特許第5768137号(P5768137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768137
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】シート状電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-538467(P2013-538467)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2012071036
(87)【国際公開番号】WO2013054593
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2013年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-226881(P2011-226881)
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鞍懸 淳
(72)【発明者】
【氏名】山道 裕司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】黒石 知樹
(72)【発明者】
【氏名】有吉 英朗
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−270014(JP,A)
【文献】 特開2011−034918(JP,A)
【文献】 特開2001−160397(JP,A)
【文献】 特開平02−056856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む電極合剤層が帯状の集電体の少なくとも片面に前記集電体の長手方向に間欠的に形成された長尺の電極基材を切断して、前記電極合剤層が形成された略矩形状の電極部と、前記電極部の一辺から突出し且つ前記電極合剤層が形成されていない領域を含むタブ部とを備えたシート状電極を製造する方法であって、
前記シート状電極の前記タブ部及び前記タブ部が突出した第1辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第1切断刃を用いて形成する工程と、
前記シート状電極の前記第1辺に対向する第2辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第2切断刃を用いて形成する工程と、
前記第1切断刃の、前記電極基材の長手方向及び幅方向の位置を調整する工程と、
前記第2切断刃の、前記電極基材の長手方向の位置を調整する工程と
を備え
前記タブ部及び前記第1辺を前記第1切断刃を用いて形成する工程では、前記タブ部及び前記第1辺の輪郭線と同じ形状を有する前記第1切断刃で、前記電極合剤層が形成されていない前記領域が前記タブ部の先端側に形成されるように、前記電極合剤層が形成された電極領域と、前記電極領域に隣接し且つ前記電極合剤層が形成されていない非電極領域とを跨いで前記電極基材を切断することを特徴とするシート状電極の製造方法。
【請求項2】
前記電極基材の幅は、前記シート状電極の幅と同じである請求項1に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項3】
前記シート状電極の四隅の少なくとも一つを、前記第1切断刃及び前記第2切断刃とは別の円弧状のコーナー切断刃を用いて円弧状に形成する工程を更に備える請求項1又は2に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項4】
前記シート状電極の四隅の少なくとも一つに形成する円弧の中心角が90°未満である請求項3に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項5】
前記コーナー切断刃の弧長が、このコーナー切断刃によって前記シート状電極の隅に形成された円弧の弧長より長い請求項3又は4に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項6】
前記シート状電極が負極用のシート状電極である請求項3〜5のいずれかに記載のシート状電極の製造方法。
【請求項7】
前記コーナー切断刃の、前記第1辺方向及びこれと直交する方向の位置を調整する工程を更に備える請求項3〜6のいずれかに記載のシート状電極の製造方法。
【請求項8】
前記シート状電極の前記第1辺及び前記第2辺を除く一対の側辺の少なくとも一方を、前記第1切断刃及び前記第2切断刃とは別の第3切断刃を用いて形成する工程を更に備える請求項1〜7のいずれかに記載のシート状電極の製造方法。
【請求項9】
前記第3切断刃の切断可能幅が、前記一対の側辺の前記少なくとも一方の長さより長い請求項8に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項10】
前記第3切断刃の、前記第1辺方向の位置を調整する工程を更に備える請求項8又は9に記載のシート状電極の製造方法。
【請求項11】
前記一対の側辺のうちの一方を前記第3切断刃を用いて形成し、他方を前記第1切断刃、前記第2切断刃、及び前記第3切断刃とは別の第4切断刃を用いて切断する請求項8〜10のいずれかに記載のシート状電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状電極の製造方法に関する。また、本発明は、当該製造方法を用いて製造されたシート状電極、及び当該シート状電極を備えたリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューター等の携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の更なる高容量化が進められている。エネルギー密度を更に向上させるため、アルミニウム箔等の金属箔を芯材とし、その内側面に接着層として熱融着性樹脂フィルムを積層した、可撓性を有するラミネートシートで外装したラミネート形リチウムイオン二次電池が多く使用されている。
【0003】
ラミネート形リチウムイオン二次電池に内蔵される電極積層体としては、例えば袋状のセパレータ内に収納したシート状の正極電極と、シート状の負極電極とを交互に重ねたものや(特許文献1参照)、セパレータをジグザクに折り曲げ、シート状の正極電極およびシート状の負極電極をセパレータを介して交互に積層したもの(特許文献2参照)等が知られている。
【0004】
これらの電極積層体に使用される正極及び負極のシート状電極は、一般に、集電体としての金属箔に活物質を含む電極合剤層が塗布された矩形状の電極部と、この矩形状の電極部の一辺から突出し且つ電極合剤層が塗布されていないタブ部とを備えている。このようなシート状電極は、帯状の集電体に電極合剤層を間欠的に塗布した電極基材を、所望するシート状電極の形状に一致する切断刃形状を有する金型で一度に打ち抜くことで製造される(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−302616号公報
【特許文献2】国際公開第06/120959号パンフレット
【特許文献3】特開2002−231230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ラミネート形リチウムイオン二次電池は、これを内蔵する機器の形状に応じたサイズ変更の自由度に優れるという利点を有している。ところが、当該リチウムイオン二次電池に内蔵されるシート状電極のサイズを変更するためには、シート状電極を打ち抜くための金型をシート状電極のサイズごとにあらかじめ準備しておき、生産しようとするシート状電極のサイズ変更のたびに金型を交換する必要がある。これは、多種類の金型を作成し保管しておくことによるコスト上昇や、金型交換による作業効率及び生産性の低下を招く。この問題は、シート状電極のサイズの種類数が増えれば増えるほど深刻である。従って、シート状電極の多品種生産は現実には困難である。
【0007】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、同一の切断刃を用いて、サイズが異なるシート状電極を効率よく低コストで製造することができる、ユニバーサルなシート状電極の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、安価なシート状電極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート状電極の製造方法では、活物質を含む電極合剤層が帯状の集電体の少なくとも片面に前記集電体の長手方向に間欠的に形成された長尺の電極基材を切断して、前記電極合剤層が形成された略矩形状の電極部と、前記電極部の一辺から突出し且つ前記電極合剤層が形成されていない領域を含むタブ部とを備えたシート状電極を製造する。前記製造方法は、前記シート状電極の前記タブ部及び前記タブ部が突出した第1辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第1切断刃を用いて形成する工程と、前記シート状電極の前記第1辺に対向する第2辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第2切断刃を用いて形成する工程と、前記第1切断刃の、前記電極基材の長手方向及び幅方向の位置を調整する工程と、前記第2切断刃の、前記電極基材の長手方向の位置を調整する工程とを備える。前記タブ部及び前記第1辺を前記第1切断刃を用いて形成する工程では、前記タブ部及び前記第1辺の輪郭線と同じ形状を有する前記第1切断刃で、前記電極合剤層が形成されていない前記領域が前記タブ部の先端側に形成されるように、前記電極合剤層が形成された電極領域と、前記電極領域に隣接し且つ前記電極合剤層が形成されていない非電極領域とを跨いで前記電極基材を切断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第1切断刃及び第2切断刃を用いて電極基材を切断する。従って、第1切断刃及び第2切断刃の電極基材に対する幅方向及び長手方向の位置を適宜変更することにより、同じ第1切断刃及び第2切断刃を用いてサイズが異なるシート状電極を製造することができる。その結果、サイズが異なる多種類のシート状電極を効率よく低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態1にかかるシート状電極の平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1にかかるシート状電極を製造するための電極基材の平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1にかかるシート状電極の製造方法において、電極基材に対する第1切断刃及び第2切断刃による切断位置を示した平面図である。
図4図4Aは、本発明の実施形態1にかかるシート状電極の製造方法において、電極基材を第1切断刃及び第2切断刃により切断して得られた電極基材片の平面図である。図4Bは、本発明の実施形態1にかかるシート状電極の製造方法によって形成されるシート状電極の第1隅部の拡大平面図である。
図5図5は、本発明の実施形態2にかかるシート状電極の平面図である。
図6図6は、本発明の実施形態2にかかるシート状電極の製造方法において、電極基材を第1切断刃及び第2切断刃により切断して得られた第1電極基材片の平面図である。
図7図7は、本発明の実施形態2にかかるシート状電極の製造方法において、電極基材を第1〜第4切断刃により切断して得られた第2電極基材片の平面図である。
図8図8は、本発明の実施形態3にかかるリチウムイオン二次電池の概略構成を示した透視平面図である。
図9図9は、本発明の実施形態3にかかるリチウムイオン二次電池を構成する電極積層体の構成を示した斜視図である。
図10図10Aは、本発明の実施例1,2において使用した負極用の電極基材のパンケーキを示した斜視図である。図10Bは、図10Aに示した負極用の電極基材の一部の平面図である。
図11図11は、本発明の実施例1,2において、負極用の電極基材を負極用の第1切断刃で一定ピッチで切断して得た負極用の第1電極基材片の平面図である。
図12図12は、本発明の実施例1,2において、負極用の第1電極基材片を第2切断刃で切断して得た負極用の第2電極基材片の平面図である。
図13図13は、本発明の実施例1,2において得た負極用のシート状電極の平面図である。
図14図14A図14B図14Cは、図13の部分14A,14B,14Cの部分拡大平面図である。
図15図15Aは、本発明の実施例1,2において使用した正極用の電極基材のパンケーキを示した斜視図である。図15Bは、図15Aに示した正極用の電極基材の一部の平面図である。
図16図16は、本発明の実施例1,2において、正極用の電極基材を正極用の第1切断刃で一定ピッチで切断して得た正極用の第1電極基材片の平面図である。
図17図17は、本発明の実施例1,2において、正極用の第1電極基材片を第2切断刃で切断して得た正極用の第2電極基材片の平面図である。
図18図18は、本発明の実施例1,2において得た正極用のシート状電極の平面図である。
図19図19A図19B図19Cは、図18の部分19A,19B,19Cの部分拡大平面図である。
図20図20Aは、本発明の実施例1,2において使用した負極用の第1切断刃の切断刃形状を示した平面図である。図20Bは、本発明の実施例1,2において使用した負極用及び正極用のの第2切断刃の切断刃形状を示した平面図である。図20Cは、本発明の実施例1,2において使用した正極用の第1切断刃の切断刃形状を示した平面図である。
図21図21A図21Dは、本発明の実施例1,2において使用したコーナー切断刃の切断刃形状を示した平面図である。
図22図22は、本発明の実施例1,2において得た電極積層体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシート状電極の製造方法では、活物質を含む電極合剤層が帯状の集電体の少なくとも片面に前記集電体の長手方向に間欠的に形成された長尺の電極基材を切断して、前記電極合剤層が形成された略矩形状の電極部と、前記電極部の一辺から突出し且つ前記電極合剤層が形成されていない領域を含むタブ部とを備えたシート状電極を製造する。前記製造方法は、前記シート状電極の前記タブ部及び前記タブ部が突出した第1辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第1切断刃を用いて形成する工程と、前記シート状電極の前記第1辺に対向する第2辺を、前記電極基材の幅よりも長い切断可能幅を有する第2切断刃を用いて形成する工程と、前記第1切断刃の、前記電極基材の長手方向及び幅方向の位置を調整する工程と、前記第2切断刃の、前記電極基材の長手方向の位置を調整する工程とを備える。前記タブ部及び前記第1辺を前記第1切断刃を用いて形成する工程では、前記タブ部及び前記第1辺の輪郭線と同じ形状を有する前記第1切断刃で、前記電極合剤層が形成されていない前記領域が前記タブ部の先端側に形成されるように、前記電極合剤層が形成された電極領域と、前記電極領域に隣接し且つ前記電極合剤層が形成されていない非電極領域とを跨いで前記電極基材を切断する。
【0015】
上記の本発明の製造方法、前記第1切断刃の、前記電極基材の長手方向及び幅方向の位置を調整する工程を備える。これにより、タブ部の幅やシート状電極の長さが異なるシート状電極を同一の第1切断刃を用いて製造することができる。
【0016】
上記の本発明の製造方法、前記第2切断刃の、前記電極基材の長手方向の位置を調整する工程を備える。これにより、長さが異なるシート状電極を同一の第2切断刃を用いて製造することができる。
【0017】
前記電極基材の幅は、前記シート状電極の幅と同じであることが好ましい。これにより、所望するシート状電極の幅に一致するように電極基材の側辺を切断する工程が不要になるので、シート状電極の製造工程を簡単化することができる。
【0018】
上記の本発明の製造方法、前記シート状電極の四隅の少なくとも一つを、前記第1切断刃及び前記第2切断刃とは別の円弧状のコーナー切断刃を用いて円弧状に形成する工程を更に備えることが好ましい。これにより、シート状電極の四隅の少なくとも一つを円弧状に形成することができる。更に、シート状電極のサイズが異なっても、四隅のそれぞれを同じコーナー切断刃を用いて円弧状にそれぞれ形成することができる。
【0019】
前記シート状電極の四隅の少なくとも一つに形成する円弧の中心角が90°未満であることが好ましい。これにより、コーナー切断刃の位置決め精度を緩和することができる。
【0020】
前記コーナー切断刃の弧長が、このコーナー切断刃によって前記シート状電極の隅に形成された円弧の弧長より長いことが好ましい。これにより、コーナー切断刃の位置決め精度を緩和することができる。
【0021】
前記シート状電極が負極用のシート状電極であることが好ましい。一般に、負極用のシート状電極は正極用のシート状電極より大きい。従って、負極用のシート状電極の四隅の少なくとも一つを円弧状に形成することにより、負極用シート状電極と正極用シート状電極とをセパレータを介して積層した電極積層体の取り扱い性が顕著に向上する。
【0022】
上記の本発明の製造方法が、前記コーナー切断刃の、前記第1辺方向及びこれと直交する方向の位置を調整する工程を更に備えることが好ましい。これにより、四隅の位置が異なる(即ち、サイズが異なる)シート状電極の四隅のそれぞれを同一のコーナー切断刃を用いて円弧状に形成することができる。
【0023】
上記の本発明の製造方法が、前記シート状電極の前記第1辺及び前記第2辺を除く一対の側辺の少なくとも一方を、前記第1切断刃及び前記第2切断刃とは別の第3切断刃を用いて形成する工程を更に備えることが好ましい。これにより、同一の電極基材から、幅が異なるシート状電極を容易に製造することができる。
【0024】
前記第3切断刃の切断可能幅が、前記一対の側辺の前記少なくとも一方の長さより長いことが好ましい。これにより、長さが異なるシート状電極を、同一の第3切断刃を用いて製造することができる。
【0025】
上記の本発明の製造方法が、前記第3切断刃の、前記第1辺方向の位置を調整する工程を更に備えることが好ましい。これにより、幅が異なるシート状電極を同一の第3切断刃を用いて製造することができる。
【0026】
前記一対の側辺のうちの一方を前記第3切断刃を用いて形成し、他方を前記第1切断刃、前記第2切断刃、及び前記第3切断刃とは別の第4切断刃を用いて切断することが好ましい。これにより、同一の電極基材から製造可能なシート状電極のサイズの種類数が更に増大する。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるシート状電極1の平面図である。このシート状電極1は、金属箔等からなる集電体の片面又は両面に活物質を含む電極合剤層が形成された略矩形状の電極部20と、電極部20の一辺から突出したタブ部27とを備える。タブ部27の全部又はその先端側(電極部20とは反対側)の少なくとも一部には電極合剤層は形成されておらず、集電体が露出している。図1において、電極合剤層が形成された領域には多数のドットを付している。
【0029】
シート状電極1は、正極及び負極のいずれにも使用することができる。但し、シート状電極1の極性に応じて、タブ部27の位置、シート状電極1の寸法、集電体や電極合剤層の材料などが適宜変更される。
【0030】
以下の説明の便宜のため、略矩形状の電極部20を取り囲む4辺のうち、タブ部27が形成された辺を第1辺21、第1辺21と対向する辺を第2辺22、第1辺21及び第2辺22以外の互いに対向する2辺を第1側辺23及び第2側辺24と呼ぶことにする。本例では、タブ部27は第2側辺24に沿って形成されている。第1辺21と第2辺22とは互いに平行であり、第1側辺23と第2側辺24とは互いに平行である。第1辺21及び第2辺22と第1側辺23及び第2側辺24とは直交する。また、第1側辺23の両端のうち第1辺21側の端にあるコーナーを第1隅部25a、第2辺22側の端にあるコーナーを第2隅部25b、第2側辺24の両端のうち第2辺22側の端にあるコーナーを第3隅部25c、第1辺21側の端にあるコーナーを第4隅部25dと呼ぶ。図1の例では、第4隅部25dは、タブ部27上に位置している。第1〜第4隅部25a〜25dの端縁は円弧状に形成されている。
【0031】
図1では、タブ部27は、第1辺21の第2側辺24側の端に第2側辺24に沿って形成されているが、第1側辺23の側の端に第1側辺23に沿って形成されていてもよく、あるいは、第1側辺23及び第2側辺24のいずれからも離れた第1辺21上の位置に形成されていてもよい。また、図1では、タブ部27は略形状の電極部20の短辺上に形成されているが、長辺上に形成されていてもよい。
【0032】
第1側辺23と第2側辺24とが対向する方向(図1の左右方向)を「幅方向」と呼び、第1辺21と第2辺22とが対向する方向(図1の上下方向)を「長手方向」と呼ぶ。なお、シート状電極1の「長手方向」は「幅方向」に対する便宜的な名称であって、シート状電極1の「長手方向」がシート状電極1の「長軸方向」を意味するものではない。
【0033】
次に、図1に示されたシート状電極1の製造方法を説明する。
【0034】
最初に、図2に示すような長尺の電極基材30を作成する。この電極基材30は、図2の紙面の上下方向に延びた帯状の集電体を含む。図2において、ドットを付した領域は、基材としての集電体の片面又は両面に、活物質を含む電極合剤層を形成した電極領域35である。ドットを付していない領域は、電極合剤層が形成されておらず、集電体が露出した非電極領域37である。電極領域35と非電極領域37とが、集電体の長手方向(図2の紙面の上下方向)に、一定ピッチで交互に規則的に配置されている。集電体の両面に電極領域35を形成する場合には、電極領域35及び非電極領域37の位置は両面で一致している。電極基材30の幅(図2の紙面において電極基材30の左右方向の寸法)W30は、製造しようとするシート状電極1の幅W1(図1参照)と同じである。電極基材30の作成方法は、特に制限はない。例えば、走行する帯状の集電体の表面に、印刷ロールを用いて電極合剤層の材料を転写形成することができる。
【0035】
次に、図3に示すように、破線41,42に沿って電極基材30を幅方向に横切るように切断する。
【0036】
破線41は、第1切断刃(より正確には、第1切断刃の切断刃形状)を示している。この第1切断刃41は、図1に示したシート状電極1のタブ部27とこのタブ部27が突出した第1辺21の輪郭線と同じ階段形状を有している。図3から容易に理解できるように、電極基材30の幅方向における第1切断刃41の寸法(即ち、第1切断刃41の切断可能幅)W41は、電極基材30の幅W30よりも十分に大きい。
【0037】
破線42は、上記の第1切断刃とは別個独立の第2切断刃(より正確には、第2切断刃の切断刃形状)を示している。この第2切断刃42は、電極基材30の幅方向と平行な直線形状を有している。図3から容易に理解できるように、電極基材30の幅方向における第2切断刃42の寸法(即ち、第2切断刃42の切断可能幅)W42は、電極基材30の幅W30よりも十分に大きい。
【0038】
例えば、ロール上に巻回された長尺の電極基材30を間欠的に巻き出しながら、最初に、第1切断刃41を用いて電極基材30を切断する。次いで、第2切断刃42を用いて電極基材30を切断する。これとは逆に、第2切断刃42を用いて切断した後、第1切断刃41を用いて切断してもよい。あるいは、第1切断刃41と第2切断刃42とを同時に用いて切断してもよい。
【0039】
第1切断刃41及び第2切断刃42は、例えば打ち抜き装置の昇降する部材(以下、「昇降部材」という)に取り付けることができる。第1切断刃41及び第2切断刃42を、同じ昇降部材に取り付けてもよいし、異なる2つの昇降部材にそれぞれ取り付けてもよい。第1切断刃41及び第2切断刃42の昇降部材に対する取り付け位置を変えることで、第1切断刃41及び第2切断刃42による切断位置を変更することができる。
【0040】
電極基材30に対する第1切断刃41の幅方向(図3の紙面左右方向)及び長手方向(図3の紙面上下方向)の位置は、形成しようとするシート状電極1のサイズに応じて設定される。例えば、第1切断刃41の幅方向の位置は、形成しようとするタブ部27の幅W27(図1参照)等を考慮して設定することができる。また、第1切断刃41の長手方向の切断位置は、電極領域35と非電極領域37との境界位置と、形成しようとするタブ部27との関係等を考慮して設定することができる。
【0041】
電極基材30に対する第2切断刃42の長手方向(図3の紙面上下方向)の位置は、形成しようとするシート状電極1のサイズに応じて設定される。具体的には、第1切断刃41の切断位置と第2切断刃42の切断位置とが形成しようとするシート状電極1の長手方向の寸法に一致するように、第2切断刃42の長手方向の切断位置を設定することができる。
【0042】
図4Aは、長尺の電極基材30を図3に示した第1切断刃41及び第2切断刃42により切断して得られた電極基材片31の平面図である。この電極基材片31の四隅を、図4Aに示すように、破線46a,46b,46c,46dに沿って切り落とす。破線46a,46b,46c,46dは、順に、第1〜第4コーナー切断刃(より正確には、第1〜第4コーナー切断刃の切断刃形状)を示している。第1コーナー切断刃46a,第2コーナー切断刃46b,第3コーナー切断刃46c,第4コーナー切断刃46dは、互いに別個独立している。
【0043】
第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dは、図1に示した第1〜第4隅部25a〜25dに形成された円弧とそれぞれ同じ曲率を有する円弧形状を有している。図4Aから容易に理解できるように、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの円弧の弧長(即ち、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの切断可能長さ)は、図1に示した第1〜第4隅部25a〜25dに形成される円弧の弧長よりも十分に長い。第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの円弧の中心角は、90°以下の範囲内で、可能な限り大きい方が好ましい。
【0044】
第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを用いた切断の順序は任意である。これら4つの切断刃46a〜46dを、1つずつ順に用いて切断してもよいし、2以上を(もちろん4つ全てを)同時に用いて切断してもよい。
【0045】
第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dは、例えば打ち抜き装置の昇降部材に取り付けることができる。第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを、同じ昇降部材に取り付けてもよいし、異なる2つ以上の昇降部材に別々に取り付けてもよい。第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの昇降部材に対する取り付け位置を変えることで、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断位置を変更することができる。具体的には、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの幅方向(図3の紙面左右方向)及び長手方向(図3の紙面上下方向)の各位置は、形成しようとするシート状電極1のサイズ(即ち、第1〜第4隅部25a〜25dの位置)に応じて設定することができる。
【0046】
かくして、図1に示したシート状電極1が得られる。
【0047】
以上のように、本実施形態1のシート状電極1の製造方法では、長尺の電極基材30の幅W30よりも長い切断可能幅を有する第1切断刃41及び第2切断刃42を用いて電極基材30を幅方向に横切るように切断して、タブ部27及び第1辺21と、第2辺22とを形成する。従って、電極基材30の幅W30、即ち、最終的に得ようとするシート状電極1の幅W1が変化する場合であっても、幅W30(または幅W1)が第1切断刃41の切断可能幅W41及び第2切断刃42の切断可能幅W42より大きくなければ、第1切断刃41及び第2切断刃42を交換する必要はなく、同じ第1切断刃41及び第2切断刃42を用いて切断することができる。
【0048】
シート状電極1のタブ部27の幅W27(図1参照)を変更する場合には、電極基材30に対する第1切断刃41の幅方向の相対的位置を変更すればよい。また、シート状電極1の電極部20の長さL20(図1参照)を変更する場合には、電極基材30に対する第1切断刃41及び/又は第2切断刃42の長手方向の相対的位置を変更すればよい。
【0049】
第1〜第4隅部25a〜25dの端縁は、第1切断刃41及び第2切断刃42とは別個独立した第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを用いて円弧状に形成する。従って、製造しようとするシート状電極1のサイズ変更にともない電極基材30に対する第1切断刃41及び/又は第2切断刃42の相対的位置を変更した場合であっても、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを交換する必要はなく、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの電極基材片31に対する相対的位置をそれぞれ変更すればよい。
【0050】
図4Bは、本実施形態1の製造方法によって得られたシート状電極1の第1隅部25aの拡大平面図である。第1隅部25aには、第1コーナー切断刃46aの一部のみを使用して円弧26が形成されている。従って、円弧26の両端26a,26bと円弧26の中心26cとで定義される円弧26の中心角θは、一般に90°未満になる。また、円弧26の両端26a,26bでの円弧26の接線27a,27bは、一般に第1辺21及び第1側辺23と一致しない。第1コーナー切断刃46aを使用して第1隅部25aにこのような円弧26を形成することにより、第1コーナー切断刃46aの電極基材片31に対する相対的位置決め精度を緩和することができる。図4Bでは、第1隅部25aについて説明したが、第2〜第4隅部25b〜25dについても同様である。
【0051】
従って、本実施形態1によれば、サイズが異なるシート状電極1を、第1切断刃41、第2切断刃42、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを交換することなく、それらによる切断位置を変更するだけで製造することができる。よって、サイズが異なる多種類のシート状電極1を効率よく低コストで製造することができる。
【0052】
上述した製造方法では、第1及び第2切断刃41,42による切断の後に、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断を行ったが、これらの切断の順序はこれに限定されない。例えば、第1切断刃41の切断の後に第1及び第4コーナー切断刃46a,46dによる切断を行い、第2切断刃42の切断の後に第2及び第3コーナー切断刃46b,46cによる切断を行ってもよい。あるいは、第1切断刃41及び第2切断刃42による切断の前に、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断を行ってもよい。
【0053】
また、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断のうちの一部又は全部を省略することができる。第1〜第4隅部25a〜25dを円弧状に形成する理由の1つは、リチウムイオン二次電池の製造過程において、シート状電極1の隅部が他の部材に引っかかることにより、歩留まりや生産性が低下するのを防ぐことにある。一般に、正極用のシート状電極は、負極用のシート状電極より小さい。従って、シート状電極の隅部が他の部材に引っかかる可能性は、正極用シート状電極より負極用シート電極の方が高い。よって、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断を、正極用シート状電極では省略し、負極用シート状電極についてのみ行うことも可能である。これにより、正極用シート状電極の製造工数を少なくすることができる。あるいは、後述する実施例1,2のように、タブ部27上の第4隅部25dを円弧状に形成するのを省略することもできる。
【0054】
第1切断刃41、第2切断刃42、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの構成は任意である。例えば、2つの刃で被切断物(電極基材30、電極基材片31)を挟んで被切断物内にせん断変形を生じさせて切断するせん断刃(例えば打ち抜き刃やハサミのようなもの)であってもよいし、被切断物に対して一方の側に配置された刃を被切断物に押し付けて切断するトムソン刃やこれに類似したものであってもよいし、これら以外の任意の切断刃であってもよい。
【0055】
被切断物(電極基材30、電極基材片31)と切断刃との相対的位置決めは、被切断物及び切断刃のいずれか一方のみを移動させてもよいし、両方を移動させてもよい。
【0056】
(実施形態2)
実施形態1では、幅W30(図2参照)を有する電極基材30を用いて、これと同一幅のシート状電極1を製造した。これに対して、本実施形態2では、電極基材30より狭幅のシート状電極2を製造する。
【0057】
以下の説明において、実施形態1に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して,それらの説明を省略する。以下、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態2を説明する。
【0058】
図5は、本発明の実施形態2にかかるシート状電極2の平面図である。このシート状電極2は、実施形態1のシート状電極1の幅W1よりも狭い幅W2を有する点で実施形態1のシート状電極1と異なる。これを除いて、本実施形態2のシート状電極2は実施形態1のシート状電極1と同じである。
【0059】
図5に示されたシート状電極5の製造方法を説明する。
【0060】
最初に、実施形態1と同様に、図2に示す長尺の電極基材30を作成する。電極基材30の幅W30は、製造しようとするシート状電極2の幅W2(図5参照)より大きい。
【0061】
次に、実施形態1と同様に、第1切断刃41及び第2切断刃42を用いて電極基材30を幅方向に横切るように切断して(図3参照)、図6に示す第1電極基材片31aを得る。
【0062】
この第1電極基材片31aの両側辺を、図6に示すように、破線43,44に沿って切り落とす。
【0063】
破線43は第3切断刃(より正確には、第3切断刃の切断刃形状)を示しており、破線44は第4切断刃(より正確には、第4切断刃の切断刃形状)を示している。第3切断刃43と第4切断刃44とは互いに別個独立している。第3切断刃43及び第4切断刃44は、第1電極基材片31aの長手方向(即ち、図6の紙面の上下方向。これは、図3に示した電極基材30の長手方向と一致する)と平行な直線形状を有している。図6から容易に理解できるように、第1電極基材片31aの長手方向における第3切断刃43の寸法(切断可能幅)W43及び同方向における第4切断刃44の寸法(切断可能幅)W44は、製造しようとするシート状電極2の第1側辺23の長さL23及び第2側辺24の長さL24(図5参照)より十分に長い。
【0064】
第3切断刃43及び第4切断刃44は、例えば打ち抜き装置の昇降部材に取り付けることができる。第3切断刃43及び第4切断刃44を、同じ昇降部材に取り付けてもよいし、異なる2つの昇降部材にそれぞれ取り付けてもよい。第3切断刃43及び第4切断刃44の昇降部材に対する取り付け位置を変えることで、第3切断刃43及び第4切断刃44による切断位置を変更することができる。
【0065】
第1電極基材片31aに対する第3切断刃43及び第4切断刃44の幅方向(図6の紙面左右方向)の位置は、形成しようとするシート状電極1のサイズに応じて設定される。例えば、第4切断刃44の幅方向の切断位置は、所望する幅W27(図5参照)のタブ部27が得られるように設定することができる。また、第3切断刃43及び第4切断刃44の幅方向の切断位置は、第3切断刃43の切断位置と第4切断刃44の切断位置との間隔が、形成しようとするシート状電極2の幅W2に一致するように設定することができる。
【0066】
第3切断刃43による切断と第4切断刃44による切断との順序は任意である。第3切断刃43による切断と第4切断刃44による切断とを同時に行うこともできる。
【0067】
図7は、第1電極基材片31aを図6に示した第3切断刃43及び第4切断刃44により切断して得られた第2電極基材片31bの平面図である。この第2電極基材片31bの四隅を、実施形態1の図4Aで説明したのと同様に、図7に破線で示した第1コーナー切断刃46a,第2コーナー切断刃46b,第3コーナー切断刃46c,第4コーナー切断刃46dで切り落とす。
【0068】
かくして、図5に示したシート状電極2が得られる。
【0069】
以上のように、本実施形態2のシート状電極2の製造方法では、実施形態1のシート状電極1の製造方法に加えて、第1電極基材片31aの両側辺を第3切断刃43及び第4切断刃44で切り落として第1側辺23及び第2側辺24を形成する工程を有する。従って、最終的に得ようとするシート状電極2の幅W2が電極基材片30の幅W30よりも小さい場合であっても、第3切断刃43及び第4切断刃44による切断工程を追加する以外は、実施形態1で使用した第1及び第2切断刃41,42、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを交換する必要はなく、本実施形態2でもこれらを実施形態1と同様に使用することができる。
【0070】
シート状電極2の幅W2を変更する場合には、第3切断刃43及び第4切断刃44の幅方向の切断位置を変更すればよい。また、シート状電極2のタブ部27の幅W27(図5図6参照)を変更する場合には、第1切断刃41及び/又は第4切断刃44の幅方向の位置を変更すればよい。
【0071】
最終的に得ようとするシート状電極2の第1側辺23の長さL23及び第2側辺24の長さL24が変化する場合であっても、第1側辺23の長さL23が第3切断刃43の切断可能幅W43より大きくなければ第3切断刃43を交換する必要はなく、また、第2側辺24の長さL24が第4切断刃44の切断可能幅W44より大きくなければ第4切断刃44を交換する必要はない。従って、同じ第3切断刃43及び第4切断刃44を用いて切断することができる。
【0072】
上記以外は、実施形態1で説明したように、シート状電極2のサイズに応じて第1切断刃41、第2切断刃42、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dの切断位置を変更すればよい。
【0073】
従って、本実施形態2によれば、サイズが異なるシート状電極2を、第1〜第4切断刃41〜44、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dを交換することなく、それらによる切断位置を変更するだけで製造することができる。よって、サイズが異なる多種類のシート状電極2を効率よく低コストで製造することができる。
【0074】
また、実施形態1と異なり、本実施形態2では、シート状電極2を製造するために、シート状電極2の幅W2より広幅の電極基材30を用いることができるので、シート状電極の幅に応じた電極基材30を製造する必要がない。この点も、サイズが異なる多種類のシート状電極の効率よい低コストの製造に有利である。
【0075】
上述した製造方法では、互い別個独立した第3切断刃43及び第4切断刃44を使用したが、いずれか一方の切断刃を省略してもよい。即ち、第3切断刃43(又は第4切断刃44)のみを用いて、これを幅方向に移動させてシート状電極2の第1及び第2側辺23,24の両方を形成してもよい。
【0076】
また、上述した製造方法では、幅W2を有するシート状電極2を得るために、第3切断刃43による切断と第4切断刃44による切断とを行ったが、これらのうちのいずれか一方の切断を省略することができる。即ち、図2に示した長尺の電極基材30の幅方向の両側辺のうちの一方を、シート状電極2の第1及び第2側辺23,24のうちの一方とすることができる。これにより、シート状電極2の製造工程を簡単化することができる。
【0077】
上述した製造方法では、第1及び第2切断刃41,42による切断、第3及び第4切断刃43,44による切断、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断をこの順に行ったが、これらの切断の順序はこれに限定されない。例えば、第3及び第4切断刃43,44による切断を行った後に、第1及び第2切断刃41,42による切断を行ってもよい。あるいは、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dによる切断を最初に行ってもよい。更には、最初に第1及び第2切断刃41,42による切断を行い、その後、第3切断刃43による切断の後に第1及び第2コーナー切断刃46a,46bによる切断を行い、第4切断刃44の切断の後に第3及び第4コーナー切断刃46c,46dによる切断を行ってもよい。これら以外にも、各切断刃による切断順序を任意に並び替えることができる。
【0078】
第3及び第4切断刃43,44の構成は任意であり、実施形態1で説明した第1及び第2切断刃41,42、第1〜第4コーナー切断刃46a〜46dと同様に、せん断刃やトムソン刃等、公知の切断刃を用いることができる。
【0079】
被切断物(電極基材30、第1及び第2電極基材片31a,31b)と切断刃との相対的位置決めは、被切断物及び切断刃のいずれか一方のみを移動させてもよいし、両方を移動させてもよい。
【0080】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、そのまま又は適宜変更して本実施形態2に適用される。
【0081】
(実施形態3)
本実施形態3では、本発明のシート状電極を備えたラミネート形リチウムイオン二次電池について説明する。
【0082】
図8は、本発明の実施形態3にかかるリチウムイオン二次電池60の概略構成を示した透視平面図である。
【0083】
図8において、61pは正極電極、61nは負極電極であり、これら正極電極61p及び負極電極61nは、実施形態1又は実施形態2で説明した方法にしたがって製造された本発明のシート状電極である。実施形態1,2で説明したように、正極電極61p及び負極電極61nは、略矩形状の電極部と、電極部の一辺から突出したタブ部とを備える。62pは正極電極61pのタブ部、62nは負極電極61nのタブ部である。63pは正極リード体、63nは負極リード体、64pは正極端子、64nは負極端子である。正極リード体63pの一端は正極タブ部62pに接続され、その他端は正極端子64pに接続されている。負極リード体63nの一端は負極タブ部62nに接続され、その他端は負極端子64nに接続されている。66は正極電極61pと負極電極61nとの間に配されたセパレータ、68はリチウムイオン二次電池60のラミネートシート(外装材)である。ラミネートシート68の外周端縁に沿った領域69は表裏のラミネートシート68が熱融着されたヒートシール部である。
【0084】
正極電極61pは、例えば、正極活物質、導電助剤、及びバインダ等を含有する正極合剤からなる層(正極合剤層)を集電体の片面または両面に形成した構造を有する。
【0085】
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる活物質からなる。このような正極活物質は、例えば、Li1+xMO2(−0.1<x<0.1、M:Co,Ni,Mn,Al,Mg等)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn24、元素の一部を他の元素で置き換えたスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、およびLiMPO4(M:Co,Ni,Mn,Fe等)で表されるオリビン型化合物等のいずれかからなることが好ましい。
【0086】
上記の層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、LiCoO2、LiNi1-xCox-yAly2(0.1≦x≦0.3,0.01≦y≦0.2)、および少なくともCo,NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/32,LiMn5/12Ni5/12Co1/62,LiNi3/5Mn1/5Co1/52,LiNi0.5Co0.2Mn0.3)のいずれかからなることが好ましい。
【0087】
正極電極61pの集電体は、例えば、アルミニウム箔、およびアルミニウム合金箔のいずれかからなることが好ましい。集電体の厚みは、電池の大きさおよび容量によって異なるが、例えば0.01〜0.02mmであることが好ましい。
【0088】
正極電極61pは、次の方法によって作製される。上述した正極活物質と、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、および繊維状炭素等の導電助剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダとを含む正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤を用いて均一に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物を調整する(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)。この組成物を帯状の集電体上に間欠的に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理により正極合剤層の厚みを調整する。このようにして得た長尺の正極基材(電極基材)を、上述した実施形態1,2の方法により所定形状に切断して正極電極61pが得られる。
【0089】
正極電極61pにおける正極合剤層の厚みは、片面当たり、30〜100μmであることが好ましい。また、正極合剤層における各構成成分の含有量は、正極活物質:90〜98質量%、導電助剤:1〜5質量%、バインダ:1〜5質量%であることが好ましい。
【0090】
正極リード体63pは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることが好ましい。正極リード体63pの厚みは、20〜300μmであることが好ましい。
【0091】
正極端子64pの材料は、電池60を使用する機器との接続を容易にする等の観点から決定される。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金などを用いることができる。
【0092】
正極端子64pの厚みは、50〜300μmであることが好ましい。正極端子64pの厚みが50μm以上であることによって、正極端子64pの溶接時に正極端子64pが切断されるのを防止できるとともに、正極端子64pが引っ張りおよび折り曲げによって断裂するのを防止できる。また、正極端子64pの厚みが300μm以下であることによって、ラミネートシート68のヒートシール部69に、正極端子64pとラミネートシート68との間に隙間が生じるのを防止できる。
【0093】
正極端子64pとラミネートシート68との接着強度を高めるために、正極端子64pのヒートシール部69に位置することが予定される領域に、予め、樹脂製の接着層(例えば、ラミネートシート68が備える熱融着性樹脂層と同種の樹脂からなる接着層)を設けてもよい。
【0094】
正極タブ部62pと正極リード体63pとの接続方法、及び、正極リード体63pと正極端子64pとの接続方法は、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による接着等、各種の方法を採用することができる。これらの中では、超音波溶接が好ましい。
【0095】
負極電極61nは、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含有する層(負極合剤層)を集電体の片面または両面に形成した構造を有する。
【0096】
負極活物質は、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、および炭素繊維等のリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物からなることが好ましい。
【0097】
あるいは、負極活物質は、Si,Sn,Ge,Bi,Sb,In等の元素、Si,Sn,Ge,Bi,Sb,Inの合金、リチウム含有窒化物、およびリチウム酸化物等のリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物(LiTi312等)、リチウム金属、およびリチウム/アルミニウム合金のいずれかからなることが好ましい。
【0098】
負極電極61nの集電体としては、銅箔が好適である。集電体の厚みは、電池の大きさまたは容量によって異なるが、例えば、0.005〜0.02mmであることが好ましい。
【0099】
負極電極61nは、次の方法によって作製される。上述した負極活物質と、バインダ(PVDF、スチレンブタジエンゴム(SBR)のようなゴム系バインダとカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合バインダ等)と、必要に応じて黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック等の導電助剤等とを含む負極合剤を、NMPや水等の溶剤を用いて均一に分散させたペースト状またはスラリー状の組成物を調整する(バインダは、溶剤に溶解していてもよい)。この組成物を帯状の集電体上に間欠的に塗布して得た長尺の負極基材(電極基材)を、上述した実施形態1,2の方法により所定形状に切断して負極電極61nが得られる。必要に応じてプレス処理により負極合剤層の厚みまたは密度を調整してもよい。
【0100】
負極電極61nにおける負極合剤層の厚みは、片面当たり、30〜100μmであることが好ましい。また、負極合剤層における各構成成分の含有量は、負極活物質:90〜98質量%、バインダ:1〜5質量%であることが好ましい。また、導電助剤を用いる場合には、負極合剤層中の導電助剤の含有量は、1〜5質量%であることが好ましい。
【0101】
負極リード体63nは、銅からなることが好ましい。負極リード体63nの厚みは、20〜300μmであることが好ましい。
【0102】
負極端子64nの材料は、電池60を使用する機器との接続を容易にする等の観点から決定される。例えば、ニッケル、ニッケルメッキをした銅、およびニッケル−銅クラッドなどを用いることができる。
【0103】
負極端子64nの厚みは、正極端子64pと同様に、50〜300μmであることが好ましい。負極端子64nの厚みが50μm以上であることによって、負極端子64nの溶接時に負極端子64nが切断されるのを防止できるとともに、負極端子64nが引っ張りおよび折り曲げによって断裂するのを防止できる。また、負極端子64nの厚みが300μm以下であることによって、ラミネートシート68のヒートシール部69に、負極端子64nとラミネートシート68との間に隙間が生じるのを防止できる。
【0104】
負極端子64nとラミネートシート68との接着強度を高めるために、負極端子64nのヒートシール部69に位置することが予定される領域に、予め、樹脂製の接着層(例えば、ラミネートシート68が備える熱融着性樹脂層と同種の樹脂からなる接着層)を設けてもよい。
【0105】
負極タブ部62nと負極リード体63nとの接続方法、及び、負極リード体63nと負極端子64nとの接続方法は、例えば、抵抗溶接、超音波溶接、レーザー溶接、カシメ、導電性接着剤による接着等、各種の方法を採用することができる。これらの中では、超音波溶接が好ましい。
【0106】
セパレータ66は、正極電極61pと負極電極61nとを分離するとともにリチウムイオンを透過させる多孔質フィルムを含む。セパレータ66は、電池60が異常発熱して高温(例えば100〜140℃)に達したときに溶融して孔が塞がる安全機構(シャットダウン特性)を有していることが好ましい。このような観点から、多孔質フィルムは、融点が80〜140℃程度の熱可塑性樹脂からなることが好ましく、具体的にはポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ポリマーからなることが好ましい。多孔質フィルムの厚みは、特に制限はないが、10〜50μmであることが好ましい。
【0107】
セパレータ66は、上記の多孔質フィルム上に板状の無機微粒子層をコーティングにより形成したものであってもよい。これにより、異常発熱時のセパレータ66の熱収縮を抑制して安全性を向上させることができる。
【0108】
あるいは、セパレータ66は、上記の多孔質フィルムと耐熱性多孔質基体との積層構造を有していてもよい。耐熱性多孔質基体として、例えば耐熱温度が150℃以上の繊維状物を用いることができる。繊維状物は、セルロース及びその変成体、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアミドイミドおよびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で形成することができる。具体的には上記材料からなる不織布からなることが好ましい。
【0109】
多孔質基体の「耐熱性」は、軟化等による実質的な寸法変化が生じないことを意味する。具体的には、多孔質基体の室温での長さに対する収縮の割合(収縮率)が5%以下を維持することができる上限温度(耐熱温度)が、セパレータのシャットダウン温度よりも十分に高いか否かで耐熱性を評価する。シャットダウン後のラミネート形電池の安全性を高めるために、多孔質基体は、シャットダウン温度よりも20℃以上高い耐熱温度を有することが望ましく、より具体的には、多孔質基体の耐熱温度は、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
【0110】
電解液として、例えば、高誘電率溶媒または有機溶媒にLiPF6,LiBF4等の溶質を溶解した溶液(非水電解液)を用いることができる。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびγ−ブチロラクトン(BL)のいずれかを用いることができる。有機溶媒としては、直鎖状のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)等の低粘度溶媒を用いることができる。
【0111】
電解液の溶媒としては、上述した高誘電率溶媒と低粘度溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。また、上述した溶液に、PVDF、ゴム系の材料、脂環エポキシ、およびオキセタン系の三次元架橋構造を有する材料等を混合して固化し、ポリマー電解液としてもよい。
【0112】
正極電極61pと負極電極61nとの間にセパレータ66を介在させて、正極電極61pと負極電極61nとを交互に積層して電極積層体を作成する。
【0113】
電極積層体の作成方法は、特に制限はない。例えば、図9に示すように、セパレータ66を一定間隔で山折りと谷折りとを交互に繰り返すことでジグザグ状に折り曲げ、セパレータ66の一方の面側から各谷折り部分に正極電極61pを挟み込み、他方の面側から各谷折り部分に負極電極61nを挟み込む。このとき、正極タブ部62p及び負極タブ部62nは、セパレータ66の同じ辺から外にはみ出す。あるいは、セパレータ66で矩形の複数の袋を形成し、セパレータ66からなる各袋内に正極電極61pを挿入したものを、負極電極61nと交互に積層してもよい。
【0114】
かくして得られた電極積層体からはみ出した複数の正極電極61pの正極タブ部62pに正極リード体63pを接続し、正極リード体63pに正極端子64pを接続する。同様に、電極積層体からはみ出した複数の負極電極61nの負極タブ部62nに負極リード体63nを接続し、負極リード体63nに負極端子64nを接続する。
【0115】
このようにして得た電極積層体の上下に略矩形の2枚のラミネートシート68を配置し、正極端子64p及び負極端子64nが形成された辺を除く3辺に沿って2枚のラミネートシート68を熱融着してラミネートシート68を袋状に形成する。2枚のラミネートシートを用いるのではなく、1枚の長方形のラミネートシートを電極積層体を挟むように折り曲げて重ね合わせ、重ね合わされたラミネートシート68を2辺に沿って熱融着してラミネートシート68を袋状に形成してもよい。その後、ラミネートシート68の袋内に電解液を注入する。最後に、熱融着していない辺に沿って、正極及び負極のリード体63p,63nの一部及び正極及び負極の端子64p,64nの一部とともにラミネートシート68を熱融着して、リチウムイオン二次電池60が得られる。
【0116】
ラミネートシート68の構成は、特に制限はなく、例えばラミネート形リチウムイオン二次電池の外装材として使用されている公知のラミネートシートを用いることができる。例えば、アルミニウムからなる基層の片面に熱融着性樹脂層として変性ポリオレフィン層が積層された多層シートを用いることができる。
【0117】
上記のリチウムイオン二次電池60は例示に過ぎず、本発明の正極用シート状電極及び負極用シート状電極を用いたリチウムイオン二次電池は上記に限定されない。例えば、公知のリチウムイオン二次電池に本発明の正極用シート状電極及び負極用シート状電極を適用することができる。
【0118】
上記の例では、正極端子64p及び負極端子64nが、略矩形のラミネートシート68の同じ短辺から引き出されているが、異なる辺から引き出されていてもよい。
【0119】
上記では、ラミネート形のリチウムイオン二次電池の例を説明したが、本発明のシート状電極は、ラミネート形以外のリチウムイオン二次電池に利用することができる。
【実施例】
【0120】
(実施例1,2)
寸法のみが異なる実施例1,2に係るラミネート形リチウムイオン二次電池を以下のように製造した。
【0121】
<負極用のシート状電極の製造>
負極用のシート状電極を以下のようにして製造した。
【0122】
銅箔からなる帯状の集電体の両面の対応する領域に、負極活物質を含む電極合剤を一定ピッチで間欠的に塗布して、電極領域及び非電極領域が交互に形成された長尺の負極用の電極基材30nを作成した。図10Aは電極基材30nを巻き取ったパンケーキの斜視図、図10Bは負極用の電極基材30nの一部の平面図である。実施例1,2に係る電極基材30nの幅W30n、負極合剤層が形成された電極領域35nの電極基材30nの長手方向の長さL35n、非電極領域37nの電極基材30nの長手方向の長さL37nの各値を図10Bに併せて示す。実施例1と実施例2とは、電極基材30nの幅W30nのみが異なる。
【0123】
図10A及び図10Bに示した長尺の電極基材30nをパンケーキから断続的に巻き出しながら、図10Bの破線41nに沿って電極基材30nを一定ピッチで切断した。破線41nは負極用の第1切断刃を示しており、その切断刃形状を図20Aに示す。図20Aに示されているように、第1切断刃41nは階段状の切断刃形状を有していた。第1切断刃41nの段差Hn、及びその切断可能幅W41nの各値を図20Aに併せて示す。実施例1,2では、同じ第1切断刃41nを用いた。第1切断刃41nは、打ち抜き装置の昇降部材に固定した。電極基材30nに対する第1切断刃41nの幅方向の相対的位置は、最終的に得ようとする実施例1,2の負極用シート状電極のタブ部27nの幅W27n(後述する図11図13参照)を考慮して設定した。実施例1と実施例2とで幅W27nが異なるので、第1切断刃41nの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0124】
図11は、負極用の電極基材30nを負極用の第1切断刃41nでピッチPnで切断して得た負極用の第1電極基材片31n−1の平面図である。各部の寸法を図11に併せて示す。実施例1と実施例2とは、タブ部の幅W27nが異なる。
【0125】
第1電極基材片31n−1を、図11に示す破線42に沿って切断した。破線42は第2切断刃を示しており、その切断刃形状を図20Bに示す。図20Bに示されているように、第2切断刃42は直線状の切断刃形状を有していた。第2切断刃42の切断可能幅W42の値を図20Bに併せて示す。実施例1,2では、同じ第2切断刃42を用いた。第2切断刃42nは、打ち抜き装置の昇降部材に固定した。第1電極基材片31n−1に対する第2切断刃42の長手方向の位置は、最終的に得ようとする実施例1,2の負極用シート状電極の電極部20nの長さL20n(後述する図13を参照)を考慮して設定した。実施例1と実施例2とで長さL20nが異なるので、第2切断刃42nの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0126】
図12は、負極用の第1電極基材片31n−1を第2切断刃42で切断して得た負極用の第2電極基材片31n−2の平面図である。
【0127】
次いで、図12に示す第2電極基材片31n−2の電極領域35n(後に電極部20nとなる部分)の3つの隅部125n−a,125n−b,125n−cを破線146a,146b,146cに沿って円弧形状に切り落とした。破線146a,146b,146cは、隅部125n−a,125n−b,125n−cの切断に用いたコーナー切断刃を示しており、その切断刃形状を図21A図21B図21Cに示す。コーナー切断刃146a,146b,146cは、いずれも半径Rが20mm、中心角θcが90度の円弧形状を有していた。実施例1,2では、同じコーナー切断刃146a,146b,146cを用いた。コーナー切断刃146a,146b,146cは、打ち抜き装置の同じ昇降部材に固定した。隅部125n−a,125n−b,125n−cの位置に応じて、コーナー切断刃146a,146b,146cの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0128】
かくして、図13に示す負極用のシート状電極(負極電極)1nを得た。実施例1,2のシート状電極1nの各部の寸法を図13に併せて示す。
【0129】
図14A図14B図14Cは、電極部20nの3つの隅部125n−a,125n−b,125n−cを含む図13の部分14A,14B,14Cの拡大平面図である。隅部125n−a,125n−b,125n−cに形成された円弧126n−a,126n−b,126n−cの中心角θa、及び当該円弧の両端によって定義される、円弧の幅方向寸法Wa及び長手方向寸法Laの値を図14A図14B図14Cに併せて示す。これらは、実施例1と実施例2とで同じである。
【0130】
上記の実施例1と実施例2とでは、作成したシート状電極1nの寸法は互いに異なる。しかしながら、実施例1のシート状電極1n及び実施例2のシート状電極1nをそれぞれ製造する過程で使用した第1切断刃41n、第2切断刃42、コーナー切断刃146a,146b,146cは同じであった。このように、実施例1,2では、同じ切断刃を用いて、シート状電極1nのサイズに応じて切断刃の昇降部材に対する取り付け位置を変更するだけで、サイズが異なる実施例1,2のシート状電極1nを製造することができた。
【0131】
<正極用のシート状電極の製造>
正極用のシート状電極を以下のようにして製造した。
【0132】
アルミニウム箔からなる帯状の集電体の両面の対応する領域に、正極活物質を含む電極合剤を一定ピッチで間欠的に塗布して、電極領域及び非電極領域が交互に形成された長尺の正極用の電極基材30pを作成した。図15Aは電極基材30pを巻き取ったパンケーキの斜視図、図15Bは正極用の電極基材30pの一部の平面図である。実施例1,2に係る電極基材30pの幅W30p、正極合剤層が形成された電極領域35pの電極基材30pの長手方向の長さL35p、非電極領域37nの電極基材30pの長手方向の長さL37pの各値を図15Bに併せて示す。実施例1と実施例2とは、電極基材30pの幅W30pのみが異なる。
【0133】
図15A及び図15Bに示した長尺の電極基材30pをパンケーキから断続的に巻き出しながら、図15Bの破線41pに沿って電極基材30pを一定ピッチで切断した。破線41pは正極用の第1切断刃を示しており、その切断刃形状を図20Cに示す。図20Cに示されているように、第1切断刃41pは階段状の切断刃形状を有していた。第1切断刃41pの段差Hp、及びその切断可能幅W41pの各値を図20Cに併せて示す。実施例1,2では、同じ第1切断刃41pを用いた。第1切断刃41pは、打ち抜き装置の昇降部材に固定した。電極基材30pに対する第1切断刃41pの幅方向の相対的位置は、最終的に得ようとする実施例1,2の正極用シート状電極のタブ部27pの幅W27p(後述する図16図18参照)を考慮して設定した。実施例1と実施例2とで幅W27pが異なるので、第1切断刃41pの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0134】
図16は、正極用の電極基材30pを正極用の第1切断刃41pでピッチPpで切断して得た正極用の第1電極基材片31p−1の平面図である。各部の寸法を図16に併せて示す。実施例1と実施例2とは、タブ部の幅W27pが異なる。
【0135】
第1電極基材片31p−1を、図16に示す破線42に沿って切断した。破線42は第2切断刃を示しており、その切断刃形状を図20Bに示す。実施例1,2では、同じ第2切断刃42を用いた。第2切断刃42は、負極用の第1電極基材片31n−1を切断する際に用いた第2切断刃42(図11参照)と同じである。第2切断刃42pは、打ち抜き装置の昇降部材に固定した。第1電極基材片31p−1に対する第2切断刃42の長手方向の位置は、最終的に得ようとする実施例1,2の正極用シート状電極の電極部20pの長さL20p(後述する図18を参照)を考慮して設定した。実施例1と実施例2とで長さL20pが異なるので、第2切断刃42pの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0136】
図17は、正極用の第1電極基材片31p−1を第2切断刃42で切断して得た正極用の第2電極基材片31p−2の平面図である。
【0137】
次いで、図17に示す第2電極基材片31p−2の電極領域35p(後に電極部20pとなる部分)の3つの隅部125p−b,125p−c,125p−dを破線146b,146c,146dに沿って円弧形状に切り落とした。破線146b,146c,146dは、隅部125p−b,125p−c,125p−dの切断に用いたコーナー切断刃を示しており、その切断刃形状を図21B図21C図21Dに示す。コーナー切断刃146b,146c,146dは、いずれも半径Rが20mm、中心角θcが90度の円弧形状を有していた。実施例1,2では、同じコーナー切断刃146b,146c,146dを用いた。コーナー切断刃146b,146cは、負極用の第2電極基材片31n−2の隅部125n−b,125n−cを切断する際に用いたコーナー切断刃146b,146c(図12参照)と同じである。コーナー切断刃146b,146c,146dは、打ち抜き装置の同じ昇降部材に固定した。隅部125p−b,125p−c,125p−dの位置に応じて、コーナー切断刃146b,146c,146dの昇降部材に対する取り付け位置を実施例1と実施例2とで変更した。
【0138】
かくして、図18に示す正極用のシート状電極(正極電極)1pを得た。実施例1,2のシート状電極1pの各部の寸法を図18に併せて示す。
【0139】
図19A図19B図19Cは、電極部20pの3つの隅部125p−b,125p−c,125p−dを含む図18の部分19A,19B,19Cの拡大平面図である。隅部125p−b,125p−c,125p−dに形成された円弧126p−b,126p−c,126p−dの中心角θa、及び当該円弧の両端によって定義される、円弧の幅方向寸法Wa及び長手方向寸法Laの値を図19A図19B図19Cに併せて示す。これらは、実施例1と実施例2とで同じである。
【0140】
上記の実施例1と実施例2とでは、作成したシート状電極1pの寸法は互いに異なる。しかしながら、実施例1のシート状電極1p及び実施例2のシート状電極1pをそれぞれ製造する過程で使用した第1切断刃41p、第2切断刃42、コーナー切断刃146b,146c,146dは同じであった。このように、実施例1,2では、同じ切断刃を用いて、シート状電極1pのサイズに応じて切断刃の昇降部材に対する取り付け位置を変更するだけで、サイズが異なる実施例1,2のシート状電極1pを製造することができた。
【0141】
<ラミネート形リチウムイオン二次電池の製造>
図9で説明したように、ジグザグ状に折り曲げたセパレータ66の一方の面側の各谷折り部分に上記の負極用シート状電極1nを挟み込み、他方の面側の各谷折り部分に上記の正極用シート状電極1pを挟み込んで、図22に示す電極積層体70を得た。図22において、72は、電極積層体70の4辺をそれぞれ固定するテープである。
【0142】
電極積層体70の負極タブ部27n及び正極タブ部27pに、公知の方法で負極端子及び正極端子を接続した。次いで、電極積層体70を、電解液とともに、袋状のラミネートシート内に収納し、密閉して、実施例1,2のラミネート形リチウムイオン二次電池を得た。
【0143】
上述したように、実施例1と実施例2とで同じ切断刃を用いてサイズが異なるシート状電極を製造することができた。
【0144】
更に、実施例1,2では、負極用のシート状電極1n及び正極用のシート状電極1pの製造において、第2切断刃42、コーナー切断刃146b,146cを共通化することができる。従って、切断刃の種類数を低減することが可能である。
【0145】
以上に説明した実施形態及び実施例は、いずれもあくまでも本発明の技術的内容を明らかにする意図のものであって、本発明はこのような具体例にのみ限定して解釈されるものではなく、その発明の精神と請求の範囲に記載する範囲内でいろいろと変更して実施することができ、本発明を広義に解釈すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の利用分野は特に制限はなく、シート状正極電極とシート状負極電極とがセパレータを介して交互に配置される二次電池の分野において特に好ましく利用することができる。特に、多様なサイズが要求される二次電池に好適である。
【符号の説明】
【0147】
1,2 シート状電極
20 電極部
21 電極部の第1辺
22 電極部の第2辺
23 電極部の第1側辺
24 電極部の第2側辺
25a,25b,25c,25d シート状電極の隅部
26 コーナー切断刃によって形成された円弧
27 タブ部
30 電極基材
35 電極領域
37 非電極領域
41 第1切断刃
42 第2切断刃
43 第3切断刃
44 第4切断刃
46a,46b,46c,46d コーナー切断刃
60 リチウムイオン二次電池
61p 正極電極(正極用シート状電極)
61n 負極電極(負極用シート状電極)
62p 正極電極のタブ部
62n 負極電極のタブ部
66 セパレータ
68 外装材(ラミネートシート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22