(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る差動トランス式磁気センサーを適用することができる画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。画像形成装置1は例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0020】
原稿給送部300は自動原稿送り装置として機能し、原稿載置部301に置かれた複数枚の原稿を連続的に原稿読取部200で読み取ることができるように送ることができる。
【0021】
原稿読取部200は露光ランプ等を搭載したキャリッジ201、ガラス等の透明部材により構成された原稿台203、不図示のCCD(Charge Coupled Device)センサー及び原稿読取スリット205を備える。原稿台203に載置された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿台203の長手方向に移動させながらCCDセンサーにより原稿を読み取る。これに対して、原稿給送部300から給送された原稿を読み取る場合、キャリッジ201を原稿読取スリット205と対向する位置に移動させて、原稿給送部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット205を通してCCDセンサーにより読み取る。CCDセンサーは読み取った原稿を画像データとして出力する。
【0022】
装置本体100は用紙貯留部101、画像形成部103及び定着部105を備える。用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる用紙トレイ107を備える。用紙トレイ107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー109の駆動により、用紙搬送路111へ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111を通って、画像形成部103へ搬送される。
【0023】
画像形成部103は搬送されてきた用紙にトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、露光部115、現像部117及び転写部119を備える。露光部115は画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射する。これにより、感光体ドラム113の周面には画像データに対応する静電潜像が形成される。この状態で感光体ドラム113の周面に現像部117からトナーを供給することにより、周面には画像データに対応するトナー画像が形成される。このトナー画像は転写部119によって先ほど説明した用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙は定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像は用紙に定着される。用紙はスタックトレイ121又は排紙トレイ123に排紙される。以上のようにして、画像形成装置1はモノクロ画像を印刷する。
【0025】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0026】
操作キー部401にはハードキーからなる操作キーが設けられている。具体的にはスタートキー405、テンキー407、ストップキー409、リセットキー411、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリーを切り換えるための機能切換キー413等が設けられている。
【0027】
スタートキー405はコピー、ファクシミリー送信等の動作を開始させるキーである。テンキー407はコピー部数、ファクシミリー番号等の数字を入力するキーである。ストップキー409はコピー動作等を途中で中止させるキーである。リセットキー411は設定された内容を初期設定状態に戻すキーである。
【0028】
機能切換キー413はコピーキー及び送信キー等を備えており、コピー機能、送信機能等を相互に切り替えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリー送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。
【0029】
図2は、
図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、差動トランス式磁気センサー3、トナー用コンテナー127、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500及び通信部600がバスによって相互に接続された構成を有する。装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300及び操作部400に関しては既に説明したので、説明を省略する。
【0030】
トナー用コンテナー127にはトナー(磁性の1成分現像剤)が収容されており、トナー用コンテナー127から現像部121にトナーが補給される。
【0031】
差動トランス式磁気センサー3は現像部121内のトナーの高さの変化を検知し、これを基にして現像部121内のトナー残量が計測される。差動トランス式磁気センサー3については、後で詳細に説明する。
【0032】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリー受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0033】
通信部600はファクシミリー通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリー通信部601は相手先ファクシミリーとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリー通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリー通信部601は電話回線605に接続される。
【0034】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3(以下、磁気センサー3と記載する場合もある)の回路図の一例を示す図である。差動トランス式磁気センサー3は駆動コイル4、駆動コイル5、差動コイル6(第2の差動コイルの一例)、差動コイル7(第1の差動コイルの一例)、発振回路11、増幅回路12、抵抗13及びコンデンサー14を備える。
【0036】
発振回路11は駆動コイル4及び駆動コイル5を駆動させる高周波電流を生成する。駆動コイル4と駆動コイル5とは、直列に接続されている。駆動コイル4及び駆動コイル5に高周波電流が流れた際に、駆動コイル4で生成される磁束と駆動コイル5で生成される磁束とが同じ向きになるように、駆動コイル4の一端と駆動コイル5の一端とが接続されている。これにより、駆動コイル4で生成される磁束と駆動コイル5で生成される磁束とが打ち消し合わないようにしている。駆動コイル4の他端及び駆動コイル5の他端は、発振回路11に接続されている。
【0037】
差動コイル6は駆動コイル4と磁気的に結合されている。差動コイル7は駆動コイル5と磁気的に結合されている。差動コイル6と差動コイル7とは、直列に差動接続されている。これにより、差動電圧V0(=差動コイル6の起電圧V1−差動コイル7の起電圧V2)が増幅回路12に入力される。
【0038】
差動コイル6の他端は抵抗13を介して、差動コイル7の他端はコンデンサー14を介して、増幅回路12に接続されている。抵抗13は増幅回路12内のバイポーラトランジスタのベースに接続されており、増幅回路12の増幅率の設定に用いられる。
【0039】
コンデンサー14は差動電圧V0のうち、直流成分をカットする機能を有する。これにより、増幅回路12には差動電圧V0の交流成分だけが入力される。
【0040】
抵抗13は位置P1〜位置P5のいずれかの位置に取り付けられる。コンデンサー14は位置P6〜位置P10のいずれかの位置に取り付けられる。抵抗13が取り付けられる位置を調整する箇所を、選択部15と称する。コンデンサー14が取り付けられる位置を調整する箇所を、選択部16と称する。抵抗13が取り付けられる位置及びコンデンサー14が取り付けられる位置を調整して、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整をする。これについては、後で説明する。
【0041】
磁気センサー3の動作を簡単に説明する。発振回路11で生成された高周波電流が、駆動コイル4及び駆動コイル5に流れると、差動コイル6に起電圧V1、差動コイル7に起電圧V2が生じる。差動コイル6は基準コイルの機能を有し、差動コイル7は検知コイルの機能を有する。差動コイル7の付近に磁性トナーが存在すると、起電圧V2は起電圧V1よりも大きくなるので、差動電圧V0は0Vにならない。差動電圧V0を増幅回路12で増幅し、増幅回路12から出力された信号を用いてトナー残量が検出される。
【0042】
次に、本実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3の構成を詳細に説明する。
図4は、磁気センサー3が形成される基板21の一例の面31(第2の面の一例)を示す平面図である。
図5は、基板21の一例の面41(第1の面の一例)を示す平面図である。
図5は、面31側から透視して見た面41を波線で示している。基板21は絶縁性の一層のプリント基板であり、面31と、面31と反対側に位置する面41と、を含む。
【0043】
基板21は長方形の1つの角を含む部分を切り欠いた形状を有する。基板21は縦方向の寸法が一定の部分21aと、この部分21aと連続し、縦方向の寸法が徐々に小さくなる部分21bと、この部分21bと連続し、縦方向の寸法が一定の部分21cと、に分けられる。部分21a,21bには、次に説明するように、磁気センサー3のコイル等が配置される。部分21cには、磁気センサー3の各種回路(発振回路11、増幅回路12等)が配置される。
【0044】
図3及び
図4を参照して、面31は内側領域32(第2の内側領域の一例)、外側領域33(第2の外側領域の一例)及び選択部領域34を有する。これらの領域は基板21の部分21a,21bに位置している。内側領域32は基準ラインLに対して、上領域32a(第2の上領域の一例)と下領域32b(第2の下領域の一例)とに二分割されている。内側領域32には差動コイル6が配置される。
【0045】
外側領域33は内側領域32を囲んでいる。外側領域33には駆動コイル4及び差動コイル6が配置される。
【0046】
選択部領域34は外側領域33の一部と隣接している。選択部領域34には磁気センサー3の差動トランスのゼロ点を調整するための選択部15及び選択部16が配置される。
【0047】
図3及び
図5を参照して、面41は内側領域42(第1の内側領域の一例)及び外側領域43(第1の外側領域)を有する。これらの領域は基板21の部分21a,21bに位置している。内側領域42は基準ラインLに対して、上領域42a(第1の上領域の一例)と下領域42b(第1の下領域の一例)とに二分割されている。内側領域42には差動コイル7が配置される。
【0048】
外側領域43は内側領域42を囲んでいる。外側領域43には駆動コイル5及び差動コイル7が配置される。
【0049】
図6は、駆動コイル4、差動コイル6及び接続パターン10a,10b,10c,10d,10e,10f,10gのレイアウトの一例を示す平面図である。駆動コイル4、差動コイル6及び接続パターン10a〜10gは、基板21の面31に配置されている。差動コイル6は基準コイルとして機能するので、面31は基準面と称することができる。
【0050】
まず、駆動コイル4から説明する。
図7は、
図6に示す駆動コイル4、差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから駆動コイル4を抜き出した状態を示す平面図である。
図4及び
図7を参照して、駆動コイル4は外側領域33に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、駆動コイル4は八角形状に巻かれた線材4aにより構成され、端子4bを始点とし、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材4aがパターニングされている。
【0051】
次に、差動コイル6を説明する。
図8は、
図6に示す駆動コイル4、差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから差動コイル6を抜き出した状態を示す平面図である。
図4及び
図8を参照して、差動コイル6(第2の差動コイルの一例)は、平面状の内側コイル部63(第2の内側コイル部の一例)と、これに接続された平面状の外側コイル部61(第2の外側コイル部の一例)とを含み、駆動コイル4が駆動されると起電圧が生じる。
【0052】
内側領域32の形状は八角形である。この八角形を構成する対向する二辺の中央を、基準ラインLが通り、内側領域32は上領域32aと下領域32bとに二分割されている。内側コイル部63は下領域32bに配置されており、上領域32aに配置されていない。内側コイル部63は基準ラインL上に配置されたライン部63aを含む。内側コイル部63は端子6bを始点とし、反時計回りの方向に下領域32bの形状に沿って線材6aをパターニングして形成されている。内側コイル部63の形状は、下領域32bの形状と同じである。
【0053】
図4及び
図8を参照して、外側コイル部61は外側領域33に配置されており、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材6aをパターニングして形成されている。
図6を参照して、外側領域33において、差動コイル6(すなわち、外側コイル部61)は駆動コイル4と同じ向きに巻かれており、差動コイル6を構成する線材と駆動コイル4を構成する線材とが交互に配置されている。
【0054】
差動コイル6は差動コイル6の最外周を構成する線材が分岐された5本(複数の一例)の分岐線6c1,6c2,6c3,6c4,6c5を含む。分岐線6c1〜6c5を区別する必要がなければ、分岐線6cと記載する。5本の分岐線6cは、駆動コイル4が駆動された場合に、分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。分岐線6cの詳細は後で説明する。
【0055】
図9は、
図6に示す駆動コイル4、差動コイル6及び接続パターン10a〜10gから接続パターン10a〜10gを抜き出した状態を示す平面図である。接続パターン10a〜10gは、差動コイル7を構成する線材との接続に用いられる。接続パターン10a〜10gについては、差動コイル7と一緒に後で説明する。
【0056】
図10は、駆動コイル5及び差動コイル7のレイアウトの一例を示す平面図である。この図は
図4に示す面31側から見た図である。駆動コイル5及び差動コイル7は、基板21の面41に配置されている。差動コイル7は検知コイルとして機能するので、面41は検知面と称することができる。
【0057】
まず、駆動コイル5から説明する。
図11は、
図10に示す駆動コイル5及び差動コイル7から駆動コイル5を抜き出した状態を示す平面図である。
図5及び
図11を参照して、駆動コイル5は面31側から見て駆動コイル4と逆向きに巻かれて、外側領域43に配置された平面状のコイルを含む。詳しくは、駆動コイル5は八角形状に巻かれた線材5aにより構成され、端子5bを始点とし、時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材5aがパターニングされている。
【0058】
駆動コイル5は駆動コイル4と接続されている。これを、
図13及び
図14で説明する。
図13は、駆動コイル4の一部及び差動コイル6の一部を示す斜視図である。駆動コイル4は一点鎖線で示されており、差動コイル6は実線で示されている。
図14は、駆動コイル5の一部及び差動コイル7に一部を示す斜視図である。駆動コイル5は二点鎖線で示されており、差動コイル7は点線で示されている。
【0059】
接続部材51は導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。駆動コイル4の一端である端子4bと駆動コイル5の一端である端子5bとは、接続部材51により接続されている。
【0060】
次に、差動コイル7を説明する。
図12は、
図10に示す駆動コイル5及び差動コイル7から差動コイル7を抜き出した状態を示す平面図である。
図5及び
図12を参照して、差動コイル7は駆動コイル5と逆向きに巻かれて、平面状の内側コイル部73(第1の内側コイル部の一例)と、これに接続された平面状の外側コイル部71(第1の外側コイル部の一例)とを含み、駆動コイル5が駆動されると起電圧が生じる。
【0061】
内側領域42の形状は八角形である。この八角形を構成する対向する二辺の中央を、基準ラインLが通り、内側領域42は上領域42aと下領域42bとに二分割されている。内側コイル部73は上領域42aに配置されており、下領域42bに配置されていない。内側コイル部73は基準ラインL上に配置されたライン部73aを含む。内側コイル部73は端子7bを始点とし、反時計回りの方向に上領域42aの形状に沿って線材7aをパターニングして形成されている。内側コイル部73の形状は上領域42aの形状と同じである。内側コイル部73の面積は、
図8に示す内側コイル部63の面積と等しい。
【0062】
図5及び
図12を参照して、外側コイル部71は外側領域43に配置されており、反時計回りの方向において、八角形の寸法が徐々に大きくなるように、線材7aをパターニングして形成されている。
【0063】
差動コイル7は差動コイル6と接続されている。これを
図13及び
図14で説明する。接続部材52は導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。差動コイル6の一端である端子6bと差動コイル7の一端である端子7bとは、接続部材52により接続されている。
【0064】
図12を参照して、差動コイル7は差動コイル7の最外周を構成する線材が分岐された5本(複数の一例)の分岐線7c1,7c2,7c3,7c4,7c5を含む。分岐線7c1〜7c5を区別する必要がなければ、分岐線7cと記載する。5本の分岐線7cは、駆動コイル5が駆動された場合に、分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。分岐線7cの詳細は後で説明する。
【0065】
図6及び
図10を参照して、駆動コイル4の線材の幅、駆動コイル5の線材の幅、差動コイル6の線材の幅、差動コイル7の線材の幅及び各接続パターン10a〜10gの幅は、例えば、0.15mmである。隣り合う線材の間隔は、例えば、0.15mmである。差動コイル6及び差動コイル7の外形寸法は、例えば24.0mmである。駆動コイル4及び駆動コイル5の外形寸法は、例えば23.4mmである。
【0066】
磁気センサー3の精度を高めるには、差動電圧V0の出力範囲(例えば、0.2〜3.3V)で、差動電圧V0を大きく変化させる必要がある。このためには、磁気センサー3の付近に磁性体が存在しない状態で、差動コイル6により生じる起電圧V1と差動コイル7により生じる起電圧V2とが釣り合っていることが好ましい。起電圧V1と起電圧V2とが釣り合うようにするために、次のようにされている。差動コイル6のターン数と差動コイル7のターン数とを同じにし、差動コイル6のパターンと差動コイル7のパターンとが基板21を介して可能な限り重なるように、差動コイル6が面31に配置され、差動コイル7が面41に配置されている。同様に、駆動コイル4のターン数と駆動コイル5のターン数とを同じにし(例えば、ターン数7)、駆動コイル4のパターンと駆動コイル5のパターンとが基板21を介して可能な限り重なるように、駆動コイル4が面31に配置され、駆動コイル5が面41に配置されている。
【0067】
図5及び
図10を参照して、外側領域43において、差動コイル7(外側コイル部71)を構成する線材と駆動コイル5を構成する線材とが交互に配置されている。駆動コイル5は端子5bを始点にし、時計回りに巻かれている。差動コイル7は端子7bを始点にし、反時計回りに巻かれている。差動コイル7は駆動コイル5と逆向きに巻かれているので、外側領域43において、差動コイル7と駆動コイル5とが交差する。差動コイル7と駆動コイル5とが接触するのを防止するために、
図9に示す接続パターン10a〜10gを利用して、差動コイル7と駆動コイル5とを立体交差させている。この立体交差について説明する。
【0068】
図12を参照して、差動コイル7は端子7bを始点にし、反時計回りに巻かれて、端子7d1に至る。差動コイル7は外側領域43において、差動コイル7の各周で線材の一部が欠落したパターンを有する。このパターンは外側領域43において、差動コイル7の一周目が端子7d2を始点とし、端子7d3を終点にしており、差動コイル7の二周目が端子7d4を始点とし、端子7d5を終点にしており、差動コイル7の三周目が端子7d6を始点とし、端子7d7を終点にしており、差動コイル7の四周目が端子7d8を始点とし、端子7d9を終点にしており、差動コイル7の五周目が端子7d10を始点とし、端子7d11を終点にしており、差動コイル7の六周目が端子7d12を始点とし、端子7d13を終点にしており、差動コイル7の七周目が端子7d14を始点とし、5本の第2の分岐線7cに至る。
【0069】
図9及び
図10を参照して、端子7d1と端子7d2とは、接続パターン10aと接続されている。端子7d3と端子7d4とは、接続パターン10bと接続されている。端子7d5と端子7d6とは、接続パターン10cと接続されている。端子7d7と端子7d8とは、接続パターン10dと接続されている。端子7d9と端子7d10とは、接続パターン10eと接続されている。端子7d11と端子7d12とは、接続パターン10fと接続されている。端子7d13と端子7d14とは、接続パターン10gと接続されている。接続パターン10a〜10gは、差動コイル7の一部を構成する。接続パターン10a〜10gは、駆動コイル5を構成する線材と立体交差する位置に、外側領域33に配置されている。
【0070】
これらの一対の端子(例えば、端子7d1と端子7d2)と接続パターン10a〜10gとの接続には、接続部材が用いられる。
図13及び
図14を参照して、接続部材53a,53b,53c,53dは導電性を有しており、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。端子7d1と接続パターン10aの一端とは、接続部材53aにより接続されている。接続パターン10aの他端と端子7d2とは、接続部材53bにより接続されている。端子7d3と接続パターン10bの一端とは、接続部材53cにより接続されている。接続パターン10bの他端と端子7d4とは、接続部材53dにより接続されている。残りの端子7d5〜7d14及び残りの接続パターン10c〜10gについては図示していないが、同様の方法で接続されている。以上が、差動コイル7と駆動コイル5との立体交差の説明である。
【0071】
先ほど述べたように、
図8に示す5本の分岐線6cは、駆動コイル4が駆動された場合に、分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。
図12に示す5本の分岐線7cは、駆動コイル5が駆動された場合に、分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。分岐線6cと分岐線7cとは、その配置の仕方が同様なので、分岐線6cを用いて説明する。
【0072】
図6及び
図8を参照して、差動コイル6及び駆動コイル4は、八角形の形状に巻き回されている。駆動コイル4の最外周において、八角形の連続する二辺に沿って、分岐線6c1,6c2,6c3が配置されている。上記二辺のうち最初の辺に沿って、分岐線6c4,6c5が配置されている。分岐線6c1の外側に分岐線6c2が配置され、分岐線6c2の外側に分岐線6c3が配置され、分岐線6c3の外側に分岐線6c4が配置され、分岐線6c4の外側に分岐線6c5が配置されている。5本の分岐線6cの長さは、それぞれ異なり、分岐線6c1が一番長く、その次が分岐線6c2であり、その次が分岐線6c3であり、その次が分岐線6c4であり、その次が分岐線6c5である。
【0073】
上記二辺のうち最初の辺において、隣り合う分岐線6c間の距離は、差動コイル6を構成する線材が5本の分岐線6cに分岐する前の差動コイル6の隣り合う線材間の距離より大きくされている。例えば、分岐線6c1と分岐線6c2との間の距離dは、差動コイル6の隣り合う線材間の距離Dより大きくされている。よって、隣り合う分岐線6c間の距離を比較的大きくすることができる。これにより、駆動コイル4が駆動された場合に、5本の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるようにすることができる。
【0074】
駆動コイル4が駆動された場合、分岐線6cを通る磁束量は、駆動コイル4の最外周に沿って延びる分岐線6cの部分の長さ、及び、駆動コイル4の最外周と分岐線6cとの距離に影響される。駆動コイル4の最外周に沿って延びる分岐線6cの部分の長さが小さければ、分岐線6cを通る磁束量が少なくなり、上記部分の長さが大きければ、分岐線6cを通る磁束量が多くなる。また、駆動コイル4の最外周と分岐線6cとの距離が大きければ、分岐線6cを通る磁束量が少なくなり、上記距離が小さければ、分岐線6cを通る磁束量が多くなる。
【0075】
例えば、
図15に示すように、駆動コイル4が駆動された場合に、環状の磁力線ML1,ML2,ML3,ML4が発生したとする。磁力線ML3と磁力線ML4とは同心円とする。分岐線6c1は、全ての磁力線ML1〜ML4の中を通る。しかし、分岐線6c2は磁力線ML2,ML4の中を通るが、磁力線ML1,ML3の中を通らない。よって、分岐線6c1を通る磁束量は、分岐線6c2を通る磁束量より多くなる。
【0076】
従って、駆動コイル4が駆動された場合、分岐線6c1を通る磁束量>分岐線6c2を通る磁束量>分岐線6c3を通る磁束量>分岐線6c4を通る磁束量>分岐線6c5を通る磁束量、の関係が成立する。同様の理由で、駆動コイル5が駆動された場合、分岐線7c1を通る磁束量>分岐線7c2を通る磁束量>分岐線7c3を通る磁束量>分岐線7c4を通る磁束量>分岐線7c5を通る磁束量、の関係が成立する。
【0077】
分岐線6c1と分岐線7c1とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。同様に、分岐線6c2と分岐線7c2とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。分岐線6c3と分岐線7c3とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。分岐線6c4と分岐線7c4とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。分岐線6c5と分岐線7c5とは、ほぼ同じ長さを有し、対向している。
【0078】
分岐線6c及び分岐線7cは、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に使用される。これについて、
図6及び
図10を参照して説明する。先ほど説明したように、駆動コイル5を構成する線材と差動コイル7を構成する線材とが接触しないように、駆動コイル5と差動コイル7とを立体交差させている。このため、外側領域43に配置された差動コイル7のパターンを、外側領域33に配置された差動コイル6とパターンと対称にすることができない。その結果、差動コイル6に生じる起電圧V1と差動コイル7に生じる起電圧V2との差が生じる。
【0079】
分岐線6c1と分岐線7c1とを標準とする。磁気センサー3の近くに磁性体(例えば、磁性トナー)がない状態で、差動コイル6に生じる起電圧V1>差動コイル7に生じる起電圧V2であれば、起電圧V1を小さくするために、分岐線6c1の換わりに、分岐線6c2〜6c5のいずれかを選択する。起電圧V1を一番小さくできるのは、分岐線6c5であり、その次が分岐線6c4であり、その次が分岐線6c3であり、その次が分岐線6c2である。
【0080】
一方、磁気センサー3の近くに磁性体がない状態で、起電圧V1<起電圧V2であれば、起電圧V2を小さくするために、分岐線7c1の換わりに、分岐線7c2〜7c5のいずれかを選択する。起電圧V2を一番小さくできるのは、分岐線7c5であり、その次が分岐線7c4であり、その次が分岐線7c3であり、その次が分岐線7c2である。
【0081】
次に、5本の分岐線6cのいずれか一つを選択する選択部15(
図3)について説明する。
図6を参照して、分岐線6c1の端部は位置P1に配置され、端子6d1として機能する。分岐線6c2の端部は位置P2に配置され、端子6d2として機能する。分岐線6c3の端部は位置P3に配置され、端子6d3として機能する。分岐線6c4の端部は位置P4に配置され、端子6d4として機能する。分岐線6c5の端部は位置P5に配置され、端子6d5として機能する。
【0082】
面31には、増幅回路12(
図3)と接続される配線8が配置されている。配線8は、5本の分岐線6cと接続可能にされている。配線8は、分岐線6c1との接続に用いられる端子8a1、分岐線6c2との接続に用いられる端子8a2、分岐線6c3との接続に用いられる端子8a3、分岐線6c4との接続に用いられる端子8a4、及び、分岐線6c5との接続に用いられる端子8a5を有する。
【0083】
5本の分岐線6cのいずれか一つが、
図3で説明した抵抗13を介して配線8と接続される。これについて
図6及び
図16を用いて説明する。
図16は、
図4に示す選択部領域34の付近の基板21を示す斜視図である。例えば、抵抗13を位置P1に配置して、端子6d1と端子8a1とを接続すると、分岐線6c1が配線8と接続されることになる。すなわち、分岐線6c1を選択することができる。位置P1の端子6d1,8a1、位置P2の端子6d2,8a2、位置P3の端子6d3,8a3、位置P4の端子6d4,8a4及び位置P5の端子6d5,8a5、並びに、抵抗13によって、選択部15が構成される。選択部15は、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に用いられ、5本の分岐線6cのいずれか一つを選択できる。
【0084】
5本の分岐線7c1のいずれかを選択する選択部16(
図3)について説明する。
図10を参照して、分岐線7c1の端部は端子7e1として機能する。分岐線7c2の端部は端子7e2として機能する。分岐線7c3の端部は端子7e3として機能する。分岐線7c4の端部は端子7e4として機能する。分岐線7c5の端部は端子7e5として機能する。
【0085】
面41には、増幅回路12(
図3)と接続される配線9が配置されている。配線9は、5本の分岐線7cと接続可能にされている。配線9は、分岐線7c1との接続に用いられる端子9a1、分岐線7c2との接続に用いられる端子9a2、分岐線7c3との接続に用いられる端子9a3、分岐線7c4との接続に用いられる端子9a4、及び、分岐線7c5との接続に用いられる端子9a5を有する。
【0086】
図6に示す面31の位置P6,P7,P8,P9,P10のいずれかで、分岐線7cと配線9とが接続される。
図6及び
図16を参照して、位置P6は位置P1に隣接しており、端子7f1及び端子9b1が配置されている。端子7f1と分岐線7c1の端子7e1とは、接続部材54aにより接続されている。端子9b1と配線9の端子9a1とは、接続部材54bにより接続されている。
【0087】
位置P7は位置P2に隣接しており、端子7f2及び端子9b2が配置されている。端子7f2と分岐線7c2の端子7e2とは、接続部材54cにより接続されている。端子9b2と配線9の端子9a2とは、接続部材54dにより接続されている。
【0088】
位置P8は位置P3に隣接しており、端子7f3及び端子9b3が配置されている。端子7f3と分岐線7c3の端子7e3とは、接続部材54eにより接続されている。端子9b3と配線9の端子9a3とは、接続部材54fにより接続されている。
【0089】
位置P9は位置P4に隣接しており、端子7f4及び端子9b4が配置されている。端子7f4と分岐線7c4の端子7e4とは、接続部材54gにより接続されている。端子9b4と配線9の端子9a4とは、接続部材54hにより接続されている。
【0090】
位置P10は位置P5に隣接しており、端子7f5及び端子9b5が配置されている。端子7f5と分岐線7c5の端子7e5とは、接続部材54iにより接続されている。端子9b5と配線9の端子9a5とは、接続部材54jにより接続されている。
【0091】
接続部材54a〜54jは、基板21に形成されたスルーホール(不図示)に埋め込まれている。
【0092】
5本の分岐線7cのいずれかが、
図3で説明したコンデンサー14を介して配線9と接続される。
図16を参照して、例えば、コンデンサー14を位置P6に配置して、端子7f1と端子9b1とを接続すると、分岐線7c1が配線9と接続されることになる。位置P6の端子7f1,9b1、位置P7の端子7f2,9b2、位置P8の端子7f3,9b3、位置P9の端子7f4,9b4及び位置P10の端子7f5,9b5並びにコンデンサー14によって、選択部16が構成される。選択部16は、磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整に用いられ、5本の分岐線7cのいずれか一つを選択できる。
【0093】
本実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3によれば、
図2に示す現像部121内のトナー残量の少量の変化を検知できる。これについて
図17〜
図19を用いて説明する。
図17は、本実施形態に係る磁気センサー3を現像部121に配置した状態を示す図である。磁気センサー3は基板21を立てた状態で現像部121に取り付けられる。詳しくは、磁気センサー3は基準ラインLを水平にし、かつ上領域32a,42aと下領域32b,42bとを鉛直方向で上下にした状態で、現像部121に取り付けられている。トナーの検知面である面41は、現像部121内のトナーと接触可能に現像部121内に入れられている。磁気センサー3は現像部121内に収容されているトナーの高さに応じた出力をし、これにより現像部121内のトナー残量を検知する。
【0094】
検知したいトナー残量の範囲において、差動トランス式磁気センサーの出力とトナー残量との関係を示すグラフの傾きが大きければ、トナー残量の少しの変化について、その変化を検知できる。
図18はこれを示すグラフである。検知したいトナー残量の範囲において、実線で示すグラフは点線で示すグラフよりも傾きが大きい。グラフの傾きが大きければ、出力電圧の変化が大きいので、トナー残量の少しの変化について、その変化を検知できる。
【0095】
図19は、本実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3、比較例1のセンサー及び比較例2のセンサーのそれぞれの出力と現像部121内のトナー残量との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。コイル下限とは
図17に示す状態で、外側コイル部61,71の一番下の部分の位置を意味する。コイル上限とは外側コイル部61,71の一番上の部分の位置を意味する。
【0096】
比較例1のセンサーは外側コイル部61,71を備えるが、内側コイル部63,73を備えない構成のセンサーである。比較例2のセンサーは内側コイル部63,73を備えるが、外側コイル部61,71を備えない構成のセンサーである。
【0097】
本実施形態に係る磁気センサー3において、
図17に示すように、検知面の内側コイル部73は基準ラインLより上の上領域42aに配置され、基準面の内側コイル部63は基準ラインLより下の下領域32bに配置される。このため、比較例1のセンサーの出力から比較例2のセンサーの出力を引いた値が、本実施形態に係る磁気センサー3の出力となる。
【0098】
詳しく説明すると、比較例2のセンサーにおいて、トナー残量が基準ラインLより下の状態で、基準ラインLに近づくと、内側コイル部63を通る磁束量が徐々に多くなり、一方、内側コイル部73を通る磁束量は少ない状態のままである。よって、比較例2のセンサーの出力は増加する。比較例2のセンサーにおいて、トナー残量が基準ラインLに到達し、基準ラインLを超えて増えると、内側コイル部63を通る磁束量は変化しないが、内側コイル部73を通る磁束量が徐々に多くなる。よって、比較例2のセンサーの出力は減少する。
【0099】
以上より、比較例2のセンサーの出力は、
図19に示すように、基準ラインLで最大値となるガウス関数状の波形を示す。本実施形態に係る磁気センサー3の出力は、比較例1のセンサーの出力から比較例2のセンサーの出力を引いた値である。このため、
図19に示すように、本実施形態に係る磁気センサー3は、トナー残量が基準ラインLより下であれば、出力の上昇が抑えられ、トナー残量が基準ラインLを超えると、トナー残量が基準ラインLの近傍で出力が急激に上昇する。
【0100】
本実施形態は
図17に示すように、検知面の内側コイル部73が上領域42aに配置され、基準面の内側コイル部63が下領域32bに配置されている構成に限らず、
図20に示すように、検知面の内側コイル部73が下領域42bに配置され、基準面の内側コイル部63が上領域32aに配置されている構成でもよい。
図21は、
図20の構成を備える本実施形態に係る差動トランス式磁気センサー3、比較例3のセンサー及び比較例4のセンサーのそれぞれの出力と現像部121内のトナー残量との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【0101】
比較例3のセンサーは、
図20に示す外側コイル部61,71を備えるが、内側コイル部63,73を備えない構成のセンサーである。比較例4のセンサーは、
図20に示す内側コイル部63,73を備えるが、外側コイル部61,71を備えない構成のセンサーである。
【0102】
図20に示す磁気センサー3において、検知面の内側コイル部73は基準ラインLより下の下領域42bに配置され、基準面の内側コイル部63は基準ラインLより上の上領域32aに配置される。このため、比較例3のセンサーの出力と比較例4のセンサーの出力とを足した値が、
図20に示す磁気センサー3の出力となる。
【0103】
詳しく説明すると、比較例4のセンサーにおいて、トナー残量が基準ラインLより下の状態で、基準ラインLに近づくと、内側コイル部73を通る磁束量が徐々に多くなり、一方、内側コイル部63を通る磁束量は少ない状態のままである。よって、比較例4のセンサーの出力は増加する。比較例4のセンサーにおいて、トナー残量が基準ラインLに到達し、基準ラインLを超えて増えると、内側コイル部73を通る磁束量は変化しないが、内側コイル部63を通る磁束量が徐々に多くなる。よって、比較例4のセンサーの出力は減少する。
【0104】
以上より、比較例4のセンサーの出力は、比較例2のセンサーと同様に、
図21に示すように、基準ラインLで最大値となるガウス関数状の波形を示す。
図20に示す磁気センサー3の出力は、比較例3のセンサーの出力と比較例4のセンサーの出力とを足した値である。このため、
図21に示すように、
図20に示す磁気センサー3は、トナー残量が基準ラインLより下であれば、トナー残量が基準ラインLの近傍で出力が急激に上昇し、トナー残量が基準ラインLを超えると、出力の上昇が抑えられる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によれば、
図17に示すように、検知面の内側コイル部73が上領域42aに配置され、基準面の内側コイル部63が下領域32bに配置されている場合、
図19に示すように、トナーが基準ラインLを超えた直後の位置で、トナーの少量の変化に対して磁気センサー3の出力を大きく変化させることができる。一方、
図20に示すように、検知面の内側コイル部73が下領域42bに配置され、基準面の内側コイル部63が上領域32aに配置されている場合、
図21に示すように、トナーが基準ラインLを超える直前の位置で、トナーの少量の変化に対して磁気センサー3の出力を大きく変化させることができる。
【0106】
従って、
図17に示す構成の場合、トナーが基準ラインLを超えた直後の位置でトナーの少量の変化を検知することができる。
図20に示す構成の場合、トナーが基準ラインLを超える直前の位置でトナーの少量の変化を検知することができる。
【0107】
このように、本実施形態によれば、現像部121内のトナーの高さが基準ラインLの近傍の位置にある場合に、差動トランス式磁気センサー3の出力を大きく変化させることが可能となるので、基準ラインLの近傍で、トナーの少量の変化を検知することができる。
【0108】
本実施形態の他の効果を説明する。
図6、
図10、
図13及び
図14を参照して、駆動コイル4、差動コイル6、駆動コイル5及び差動コイル7を備えた差動トランスでは、駆動コイル4と差動コイル6とが同じ向きに巻かれ、駆動コイル5と差動コイル7とが逆向きに巻かれた構成となる。本実施形態では、外側領域33(
図4)において、駆動コイル4を構成する線材と差動コイル6を構成する線材とを交互に配置しているので、これらのコイルの磁気結合を大きくすることができる。また、外側領域43(
図5)において、駆動コイル5を構成する線材と差動コイル7を構成する線材とを交互に配置しているので、これらのコイルの磁気結合を大きくすることができる。
【0109】
駆動コイル5と差動コイル7とは、逆向きに巻かれているので、駆動コイル5を構成する線材と差動コイル7を構成する線材との交差が不可避となる。駆動コイル5と差動コイル7とが接触すると、これらのコイルの間でショートが発生する。そこで、本実施形態では、駆動コイル5を構成する線材と差動コイル7を構成する線材とを、接続パターン10a〜10gと第3の接続部材53a〜53dを用いて立体交差させている。これにより、駆動コイル5を構成する線材と差動コイル7を構成する線材とを交差させつつ、駆動コイル5と差動コイル7との接触を防いでいる。
【0110】
そして、本実施形態では、基板21の面31に駆動コイル4及び差動コイル6を配置し、面31の反対側の面41に駆動コイル5及び差動コイル7を配置している。このように、駆動コイル4、差動コイル6、駆動コイル5及び差動コイル7を、一枚の基板21に配置しているので、磁気センサー3の小型化を図れる。
【0111】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動コイル4と差動コイル6との磁気結合及び駆動コイル5と差動コイル7との磁気結合を大きくし、かつ、磁気センサー3を小型化することができる。また、駆動コイル4、差動コイル6、駆動コイル5及び差動コイル7を、複数層の基板でなく、一層の基板21に配置しているので、磁気センサー3のコストを下げることが可能となる。
【0112】
なお、本実施形態では、接続パターン10a〜10gを差動コイル7の一部にすることによって立体交差させている。すなわち、
図13に示すように、接続パターン10a〜10gは、第3の接続部材53a〜53dによって差動コイル7を構成する線材と接続されることにより、差動コイル7を構成する線材と駆動コイル5を構成する線材とを立体交差させている。しかしながら、接続パターン10a〜10gを駆動コイル5の一部にすることによって立体交差させてもよい。すなわち、接続パターン10a〜10gは、第3の接続部材53a〜53dによって駆動コイル5を構成する線材と接続されることにより、差動コイル7を構成する線材と駆動コイル5を構成する線材とを立体交差させるのである。
【0113】
本実施形態では、差動コイル6を基準コイル、差動コイル7を検知コイルとしたが、差動コイル6を検知コイル、差動コイル7を基準コイルとしてもよい。
【0114】
図8及び
図12を参照して、本実施形態によれば、5本の第1の分岐線6cは、駆動コイル4が駆動された場合に、5本の第1の分岐線6cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。このため、選択部15によって5本の第1の分岐線6cのいずれか一つを選択することで、差動コイル6に生じる起電圧V1の大きさを調整することができる。同様に、5本の第2の分岐線7cは、駆動コイル5が駆動された場合に、5本の第2の分岐線7cのそれぞれを通る磁束量が異なるように配置されている。このため、選択部16によって5本の第2の分岐線7cのいずれか一つを選択することで、差動コイル7に生じる起電圧V2の大きさを調整することができる。以上より、本実施形態によれば、基板21に配置された平面コイルを駆動コイル及び差動コイルとする場合に、基板21上で磁気センサー3の差動トランスのゼロ調整することができる。
【0115】
本実施形態では、選択部15及び選択部16の両方を備える構成で説明したが、選択部15及び選択部16のいずれか一方を備える構成でもよい。これを、選択部15を例に説明する。
図10に示す第2の分岐線7c1〜7c5は、第2の分岐線7c3の1本とする。
図6に示す第1の分岐線6c3を基準にし、差動コイル6に生じる起電圧V1>差動コイル7に生じる起電圧V2であれば、起電圧V1を小さくするために、第1の分岐線6c3の換わりに、第1の分岐線6c4,6c5のいずれかを選択する。これに対して、起電圧V1<起電圧V2であれば、起電圧V1を大きくするために、第1の分岐線6c3の換わりに、第1の分岐線6c1,6c2のいずれかを選択する。
【0116】
図16を参照して、本実施形態によれば、差動電圧V0が増幅回路12で増幅される増幅率の設定に用いられる抵抗13を、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8との接続に用いる接続部材にしている。差動電圧V0の直流成分をカットするコンデンサー14を、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9との接続に用いる接続部材にしている。従って、これらの接続部材を新たに設ける必要がなくなる。なお、コンデンサー14を、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8との接続に用いる接続部材にし、抵抗13を、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9との接続に用いる接続部材にしてもよい。また、抵抗13やコンデンサー14の換わりに、基板21の表面に実装可能なゼロオーム抵抗器を接続部材にすることもできる。また、抵抗13、コンデンサー14、ゼロオーム抵抗器の換わりに、機械式又は電子式スイッチを用いることもできる。この場合、第1のスイッチによって、5本の第1の分岐線6cのいずれかと第1の配線8とを接続できるようにし、第2のスイッチによって、5本の第2の分岐線7cのいずれかと第2の配線9とを接続できるようにする。
【0117】
図6を参照して、本実施形態によれば、選択部15及び選択部16を、差動コイル6(基準コイル)が配置される面31に配置している。よって、差動コイル7(検知コイル)が配置される面41(検知面)には、選択部15や選択部16のような突起物が配置されていないので、面41と磁性体との距離を短くできる。従って、高精度な差動トランス式磁気センサーを実現することができる。
【0118】
なお、5本の第1の分岐線6cと5本の第2の分岐線7cのうち、ゼロ調整に用いる第1の分岐線6cと第2の分岐線7cとの組み合わせが既に分かっている場合、不要な分岐線を削除した構成でもよい。例えば、第1の分岐線6c2と第2の分岐線7c5との組み合わせでゼロ調整ができることが既に分かっている場合、第1の分岐線6c1、6c3〜6c5及び第2の分岐線7c1〜7c4を備えない構成でもよい。この構成は、駆動コイル4が駆動された場合に差動コイル6の最外周を構成する線材(第1の分岐線6c2)を通る磁束量と、駆動コイル5が駆動された場合に差動コイル7の最外周を構成する線材(第2の分岐線7c5)を通る磁束量とが異なるようにされている、と表現することができる。
【0119】
本実施形態の変形例について説明する。
図8及び
図12に示すように、本実施形態に係る磁気センサー3は、上領域42aに配置された内側コイル部73と下領域32bに配置された内側コイル部63とを備えている。しかしながら、下領域32bに配置された内側コイル部63を備えていない構成でもよい。
【0120】
本実施形態に係る磁気センサー3は、差動コイル6と磁気結合する駆動コイル4と、差動コイル7と磁気結合する駆動コイル5とを備えている。しかしながら、駆動コイルを一つにして、その駆動コイルが差動コイル6の配置面と差動コイル7の配置面との間の面に配置した構成でもよい。
【0121】
本実施形態では、画像形成装置1の現像部121内のトナー残量を検知するセンサーを例にして、差動トランス式磁気センサー3を説明したが、本発明に係る差動トランス式磁気センサーの用途は、現像部121内のトナー残量の検知に限定されない。