特許第5768113号(P5768113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768113
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】前処置用の皮膚外用剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20060101AFI20150806BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20150806BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20150806BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61K8/97
   A61K8/49
   A61K8/67
   A61K8/60
   A61Q17/04
   A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-247560(P2013-247560)
(22)【出願日】2013年11月29日
(62)【分割の表示】特願2008-318853(P2008-318853)の分割
【原出願日】2008年12月15日
(65)【公開番号】特開2014-37447(P2014-37447A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】多田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】金丸 晶子
(72)【発明者】
【氏名】赤松 尚
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−124356(JP,A)
【文献】 特開2002−128630(JP,A)
【文献】 特開平11−322569(JP,A)
【文献】 特開2003−261432(JP,A)
【文献】 特開2007−161663(JP,A)
【文献】 特開2001−122758(JP,A)
【文献】 特開2004−250445(JP,A)
【文献】 特開2004−339142(JP,A)
【文献】 特開2002−284626(JP,A)
【文献】 特開平10−291926(JP,A)
【文献】 特表2008−520588(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0122492(US,A1)
【文献】 特開平10−194982(JP,A)
【文献】 特開2001−064192(JP,A)
【文献】 特表2008−540643(JP,A)
【文献】 特開2003−267856(JP,A)
【文献】 特開2003−034137(JP,A)
【文献】 米国特許第05804594(US,A)
【文献】 特開2003−002820(JP,A)
【文献】 特開平05−117145(JP,A)
【文献】 特開2003−176230(JP,A)
【文献】 特開平10−067674(JP,A)
【文献】 米国特許第06068845(US,A)
【文献】 特開2005−194246(JP,A)
【文献】 特開2007−176877(JP,A)
【文献】 特開2005−336116(JP,A)
【文献】 特開平08−175958(JP,A)
【文献】 特開2004−175734(JP,A)
【文献】 特開平11−349435(JP,A)
【文献】 特開平08−092056(JP,A)
【文献】 国際公開第02/069963(WO,A1)
【文献】 特開2005−336113(JP,A)
【文献】 特開平05−139950(JP,A)
【文献】 特開平09−328425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YAC化合物及び/又はその塩が、次に示す特性を有することを確認するステップ、及び、
1)還元性成分と、2)前記YAC化合物及び/又はその塩とを組み合わせて配合するステップを含むことを特徴とする、皮膚外用剤の製造方法。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1H−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13C−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
【請求項2】
前記還元性成分が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、それらの塩、エラグ酸及びその塩並びにアルブチン及びその塩から選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記YAC化合物を10-5質量%以上配合することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、化粧料に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
光が生体に及ぼす影響は様々存在し、例えば、DNA切断、開裂による遺伝子の損傷、それに誘発される癌の発生、脂質における過酸化物の生成と、該過酸化物による生体成分の酸化的傷害、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ等のマトリックス・メタロ・プロテアーゼに代表されるプロテアーゼの発現の亢進と、それによるコラーゲンなどのマトリックス蛋白の切断、断片化などが挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。更に、このような反応が誘発する、マクロファージやインターロイキン等が関与する炎症系の反応の亢進などが挙げられる(例えば、特許文献2を参照)。このような炎症反応が行なった後では、非ステロイド抗炎症剤に頼るしかないが、このような対応では炎症沈静後にメラニンの沈着が起こってしまうことも少なくなかった。この様な反応は何れも不可逆的な要素の大きい反応であり、この様な傷害を受けないことが、受けた後に速やかに処置するよりも重要であると言える。
【0003】
この様な光の影響から生体を守る予防的手段としては、酸化亜鉛や二酸化チタンなどの紫外線吸収粉体、ベンゾフェノンや桂皮酸誘導体などの紫外線吸収剤、各種生薬エキスからなるコラーゲン架橋抑制剤を組み合わせて使用する方法が一般的に採用されている(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながら、これらの処置は皮膚に光を当てないという処置であり、化粧崩れなど漏れてくる光の影響に対してはあまりなすすべがなかったと言える。更に、炎症系が亢進した場合には、現状維持が精一杯であることも否めない。
【0004】
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、ハイドロキノン、アルブチン、エラグ酸、イソフラボン、イソフラバノンなどの還元性成分は、化粧料の汎用原料であり、抗酸化剤、活性酸素消去剤、メラニン産生抑制剤などとして、化粧料中に配合されている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7を参照)が、生体の光照射に起因する傷害に対する作用は全く知られていない。
更に、キク科ヨモギ属の植物の抽出物との組み合わせ効果についても全く知られていない。
【0005】
キク科ヨモギ属の植物の抽出物中に含有される、次に示す性状を有するYAC化合物は、文献未記載の新規化合物である。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−217670号公報
【特許文献2】特表2008−523083号公報
【特許文献3】特開平09−136824号公報
【特許文献4】特開平11−124323号公報
【特許文献5】特開2008−179632号公報
【特許文献6】特開2001−322930号公報
【特許文献7】特開2001−181173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、光照射により、皮膚が傷害を受けるのを防護する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、光照射により、皮膚が傷害を受けるのを防護する手段を求め、鋭意研究努力を重ねた結果、1)還元性成分と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有する皮膚外用剤がその様な特性を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式はC34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
即ち、本発明は以下に示すとおりである。
<1>1)還元性成分と、2)次に示す特性を有するYAC化合物及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<YAC化合物の特性>
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式は34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
<2>前記還元性成分は、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、それらの塩、エラグ
酸及びその塩並びにアルブチン及びその塩から選択される1種乃至は2種以上であることを特徴とする<1>に記載の皮膚外用剤。
<3>前記YAC化合物は、キク科ヨモギ属の植物の抽出物として含有されることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の皮膚外用剤
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光照射により、皮膚が傷害を受けるのを防護する手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分画7の化合物の1H−NMRを示す図である。
図2】分画7の化合物の13C−NMRを示す図である。
図3】分画7の化合物のHPLCチャートを示す図である。
図4】分画7の化合物の紫外吸収スペクトルを示す図である。
図5】製造例1における分画7のグルコース−牛血清アルブミンAGEs分解能を示す図である。
図6】分画7の化合物の質量分析スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>本発明の皮膚外用剤の必須成分である還元性成分
本発明の皮膚外用剤は、還元性成分を必須成分として含有することを特徴とする。本発明では、フェーリング反応などの還元性を検定する試験法に於いて陽性の成分を還元性成分として取り扱う。本発明で言う還元性成分を具体的に例示すれば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、それらの塩等のアスコルビン酸関連物質、エラグ酸、グラブリジン、センタウレイジン、クラリノン、グラブレン、イソフラボン、イソフラバノンなどのポリフェノール性物質とその塩、ハイドロキノン、アルブチン及びその塩等のハイドロキノン類等が好適に例示でき、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、それらの塩、エラグ酸及びその塩並びにアルブチン及びその塩等が特に好ましく例示できる。
これらの成分は唯一種を含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の皮膚外用剤に於いて、かかる成分は後記のYAC化合物とともに働いて、皮膚が光照射によって受けた傷害を初期状態で消去せしめる作用を有する。この様な効果を奏するためには、かかる還元性成分は、総量で皮膚外用剤全量に対して、0.01〜10質量%含有されるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。かかる含有量が少ない場合には、前記効果を奏さない場合が存し、多すぎると効果が頭打ちになり、徒に処方の自由度を損なう場合が存する。
【0012】
<2>本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物
本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物は次に示す性状を有することを特徴とする。
(性状)
(1)λmaxを405〜415nmと、660〜670nmとに有する。
(2)図1に示す1−NMRスペクトルを有する。
(3)図2に示す13−NMRスペクトルを有する。
(4)以下の条件でのHPLC分析において、15分前後にシングルピークを示す。
(5)化学組成式は34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物の紫外・可視吸収スペクトルは図4に示す。この図より、405〜415nmと、660〜670nmとにλmaxが存する特徴が明確に判別できる。本発明の化粧料の必須成分であるYAC化合物を特定する場合、かかる紫外・可視部吸収特性は非常に有利である。即ち、多波長の検出器を備えたHPLCを用いて、210nmの吸収で分析し、ピークについて405〜415nmと、660〜670nmとの吸収を確認し、同様に強い吸収が認められた場合には、本願発明のYAC化合物である蓋然性が非常に高い。この意味で有力な確認手段となる。本願発明のYAC化合物は、極性溶媒抽出物の非極性部分に存在する。この為、溶媒で抽出し、抽出溶媒を減圧濃縮などで除去した後に酢酸エチルと水で分液し、酢酸エチル相を採取することにより、濃縮することが出来る。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを用いて、クロロホルム/メタノール混液系で分画精製することにより単離することが出来る。単離したかどうかについては、以下の条件のHPLC分析でシングルピーク(リテンションタイム15分前後)であるか否かを判別することにより特定することが出来る。図3に分析例を示す。この場合のリテンションタイムは14.7分である。
(HPLC条件)
移動相:90%アセトニトリル
カラム:ODS4.6×250mm
流速:1ml/min.
温度:40℃
検知:紫外部210nm
(5)化学組成式は34409であり、質量分析スペクトルは593(M+H)
【0013】
かかる本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物は、キク科ヨモギ乃至はキク科カワラヨモギの植物体を極性溶媒、例えば、含水していても良い有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、蟻酸メチルなどのカルボン酸エステル類、アセトニトリルなどのニトリル類などで抽出することにより、前記YAC化合物を含む抽出物を得ることが出来、これを前記の如く、液液抽出やカラムクロマトグラフィーなどの精製手段により単離精製することが出来る。抽出溶媒としては、含水アルコールが特に好ましく、70〜90%エタノール水溶液を用いることが特に好ましい。抽出に用いる植物体の部位は、地上部を用いることが好ましい。植物体は、抽出に先立って、細切乃至は乾燥して粉砕するなど、細片化処置を行うことが好ましい。抽出は、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間植物体乃至はその加工物を溶媒に浸漬することにより為しうる。
【0014】
斯くして得られたYAC化合物は、シリカゲルを担体とする薄層クロマトグラフィー(展開液、クロロホルム:メタノール=95:5〜8:2)においてシングルスポットを呈し、AGEs分解活性を示す。AGEs分解活性は、簡易的にはα−ジケトンの切断活性の強さを指標とし、定量化することが出来る。即ち、1−フェニル−1,2−プロパンジオンとともにインキュベートし、切断によって生じる安息香酸を吸光度で定量し、安息香酸の生成量が多いほどAGEs分解能が高いと判別できる。これよりvivoに近い評価としては、実際にグルコースと牛血清アルブミンとをインキュベートして作成したAGEsを分解せしめ、分解量を定量し、かかる分解量を指標にAGEs分解能を定量する方法も存する。本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物はこの様な方法でAGEs分解能を定量した場合、α−ジケトンの分解において40〜60%程度の分解率を呈し、牛アルブミンAGEsに対しては、10−3質量%で65〜80%程度の分解率を呈する。この性質を利用して本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物はAGEs分解剤として化粧料等の皮膚外用剤に配合し、光照射などで生じたAGEsを速やかに分解し、この蓄積を防ぐことが出来る。この様な作用が、本発明の皮膚外用剤の効果に寄与している。以下に、これらの評価方法の手順を示す。本発明の皮膚外用剤に於いてはかかるAGEs分解作用を明確に発現するドーズでのYAC化合物の含有が好ましい。この様なAGEs分解作用を発現するドーズに於いて、前記還元性成分とともに働いて、光による傷害を速やかに消去する作用を発現する。かかる作用は、光照射によって亢進するMMPの作用を抑制することによって生じる。この結果、細胞が傷害されアポトーシスが誘導され
ることも抑制される。
【0015】
<α−ジケトンのC−C結合切断能の測定>
22mM 1−phenyl−1,2−propanedion/MeOH+0.1Mリン酸緩衝液(PH7.4)1mlと、測定用試料1mlを混合し、37℃で10時間反応させ、安息香酸の量をHPLCにて定量する。
(HPLC条件)
・分析条件 検出器 :紫外吸光光度計(測定波長:260nm)
・カラム :東ソー TSK−ODS80TsQA カラム温度:室温
・移動層 :氷酢酸2g/アセトニトリル500ml+エデト酸二ナトリウム溶液(1→250)500ml 流量:1ml/min
【0016】
<グルコース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定>
用いる材料は以下の通り。
AGE−BSA:グルコースとBSAを37℃で12週間以上インキュベートし、
PD−10 columns(Amersham Biosciences 17−0851−01)にて余分なglucoseを除いたもの
1次抗体 :Anti−Albumin,Bovine Serum,Rabbit−Poly
ROCKLAND 201−41331/20000
2次抗体 :Goat anti−rabbitIGg horseradish
peroxidase conjugate Bio RAD 170−6515 1/10000
基質 :TMB solution Wako 546−01911
(手順)
typeIコラーゲンコートした96穴マイクロプレート(Bio Coat 35 4407)に10μg/mlのAGE−BSAを100μl加え、(1.0μgAGE−BSA/well) 37℃にて4時間静置した後、0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄(マイクロミキサー上で室温・3分間振とう)し、PBS(−)に溶解した各濃度の試料を100μlを加え、37℃で10時間以上反応させる。その後、0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、1次抗体を各wellに100μl/well加え、室温で30分間静置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、2次抗体を100μl/well入れ、室温30分間静置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、TMBを100μl/well加え、室温15分反応させる。1N HClを100μl/well入れ、反応を止め、450nmの吸光度を測定する。AGEsの量を変え、検量線を引き、この検量線より残存AGEs量を定量した。残存AGEsを添加したAGEsより減じ、添加したAGEsで除し、100を乗じてAGEs分解率を算出した。
【0017】
本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物は、図1図2のNMRデータより、水酸基等の反応性置換基を有すると考えられ、かかる反応性基を利用して誘導体へと導くことが出来る。かかる誘導体が本発明の皮膚外用剤の必須成分であるYAC化合物の誘導体である。本発明の誘導体としては、例えば、メチルアイオダイドなどのハロゲン化炭化水素を用いてアルキル化したアルキルエーテル体、アルキルエステル体、アシルハライドを反応させて得られるアシル化体、モノエタノールアミンなどを反応させたアミド体などが好適に例示できる。前記の評価法においてAGEs分解能を有する限り、これらの誘導体は本発明の皮膚外用剤の必須成分として、本発明の技術的範囲に属する。
【0018】
<3>本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、光照射の傷害が皮膚細胞に生ずることを抑制する効果を有する。本発明の皮膚外用剤は光の照射に先だって皮膚に投与され、光照射で皮膚が受けたダメージを初期段階で消去する作用を有する。本発明の皮膚外用剤は、皮膚外用医薬、化粧料(医薬部外品を包含する)、皮膚外用雑貨等に適用されるが、化粧料に適応されることが特に好ましい。化粧料としては、例えば、ローション、乳液、クリームなどの基礎化粧料に好ましく適用される。特に好ましい系は乳化剤形であり、油中水乳化剤形の内水相に含有されることが好ましい。油中水乳化剤形としては、例えば、「ベントン38V」という名称で市販されている、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド変性ヘクトライトのような有機変性粘土鉱物0.1〜10質量%とポリエーテル変性メチルポリシロキサン0.1〜5質量%を組み合わせて界面活性剤とした乳化系などが好ましく例示できる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤では、前記必須成分以外に通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ−ルアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテ
トラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ−ル、イソプロパノ−ル等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ−ル等の抗菌剤;ヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物などが好ましく例示できる。これらの必須成分や任意成分を常法に従って処理することにより、本発明の化粧料は製造することが出来る。 これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤は製造することが出来る。
【0020】
本発明について、以下に実施例を示し、更に詳細に説明を加える。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
<製造例1>
キク科ヨモギ属ヨモギの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mlのメタノールを加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、抽出物1を得た。しかる後に、抽出物1に200mlの水と200mlの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、分画1を得た。
分画1を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分画精製した。即ち、シリカゲルをクロロホルムで濡らし、カラムに充填し、クロロホルムに溶解させた分画1の濃縮物をチャージし、クロロホルム、1%メタノール含有クロロホルム、5%メタノール含有クロロホルム、10%メタノール含有クロロホルム次いで15%メタノール含有クロロホルムを50ml流し、流出分を減圧濃縮した。これらの分画を順に分画2、分画3、分画4、分画5、分画6とした。分画1〜6についてα−ジケトンの切断活性を調べたところ、分画3が最も高く48%であった。分画3を更にクロロホルム・メタノール混液系を溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで4回精製し(1回目クロロホルム:メタノール=100:0→1:1、2回目クロロホルム:メタノール=100:2→9:1、3回目クロロホルム:メタノール=100:5→8:2、4回目クロロホルム:メタノール=100:0→100:5)、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム:メタノール=95:5)で、50%硫酸水溶液焼付での呈色でシングルスポットであるアモルファスの分画7を得た。このもののNMRを図1図2に示す。HPLC(条件は下記の通り)でのチャートを図3に示す。又、紫外部吸収スペクトルは図4に示す。これらの結果より、構造そのものは不明であるものの、分画7は単一物質であることが推測される。
【0022】
<分画7のグルコース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定>
上述の手技で予めグルコースと牛血清アルブミンより生成させたAGEsに対する分画7の種々の濃度でのAGEs分解作用を測定した。結果をグラフとして図5に示す。これより、分画7の本発明の化合物が10−5質量%存在すれば、そのAGEs分解の有効性を発現することが判る。又、分画7の化合物をヨモギなどの植物の植物体の抽出物乃至はその精製物として含有させる場合、抽出物乃至はその精製物において、配合濃度において前記AGEsの分解作用が存するか否かを確かめて、AGEs分解作用が認められた場合には、その抽出物乃至はその精製物の化粧料への含有を可とする様な簡易的な鑑別を行って、化粧料への含有を決定することも出来る。
【0023】
<MMP−1に対する作用>
フナコシ株式会社より、販売されているMMP−1 Colorimetric Assay Kit (AK404)を用いて、還元性成分とYAC化合物について、MMP−1阻害活性を測定した。検体濃度は何れも1μg/mLとした。結果をMMP−1阻害率として、表1に示す。これより、組み合わせ効果によってMMP−1阻害効果に優れることがわかる。
【0024】
【表1】
【0025】
<光に対する効果>
96ウェルのプレートに、ウェル当り5×104cellsずつヒト表皮正常メラノサイト(クラボウ)を播種し、Medium154S培地(クラボウ)にて37℃、5%CO2の条件下24時間培養した。サプリメントを添加していないDefinedケラチノサイト−SFM培地(ギブコBRL)100μlに培地交換後、1μg/mL(終濃度)の分画7の存在下、1μg/mL(終濃度)のアスコルビン酸グルコシドの存在下、1μg/mL(終濃度)の分画7と1μg/mL(終濃度)のアスコルビン酸グルコシドの存在下3日間培養を続け、培地を検体を含まないDefinedケラチノサイト−SFM培地(ギブコBRL)100μlに交換後、紫外線10mJを照射し、TaKaRa社より市販されているLDHdetectionkitを用いて、アポトーシス細胞を定量化した。陽性対照は紫外線を照射し検体を含まないものとし、陰性対照としては紫外線非照射で検体を含まないものとした。陽性対照のアポトーシス抑制率を0%、陰性対照のアポトーシス抑制率を100%とし、検体のアポトーシス抑制率を算出した。結果を表2に示す。これより、組合せによりアポトーシスを抑制していることが判る。即ち前記の試験と組み合わせるならば、分画7と還元性成分との組合せにより、光照射で亢進するMMPが細胞に損傷を与え、これがアポトーシスを誘導するのを防いでいると推測される。
【0026】
【表2】
【0027】
[実施例2]
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料1(油中水乳化剤形)を製造した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ75℃に加温し、攪拌下イに徐々にロを加え乳化し、乳化粒子を均質化した後、攪拌冷却し、化粧料1を得た。同様に操作して、分画7を水に置換した比較例1、アスコルビン酸グルコシドを水に置換した比較例2、分画7とアスコルビン酸グルコシドとを水に置換した比較例3も同様に作成した。
【0028】
【表3】
【0029】
<試験例1>
化粧料1、比較例1〜3について、急性の光損傷に対する作用を調べた。即ち、MED(最少紅斑容量)の判っているパネラーの前腕に2cm×4cmの部位を5つ作り、4種の検体と水とをそれぞれの部位に40μL投与した。投与後30分に検体を水で湿した脱脂綿で拭き取り、その1時間後にMEDの2倍の紫外線を照射し、照射後24時間に部位と非照射部位との色差を色彩色差計コニカミノルタCR400で測色した。結果を紅斑抑制率として表4に示す。これより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1の前処置により、急性の光損傷も抑制できることが判る。尚、紅斑抑制率は(100−(検体部位の色差)/(水投与部位の色差)×100)で算出した。
【0030】
【表4】
【0031】
[実施例3]
実施例2と同様に化粧料2を作成した。試験例1の方法で評価したところ、紅斑抑制率は59%であった。
【0032】
【表5】
【0033】
[実施例4]
実施例2と同様に化粧料3を作成した。試験例1の方法で評価したところ、紅斑抑制率は58.6%であった。
【0034】
【表6】
【0035】
[実施例5]
実施例2と同様に化粧料4を作成した。試験例1の方法で評価したところ、紅斑抑制率は61.3%であった。
【0036】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6