(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱線遮蔽顔料(C)は、スズドープ酸化インジウム顔料、アンチモンドープ酸化スズ顔料、六ホウ化ランタン顔料、及び、酸化亜鉛顔料からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のフッ素樹脂組成物。
紫外線吸収剤(D)は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及び、クマリン系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2又は3記載のフッ素樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水酸基価が30〜200mgKOH/gである水酸基含有含フッ素共重合体(A)、アクリル系共重合体(B)、平均粒子径が1〜200nmである熱線遮蔽顔料(C)、紫外線吸収剤(D)、シランカップリング剤(E)、コロイダルシリカ(F)、及び、有機溶剤(G)を含む。
このため、耐熱密着性、耐寒密着性、耐水性に優れ、かつ、表面硬度及び透明性が高い塗膜を作成することができる。
本発明のフッ素樹脂組成物を構成する各成分について、以下に説明する。
【0015】
(A)水酸基含有含フッ素共重合体
本発明のフッ素樹脂組成物は、水酸基価が30〜200mgKOH/gである水酸基含有含フッ素共重合体(A)を含むことにより、耐候性、耐湿性、耐熱性及び絶縁性に優れた塗膜を形成することができる。
【0016】
上記水酸基価は、得られる塗膜の耐水性や密着性が向上する点で、35mgKOH/g以上が好ましく、40mgKOH/g以上がより好ましい。また、溶剤溶解性、密着性が向上する点で、150mgKOH/g以下が好ましい。
上記水酸基価は、JIS K 0070に準拠する方法により測定して得られる値である。
【0017】
上記水酸基含有含フッ素共重合体は、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましい。
【0018】
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類が好ましく、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0019】
他の水酸基含有単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等が例示できる。
【0020】
含フッ素単量体、すなわち、上記水酸基が導入される含フッ素ポリマーを形成するための単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、及び、フルオロビニルエーテルを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、テトラフルオロエチレンであることがより好ましい。
【0021】
上記水酸基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、例えば次のものが例示できる。
【0022】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、または、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等との共重合体、更にはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0023】
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテル等のフッ素系単量体等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0024】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0025】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、例えばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等があげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が好ましい。
【0026】
TFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えば、ダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズ等が例示できる。
【0027】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:
具体例としては、例えば、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0028】
CTFE系の塗料用硬化性ポリマー組成物としては、例えば旭硝子(株)製のルミフロン、DIC(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亜合成(株)製のザフロン等が例示できる。
【0029】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:
具体例としては、例えばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
【0030】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:
具体例としては、例えばCF
3CF
2(CF
2CF
2)
nCH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、例えばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニール等が例示できる。
【0031】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0032】
上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)は、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
【0033】
上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)は、数平均分子量が5万以下であることが好ましい。上記数平均分子量は、小さすぎると得られる塗膜の硬度が不充分となり、大きすぎると塗料組成物の粘度が高くなり、塗膜外観が悪くなる点で、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。また、3万以下であることがより好ましく、2万以下であることが更に好ましい。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算にて得られる値である。
【0034】
上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)の含有量は、フッ素樹脂組成物中の不揮発分の総量100質量%に対し、20〜90質量%であることが好ましい。
【0035】
(B)アクリル系共重合体
本発明のフッ素樹脂組成物は、アクリル系共重合体(B)を含むことにより、得られる塗膜の硬度が高くなり、仕上がり外観が良好になる。
上記アクリル系共重合体(B)は、上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)と相溶することが好ましい。
上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)と相溶するとは、混合性がよく、分離せず、かつ、塗膜の透明性が著しく損なわれないことをいう。
上記アクリル系共重合体(B)は、フッ素原子を含まないことが好ましい。
【0036】
アクリル系共重合体としては、従来より塗料用に使用されているものが挙げられるが、なかでも、(i)(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステルの単独重合体または共重合体、ならびに、(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
上記(i)のアクリル系重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸モノマーの単独又は共重合体、あるいはこれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられる。
【0038】
なかでも、上記水酸基含有含フッ素共重合体(A)との相溶性に優れる点で、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの単独及び共重合体、ならびに、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が好ましい。
【0039】
上記共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0040】
上記(ii)のアクリル系重合体としては、上記(i)で説明した(メタ)アクリル酸モノマーと共に、硬化性官能基を有する単量体を共重合したものが挙げられる。
上記硬化性官能基を有する単量体としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などを有する単量体が挙げられる。
【0041】
上記(ii)のアクリル系重合体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレートなどの硬化性官能基を有する単量体と、上記(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステルとの共重合体、または、これらと上記エチレン性不飽和単量体との共重合体が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0042】
上記(i)及び(ii)のアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステルの含有量が、溶剤溶解性、耐候性、耐水性、耐薬品性、硬さ、フッ素樹脂との相溶性に優れる点で、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、密着性、耐候性、耐薬品性などに優れる点から、98質量%以下が好ましく、特に96質量%以下とするのが好ましい。
【0043】
とりわけ、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステルとしてt−ブチル(メタ)アクリレートを用いる場合、t−ブチル(メタ)アクリレートの含有量は、溶剤溶解性、耐候性、密着性、硬さ、フッ素樹脂との相溶性、耐水性、耐薬品性に優れることから、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、フッ素樹脂との相溶性、可とう性などの点から、98質量%以下が好ましく、特に95質量%以下が好ましい。
【0044】
この場合、併用される好ましい共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、溶剤溶解性、耐薬品性、密着性などに優れる点から、例えば、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0045】
また、この場合に併用される硬化性官能基を有する単量体としては、密着性、耐薬品性、硬化性などに優れる点から、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などを有する単量体があげられる。具体例としては、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレートなどの硬化性官能基含有単量体が好ましい。
【0046】
硬化性官能基を有する単量体の含有量は、耐水性、溶剤溶解性、耐薬品性、耐候性、フッ素樹脂との相溶性、密着性などの点で優れることから、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、耐水性、耐薬品性、密着性、耐候性などの点から2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。
【0047】
アクリル系重合体(i)の市販品としては、例えば、ヒタロイド1005、ヒタロイド1206、ヒタロイド2330−60、ヒタロイド4001、ヒタロイド1628Aなど(いずれも日立化成工業社製、商品名);ダイヤナールLR−1065、ダイヤナールLR−90、ダイヤナールLR−620、ダイヤナールLR−660、ダイヤナールLR−670など(いずれも三菱レイヨン社製、商品名);パラロイドB−44、パラロイドB−66、パラロイドA−21、パラロイドB−82など(いずれもローム&ハース社製、商品名);ELVACITE 2000など(デュポン社製、商品名)などが挙げられる。
【0048】
アクリル系共重合体(ii)の市販品としては、ヒタロイド3004、ヒタロイド3018、ヒタロイド3046C、ヒタロイド6500B、ヒタロイド6500など(いずれも日立化成工業社製、商品名);アクリディックA810−45、アクリディックA814、アクリディック47−540など(いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名);ダイヤナールLR−620、ダイヤナールLR−660、ダイヤナールLR−670、ダイヤナールSS−1084、ダイヤナールSS−792など(いずれも三菱レイヨン社製、商品名);オレスターQ166、オレスターQ185など(いずれも三井東圧化学社製、商品名);ハリアクロン8360G−55、ハリアクロン8360HS−130、ハリアクロン8160(いずれもハリマ化成社製、商品名)などがある。
【0049】
上記アクリル系共重合体(B)は、数平均分子量が1000〜200000であることが好ましい。1000未満であると耐候性が低下するおそれがあり、200000を超えると、溶剤溶解性が低下するおそれがある。
上記数平均分子量は、2000以上がより好ましく、100000以下がより好ましい。
上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定して得られる値である。
【0050】
上記アクリル系共重合体(B)は、水酸基価が0〜200mgKOH/gであることが好ましい。得られる塗膜の耐水性や密着性が向上する点で、30mgKOH/g以上がより好ましく、40mgKOH/g以上が更に好ましく、50mgKOH/g以上が特に好ましい。また、溶剤溶解性や得られる塗膜の密着性が良好となる点で、150mgKOH/g以下が好ましい。
上記水酸基価は、JIS K 0070に準拠する方法により測定して得られる値である。
【0051】
上記アクリル系共重合体(B)は、ガラス転移温度(Tg)が20〜110℃であることが好ましい。得られる塗膜の硬度が高くなる点で、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
上記ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により求めるガラス転移温度(2nd run)の方法により測定して得られる値である。
【0052】
上記アクリル系共重合体(B)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して、固形分で10〜90質量%が好ましい。得られる塗膜の硬度及び密着性が向上する点で、20〜50質量%がより好ましい。
【0053】
(C)熱線遮蔽顔料
本発明のフッ素樹脂組成物は、熱線遮蔽顔料(C)を含むことにより、有効に赤外線を遮蔽し、透明性が良好な塗膜を形成することができる。
熱線遮蔽顔料(C)としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)顔料、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)顔料、六ホウ化ランタン(LaB
6)顔料、及び、酸化亜鉛顔料からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記酸化亜鉛顔料は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、ホウ素、スカンジウム及びタリウム等のドーパントを含有してもよい。
なかでも、上記熱線遮蔽顔料(C)としては、高効率で赤外線、近赤外線及び遠赤外線を遮蔽できる点で、スズドープ酸化インジウム(ITO)顔料、及び、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)顔料からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
上記熱線遮蔽顔料(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記熱線遮蔽顔料(C)は、平均粒子径が1〜200nmである。上記平均粒子径は、一定の遮蔽性、透明性を得るため、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。
上記平均粒子径は、顔料分散液をアセトンで希釈し、固形分濃度を0.01〜1.0質量%程度とした後、動的光散乱法粒度分析計のレーザー光散乱法により測定して得られる値である。
【0055】
上記熱線遮蔽顔料(C)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して、固形分で5〜70質量%であることが好ましい。高効率で赤外線、近赤外線及び遠赤外線を遮蔽できる点で、上記含有量は、10質量%以上がより好ましい。また、可視光の透過率が高い点で、50質量%以下がより好ましい。
【0056】
(D)紫外線吸収剤
本発明のフッ素樹脂組成物は、紫外線吸収剤(D)を含むことにより、耐候性、人体に有害な紫外線の遮蔽に優れた塗膜を形成することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、修酸アニリド系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミ、酸化鉄、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤などが挙げられる。
なかでも、得られる塗膜の紫外線遮蔽性が高くなる点で、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及び、クマリン系紫外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0057】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0058】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゼンプロパン酸3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−9側鎖および直鎖アルキルエステル(チヌビン384−2:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸イソオクチル(チヌビン384:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(チヌビン328:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(1,1−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(チヌビン900:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−[2−ヒドロキシ−3−(1,1−ジメチルベンジル)−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(チヌビン928:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸メチル/ポリエチレングリコール300の縮合物(チヌビン1130:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0059】
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(チヌビン400:商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−(4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、チヌビン479(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0060】
上記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート(Uvinul 3039:商品名、BASF社製)等が挙げられる。
【0061】
上記クマリン系紫外線吸収剤としては、例えば、3−フェニル−7−(4’−メチル−5’−n−ブトキシベンゾトリアゾリル−2−)クマリン等が挙げられる。
【0062】
なかでも、上記紫外線吸収剤(D)としては、透明性及び紫外線遮蔽性が高い塗膜が形成できる点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
上記紫外線吸収剤(D)は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記紫外線吸収剤(D)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して、固形分で0.1〜10質量%であることが好ましい。上記含有量は、1質量%以上がより好ましく、8質量%以下がより好ましい。
上記紫外線吸収剤(D)の含有量は、2種以上含む場合、それらの合計量である。
【0064】
(E)シランカップリング剤
本発明のフッ素樹脂組成物は、シランカップリング剤(E)を含むことにより、高い表面硬度を有する塗膜を形成することができる。
シランカップリング剤(E)としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、又は、(メタ)アクリレート基を含有したシランカップリング剤が挙げられ、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、OCNC
3H
6Si(OCH
3)
3、OCNC
3H
6Si(OC
2H
5)
3等が挙げられる。
なかでも、密着性及び相溶性が良好である点で、OCNC
3H
6Si(OCH
3)
3が好ましい。
上記シランカップリング剤(E)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記シランカップリング剤(E)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して、固形分で0.1〜30質量%であることが好ましい。上記含有量は、密着性がより高くなる点で、5.0質量%以上がより好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0066】
(F)コロイダルシリカ
本発明のフッ素樹脂組成物は、コロイダルシリカ(F)を含むことにより、得られる塗膜の透明性及び硬度を向上させることができる。
【0067】
コロイダルシリカ(F)は、平均粒子径が1〜200nmであることが好ましい。
平均粒子径は、塗料の分散安定性や、得られる塗膜の硬度が良好となる点で、5nm以上が好ましい。また、透明性が良好となる点で、100nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。
上記平均粒子径は、コロイダルシリカ溶液をアセトンで希釈し、固形分濃度を0.01〜1.0質量%程度とした後、動的光散乱法粒度分析計のレーザー光散乱法により測定して得られる値である。
【0068】
上記コロイダルシリカ(F)としては、例えば、オルガノゾルIPA−ST、MEK−ST、MEK−AC−22(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0069】
コロイダルシリカ(F)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して、固形分で1.0〜12質量%であることが好ましい。コロイダルシリカ(F)の含有量は、得られる塗膜の表面硬度が高くなり、かつ、透過性が良好となる点で、2.0質量%以上がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0070】
(G)有機溶剤
本発明のフッ素樹脂組成物に使用する有機溶剤(G)としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
なかでも、エステル類が好ましい。
【0071】
(H)硬化剤
本発明のフッ素樹脂組成物は、硬化剤(H)を含んでいてもよい。
上記硬化剤(H)としては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。
【0072】
上記硬化剤(H)としては、中でも、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物、並びに、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0073】
硬化剤(H)として、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネート(以下、イソシアネート(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(I)ともいう。)を用いた場合、本発明の塗料組成物から得られる塗膜とガラスとの密着性が、より優れたものになる。
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネート(i)からなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、上記イソシアネート(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0074】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(1):
【0076】
(式中、R
1は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
2は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(1)中のR
1は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記R
2がフェニレン基である場合、1,2−フェニレン基(o−フェニレン基)、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)、及び、1,4−フェニレン基(p−フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3−フェニレン基(m−フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのR
2が同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記R
2がシクロヘキシレン基である場合、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、及び、1,4−シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3−シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのR
2が同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0077】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0079】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(3):
【0081】
(式中、R
2は、一般式(1)中のR
2と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0082】
上記ビウレットは、下記一般式(4):
【0084】
(式中、R
2は、一般式(1)中のR
2と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0085】
上記ポリイソシアネート化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0086】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、上記イソシアネート(i)と3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0087】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−キシリレンジイソシアネート)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−キシリレンジイソシアネート)が挙げられるが、中でも、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−キシリレンジイソシアネート)が好ましい。
【0088】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0089】
キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0090】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(5):
【0092】
(式中、R
3は、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表わされる化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネート及びビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネートと、トリメチロールプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
上記一般式(5)中のR
3で表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(1)におけるR
2について述べたとおりである。
【0093】
上記一般式(5)で表されるポリイソシアネート化合物の市販品としては、タケネートD110N(三井化学株式会社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネートD120N(三井化学株式会社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0094】
上記ポリイソシアネート化合物(I)が、イソシアヌレート構造体である場合の具体例としては、タケネートD121N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、NCO含有量14.0%)、タケネートD127N(三井化学株式会社製、H6XDIヌレート、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0095】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づくブロックイソシアネート(以下、単にブロックイソシアネートともいう。)を用いることにより、本発明のフッ素樹脂組成物が充分なポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネート化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0096】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(6):
【0098】
(式中、R
4は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(6)中のR
4は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0099】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0101】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、上記イソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(7):
【0104】
上記ビウレットは、下記一般式(8):
【0106】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0107】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0108】
このように、上記ブロックイソシアネートがヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコール類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることは、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0109】
上記ブロックイソシアネートを得るためのポリイソシアネート化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0110】
上記ポリイソシアネート化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトンオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジエチルピラゾール等のピラゾール化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0111】
上記ブロックイソシアネートの市販品としては、デュラネートK6000(旭化成ケミカルズ株式会社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネート)、デュラネートTPA−B80E(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ株式会社製)、デュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ株式会社製)、コロネート2507(日本ポリウレタン株式会社製)、コロネート2513(日本ポリウレタン株式会社製)、コロネート2515(日本ポリウレタン株式会社製)、スミジュールBL−3175(住化バイエルウレタン株式会社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0112】
硬化剤として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネート化合物(III)としては、ポリイソシアネート化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0113】
ポリイソシアネート化合物(III)の具体例としては、コロネートHX(日本ポリウレタン(株)製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュールN3300(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、タケネートD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体)、スミジュールN3800(住化バイエル社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体プレポリマータタイプ)等が挙げられる。
【0114】
硬化剤として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(以下、ポリイソシアネート化合物(IV)ともいう。)を用いることもできる。
【0115】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体(ヌレート構造体)、及び、イソホロンジイソシアネートからなるビウレットを挙げることができる。
【0116】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(9):
【0118】
(式中、R
5は、炭素数3〜20の脂肪族炭化水素基を表す。R
6は、下記一般式(10):
【0120】
で表される基である。kは、3〜20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(9)中のR
5は、上記3価以上の脂肪族多価アルコールに基づく炭化水素基であり、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、3価以上の脂肪族多価アルコールの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3〜10の整数であり、更に好ましくは3〜6の整数である。
【0121】
上記イソシアヌレート構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0123】
で表されるイソシアヌレート環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレート構造体としては、イソホロンジイソシアネートの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(11):
【0125】
(式中、R
6は、一般式(9)中のR
6と同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレート構造体は、イソホロンジイソシアネートの三量体であることが好ましい。
【0126】
上記ビウレットは、下記一般式(12):
【0128】
(式中、R
6は、一般式(9)中のR
6と同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレート構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネートを三量化することにより、得ることができる。
【0129】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネート化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネートと、3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0130】
上記ポリイソシアネート化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネートと3価以上の脂肪族多価アルコールとのアダクトである場合、該3価以上の脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセロール等の4価アルコール;アラビット、リビトール、キシリトール等の5価アルコール(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット等の6価アルコール(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
【0131】
イソホロンジイソシアネートと、上記のような3価以上の脂肪族多価アルコールと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0132】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(13):
【0134】
(式中、R
7は、下記一般式(10):
【0136】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネートとトリメチロールプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0137】
上記一般式(10)で表されるポリイソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネートD140N(三井化学株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0138】
イソホロンジイソシアネートからなるイソシアヌレート構造体の市販品としては、デスモジュールZ4470(住化バイエルウレタン株式会社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0139】
なかでも、上記硬化剤(H)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から誘導されるポリイソシアネート化合物(ポリイソシアネート化合物(III))がより好ましい。
【0140】
上記硬化剤(H)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体中の水酸基1当量に対して0.1〜5当量であることが好ましく、0.5〜1.5当量であることがより好ましい。
【0141】
本発明のフッ素樹脂組成物は、更に、レベリング剤(I)を含んでいてもよい。レベリング剤を含むことにより、塗膜表面が平滑になり外観が良好となったり、塗膜に傷がつきにくくなる。
レベリング剤(I)としては、例えば、シリコン系や、アクリルポリマー系の公知のものを挙げることができる。
【0142】
シリコン系レベリング剤としては、例えば、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。具体的には、ビックケミー社製のBYK−300、BYK−301、BYK−302、BYK−330、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322等、共栄社化学社製のポリフロー400X、401、402等、楠本化成社製のディスパロン1711EF、1751N、1761等が挙げられる。
【0143】
アクリル系レベリング剤としては、ビックケミー社製のBYK−350、BYK−361N、BYK−3440等、共栄社化学社製のポリフロー7、50E、75、95等、楠本化成社製のディスパロン1970、230、LF−1980、1982等が挙げられる。
【0144】
レベリング剤(I)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜3質量%であることがより好ましい。
【0145】
本発明のフッ素樹脂組成物は、更に、親水化剤(J)を含んでいてもよい。親水化剤を含むことにより、汚れを容易に流し落とすことができる塗膜を形成することができる。
親水化剤(J)としては、硬化塗膜の表面に偏在して水酸基を保持し得るものが挙げられ、具体的には、三菱化学社製MS−51、MS−56、ダイキン工業社製ゼッフルGH−701(含フッ素ポリシロキサン)等が挙げられる。
親水化剤(J)の含有量は、水酸基含有含フッ素共重合体(A)とアクリル系共重合体(B)の固形分質量合計に対して0.01〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0146】
本発明のフッ素樹脂組成物は、上述した成分以外に、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、顔料、沈降安定剤、硬化促進剤、消泡剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等を挙げることができる。
【0147】
本発明のフッ素樹脂組成物は、上述した(A)〜(G)の成分、並びに、必要に応じて(H)、(I)、(J)の成分及び他の成分を混合又は分散することにより調製することができる。上記混合及び分散は、特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うことができる。
本発明のフッ素樹脂組成物の固形分濃度は、特に限定されず、使用方法に応じて適宜調整するとよい。
【0148】
本発明のフッ素樹脂組成物は、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。ヘイズが2.0%を超えると、透明性が不充分となるおそれがある。上記ヘイズは、1.5%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズは、縦150mm、横70mm、厚み3mmのフロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)上に、本発明のフッ素樹脂組成物を用いて乾燥膜厚15μmの塗膜を形成したものを、ヘイズメーターで測定することにより得られる値である。
【0149】
本発明のフッ素樹脂組成物はまた、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。全光線透過率が70%未満であると、可視光の透過率が低下し、ガラスに塗膜を形成した場合、明るさが損なわれるおそれがある。上記全光線透過率は、80%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、縦150mm、横70mm、厚み3mmのフロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)上に、本発明のフッ素樹脂組成物を用いて乾燥膜厚15μmの塗膜を形成したものを、光線透過率計で測定することにより得られる値である。
【0150】
本発明のフッ素樹脂組成物を使用して塗膜を形成する方法としては、特に限定されないが、通常、基材上に本発明のフッ素樹脂組成物を塗装し、硬化させて塗膜を形成するとよい。
上記塗装は、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビアコート、流涎法による流し塗り、刷毛塗り、スポンジ塗り等が挙げられる。
上記硬化は、フッ素樹脂組成物の成分に応じて、乾燥、加熱又は放射線照射等から適宜選択して公知の方法で行うとよい。
【0151】
上記塗膜は、厚みが1〜50μmであることが好ましい。上記厚みは、透明性や、紫外線及び赤外線の遮蔽性に優れる点で、3μm以上がより好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。
【0152】
上記塗膜は、表面硬度が、JIS K5400.8.4(1kg荷重)による鉛筆硬度試験において、F以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましい。
【0153】
このように本発明のフッ素樹脂組成物は、特定の成分を含むものである。このため、耐熱密着性、耐寒密着性、耐水性に優れ、かつ、表面硬度及び透明性が高い塗膜を形成することができる。このような、本発明のフッ素樹脂組成物を用いて形成された塗膜もまた本発明の一つである。
【0154】
本発明のフッ素樹脂組成物を適用することができる基材としては、特に限定されないが、透明基材が好ましい。透明基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック基材や、ガラス、その他、透明性の要求される物品等が挙げられる。なかでも、特にガラスを基材として、本発明のフッ素樹脂組成物を用いて塗膜を用いた場合、耐熱密着性、耐寒密着性、耐水性に優れ、かつ、表面硬度及び透明性が高い塗膜を形成することができる。
このような、透明基材と、上記透明基材上に上述のフッ素樹脂組成物からなる塗膜とを有することを特徴とする物品もまた、本発明の一つである。
上記透明基材としては、ガラスが好ましい。
【0155】
本発明のフッ素樹脂組成物を用いて形成された塗膜を有するガラスは、窓ガラスとして好適に適用できる。上記窓ガラスは、塗膜が形成された面を屋外側に設置することができる。
また、本発明のフッ素樹脂組成物を建造物の窓ガラスに塗布して、上記塗膜を形成することもできる。上記塗膜は、窓ガラスの屋外側の面に形成することができる。この理由として、耐候性が高いことや、屋外に塗膜を設置した方が吸収した熱を屋外に放熱しやすくなるため遮熱効率が高くなることが挙げられる。
【0156】
本発明のフッ素樹脂組成物を用いれば、既建造物の窓ガラス等に現場で塗布し常温で乾燥させる方法で、窓ガラスに耐熱密着性、耐寒密着性、耐水性に優れ、かつ、表面硬度及び透明性が高い塗膜を形成することができる。
【0157】
本発明のフッ素樹脂組成物は、2液型塗料組成物の主剤として用いることができる。
また、本発明のフッ素樹脂組成物が硬化剤(H)を含む場合、本発明のフッ素樹脂組成物は、硬化剤(H)と、硬化剤(H)以外の上述した成分を含む主剤とからなる2液型塗料組成物であってもよい。
【実施例】
【0158】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0159】
(実施例1)
ゼッフルGK570(ダイキン工業社製)80質量部に対して、下記のアクリル樹脂組成物20質量部を添加した。
次いで、下記の熱線遮蔽顔料分散液、紫外線吸収剤a、紫外線吸収剤b、シランカップリング剤、コロイダルシリカa、レベリング剤、及び、酢酸ブチルを、それぞれ表1に記載の量となるように添加した。得られた混合物に、更に、表1に記載の量となるよう硬化剤aを添加した後、塗料組成物を得た。
【0160】
(実施例2〜7及び比較例1〜5)
表1〜2に記載の成分を、表1〜2に示す量となるように配合した以外は、実施例1と同様にして各塗料組成物を得た。
【0161】
各成分は、具体的には以下のとおりである。
(A)水酸基含有含フッ素共重合体:
ゼッフルGK570(テトラフルオロエチレン共重合体、水酸基価60mgKOH/g、固形分65質量%、溶剤酢酸ブチル、ダイキン工業社製)
(B)アクリル系共重合体:
アクリル樹脂組成物(ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、t−ブチルメタクリレート(t-BMA)からなるアクリル系共重合体(組成比 HEMA/t−BMA=10/90重量比)、固形分65質量%、水酸基価60mg・KOH/g、溶剤酢酸ブチル)
(C)熱線遮蔽顔料分散液:ATO含有量40質量%、添加剤8%、メチルエチルケトンとジアセトンアルコールの混合溶剤、平均粒子径73nm
(D)紫外線吸収剤
a:チヌビン400(トリアジン系化合物、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
b:チヌビン479(ヒドロキシトリアジン系化合物、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
(E)シランカップリング剤:OCNC
3H
6Si(OCH
3)
3
(F)コロイダルシリカ
a:オルガノゾルIPA−ST(平均粒子径11nm、固形分濃度30%、日産化学工業社製)
b:オルガノゾルMEK−ST(平均粒子径10nm、固形分濃度40%、日産化学工業社製)
c:オルガノゾルMEK−AC−22(平均粒子径13nm、固形分濃度44.6%、日産化学工業社製)
(G)溶剤:酢酸ブチル(他の成分に含まれるものを除く)
(H)硬化剤
a:スミジュールN3300(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体、NCO含有量22%、住化バイエルウレタン社製)
b:タケネートD140N、(IPDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11%、三井化学株式会社製)
(I)レベリング剤:BYK−310(ビックケミー社製)
【0162】
得られた塗料組成物を用いて以下の項目について評価した。結果を表1〜2に示す。
<ヘイズ及び全光線透過率>
得られた塗料組成物を、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に塗布し、23℃で7日間乾燥させて厚み15μmの塗膜を形成した。塗膜が形成されたガラス板について、ヘイズ及び全光線透過率をヘイズメーター及び光線透過率計(ヘイズガードII:東洋精機社製、ASTM D1003法)を用いて測定し、下記の基準で評価した。
ヘイズ
◎:1.0%以下
○:1.0%超1.5%以下
△:1.5%超2.0%以下
×:2.0%超10.0%以下
××:10.0%超
全光線透過率
◎:80%以上
○:70%以上80%未満
△:60%以上70%未満
×:60%未満
【0163】
<表面硬度>
得られた塗料組成物を、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に塗布し、23℃で7日間乾燥させて厚み15μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の表面について、JIS K 5400.8.4.(1kg荷重)に準じて鉛筆硬度試験を行った。
【0164】
<密着性>
得られた塗料組成物を、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に塗布し、23℃で7日間乾燥させて厚み15μmの塗膜を形成した。得られた塗膜の表面について、JIS K 5600.5.6に準じてクロスカット試験を行い、下記の基準で評価した。
◎:JIS K 5600.5.6「表1 試験結果の分類」の分類0
○:JIS K 5600.5.6「表1 試験結果の分類」の分類1
△:JIS K 5600.5.6「表1 試験結果の分類」の分類2
×:JIS K 5600.5.6「表1 試験結果の分類」の分類3
××:JIS K 5600.5.6「表1 試験結果の分類」の分類4及び分類5
【0165】
<耐水性>
得られた塗料組成物を、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に塗布し、23℃で7日間乾燥させて厚み15μmの塗膜を形成した。塗膜が形成されたガラス板を、23℃の純水に5日間浸漬した後、水から取り出し、水気を軽く拭き取った後、ヘイズ及び全光線透過率を測定した。さらに、水から取り出した30分後に、塗膜の密着性を評価した。ヘイズ、全光線透過率及び密着性の評価は、上述と同様の方法で行った。
【0166】
<冷熱サイクル>
得られた塗料組成物を用いて、上記と同様にして、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に厚み15μmの塗膜が形成されたガラス板を得た。得られたガラス板について、エスペック株式会社製の小型冷熱衝撃装置TSE−11−Aを用いて、60℃18時間、−20℃3時間を1サイクルとして10サイクル繰り返した後、ヘイズ、全光透過率及び密着性を評価した。ヘイズ、全光線透過率及び密着性の評価は、上述と同様の方法で行った。
【0167】
<耐候性>
得られた塗料組成物を用いて、上記と同様にして、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に厚み15μmの塗膜が形成されたガラス板を得た。得られたガラス板について、キセノンランプ耐候性試験機 Ciシリーズ ハイブリッド・エクスポウジャーシステム(株式会社東洋精機製作所社製)で促進耐候性試験を行った。具体的には、以下の条件で、促進試験サイクルの25サイクル(10時間)を一回の試験とし、途中経過を確認しながら、合計100時間の試験を行った。試験後、全光線透過率、ヘイズ、密着性について、上述と同様の方法で評価した。
(ハイブリッド・エクスポウジャーシステム試験条件)
過酸化水素水濃度:1.0%
フィルタ組み合わせ:内側 CIRA、外側 タイプS
(セグメント(1))
放射照度:80W/m
2
ブラックパネル温度:50℃
試験槽空気温度:30℃
標準相対湿度:70%
過酸化水素水スプレー:ON
セグメント時間:3分
(セグメント(2))
放射照度:80W/m
2
ブラックパネル温度:50℃
試験槽空気温度:30℃
標準相対湿度:70%
過酸化水素水スプレー:OFF
セグメント時間:2分
セグメント(1)とセグメント(2)を繰り返し、2時間を1サイクルとする。
【0168】
<遮熱性>
得られた塗料組成物を用いて、上記と同様にして、縦150mm、横70mm、3mm厚フロートガラス(JIS R3202標準試験板ガラス、日本テストパネル社製)の片面に厚み15μmの塗膜が形成されたガラス板を得た。
塗膜形成前のガラス板の日射熱取得率(0.88)を1とした場合の、塗膜形成後のガラス板の日射熱取得率の比を遮蔽係数として算出した。
日射熱取得率は、JIS R 3106に準じて算出した。具体的には、ガラス板上の塗膜の300〜2500nmの波長における透過率及び反射率を、分光光度計U−4100(日立製作所社製)を用いて、塗膜形成側面を入射光側にして測定し、JIS R 3106付表2に記載の重価係数を用いて日射透過率及び日射反射率を算出し、得られた値を用いて日射熱取得率を算出した。
遮蔽係数は、小さい値である方が遮熱性能が高いことを示す。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
(実施例8〜10)
表3に記載の組成とした以外は、実施例1と同様にして塗料組成物を得た。
表中の「(J)親水化剤」として、「ゼッフルGH−701(ダイキン工業社製)」を用いた。
得られた塗料組成物を、縦1100mm、横800mm、3mm厚のフロートガラス(窓ガラス、日本板硝子社製)の片面に塗布し、23℃で7日間乾燥させて厚み15μmの塗膜を形成した。塗膜が形成されたガラス板を、ダイキン工業内事務所西側面窓に、2010年3月1日から2013年3月21日まで設置した。実施例8及び9は、塗膜面を屋外側に、実施例10は、屋内側になるように設置した。
所定期間経過後、ガラス板を取り外し、ガラス板の両面を、水道水を含まれた紙でふき取り洗浄した。洗浄後のガラス板について、全光線透過率及びヘイズを、実施例1と同様の方法で評価した。また、塗膜外観を目視で観察した。
設置前のガラス板について、色彩計(コニカ・ミノルタ製CR−300)でL
*1、a
*1、b
*1を測定して初期値とし、所定期間設置後に取り外した、未洗浄のガラス板について同様にL
*2、a
*2、b
*2を測定し、下記式:
ΔE=[(L
*1−L
*2)
2+(a
*1−a
*2)
2+(b
*1−b
*2)
2]
1/2
により、設置前後の差(ΔE1)を求めた。
また、上記洗浄後のガラス板について、同様にL
*3、a
*3、b
*3を測定し、下記式:
ΔE=[(L
*1−L
*3)
2+(a
*1−a
*3)
2+(b
*1−b
*3)
2]
1/2
により、設置前のガラス板と、洗浄後のガラス板との差(ΔE2)を求めた。
また、洗浄前後のガラス板について目視評価した。
結果を表3に示す。
【0172】
【表3】