(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず、
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係るインソール10の構成について説明する。インソール10は、クッション部1と、板ばね部材2と、カバー部3とが積層して構成されている。
【0015】
クッション部1は、着用者が歩行もしくは走行時において、着地の際に足に対して加えられる衝撃を緩和するように設けられている。クッション部1は、インソール10が履物(例えば、スポーツシューズ。以下靴ともいう)の内部に配置されたときに、その上面が着用者の足裏と接触可能に構成されている。
図3を参照して、具体的には、クッション部1は、インソール10の長手方向(足長方向)において、着用者の踵と接触する後足部1aと、着用者の足裏のアーチ形状に沿うように設けられたアーチ形状部1bと、着用者の拇指球や小指球と接触する中足部1cと、足指と接触する前足部1dとが連なるように構成されている。ここで、アーチ形状部1bは、着用者が両足で直立したときに、足裏のアーチ形状に対し微小な隙間を有するように設けられていてもよい。また、アーチ形状部1bは、着用者が両足で直立したときに、足裏のアーチ形状に沿うように設けられていてもよい。なお、
図3(a)はインソール10におけるカバー部3側(下面側)から見たときのクッション部1の平面図である。
図3(b)は
図3(a)中の矢印III(b)から見たクッション部1の側面図である。
【0016】
一方、クッション部1は、その下面側において、板ばね部材2と接触可能に構成されている。クッション部1の下面には、板ばね部材2の上面と接触することが可能な凸部1eが形成されていてもよい。クッション部1の外形は靴の内部形状に沿うように設けられている。クッション部1を構成する材料は、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVAスポンジ)および発泡ラバー、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)とすることができる。
【0017】
板ばね部材2は、その上面がクッション部1の後足部1aから中足部1cに至る領域の下面に沿うように構成されている。
図4を参照して、具体的には、板ばね部材2は、長手方向において、クッション部1の後足部1a、アーチ形状部1b、中足部1cとそれぞれ対向する後足部2aと、アーチ形状部2bと、中足部2cとからなる。板ばね部材2の平面形状は、任意の形状とすることができるが、例えば、後足部2aとアーチ形状部2bとがほぼ同じ幅であって、中足部2cの幅が他の部分より広くなるような形状でもよい。このとき、板ばね部材2は、カバー部3によって保持された状態とできるように、カバー部3には板ばね部材2を配置する凹部が形成されていてもよい。板ばね部材2が接続されたカバー部3がクッション部1に対して固定されることにより、板ばね部材2はクッション部1に対して固定されている。なお、
図4(a)はインソール10におけるカバー部3側(下面側)から見たときの板ばね部材2の平面図である。
図4(b)は
図4(a)中の矢印IV(b)から見た板ばね部材2の側面図である。
【0018】
板ばね部材2は、クッション部1およびカバー部3よりも高い剛性を有している。板ばね部材2は、長手方向の縦弾性率Exが9GPa以上であり、縦弾性率Exとアーチ形状部2bの頂部において長手方向に延びる断面の断面2次モーメントIとの積(曲げ剛性)ExIが2.5×10−2Nm2以上である。インソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さLが
0.20m以上
0.34m以下程度であるときに、板ばね部材2の長手方向に延びる断面における曲げ剛性ExIを2.5×10
−2Nm
2以上とすることで、アーチ形状部2bに圧縮変形させる力が加えられた場合にも、アーチ形状部2bには充分な抵抗力が生じる。さらに、このとき、板ばね部材2の長手方向の縦弾性率Exを9GPa以上と大きくすることにより、上記曲げ剛性ExIを実現するために必要な板ばね部材2の長手方向に延びる断面の断面2次モーメントIを2.77×10
−11m
4以下とすることができる。このように、アーチ形状部2bを高剛性とすることができるため、板ばね部材2を厚くすることなく、かつ板ばね部材2が塑性変形することなく、充分な反発性を示すことができる。なお、インソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さLが
0.26m以上
0.28m以下程度であるときには、板ばね部材2の長手方向に延びる断面における曲げ剛性ExIを2.5×10
−2Nm
2以上とすることは、特に効果的である。板ばね部材2の厚みは、たとえば1.0mm以上2.5mm以下であり、より好ましくは1.0mm以上1.5mm以下である。板ばね部材2の長手方向に垂直な方向(足幅方向)の幅は、たとえば35mm以上45mm以下であり、より好ましくは37mm以上42mm以下である。また、板ばね部材2の質量は、10g以上25g以下であり、好ましくは10g以上15g以下である。このように、板ばね部材2の質量を抑えることで、インソール10の全質量においても板ばね部材2を採用することによる質量の増加を抑制することができる。
【0019】
板ばね部材2を構成する材料は、例えば、繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics)であり、特に、炭素繊維強化樹脂やガラス繊維強化樹脂等が好適である。板ばね部材2を構成する材料が炭素繊維強化樹脂である場合には、板ばね部材2の質量に対する炭素繊維の質量の比率は、15%以上70%以下とすればよく、好ましくは30%以上70%以下であり、より好ましくは、40%以上70%以下である。このようにすれば、縦弾性率(引張弾性率)Eを9GPa以上とすることができる。一方、板ばね部材2を構成する材料がガラス繊維強化樹脂である場合には、板ばね部材2の質量に対するガラス繊維の質量の比率は、30%以上70%以下とすればよく、好ましくは45%以上70%以下であり、より好ましくは、50%以上70%以下である。また、板ばね部材2を構成する材料が炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂とを混合したものである場合には、板ばね部材2の質量に対する炭素繊維およびガラス繊維の合計質量の比率は、15%以上70%以下とすればよい。このとき、炭素繊維とガラス繊維との混合比は任意に選択すればよい。このようにすれば、縦弾性率(引張弾性率)Eを9GPa以上とすることができる。このように、比弾性率の優れた繊維強化樹脂を板ばね部材2に用いることにより、板ばね部材2の質量を抑えることができる。なお、例えば、ガラス繊維の質量比率が50%以上であるガラス繊維強化樹脂や、炭素繊維の質量比率が50%以上である炭素繊維強化樹脂は、縦弾性率Eがそれぞれ30GPa以上40GPa以下、50GPa以上200GPa以下程度と高い。そのため、このような材料で板ばね部材2を構成することにより、板ばね部材2は高い剛性を有して、着用者の足裏のアーチ部を効果的に支持することができる。また、板ばね部材2の質量に対する繊維強化樹脂の質量の比率を適切に選択することにより、充分な反発性を有しながら、より軽量なインソール10を得ることができる。
【0020】
板ばね部材2の長手方向の縦弾性率E
xは、板ばね部材2の長手方向に垂直な方向の縦弾性率E2の2倍以上3倍以下となるように板ばね部材2は構成されている。これは、例えば、板ばね部材2に含まれる繊維の向きを揃える(配向させる)ことで実現できる。具体的には、板ばね部材2の長手方向に垂直な方向(足幅方向)には、割れ等の不具合を起こさない程度に繊維を配向させればよく、例えば板ばね部材2に含まれる繊維全体の10%の繊維を幅方向に向けて伸びるように配置する(配向させる)。一方、板ばね部材2の長手方向にはアーチ形状部2bが形成されており、大きな応力が加えられるため、たとえば全体の40%の繊維を長手方向に向けて伸びるように配置する(配向させる)。さらに、板ばね部材2にねじり剛性を与えるために、長手方向に対して±45度方向には、例えばそれぞれ25%ずつ繊維を配向させる。このような構成例では、板ばね部材2の長手方向の縦弾性率Eを、板ばね部材2の長手方向に垂直な方向の縦弾性率E2のほぼ2倍とすることができる。このようにすれば、板ばね部材2の長手方向および長手方向に垂直な方向の縦弾性率E,E2を実現するために必要充分な繊維の量を含むように板ばね部材2を構成しているので、長手方向と長手方向に垂直な足幅方向とに繊維を等しく配向させた場合と比べて板ばね部材2に含まれる繊維の量の増加を抑制しながら、必要な縦弾性率を実現できる。また、板ばね部材2の繊維量の増加を抑制させて、板ばね部材2の軽量化を図ることができる。なお、ねじり剛性がそれほど要求されない場合には、板ばね部材2は、例えば、長手方向に全体の60%、長手方向に対して±45度方向にそれぞれ全体の15%ずつ、および長手方向に垂直な方向に全体の10%の繊維を配置してもよい。このようにしても、必要な特性を得ながら板ばね部材2を軽量化することができる。
【0021】
図5を参照して、カバー部3は、インソール10の後足部10aから中足部10cにかけてインソール10の底面を形成している。カバー部3は、靴に対してインソール10の後足部10aのずれを抑制し、かつ板ばね部材2をインソール10において所定の位置に固定するために設けられている。カバー部3は、後足部3aと、アーチ形状部3bと、中足部3cとからなる。カバー部3の後足部3aは、板ばね部材2の後足部2aを介してクッション部1の後足部1aと対向する。カバー部3のアーチ形状部3bは、板ばね部材2のアーチ形状部2bを介してクッション部1のアーチ形状部1bと対向する。カバー部3の中足部3cは、板ばね部材2の中足部2cを介してクッション部1の中足部1cと対向する。カバー部3は、上述のように、板ばね部材2を保持した状態で、クッション部1に対して固定されている。カバー部3を構成する材料は、例えば、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、硬質EVA、ポリエチレン、ポリプロピレンなどである。なお、
図5(a)はインソール10における下面側から見たときのカバー部3の平面図である。
図5(b)は
図5(a)中の矢印V(b)から見たカバー部3の側面図である。
【0022】
図1および
図2に示すインソール10において、板ばね部材2はカバー部3の上面に形成された凹部に嵌めこまれている。板ばね部材2は、カバー部3へ着脱可能に接続されている。例えば、カバー部3の上面における凹部との端部には、突起状部が設けられていてもよい。この場合、凹部の上面と突起状部3eの下面とで板ばね部材2を狭持することができる。好ましくは、突起状部3eは上記端部において対向するように設けられている。より好ましくは、突起状部は、カバー部3のアーチ形状部3bの上面における凹部との端部に設けられている。このようにすれば、板ばね部材2において最も変形量の大きいアーチ形状部2bを、足幅方向における両端から狭持することができる。カバー部3はその上面(板ばね部材2が接続された側の面)において板ばね部材2が接続されていない領域でクッション部1の下面と接合されているクッション部1とカバー部3とを固定する手段は、たとえば両面テープ、面ファスナー、ボタン等の嵌合構造とすればよい。このようにすれば、クッション部1とカバー部3との接合を解くことができる。これにより、インソール10においてクッション部1と板ばね部材2とカバー部3とは互いに着脱することができる。
【0023】
次に、インソール10の全体としての特性について説明する。
インソール10は、アーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地されたときに、インソール10の底面においてアーチ形状部10bの頂部と重なる領域(アーチ形状部3bの頂部の下面)が接地面に対して高さH(
図1参照)だけ離れているように設けられている。つまり、インソール10は、アーチ形状部10bの頂部が無負荷の状態(少なくとも接地面に対して垂直な方向において無負荷の状態)にあるとき、上記領域は接地面に対して高さHだけ離れている。このとき、当該高さHは、インソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さL(
図1参照)の3.9%以上6%以下として設けられている。ここで、インソール10の長手方向の標準長さLは、着用者の足長に応じて決めればよい。
【0024】
さらに、インソール10は、アーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地されたときに、当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向から荷重を加えられることにより、接地面に対する高さHが変動可能に設けられている。具体的には、インソール10における板ばね部材2の頂部に向けて接地面に垂直な方向から荷重Fを加えることにより、インソール10の底面においてアーチ形状部10bの頂部と重なる領域(アーチ形状部3bの頂部の下面)が無負荷の状態から接地面に接触することができるように、インソール10は構成されている。言い換えると、インソール10のアーチ形状部10bは、接地面に対するカバー部3のアーチ形状部3bの頂部下面の高さHがインソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さLの3.9%以上6%以下であるとともに、インソール10における板ばね部材2の頂部に向けて接地面に垂直な方向から荷重Fを加えることにより当該高さHだけ変形可能に設けられている。
【0025】
このとき、無負荷の状態のアーチ形状部3bの頂部の下面を接地面に接触させるために必要な荷重の最大値Fは、0.15×9.8×(3000L
3+20.5)≦F≦0.50×9.8×(3000L
3+20.5)という条件を満足する。
【0026】
例えば、着用者の足長が270mm程度である場合には、インソール10(クッション
部1)の長手方向の標準長さLを
0.27mとし、接地面からアーチ形状部3bの頂部の下面までの高さHは、10.5mm以上16.2mm以下とすればよい。また、この場合の荷重の最大値Fは、117N以上390N以下とすればよい。
【0027】
インソール10について、アーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地された状態で、当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向から荷重を加えられたときの、接地面からアーチ形状部3bの頂部の下面までの高さHの変形量は、静荷重試験により求めることができる。例えば、オートグラフ(島津製作所(株)製AG−5000D。ロードセル5kN。荷重速度10mm/min。)を用いて、当該荷重に対する高さHの変化量を測定してもよい。
【0028】
本願の発明者らは、長手方向の標準長さLが
0.27mまたは
0.22mである本実施の形態に係るインソールを用いて、それぞれのインソールに適した足長を有する被験者を対象として歩行実験を行い、インソールに対する官能試験を行った。その結果、いずれのインソールも、従来のインソールと比較して歩行性や衝撃緩和性に優れていることが認められた。なお、詳細は後述する。
【0029】
インソール10は、加速度センサを用いた錘落下試験において、変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率が50%以上である。錘落下試験は、例えば、加速度センサを備えた落下衝撃試験機を用いて実施することができる。例えば、まずインソール10をアーチ形状部10bの頂部を上にして、2つの支点上に配置する。2つの支点は、接地面上に間隔を空けて接地された2つの支持具がインソール10の中足部10cおよび後足部10aをそれぞれ支持することにより形成されている。2つの支持具は、いずれもたとえば直径15mmの円柱状であり、それぞれの軸方向がインソール10の長手方向に垂直な方向に延びて、かつ、当該長手方向においてアーチ形状部10bを挟むように間隔を空けて配置される。このとき、インソール10の長手方向における2つの支点間距離は、該長手方向におけるアーチ形状部10bの長さ程度とすればよく、たとえば、110mm程度である。そして、アーチ形状部10bの頂部に向けて、接地面に対して垂直な方向から(上方から)加速度センサが取り付けられた質量3.4kgの落錘を落下させる。このときの落錘の落下開始位置は、インソール10の上面からの高さが30mmの位置である。落錘をインソール10上に落下させて落錘とインソール10との衝突後の落錘の加速度と落錘の鉛直方向の沈み込み量(インソール10の鉛直方向の変位)を測定することにより、変形エネルギーと回復エネルギーとを算出してもよい。ここで、変形エネルギーとは、落錘の鉛直方向の沈み込み量(インソール10の変位)が最大となるまでに落錘からインソール10に与えられるエネルギーであり、落錘の沈み込み量(単位:mm)が最大となるまでの落錘の加速度(単位:m/s
2)を落錘の沈み込み量(単位:mm)で積分したときの積分値に比例する。一方、回復エネルギーとは、落錘の鉛直方向の沈み込み量(インソール10の変位)が最大となった後、インソール10から落錘に与えられるエネルギーであり、落錘の沈み込み量(単位:mm)が最大となった後の落錘の加速度(単位:m/s
2)を落錘の沈み込み量(単位:mm)で積分したときの積分値に比例する。横軸に落錘の沈み込み量(単位:mm)を、縦軸に落錘の加速度(単位:m/s
2)を表わした測定結果を示すグラフ(
図11参照)においては、測定結果はヒステリシス曲線を示し、変形エネルギーは縦軸の正側に位置する該ヒステリシス曲線と横軸とに囲まれる面積を表わし、回復エネルギーは縦軸の負側に位置する該ヒステリシス曲線と横軸とに囲まれる面積を表している。
【0030】
インソール10は、変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率が50%以上であるため、アーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地されたときに当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向から加えられる荷重を、50%以上の高い効率で反発力に変換することができる。そのため、インソール10の着用者は、歩行もしくは走行時において足を蹴り出す際に、足のアーチ部の形状が変形することにより生じる反発力を推進力とすることができると同時に、インソール10に加えられた変形エネルギーの50%以上が回復エネルギーとして足に与えられるため、より強い推進力を得ることができる。なお、インソール10の変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率は、板ばね部材2の質量に対する炭素繊維および/またはガラス繊維の質量の比率に依存する。該質量の比率を上述のように15%以上70%以下とすることにより、インソール10の変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率を50%以上とすることができる。また、板ばね部材2の質量に対する炭素繊維および/またはガラス繊維の質量の比率を増すことにより、インソール10の変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率をさらに高めることができる。
【0031】
インソール10を備えた靴を着用者が履いた場合、以下のように作用する。着用者が、インソール10を備えた靴を履いた状態でイスなどに座っている場合、着用者の踵、拇指球および小指球等は、クッション部1、板ばね部材2、カバー部3、および靴底を介して接地している。このとき、着用者の足裏のアーチ部とクッション部1のアーチ形状部1bとの間には微小な隙間が形成され得る。また、カバー部3のアーチ形状部3bと靴底との間には、足裏のアーチ部とアーチ形状部1bとの隙間よりも大きい隙間が形成されていてもよい。また、両足で直立している場合は、上記隙間は、イスなどに座っている場合よりもさらに小さくなる。
【0032】
一方、インソール10が内部に配置された靴を着用者が履いた状態で歩行もしくは走行しているときには、着用者の足裏に加えられる荷重は変化する。たとえば、一方の足が着地して片足立ちしている場合、当該一方の足の舟状骨は着用者がイスなどに座っている状態(足に体重があまり加わっていない状態)にあるときと比べて沈み込み、着用者の足裏のアーチ部は扁平な形状に変形する。
【0033】
また、座位時に対する両足静止立位時の舟状骨の沈み込み量は足長のおよそ3.9%であることを本願発明者らは確認している(詳細は後述する)。さらに、歩行もしくは走行時には両足静止立位時よりも片足により多くの荷重(体重)が加えられるため、歩行もしくは走行時の舟状骨の沈み込み量は足長のおよそ3.9%以上であると本願発明者らは見込んでいる(詳細は後述する)。上述のように、本実施の形態に係るインソール10は、接地面に対するアーチ形状部3bの頂部の下面の高さHがインソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さL(足長に対応する)の3.9%以上6%以下である(6%以下とした理由は後述する。)。さらに、インソール10は、インソール10における板ばね部材2の頂部に向けて接地面に垂直な方向から所定の荷重Fを加えることにより当該高さHだけ変形可能に設けられている。そのため、舟状骨が足長のおよそ3.9%沈み込み9.8×(3000L
3+20.5)/2(N)程度、すなわち体重の半分の荷重Fが片足に加えられる両足静止立位時においては、インソール10のアーチ形状部10bはその下面が接地面に接触せずに沈み込んでいる。つまり、この状態では、アーチ形状部10bは着用者の足裏のアーチ部と当接して支持している。さらに、歩行もしくは走行時には、片足に9.8×(3000L
3+20.5)N以上の荷重Fが加えられるため、舟状骨は両足静止立位時よりもさらに沈み込もうとする。このとき、インソール10は接地面に対するアーチ形状部3bの頂部の下面の高さHがインソール10(クッション部1)の長手方向の標準長さL(足長に対応する)の3.9%以上に設けられているため、アーチ形状部10bは両足静止立位時よりもさらに沈み込むことができる。その結果、インソール10は、着用者が歩行もしくは走行時においても足裏のアーチ部を支持することができる。また、インソール10の板ばね部材2により着用者の当該片足のアーチ部に加えられる反発力は蹴り出し時に最大値を示すため、当該片足を蹴り出す際に、反発力を推進力として利用することができる。
【0034】
本願の発明者らは、足のアーチ部の機能を補助することができるインソール10を発明するに際し、アーチ部について以下のような知見を得た。
【0035】
図6および
図7を参照して、本願の発明者らは、有限要素法(Finite Element Method)モデル(H model(ESI,Inc)に基づいて足のアーチ部の形状変化を解析した。具体的には、剛体上に足長が277mmの足が置かれている状態において、
図6における矢印方向(脛骨に対して鉛直下向き)に荷重を加えたときの、当該印加荷重に対する舟状骨の変位(沈み込み)量を導出した。
図7を参照して、舟状骨Aはアーチ部の頂部を形成する骨である。また、舟状骨Aの変位(沈み込み)量は、舟状骨の鉛直方向における高さH2の変位量として解析した。ここで、高さH2は、地面から舟状骨Aの中央部までの距離である。
【0036】
図8は解析結果を示したグラフであり、横軸は印加荷重(単位:N)を、縦軸は舟状骨の変位量(単位:mm)を表している。
図8からわかるように、印加荷重と舟状骨の変位(沈み込み)量とは比例することを確認した。ここで、舟状骨の変位(沈み込み)量を、体重に相当する印加荷重ではなく足長との関係に基づいて規定するために、体重が足長の3乗に比例すると仮定して体重と足長の近似式を求めた。
図9は、足長が200mmから287mmの被験者857名の体重と足長との相関を示すグラフであり、横軸に被験者の足長の3乗(mm
3)、縦軸に被験者の体重(kg)を表している。
【0037】
図9に示すデータから、体重と足長との関係式を近似式として求めた。このようにして、足長に対して舟状骨の沈み込み量を見積もるための近似式を求めた。例えば、足長が277mmである人の体重を上記
図9に示した近似式に基づき84.4kgと見込む。そして、この体重を
図8の荷重(827.6N)と考えると、無負荷の状態に対する両足静止立位時の舟状骨の沈み込み量は、11mmであることが算出された。つまり、両足静止立位時において、足のアーチ部は足長の3.9%程度変位することが確認された。さらに、歩行もしくは走行時において、足のアーチ部には両足静止立位時よりも大きい荷重が加えられるため、足長の3.9%以上程度変位することが見込まれた。また、足長の6.0%以下とすることで、インソール10を靴に装着したときに着用者に違和感を与えず、足へのフィット感を良好に保つことができることが確認された。
【0038】
本願の発明者らは、上記の知見に基づいて、形状や特性の異なるインソールを試作し、さらに、市販のインソールを含めて官能試験を実施することにより、足のアーチ部の機能を補助することに適したインソールの形状や特性を評価した。以下、官能試験の結果について説明する。
【0039】
(試料)
まず、インソールの長手方向の標準長さがいずれも
0.27mであって、形状および材料が異なる10種のインソールを準備した。具体的には、インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さと、板ばね部材の縦弾性率Eとが異なる実施例1〜実施例8、比較例1および比較例2に係るインソールを準備した。さらに、市販のインソールを比較例3および比較例4として準備した。さらに、各インソールについて、インソールの長手方向の長さを
0.27mとした。
【0040】
(実施例1〜実施例8)
インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さが、インソールの長手方向の標準長さ(
0.27m)に対して4%以上6%以下の範囲となるように試料を準備した。また、板ばね部材の厚みや板ばね部材における板ばね部材を構成する繊維強化樹脂の質量の比率が異なる板ばね部材を準備することにより、板ばね部材の縦弾性率Eが異なるインソールを準備した。たとえば
、実施例1に係るインソールは、厚みが厚く、かつ繊維強化樹脂の質量の比率が低い板ばね部材を備えているため、剛性が高いが反発性が低くなっている。
【0041】
(比較例1)
インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さが、インソールの長手方向の標準長さ(
0.27m)に対して5.3%となるように準備した。また、板ばね部材の厚みを厚くすることにより、剛性が高く、かつ高い反発性を有するインソールとした。
【0042】
(比較例2)
インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さが、インソールの長手方向の標準長さ(
0.27m)に対して7%となるように準備した。板ばね部材の縦弾性率Eは実施例1〜8に係るインソールと同等程度とした。
【0043】
(比較例3および比較例4)
比較例3として、市販されている、ミズノ(株)製アーチハンモックインソールを準備した。また、比較例4として、市販されている、アーチ部が繊維強化樹脂で構成された高機能インソールを準備した。
【0044】
(実験1:静荷重試験)
オートグラフ(島津製作所(株)製AG−5000D。ロードセルの定格容量:5kN)を用いて、荷重と変形量との関係を測定した。具体的には、各試料につき、アーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地した状態とし、当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向からロードセルにより荷重を加え、アーチ形状部の頂部の下面の沈み込み量を測定した。測定は、アーチ形状部の頂部の下面が接地面に接触するまで実施した。ロードセルにて荷重を加えるときの圧子が降下する速度を変位速度(荷重速度)とし、これを10mm/minとした。
【0045】
(実験2:反発性試験)
加速度センサを備えた落下衝撃試験機を用いて、試料(インソール)のアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地した状態とし、当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向から、加速度センサが取り付けられた落錘を落下させた。落錘の落下開始位置は、インソール10の上面からの高さが30mmの位置とした。このとき、落錘とインソール10との衝突後の落錘の加速度と落錘の変位を測定した。落錘の質量は3.4kgとした。
【0046】
(実験3:官能試験)
体重が79.5kg±3%の範囲内にある5名の被験者に対し、実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例4に係るインソールを備えた靴を履いて歩行動作することによって官能試験を実施した。評価項目は、クッション性、サポート感、踏み込み時の反発感、違和感、および靴全体のフィット感の5つとした。ここで、クッション性とは、足に対する衝撃緩和性であり、着地時の衝撃を充分に緩和できているかを評価したものである。サポート感とは、被験者の足裏のアーチ部を支える力、すなわち反力を感じるかを評価したものである。蹴り出し時の反発感とは、蹴り出し時においてインソールから足に与えられる反発力が歩行時において適当な範囲内であり、スムーズな歩行動作が可能であるかを評価したものである。違和感とは、歩行動作における痛みの有無を評価したものである。靴全体のフィット感とは、足と靴との隙間が窮屈すぎず、また緩すぎないと感じるかを評価したものである。なお、本試験は、ミズノ製ウォーキングシューズLD40IIに各インソールを装着して行った。
【0047】
(結果)
実験1の結果を
図10に示す。また、実験2のうち代表的な結果を
図11に示す。
図10において、横軸はアーチ形状部の頂部の下面の沈み込み量(mm)を、縦軸はアーチ形状部10bの頂部を上にして接地面に接地した状態で当該頂部に向けて接地面に対して垂直な方向から加えた荷重(N)を表している。
図11において、横軸は落錘がインソールに衝突したときの位置からの鉛直方向の沈み込み量(mm)を、縦軸は落錘の加速度(m/s
2)を表している。さらに、実験1〜3の結果を表1に示す。なお、表中の、インソールに荷重を加えたときに変形可能な最大変形量とは、インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面にインソールを接地したときの、無負荷の状態における接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さに等しい。また、官能試験は、5名の被験者が各項目について10点満点で評価した点数の平均値が8点以上であれば◎、6以上8未満であれば○、4以上6未満であれば△、2以上4未満であれば×,0以上2未満であれば××,とする5段階評価とした。
【0049】
実験1〜実験3の結果、インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さがインソールの長手方向の長さの3.9%以上6%以下であり、かつ、アーチ形状部の頂部の下面を接地面に接触させるのに必要な荷重(表中の最大荷重)が117N以上389N以下の範囲内である実施例1〜実施例8に係るインソールは、クッション性およびサポート感に優れていることが確認できた。さらに、これらの評価項目に対して相反することも懸念される違和感や靴全体のフィット感も良好であった。なお、実施例1に係るインソールは、反発性が十分ではないものの、サポート感が適正でありクッション性に優れていたことから、総合評価として足のアーチ部の機能を補助できていることが確認できた。
【0050】
一方、インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さHがインソールの長手方向の長さの4%以上6%以下であること、および、アーチ形状部の頂部の下面を接地面に接触させるのに必要な荷重(表中の最大荷重)が117N以上389N以下の範囲内であることの少なくともいずれかを満たさない比較例1〜比較例4に係るインソールは、官能試験において良好な結果を得ることができず、足のアーチ部の機能を充分に補助することが出来ていないと考えられる。
【0051】
インソールのアーチ形状部の頂部を上にして接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さHについては、比較例4の結果から、当該高さHがインソールの長手方向の長さの3%程度である場合に、アーチ形状部の頂部の下面を接地面に接触させるのに必要な荷重も小さくなり、クッション性、サポート感、および反発感が充分に得られないことが確認された。また、実施例7の結果から、インソールの長手方向の長さの4%程度である場合には、官能試験の全評価項目について良好な特性を有することが確認できた。一方、比較例2の結果から、当該高さHがインソールの長手方向の長さの7%程度である場合には、アーチ形状部の頂部が高すぎると感じられることが確認された。また、実施例8の結果から、当該高さHがインソールの長手方向の長さの6%程度である場合には、アーチ形状部の頂部がやや高いと感じられるものの、他の評価項目については良好な特性を有することが確認できた。さらに、実施例2〜実施例6の結果から、当該高さHがインソールの長手方向の長さの5%前後とした場合には、官能試験の各評価項目について良好な特性を有することが確認できた。
【0052】
なお、比較例3の結果から、インソールのアーチ形状部の頂部を上にしてインソールを接地面に接地したときの接地面からアーチ形状部の頂部の下面までの高さHがインソールの長手方向の長さの5.1%程度とした場合であっても、アーチ形状部の頂部の下面を接地面に接触させるのに必要な荷重(表中の最大荷重)が77.1Nと低い場合には、クッション性、サポート感および反発感が充分に得られないことが確認された。
【0053】
アーチ形状部の頂部の下面を接地面に接触させるのに必要な荷重(表中の最大荷重)については、比較例1の結果から、440N程度である場合には、足のアーチ部の形状変化がインソールによって妨げられるため、着用者は強い違和感を覚えることが確認された。また、上述のように、比較例3の結果から、最大荷重が77.1Nである場合にはクッション性、サポート感および反発感が充分に得られないことが確認された。
【0054】
また、足長225mm程度の被験者に対して、上述した実施の形態に係る長手方向の長さを
0.225mとしたインソールの官能試験を、上記官能試験と同様に行ったところ、良好な結果を得ることができた。
【0055】
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0056】
本発明に従ったインソール10は、板ばね部材2と板ばね部材2と積層しているクッション部1とを備えたインソールである。上記板ばね部材2は、長手方向に延びるアーチ形状を有しており、アーチ形状の頂部を上にしてインソール10の底面を接地面に接地させた状態で、インソール10における板ばね部材2の頂部に向けて接地面に垂直な方向から荷重を加えることにより、インソール10の底面において頂部と重なる領域が無負荷の状態から接地面に接触するまで移動する移動距離は、クッション部1の長手方向の標準長さLの3.9%以上6%以下である。さらに、上記インソール10の底面において頂部と重なる領域が無負荷の状態から接地面に接触するまで変形するときの荷重の最大値Fは、0.15×9.8×(3000L
3+20.5)≦F≦0.50×9.8×(3000L
3+20.5)という条件を満足する。
【0057】
このようにすることで、インソール10のアーチ形状部10bは、足のアーチ部の形状の変化に対して抵抗力を与えながらも、一定の荷重が加えられた場合には当該変化を妨げることなく足のアーチ部と同じように変形することができる。具体的には、両足静止立位時においては、クッション部1(インソール10)の長手方向の標準長さLに対して9.8×(3000L
3+20.5)/2N程度の荷重が片足に加えられる。このとき,着用者の舟状骨は足長のおよそ3.9%沈み込む。インソール10のアーチ形状部10bは、舟状骨の沈み込みを阻害せず、かつその頂部の下面が接地面に接触しないように設けられている。さらに、歩行もしくは走行時においては、舟状骨は9.8×(3000L
3+20.5)/2以上の荷重が片足に加えられる。このとき,足長のおよそ3.9%以上沈み込む。このとき、インソール10のアーチ形状部3bの頂部の下面が接地面に接触するまで変形可能に作られている.これにより、インソール10のアーチ形状部10bは、歩行もしくは走行動作中においてアーチ部の変形を妨げることなく変形することができる。また、アーチ形状部10bの頂部の下面を接地面に接触するまで支持する荷重を、0.15×9.8×(3000L
3+20.5)≦F≦0.50×9.8×(3000L
3+20.5)とすることにより、インソール10のアーチ形状部10bは、足のアーチ部の形状の変化に対して抵抗力を与えながら、歩行もしくは走行動作中においてインソール10に加えられる荷重により充分に変形することができるため, 着地時の衝撃を充分に緩和することができる。足のアーチ部の変形に対する適正な抵抗力を有することにより、該アーチ部を支持することができ、歩行時における該アーチ部の付近の筋肉や腱への負担を軽減させることができる。さらに、片足に全体重が加わったときに(9.8×(3000L
3+20.5)程度の荷重が片足に加えられたときに)、インソール10の板ばね部材2は最も変形する。このとき、インソール10に蓄えられた変形エネルギーは最大値を示す。その結果、歩行時に当該片足を蹴り出す際に、反発力を推進力として利用することができる。このようにして、本発明に従うインソール10は、足のアーチ部の機能を充分に補助することができる。また、インソール10の底面において頂部と重なる領域が無負荷の状態から接地面に接触するまで移動する移動距離を、クッション部1の長手方向の標準長さLの6%以下とすることにより、インソール10を靴に装着したときに着用者に違和感を与えず、足へのフィット感を良好に保つことができる。
【0058】
本発明に従うインソール10は、加速度センサを用いた錘落下試験において、変形エネルギーに対する回復エネルギーの比率が50%以上であってもよい。
【0059】
このようにすることで、インソール10のアーチ形状部10bに加えられた荷重を50%以上の高い効率で反発力に変換することができる。そのため、インソール10の着用者は、歩行もしくは走行時において足を蹴り出す際に、足のアーチ部の形状が変形することにより生じる反発力を推進力とすることができると同時に、インソール10に加えられた変形エネルギーの50%以上が回復エネルギーとして足に与えられるため、より強い推進力を得ることができる。
【0060】
上記板ばね部材2は、長手方向の縦弾性率Eが9GPa以上であり、縦弾性率Eと、アーチ形状部2aの頂部における長手方向に延びる断面の断面2次モーメントIとの積EIが2.5×10
−2Nm
2以上であってもよい。
【0061】
これにより、板ばね部材2のアーチ形状部2aの剛性を保ちながら、足のアーチ部の形状変化に対する抵抗力を生むことができるとともに、アーチ形状部2aが変形されたときには充分な反発力を生じることができる。
【0062】
上記板ばね部材2は炭素繊維を含む繊維強化樹脂からなり、板ばね部材2の質量に対する炭素繊維の質量の比率は15%以上としてもよい。
【0063】
上記板ばね部材2はガラス繊維を含む繊維強化樹脂からなり、板ばね部材2の質量に対するガラス繊維の質量の比率は30%以上としてもよい。
【0064】
これにより、板ばね部材2を高剛性として、アーチ形状部2aの変形に対して充分な抵抗力と反発力を生じることができると同時に、板ばね部材2を軽量化することができる。その結果、インソール10を軽量化することができるため、長時間の立ち姿勢や歩行時においても疲れにくいインソール10を提供することができる。
【0065】
上記板ばね部材2は、長手方向の縦弾性率Eが、長手方向に垂直な足幅方向の縦弾性率E2に対して2倍以上3倍以下としてもよい。
【0066】
つまり、板ばね部材2のアーチ形状部2aの剛性を保つのに必要な程度の長手方向の弾性率Eを維持しながら、長手方向に垂直な足幅方向の縦弾性率E2は、割れ等の不具合が生じない程度の必要最低限の品質確保のために要求される程度におさえてもよい。このようにすれば、板ばね部材2をさらに軽量化することができる。
【0067】
上記板ばね部材2とクッション部1とは着脱可能としてもよい。
これにより、高い剛性を有する板ばね部材2に対して、低剛性であって消耗品である、クッション部材1を交換することができる。
【0068】
上記板ばね部材2に対してクッション部1と反対側に配置されたカバー部3をさらに備えてもよい。
【0069】
このようにすれば、板ばね部材2は着用者の足裏と接触可能に構成されているクッション部1よりも接地面側にカバー部3によって固定される。そのため、板ばね部材2は着用者の足裏と直接接触することがないため、着地の際に足に対して加えられる衝撃をクッション部1により効果的に緩和することができる。また、カバー部3によって板ばね部材2はクッション部1に対して位置ずれを抑制することができる。また、クッション部1が靴に合わせて設けられていれば、板ばね部材2は靴に対しても位置ずれを抑制することができる。
【0070】
上記カバー部3はクッション部1および/または板ばね部材2と着脱可能としてもよい。
【0071】
これにより、たとえば、クッション部1が着用者の足裏との摩擦等によって擦り減って交換が必要となった場合にも、クッション部1のみを交換して剛性が高く耐久性の高い板ばね部材2を使い回すことができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。