(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機、空調対象熱交換器、膨張弁および外部熱源熱交換器が冷凍サイクルを形成するように、冷媒流路を介して接続され、前記冷凍サイクルのうち前記空調対象熱交換器側を流れる空調対象側冷媒の冷熱または温熱のうち、空調の目標温度に対する空調能力の余剰分に相当する冷熱または温熱を、前記外部熱源熱交換器側を流れる外部熱源側冷媒に、当該外部熱源側冷媒と前記空調対象側冷媒とが導入される冷媒熱交換器を用いて移転させる熱移転手段を前記空調対象熱交換器と前記膨張弁との間に備え、前記冷媒熱交換器において熱交換に用いられる前記外部熱源側冷媒の量を調整する冷媒量調整手段を前記膨張弁と前記外部熱源熱交換器との間に備えるヒートポンプ式空調機において、
空調対象の温度を取得する温度取得ステップと、
前記空調対象の温度と前記空調の目標温度との差が所定以下になった場合に、前記熱移転手段による熱移転を開始させる制御ステップと、
を実行する、ヒートポンプ式空調機の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、空調機が、圧縮機の最小能力が空調負荷を上回る部分負荷運転を行っている場合に、圧縮機の運転停止/再開が繰り返される断続運転が行われ、空調機のCOP(Coefficient Of Performance)が低下することが知られている。
【0005】
図8は、従来の空調機における断続運転の際の室温変動(冷房運転の場合)および圧縮機状態を示す図である。
図8に示した例によれば、冷房運転によって室温が低下し、設定温度Tsを下回ったことが検知されると同時に圧縮機の運転が停止され、停止後暫くすると室温が上昇して圧縮機の運転が再開される断続運転が行われていることが分かる。このとき、圧縮機の最小能力が空調負荷を上回る部分負荷で運転が行われるため、圧縮機の運転が再開されると直ぐに室温が設定温度Tsを下回る(暖房運転の場合、上回る)こととなり、短時間に圧縮機の停止/再開が繰り返されてしまう。
【0006】
また、部分負荷運転では、圧縮機の能力が空調負荷に比べて高いため、室温が設定温度を超えて冷房または暖房されるオーバーシュートが発生し易く、電力消費が大きい。このため、上記に説明したような断続運転は、従来の空調機におけるCOP低下の要因となっていた。また、断続運転では、空調対象の室温が短時間に上昇/下降を繰り返すために、居住者の快適性が損なわれるという問題や、運転の停止/再開を繰り返すために、空調機の製品寿命に影響を与えるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑み、圧縮機の最小能力が空調負荷を上回るような場合にも、圧縮機の連続運転を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、空調対象熱交換器側を流れる冷媒(熱媒)の冷熱または温熱の一部を、外部熱源熱交換器側を流れる冷媒に移転させることで、圧縮機の最小能力が空調負荷を上回るような場合にも、圧縮機の連続運転を可能とし、空調機のCOP低下を防止することを可能にした。
【0009】
詳細には、本発明は、圧縮機、空調対象熱交換器、膨張弁および外部熱源熱交換器が冷凍サイクルを形成するように、冷媒流路を介して接続されたヒートポンプ式空調機であって、前記冷凍サイクルのうち前記空調対象熱交換器側を流れる空調対象側冷媒の冷熱または温熱の一部を、熱交換によって、前記外部熱源熱交換器側を流れる外部熱源側冷媒に移転させる熱移転手段を備える、ヒートポンプ式空調機である。
【0010】
冷凍サイクルは、圧縮機および膨張弁を境界として、圧縮機を通過し、膨張弁に到達するまでの冷媒が流れる凝縮側、および膨張弁を通過し、圧縮機に到達するまでの冷媒が流れる蒸発側に区分けすることが出来る。本発明では、これらの圧縮機および膨張弁を境界として区分けされた冷凍サイクルの各部分のうち、空調対象熱交換器を含む部分を空調対象熱交換器側と称し、外部熱源熱交換器を含む部分を外部熱源熱交換器側と称する。なお、空調対象熱交換器側および外部熱源熱交換器側と、凝縮側および蒸発側との対応関係は、ヒートポンプ式空調機が冷房運転であるか暖房運転であるかで交代する。
【0011】
また、本発明において、前記熱移転手段は、前記空調対象側冷媒の冷熱または温熱のうち、空調の目標温度に対する空調能力の余剰分に相当する冷熱または温熱を、熱交換によって前記外部熱源側冷媒に移転させてもよい。
【0012】
即ち、本発明に係るヒートポンプ式空調機では、空調能力の余剰分に相当する冷熱または温熱を、熱交換によって空調対象側冷媒から外部熱源側冷媒に移転させることで、空調対象の過度な温度変化を防ぎ、圧縮機の運転停止/再開が繰り返される断続運転を効果的に抑制し、連続運転可能な期間を延ばすことが可能となる。
【0013】
また、前記ヒートポンプ式空調機は、外部熱源として熱源水の供給を受けて運転を行うヒートポンプであり、前記熱移転手段は、前記外部熱源熱交換器に導入される前記熱源水の少なくとも一部を、前記空調対象側冷媒と熱交換した後に、前記外部熱源熱交換器に導入することで、前記空調対象側冷媒の冷熱または温熱の一部を、前記外部熱源側冷媒に移転させてもよい。
【0014】
ここで、熱源水としては、例えば、冷却塔等の冷却水温度調節装置から供給される冷却水や、ボイラー等から供給される温水が挙げられる。本発明では、外部熱源熱交換器に導入される熱源水の一部または全部を、一旦空調対象側に設けられた補助水熱交換器等に導入して空調対象側冷媒と熱交換した後に、外部熱源熱交換器に導入することで、空調対象側冷媒の冷熱または温熱の一部を、外部熱源側冷媒に移転させる。
【0015】
また、本発明に係るヒートポンプ式空調機は、前記熱移転手段による、前記外部熱源熱交換器に導入される前記熱源水の、前記空調対象側冷媒との熱交換に用いられる水量を調整する水量調整手段を更に備えてもよい。
【0016】
このような水量調整手段を備えることで、熱移転による冷熱または温熱の移転量が、空調能力の余剰分に相当する冷熱または温熱となるように水量を調整し、連続運転可能な期間を延ばすことが可能となる。
【0017】
また、前記熱移転手段は、前記外部熱源側冷媒と前記空調対象側冷媒とが導入される冷媒熱交換器を用いて、前記空調対象側冷媒の冷熱または温熱の一部を、前記外部熱源側冷媒に移転させてもよい。
【0018】
このような方法で冷熱または温熱を移転することで、より簡易な構成で、冷媒間の熱移転を行うことが出来る。特に、冷却水等の熱源水を用いない方式のヒートポンプ式空調機(例えば、外部熱源熱交換器が空冷式であるヒートポンプ式空調機)においても、部分負荷運転時に冷媒間の熱移転を行い、断続運転を抑制することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係るヒートポンプ式空調機は、前記冷媒熱交換器において熱交換に用いられる前記冷媒の量を調整する冷媒量調整手段を更に備えてもよい。
【0020】
このような冷媒量調整手段を備えることで、熱移転による冷熱または温熱の移転量が、空調能力の余剰分に相当する冷熱または温熱となるように冷媒の量を調整し、連続運転可能な期間を延ばすことが可能となる。
【0021】
また、本発明に係るヒートポンプ式空調機は、空調対象の温度を取得する温度取得手段と、前記空調対象の温度と空調の目標温度との差が所定以下になった場合に、前記熱移転手段による熱移転を開始させる制御手段と、を更に備えてもよい。
【0022】
空調対象の温度(例えば、室温)と空調の目標温度との差が所定以下になった場合に、上記説明したような熱移転を開始させることで、目標温度に所定以上近づいた場合に空調能力を下げて連続運転を行うこと、即ち、目標温度を通過して断続運転が行われてしまうことを抑制すること、が可能となる。
【0023】
また、本発明に係るヒートポンプ式空調機は、前記圧縮機および前記外部熱源熱交換器に対して、複数の前記空調対象熱交換器が接続され、前記複数の空調対象熱交換器のうち、運転停止に係る空調対象熱交換器の数が所定以下となった場合に、前記熱移転手段による熱移転を開始させる制御手段を更に備えてもよい。
【0024】
このような制御手段を備えることで、例えば空調対象の建物の各室に空調対象熱交換器が設けられているような空調システムにおいても、圧縮機の断続運転を抑制し、連続運転を行うことが可能となる。
【0025】
また、本発明は、ヒートポンプ式空調機の制御方法としても把握することが可能である。例えば、本発明は、圧縮機、空調対象熱交換器、膨張弁および外部熱源熱交換器が冷凍サイクルを形成するように、冷媒流路を介して接続され、前記冷凍サイクルのうち前記空調対象熱交換器側を流れる空調対象側冷媒の冷熱または温熱の一部を、熱交換によって、前記外部熱源熱交換器側を流れる外部熱源側冷媒に移転させる熱移転手段を備えるヒートポンプ式空調機において、空調対象の温度を取得する温度取得ステップと、前記空調対象の温度と空調の目標温度との差が所定以下になった場合に、前記熱移転ステップにおける熱移転を開始させる制御ステップと、を実行する、ヒートポンプ式空調機の制御方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧縮機の最小能力が空調負荷を上回るような場合にも、圧縮機の連続運転を可能とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るヒートポンプ式空調機の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1の概略構成を示す図である。ヒートポンプ式空調機1は、冷却塔(クーリングタワー)等の冷却水温度調節装置(図示は省略する)によって温度制御された冷却水(熱源水)の供給を受けて冷媒の温度調節を行う水熱源ヒートポンプ式の空調機であり、供給された冷却水を外部の熱源として冷媒との間で熱交換を行う外部熱源熱交換器としての水熱交換器17、冷媒を圧縮する圧縮機14、冷媒を膨張させる膨張弁16、冷媒と空調対象の空気との間で熱交換を行うことで空調を行う空調対象熱交換器としての空気熱交換器13、および冷媒の流路を切り替えることで冷房運転と暖房運転とを切り替える四方弁15を有する。これらの構成要素は冷媒管路19で接続されることで冷凍サイクルを形成し、四方弁15の切り替えによって、冷房運転と暖房運転とを切り替えることが出来る。
【0030】
また、ヒートポンプ式空調機1は送風機21を有しており、送風機21によって、室内の空気が還気としてフィルタ(図示は省略する)を介してヒートポンプ式空調機1に取り込まれ、空気熱交換器13による温度調節後に給気として室内に送られる。なお、冷房運転時には、圧縮機14、水熱交換器17、膨張弁16、空気熱交換器13の順に冷媒が循環し、暖房運転時には、圧縮機14、空気熱交換器13、膨張弁16、水熱交換器17の順に冷媒が循環する。
【0031】
本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1は、制御装置90によって制御される。例えば、制御装置90は、ユーザによる設定内容に従って四方弁15の切り替えを行うことによって冷房運転と暖房運転とを切り替え、また、空調対象の室内に設置された室温センサ91によって検出された室温が、設定温度(空調目標温度)Tsとなるように圧縮機14のインバータ制御および運転/停止制御を行う。但し、本発明は、インバータ制御等の能力可変でない、定速の圧縮機を用いるヒートポンプ式空調機にも適用されてもよい。
【0032】
本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1の圧縮機14はインバータ制御可能な能力可変の圧縮機14である。このため、空調の設定温度Tsが変更されたり、室温が変化したり等することで、空調負荷に対する空調能力が過大となると、ヒートポンプ式空調機1では、圧縮機14の能力が制御されることで、空調能力が調整される。以下、空調負荷が圧縮機14の最小能力を下回らない範囲で、空調能力を空調負荷に対応させながら行われる連続運転を、通常負荷運転と称する。
【0033】
図2は、ヒートポンプ式空調機1の冷房運転時における外気温度に応じた、空調負荷と圧縮機14のインバータ制御によって得られる空調能力との関係を示す図である。
図2によれば、外気温度が低下すると冷房運転に対する空調負荷が下がること、即ち、必要な空調能力が低くなることが分かる。このため、ある外気温(
図2の例では、摂氏26度)までは、圧縮機14をインバータ制御して空調能力を定格能力から最小能力までの間で調整することで、省エネルギー運転を行い、COPを向上させることが出来る。しかし、圧縮機14には最小能力がある。このため、空調負荷が、この最小能力で運転する圧縮機14によって提供される空調能力を更に下回る場合(
図2の例では、外気温が摂氏26度以下の場合)、即ち、部分負荷時には、圧縮機14のみによる空調能力制御では、空調能力に余剰が出てしまう(
図2を参照)。
【0034】
このような部分負荷状態は、夏季や冬季を除く中間期において発生し易い。そして、空調機が、空調負荷に対する空調能力が過大である部分負荷運転の状態となると、従来の空調機では、設定温度までの空調が達成されたことが検知された時点での空調機の運転停止
と、室温が設定温度から外れたことが検知された時点での空調機の運転再開と、が繰り返される(従来空調機の断続運転を示す
図8を参照)。
【0035】
従来の空調機において発生するこのような状況を防止するため、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1では、圧縮機14のインバータ制御のみでは対応が困難な程度に空調負荷が低い場合(部分負荷時)に、空調機の運転停止/再開の繰り返し(断続運転)によるCOP低下を防止するため、膨張弁16と空気熱交換器13との間の冷媒流路に補助水熱交換器18を備え、この補助水熱交換器18に、水熱交換器17に導入される前の冷却水を、冷却水迂回管路12を介して導入して空調対象側(空調対象熱交換器側)の冷媒と熱交換させる。
【0036】
このようにすることで、冷房運転時には、空調負荷に対する余剰な冷熱が、冷却水を介して空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒に移転され、圧縮機14の凝縮圧力を低下させることが出来る。また、空調対象側の冷媒の温度が上昇するため、必要以上の冷房が抑制されることとなり、空調機の運転停止/再開の繰り返しが抑制され、部分負荷時にも連続運転が可能となる。
【0037】
なお、ここで、空調対象側とは、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1の、圧縮機14および膨張弁16によって蒸発側と凝縮側に区分される冷凍サイクルの両側のうち、空調対象熱交換器(本実施形態では、空気熱交換器13)が属する側を指す。また、外部熱源側とは、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1の、圧縮機14および膨張弁16によって蒸発側と凝縮側に区分される冷凍サイクルの両側のうち、外部熱源熱交換器(本実施形態では、水熱交換器17)が属する側を指す。
【0038】
以下、部分負荷運転時における、空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒への余剰な冷熱または温熱の移転処理を、熱移転処理と称する。実施形態に係るヒートポンプ式空調機1は、熱移転処理の開始/終了と、補助水熱交換器18へ迂回させる冷却水の流量調整と、を行うことが可能な比例三方弁11を備える。通常負荷運転時には、比例三方弁11は、冷却塔等から供給された冷却水の全量を水熱交換器17へ送り、補助水熱交換器18へは送らない。これに対して、部分負荷運転時には、比例三方弁11は、冷却塔等から供給された冷却水の一部または全量を補助水熱交換器18へ一旦迂回させ、空調対象側の冷媒との熱交換の後で、水熱交換器17へ導入する。なお、本実施形態では、比例三方弁11が採用されているが、比例三方弁11に代えて、流量調整を行わない切替三方弁が採用されてもよいし、流量調整を行う場合にも、比例三方弁11以外の構成、例えば、切替三方弁と膨張弁との組み合わせ等が採用されてもよい。
【0039】
図3は、本実施形態に係る熱移転処理の開始の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、ヒートポンプ式空調機1の稼働中に、制御装置90によって定期的に実行される。なお、処理の詳細や処理順序については、本フローチャートに示したものに限定されず、実施の形態に応じて適宜採用されることが好ましい。
【0040】
はじめに、制御装置90は、圧縮機14から圧縮機14の運転状態を取得し、圧縮機14が最小能力で運転しているか否か、即ち、ヒートポンプ式空調機1が部分負荷運転の状態であるか否かを判断する(ステップS101)。ヒートポンプ式空調機1が部分負荷運転状態である場合、制御装置90は、現在の設定内容を参照することで、冷房運転中であるか暖房運転中であるかを判定する(ステップS102)。そして、制御装置90は、室温センサ91から空調対象の室温を定期的に取得し、冷房運転中である場合、取得された室温と、設定温度Tsに比べて所定温度(例えば、本実施形態では、摂氏2度)だけ高い温度に設定された閾値Ts+2と、を比較する(ステップS103)。比較の結果、室温が閾値Ts+2よりも低くなった場合、制御装置90は、断続運転が発生する可能性があ
ると判断し、比例三方弁11における冷却水迂回管路12へのルートを開弁することで、熱移転処理を開始する(ステップS105)。暖房運転中である場合も同様に、取得された室温と、設定温度Tsに比べて所定温度(例えば、本実施形態では、摂氏2度)だけ低い温度に設定された閾値Ts−2と、を比較する(ステップS104)。比較の結果、室温が閾値Ts−2よりも高くなった場合、制御装置90は、断続運転が発生する可能性があると判断し、比例三方弁11における冷却水迂回管路12へのルートを開弁することで、熱移転処理を開始する(ステップS105)。
【0041】
図4は、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1の冷房運転時における、室温に応じた、圧縮機14の制御および比例三方弁11の制御を示す図である。
図4によれば、
図3で説明した通り、室温が設定温度Tsより所定温度だけ高く設定された閾値Ts+2を下回ると、比例三方弁11における冷却水迂回管路12へのルートが開弁され、熱移転処理が開始されることが分かる。熱移転処理が開始されると、補助水熱交換器18へ冷却水が導入され、空調対象側を流れる冷媒から、空調負荷を超える余剰な冷熱が奪われる。このため、空調負荷に対する余剰な空調能力が抑えられ、短期間における圧縮機14の運転停止/再開である断続運転が防止され、ヒートポンプ式空調機1の連続運転が可能となる。
図4によれば、空調能力と空調負荷とのバランスが改善されることで、室温が設定温度Tsに向けて低下する速度が遅くなり、ヒートポンプ式空調機1の断続運転が防止されていることが分かる。
【0042】
なお、上記説明した熱移転処理によっても、室温が設定温度よりも低くなった場合(暖房運転では、室温が設定温度よりも高くなった場合)には、圧縮機14の運転および熱移転処理の停止(比例三方弁11における冷却水迂回管路12へのルートの閉弁)が行われる(
図4を参照)。
【0043】
また、外部熱源側へ移転した冷熱は、そのままであれば冷媒の流れによって空調対象側へ再度戻される。このため、冷却塔から供給される冷却水の水温を上げる(冷却塔の運転能力を下げる)、または膨張弁16の開度を調整する等することで、空調対象側の冷媒の温度が更に下がることを防止することとしてもよい。このようにすることで、部分負荷運転の状態であっても、室温が設定温度を維持した状態で、より長時間に亘って最小能力での連続運転を行うことが可能となり、COPを更に向上させることが可能となる。
【0044】
また、比例三方弁11は、連続運転の時間を長くするために、設定温度および外気温に対して必要な冷凍能力を除いた余剰分を、空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転するように、開度制御される。本実施形態では、冷房運転の場合、通常負荷運転時に予め計測していた、冷却塔等から供給された冷却水の、水熱交換器17の出口冷却水温を基準水温として、温度センサ92で検出される水熱交換器17の出口冷却水温が「基準水温−ΔTa」となるように、比例三方弁11の開度をフィードバック制御する。
【0045】
なお、水熱交換器17の出口冷却水温の目標水温を定めるために用いられるΔTaの値は、通常負荷運転時における水熱交換器17の出口冷却水温(
図1に示した例では、摂氏30.2度)と、比例三方弁11によって冷却水の全量が補助水熱交換器18に送られた場合の水熱交換器17の出口冷却水温(
図1に示した例では、摂氏28.53度)との差(
図1に示した例では、摂氏30.2度−摂氏28.53度=1.67度)の範囲内で決定される。
図1に示した例では、ΔTaは0から1.67度の範囲内から、予め実験やシミュレーション等で、部分負荷運転時のCOPが最も高くなるように、または熱移転処理開始後の連続運転時間が最も長くなるように、最適な値が選択される。例えば、ΔTaとして1度が選択された場合、水熱交換器17の出口冷却水温の目標水温は摂氏30.2度−1度=摂氏29.2度となり、制御装置90は、比例三方弁11の開度を、温度センサ92から検出される水熱交換器17の出口冷却水温がこの目標温度となるように制御する
。なお、本実施形態では、通常運転時および熱移転処理時における水熱交換器17の出口冷却水温の変動幅に基づいて比例三方弁11の開度を制御することとしているが、このような制御に代えて、補助水熱交換器18の入口冷却水温(
図1に示した例では、摂氏25.2度)と出口冷却水温(
図1に示した例では、摂氏23.53度)との変化幅(
図1に示した例では、摂氏25.2度−摂氏23.53度=1.67度)に基づいて熱移転の量を把握し、比例三方弁11の開度制御(迂回する水量の調整)を行うこととしてもよい。この場合、補助水熱交換器18の入口と出口における冷却水の温度変化に基づいて迂回水量の調整が行われるため、余剰熱の移転量をより正確に反映した制御を行うことが可能となる。
【0046】
<第二の実施形態>
図5は、第二の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1bの概略構成を示す図である。第二の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1bについても、部分負荷運転時の余剰な冷熱を空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転させる熱移転処理を行うことによって、部分負荷時の断続運転を抑制し、連続運転を可能としている点については同様である。但し、第二の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1bは、冷熱の移転に冷却水を介さず、冷媒熱交換器18bを用いて、空調対象側冷媒の余剰冷熱を外部熱源側冷媒に移転させる点で、第一の実施形態に示したヒートポンプ式空調機1と異なる。なお、本実施形態の説明において、第一の実施形態と概略同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
ヒートポンプ式空調機1bは、水熱源ヒートポンプ式の空調機であり、水熱交換器17、圧縮機14、膨張弁16、空調対象熱交換器としての空気熱交換器13、および四方弁15を有する点では第一の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1と同様である。但し、ヒートポンプ式空調機1bは、熱移転処理のために、第一の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1が備える比例三方弁11、冷却水迂回管路12および補助水熱交換器18に代えて、冷媒迂回管路19b、閉止弁31、流量調整弁32および冷媒熱交換器18bを備える点で、第一の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1と異なる。
【0048】
なお、本実施形態では、流量調整弁32として膨張弁が用いられる。但し、流量調整弁32は、冷媒の減圧目的ではなく流量調整に用いられるものであるため、開度調整等によって冷媒熱交換器18bへ送られる冷媒と送られない冷媒との流量調整が可能なものであればよい。また、冷媒の流量調整を行わず、熱移転処理時に冷媒の全量を冷媒熱交換器18bへ送ってよい実施形態の場合には、流量調整弁32に代えて、開閉のみ制御可能な閉止弁が採用されてもよい(図示は省略する)。
【0049】
通常負荷運転時には、閉止弁31は閉弁され、流量調整弁32は全開される。これに対して、部分負荷運転において熱移転処理が開始されると、本実施形態では、閉止弁31が開弁され、流量調整弁32が閉止または開度調整される。本実施形態では、このような制御が行われることで、外部熱源側の冷媒の一部または全部が、膨張弁16に到達する前に一旦冷媒熱交換器18bに導入され、外部熱源側の冷媒と空調対象側の冷媒との間で、熱交換が行われ、空調対象側の冷媒が有する余剰な冷熱が外部熱源側の冷媒へ移転する。
【0050】
熱移転処理の開始処理の流れについては、
図3および
図4を用いて説明した流れと概略同様であるため、説明を省略する。また、室温が設定温度を通過した場合に、熱移転処理および圧縮機の運転が停止されることについても、第一の実施形態と概略同様である。
【0051】
ここで、本実施形態の熱移転処理における流量調整弁32の開度制御について説明する。流量調整弁32は、連続運転の時間を長くするために、設定温度および外気温に対して必要な冷凍能力を除いた余剰分を、空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転するよ
うに、開度制御される。本実施形態では、制御装置90は、通常負荷運転時に予め温度センサ93a、93bで計測されていた、膨張弁16の前後の冷媒温度の差(即ち、流量調整弁32の開度が0%の場合の冷媒温度差)と、部分負荷運転時に流量調整弁32が全開(開度100%)された場合(冷媒の全量が冷媒熱交換器18bに送られる場合)の膨張弁16の前後の冷媒温度の差と、を予め取得し、更に、取得された冷媒温度差の変動幅、即ち、通常負荷運転時の冷媒温度差から部分負荷運転時に流量調整弁32が全開された場合の冷媒温度差への最大変動幅を算出しておく。そして、制御装置90は、予め算出された最大変動幅に対する、部分負荷運転時の膨張弁16前後の冷媒温度差の変動幅の割合を定め、この目標値とする変動幅の割合に応じて、流量調整弁32の開度を決定する。
【0052】
例えば、冷房運転の通常負荷運転時(流量調整弁32の開度は0%)に、温度センサ93a、93bで計測された冷媒温度が夫々摂氏34度、摂氏12度であり、部分負荷運転時の熱移転処理で、流量調整弁32の開度を100%とした場合に、温度センサ93a、93bで計測された冷媒温度が夫々摂氏22度、摂氏14度であったとする。この場合、膨張弁16前後の冷媒温度差は、流量調整弁32の開度が0%の場合に34−12=22度、開度が100%の場合に28−14=14度であり、通常負荷運転時の冷媒温度差(22度)から部分負荷運転時に流量調整弁32が全開された場合の冷媒温度差(14度)への最大変動幅は、22度−14度=8度である。このため、膨張弁16前後の冷媒温度差の目標値を4度としたい場合には、制御装置90は、流量調整弁32の開度を50%とする。このような開度決定処理を行い、制御装置90が流量調整弁32の開度を調整することで、部分負荷運転時に、適正な量の冷媒を冷媒熱交換器18bへ送ることが出来る。なお、本実施形態においても、温度センサ93a、93bによって計測される冷媒温度に目標温度を設け、この目標温度を達成するように、流量調整弁32の開度をフィードバック制御することとしてもよい。
【0053】
また、
図5に示した本実施形態に係るヒートポンプ式空調機1bにおいて、閉止弁31が設けられている位置に、閉止弁31に代えて第二の流量調整弁(例えば、膨張弁。図示は省略する)を設けることとしてもよい。この場合には、通常運転時には流量調整弁を閉止することで冷媒熱交換器18bへ冷媒を流さず、熱移転処理時には第二の流量調整弁の開度を一定の開度とし、流量調整弁32の開度を制御することで、冷媒の迂回量を調整することが出来る。
【0054】
<第三の実施形態>
図6は、第三の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1cの概略構成を示す図である。ヒートポンプ式空調機1cは、第一および第二の実施形態において示した水熱源ヒートポンプ式空調機1、1bと異なり、所謂室外機としての空気熱交換器によって冷媒の温度調節を行う空気熱源ヒートポンプ式の空調機である。ヒートポンプ式空調機1cは、外気を外部の熱源として冷媒との間で熱交換を行う外部熱源熱交換器としての空気熱交換器17b、冷媒を圧縮する圧縮機14、冷媒を膨張させる膨張弁16、冷媒と空調対象の空気との間で熱交換を行うことで空調を行う空調対象熱交換器としての空気熱交換器13、および冷媒の流路を切り替えることで冷房運転と暖房運転とを切り替える四方弁15を有する。なお、本実施形態の説明において、第一の実施形態または第二の実施形態と概略同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
また、ヒートポンプ式空調機1cは、室内機用の送風機21に加えて、更に送風機22を有している。送風機22によって、外気が外部熱源熱交換器としての空気熱交換器17bに取り込まれ、空気熱交換器17bを通過する冷媒の温度調節が行われる。
【0056】
第三の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1cについても、部分負荷運転時の余剰な冷熱を空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転させる熱移転処理を行うことによっ
て、部分負荷時の断続運転を抑制し、連続運転を可能としている点について、他の実施形態と同様である。ヒートポンプ式空調機1cは、熱移転処理のために、第二の実施形態に示したヒートポンプ式空調機1bと同様、冷媒迂回管路19b、閉止弁31、流量調整弁32および冷媒熱交換器18bを備える。また、通常負荷運転時に閉止弁31が閉弁され、流量調整弁32が全開されること、および、部分負荷運転において熱移転処理が開始されると、閉止弁31が開弁され、流量調整弁32が閉止または開度調整されることについても、第二の実施形態と概略同様であるため、説明を省略する。
【0057】
熱移転処理の開始処理の流れについては、
図3および
図4を用いて説明した流れと概略同様であるため、説明を省略する。また、室温が設定温度を通過した場合に、熱移転処理および圧縮機の運転が停止されることや、流量調整弁32の開度制御、閉止弁31に代えて第二の流量調整弁を設けてもよいこと、についても、第一または第二の実施形態と概略同様である。
【0058】
<第四の実施形態>
図7は、第四の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1dの概略構成を示す図である。ヒートポンプ式空調機1dは、建物に設置され、空気熱源によって冷媒の温度調整を行う室外機2dに接続された複数の室内機によって空調を行うビルマルチ用のヒートポンプ式空調機であり、外気を外部の熱源として冷媒との間で熱交換を行う外部熱源熱交換器としての空気熱交換器17d、空気熱交換器17dに外気を取り込むための送風機22d、冷媒を圧縮する圧縮機14、冷房運転時に冷媒を膨張させる冷房用膨張弁16a、暖房運転時に冷媒を膨張させる暖房用膨張弁16b、冷媒と空調対象の空気との間で熱交換を行うことで空調を行う空調対象熱交換器としての、複数の空気熱交換器13d、空気熱交換器13dに空調対象の空気を取り込むための送風機21d、および冷媒の流路を切り替えることで冷房運転と暖房運転とを切り替える四方弁15を有する。なお、本実施形態の説明において、第一の実施形態または第二の実施形態と概略同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
第四の実施形態に係るヒートポンプ式空調機1dについても、部分負荷運転時の余剰な冷熱を空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転させる熱移転処理を行うことによって、部分負荷時の断続運転を抑制し、連続運転を可能としている点について、他の実施形態と同様である。ヒートポンプ式空調機1dは、熱移転処理のために、冷媒迂回管路19d、流量調整弁33、34および冷媒熱交換器18dを備える。
【0060】
なお、本実施形態では、流量調整弁33、34として膨張弁が用いられる。但し、流量調整弁33、34は、冷媒の減圧目的ではなく流量調整に用いられるものであるため、開度調整等によって冷媒熱交換器18dへ送られる冷媒と送られない冷媒との流量調整が可能なものであればよい。また、冷媒の流量調整を行わず、熱移転処理時に冷媒の全量を冷媒熱交換器18dへ送ってよい実施形態の場合には、流量調整弁33、34に代えて、開閉のみ制御可能な閉止弁が採用されてもよい(図示は省略する)。
【0061】
通常負荷運転時には、流量調整弁34は閉弁され、流量調整弁33は全開される。これに対して、部分負荷運転において熱移転処理が開始されると、本実施形態では、流量調整弁34が一定の開度(全開であってもよい)で開弁され、流量調整弁33が閉止または開度調整される。本実施形態では、このような制御が行われることで、外部熱源側の冷媒の一部または全部が、膨張弁16aまたは16b(冷房運転時には膨張弁16a、暖房運転時には膨張弁16b)に到達する前に一旦冷媒熱交換器18dに導入され、外部熱源側の冷媒と空調対象側の冷媒との間で、熱交換が行われ、空調対象側の冷媒が有する余剰な冷熱が外部熱源側の冷媒へ移転する。
【0062】
熱移転処理の開始処理の流れについては、
図3および
図4を用いて説明した流れと概略同様の処理が用いられてもよいが、ヒートポンプ式空調機1dは複数の室内機(空気熱交換器13d)を有しているため、室内温度に加えて、部分負荷運転状態となった室内機の台数についても、熱移転処理の開始にあたっての判断材料として用いられてもよい。例えば、室温が設定温度Tsまたは所定の閾値(例えば、第一の実施形態で用いた閾値Ts−2やTs+2)に達した室内機が所定台数以上となった場合に、流量調整弁34の開放制御を行い、熱移転処理を開始することとしてもよい。なお、設定温度Tsまたは所定の閾値に達した室内機が全台に達した場合には、熱移転処理および圧縮機の運転が停止される。
【0063】
ここで、本実施形態の熱移転処理における流量調整弁33の開度制御について説明する。流量調整弁33は、連続運転の時間を長くするために、設定温度および外気温に対して必要な冷凍能力を除いた余剰分を、空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒へ移転するように、開度制御される。本実施形態では、通常負荷運転時に予め温度センサ94a、94bで計測されていた、流量調整弁33の前後の冷媒温度t1(通常負荷運転時には、流量調整弁33は全開状態であるため、温度センサ94a、94bでは略同一の温度が検出される)と、部分負荷運転時に流量調整弁33が閉止(開度0%)且つ流量調整弁34が全開(開度100%)された場合(冷媒の全量が冷媒熱交換器18dに送られる場合)の流量調整弁33の前後の冷媒温度t2、t1と、を予め取得しておく。そして、制御装置90は、流量調整弁33の前後の冷媒の最大温度差(t2−t1)に対する、部分負荷運転時の流量調整弁33前後の冷媒温度差の割合を定め、この目標値とする温度差の割合に応じて、流量調整弁33の開度を決定する。
【0064】
例えば、冷房運転の通常負荷運転時(流量調整弁33の開度100%、流量調整弁34の開度0%)に、温度センサ94a、94bで計測された冷媒温度が何れもt1であり、部分負荷運転時の熱移転処理で、流量調整弁33の開度を0%、流量調整弁34の開度を100%とした場合に、温度センサ94a、94bで計測された冷媒温度が夫々t2、t1であったとする。この場合、流量調整弁33前後の冷媒温度差は、流量調整弁33の開度が100%の場合に0度、開度が0%の場合にt2−t1であるため、流量調整弁33前後の冷媒温度差の目標値に従って、流量調整弁33の開度を決定する(例えば、冷媒温度差を(t2−t1)/2としたい場合には、流量調整弁33の開度を50%とする)。このような開度決定処理を行い、制御装置90が流量調整弁33の開度を調整することで、部分負荷運転時に、適正な量の冷媒を冷媒熱交換器18dへ送ることが出来る。なお、本実施形態においても、温度センサ94a、94bによって計測される冷媒温度に目標温度を設け、この目標温度を達成するように、流量調整弁33の開度をフィードバック制御することとしてもよい。
【0065】
なお、流量調整弁34に代えて閉止弁を採用した場合は、通常負荷運転時にはこの閉止弁を閉止し、部分負荷運転時の熱移転処理ではこの閉止弁を開放する。この場合、熱移転処理においては、流量調整弁33の開度によって、冷媒熱交換器18dに送られる冷媒の流量を調整することが出来る。
【0066】
<効果>
上記第一から第四の実施形態に示したヒートポンプ式空調機によれば、部分負荷運転時における連続運転が可能となり、COPの低下を防止することが可能となる。具体的には、従来のような断続運転が行われた場合には、空調負荷に比べ空調能力が大きいため、必要以上の空調能力が得られて電力が必要以上に消費されるが、本実施形態に示したヒートポンプ式空調機によれば、部分負荷時にも連続運転を行うことが可能であるため、空調負荷に見合った能力を発揮することが出来、断続運転に比べて期間消費電力が少なくなる。本願発明者の試算によると、従来の空調機では圧縮機が断続運転となる中間期の外気温条
件下で、従来の空調機の断続運転による総消費電力と、本実施形態に示したヒートポンプ式空調機の連続運転による総消費電力と、を比較すると、本実施形態に示したヒートポンプ式空調機の総消費電力は、従来の空調機の総消費電力に比べて57%減少するとの試算結果が得られた。
【0067】
また、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機によれば、部分負荷運転時にも、空調対象の室温が短時間に上昇/下降を繰り返すことがなく、居住者の快適性を向上させることが出来る。更に、本実施形態に係るヒートポンプ式空調機によれば、断続運転による運転の停止/再開が抑制されるため、オン/オフに伴う機械部品の接触回数等が減少し、圧縮機14の寿命や、圧縮機14に用いられるマグネット等の寿命が延びる。
【0068】
<その他の実施形態>
また、上記実施形態では、空調対象側の冷媒から外部熱源側の冷媒に熱の移転を行うための手段(例えば、補助水熱交換器18や、冷媒熱交換器18b、18d等)は、膨張弁16と空気熱交換器13との間の冷媒流路に設けられるが、空調対象側冷媒から外部熱源側冷媒に熱移転を行うための手段は、例えば、空気熱交換器13と圧縮機14の間の冷媒流路等、空調対象側の何れの位置に設けられてもよい。また、上記実施形態では、外部熱源側の冷媒管路を延長して空調対象側の熱交換器(冷媒熱交換器18b、18d等)に引き込むことで、冷媒間の熱交換を実現しているが、反対に、空調対象側の冷媒管路を延長して外部熱源側の熱交換器に引き込むこととしてもよいし、外部熱源側および空調対象側の冷媒管路の両方を延長して、他の位置に設けられた冷媒熱交換器に引き込むこととしてもよい。
【0069】
なお、熱移転処理の開始制御は、制御装置90から発せられた圧縮機の停止信号の回数に応じて制御されてもよい。具体的には、圧縮機停止信号が設定回数(例えば、3回)に達した場合に、熱移転処理を開始することとしてもよい。このようにすることで、簡易な構成で、実際に断続運転が始まったことを契機として、断続運転を抑制するための熱移転処理を開始することが出来る。なお、この場合、熱移転処理および圧縮機の停止に関しても、圧縮機の停止信号の回数に従って制御することが可能である。即ち、圧縮機停止信号が上記設定回数プラス1回(例えば、3+1=4回)となった場合に、熱移転処理を終了し、圧縮機を停止する。