(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
手根管症候群(Carpal tunnel syndrome)は、手根管の正中神経(median nerve)の圧迫による複雑な症状である。手根管は、正中神経及び屈筋腱(flexor tendons)用の手根骨と屈筋支帯(flexor retinaculum)から成る管(osseo-fibrous passage)である。手根骨は、手根管の骨である。手根管又は手首は、8個の手根骨からなる、前腕と手との間の関節の領域である。屈筋支帯(Flexor retinaculum)又は手根横靱帯(transverse carpal ligament)は、前腕筋膜(antebrachial fascia)の末端部分と連続する太い線維帯であり、手根管を埋める。前腕筋膜又は前腕の(深部)筋膜は、前腕の被覆筋膜(investing fascia)である。筋膜は、皮膚の深部にあるような、又は筋肉(及び体内の様々な器官)の被覆を形成するような線維組織のシート又はバンドである。
【0004】
手根横靱帯(transverse carpal ligament)を開放することが、手根管症候群の治療に60年以上利用されていた。その期間の間に、手根横靱帯を開放するいくつかの方法が開発された。
【0005】
要約すれば、開発された方法は、主に2つのグループ、1)靭帯上の手のひらの掌面の皮膚における切開を使用する、オープン方法と、2)内視鏡的方法(endoscopic methods)とに分類され得る。内視鏡的方法はさらに、2つのサブグループ、2)a)1つの切開を使用する方法と、2)b)2つの切開(患者の手のひらに少なくとも一つはある)を使用する方法とに分類され得る。
【0006】
1)オープン方法は、若干の変形はあるが、基本的にすべて同様に実行され、主に皮膚切開の長さ及び/又は手のひらにおける切開の正確な位置に関連する。ほとんどの患者の症状を軽減する点及び安全性(手術の安全性は一般的に、瘢痕の長さと反比例して変化する)において非常に効果的であるけれども、これらの方法は、相対的に長期間の手の術後回復を必要とする可能性があり、しばしば切開部の周りの圧痛と、手首の皮線のすぐ遠位かつ手術の瘢痕のそれぞれの側に、手のひら及び小指球(hypothenar eminences)の付け根の痛み、いわゆる「ピラーペイン(pillar pain)」とによって悪化させられる。
【0007】
2)これらの合併症を最小にしょうと、手根横靱帯を分ける様々な内視鏡的方法が開発され、特に80年代及び90年代の間、かなりの評判を受けた。
【0008】
一般的に、これらの技術は、例えば、Menonの特許文献4に示された方法等の、手根横靱帯の真下に特別な器具を通すことを利用し、そして、光ファイバと特別な切開装置を使用して、靭帯を観察して分ける。しかしながら、これらの技術は、非常に高価な装置を必要とすることを含む多くの問題があり、特別なトレーニング及び外科医の能力により習得に長期間を必要とし、むしろ時間がかかる。これらの技術はまた、手根横靱帯を完全に分けることにかけては必ずしも一貫性がなく、障害があった。また、手根管の内容物、すなわち、正中神経、その神経枝及び手根管内の腱に、医原性損傷(iatrogenic injury)等の合併症の報告がある。症例によっては、器具が、尺骨神経及び尺骨動脈に傷をつける不適切なルートに挿入された。しばしば、手術の間、目的とする構造の映像が光学装置のレンズ先端の曇りによって、又は、手根横靱帯が開放されるとき、手のひらの脂が作業フィールドに落ちることによって、著しく損なわれる。このような手術で手のひらの切開が小さくてすむ場合、局部のピラーペインの問題は減少し得るが、完全には取り除かれない。
【0009】
これらすべての理由の他に、内視鏡技術の主な欠点の一つは、大量の「拡張器(dilators)」を使用し、切開装置を挿入する場所を作るために、手根管の容積の事前膨張の必要性であるという発明者の個人的な意見がある。手根管症候群がそもそも生じる基本的な理由は、手根骨の湾曲(vault)を結合して満たす両方の構造が実質的には圧縮できないからである。従って、内容物が膨張するならば、正中神経は圧縮され、症状を引き起こす。手根管の空間を拡張することは少なくとも一時的に解決しようとしている問題とまったく同じ問題を助長し、圧力が切開装置の上又は前に構造物を移動し、構造物を著しく危険にさらすので潜在的に危険である。
【0010】
必要とされるものは、合併症と手術による負荷とを最大限回避又は最小化するために、単一の手首切開のみを必要とする、シンプルで、安全で、効果的で、安価な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】明細書で説明される手術中に使用される外科的切開を加えた、解剖学的構造及びランドマークを示した、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図2】明細書で説明される手術中に使用され、手首筋膜における横断する外科的切開を実行する、2つの皮膚フック及びメスによって皮膚のエッジが後退される(広げられる)、皮膚の外科的切開を示した人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図3】明細書で説明される手術の一部期間に使用され、前腕筋膜の遠位エッジを切開する90°曲がったシャフトの筋膜切開器を示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図4A】明細書で説明される手術の一部期間に使用され、手根横靱帯(TCL)を遠位で真下に挿入されるブラントプローブ又はオブチュレーター(obturator)を示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図4B】手根横靱帯(TCL)を遠位で真下に挿入されるブラントプローブ又はオブチュレーター(obturator)の断面図を示す、
図4Aの部分拡大図。
【
図4C】明細書で説明される本発明の一部であり、ブラントプローブ又はオブチュレーターが、先端で曲がった
カニューレ状のガイドロッドによって置換された
図4Bと同じ断面図。
【
図5A】1)明細書で説明される本発明の主題である手術中に、本発明の一部である、先端で曲がった
カニューレ状のガイドロッドの管路(lumen)を通して手根横靱帯(TCL)の深層面の真下に挿入される可撓性金属ガイドニードルと、2)可撓性ニードルの先端の押し出しを容易化するブラントスパチュラ(blunt spatula)を有する、加圧されるカプラン基本線より遠位の手の手のひらとを示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図6】明細書で説明される本発明の主題である手術中に、手根横靱帯(TCL)の真下に配置された可撓性金属ガイドニードルに従って挿入された、本発明の一部である、手根横靱帯の筋膜切開器の遠位端部の
カニューレ状の指状プロングを示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図7】明細書で説明される本発明の主題である手術中に、(図示しない)2つの頑丈なニードルホルダーを用いて、張力を受けたままで可撓性金属ガイドニードルの案内で靭帯をまたぐ、手根横靱帯(TCL)の近位端に装着された、本発明の一部である、手根横靱帯(TCL)の筋膜切開器を有する、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図8A】手根横靱帯(TCL)の全長にわたり、可撓性金属ガイドニードルの案内で、手根横靱帯(TCL)の筋膜切開器の前進による手根横靱帯(TCL)の完全分割を示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図8B】説明される同じ手術(手根横靱帯(TCL)の切開)の断面図を示す、
図8Aの部分拡大図。
【
図8C】説明される同じ手術(手根横靱帯(TCL)の切開)の横断面図を示す、
図8Aの部分拡大図。
【
図9A】ガイドカニューレの孔が開けられた先端を介して挿入される可撓性金属ガイドニードルの案内で、手根横靱帯(TCL)の真下に挿入される、明細書で説明される本発明の一部である、任意の溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの使用を示す、人間の手のひら及び手首の概略図。
【
図9B】同じ手術(可撓性金属ガイドニードルによってさらに前進することを防止し、掌の皮膚の深層面で止まるまで、溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの手根横靱帯(TCL)の下に十分に挿入すること)の断面図を示す、
図9Aの部分拡大図。
【
図9C】溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの長手方向の孔に沿って存在する可撓性金属ガイドニードルに従って、手根横靱帯(TCL)の筋膜切開器の初期挿入からなる、本発明の主題である手術における外科的手術ステップを示す、
図9Bと同じ部分拡大図。
【
図9D】分割された手根横靱帯(TCL)に沿って、溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの長手方向の孔に従って十分に挿入される手根横靱帯(TCL)の筋膜切開器を有する、
図9Cと同じ部分拡大図。
【
図10】明細書で説明される本発明の一部である、リアハンドルの好ましい形態に連結されるシャフトの先端で「爪(nail)」を有する、曲がった先端で
カニューレ状のガイドロッドの好ましい実施形態の立体図。
【
図11A】遠位端部での「歯(tooth)」を有する、好ましい実施形態の、曲がった先端で
カニューレ状のガイドロッドの先端を強調する、
図10の部分立体図。
【
図11B】遠位端部での「爪(nail)」を有する、好ましい実施形態の、先端で曲がった
カニューレ状のガイドロッドの先端を強調する、
図10の部分立体図。
【
図12】明細書で説明される本発明の一部である、真直ぐなシャフトの筋膜切開器の遠位端部の一の好ましい実施形態の立体図。
【
図13】明細書で説明される本発明の一部である、2つの平行な、
カニューレ状の指状プロングを有する、遠位シャフト及び手根横靱帯(TCL)の筋膜切開器の端部の他の好ましい実施形態の立体図。
【
図14】本発明の主題である手術中に使用される可撓性金属ガイドニードルと、溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレと、好ましい実施形態では筋膜切開器の頭部の上位かつ遠位の指状プロングにおける先端に金属球を有する、
手根管横筋膜切開器とからなる、遠位から近位方向に見た、明細書で説明される共に本発明の一部であるアセンブリの立体図。
【
図15】明細書で説明される本発明の一部である、
手根管横筋膜切開器の真直ぐなシャフトのリアハンドルの好ましい実施形態を示す、
図14に示された、近位から遠位方向に見たアセンブリの立体図。
【
図16】明細書で説明される本発明の一部である、リアハンドルの好ましい実施形態に連結される、90°曲がったシャフトの筋膜切開器の、遠位から近位方向に見たアセンブリの立体図。
【
図17】明細書で説明される本発明の一部である、溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの長手方向の孔に沿って配置され、溝のある上部密閉されたカニューレの遠位端部を介して突き出る先端を有する、本発明の主題である手術中に使用される可撓性金属ガイドニードルからなる、遠位から近位方向に見たアセンブリの立体図。
【
図18】溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの溝の上部密閉された遠位端部を介して突き出る先端を有する、明細書で説明される本発明の一部である、当該ガイドカニューレの好ましい実施形態の長手方向の溝に従って配置される、本発明の主題である手術中に使用される可撓性金属ガイドニードルからなる、近位から遠位方向に見た遠位端部アセンブリの拡大立体図であって、当該カニューレの遠位背部のシャフトの抑制金属アーチも示されている図。
【
図19】明細書で説明される本発明の一部である、遠位から近位方向に見た複数の道具、すなわち、左側から右側に、
カニューレ状のガイドロッド、溝及び孔のある先端を有するガイドカニューレの溝上の
手根管横筋膜切開器、及び、90°曲がったシャフトを有する
筋膜切開器のアセンブリの立体図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の理解を促進する目的のため、図面に示された実施形態が参照され、また専門用語が実施形態を説明するために使用されるが、これにより本発明の範囲が制限されることを意図するものではなく、予期される、示されたデバイスの変形、そして改良、さらにまた明細書に示された本発明の原理の応用等は、本発明に関係する当業者であれば通常想到し得るだろう。
【0017】
本発明は、限定するものではないが、特に手根管開放術に適している手術器具セット、及びその使用方法に関する。本手術器具セットは、靭帯の最も近い位置 の近位縁を除き、靭帯を肉眼で見ることなくTCLにおける切開の実行を可能にし、メスを操作するとき誘導されかつ安全であるが、間違った方向の切開線の可能性を除去又は著しく低減する。
本手術器具セットは、手のひらの掌部の選択位置から可撓性金属ガイドニードル(33)の通過を誘導し、曲がった遠位端部を有する、
カニューレ状のガイドロッド(
27)(
図10)と、デバイスの頭部に位置付けられ、ブレードホルダの下部表面(21)に取り付けられた1本の
カニューレ状の指状プロング(20又は24)と、ブレードの上下で前方に延び、Stricklandの特許文献1の手術メスと同じタイプの1又は2本の中空指状プロング(22;23)とを少なくとも有する
筋膜切開器(25)(
図12)とを備える。
【0018】
また、ブレード部の下端部は、端部で平坦であっても又は丸められてもよく、ブレードの下に延び、下位の中空指状プロング(22)と代替してもよい。中空指状プロング(22)の底面又はその代替表面に取り付けられると、1又は2本の
カニューレ状の指状プロング(20及び24)が存在する。この
カニューレ状の指状プロングの目的は、
カニューレ状の曲がったガイドロッド(
27)を用いて、可撓性金属ガイドニードル(33)がTCL(106)の下面の下に配置された後、可撓性金属ガイドニードル(33)の通過を可能にすることである。このニードルは、切開操作の間、筋膜切開器(25)の遠位端部のブレード(21)の進行を案内し、その結果、デバイスが所望のルートから間違ったルートに逸脱する可能性を取り除く。筋膜切開器(25)のシャフトの末端部において、掌部に導入されるデバイスの長さを決定し、その結果、手根横靱帯(TCL)の長さを決定するために、器具の先端からそして互いに基準距離で等間隔に配置される筋膜切開器(25)のシャフトの孔又は開口(26)の組も存在する。筋膜切開器はまた、
図15に示されるように、靭帯に沿ってデバイスを容易かつ安全に押させるために、シャフトの近位(後方の)端部に取り付けられるハンドル(34)を備える。上部の指状プロングの端部で、好ましい実施形態では、好ましいサイズ、2mmの金属球(32)が、ブレードの幅を減少させないために、好ましくは偏心性を有して配置される。この金属球は、指状プロングの切れ味の悪さを増加し、所望のルートからブレードが逸脱し、すなわち、手根横靱帯(TCL)を横切り正中神経及び腱へと下方に向かう可能性を実質的に除去する。しかしながら、金属球の好ましいサイズは、筋膜切開器の前進を妨げない。
【0019】
切開メス又は90°曲がったシャフト(41)の筋膜切開器は、外科医が使用に適していると考える任意のタイプのハンドルと連結する。そして、先端で2本の中空指状プロング(22;23)によって囲まれるブレード部(21)を有するブレードホルダは、Stricklandの特許文献1の手術メスと同じタイプのブレードの上下で前方に延びる。また、ブレードの下端部は端部で平坦であっても又は丸められてもよく、等距離でブレードの下方で延び、下位の指状プロング(22)と置換してもよい。各指状プロングの端部で、ブレード部の幅を減少させないために、好ましいサイズ、2mmの金属球(32)が、好ましくは偏心性を有して配置される。金属球は指状プロングの切れ味の悪さを増加し、一見、遠位前腕胸筋の不十分な切開、あるいは未切開をもたらすが、ブレードが所望のルートから逸脱して、掌側横靱帯(transverse palmar ligament)を横切り、正中神経及び腱へと下方へ向かう可能性を実質的に除去する。しかしながら、金属球の好ましいサイズは、筋膜切開器の前進を妨げない。
【0020】
上部密閉されるが、中心孔(33A)により孔のある遠位端部と、上部開口する近位端部とを有する、溝のある(ガイド)カニューレ(40)は、
カニューレ状の遠位端部に隣接する点から開口する近位端部に隣接する点に延びる長手方向の溝(39)を備える。カニューレは、長手方向の溝のリムに沿って存在するC又はD形状の平坦な部分でC又はD形状の内側断面を有し得る。
【0021】
溝は筋膜切開器を案内し、そして、遠位端部の孔は、曲がった
カニューレ状のガイドロッド(
27)の案内の下で配置された筋膜切開器を、手根横靱帯(TCL)(106)を越えて導く可撓性ガイドニードルの通過を可能にする。
【0022】
また、好ましい実施形態では、カニューレの遠位端部の近くに、次の点を促進するアーチブレーキ(37)が存在する。
a)ブレードが
図14に示される手の手のひらに向かって前方又は上方に逸脱するのを防ぐ他のエレメントである、筋膜切開器(25)のブレード部(21)の最後の進行を制限する点
b)TCLの下の軟組織をわきに押すこと
c)TCLの下面の外科医の触覚を高めること
開口する遠位端部で、
図17に示されるように、一対のハンドル又はイヤ(ears)(38)が存在し、操作を容易にする。
【0023】
本発明は、限定するものではないが、特に手根管手術の間、手根横靱帯(TCL)の切開に適している手術器具セット、及びその使用方法に関する。
【0024】
本発明は、好ましくは、曲がった遠位端部(29)を有する、円筒状断面及び2つの開口する端部を備える、
カニューレ状のガイドロッド(
27)を備える。ガイドロッド(
27)の管路は、可撓性金属ガイドニードル(33)の導入と、手根靭帯の
筋膜切開器(25)のブレード部に対する案内とを可能にする。最低限の外科的切開で、手根横靱帯(TCL)の下面の下の掌部へのガイドロッドの導入を最適化するために、手術器具は、適当なサイズ及び形状を有することにより特徴付けられ、また、ガイドニードル(33)の導入を手の手のひらの選択箇所に導く。
【0025】
さらに、ガイドロッド(
27)は、TCLの下面の下にガイドロッドの導入を容易にし;先端でTCLの下面を上方に押上げるために、ガイドロッドの遠位端部から約1cmに、約25°〜30°の角度を有する曲部(buckle)(29)を有することによって特徴付けられ、そして、手根横靱帯について外科医の触覚を高め、ガイドニードルの先端がガイドロッドの先端に近い手のひらの箇所で押し出されるように、可撓性ガイドニードル(33)の先端を手の手のひら面の方向で上方に導く。好ましい一実施形態では、ガイドロッド(
27)はまた、とがった側で、
図11A及び
図11Bに示されるように、少なくとも高さ1mmの歯(30)又は爪(31)のような突起を、曲がった端部の最遠位縁の先端に、取り付けられることにより特徴付けられ、そして、TCLの下面の外科医の触覚を助長して高め、さらに、靭帯の遠位端部を越えると、痙攣感(sense of a jerk)を誘発する。
図10に示されるように、シャフト(28)の遠位上面で、TCLの不十分な切開を回避するために考えられた物差し(measures)の一部として、公知の幾つかの手段の一つである、ロッドの先端が指し示す方向を常に基準にし、かつ掌部に挿入されるデバイスの長さを決定するという2つの目的で、メートルスケール(607)が刻まれてもよい。
【0026】
ガイドロッドは、公知の幾つかの手段の一つによって、例えば、医療用ステンレス鋼、又は、鉄ベース合金、チタンベース合金、コバルトベース合金あるいは任意の他の適当な合金等の生体適合性のある金属で、そして、製造目的で又は外科医の人間工学的状態に適するために変更可能な次の好適な寸法で、製造される必要がある。
・長さ:50〜100mm
・外径:3〜5mm
・内径:2〜3mm
【0027】
この
カニューレ状のガイドロッド(
27)は、製造のため、また外科医が器具を制御し操作するために都合よくなるように、任意のタイプのハンドルと連結されてもよい。好ましくは、ハンドルは、公知の幾つかの手段の一つによって、ロッドと同じ種類の金属合金か耐高温の生体適合性材料のいずれか一方で、例えば、高密度ポリエチレン又はプラスチック群の他のもので製造され得る。
【0028】
どのような場合でも、器具の管路に可撓性金属ガイドニードル(33)の挿入を可能にするために、ロッド(28)の近位端部は常にハンドル側で視認可能かつ透過可能であることが重要である。
【0029】
また、
筋膜切開器(25)を含む本発明の提案したセットは、切開ブレード(21)の底面に存在する中空指状プロング(22)に連結され得る、又は、好ましい実施形態で、ブレードホルダの下端部がその先端の周りで平坦に又は扁平な形状に製造される場合置換され、直接固定され得る、少なくとも1本のカニューレ状(管状)の指状プロング(20又は24)を備える。
カニューレ状の指状のプロング(20)の目的は、可撓性金属ガイドニードルが
カニューレ状のガイドロッド(
27)により所定位置に位置付けられた後、可撓性金属ガイドニードル(33)の通過を導くことである。このニードルは、切開中、
筋膜切開器のブレード部(21)の進行を案内し、所望のルートから間違ったルートにデバイスが逸脱する可能性を取り除く。
【0030】
この筋膜切開器はまた、一の好ましい実施形態において、ブレード部(21)の幅を減少させないために、偏心性を有して配置される、上位中空指状プロング(23)の先端に取り付けられた、好ましいサイズ、2mmの金属球(32)が存在する。この金属球(32)はまた、中空指状プロング(23)の切れ味を悪くすることによって安全性を増加させ、所望のルートから間違ったルート、すなわち、正中神経及び腱に向かって手根横靱帯(106)を越えて下方に、デバイスが逸脱する可能性を実質的に取り除く。しかしながら、金属球の好ましいサイズは、筋膜切開器の前進を妨げない。筋膜切開器はまた、好ましい実施形態において、少なくともそのサイド又は端部の両方に筋膜切開器のシャフト(25)の末端部に存在し、器具の先端からそして互いに基準距離で等間隔で配置される孔(26)群によるスケールを形成し、外科医が手の中で前進したデバイスの長さ、すなわち、TCL(106)の中で実行される切開の長さを確認するために使用される。
【0031】
筋膜切開器はまた、靭帯を介して器具を容易に押し出すために、ハンドル(34)(
図15)を備える。本
筋膜切開器(25)は、幾つかの公知 の手段の一つによって、好ましい実施形態で、「使い捨て(disposable)」と、「使い捨てではない(non-disposable)」又は「永久(permanent)」との2つの異なる形状で、生体適合性材料を用いて製造されてもよい。
【0032】
1)「使い捨て」筋膜切開器は、使い捨てシャフトと連結される、ステンレス鋼、又は、任意の他の生体適合性で、高強度な金属合金から製造された、前方又は遠位のブレード部と、耐高温性の生体適合性材料、例えば高密度ポリエチレン又は他のプラスチック群を用いて、公知の幾つかの手段の一つによって製造されたリアハンドルと、から構成される。
【0033】
2)永久又は「使い捨てではない」筋膜切開器は、
カニューレ状のガイドロッド(
27)で示されたような、医療用ステンレス鋼、又は、任意の他の生体適合性で、高強度な金属合金で製造された、完全な金属ピースとして、公知の幾つかの手段の一つによって製造される。
【0034】
切開メス/筋膜切開器(25)のその他の構造部品及びそれらの好ましい寸法は、次に示す通り、工業生産の便宜のために、又は、外科医の人間工学的特性に適合するために、新規な器具が直面している意義と無関係に変更されてもよい。
【0035】
[リアハンドル]
シャフトから離れて面する凹面を有し、長手方向の主軸を有する、その全体幅で浅浮き彫りの刻みのセット(溝又は孔)が横断する台形形状の凹凸体。
推奨寸法:
・長さ:29mm
・幅:10mm
・厚さ:5mm
・ステム(stem)から離れた、ハンドルの凹面上の刻み:深さ1mm(浅浮き彫り)
【0036】
[シャフト又はステムへの連結]
下位の横サイドはシャフトの下面の下、約5mm以上飛び出さないように、シャフトの後方端部で、シャフト又はステムに垂直に取り付けられた、シャフト又はステムへの連結、すなわち、このような構成は次の目的を達成することができる。
1)切開動作の間、TCLに沿って筋膜切開器(25)を押し出すために、親指に対して、苦痛のない面及び機能的サポートを提供すること
2)人間工学的構成を有し、親指の手のひら側の凸部に適合すること
3)刻み目が、手術中、デバイスと手袋をはめた親指との間の密着/摩擦を増加させることによって器具の安定性に寄与すること。
4)示された方法でステムに取り付けられたケーブルの詳細は、偏心して、ハンドルが筋膜切開器(25)を前方に、すなわち手に向かって押し出しながら患者の前腕の掌部面に作用するのを防ぐことから、TCLの切開処理中、器具の前進を妨げることがない。
【0037】
[シャフト又はステム]
(近位(後部)端部)
好ましい実施形態では、正方形断面を有する。
推奨サイド寸法:6mm
【0038】
(骨幹(diaphysis))
後方端部から約100mm離れた近位(後部)端部とつながるように、四角い近位断面を有する好ましい実施形態では、遠位端部に向かって次第にテーパー上になり、かつピラミッド形状、好ましくは横軸で平坦となる骨幹は、幅より高さが大きくなる。
推奨寸法(骨幹のみ)
・長さ:130−140mm
・後方端部から離れて100mmまでの近位幅:好ましくは四角い構成を有する6mm幅
・ステムは上記点から先では、すなわちデバイスの後方から140mmかつデバイスの先端の近位25mmの距離で、ステムの垂直軸で4mm寸法に到達するまで、先細になる(テーパー状である)
・ステムのネックのレベルで、すなわちデバイスの後方から140mmかつデバイスの先端の近位25mmの距離で、横軸に同じ点から2mmまでステムは徐々に狭くなる。
【0039】
シャフトは、シャフトの垂直方向、水平方向又は両サイドに沿って、孔の間が等間隔、このましくは5mmで配列された、好ましくは5個の孔が設けられ、遠位端部のブレードの切開エッジから離れた30mmの点ではじまり、50mmの点で終了する。好ましい実施形態の一つにおいて、数値化スケールが、孔(26)に隣接して、レーザーマーク又は公知の任意の他のマークの形状で刻まれてもよい。
【0040】
(遠位(前方)端部(ブレード部;ブレード))
ヘッド部分を構成するこの先端は、次のものから構成される。
【0041】
1)ヘッド部分の反対側の端部に取り付けられ、好ましくは凹状又は「V(魚の口)」状の鋭利な遠位切開エッジを有する台形のブレード。以下の推奨寸法を有する。
・最大長さ:14mm
・凹面の長さ(最後尾の点):10mm
・高さ:4mm
・幅:1mm
【0042】
鋭利な遠位切開エッジが、ある程度の抵抗だけでTCL(106)を容易に切開するために、過度ではないが適度に鋭利であり、実行される切開の外科医の触覚を高める。
【0043】
2)シャフトネックとつながり、ブレードの上位エッジに取り付けられた、中空で、ブラント(blunt)、すなわち、切れ味の悪い指状プロング。以下の推奨寸法を有する。
・最大長さ:10mm
・直径:1mm
【0044】
この指状プロングの先端は、好ましくは、少なくとも4mmまで、ブレードの凹面の頂上を越えて延びるべきである。好ましい実施形態では、直径約2mmの金属球(32)が、ブレード部の幅を減少させないために、この指状プロングの先端に取り付けられ、好ましくは外側に偏心されて配置される。
【0045】
3)シャフトのネックとつながり、ブレードの下位エッジに取り付けられた、中空ブラント指状プロング。以下の推奨寸法を有する。
・最大長さ:13mm
・直径:1mm
【0046】
このプロングは、約6mmのブレードの凹面の頂上を越えて延びるべきであり、従って同様にブレードの前に飛び出す。
【0047】
4)下位の、中空ブラント指状プロングに取り付けられ、又は、代替として、全体的に下位中空ブラント指状プロングと置き換わり、シャフトのネックとつながる中空円筒と同じ寸法で同じ位置特性で、ブレードの底面に直接取り付けられ、そして、好ましい実施形態ではまた、勾配付きの遠位端部を有し、上位から下位に並びに前から後ろに向けて勾配を有する、カニューレが挿入される指状プロング。以下の推奨寸法を有する。
・最大長さ:13mm
・外径:2mm
・内径:1mm
・好ましい勾配が付けられた遠位端部
【0048】
筋膜切開器(25)のヘッド部分の他の3つの重要な特徴は、次の通りである。1)手根横靱帯の厚さが成人で3mmを超え得るということが分かったので、ブレード(21)の両サイドに結合する、2つの中空指状プロング(22;24)の下位面間の幅が、約4mmのオーダーである。従って、4mmの間隔は、切開手術中、メスの機能を損なわずに靭帯中を前進することを防ぐことになる、靭帯に対するプロングの接触を防ぐ。また、2)は、上位中空指状プロング(23)の長さが、特に、好ましい実施形態の一つにおいて推奨されたように、金属球(32)がプロングの先端に連結される場合、デバイスの案内ミスを十分に防ぐことができるので、ブレード(21)の最遠位エッジと関連して、約4mmを超える必要がないということである。3)さらに、手根横靱帯(TCL)(106)の切開処理中、プロング自身ではなく、
カニューレ状の指状プロングに挿入された可撓性金属ガイドニードル(33)によって、器具が切開全範囲に沿って正しい位置に置かれるので、下位の指状カニューレが挿入されるプロング(20;24)の長さは、ブレード(21)の最遠位エッジに関連して約6mmを超えて延びることが必要ない。低減されたプロングの突き出た長さは、組織に 対して器具のヘッド部分の妨害の可能性を防ぐのを助ける。
【0049】
[90°曲がったシャフトを有する切開メス又は筋膜切開器(41)(
図16)]
この
筋膜切開器(41)は、公知の幾つかの手段の一つによって、「使い捨て」と、「使い捨てではない」又は「永久」との2つの異なる形状で、生体適合性材料を用いて製造されてもよい。
【0050】
1)「使い捨て」筋膜切開器は、1)新規な器具が直面している意義と関係なく、公知の幾つかの手段の一つによって製造された
カニューレ状のガイドロッド(
27)のために示された材料のような、医療用ステンレス鋼、又は、任意の他の生体適合性で、高強度な金属合金から製造された、前方又は遠位ブレード部から構成され、2)耐高温性の生体適合性材料、例えば高密度ポリエチレン又は他のプラスチック群を用いて、公知の幾つかの手段の一つによって製造された使い捨てのリアハンドル及び/又はリアシャフトに取り付けられる。リアハンドルは、新規な器具が直面している意義と関係なく、外科医の人間工学的特性及び/又は工業生産の便宜に適合する、サイズ又は形状を有してもよい。
【0051】
2)永久又は「使い捨てではない」筋膜切開器は、1)
カニューレ状のガイドロッド(
27)で示されたような、医療用ステンレス鋼、又は、任意の他の生体適合性で、高強度な金属合金で製造された、完全な金属ピースとして、公知の幾つかの手段の一つによって製造されてもよい。又は、2)繰り返される滅菌処理の間に、生体適合性の、プラスチック又は他の非金属である材料が繰り返し高温に耐える性質を有さなければならないという相違点を有する、使い捨て可 能な筋膜切開器のために示されたものと同じ性質を有する。
【0052】
[構造部品及び好ましい寸法]
切開メス/筋膜切開器(41)のその他の構造部品及びそれらの好ましい寸法は、次に示す通り、工業生産の便宜のために、又は、外科医の人間工学的特性に適合するために、新規な器具が直面している意義と無関係に変更されてもよい。
【0053】
[シャフト又はステム]
角度90°の曲がりで近位に、シャフト又はステムは、本明細書で上述したように、次の好ましい寸法及び形態学的特徴を有する、適切なハンドルのようなものに取り付けられてもよい。
【0054】
(屈曲角度まで)
平行6面体形状で四角形の断面、及び、次の好ましい寸法。
・長さ:30〜60mm
・高さ及び幅:5mm
【0055】
(屈曲角度後)
ロッドの前方部分とつながり、遠位端部に向かってテーパー状であり、ピラミッド形の形状と仮定すれば、横軸において平坦で、幅より大きな値の高さを有し、次の好ましい寸法を有する、ピラミッド形の形状及び近位の四角形の断面。
・全長:30〜50mm
・高さ:屈曲角度で:3〜5mm;遠位端部で:2〜3mm
・幅:屈曲角度で:3〜5mm;遠位端部のレベルで:1〜2mm
【0056】
[遠位(ヘッド;前方)端部/(ブレード部;ブレード)]
この先端は次のものから構成される。
【0057】
1)好ましい実施形態において、ブレードの最遠位端部に関して約6mmの距離に渡り、ブレードの上下で対称に前方に延びる、先端で2つの中空指状プロング(22;23)を備えるブレードホルダ。また、代替として、ブレードの下端部は、端部で平坦であっても又は丸められてもよく、等距離でブレードの下方に延びる。
【0058】
2)ヘッド部分の反対側の端部に取り付けられ、上述の2つのプロング間に含まれ、好ましくは凹状又は「V(魚の口)」状の鋭利な遠位切開エッジを有する台形のブレード。以下の推奨寸法を有する。
・最大長さ:14mm
・凹面の長さ(最後尾の点):10mm
・高さ:2〜3mm
・幅:1〜2.5mm
【0059】
鋭利な遠位切開エッジが、ある程度の抵抗を有しつつ、前腕筋膜(405A)を容易に切開するために、過度ではないが適度に鋭利であり、外科医が実行している切開の感触を有するように効果を発揮する。
【0060】
3)一の好ましい実施形態において、各指状プロングの先端で、ブレード部の幅を減少させないために、好ましくは外側に偏心して配置され、約2mmの好ましいサイズを有する金属球(42)が取り付けられる。また、代替として、金属球は、金属球間の間隔が少なくとも2mmである限り、プロングの先端で中央に取り付けられる。メスの目的は、大人で1mmよりも厚くない遠位前腕筋膜を迷うことなく切開することであるので、この幅は、真っ直ぐなシャフトの手根横筋膜切開器(25)ほど重要ではない。従って、2〜3mmのブレード幅は、この器具に適当である。
【0061】
金属球の目的は、ブレードを囲むプロングの先端の切れ味の悪さを増すことであり、所望の方向(垂直で上方に、前腕の長手方向軸に平行に)以外に他の方向に器具が筋膜を事実上切開できないようにする。
【0062】
[ガイドカニューレ(40)(
図17)]
上部密閉された(closed)が孔のある遠位端部及び上部開口する(open)近位端部を有するガイドカニューレ(40)は、
カニューレ状の遠位端部に隣接する点から、上部開口する近位端部に隣接する点まで延びる長手方向の溝(39)を提供する。カニューレは、長手方向の溝のリムに沿って存在 するC又はD形状の平坦な部分でC又はD形状の内側断面を有し得る。
【0063】
溝があり、孔のある端部先端のガイドカニューレは、以下に示すように、共通の溝のあるプローブ−カニューレの変形例である。
a)好ましい実施形態において明細書で既説した可撓性金属ガイドニードル(33)の通過を可能にするために、カニューレの前端部で直径約1.5〜2mmの孔−円形孔(33A)−を含むこと。
b)また、一の好ましい実施形態において、カニューレの内側リムのレベル上で約2mm、約1mmの直径を有し、カニューレの遠位端部の内側リムの近位約3mmに取り付けられた、抑制金属アーチ又はアーチブレーキ(37)がある。このようなアーチブレーキは、カニューレ(40)の挿入中、手根横靱帯(106)の下の軟組織をわきに押すのを助け、靭帯(106)の下面への外科医の触覚を高める。アーチブレーキはまた、筋膜切開器(25)のブレード(21)の最終の進行を抑制するのに役立ち、ブレードが掌部に向かう望まない逸脱を防ぐエレメントの1つである。
c)カニューレ(40)の上部開口する遠位端部で、各々が中央で90°曲げられた半円形を有し、2つのL字形状の葉を形成し、その水平方向の葉はカニューレのシャフトに取り付けれ、高さ約25mm、幅25mmの好ましい寸法を有し、そして、好ましい実施形態では、ネットワークのように、複数の丸い孔で開口した、一対の2つの端部−サイドのハンドル(38)が取り付けられる。L字状の構成は、任意のオペレータの手で容易に使用でき、器具の安全な把持を可能にする。「ネットワーク」形態は主に、部品の重量を低減し、複数の孔は器具を軽くさせる。
【0064】
[手術工程]
本明細書で開示される方法及びデバイスの発明の態様を含む手術技術の説明が、図面と文書とを参照して方法のステップを示すことによって行われる。
【0065】
患者が麻酔され、手が適切に準備されて覆われた後、まず、
図1に示されるように、ランドマーク、すなわち、1)(手根横靱帯(TCL)の近位尺骨のアタッチメントが存在する)豆状骨(105)、2)遠位掌側手首皮線のレベルで長掌筋の遠位腱(104)、3)カプランの基本線(207)、4)薬指の橈側縁及び尺側縁それぞれの延長としての2本線(202;203)が確認されてマークされる。カプランの基本線は、古くから示されているように、親指と人さし指との間の指間スペースの頂点から、手の尺側縁に向かって、遠位掌側手首皮線に平行に、描かれる。この線(207)と、薬指の尺側縁(203)の連続線との交点は、有鉤骨鉤(the hook of the hamate)(すなわち、TCLの遠位尺骨アタッチメント)に対応する。2本の薬指の連続線(202)(203)の間の領域は、手根横靱帯(TCL)が下層構造に対して危険性を最小にして分離できる「安全領域」であると考えられる。
【0066】
通常、1cmの横切開(305)は、掌側手首皮線上で行われ、長掌筋の腱(104)の内側縁に1又は2mmの橈骨神経を動かし、存在するときはいつでも、尺側に延びる。皮膚だけが、鋭く切開される。これにより、医原性損傷を下層構造、すなわち、径方向への正中神経の表面の掌枝(the superficial palmar branch of the median nerve)、尺骨管(ulnar vessels)、及び内側の神経に引き起こすのを防止する。皮膚は、
図2に示されるように、皮膚鉤(皮膚フック)(skin hooks)(401;401A)を用いて後退され、さらに、(図示されない)鋭利な解剖用ハサミを用いて、切開が容易に実行される。皮下脂肪及び前腕筋膜の表面線維が通常、表れる。これらは、分けられ、後退させられる(図示せず)。操作領域に膨らむ深部脂肪(deeper fat)は、切開され、そして、(図示しない)深前腕筋膜又は掌側手根靭帯(palmar carpal ligament)のクリアーな視覚化のために、必要な程度に除去される。また、脂肪は掌部に近位かつ遠位に後退させられる。
【0067】
手首を若干伸ばして、掌側手根靭帯(405A)の遠位エッジと手根横靱帯(405)の近位エッジの接点に対応する領域は、一対の鋭利な鉗子(406)により持ち上げられ、横方向に、場合によりまた垂直方向に分けられ、拡張すると皮膚の中に作られた損傷と類似するダイアモンド状の損傷を形成する。
【0068】
曲がったブラント(切れ味の悪い)解剖用器具、すなわち、(図示しない)MacDonaldは、まず、筋膜癒着、すなわち、正中神経への前腕胸筋の筋膜癒着を分離するために、前腕筋膜(405A)の下を近くで通過し、さらに確実なルートが作られるということを確認するために、4mm径のブラントロッド、カニューレ挿入器、又は(図示しない)丸い閉鎖器官によって導かれる。上記器具が近位前腕に自由に通過できるということが認識されると、90°曲がったシャフトの筋膜切開器(41)が操作領域にもたらされ、そして筋膜切開器が遠位掌側手根靭帯に位置するように、切開エッジが位置付けられる。靭帯は、
図3に示すように、前腕の主軸の近くで平行に、メスを押すことによって約2cmの延長範囲で躊躇なく切開される。(
図16で最もよく見られる)指状プロングの先端で2つの金属球(32)はメスが靭帯を切り離すことを防止するので、観察しながら切開制御を行う必要がない。
【0069】
次に、同じ操作が遠位で繰り返される。曲がったブラント解剖用器具及びブラントロッド(601)が、
図4A及び
図4Bに示さるように、靭帯の末端縁を過ぎてTCLの下を通過する。その際、外科医の触覚でマークされたカプランの基本線(207)末端の、手のひらの領域でブラントロッドの切れ味の悪い先端の突出に加えて靭帯の下で器具の先端位置が確認される。この感覚は、(図示しない)突出器具の領域上の手のひらに対して、反対側の指によって指圧で強化され得る。
【0070】
TCL(106)の下のルートが癒着していないということを外科医が再確認すると、
図4A〜
図4Cに示されるように、薬指のエッジから靭帯の遠位エッジを多少5mm超えた点の近くまで延びる前記2本線の間の「安全領域」において靭帯の深部面の下に同じ方法で、先端で曲がった
カニューレ状のガイドロッド(27)を通過させる。これにより、真っ直ぐなシャフトの手根横靱帯筋膜切開器(25)のプロングの先端とその切開エッジとの間の距離を補償する。
【0071】
ガイドロッド(27)の穿通深さは、(
図4Cに一番よく見られるように)ロッド(607)の凹面上のレーザーマークを用いて客観的に計算され得る。外科医は、レーザーマークが外科的切開(305)の遠位エッジに近いものをチェックしなければならない。このようなマークはまた、いつでも、ロッドの先端が指している方向を示すことに役立つ。
【0072】
再度、指先の触覚が使用されなければならない。ブラントスパチュラ(706)は、手のひらの皮膚の上に配置され、先端が曲がった
カニューレ状のガイドロッド(27)の感覚で確認した先端の遠位で押し下げられ、そして、アシスタントの助けで、鋭利な先端が
図5A及び
図5Bに示される手のひらの皮膚を突き刺すまで、可撓性金属ガイドニードル(33)(CONMED/Linvatec: Doubled Armed Suture Needle, REF 8535)がロッドの管路に沿って通過する。外科医は、ニードルの先端が、実際に、薬指に即してマークされたカプランの基本線(207)に10mm未満遠位で、「安全領域」に位置することを観察しなければならない。もしそうでないならば、外科医はニードルを回収し、先端が曲がった
カニューレ状のガイドロッドを再配置し、再び行わなければならない。
【0073】
外科医がニードルの位置に満足すると、ガイドロッド(27)は回収され、
図6に示されるように、真っ直ぐな手根横靱帯筋膜切開器(25)が機能し始める。ブレード(21)の切開エッジが(図示しない)皮膚から突き出る正確な場所で可撓性金属ガイドワイヤにかなり近くなるように、外科医は手の掌部の上で横ばい状態(flat)に筋膜切開器を配置する。
【0074】
また、外科的切開(305)の遠位エッジに最も近い筋膜切開器のシャフトにおける孔は、完全な切開を達成するために、TCL(106)を越えて挿入されなければない筋膜切開器の長さの評価を外科医に提供する。このような孔を通して、外科医は、ワイヤの一部のような金属デバイス、又は、
図6及び
図7に示されるように、筋膜切開器のシャフトの周りにゆとりを持たせて収容される、細い、例えば23Gの、皮下注射ニードルを、簡単に挿入し得る。これにより、
図8A、
図8B及び
図8Cに示されるように、外科医に対して、筋膜切開器をマークされた位置を越えて手の手のひらに案内しないガイドとしての機能を果たし、この結果、TCL(106)の遠位エッジの遠位で任意の手の構造、すなわち、(図示しない)上位掌動脈弓(superficial arterial palmar arch)への医原性損傷を防止する。
【0075】
次のステップは、
図6に示されるように、
カニューレ状の指状プロング(20)の管路を介して、可撓性金属ガイドニードルをフィードすることである。次に、
図7に示されるように、筋膜切開器のブレードエッジが靭帯の近位エッジにまたがるように、プロングは正しい位置に置かれる。先端の金属球(32)を有する上位プロングは、靭帯の近位エッジの上に直視下で正確に配置されなければならない。また、ブレード端部の下位部分は、靭帯の下面の下に直視下で正確に配置されなければならない。この点は、手術技術において重要なステップである。
【0076】
外科医がTCLのエッジに関して筋膜切開器のブレードの位置をしっかりと確認すると、例えば、(図示しない)重量のあるニードルホルダーと反対方向にニードルを引っ張るアシスタントの助けにより、可撓性金属ガイドニードル(33)が張力を受けなければならない。このとき、靭帯の下面に対してニードルを押し出すために、外科医がニードルをわずかに持ち上げると有効である。このような操作によって、手は、中立な又はわずかに延長した位置にもたらされる。そして、ニードル(33)の案内の下、筋膜切開器(25)は、
図8A、
図8B及び
図8Cに示されるように、手のひらの皮膚の深面に対して遠位端が隣接するまで、靭帯を越えて常に遠位に押し出され、靭帯を切開する。また、このような操作の終わりに、ワイヤマーカーは、
図8Aに示されるように、TCLの近位エッジのレベルでなければならない。
【0077】
任意で、メス(25)の案内の前に、溝のある先端を有する
カニューレ状のガイドカニューレ(40)は、まず、
図9A及び
図9Bに示されるように、ニードルが手のひらの皮膚を越える位置で、深部から表面に、ガイドカニューレ(40)の端部が皮膚の下面に対して隣接するまで、手の手のひらに可撓性 金属ガイドニードル(33)に沿って前進させられる。さらに、この代替案は、合理的に安全性を増し、カニューレがTCL(106)の下の組織を保護する。溝のあるカニューレ(40)が配置された後、可撓性金属ガイドニードル(33)の案内の下、下位の
カニューレ状の指状プロング(20)を通る筋膜 切開器(25)が、上述したように、
図9Cに示されるように、カニューレの長手方向の溝を動き、
図9Dに示されるように、最後までTCLを越える。
【0078】
TCL(106)が切開された後、器具を回収し、靭帯が完全に分けられたことを確認し記録するために通常確認する。このために、(図示しない)エレベータを用いて、手のひらの皮膚と、その下の脂肪体を持ち上げ、そして、(図示しない)配向角度0°のスコープを傷に挿入する。靭帯の遠位部分で何らかの残存線維の疑いがある場合、スコープの直視下で、(図示しない)Stephensonタイプのメスを挿入し、最遠位線維を切開する。また、記録目的のために、画像のみが取得される。手のひらの皮膚が(図示しない)吸収性の縫い糸で2又は3針縫合され、手が適切に手当てされる。