(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5768164
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】冷却装置およびそれを搭載した冷凍庫、冷蔵庫、保冷庫、冷凍車、保冷車、冷凍船、保冷船または運輸飛行機
(51)【国際特許分類】
F25D 17/06 20060101AFI20150806BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20150806BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20150806BHJP
F25D 19/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
F25D17/06 304
F25D17/08
F25B39/02 H
F25D19/00 520A
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-96173(P2014-96173)
(22)【出願日】2014年5月7日
【審査請求日】2014年5月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509159492
【氏名又は名称】米田工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】米田 稔
【審査官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−205972(JP,A)
【文献】
特開昭59−145470(JP,A)
【文献】
特開平06−034256(JP,A)
【文献】
特開2000−292048(JP,A)
【文献】
実開昭48−032962(JP,U)
【文献】
実開昭58−184181(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/06−17/08
F25D 19/00
F25B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却機構に対して直接送風が当たるように前記冷却機構に向けて配設した送風ファンを備えた冷却装置であって、
前記冷却機構の前記送風ファンの送風方向に対向する面を冷却機構正面とした6面の関係において、
少なくとも、前記冷却機構正面、前記冷却機構背面、前記冷却機構上面、および冷却機構下面の4面が、冷却室の壁面に対して密着しないよう隙間をあけて設置され、
前記冷却機構の内部の複数の熱交換金属フィンが、前記冷却機構の内部において、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面に対して略垂直かつ前記冷却機構正面に対して略平行に配置され、
前記冷却機構上面と前記冷却機構内部、および、前記冷却機構下面と前記冷却機構内部の通気性が確保され、
前記送風ファンから前記冷却機構に向けて送風された空気流が、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の一方もしくは双方に対して沿って流れ、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の気圧差が生じるよう整流され、
通気風が前記熱交換金属フィンに沿って通気するものである冷却装置。
【請求項2】
冷却機構に対して直接送風が当たるように前記冷却機構に向けて配設した送風ファンを備えた冷却装置であって、
前記冷却機構の前記送風ファンの送風方向に対向する面を冷却機構正面とした6面の関係において、
少なくとも、前記冷却機構正面、前記冷却機構背面、前記冷却機構上面、および冷却機構下面の4面が、冷却室の壁面に対して密着しないよう隙間をあけて設置され、
前記冷却機構の内部の複数の熱交換金属フィンが、前記冷却機構の内部において、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面に対して斜め、かつ、前記熱交換金属フィンの上端エッジおよび前記熱交換金属フィンの下端エッジが前記冷却機構正面に対して略平行に配置され、
前記冷却機構上面と前記冷却機構内部、および、前記冷却機構下面と前記冷却機構内部の通気性が確保され、
前記送風ファンから前記冷却機構に向けて送風された空気流が、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の一方もしくは双方に対して沿って流れ、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の気圧差が生じるよう整流され、
前記通気風が前記熱交換金属フィンに沿って通気するものである冷却装置。
【請求項3】
前記冷却機構上面が前記冷却室の天井に対向しており、前記冷却機構と前記天井との間の前記隙間を前記冷却機構上面側の送風路とし、
前記冷却機構下面側に隙間を開けて仕切り板を配設し、前記冷却機構と前記仕切り板との間の前記隙間を前記冷却機構下面側の送風路とし、
前記送風ファンから送風された前記空気流が前記冷却機構上面側の送風路および前記冷却機構下面側の送風路に沿って流れるものである請求項1または2のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項4】
テーパーを付けて前記仕切り板を配設するとともに最下方にドレイン溝を設け、前記仕切り板を前記冷却機構から落下する水滴や氷粒を受けるパンとして兼用せしめた請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却機構上面が前記冷却室の側壁面または前記冷却室の後壁面のいずれかに対向しており、前記冷却機構上面と前記冷却室の側壁面または前記冷却室の後壁面のいずれかとの間の隙間を前記冷却機構上面側の送風路とし、
前記冷却機構下面側に隙間を開けて仕切り板を配設し、前記冷却機構下面と前記仕切り板との間の前記隙間を前記冷却機構下面側の送風路とし、
前記送風ファンから送風された前記空気流が前記冷却機構上面側の送風路および前記冷却機構下面側の送風路に沿って流れるものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却機構正面において、前記送風ファンからの送風を上下に分離し、それぞれ前記冷却機構上面および前記冷却機構下面に対して沿って流れるよう受け流す整流体を備えた請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記整流体が前記送風ファンからの送風を、前記冷却機構上面側と前記冷却機構下面側にn:m(0≦n≦10、10≧m≧0)の比に分けるものであり、前記送風ファンからの送風を等量または非等量に分けるものであることを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷却機構上面および前記冷却機構下面に対して取り付けた通気量調整体を備え、前記通気量調整体において開口を穿設し、前記冷却機構に対して空気が通気する面積や形状を調整せしめることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記送風ファンにより前記冷却機構に向けて送風され、前記送風路を流れる送風の風速が、毎秒0.5mから毎秒20mの速度である請求項3または5に記載の冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の冷却装置を搭載した冷蔵庫、冷凍庫、保冷庫、保冷車、冷凍車、保冷船、冷凍船または運輸飛行機。
【請求項11】
冷却機構に対して直接送風が当たるように前記冷却機構の方向に向けて配設した送風ファンを備えた冷却装置を用いた冷却方法において、
前記冷却機構の前記送風ファンの送風方向に対向する面を冷却機構正面とした6面の関係において、
少なくとも、前記冷却機構正面、前記冷却機構背面、前記冷却機構上面、および冷却機構下面の4面が、冷却室の壁面に対して密着しないよう隙間をあけて設置され、
前記冷却機構の内部の複数の熱交換金属フィンが、前記冷却機構の内部において、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面に対して略垂直かつ前記冷却機構正面に対して略平行に配置され、
前記冷却機構上面と前記冷却機構内部、および、前記冷却機構下面と前記冷却機構内部の通気性が確保され、
前記送風ファンから前記冷却機構に向けて送風された空気流が、前記冷却機構上面または前記冷却機構下面の一方もしくは双方に対して沿って流れるように整流され、通気風が前記熱交換金属フィンに沿って通気せしめた冷却方法。
【請求項12】
冷却機構に対して直接送風が当たるように前記冷却機構の方向に向けて配設した送風ファンを備えた冷却装置を用いた冷却方法において、
前記冷却機構の前記送風ファンの送風方向に対向する面を冷却機構正面とした6面の関係において、
少なくとも、前記冷却機構正面、前記冷却機構背面、前記冷却機構上面、および冷却機構下面の4面が、冷却室の壁面に対して密着しないよう隙間をあけて設置され、
前記冷却機構の内部の複数の熱交換金属フィンが、前記冷却機構の内部において、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面に対して斜め、かつ、前記熱交換金属フィンの上端エッジおよび前記熱交換金属フィンの下端エッジが前記冷却機構正面に対して略平行に配置され、
前記冷却機構上面と前記冷却機構内部、および、前記冷却機構下面と前記冷却機構内部の通気性が確保され、
前記送風ファンから前記冷却機構に向けて送風された空気流が、前記冷却機構上面または前記冷却機構下面の一方もしくは双方に対して沿って流れるように整流され、通気風が前記熱交換金属フィンに沿って通気せしめた冷却方法。
【請求項13】
前記送風ファンにより前記冷却機構に向けて送風された送風の風速を毎秒0.5mから毎秒20mの速度とした請求項11または12に記載の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍庫などの装置に広く用いられている空気冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍庫などの装置において、冷凍庫や冷蔵庫の庫内を循環する空気を冷却器により熱交換して冷却する構造となっている。従来の冷凍庫や冷蔵庫で大きな問題となっているものは霜の付着である。循環空気中の水蒸気が冷却器において相変化を起こし凝結して冷却器上に霜として堆積する。霜が冷却器に付着すると、冷却器周囲の空気流の通路を塞ぎ、また伝熱の抵抗体として冷却器の性能低下を引き起こす原因ともなり得る。
【0003】
また、特に近年、冷凍食品の普及につれて、その品質が着目されている。すなわち、冷却室内の水蒸気が霜となって付着することで庫内水蒸気量が減少して乾燥雰囲気となり、冷凍中の食品から水分が蒸発してしまい、冷凍食品の品質劣化を招いていることが大きな問題であった。そのため、冷却室内の高湿度維持と高湿度冷凍法が求められている。
【0004】
この霜の付着の問題に対し、従来技術において広く見られる対処方法としては、冷却器に高温冷媒を流す除霜サイクルを構成し、冷却面上の着霜を融解して除去する除霜運転を定期的に行うものが知られている。しかし、除霜に余分なエネルギーが必要となり、さらに一時的にせよ、除霜時の庫内の温度上昇が大きな問題であった。
【0005】
このような霜の付着に対する問題点を解決するため、冷却室内の高湿度を維持し、霜の付着しにくい冷却装置が種々案出されている。
例えば、特開平11−94439号公報に開示された冷蔵庫の冷却器では、熱交換用のフィン列の間隔について疎密を設けて、霜付着があってもその影響を減ずるものである。
図17に示すように、冷却器は所定間隔で複数枚配列されたフィンと、それらフィンを貫通する冷媒配管とから構成されており、冷気流通方向に延在するフィンの縁部が位置する冷却器の外側部分のフィン密度を内側部分よりも疎としたものである。このような構成にすることにより、仮に冷却器の冷気流入側が霜の成長によって閉塞されてしまった場合にも、フィンの冷気流通方向に延在する縁部が位置する外側部分のフィン密度が疎とされているため、この部分の霜閉塞は遅れることとなる。
【0006】
つまり、フィン列において全面的に等間隔で設けるのではなく、一部は他の部分よりも疎に設けることにより、疎の部分は霜で詰まっていない空間が保たれるため、フィンと循環空気との熱交換を維持することができ、霜の影響が出にくくなる。
【0007】
また、送風ファンに対向する部分の冷却器のフィン列間隔を密とし、それ以外の部位のフィン列間隔は疎とする構造も開示されている。冷却器において循環空気が最も通過する部位のフィン密度を密として熱交換効率を維持しつつ高い冷却性能を発揮せしめるが、当該部分に霜が成長して来た場合には、当該部位以外の部位はフィン列間隔が疎なので霜で詰まっていない空間が保たれるため、フィンと循環空気との熱交換を維持することができ、霜の影響が出にくくなる。
【0008】
【特許文献1】特開平11−94439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1の特開平11−94439号公報に開示した冷却装置では、フィンに霜が付着しても同時期に全部のフィンに霜が付着してしまうのを避けて、フィン列の間隔が疎の部分の霜の付きを遅らせるだけである。この特開平11−94439号公報の技術では、霜の付着が進行してゆくこと自体は回避することができないため霜が付着する現象は変わらず、よって、庫内の湿度を高湿度に維持することはできない。
【0010】
また、上記特許文献1の特開平11−94439号公報に開示した冷却装置では、フィン列の間隔について設計理論上必要な密度ではなく、わざと疎の部分を設けるため、フィン列の間を通過する空気の通過空間を確保する反面、冷却器の熱交換能力が低下してしまうという問題がある。
【0011】
上記問題点に鑑み、本発明は、送風ファンを冷却機構に向けて十分速い送風を冷却機構に向けて直接当てて冷却機構全体を送風ファンによる送風の中に包んで冷却能力を高く維持しつつも冷却器の熱交換金属フィンには霜がつきにくく、かつ、冷却室内の高湿度を維持して高品質冷凍を可能とする冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の冷却装置は、冷却機構に対して直接送風が当たるように前記冷却機構に向けて配設した送風ファンを備えた冷却装置であって、前記冷却機構の前記送風ファンの送風方向に対向する面を冷却機構正面とした6面の関係において、少なくとも、前記冷却機構正面、前記冷却機構背面、前記冷却機構上面、および冷却機構下面の4面が、冷却室の壁面に対して密着しないよう隙間をあけて設置され、前記冷却機構の内部の複数の熱交換金属フィンが、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面に対して直交または斜めに配置され、
前記冷却機構上面と前記冷却機構内部、および、前記冷却機構下面と前記冷却機構内部の通気性が確保され、前記送風ファンから前記冷却機構に向けて送風された空気流が、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の一方もしくは双方に対して沿って流れ、前記冷却機構上面と前記冷却機構下面の気圧差が生じるよう整流され、前記通気風が前記熱交換金属フィンに沿って通気するものである。
【0013】
冷却機構内部では熱交換金属フィンに沿って流れる通気風により熱交換が行われるので、熱交換金属フィンに対して霜が付きにくく、冷凍室内の湿度が低下しにくいものとなっている。それゆえに冷凍室内を高湿度に保ち、冷凍対象物を乾燥させることがない。
【0014】
本発明では、送風ファンが冷却機構に向けて配設されたものであり、冷却機構に直接強制風が吹き付ける構成を前提としている中、冷却機構内部で熱交換金属フィンにより熱交換された冷気は通気風にのって冷却機構を抜け出ると送風ファンによる強制風の流れに乗って冷却室に向けて循環するため、冷却器が本来持つ冷却性能を過剰に抑制することなく十分に高く発揮せしめることができる。このように、本発明の冷却装置では、冷却機構の冷却能力を十分発揮させることができるため、生鮮状態の魚などの食材を冷凍する冷凍処理などの大量急速な冷凍にも適用できる。
【0015】
なお、熱交換金属フィンの取り付け姿勢については複数パターンある。
第1のパターンは、冷却機構の内部において、熱交換金属フィンが、冷却機構上面および冷却機構下面に対して略垂直かつ冷却機構正面に対して略平行に配置されたものである。通気風が冷却機構上面と冷却機構下面に対して略垂直方向に流れることを前提としている。
第2のパターンは、冷却機構の内部において、熱交換金属フィンが、冷却機構上面および冷却機構下面に対して略垂直かつ冷却機構正面に対して略垂直に配置されたものである。通気風が冷却機構上面と冷却機構下面に対して略垂直方向に流れることを前提としている。
第3のパターンは、第1のパターンを変形して熱交換金属フィンを斜めに取り付けたものである。熱交換金属フィンを冷却機構上面および冷却機構下面に対して斜め、かつ熱交換金属フィンの上端エッジおよび熱交換金属フィンの下端エッジが冷却機構正面に対して略平行に配置されたものである。通気風が冷却機構上面と冷却機構下面に対して斜め方向、例えば、送風ファン120から冷却機構正面に向けて送風された空気が冷却機構上面から冷却機構内部に入り、斜め下方に流れて冷却機構下面に到達する流れに対応するものとなる。
いずれのパターンであっても、通気風が熱交換金属フィンに沿って冷却機構上面と冷却機構下面の間を通り抜けるように流れるため、通気風が熱交換金属フィンに直接衝突することが抑制し、通気風が熱交換金属フィンに沿って流れるうちに熱交換が行われるものとなっている。
【0016】
次に、冷却機構の冷却室内への配設位置パターンも、冷却室内に置く位置に応じて複数通りのパターンがある。
第1のパターンは、冷却機構上面が冷却室の天井に対向しており、冷却機構と天井との間の隙間を冷却機構上面側の送風路とし、冷却機構下面側に隙間を開けて仕切り板を配設し、冷却機構と仕切り板との間の隙間を前記冷却機構下面側の送風路とし、送風ファンから送風された空気流が冷却機構上面側の送風路および冷却機構下面側の送風路に沿って流れるものである。
なお、仕切り板を設ける場合、その仕切り板にテーパーを付けて配設するとともに最下方にドレイン溝を設ける構成が好ましい。仕切り板を冷却風の通り道を仕切る板として使用しつつ、冷却機構から落下する水滴や氷粒を受けるパンとして兼用できる。
【0017】
第2のパターンは、冷却機構上面が冷却室の側壁面または冷却室の後壁面のいずれかに対向しており、冷却機構上面と冷却室の側壁面または冷却室の後壁面のいずれかとの間の隙間を冷却機構上面側の送風路とし、冷却機構下面側に隙間を開けて仕切り板を配設し、冷却機構下面と仕切り板との間の隙間を冷却機構下面側の送風路とし、送風ファンから送風された空気流が冷却機構上面側の送風路および冷却機構下面側の送風路に沿って流れるものである。
これらのパターンに加え、さらに冷却室に対して斜めに配置したり傾きを持たせたりするなど他のパターンについてもあり得る。また、冷却室が四角形ではなく多角形や曲面を有する場合もあり得る。
【0018】
冷却機構の内部において通気風を発生させる構造として、冷却機構の上面および下面の通気性が確保された構造とし、その上面または下面の一方もしくは上面及び下面の双方に対して沿う方向に向けて送風する構成とすれば、その送風によって冷却機構の上面側と下面側の間に微妙な気圧変化が生じ、その微妙な気圧差により冷却機構の内部に引き込まれた空気により熱交換金属フィンに沿って上下方向に流れる穏やかな通気風が発生する。このように冷却機構内部を貫く通気風を介して熱交換が行われるため熱交換金属フィンに対して霜が付着しにくくなる。
【0019】
次に、送風ファンから送風された空気流を冷却機構上面側の送風路および冷却機構下面側の送風路に導くための工夫としては、冷却機構の正面において、送風ファンからの送風を上下に分離し、それぞれ冷却機構の上面および下面のいずれか又は双方に対して沿う方向に受け流す整流体を備えた構成とする。整流体があれば、送風を後方に受け流しつつ上下に分離して送風路に沿って流れるよう整流することができる。
【0020】
なお、整流体が送風ファンからの送風を、上面方向と下面方向にn:m(0≦n≦10、10≧m≧0)の比に分けるものであり、送風ファンからの送風を等量または非等量に分けるものが好ましい。冷却室内の環境、冷却機構と送風ファンの相対的な配設位置関係などを加味して整流体で分離する風量を調整することができれば冷却機構内で発生する通気風の大きさなどを調整することができる。
【0021】
また、冷却機構内で発生する通気風の大きさなどを調整する工夫として、冷却機構の上面および下面に対して取り付けた通気量調整体を備え、その通気量調整体において開口を穿設したものとする構成がある。このように通気量調整体を設けることにより、冷却機構に対して空気が出入りする面積や形状を調整せしめることができ、冷却機構内で発生する通気風の大きさなどを調整することができる。
【0022】
送風ファンにより強制的に循環する強制循環流の風速が、毎秒0.5mから20mの速度になるよう調整することが好ましい。
また、冷却機構の内部を上下方向に流れる通気風の風速が、毎秒0mより大きく毎秒2m以下の速度になるよう調整することが好ましい。
【0023】
冷却装置の冷却能力を大きくするため、冷却機構を冷却室内に複数ユニット搭載することも可能である。
上記した本発明の冷却装置は、様々な製品への適用が可能である。
例えば、冷却装置を搭載した冷蔵庫、冷凍庫または保冷庫とすることができる。また、車や船などの基本的移動手段を備えたものに冷却装置に加えることにより、保冷車、冷凍車、保冷船、冷凍船または運輸飛行機とすることができる。これらに取り付けた冷凍装置は高湿度冷凍を可能とするものとなり、用途に応じて冷凍対象物に対して高品質な冷凍を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる冷却装置によれば、送風ファンが冷却器に向けて配設され、送風ファンによる送風が冷却器に向かって吹き付けられる構成であるが、冷却機構内部において熱交換金属フィンに沿うように穏やかな通気風を通過させることができ、熱交換金属フィンでの霜の形成を抑制することができ、高湿度で高品質の冷却処理を実現することができる。
さらに、本発明では、熱交換金属フィンで熱交換された空気が冷却機構を抜け出ると即座に送風ファンによる送風の循環流の流れに乗って冷却室に向けて強制循環するため、冷却器が本来持つ冷却性能を過剰に抑制することなく十分に高く発揮せしめることができる。
本発明の冷却装置では、比較的、熱交換の絶対量を大きく保持できるため、保冷用途のみならず、生鮮状態の魚などの食材を冷凍する冷凍処理などの大量急速な熱交換にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の冷却装置の実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明に係る冷却装置の構成例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施例1にかかる冷却装置100の構成例を簡単に示した図である。
なお、この実施例の説明では、冷却機構110に関して、冷却室内での配置がどういう配置であっても、
図1に示すように、送風ファン120に対向する冷却機構の面を“冷却機構正面”とした6面の関係において“冷却機構正面”“冷却機構背面”“冷却機構右側面”“冷却機構左側面”“冷却機構上面”“冷却機構下面”を記述している。後述するように、送風ファンから冷却機構正面に向けて送風された空気流が沿って流れる面を“冷却機構上面”としている(なお、冷却機構正面において空気流が上下2つに分かれて流れる場合、一方の空気流が沿って流れる面を“冷却機構上面”で、他方の空気流が沿って流れる面を“冷却機構下面”としている)。
一方、冷却室の壁面については図面の見た目どおりに“冷却室天井”、“冷却室床面”“冷却室後壁面”“冷却室右壁面”などという記述をしている。
【0027】
冷却装置100は、冷却機構110と、送風ファン120と、整流体130と、仕切り板140と、冷却室150を備えた構成となっている。
ここで、それら構成要素のうち整流体130はオプションであり、後述するように送風ファンによる送風の循環流が冷却機構上面、冷却機構下面に沿って流れれば、整流体130を取り付けなくとも良い。また、仕切り板140もオプションの構成である。仕切り板140は冷却機構下面に隙間を開けて設けるものであり冷却機構下面側の送風路を形成するものである。この冷却機構下面側の送風路がなくとも冷却機構110の上面、下面に沿って流れる構造であれば省略可能である。しかし、仕切り板140を冷却機構110から落ちる水滴や氷滴を受けるパンとして利用する場合には、水滴や氷滴を受けるため仕切り板140を設けておく構成が好ましい。
【0028】
冷却機構110は、側面などに取り付けた支持部材により冷却室内に取り付けられ、その冷却機構上面、冷却機構下面、冷却機構正面および冷却機構背面を冷却室の内壁面に対して密着させないように設置される。この構成例では、冷却機構110は冷却室150内の天井付近に設置されているが、天井の壁面に密着させず隙間を開けて設置されている。また、冷却機構正面の前方には送風ファン120が配置され、冷却機構背面と対向する冷却室の壁面との間には冷却風が下方の冷却室内に回りこんで循環しやすいよう十分な空間が確保されている。
なお、冷却機構110を天井付近ではなく、側壁面や後壁面に設ける構成については実施例3において説明する。
【0029】
冷却機構110は、
図2から
図4に示すように、筐体111、複数の熱交換金属フィン112、冷媒配管113を備えた構成となっている。なお、冷却機構110の構成は、上記構成以外の構成については特に限定されず、一般の冷却機構が備えている構成を備えることができる。
【0030】
筐体111は、冷却機構110の外形となる枠体であり、この構成例では、その上面および下面が開放されて上下方向に通気性がおり、冷却機構正面、冷却機構背面、冷却機構右側面、冷却機構左側面を囲む枠体となっている。筐体111は金属でも良いが、霜が付きにくいようにその表面を断熱材などで覆う構成であっても良い。
なお、
図2から
図4に示した冷却機構110の構成には、筐体111内部に熱交換金属フィン112を支持する部材の図示を省略しているが、筐体111の内壁面から熱交換金属フィン112を支持する部材が延設されていても良いし、筐体111内の上面および下面に熱交換金属フィン112を支持する部材が設けられていても良い。この構成例では、冷却機構上面および冷却機構下面は、冷却室天井などの壁面で閉鎖されておらず上下方向に通気性が保たれた構成とする。
【0031】
このように筐体111は、その冷却機構上面および冷却機構下面が開放され、上下方向に通気性が確保され、空気が冷却機構の内部に出入りできる構成となっているため、冷却機構上面および冷却機構下面に沿って流れる強制風により引き起こされる通気風が冷却機構110の内部に流れ込む構成となっている。
【0032】
熱交換金属フィン112は、所定間隔で複数枚配列されており、冷媒配管113が貫通しており、熱交換を行う部材である。素材としては熱伝導性の良い金属であり、例えば、アルミニウム合金などが用いられる。板状になっているのは熱交換効率を高めるべく表面積を大きくするためである。
【0033】
熱交換金属フィン112は冷却機構上面と冷却機構下面とを通り抜ける通気風に対して沿うように取り付けられている。
この各熱交換金属フィン112の冷却機構110内での取り付け姿勢については、複数パターンがあり得る。
図2から
図4は冷却装置110の熱交換金属フィンの配設の各パターンを簡単に示したものである。
図2は、熱交換金属フィン112が冷却機構上面および冷却機構下面に対して略垂直かつ冷却機構正面に対して略平行に配置された例を示す図である。つまり、多数の熱交換金属フィン112が冷却機構正面に対向するように並べられている。
図3は、熱交換金属フィン112が冷却機構上面および冷却機構下面に対して略垂直かつ冷却機構正面に対して略垂直に配置された例を示す図である。つまり、多数の熱交換金属フィン112が冷却機構右側面および冷却機構左側面に対向するように並べられている。
図4は、熱交換金属フィン112が冷却機構上面および冷却機構下面に対して斜めかつ熱交換金属フィン112の上端エッジおよび下端エッジが冷却機構正面に対して略平行に配置された例を示す図である。つまり、多数の熱交換金属フィン112が
図2の状態から冷却機構正面に向けて少し傾くように並べられている。
【0034】
本発明の冷却装置100では、
図1に示すように、冷却機構110を送風ファン120による送風の循環流の中に置くが、冷却機構110の内部に直接送風ファンによる送風が入り込まないように筐体111で取り囲む一方、その開放されている冷却機構上面および冷却機構下面を介して通気風が流れる構成となっており、冷却機構110の内部において通気風に対して熱交換金属フィン112が沿うように配設されている。
通気風が冷却機構上面および冷却機構下面を上下方向に略垂直に流れるものであれば、熱交換金属フィン112を冷却機構上面および冷却機構下面に対して略垂直に設けることにより、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れるため熱交換金属フィン112に衝突することが抑制され、上下方向に時間をかけて通過して行く間に熱交換を行うことができるものとなる。この熱交換金属フィン112の取り付け姿勢のパターンとして、
図2に示した第1の取り付け姿勢のパターン、
図3に示した第2の取り付け姿勢のパターンなどがある。
次に、通気風が冷却機構上面および冷却機構下面を斜め方向(例えば、冷却機構上面から入り、冷却機構正面方向から冷却機構背面方向に向けて流されつつ冷却機構下面に向けて流れ降りる方向)に貫くように流れるものであれば、
図4に示すように、熱交換金属フィン112を冷却機構上面および冷却機構下面に対して斜めに設けることが好ましい。
図4に示した熱交換金属フィン112の傾きが、斜めに流れる通気風の傾きと略同じであれば、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れることとなり、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れるため熱交換金属フィン112に衝突することが抑制され、斜め方向に時間をかけて通過して行く間に熱交換を行うことができるものとなる。また、
図3に示した第2の取り付け姿勢のパターンでも良い。
図3に示した第2の取り付け姿勢のパターンは冷却機構の右側面および冷却機構左側面に対向するように設けられているため、通気風が冷却機構上面および冷却機構下面を斜め方向(例えば、冷却機構上面から入り、冷却機構正面方向から冷却機構背面方向に向けて流されつつ冷却機構下面に向けて流れ降りる方向)に貫くように流れるものであれば、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れることとなり、熱交換金属フィン112に衝突することが抑制され、斜め方向に時間をかけて通過して行く間に熱交換を行うことができるものとなる。
【0035】
冷媒配管113は、各熱交換金属フィン112を貫通する配管であり、内部に冷媒が循環する。冷媒を用いた冷却の原理は一般に知られた原理であるのでここでの説明は省略する。
【0036】
上記構成の冷却機構110が稼動することにより、熱交換金属フィン112同士の間の空間に対流してきた冷却室内の空気と熱交換金属フィン112との間で熱交換が生じ、また、熱交換金属フィン112と冷媒配管113との間で熱交換が生じて、冷却機構110内部を上下方向に通過する空気が冷却されることとなる。
【0037】
他の構成についての説明を続ける。
送風ファン120は、冷却機構110の正面に向けて送風するよう配置されたものである。
図1の構成例では、天井付近に設けられた冷却機構110の正面に直接送風が当たるよう、送風ファン120が冷却機構正面に対向するように配置されている。送風ファン120の数や取り付け高さなどは、送風ファン120から送風された空気流が、冷却機構上面または冷却機構下面の一方もしくは双方に対して略平行に流れるように設計することが好ましい。
【0038】
整流体130は、必須の部材ではないが、送風ファン120から送風された空気流を受け、冷却機構上面や冷却機構下面に沿って流れるように受け流す部材である。
図1では単純にくさび型の部材となっており、送風ファン120から送風された空気流を受けて上下に分離して後方に受け流すものとなっているが、整流体130の形状は様々なものがあり得る。流体力学の観点から空気流を受けて上下に分離して後方に受け流すことができる形状であれば、採用可能である。
【0039】
後述する
図6に示すように、整流体130は上記のように送風ファン120からの送風を受け、送風を上下2つの流れに切り分けて後方に受け流す機能を発揮するが、その際、上下2つの流れに切り分ける量を調整することができる。
図6の例では単純に山形の形状でありその頂角を送風ファン120側に対向するように設けた構造であるが、この整流体130の頂角の位置、整流体130の上下それぞれのテーパー角度、送風ファン120の配設位置などによって、送風を上下2つの流れに分流する際に、冷却機構上面側の流れの送風量、冷却機構下面側の流れの送風量の比率を調整することができる。その分流比率としては冷却機構上面方向と冷却機構下面方向に0:10の比率から10:0の比率まで自在である。一般化すると、n:m(0≦n≦10、10≧m≧0)に分けるものとすることができる。
図6の例では冷却機構上面側に流れる量に比べて冷却機構下面側に流れる量の方が多い例となっている。
このように整流体130による分流比率を調整することにより、冷却機構110の冷却機構上面側と冷却機構下面側の気圧差を制御することができ、冷却機構110内を通過する通気風の速さや量を調整することができる。
【0040】
次に、仕切り板140を説明する。
仕切り板140は、冷却機構下面側において冷却機構110に対向して配設するプレートであり、冷却機構下面との間に隙間を開けて配設する。この冷却機構110と仕切り板140との間の隙間が冷却機構下側の送風路となる。なお、冷却機構上面側には天井があるため、冷却機構上面と天井との間の隙間が冷却機構上面側の送風路となっている。送風ファン120から送風された空気流はこの冷却機構上面側の送風路および冷却機構下面側の送風路に沿って流れるものとなる。
【0041】
仕切り板140は冷却機構110の下面側に配設されているので、冷却機構110から落下する水滴や氷滴を受けるパンとして利用することができる。
仕切り板140を冷却機構110から落下する水滴や氷滴を受けるパンとして利用する場合、テーパーを付けて配設するとともに最下方にドレイン溝141を設ける工夫がある。
【0042】
図5は、仕切り板140にテーパーを付けて冷却機構110の下方に配設するとともに、最下方にドレイン溝141を設けた構成例を説明する図である。分かりやすいように側断面を示している。
図5に示すように、仕切り板140は冷却機構110の下方において、隙間を開けて配設されている。仕切り板140は冷却機構下面よりも大きな面となっており、冷却機構110から落下する水滴や氷滴をすべて受け取ることができるものとなっている。ここで、仕切り板140にはテーパーが付けられている。
図5の例では向かって右側にテーパーが付けられている。このように仕切り板140にテーパーが設けられておれば、冷却機構110から受け取った水滴や氷滴が緩やかにテーパー下方に向けて流れて行く。
【0043】
この構成例では、仕切り板140のテーパー最下方にドレイン溝141が設けられている。仕切り板140の表面を流れた水滴や氷滴はこのドレイン溝141に溜まり、さらに排水される。例えば、ドレイン溝141にはさらに紙面奥方向に向けてテーパーが設けられており、ドレイン溝141の水滴や氷滴は紙面奥方向に向けて排水されて行く。最終的には冷却室150内に設けた排水貯蔵器(図示せず)などに向けて排水されてゆけば良い。
【0044】
冷却室150は、断熱性に富んだ断熱筐体であれば良く、商品の搬入搬出作業用に開閉扉が設けられているものが一般的である。
上記構成にかかる冷却装置100における送風ファンによる送風の循環流と、冷却機構110内に引き起こされる通気風について簡単に説明しておく。
【0045】
図6は、送風ファン120から送風された送風ファンによる送風である循環流が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。
【0046】
図6に示すように、送風ファンによる送風は、冷却室150全体を周回するように大きく循環していることが分かる。この送風ファン120による送風は冷却機構110に向けて当てられており、冷却機構110全体が循環流の中に包まれている。このように冷却機構110は送風ファン120による送風である循環流の中に包まれるように存在しているが、循環流は冷却機構上面および冷却機構下面に沿って流れており、循環流が冷却機構110内部には直接入り込まないように配置されている。この送風ファンによる送風は比較的速い速度で流れており、例えば、毎秒0.5mから20mの速度となっている。
【0047】
一方、通気風は、上下方向に略垂直に流れており、冷却機構110の熱交換金属フィン112に沿って流れるようになっている。
図7は、送風ファンによる送風によって冷却機構上面と冷却機構下面に生じる微妙な気圧差により引き起こされた通気風が冷却機構上面から冷却機構下面に向けて略垂直に流れる様子を図示している。
図7に示すように、通気風は、開放された冷却機構上面や冷却機構下面に沿って送風ファン120からの送風が流れることによって冷却機構上面と冷却機構下面の間に生じる微妙な気圧差によって引き起こされるものであり、冷却機構110の内部に入り込み、冷却機構の内部を貫いて流れるものである。
この通気風の速度は、通気風中の空気が熱交換金属フィン112との間で熱交換を行うに十分な時間を確保できる速度であれば良く、例えば、毎秒0mよりも大きく2m以下の速度となるように調整されている。
【0048】
ここで、通気風の風速が十分に緩やかであれば、冷却室150で発生した水蒸気が熱交換金属フィン120の表面に着霜しにくくなり、熱交換金属フィン120の表面に霜の形成がほとんどなくなることが期待できる。
しかし、通気風が遅い分、熱交換金属フィン120の熱交換された冷気の供給量が少なくなり冷却機構110が発揮する冷却能力が抑制されてしまうこともあり得る。そこで、霜取りの定期的なメンテナンスを考慮すれば、通気風の風速をある程度速い速度となるように運転する運用も採り得る。この方が冷却能力を過剰に抑制せずに冷却できるため、実運用としては優れている場合がある。
【0049】
本発明は、従来技術とは構成が明らかに異なり、送風ファン120が冷却機構110に向けて配設されており、送風ファンによる送風が冷却機構110に向かって直接吹き付けられる構成であるため、送風ファンによる送風の循環流の只中に冷却機構110が置かれている。冷却機構110の上面および下面に沿う方向には送風ファン120の送風が流れているため、熱交換金属フィン112で熱交換された冷気は通気風により冷却機構110を上下方向に抜け出るとすべてが即座に送風の流れに乗って冷却室150に向けて循環する。つまり、冷却機構110を通過した冷気100%すべてが冷却室150の庫内を循環することとなり、冷却器が本来持つ冷却性能を過剰に抑制することなく十分に高く発揮せしめることができる。この特徴から、本発明の冷却装置100では、冷却機構110の冷却能力を十分発揮させることができるため、生鮮状態の魚などの食材を冷凍する冷凍処理などの大量急速な冷凍にも適用できる。
【0050】
次に、
図8は、送風ファン120による送風によって冷却機構上面と冷却機構下面に生じる微妙な気圧差により引き起こされた通気風が冷却機構110の内部において斜め方向に流れる様子を説明する図である。
図8の例では気圧差により引き起こされる通気風が冷却機構上面から冷却機構下面に向けて斜め方向に流れる様子を図示している。
図8の例では、冷却機構上面から冷却機構内部に入り、冷却機構正面方向から冷却機構背面方向に向けて流されつつ冷却機構下面に向けて流れ降りる方向に貫くように流れるものとなっており、一方、熱交換金属フィン112は、
図4と同様、冷却機構上面および冷却機構下面に対して斜めに設ける。
図8に示すように熱交換金属フィン112の傾きが、斜めに流れる通気風の傾きと略同じであれば、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れることとなる。熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れるため熱交換金属フィン112に衝突することが抑制され、斜め方向に時間をかけて通過して行く間に熱交換を行うことができるものとなる。
なお、
図8は、熱交換金属フィン112を斜めに取り付けた例であるが、通気風が斜めに流れる場合、熱交換金属フィン112を
図3に示した配設でも良い。
図3に示した配設パターンであれば、冷却機構の右側面および冷却機構左側面に対向するように設けられているため、通気風が冷却機構上面および冷却機構下面を斜め方向に流れるものであれば、熱交換金属フィン112に対して通気風が沿うように流れることとなり、熱交換金属フィン112に衝突することが抑制され、斜め方向に時間をかけて通過して行く間に熱交換を行うことができるものとなる。
以上、実施例1に示した本発明の冷却装置100は、送風ファン120が冷却機構110に向けて配設されているため、送風ファン120による送風が冷却機構110に向かって吹き付けられる構成であるが、冷却機構110内部には穏やかな通気風を通過させる構成とし、熱交換金属フィン112での霜の形成を抑制することができ、高湿度で高品質の冷却処理を実現することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、実施例1に示した本発明の冷却装置100の構成例に対して、通気量調整体114を取り付けた構成例である。
図9は、実施例2にかかる冷却装置100aの構成例を簡単に示した図である。
図10は、実施例2にかかる冷却装置100aの構成例のうち、冷却機構110aを中心に簡単に示した図である。
冷却装置100aは、
図1と同様、冷却機構110aと、送風ファン120と、整流体130と、冷却室150を備えた構成となっているが、
図10に示すように、冷却機構110aが通気量調整体114を伴う構成となっている。
ここでは、便宜上、実施例1と同様の構成については説明を省略する。
【0052】
通気量調整体114は、冷却機構110aの上面と下面のいずれか一方または双方に取り付けられたものであり、スリットや孔が穿設されて通気が確保されたものである。
図10の例では、スリットとなっている。
【0053】
通気量調整体114の機能は、送風ファンによる送風である循環流が冷却機構上面、冷却機構下面に沿って流れることにより引き起こされる通気風の大きさを調整する部材であり、
図10の構成例では、通気量調整体114のスリットの幅によって冷却機構110aの上面、下面における通気能力が決まる。
【0054】
通気風は、冷却機構110の上面や下面を送風ファンによる送風である循環流が流れることにより生じる微妙な気圧差によって引き起こされるものであるため、冷却機構110の上面や下面に対して通気量調整体114を取り付けた場合、冷却機構上面や冷却機構下面から出入りする面積が、スリットに応じた開放面積となるため、通気風の大きさや速度に影響を与えることとなる。つまり、通気量調整体114は上下方向の通気に対する一種の抵抗体と見ることができ、スリットの幅を選択することにより、通気風の速度を制御することができる。
【0055】
図11は、冷却機構110の上面および下面双方に対して通気量調整体114を取り付けた場合における、送風ファン120から送風された送風ファンによる送風である循環流と、冷却機構110内に引き起こされる通気風を簡単に示した図である。
図11に見るように、送風ファン120から送風された送風ファンによる送風である循環流に対して、通気風は上下方向に流れるが、この構成例では、冷却機構110の上面や下面に対して通気量調整体114が取り付けられているので、通気風が出入りする面積が制限されている。そのため、通気風の大きさや速度が調整される。
【0056】
もっとも通気風の大きさや速度は、送風ファン120による送風の循環流の大きさによっても調整可能であるが、もし送風ファン120による送風の循環流を小さくことで通気風の大きさや速度を変化させると、冷却室150内の冷気循環が小さくなってしまう。一方、通気量調整体114を取り付けて通気風の大きさや速度を変化させる場合、送風ファンによる送風の循環流の大きさを小さくする必要はなく、冷却室150内の冷気の循環が維持されるメリットがある。
【実施例3】
【0057】
次に、冷却機構110を天井付近ではなく、側壁面または後壁面付近に沿って設ける構成例について説明する。
実施例1に示した本発明の冷却装置100の構成例は、
図1に示すように、冷却機構110を天井付近に設けたものであった。しかし、冷却機構110を冷却室150内において様々な位置に設置する構成が可能である。
図12に示す冷却装置100の構成例は、冷却機構110が天井付近ではなく、冷却室150の後壁面近くに配設された構成例である。
図12では冷却室150の内部が分かりやすいように壁面を透過して内部の冷却機構110と送風ファン120の配置を簡単に示した図となっている。
【0058】
図12の構成では、実施例1に示した冷却機構110を立てた状態で後壁面に隙間を開けて沿わせるように設置している。
図12の構成例では、送風ファン120も後壁面に沿って並べられており、送風ファン120に対向する側が冷却機構110の正面となっている。
図12では、
図1と同様、冷却機構110の面の見方として送風ファン120の送風方向に対向する面を“冷却機構正面”とし、冷却室壁面との間に隙間をあけて対向する面を“冷却機構上面”とみた関係において、“冷却機構正面”“冷却機構背面”“冷却機構右側面”“冷却機構左側面”“冷却機構上面”“冷却機構下面”を決めている。このように見立てて、冷却機構110の“冷却機構上面”から“冷却機構下面”に向けて通気性が確保されているものとする。
【0059】
図12の構成例では冷却室150内の後壁面近くに配置されている冷却機構110に対して図中右側に送風ファン120が設置され、冷却機構110に対して隙間を開けて仕切り板140が立設されている。冷却機構110と仕切り板140の間が“冷却機構下側の送風路”と見立てられ、冷却機構110と冷却室の右側壁面の間が“冷却機構上側の送風路”と見立てられる。
【0060】
図13は、送風ファン120から送風された送風が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。上方から見た平面図となっている。なお内部が分かりやすいように、天井は描かれていない。
図13に示すように、送風ファン120から送風された空気流が、冷却室の後壁面近くに設置されている冷却機構110の“冷却機構上面”と“冷却機構下面”の双方に沿うように整流されている。ここで、冷却機構110の内部で熱交換金属フィン120に沿って発生する通気風は、実施例1の場合と原理的には同様であり、“冷却機構上面”と“冷却機構下面”を貫くように流れるものとなる。
【0061】
図14は、冷却機構110が天井付近ではなく、冷却室150の右側壁面近くに配設された構成例である。
図14においても冷却室150の内部が分かりやすいように壁面を透過して内部の冷却機構110と送風ファン120の配置を簡単に示した図となっている。この例では冷却室150内の右側面近くに配置されている冷却機構110に対して図中手前に送風ファン120が設置され、隙間を開けて仕切り板140が立設されている。
【0062】
冷却機構110の面の見方として送風ファンの送風方向に対向する面を“冷却機構正面”とし、冷却室の右側壁面に対して隙間をあけた面を“冷却機構上面”とみた関係とすれば実施例1と同様である。
図14には、
図1と同様、冷却機構110の面の見方として送風ファン120の送風方向に対向する面を“冷却機構正面”とし、隙間をあけた面を“冷却機構上面”とみた関係において、“冷却機構正面”“冷却機構背面”“冷却機構右側面”“冷却機構左側面”“冷却機構上面”“冷却機構下面”を決めている。
冷却機構110の“冷却機構上面”と“冷却機構下面”は開放されて通気性が確保されている。
冷却機構110と仕切り板140の間が“冷却機構下面側の送風路”となり、冷却機構110と冷却室の右側壁面の間が“冷却機構上面側の送風路”を形成している。
なお、
図14の構成例は、冷却機構110を冷却室の右側壁面の近くに配置し、冷却室の右側壁面に対向する面を“冷却機構上面”とした例であるが、同様に、冷却機構110を冷却室の左側壁面の近くに配置して冷却室の左側壁面に対向する面を“冷却機構上面”とする構成や、冷却機構110を冷却室の後壁面の近くに配置して冷却室の後壁面に対向する面を“冷却機構上面”とする構成も可能である。
【0063】
図15は、送風ファン120から送風された循環流が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。位置関係が異なるだけで、
図13に示したものと同様である。
なお、
図12から
図15に示した構成例では、冷却機構110を床面に立設する配置であり、送風ファン120を対向するように立設した構成例であったが、
図16に示したように、冷却機構110を床面から天井に向けて配置し、送風ファン120を天井付近に設けて、送風を天井方向から床面方向へ向けて冷却機構110に対して流す構成も可能である。なお、この場合、冷却機構110を床面に直接設置するのではなく、送風ファン120からの送風が後方へ抜けるように冷却機構背面は床面から浮かせておくことが好ましい。
図16の例では冷却機構背面の下に載せ台を設けて冷却機構背面を床面から離している。
この場合も、冷却機構110の面の見方として、送風ファン120に対向する面を“冷却機構正面”とし、隙間をあけた面を“冷却機構上面”とみた関係とし、実施例1と同様に考えれば良い。
【0064】
以上説明した実施例1に示した本発明の冷却装置100や、実施例2に示した本発明の冷却装置100aは、様々な装置に組み込むことができる。それらの用途は限定されず、冷蔵庫、冷凍庫または保冷庫など、冷却装置を備えるものであれば適用することができる。
また、車や船などの基本的移動手段を備えたものに本発明の冷却装置に加えることができる。例えば、保冷車、冷凍車、保冷船、冷凍船または運輸飛行機とすることができる。
【0065】
以上、本発明の冷却装置の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の冷却装置は、業務用途、家庭用途を問わず広く冷却装置が必要とされる各種の冷蔵庫、冷凍庫または保冷庫の装置類に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】実施例1に係る冷却装置100の構成例を簡単に示した図である。
【
図2】熱交換金属フィン112が略垂直かつ前記正面に対して略平行に配置された冷却装置110の内部構成を簡単に示した図である。
【
図3】熱交換金属フィン112が略垂直かつ前記正面に対して略垂直に配置された冷却装置110の内部構成を簡単に示した図である。
【
図4】熱交換金属フィン112が冷却機構上面および冷却機構下面に対して斜めかつ熱交換金属フィン112の上端エッジおよび下端エッジが冷却機構正面に対して略平行に配置された例を示す図である。
【
図5】仕切り板140にテーパーを付けて冷却機構110の下方に配設するとともに、最下方にドレイン溝141を設けた構成例を説明する図である。
【
図6】送風ファン120から送風された送風ファンによる送風である循環流が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。
【
図7】送風ファンによる送風によって冷却機構上面と冷却機構下面に生じる微妙な気圧差により引き起こされた通気風が冷却機構上面から冷却機構下面に向けて略垂直に流れる様子を図示している。
【
図8】送風ファン120による送風によって冷却機構上面と冷却機構下面に生じる微妙な気圧差により引き起こされた通気風が冷却機構110の内部において斜め方向に流れる様子を説明する図である。
【
図9】実施例2の冷却装置100aの構成例を簡単に示した図である。
【
図10】実施例2にかかる冷却装置100aの構成例のうち、冷却機構110aを中心に簡単に示した図である。
【
図11】冷却機構110の上面および下面双方に対して通気量調整体114を取り付けた場合における、送風ファン120から送風された送風ファンによる送風である循環流と、冷却機構110内に引き起こされる通気風を簡単に示した図である。
【
図12】冷却機構110が天井付近ではなく、冷却室150の後壁面近くに配設された構成例である。
【
図13】送風ファン120から送風された送風ファンによる送風が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。
【
図14】冷却機構110が天井付近ではなく、冷却室150の右側壁面近くに配設された構成例である。
【
図15】送風ファン120から送風された送風ファンによる送風が冷却装置100内全体を循環する様子を説明する図である。
【
図16】冷却機構110を床面から天井に向けて配置し、送風ファン120を天井付近に設けた構成を示す図である。
【
図17】特開平11−94439号公報に開示された冷蔵庫の冷却器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
100 冷却装置
110 冷却機構
111 筐体
112 熱交換金属フィン
113 冷媒配管
114 通気量調整体
120 送風ファン
130 整流体
140 仕切り板
150 冷却室
【要約】 (修正有)
【課題】冷却器の熱交換金属フィンに霜が付きにくく、高湿度に保ったまま冷却処理ができ、冷却対象物を乾燥させずに冷却できる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却機構上面、冷却機構下面、冷却機構正面および冷却機構背面を冷却室150の内壁面に対して密着させずに設置された冷却機構110と、冷却機構の正面に向けて送風するよう配置された送風ファン120を備えた構成において、冷却機構上面および冷却機構下面の通気性を確保した形で内部において複数の熱交換金属フィンが冷却機構上面と冷却機構下面に対して直交または斜めに配置する。送風ファンから送風された送風ファンによる送風である循環流が、冷却機構の上面と下面のいずれかまたは双方に沿って流れるように整流する。この送風によって、冷却機構内の熱交換金属フィンに沿って上下方向に流れる通気風が発生するように冷却機構上面および冷却機構下面に通気性を確保しておく。
【選択図】
図1