプを回転駆動する電動機と、
前記流体圧ポンプの回転軸と前記電動機の回転軸との間で回転によって動力を伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構の回転によって駆動され、当該動力伝達機構内の潤滑用流体を前記電動機へ導く循環機構と、を備えることを特徴とする流体圧駆動ユニット。
【請求項2】
前記循環機構は、前記電動機の外部を通じて前記動力伝達機構内の潤滑用流体を前記電動機へ導くことを特徴とする請求項1に記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、前記流体圧ポンプの回転軸と一体に回転する第一ギアと、前記電動機の回転軸と一体に回転する第二ギアと、前記第一ギアと前記第二ギアとの間に設けられて動力を伝達するアイドルギアと、を有し、
前記循環機構は、前記第一ギア,前記第二ギア,及び前記アイドルギアの少なくともいずれか一つと一体に回転して前記動力伝達機構内の潤滑用流体をかき上げる回転部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項4】
前記循環機構は、
前記回転部材がかき上げた潤滑用流体を前記電動機に導く供給流路と、
前記電動機に導かれた潤滑用流体を前記動力伝達機構内に戻す還流流路と、を備えることを特徴とする請求項に記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項5】
前記回転部材は、前記アイドルギアと一体に回転するインペラであることを特徴とする請求項又はに記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項6】
前記電動機は、前記流体圧ポンプと並列に並べて配置され、
前記流体圧ポンプと前記電動機とが同一の面に取り付けられ、前記流体圧ポンプの回転軸と前記電動機の回転軸とが貫通するプレートを更に備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項7】
前記流体圧ポンプの回転軸と共通の回転軸を用い、供給される作動流体によって回転駆動される流体圧モータを更に備え、
前記電動機は、前記流体圧モータの回転によって回生電力を発電可能であることを特徴とする請求項1からのいずれか一つに記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項8】
原動機で駆動されるメイン流体圧ポンプから吐出される作動流体によって前記流体圧アクチュエータを駆動するハイブリッド建設機械に適用され、
前記流体圧モータは、前記流体圧アクチュエータから排出された作動流体によって回転駆動され、
前記電動機は、前記流体圧モータの回転によって回生電力を発電するとともに、その回生電力を使用して前記流体圧ポンプを回転駆動し、
前記流体圧ポンプは、吐出した作動流体によって前記メイン流体圧ポンプによる前記流体圧アクチュエータの駆動をアシストすることを特徴とする請求項に記載の流体圧駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータに作動流体を供給して駆動する流体圧駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、パワーショベル等の建設機械には、エンジンの余剰出力やアクチュエータの排出エネルギで発電機を回転させ、発電機によって発電された電力を蓄電し、蓄電された電力を使用してアクチュエータの作動をアシストするハイブリッド構造が用いられている。このようなハイブリッド構造では、蓄電された電力によって回転する電動機と、電動機によって回転駆動され、作動流体を吐出してメインポンプによるアクチュエータの作動をアシストするアシストポンプとを備える流体圧駆動ユニットが用いられる。
【0003】
特許文献1には、電気エネルギによって回転作動するモータジェネレータと、作動流体のエネルギによってモータジェネレータを回転駆動する回生モータと、モータジェネレータによって回転駆動されて作動流体を吐出するアシストポンプとを備えるアシスト回生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−127569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアシスト回生装置では、回転駆動されたときや回生電力を発電したときにモータジェネレータが発熱する。そのため、ポンプを用いて冷媒を循環させてモータジェネレータを外部から冷却する冷却システムが必要であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧駆動ユニットにおける電動機の冷却機構を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体圧アクチュエータに作動流体を供給して駆動する流体圧駆動ユニットであって、作動流体を吸い込んで吐出する流体圧ポンプと、前記流体圧ポンプを回転駆動する電動機と、前記流体圧ポンプの回転軸と前記電動機の回転軸との間で回転によって動力を伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構の回転によって駆動され、当該動力伝達機構内の潤滑用流体を前記電動機へ導く循環機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、動力伝達機構内の潤滑用流体を導いて電動機を冷却する循環機構が設けられる。この循環機構は、流体圧ポンプの回転軸と電動機の回転軸との間で伝達される動力によって駆動される。よって、電動機が流体圧ポンプを回転駆動したときには、動力伝達機構による動力の伝達に伴って循環機構が駆動され、潤滑用流体が電動機に導かれることとなる。したがって、電動機を外部から冷却する冷却システムを設ける必要がないため、流体圧駆動ユニットにおける電動機の冷却機構を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る流体圧駆動ユニットの一部を断面で示す正面図である。
図2図1における流体圧ポンプモータのA−A断面図である。
図3図1におけるプレート,動力伝達機構,及び循環機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る流体圧駆動ユニットとしての油圧駆動ユニット100について説明する。油圧駆動ユニット100では、作動流体として作動油が用いられる。なお、作動油に代えて、作動水など他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0011】
まず、図1から図3を参照して、油圧駆動ユニット100の構成について説明する。
【0012】
油圧駆動ユニット100は、流体圧アクチュエータとしての油圧アクチュエータ(図示省略)に作動油を供給して駆動するものである。油圧駆動ユニット100は、原動機で駆動されるメイン油圧ポンプ(図示省略)から吐出される作動油によって油圧アクチュエータを駆動するパワーショベル等のハイブリッド建設機械に適用される。
【0013】
油圧駆動ユニット100は、図1に示すように、作動油を吸い込んで吐出する流体圧ポンプとしての油圧ポンプ10と、供給される作動油によって回転駆動される流体圧モータとしての油圧モータ20とからなる流体圧ポンプモータとしての油圧ポンプモータ1を備える。
【0014】
また、油圧駆動ユニット100は、油圧ポンプモータ1と並列に並べて配置される電動機30と、油圧ポンプモータ1と電動機30とが同一の面に取り付けられるプレート40と、油圧ポンプモータ1の回転軸2と電動機30の回転軸(図示省略)との間で動力を伝達する動力伝達機構50と、動力伝達機構50内の潤滑用流体としての潤滑油を導いて電動機30を冷却する循環機構60とを備える。
【0015】
油圧ポンプモータ1を構成する油圧ポンプ10と油圧モータ20とは、それぞれ斜板式可変容量タイプのピストンポンプモータである。油圧モータ20は、油圧ポンプ10と比較して大型のピストンポンプモータである。
【0016】
油圧ポンプモータ1は、図2に示すように、油圧ポンプ10と油圧モータ20とを収容するケーシング3と、ケーシング3に回転自在に軸支され油圧ポンプ10と油圧モータ20とで共通して用いられる単一の回転軸2とを備える。
【0017】
ケーシング3は、プレート40にボルト締結されるフランジ部3aを有する。ケーシング3は、油圧ポンプ10に供給される作動油が流れるとともに油圧モータ20から排出される作動油が流れる給排通路4と、油圧ポンプ10から吐出される作動油が流れる吐出通路5と、油圧アクチュエータから戻されて油圧モータ20に供給される作動油が流れる戻り通路6とを有する。
【0018】
給排通路4は、作動油が溜められるタンク(図示省略)に連通する。吐出通路5と戻り通路6とは、油圧アクチュエータに連通する。給排通路4は、吐出通路5及び戻り通路6と対向して設けられる。
【0019】
油圧ポンプ10と油圧モータ20とは、給排通路4と吐出通路5と戻り通路6とを挟んで回転軸2の軸方向に対向するように配置される。
【0020】
油圧ポンプ10は、給排通路4の作動油を吸い込んで、吐出通路5に吐出する。油圧ポンプ10は、吐出した作動油によってメイン油圧ポンプによる油圧アクチュエータの駆動をアシストする。油圧ポンプ10は、回転軸2に連結されるシリンダブロック11と、シリンダブロック11に画成される複数のシリンダ12に各々収容される複数のピストン13と、摺接するピストン13を往復動させる斜板14と、シリンダブロック11の端面が摺接するポートプレート15とを備える。
【0021】
シリンダブロック11は、略円柱状に形成され、回転軸2と一体に回転する。シリンダブロック11は、回転軸2によって回転駆動される。シリンダブロック11には、複数のシリンダ12が回転軸2と平行に形成される。
【0022】
シリンダ12は、シリンダブロック11の回転軸2を中心とする同一円周上に一定の間隔で環状に並べて配置される。各々のシリンダ12には、ピストン13が挿入され、ピストン13との間に容積室12aが画成される。容積室12aは、連通孔を通じてポートプレート15と連通する。
【0023】
ピストン13は、シリンダブロック11が回転軸2とともに回転したときに、斜板14に摺接する。これにより、ピストン13は、斜板14の傾転角度に応じてシリンダ12内を往復動し、容積室12aを拡縮することとなる。
【0024】
斜板14は、容量切換アクチュエータ(図示省略)によって傾転角度が調整可能に設けられる。斜板14は、回転軸2に対して垂直な傾転角度が零の状態から、図2に示す状態に傾転可能である。斜板14の傾転角度は、容量切換アクチュエータによって無段階に調整される。
【0025】
ポートプレート15は、円板状に形成され、その中心に回転軸2が挿通する貫通孔を有する。ポートプレート15は、回転軸2を中心とする円弧状に形成されて給排通路4と容積室12aとを連通させる供給ポート15aと、同じく回転軸2を中心とする円弧状に形成されて吐出通路5と容積室12aとを連通させる吐出ポート15bとを有する。
【0026】
油圧ポンプ10では、ピストン13が斜板14に摺接して容積室12aが拡張する領域が吸込領域であり、ピストン13が斜板14に摺接して容積室12aが収縮する領域が吐出領域である。供給ポート15aは、吸込領域に対応して形成され、吐出ポート15bは、吐出領域に対応して形成される。これにより、シリンダブロック11の回転に伴い、供給ポート15aに臨んだ容積室12aには作動油が吸い込まれ、吐出ポート15bに臨んだ容積室12aからは作動油が吐出されることとなる。
【0027】
油圧モータ20は、油圧アクチュエータから排出された作動油によって回転駆動される。油圧モータ20は、回転軸2に連結されるシリンダブロック21と、シリンダブロック21に画成される複数のシリンダ22に各々収容される複数のピストン23と、摺接するピストン23を往復動させる斜板24と、シリンダブロック21の端面が摺接するポートプレート25とを備える。油圧モータ20のシリンダブロック21とシリンダ22とピストン23と斜板24とは、上述した油圧ポンプ10の構成と大きさが異なるのみで同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
ポートプレート25は、円板状に形成され、その中心に回転軸2が挿通する貫通孔を有する。ポートプレート25は、回転軸2を中心とする円弧状に形成されて戻り通路6と容積室22aとを連通させる供給ポート25aと、同じく回転軸2を中心とする円弧状に形成されて給排通路4と容積室22aとを連通させる排出ポート25bとを有する。
【0029】
油圧モータ20では、ピストン23が斜板24に摺接して容積室22aが拡張する領域が吸込領域であり、ピストン23が斜板24に摺接して容積室22aが収縮する領域が排出領域である。供給ポート25aは、吸込領域に対応して形成され、排出ポート25bは、排出領域に対応して形成される。これにより、シリンダブロック21の回転に伴い、供給ポート25aに臨んだ容積室22aには作動油が吸い込まれ、排出ポート25bに臨んだ容積室22aからは作動油が排出されることとなる。
【0030】
電動機30は、油圧ポンプ10を回転駆動するとともに、油圧モータ20の回転によって回生電力を発電可能である。電動機30にて発電された電力は、蓄電装置(図示省略)に蓄電される。電動機30は、油圧モータ20の回転によって回生されて蓄電装置に蓄電された回生電力を使用して油圧ポンプ10を回転駆動する。
【0031】
プレート40は、図1に示すように、一方の面40aに油圧ポンプモータ1と電動機30とが取り付けられ、他方の面40bに動力伝達機構50のケーシング51が取り付けられる板状部材である。これにより、動力伝達機構50は、プレート40を挟んで油圧ポンプモータ1及び電動機30と対向して設けられることとなる。プレート40には、油圧ポンプモータ1の回転軸2が貫通する貫通孔(図示省略)と、電動機30の回転軸が貫通する貫通孔(図示省略)と、電動機30を冷却した潤滑油が還流される還流口42(図3参照)とが形成される。
【0032】
以上のように、油圧駆動ユニット100では、油圧ポンプモータ1と電動機30とが、プレート40と動力伝達機構50とを介してU字状に配置される。よって、油圧ポンプモータ1と電動機30とが並列に並べて配置される分だけ、油圧駆動ユニット100の全長を短くすることができる。したがって、油圧駆動ユニット100のハイブリッド建設機械への搭載性を向上することができる。
【0033】
なお、U字状の配置に代えて、油圧ポンプモータ1をプレート40の一方の面40aに取り付け、電動機30をプレート40の他方の面40bに取り付けてもよい。また、油圧ポンプモータ1と電動機30とを、プレート40を挟んで直列に配置してもよい。
【0034】
動力伝達機構50は、図3に示すように、プレート40に固定されるケーシング51と、油圧ポンプモータ1の回転軸2と一体に回転する第一ギア52と、電動機30の回転軸と一体に回転する第二ギア53と、第一ギア52と第二ギア53の間に設けられて動力を伝達するアイドルギア54とを備える。
【0035】
ケーシング51は、第一ギア52と第二ギア53とアイドルギア54とを収容する。ケーシング51は、開口端面51aがプレート40の他方の面40bに当接した状態でボルト締結される。ケーシング51の内部には、潤滑油が充填される。ケーシング51は、開口端面51aと反対側の端面に形成されてアイドルギア54の回転軸が挿通する貫通孔51bを有する。
【0036】
第一ギア52は、回転軸上に形成されて油圧ポンプモータ1の回転軸2が嵌挿される凹部52aを有する。これにより、第一ギア52は、油圧ポンプモータ1の回転軸2と一体に回転することとなる。第一ギア52は、回転軸の一端が第一軸受52bによってプレート40に回転自在に軸支され、回転軸の他端が第二軸受52cによってケーシング51に回転自在に軸支される。
【0037】
同様に、第二ギア53は、回転軸上に形成されて電動機30の回転軸が嵌挿される凹部53aを有する。これにより、第二ギア53は、電動機30の回転軸と一体に回転することとなる。第二ギア53は、回転軸の一端が第一軸受53bによってプレート40に回転自在に軸支され、回転軸の他端が第二軸受53cによってケーシング51に回転自在に軸支される。
【0038】
アイドルギア54は、第一ギア52と第二ギア53との各々と噛合して相互に動力を伝達する。アイドルギア54は、回転軸の一端が第一軸受54bによってプレート40に回転自在に軸支され、回転軸の略中央が第二軸受54cによってケーシング51に回転自在に軸支される。アイドルギア54の回転軸の他端は、貫通孔51bを挿通して循環機構60のケーシング61内に延設される。
【0039】
このように、第一ギア52と第二ギア53との間にアイドルギア54が設けられることで、油圧ポンプモータ1と電動機30との距離が比較的離れている場合でも、第一ギア52と第二ギア53とが大径になることが抑制される。したがって、動力伝達機構50を小型化できるとともに、油圧駆動ユニット100全体を小型化できる。
【0040】
また、第一ギア52と第二ギア53とのギア比を調整することで、油圧ポンプモータ1と電動機30との間の減速比を適切な値に設定することが可能である。
【0041】
循環機構60は、その内部が動力伝達機構50のケーシング51の内部と連通するケーシング61と、ケーシング61内をアイドルギア54と一体に回転する回転部材としてのインペラ62と、インペラ62がかき上げた潤滑用流体を電動機30に導く供給流路63と、電動機30に導かれた潤滑用流体を動力伝達機構50内に戻す還流流路64とを備える。
【0042】
ケーシング61は、開口端面61aが動力伝達機構50のケーシング51に当接した状態で固定される。ケーシング61の内部には、動力伝達機構50のケーシング51の内部に充填された潤滑油が流入する。また、ケーシング61内には、アイドルギア54の回転軸の他端を回転自在に軸支する第三軸受54dが設けられる。
【0043】
インペラ62は、アイドルギア54と同軸に設けられる羽根車である。インペラ62は、アイドルギア54の回転軸に取り付けられる。インペラ62は、アイドルギア54を軸支する第二軸受54cと第三軸受54dとの間に設けられる。なお、インペラ62は、第一軸受54bと第三軸受54dとの間であれば、どこに設けてもよい。
【0044】
インペラ62は、動力伝達機構50が油圧ポンプモータ1と電動機30との間で動力を伝達するときに回転し、ケーシング61内に導かれた動力伝達機構50のケーシング51内の潤滑油を外周に向けてかき上げる。インペラ62は、電動機30の回転数が上昇するのに伴い、その回転数が上昇する。よって、電動機30の発熱量の増加に伴い、インペラ62によってかき上げられる潤滑油の量が多くなる。
【0045】
インペラ62は、アイドルギア54と一体に回転するため、フライホイール効果によってアイドルギア54の回転むらを低減することができる。よって、アイドルギア54の回転むらに起因する騒音を低減することができる。
【0046】
なお、インペラ62をアイドルギア54と一体に回転するように設けるのに代えて、第一ギア52又は第二ギア53と一体に回転するように設けてもよい。また、例えば、第一ギア52と第二ギア53と各々にインペラ62を設けるなど、複数のインペラ62を設けてもよい。つまり、インペラ62は、第一ギア52,第二ギア53,及びアイドルギア54の少なくともいずれか一つと一体に回転するものである。
【0047】
また、インペラ62に代えて、アイドルギア54の回転によって駆動されて潤滑油をかき上げるシリンダなど他の機構を設けてもよい。即ち、アイドルギア54の回転運動を変換して潤滑油をかき上げ可能な機構であれば、どのようなものでもよい。
【0048】
供給流路63は、図1に示すように、ケーシング61から外部に引き出されて電動機30の外部に連結される配管である。供給流路63は、ケーシング61におけるインペラ62の外周に臨む面から引き出される。供給流路63を通じて導かれた潤滑油は、電動機30内部に形成されるオイルジャケット(図示省略)に供給され、電動機30を冷却する。
【0049】
還流流路64は、電動機30から外部に引き出されて、プレート40に形成された還流口42(図3参照)に連結される配管である。還流流路64は、電動機30のオイルジャケットから排出された潤滑油を、動力伝達機構50のケーシング51内に還流する。なお、供給流路63と還流流路64とを電動機30の外部に設ける構成に代えて、供給流路63と還流流路64とを電動機30のケーシングの内部に形成してもよい。
【0050】
次に、油圧駆動ユニット100の動作について説明する。
【0051】
油圧駆動ユニット100が、メイン油圧ポンプによる油圧アクチュエータの駆動をアシストする場合には、予め蓄電装置に蓄電しておいた電力を使用して電動機30が回転する。電動機30の回転によって、油圧ポンプモータ1の回転軸2が、動力伝達機構50を介して回転駆動される。
【0052】
油圧ポンプ10は、容量切換アクチュエータによって斜板14の傾転角度が零より大きい所定値に切り換えられる。油圧ポンプ10では、シリンダブロック11が回転するのに伴ってピストン13がシリンダ12内を往復動する。このピストン13の往復動により、タンクからの作動油がポートプレート15の供給ポート15aを通じて容積室12aに吸い込まれる。そして、容積室12aから吐出される作動油が、ポートプレート15の吐出ポート15bを通じて吐出通路5に導かれる。
【0053】
これにより、油圧駆動ユニット100から吐出された作動油が、油圧アクチュエータの駆動に供され、メイン油圧ポンプによる油圧アクチュエータの駆動をアシストすることとなる。
【0054】
電動機30が油圧ポンプモータ1を回転駆動すると、第二ギア53の回転がアイドルギア54に伝達され、アイドルギア54の回転が第一ギア52に伝達される。アイドルギア54が回転することによって、循環機構60のインペラ62が回転する。
【0055】
インペラ62が回転すると、貫通孔51bを通じて循環機構60のケーシング61内に導かれた動力伝達機構50のケーシング51内の潤滑油がかき上げられ、供給流路63を通じて電動機30のオイルジャケットに供給される。よって、潤滑油と電動機30との間の熱交換によって、電動機30を冷却することができる。電動機30を冷却した潤滑油は、電動機30のオイルジャケットから還流流路64を通じて動力伝達機構50のケーシング51内に還流される。
【0056】
以上のように、電動機30が油圧ポンプモータ1を回転駆動したときには、動力伝達機構50による動力の伝達に伴ってインペラ62が回転し、潤滑油が電動機30に導かれることとなる。したがって、電動機30を外部から冷却する冷却システムを設ける必要がないため、油圧駆動ユニット100における電動機30の冷却機構を簡素化することができる。
【0057】
また、動力伝達機構50が動力を伝達しているとき、即ち、電動機30が回転して発熱しているときのみに潤滑油を供給して冷却することができる。よって、電動機30を外部から冷却する冷却システムを用いて常に冷却を行う場合と比較して、冷却効率を高くすることができる。
【0058】
また、インペラ62によってかき上げられた潤滑油が電動機30を冷却して還流されることで、動力伝達機構50内の潤滑油が循環する。そのため、動力伝達機構50内の潤滑油が流動する。よって、第一ギア52,第二ギア53,及びアイドルギア54を軸支する各軸受が潤滑油不足で焼きつくことが防止される。
【0059】
このとき、油圧モータ20は、容量切換アクチュエータによって斜板24の傾転角度が零となるように保持される。よって、ピストン23がシリンダ22内を往復動しないため、ピストン23による押しのけ容積は零となる。したがって、油圧モータ20は作動油を給排せずに空転するのみであるため、油圧モータ20の駆動損失が抑えられる。
【0060】
一方、油圧アクチュエータから排出された作動油によって回生電力を発生する場合には、油圧モータ20は、容量切換アクチュエータによって斜板24の傾角が零より大きい所定値に切り換えられる。油圧モータ20では、シリンダブロック21が回転するのに伴ってピストン23がシリンダ22内を往復動する。このピストン23の往復動により、油圧アクチュエータから戻り通路6を通じて戻ってきた加圧作動油が、ポートプレート25の供給ポート25aを通じて容積室22aに流入する。そして、ピストン23がシリンダ22内を往復動してシリンダブロック21を回転駆動する。容積室22aに流入した作動油は、ポートプレート25の排出ポート25bを通じて給排通路4に排出され、タンクに還流される。
【0061】
回転軸2は、シリンダブロック21と一体に回転する。回転軸2の回転は、動力伝達機構50を介して電動機30の回転軸に伝達される。これにより、電動機30は、回生電力を発電して蓄電装置に蓄えることができる。
【0062】
油圧ポンプモータ1の回転軸2の回転が電動機30に伝達されると、第一ギア52の回転がアイドルギア54に伝達され、アイドルギア54の回転が第二ギア53に伝達される。アイドルギア54が回転することによって、循環機構60のインペラ62が回転する。よって、電動機30が油圧ポンプモータ1を回転駆動する場合と同様に、潤滑油と電動機30との間の熱交換によって、電動機30を冷却することができる。
【0063】
このとき、油圧ポンプ10は、容量切換アクチュエータによって斜板14の傾転角度が零となるように保持される。よって、ピストン13がシリンダ12内を往復動しないため、ピストン13による押しのけ容積は零となる。したがって、油圧ポンプ10は作動油を給排せずに空転するのみであるため、油圧ポンプ10の駆動損失が抑えられる。
【0064】
なお、油圧駆動ユニット100が、メイン油圧ポンプによる複数の油圧アクチュエータへの作動油の供給をアシストする場合には、一つの油圧アクチュエータの駆動をアシストするとともに、他の油圧アクチュエータから作動油が還流される場合もある。
【0065】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0066】
インペラ62の回転によって動力伝達機構50内の潤滑油を導いて電動機30を冷却する循環機構60が設けられる。このインペラ62は、第一ギア52と第二ギア53との間で動力を伝達するアイドルギア54と一体に回転する。よって、電動機30が油圧ポンプモータ1を回転駆動したときには、動力伝達機構50による動力の伝達に伴ってインペラ62が回転し、潤滑油が電動機30に導かれることとなる。したがって、電動機30を外部から冷却する冷却システムを設ける必要がないため、油圧駆動ユニット100における電動機30の冷却機構を簡素化することができる。
【0067】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0068】
例えば、油圧駆動ユニット100は、メイン油圧ポンプによる油圧アクチュエータの駆動をアシストするものであるが、これに代えて、油圧駆動ユニット100のみを用いて油圧アクチュエータを駆動する構成としてもよい。
【0069】
また、油圧ポンプ10と油圧モータ20とは、ともに斜板式のピストンポンプモータであるが、吸込吐出容量を零に調整可能な可変容量型であれば、他の形式であってもよい。また、循環機構60が潤滑油を油圧ポンプモータ1に供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 油圧駆動ユニット(流体圧駆動ユニット)
1 油圧ポンプモータ(流体圧ポンプモータ)
2 回転軸
10 油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
20 油圧モータ(流体圧モータ)
30 電動機
40 プレート
50 動力伝達機構
52 第一ギア
53 第二ギア
54 アイドルギア
60 循環機構
62 インペラ(回転部材)
63 供給流路
64 還流流路
図1
図2
図3