特許第5768184号(P5768184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5768184ピペラジン系膨張性難燃剤を含むハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768184
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ピペラジン系膨張性難燃剤を含むハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20150806BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20150806BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08K5/3462
   C08L53/02
   C08L23/08
   C08L23/16
   H01B7/18
【請求項の数】5
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-516151(P2014-516151)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2014-523460(P2014-523460A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】CN2011076057
(87)【国際公開番号】WO2012174712
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ジャーニー ル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】クオ,デイビット
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ギブン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ユーロン
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/019536(WO,A1)
【文献】 特表2013−501845(JP,A)
【文献】 特表2012−525477(JP,A)
【文献】 特開2008−063458(JP,A)
【文献】 特開2002−212378(JP,A)
【文献】 特開2000−109638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物であって、
a.前記組成物の全重量に基づき、20重量%より大きく30重量%以下のプロピレンポリマー;
b.130℃を超える融点を有する20〜40重量%の熱可塑性エラストマー(TPE);および
c.ピペラジン成分を含む膨張性難燃
を含有し、UL1581−2001により定められる50%未満の熱変形率を有する、ハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ピペラジン成分が、ピペラジンピロホスフェート、ピペラジンオルトホスフェート、ピペラジンポリホスフェート、ピペラジン基を含むポリトリアジニル化合物、およびピペラジン基を含む1,3,5−トリアジン誘導体のオリゴマーまたはポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン・ブロック・コポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレンインターポリマー、およびオレフィン・ブロック・コポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記難燃が、前記難燃の全重量に基づき、1〜99重量%のピペラジン系難燃剤および1〜99重量%の他の難燃剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1の組成物から製造される、ワイヤまたはケーブルのシース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ワイヤおよびケーブル(W&C)用の組成物に関する。一態様では、本発明はW&C外装(sheathings)、例えば難燃性およびハロゲンフリー(halogen-free)の保護ジャケットおよび絶縁体、に使用する熱可塑性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤおよびケーブル(W&C)耐燃性外装市場における重要課題は、家庭用電化製品、例えば携帯電話充電器ワイヤ、およびコンピュータデータコード、電源コードおよび付属コードなどの低電圧家電製品用途において可撓性配線向けの難燃性組成物を提供することである。現在の絶縁材料は機械的性質と可撓性のバランスを提供することができるが、高温熱老化後の伸びの保持率が低く、湿潤電気抵抗は小さい。
【0003】
単一ポリマー系、例えばポリオレフィンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)、例えば熱可塑性ウレタン、を用いて製造された組成物は、難燃性(FR)絶縁体の市場の全ての要求を満たすために必要な仕様に欠ける。熱可塑性ポリウレタン(TPU)系ハロゲンフリー難燃性(HFFR)組成物は典型的には家電製品用のワイヤ絶縁/ケーブルジャケットに使用され、ハロゲン含有ポリマー材料の代替品となっている。TPU系難燃性(FR)ポリマー組成物から形成されるケーブル外装は、一般に特定のW&C用途で重要な150℃の熱変形試験(UL−1581)要件を満たす。この要件は一般に、マトリックスポリマーとしての非架橋ポリオレフィンから形成される外装では達成できない。しかしながら、TPU系FR組成物の主な欠点は、絶縁抵抗(IR)の低さ、煙濃度の問題、高い材料密度、および原料としてのTPUのコストが高いことである。
【0004】
ポリオレフィンをTPUの代替として使用することにより、TPU系FR組成物の課題を解決できる可能性がある。しかしながら、ポリオレフィンまたはポリオレフィンエラストマー系HFFR組成物は、典型的には、TPU系FR組成物と比べて低い融点のため、特に高温で、例えば150℃で、熱変形特性が劇的に低下する。さらに、ポリオレフィン成分を使用すると、典型的には炭素−水素構造により、全般的なFR性能が低下する。結果的に、ポリオレフィン系HFFR組成物はバランスのとれた機械的性質とともに高レベルの難燃性を提供することは困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態では、ハロゲンフリーの難燃性組成物を提供し、これはVW−1難燃性試験および150℃のUL1581−2001熱変形試験の両方に合格すると同時に、35000psi未満の割線係数を有し良好な引張特性および弾力特性を示し、さらに高い湿潤電気(絶縁)抵抗が得られる、ワイヤおよびケーブル(W&C)外装の製造を容易にする。一実施形態において、組成物は、
A.プロピレンポリマー、例えばプロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー(RCP)、プロピレン耐衝撃性改質ポリマー(ICP)、またはこれらの混合物に基づく、主要相としてのポリオレフィン系樹脂であって、配合物の少なくとも5重量%であり、より好ましくは10重量%より多い樹脂;
B.1またはそれ以上の熱可塑性エラストマー(TPE);
C.ピペラジン成分を含む窒素および/またはリン系膨張性ハロゲンフリー難燃剤に基づく難燃剤系;および
D.任意選択の添加剤パッケージ
を含む。
【0006】
本組成物の実施形態では、配合物の総重量を基準として、成分「A」のポリオレフィン系樹脂は、少なくとも5重量%、好ましくは10重量%より多く、成分「B」のTPEは、約1〜80重量%、好ましくは少なくとも10重量%であり、成分「C」の難燃剤系は少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%であり、成分「D」の任意選択の添加剤は、存在する場合、0.1〜20重量%である。
【0007】
本発明は、ワイヤおよびケーブル(W&C)絶縁用、ならびに非ポリビニルクロライド(PVC)ハロゲンフリーおよび/またはハロゲンフリーの難燃剤市場におけるPVC組成物の代替用のハロゲンフリー難燃性ポリマー組成物を提供する。本組成物は可撓性配線用途、例えば家庭用電化製品、例えば携帯電話充電器ワイヤなどにとりわけ有用である。本発明の組成物は既存技術の欠点を克服し、機械的性質、高い難燃性および加工性(良好な熱安定性および高可撓性を含む)、ならびに非常に改良された湿潤絶縁抵抗および湿潤電気特性、熱老化性能および熱変形の望ましいバランスを提供する。
【0008】
本発明の、プロピレンを含むポリオレフィンと熱可塑性エラストマー(TPE)、例えばポリオレフィンのランダムコポリマーおよびブロックコポリマー、にピペラジン成分を含む膨張性窒素−リン(N−P)型の非ハロゲン難燃剤(FR)添加剤系(system)を組み合わせた混合物は、予想外の相乗効果を達成し、並外れて優れたバランスの良好な機械的性質を備えた本発明のFR組成物から製造されるワイヤおよびケーブル(W&C)外装を提供し、この機械的性質は、W&C絶縁に使用される他の非ハロゲンFR組成物と比べて、150%および200%(ASTM D638)より高い引張伸び、10Mpaより高い引張応力、および800psiより高い引張強度、VW−1試験に合格する優れたFR性能、押出容易性、150℃以下のUL1581−2001試験に合格する改良された熱変形性能(50%未満)、改良された湿潤電気抵抗、良好な熱老化性能、可撓性および低煤煙濃度溶液を有する。本発明のPP/TPE組成物は、TPU系ハロゲンフリー難燃性材料と比べて秀でた機械的性質および可撓性を有し、TPU系ハロゲンフリー難燃剤(HFFR)組成物よりはるかに低い密度および高い湿潤絶縁(電気)抵抗を有し、原料費はかなり削減される。金属水和物系TPU、TPEまたはポリオレフィン化合物、および膨張系ポリオレフィン化合物では、本ポリオレフィンの混合物、例えば本明細書に規定するポリプロピレンとエラストマーまたはPO系ランダムもしくはブロックコポリマーのように、熱変形および湿潤絶縁抵抗とともにFR性能および機械的性質の適切なバランスは得られない。本組成物はW&C用途の基準に合格し、VW−1難燃性試験の合格、35000psi未満での割線係数(可撓性)の測定、最低80℃、特定の実施形態では121℃および150℃での熱変形<50%を含む。本ハロゲンフリーFR熱可塑性組成物は、UL−62、HD21.14およびJCS 4509規格および仕様を含むがこれらに限定されない、北米、欧州および日本の仕様も満たしている。
【0009】
好都合なことには、本組成物は、PPと熱可塑性エラストマー成分との相溶剤(例えば機能性ポリマー)を必要とせず、実施形態では相溶剤を含まないが、これは混合するために異なる機能性ポリマーを相溶剤として必要とする他の組成物や方法に、費用効果の高い解決策を提供する。本発明組成物はいかなる架橋工程(すなわち、後硬化や動的架橋)も用いないため、架橋機構を用いる他の技術より簡易な方法および改良された材料加工性を提供する。他の公知配合物の単一ポリマー内容物(PPおよび/または他のTPE)の一部を熱可塑性エラストマー(例えば、ランダムまたはブロック・ポリオレフィンコポリマー)で置換することにより、膨張性窒素−リン型FR添加システムと組み合わせた混合物は、機械的性質(例えば、伸び>150%、引張強度>800psi)、改良された熱変形温度、良好な燃焼性能、および改良された湿潤電気性能の優れたバランスを提供する。さらに、低コストのポリオレフィンにTPEを混合することにより、プラスチックの費用はかなり削減され、ハロゲンフリーFRプラスチック用のTPEおよびポリオレフィンの両最終用途に新規な配合自由度がでてくる。本発明の組成物は、優れた機械的性質および熱変形性能を提供することにより、全般的なFR性能を損なうことなく、ポリオレフィン系HFFR製品の解決策も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
元素の周期表についての全ての参照は、CRC Press,Inc.により2003年に刊行および版権化されている元素周期表を指す。また、族についてのいかなる参照も、族の番号付けについてのIUPACシステムを用いるこの元素周期表に反映される族とする。特に断らない限り、文脈から暗黙に、または当分野の慣習により、全ての部および百分率(%)は重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日現在認められるものである。合衆国特許実務の目的上、参照する任意の特許、特許出願または刊行物の内容は、とりわけ合成技術、製品および加工設計、ポリマー、触媒、定義(本明細書の開示で具体的に規定されるいずれの定義とも矛盾しない程度)および当分野の常識の開示に関して、全体として参照により組み込まれる(またはその等価な合衆国版が参照により組み込まれる)。
【0011】
本明細書で開示する数値範囲はおおよその範囲であるため、特に断らない限り、範囲外の値を含んでもよい。数値範囲は、任意の下値と任意の上値との間に少なくとも2単位の間隔があるという条件で、下値および上値からのあらゆる値ならびに両値を1単位きざみで含む。一例として、組成特性、物理特性または他の特性、例えば分子量、重量パーセントなどが100から1,000までならば、全ての個々の値、例えば100、101、102など、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などは明確に列挙される。1未満の値を含む範囲または1より大きい小数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の1桁の数を含む範囲(例えば、1から5)については、1単位は典型的には0.1とみなされる。これらは具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙される最低値と最高値の間の数値のあらゆる可能な組み合わせが本開示に明確に記載されているとみなされる。とりわけ、本発明組成物中の様々な成分の量、本発明組成物のFR成分中の様々な成分の量、およびこれらの組成物による様々な特徴および特性について、数値範囲が明細書内に規定され、これらの組成物から製造されるW&C外装が定義される。
【0012】
「ケーブル」および同種の用語は、シースの内側の少なくとも1つのワイヤまたは光ファイバーを意味し、シースは例えば絶縁体被覆または保護外側ジャケットである。典型的には、ケーブルは束ねられた2またはそれ以上のワイヤまたは光ファイバーであり、典型的には一般的な絶縁被覆および/または保護ジャケットの中にある。シース内側の個々のワイヤまたはファイバーは、裸、被覆または絶縁されていてもよい。結合ケーブルは電線および光ファイバーの両方を含んでもよい。ケーブルなどは、低、中および高電圧用に設計できる。典型的なケーブル設計は、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号および同第6,714,707号明細書に説明されている。
【0013】
「組成物」、「配合物」および同種の用語は、2またはそれ以上の成分の混合物またはブレンド物を意味する。
【0014】
「エラストマー」はゴム状のポリマーであり、その元の長さの少なくとも2倍まで引き伸ばせ、伸ばしている力を除くと非常に急速におおよそ元の長さまで縮むことができるものである。エラストマーは、約10,000psi(68.95MPa)またはそれ未満の弾性係数を有し、非架橋状態で、ASTM D638−72の方法を用いて、室温で通常200%より大きい伸びを有する。
【0015】
「ハロゲンフリー」および同種の用語は、本発明の組成物がハロゲンを含まないかまたは実質的に含まない、すなわち、イオンクロマトグラフィー(IC)または同類の分析方法により測定してハロゲン含有量が<2000mg/kgであることを意味する。この量未満のハロゲン含有量は、ワイヤまたはケーブル被覆としての組成物の有効性にとって取るに足りないとみなされる。
【0016】
「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。この総称は、コポリマー(通常、2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる名称)、および2種を超える異なるモノマーから調製されるポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
【0017】
「膨張性難燃剤」および同種の用語は、火に曝している間に、高分子物質の表面に形成される発泡チャーを生じる難燃剤を意味する。
【0018】
「オレフィン系ポリマー」および同種の用語は、ポリマーの総重量を基準として、重合形態で過半数量の重量パーセント(重量%)のオレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンを含有するポリマーを意味する。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーを含む。
【0019】
「ポリマー」という用語(および同種の用語)は、同種または異種のモノマーを反応(すなわち重合)させることにより調製される高分子化合物である。「ポリマー」にはホモポリマーおよびインターポリマーが含まれる。
【0020】
「ポリマーブレンド」および同種の用語は、2種またはそれ以上のポリマーの混合を意味する。このような混合物は混和性であってもなくてもよい。このような混合物は分相であってもなくてもよい。このような混合物は、1またはそれ以上のドメイン配置を含んでも含まなくてもよく、ドメインは透過型電子顕微鏡、光散乱、X線散乱、および当分野で公知の他の任意の方法で測定される。
【0021】
「ポリオレフィン」、「PO」および同種の用語は、単純オレフィンから得られるポリマーを意味する。多くのポリオレフィンは熱可塑性であり、本発明の目的上、ゴム相を含むことができる。代表的なポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンおよびこれらの種々のインターポリマーを含む。
【0022】
「抵抗」は、材料の形状(面積および長さ)および抵抗率に基づく電流の流れに対する材料の反発と定義される。抵抗は、表面を横断または表面から接地までの導通の程度を示し、電荷を放散する物体の能力も示すことができる。「表面抵抗」という用語は、(dc電圧)対(材料と同じ側に接触する特定の立体配置の2つの電極間に流れる電流)の比として定義される。抵抗および表面抵抗はオームで表される。
【0023】
「表面抵抗率」は、表面を横断して流れる電流について(単位長さ当たりのdc電圧降下)対(単位幅当たりの表面流)の比として定義される。表面抵抗率は、材料が一定の厚さの薄膜である場合の材料パラメータである。事実上、表面抵抗率は、四角の2つの対辺間の抵抗であり、四角のサイズ(サイズがフィルムの厚さより大のとき)またはその寸法単位と無関係である。表面抵抗率はオーム・パー・スクエア(Ω/sq)で表され、電気用の絶縁材料を評価するために伝統的に用いられる。
【0024】
破断点引張伸びはASTM D638に従って測定される。破断点引張強度はASTM D638に従って測定される。
【0025】
「体積抵抗」は、(dc電圧)対(試験対象の材料の反対側と接触する(特定の立体配置の)2つの電極間を通過する電流)の比として定義される。体積抵抗はオームで報告される。
【0026】
「体積抵抗率」は、(単位厚さ当たりのdc電圧降下)対(材料を通過する単位面積当たりの電流量)の比として定義される。体積抵抗率は、材料がどれ程容易に材料の大部分に電気を通すかを示す。体積抵抗率はオーム−センチメーター(Ω−cm)で表される。
【0027】
「VW−1」は、ワイヤおよび絶縁チューブのアメリカ保険業者安全試験所(UL)燃焼規格であり、ワイヤまたは絶縁チューブがUL 1441仕様下で与えられる最高燃焼等級「垂直ワイヤ、等級1」を意味する。試験はワイヤまたは絶縁チューブを垂直に設置して実施する。炎は一定期間底部に配置した後、除去し、絶縁チューブの特徴が記録される。VW−1燃焼試験はUL−1581の1080の方法に従って測定できる。
【0028】
「ワイヤ」および同種の用語は、導電性金属の単線、例えば銅もしくはアルミニウム、または光ファイバーの単線を意味する。
【0029】
本発明の実施形態において、組成物は、成分(A)ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系ポリマーを主要相として含むがこれらに限定されない)、および(成分(C)難燃剤(FR)系および選択的に成分(D)任意選択の添加剤と混合した)成分(B)熱可塑性エラストマー(TPE)の2樹脂系を含む。FR系は、ピペラジン成分(例えば、FP2100JおよびBudit 3167)を含む窒素/リン系膨張性ハロゲンフリー難燃剤を含有する。任意選択の添加剤パッケージは、難燃性ワイヤおよびケーブルのシースを調製する組成物用に、1またはそれ以上の従来の添加剤、例えば抗酸化剤、UV安定剤、着色剤、加工助剤などを含むことができる。
【0030】
ポリオレフィン(PO)系樹脂/マトリックス
ポリオレフィン(PO)系樹脂(マトリックス)成分(A)は、主要相としてプロピレンポリマー(ポリプロピレンともいわれる)を含む。ポリオレフィン系樹脂成分は、組成物の少なくとも5、少なくとも10、および好ましくは少なくとも20重量%、典型的には5〜80重量%、10〜60重量%、10〜40重量%および20〜40重量%である。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂成分は、組成物の20重量%より多く、30重量%以下である。
【0031】
「プロピレンポリマー」、「プロピレン」および同種の用語は、(重合性モノマーの総量に基づいて)過半数量の重量%の重合されたプロピレンモノマーを含むポリマーを意味し、任意選択で少なくとも1つの重合されたコモノマーを含むことができる。本発明のプロピレンポリマーは、プロピレンホモポリマーならびにプロピレンのランダムおよび耐衝撃性改質コポリマー、ならびにこれらの混合物を含む。プロピレンポリマーは、アイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチック・ポリプロピレンとすることができる。「プロピレンホモポリマー」および類似の用語は、65重量%を超えるプロピレンモノマーに由来する単位から単独でまたは基本的に全て構成されるポリマーを意味する。「プロピレンコポリマー」および類似の用語は、プロピレンおよびエチレンおよび/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味する。「コポリマー」という用語は、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。プロピレンコポリマーのコモノマー含有量は、好ましくは35重量%未満、好ましくは2〜30重量%、および好ましくは5〜20重量%である。プロピレンポリマーのメルトフローレート(MFR、ASTM D1238により230℃/2.16kgで測定)は、良好な加工性および機械的性質のバランスを達成するために、好ましくは20g/10分未満、好ましくは少なくとも1、1.5、および最も好ましくは少なくとも1.9g/10分、および典型的には2、5、7以下、最も好ましくは12g/10分以下である。プロピレンポリマーは、DSCにより測定して、好ましくは100〜170℃、好ましくは140℃より高いピーク融点(Tmax)を示す。ポリプロピレンホモポリマーは市販されており、とりわけDOWポリプロピレンホモポリマー樹脂のDOW 5D49(MFR=38g/10分)、DOW 5D98(MFR=3.4g/10分)、DOW 5E16S(MFR=35g/10分)、およびDOW 5E89(MFR=4.0g/10分)を含み、全てThe Dow Chemical Companyから入手することができる。
【0032】
プロピレンホモポリマーは容易に入手することができ、価格競争力のある材料である。しかしながら、ランダムおよび耐衝撃性コポリマーは、プロピレンおよびエチレンポリマーとの相溶性、ならびに得られる製品の物理的および機械的性質の改良(例えば、フィルムの引裂、落槍衝撃、または破壊抵抗の改良)の点で好ましい。プロピレンホモポリマーと比べて、ランダム・プロピレン・コポリマーは、光学特性(すなわち、透明度および曇価)の改良、耐衝撃性の改良、可撓性の増大および融点の低下を示す。ランダム・プロピレン・コポリマーは多数の用途、典型的には(プロピレンホモポリマーと比較して)透明度および/または耐衝撃性の改良を要求する用途で使用される。
【0033】
「ランダムコポリマー」は、モノマーがポリマー鎖にランダムに分布するコポリマーを意味する。ランダム・プロピレン・コポリマーは、典型的にはプロピレンに由来する90またはそれ以上のモル%単位を含み、その単位の残りは少なくとも1つのα−オレフィンの単位に由来する。コポリマーにおけるコモノマーの存在は、プロピレンの結晶化度、ひいては物理特性を変える。ランダム・プロピレン・コポリマーのα−オレフィン成分は、好ましくはエチレン(本発明の目的上、α−オレフィンと考えられる)またはC4〜20直鎖、分枝または環状α−オレフィンである。C4〜20α−オレフィンの例として、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンがあげられる。α−オレフィンは、環状構造、例えばシクロヘキサンまたはシクロペンタンも含有でき、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンを生じることができる。該用語の伝統的な意味のα−オレフィンではないが、本発明の目的上、特定の環状オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連オレフィン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネンはα−オレフィンであり、上記のα−オレフィンのいくつかまたは全ての代わりに使用できる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)は本発明の目的のα−オレフィンである。ランダム・ポリプロピレン・コポリマーの例として、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−オクテンなどがあげられるが、これらに限定されない。ランダム・コポリマー・ポリプロピレンは市販されており、とりわけDOWランダム・コポリマー・ポリプロピレン樹脂のDS6D82(MFR=7.0g/10分)、6D83K(MFR=1.9g/10分)、C715−12NHP(MFR=12g/10分)を含み、全てThe Dow Chemical Companyから入手できる。
【0034】
「耐衝撃性コポリマー」という用語は、複相プロピレンコポリマーをいい、ポリプロピレンは連続相(マトリックス)であり、エラストマー相がその中に均一に分散している。耐衝撃性コポリマーはホモポリマーとエラストマーの物理的混合物であり、機械的混合または多段階反応器の使用により生産できる。通常、耐衝撃性コポリマーは二段階または多段階法で形成される。いくつかの実施形態において、耐衝撃性コポリマーは、少なくとも5、少なくとも6、および好ましくは少なくとも7から、35以下、15以下、および好ましくは9重量%以下のエチレンコモノマーを有する。耐衝撃性改質プロピレンコポリマーの例は、C766−03(MFR=3g/10分)、C7057−07(MFR=7g/10分)、C7061−01N(MFR=1.5g/10分)、C706−21NA HP(MFR=21g/10分)の取引名称でThe Dow Chemical Companyから市販されているものを含む。
【0035】
熱可塑性エラストマー(TPE)
成分「B」の熱可塑性エラストマー(TPE)は、ポリオレフィン(PO)であるが、(1)エラストマーの特性を有し、その元の長さを超えて引き伸ばされる能力があり、解除されると実質的にその元の長さまで縮み、ならびに(2)熱可塑性樹脂と同様に加工でき、熱に曝されると軟化する能力があり、室温に冷却するとその本来の状態に実質的に戻る。TPEは少なくとも2つの区分を含み、一方は熱可塑性であり、他方はエラストマー性である。
【0036】
組成物の全体的物性のバランスを強化するために、組成物は、1またはそれ以上のTPE樹脂とともに配合することができ、これはポリオレフィン(PO)系樹脂(マトリックス)内の分散相として、またはPO相に組み入れられて共連続相として、またはPPおよびその中に分散する1またはそれ以上の他のTPEとともに共連続相として存在し得る。TPEは、組成物の5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%、10〜40重量%、20〜40重量%、および好ましくは30〜40重量%で含まれ得る。最も好ましいのは、130℃、135℃、140℃または145℃より高い融解温度(DSC Tmピーク)を有するTPEである。本発明の適切なTPEの非限定的な例としては、スチレン・ブロック・コポリマー(例えばSEBS)、プロピレン系エラストマー/プラストマー(例えば、VERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマー、または高融点のVERSIFY(商標)プロピレン−エチレンコポリマー)およびオレフィン・ブロック・コポリマー(OBC)(例えば、INFUSE(商標)9507または9100OBC)があげられる。
【0037】
一般に、本発明に適したスチレン・ブロック・コポリマーとしては、飽和共役ジエンのブロック、好ましくは飽和ポリブタジエンブロックにより分離される少なくとも2つのモノアルケニル・アレーン・ブロック、好ましくは2つのポリスチレンブロックがあげられる。好ましいスチレン・ブロック・コポリマーは直鎖構造を有するものであるが、いくつかの実施形態においては、分枝もしくは放射状ポリマー、または機能性ブロックコポリマーは有用な化合物になる。スチレン・ブロック・コポリマーが直鎖構造を有する場合、そのコポリマーの総数平均分子量は、好ましくは30,000〜250,000である。このようなブロックコポリマーは、典型的にはコポリマーの6〜65重量%、より典型的には10〜40重量%の平均ポリスチレン含有量を有する。本発明に適したスチレン・ブロック・コポリマーの例は、欧州特許第0712892号、国際公開第2004/041538号、米国特許第6,582,829号、同第4,789,699号、同第5,093,422号および同第5,332,613号明細書、ならびに米国特許出願公開第2004/0087235号、同第2004/0122408号、同第2004/0122409号および同第2006/0211819号に記載されている。適切なスチレン・ブロック・コポリマーの非限定的な例として、スチレン/ブタジエン(SB)コポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン(SEBS)ターポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ターポリマー、水素化SBSまたはSEBS、スチレン/イソプレン(SI)、およびスチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEPS)ターポリマーがあげられる。スチレン・ブロック・コポリマーの商品供給源としては、Kraton Polymers(SEBS G1643M,G1651ES)、Asahi Kasei Chemicals Corporation、およびKuraray Americaがあげられる。
【0038】
「ポリプロピレン系プラストマー」(PBP)または「プロピレン系エラストマー(PBE)」という用語は、<100J/gの融解熱およびMWD<3.5を有する反応器等級のプロピレン/α−オレフィンコポリマーを含む。PBPは一般に<100J/gの融解熱を有するが、PBEは一般に<40J/gの融解熱を有する。PBPは典型的に3〜15重量%の範囲のエチレン重量%を有し、エラストマーPBEはエチレン10〜15重量%を有する。
【0039】
選択された実施形態において、TPEポリマーはエチレン/α−オレフィンコポリマーまたはプロピレン/α−オレフィンコポリマーから形成される。一実施形態において、TPEポリマーは1またはそれ以上の非極性ポリオレフィンを含む。ある特定の実施形態において、TPEポリマーはプロピレン/α−オレフィンコポリマーであって、実質的にアイソタクチックプロピレン配列を有するとして特徴付けられる。「実質的にアイソタクチックプロピレン配列」とは、13C NMRにより測定で、>0.85、>0.90、>0.92、およびその他の代替では>0.93のアイソタクチックトライアド(mm)を配列が有することを意味する。アイソタクチックトライアドは当分野で公知であり、例えば、米国特許第5,504,172号明細書および国際公開第2000/01745号に記載されており、これは13C NMRスペクトルにより測定されるコポリマー分子鎖でのトライアド単位の観点からのアイソタクチック配列を指している。
【0040】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、ASTM D−1238(230℃/2.16Kg)に従って測定される0.1〜25g/10分の範囲のメルトフローレート(MFR)を有することができる。0.1〜25g/10分の全ての個々の値および部分範囲は本明細書に含まれおよび開示され、例えば、MFRは、0.1、0.2、または0.5の下限から25、15、10、8、または5g/10分の上限までとすることができる。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、0.1〜10の範囲、または代替で0.2〜10g/10分のMFRを有してもよい。
【0041】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーは少なくとも1から30重量%の範囲の結晶化度を有し(少なくとも2から50未満のジュール/グラム(J/g)の融解熱)、全ての個々の値およびその部分範囲は本明細書に含まれおよび開示される。例えば、結晶化度は、1、2.5、または3重量%(それぞれ、少なくとも2、4、または5J/g)の下限から30、24、15または7重量%(それぞれ、50、40、24.8または11J/g未満)の上限までとすることができる。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、少なくとも1から24、15、7または5重量%(それぞれ少なくとも2から40、24.8、11、または8.3J/g未満)の範囲の結晶度を有することができる。結晶度は、上記の通り、DSC法により測定される。プロピレン/α−オレフィンコポリマーはプロピレンに由来する単位および1またはそれ以上のα−オレフィンコモノマーに由来するポリマー単位を含む。例示的なコモノマーは、C、およびCからC10α−オレフィン;例えば、C、C、CおよびCα−オレフィンである。
【0042】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1〜40重量%の1またはそれ以上のα−オレフィンコモノマーを含む。1〜40重量%の全ての個々の値および部分的な範囲は本明細書に含まれおよび開示され;例えば、コモノマー含有量は、1、3、4、5、7または9重量%の下限から40、35、30、27、20、15、12または9重量%の上限までとすることができる。例えば、プロピレン/α−オレフィンコポリマーは、1〜35重量%、または代替で1〜30、3〜27、3〜20、または3〜15重量%の1またはそれ以上のα−オレフィンコモノマーを含む。
【0043】
プロピレン/α−オレフィンコポリマーの分子量分布(MWD)(重量平均分子量を数平均分子量で割った値(M/M)として定義される)は3.5以下;代替として3.0以下;または他の代替で1.8〜3.0である。
【0044】
このようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,960,635号および同第6,525,157号明細書にさらに詳細に記載されている。このようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーは、The Dow Chemical Companyから商標VERSIFYとして、またはExxonMobil Chemical Companyから商標VISTAMAXXとして市販されている。
【0045】
一実施形態では、プロピレン/α−オレフィンコポリマーはさらに、(A)プロピレンに由来する単位を60から100未満、80〜99、より好ましくは85〜99重量%、および(B)エチレンおよび/またはC4〜10α−オレフィンの少なくとも1つに由来する単位をゼロより多く40まで、好ましくは1〜20、4〜16、さらにより好ましくは4〜15重量%含み、少なくとも0.001、少なくとも0.005、より好ましくは少なくとも0.01の長鎖分枝/1000全炭素の平均を含むものとして特徴付けられ、長鎖分枝という用語は短鎖分枝より少なくとも炭素が1個多い鎖長を指し、短鎖分枝はコモノマーの炭素数より炭素が2個少ない鎖長を指す。例えば、プロピレン/1−オクテンインターポリマーは、長さが少なくとも炭素7個の長鎖分枝をもつ骨格を有するが、これらの骨格は長さが僅か炭素6個の短鎖分枝も有する。プロピレンインターポリマーの長鎖分枝の最大数は本発明のこの実施形態の定義に重要ではないが、典型的には、全炭素数1000個当たり長鎖分枝3個以下である。このようなプロピレン/α−オレフィンコポリマーはさらに米国仮出願第60/988,999号およびPCT/US08/082599に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
「オレフィン・ブロック・コポリマー」、「オレフィン・ブロックインターポリマー」、「マルチブロック・インターポリマー」および同種の用語は、好ましくは直線的に結合された2またはそれ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマーを指し、すなわち、重合オレフィン、好ましくはエチレンの官能性が、垂れ下がりまたはグラフト様式よりむしろ端と端が結合する化学的に識別される単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態において、ブロックは、組み込まれるコモノマーの量または種類、密度、結晶量、このような組成物のポリマーに起因する結晶の大きさ、立体規則性の種類または程度(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)、位置規則性または位置不規則性、分枝量(長鎖分枝または超分枝を含む)、均一性もしくは任意の他の化学または物理特性の点で異なる。逐次モノマー付加、流動触媒、または陰イオン重合技術により生産されるインターポリマーを含む先行技術のブロックインターポリマーと比べて、本発明で用いるマルチブロック・インターポリマーは、両ポリマーの多分散性(PDIもしくはM/MまたはMWD)の独自の分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布により、好ましい実施形態では、これらの調製で用いる多重触媒と組み合わせたシャトリング剤の効果により特徴付けられる。より具体的には、連続法で生産される場合、ポリマーは、1.7〜3.5、好ましくは1.8〜3、1.8〜2.5、最も好ましくは1.8〜2.2のPDIを有することが望ましい。バッチまたは半バッチ処理で生産される場合、ポリマーは1.0〜3.5、好ましくは1.3〜3、1.4〜2.5、最も好ましくは1.4〜2のPDIを有することが望ましい。
【0047】
「エチレン・マルチブロック・インターポリマー」という用語は、エチレンおよび1またはそれ以上の共重合可能なコモノマーを含むマルチブロック・インターポリマーを意味し、エチレンはポリマー中に少なくとも1つのブロックまたはセグメントの重合モノマー単位を複数含み、好ましくはブロックの少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、最も好ましくは少なくとも98モル%含む。本発明の実施に用いるエチレン・マルチブロック・インターポリマーのエチレン含有量は、ポリマーの全重量に基づいて、好ましくは25〜97%、40〜96%、55〜95%、最も好ましくは65〜85%である。
【0048】
2またはそれ以上のモノマーから形成されるそれぞれの識別可能なセグメントまたはブロックが単一のポリマー鎖に結合されるため、ポリマーは標準的な選択抽出技術を用いて完全には分画できない。例えば、相対的に結晶質である領域(高密度セグメント)および相対的に非晶質である領域(低密度セグメント)を含むポリマーは、異なる溶媒を用いて選択的に抽出または分画できない。好ましい実施形態において、ジアルキルエーテルまたはアルカン溶媒のいずれかを用いた抽出可能なポリマー量は、全ポリマー重量の<10%、<7%、<5%、最も好ましくは<2%である。
【0049】
さらに、本発明の実施に用いるマルチブロック・インターポリマーは、ポアソン分布よりむしろシュルツ−フローリ分布にあてはまるPDIを保有することが望ましい。国際公開第2005/090427号およびUSSN11/376,835に記載される重合法を使用することによって、多分散ブロック分布およびブロックサイズの多分散分布の両方を有する生成物が得られる。これにより、改良され識別可能な物理特性を有するポリマー生成物を形成する結果となる。多分散ブロック分布の理論的利点は以前にモデル化され、Potemkin, Physical Review E (1998) 57 (6), pp. 6902-6912、およびDobrynin, J. Chem. Phvs. (1997) 107 (21), pp 9234-9238で議論されている。
【0050】
さらに一つの実施形態において、マルチブロック・インターポリマー、とりわけ連続溶液重合反応器で製造されたものは、ブロック長さの最確分布を有する。本発明の一実施形態において、エチレン・マルチブロック・インターポリマーは、下記を有すると定義される:(A)M/Mが約1.7〜約3.5、少なくとも1つの融点が摂氏温度でT、および密度がグラム/立方センチメートルでdのときに、Tおよびdの数値は、T>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)の関係に対応し、または(B)約1.7から約3.5のM/M、ならびに融解熱ΔH(J/g)およびデルタ量ΔT(最高DSCピークと最高CRYSTAFピークの温度差として定義される摂氏温度)により特徴付けられ、ΔTおよびΔHの数値は下記の関係を有し:ゼロより大きく130J/gまでのΔHについてΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、130J/gより大きなΔHについてΔT≧48C、式中、CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、ポリマーの5%未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃であり;または(C)300%歪みでの弾性回復Re(%)およびエチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定される1周期、および密度d(g/cc)を有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが実質的に架橋相を含まない場合にReおよびdの数値は下記の関係を満たし:Re>1481−1629(d);または(D)TREFを用いて分画する場合の40℃から130℃で溶出する分子量画分は、該画分が同温度間で溶出する同等のランダム・エチレン・インターポリマー画分のコモノマーモル含有量より少なくとも5%高い含有量を有するという点で特徴付けられ、該同等のランダム・エチレン・インターポリマーは同一のコモノマーを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの10%以内のメルトインデックス、密度およびコモノマーモル含有量(全ポリマーに基づく)を有し;または(E)25℃の貯蔵弾性率G’(25℃)、および100℃の貯蔵弾性率G’(100℃)であって、G’(25℃)対G’(100℃)の比率は約1:1から約9:1の範囲にある。
【0051】
エチレン/α−オレフィン・マルチブロック・インターポリマーは、(F)TREFを用いて分画する場合、40℃〜130℃で溶出する分子画分は、画分が少なくとも0.5から約1までのブロックインデックスおよび約1.3より大きな分子量分布M/Mを有する点に特徴があり;または(G)ゼロより大きく約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3より大きな分子量分布M/Mも有することができる。
【0052】
本発明に用いるエチレン・マルチブロック・インターポリマーの調製に使用するのに適したモノマーは、エチレンおよび1またはそれ以上の付加重合可能なエチレン以外のモノマーを含む。適切なコモノマーの例として、炭素原子3〜30、好ましくは3〜20の直鎖または分枝α−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン;炭素原子3〜30、好ましくは3〜20のシクロ−オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、および2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジ−およびポリオレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、および5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;ならびに3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、および3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンがあげられる。
【0053】
本発明に使用できる他のエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、エチレン、C3〜20α―オレフィン、とりわけプロピレン、および任意選択で1またはそれ以上のジエンモノマーからの可撓性インターポリマーである。この実施形態での使用に好ましいα−オレフィンは、式CH=CHR*により定められ、式中、R*は炭素原子1〜12の直鎖または分枝のアルキル基である。適切なα−オレフィンの例として、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンがあげられるが、これらに限定されない。特に好ましい1つのα−オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは一般に当分野でEPまたはEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマー、とりわけマルチブロックEPDM型ポリマーを調製する際の使用に適切なジエンとしては、炭素原子4〜20を含有する共役または非共役、直鎖または分枝鎖、環式または多環式のジエンがあげられる。好ましいジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および5−ブチリデン−2−ノルボルネンがあげられる。特に好ましい1つのジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0054】
ジエンを含有するポリマーは、より多い量または少ない量のジエン(なしを含む)およびα−オレフィン(なしを含む)を含有する交互のセグメントまたはブロックを含有するため、ジエンおよびα−オレフィンの総量は、その後のポリマー特性を失うことなく減少させることができる。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、均一にまたは不規則にポリマー全体に組み込まれるよりむしろポリマーのブロックの1種に優先的に組み込まれるため、より効率的に用いられ、続いてポリマーの架橋密度がよりよく制御できる。このような架橋可能なエラストマーおよび硬化生成物はより大きな引張強度およびより良い弾性回復を含む有利な特性を有する。
【0055】
本発明の実施に有用なエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、0.90未満、好ましくは0.89未満、0.885未満、0.88未満、さらにより好ましくは0.875g/cc未満の密度を有する。エチレン・マルチブロック・インターポリマーは、典型的に0.85g/ccを超える、およびより好ましくは0.86g/ccを超える密度を有する。密度はASTM D−792の手順により測定する。低密度エチレン・マルチブロック・インターポリマーは一般に非晶質、可撓性として特徴付けられ、良好な光学特性、例えば可視光およびUV光の高い透過率ならびに低い曇価を有する。本発明に有用なエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、典型的にはASTM D1238(190℃/2.16kg)により測定する1〜10g/10分のMFRを有する。本発明の実施に有用なエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、ASTM D−882−02の手順により測定すると、<150、好ましくは<140、<120、およびさらにより好ましくは<100mPaの2%割線係数を有する。エチレン・マルチブロック・インターポリマーは典型的にはゼロより大きい2%割線係数を有するが、この係数が低くなるほど該インターポリマーは本発明の使用によく適合する。割線係数は応力−歪み線図の原点からの直線の傾きであり、対象の点で該曲線と交差し、線図の非弾性領域における材料の剛性を記載するために用いられる。低係数のエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、応力下で安定性を示し、例えば応力または収縮下で亀裂する傾向が少ないため、本発明の使用に特によく適合する。本発明に有用なエチレン・マルチブロック・インターポリマーは典型的には約125℃未満の融点を有する。融点は、国際公開第2005/090427号(米国特許出願公開第2006/0199930号)に記載される示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。低融点をもつエチレン・マルチブロック・インターポリマーは、しばしば本発明のワイヤおよびケーブル外装の製造に有用な望ましい可撓性および熱可塑性特性を示す。本発明の実施に用いられるエチレン・マルチブロック・インターポリマー、およびこれらの調製および使用は、米国特許第7,579,408号、同第7,355,089号、同第7,524,911号、同第7,514,517号、同第7,582,716号および同第7,504,347号明細書により詳しく記載されている。
【0056】
本発明の実施に有用なオレフィン・ブロック・コポリマーは、The Dow Chemical Companyから入手できるINFUSE(登録商標)OBC、例えばINFUSE OBC D9100(1MI、0.877、74A Shore)、D9500(5MI、0.877、74A Shore)、D9507またはD9530(5MI、0.887、85A Shore)を含む。
【0057】
他のTPEポリマー
他のTPEポリマーは、とりわけ、例えば、熱可塑性ウレタン(TPU)、エチレン/ビニルアセテート(EVA)コポリマー(例えば、Elvax 40L−03(40%VA、3MI)(DuPont))、エチレン/エチルアクリレート(EEA)コポリマー(例えばAMPLIFY)およびエチレン・アクリル酸(EAA)コポリマー(例えばPRIMACOR)(The Dow Chemical Company)、ポリビニルクロライド(PVC)、エポキシ樹脂、スチレンアクリロニトリル(SAN)ゴム、およびNoryl(登録商標)変性PPE樹脂(SABICによるポリフェニレンオキサイド(PPO)およびポリスチレン(PS)の非晶質混合物)を含むが、これらに限定されない。例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、FLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセン・ポリエチレン、The Dow Chemical Company)、均質に分枝した直鎖エチレン/α−オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(登録商標)およびDEXPlastomersによるEXACT(登録商標))、および均質に分枝した実質的に直鎖のエチレン/α−オレフィン・ポリマー(例えば、AFFINITY(登録商標)エチレン−オクテンプラストマー(例えば、EG8200(PE))およびENGAGE(登録商標)ポリオレフィンエラストマー、The Dow Chemical Company)を含むオレフィンエラストマーも有用である。実質的に直鎖のエチレンコポリマーは、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号および同第5,986,028号明細書でより詳しく記載されている。本発明に有用な追加のオレフィンインターポリマーは、均質に分枝したエチレン系インターポリマーを含み、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(ULDPE)を含むがこれらに限定されない。市販のポリマーは、DOWLEX(商標)ポリマー、ATTANE(商標)ポリマー、FLEXOMER(商標)、HPDE3364およびHPDE8007ポリマー(The Dow Chemical Company)、ESCORENE(商標)およびEXCEED(商標)ポリマー(Exxon Mobil Chemical)を含む。適切なTPUの非限定的な例としては、PELLETHANE(商標)エラストマー(Lubrizol Corp.(例えばTPU2103−90A);ESTANE(商標)、TECOFLEX(商標)、CARBOTHANE(商標)、TECOPHILIC(商標)、TECOPLAST(商標)およびTECOTHANE(商標)(Noveon);ELASTOLLAN(商標)など(BASF)があげられ、市販のTPUは、Bayer、Huntsman、the Lubrizol CorporationおよびMerquinsaから入手できる。
【0058】
本発明で有用なエチレンインターポリマーは、インターポリマーの重量に基づいて、α−オレフィン含有量を典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも15重量%、およびさらにより典型的には少なくとも約20重量%有するエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含む。これらのインターポリマーは、その重量に基づいて、α−オレフィン含有量を典型的には<90、より典型的には<75、およびさらにより典型的には<50重量%有する。α−オレフィン含有量は、Randall (Rev. Macromol. Chem. Phys., C29 (2&3))に記載される手法を用いて、13C核磁気共鳴(NMR)分光学により測定される。α−オレフィンは、好ましくはC3〜20直鎖、分枝または環式α−オレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンである。α−オレフィンは、環式構造、例えばシクロヘキサンまたはシクロペンタンも含有でき、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンを得られる。用語の伝統的な意味でのα−オレフィンではないが、本発明の目的上、特定の環式オレフィン、例えばノルボルネンおよび関連オレフィン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネンはα−オレフィンであり、上記のα−オレフィンのいくつかまたは全ての代わりに使用できる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)は本発明の目的上α−オレフィンである。ポリオレフィンコポリマーの例としては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレンなどがあげられる。ターポリマーの例としては、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)およびエチレン/ブテン/スチレンがあげられる。コポリマーはランダムまたはブロックとすることができる。
【0059】
難燃剤(FR)系
一実施形態において、本発明の実施に使用する成分「C」の難燃剤(FR)系は、1またはそれ以上の、ピペラジン成分を含む有機リン系および/または窒素系の膨張性FRを含有する。本発明の組成物で使用する窒素/リン系FRの好ましい量は、組成物の重量に基づいて、少なくとも1重量%、10重量%、15重量%、20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%である。有機窒素/リン系FRの典型的な最大量は、組成物の70、60、50重量%を超えず、より好ましくは45重量%を超えない。
【0060】
一実施形態において、本発明の実施に使用する成分「C」の難燃剤(FR)系は、FR系の総重量に基づいて1〜99重量%のピペラジン系FRおよび1〜99重量%の他の難燃剤を含む。ピペラジン系FRの好ましい量は、少なくとも5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%および少なくとも50重量%である。特定の実施形態において、FR系は、55〜65重量%のピペラジン系FRおよび35〜45重量%の他の難燃剤(例えば、リン酸の非金属塩)を含むことができる。
【0061】
有機窒素および/またはリン系膨張性FRは、有機ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜ホスホン酸塩、亜ホスフィン酸塩、ホスフィンオキシド、ホスフィン、亜リン酸塩またはリン酸塩、ホスホニトリルクロライド、リン酸エステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、ならびにメラミンおよびメラミン誘導体(メラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェート、およびメラミンシアヌレートを含む)、ならびにこれらの物質の2またはそれ以上の混合物を含むが、これらに限定されるものではない。実例としては、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、リン酸水素フェニルエチレン、フェニル−ビス−3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、リン酸水素ジフェニル、ビス(2−エチル−ヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、リン酸水素フェニルメチル、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、およびリン酸水素ジフェニルがあげられる。米国特許第6,404,971号明細書に記載された種類のリン酸エステルは、リン系FRの例である。追加の例としては、液体ホスフェート、例えばビスフェノールAジホスフェート(BAPP)(Adeka Palmarole)および/またはレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(Fyroflex RDP)(Supresta,ICI)、および固体リン、例えばアンモニウムポリホスフェート(APP)、ピペラジンピロホスフェート、ピペラジンオルトホスフェート、およびピペラジンポリホスフェートがあげられる。APPはしばしば難燃剤共添加剤、例えばメラミン誘導体と共に使用される。Melafine(DSM)(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン;微粉砕メラミン)も有用である。
【0062】
FR系のピペラジン成分の例としては、化合物、例えばピペラジンピロホスフェート、ピペラジンオルトホスフェートおよびピペラジンポリホスフェートがあげられる。追加例は、米国特許出願公開第2009/0281215号および国際公開第2009/016129号に記載のように、ポリトリアジニル化合物またはオリゴマーまたはポリマー1,3,5−トリアジン誘導体(ピペラジン基を含有する)があげられ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
FR系の実施形態としては、1またはそれ以上のリン酸の非金属塩(例えばAPPであるが、これらに限定されない)、メラミンおよび/またはメラミン誘導体、例えばメラミンピロホスフェートおよびメラミンポリホスフェート、および1またはそれ以上のピペラジン成分(例えばピペラジン化合物、例えばピペラジンピロホスフェート、ピペラジンオルトホスフェート、ピペラジンポリホスフェート、ピペラジン基などを含むポリトリアジニル化合物、および/またはピペラジン基を含む1,3,5−トリアジン誘導体のオリゴマーもしくはポリマーがあげられるが、これらに限定されない)があげられる。特定の実施形態において、FR系は、APP、メラミンおよび/またはメラミン誘導体、ならびにピペラジン化合物、例えばピペラジンピロホスフェート、ピペラジンオルトホスフェート、および/またはピペラジンポリホスフェートの混合物である。他の実施形態において、FR系は、APP、メラミンおよび/またはメラミン誘導体およびピペラジン基を含む1,3,5−トリアジン誘導体のオリゴマーもしくはポリマーの混合物である。いくつかの実施形態において、FR材料はメラミン系被覆を含む。このような有機窒素/リン系膨張性材料の混合物は、FP−2200およびFP−2100J、膨張性難燃剤としてAmfine Chemical Corporation(米国)(Adeka Palmarole SAS)から、PNP1DとしてJLS Chemical(中国)から、およびBudit3167としてBudenheim Iberica Comercial,S.A.(スペイン)から市販されている。
【0064】
本発明のPP/TPE/膨張性FR混合物、特に主要FR化学物質としてのFP2100J、PNP1Dおよび/またはBudit3167との混合物は、優れた燃焼性能を示し、VW−1試験要件(UL 1581)に合格するのに十分な優れた難燃性と引張特性(8メガパスカル(MPa)より大きい引張応力および200%より大きい引張伸び(ASTM D638)、150℃で熱変形率<50%(UL1581−2001)、および良好な可撓性および軟性(2%割線形数<250MPa(ASTM D638));<95(ASTM D2240)のショアA硬度)との相乗バランスをもたらす。
【0065】
任意選択の添加剤パッケージ
成分「D」の追加添加剤は、組成物の0.1から20重量%の範囲で含めることができる。PP/TPE/FR組成物は、PP/TPE用途に有用であることが見出された1またはそれ以上の安定剤および/または添加剤(例えば、抗酸化剤(例えば、IRGANOX(商標)1010(Ciba/BASF)などのヒンダードフェノール)、熱(溶融加工)安定剤、加水分解安定性増強剤、熱安定剤、掃酸剤、色素または顔料、UV安定剤、UV吸収剤、造核剤、加工助剤(例えば、油、ステアリン酸などの有機酸、有機酸の金属塩)、帯電防止剤、防煙剤、滴下防止剤、強靱化剤、可塑剤(例えばジオクチルフタレートまたはエポキシ化大豆油)、潤滑剤、乳化剤、蛍光増白剤、カップリング剤、シラン(遊離形態またはフィラー表面改質剤として)、セメント、尿素、ペンタエリトリトールなどのポリアルコール、鉱物、過酸化物、光安定剤(例えばヒンダードアミン)、離型剤、ワックス(例えばポリエチレンワックス)、粘度改質剤、炭化剤(例えばペンタエリトリトール)および他の添加剤があげられるが、これらに限定されない)を、これらの添加剤が本発明の組成物から製造される製品の所望の物理特性または機械的性質を妨げない程度に、組み込むことができる。これらの添加剤は公知の量および公知の方法で使用されるが、典型的には、添加剤パッケージは、仮に存在するとしても、最終組成物のゼロ重量%より大きく、例えば0.01〜2重量%、より典型的には0.1〜1重量%で含まれる。有用な粘度改質剤の例としては、ポリエーテルポリオール、例えばThe Dow Chemical Companyから入手できるVoranol 3010およびVoranol 222−029を含む。有用な市販の滴下防止剤としては、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、VIKOFLEX 7010(メチルエポキシソイエート(エポキシ化エステルファミリー))、およびVIKOLOXアルファ・オレフィン・エポキシ(C−16)(1,2−エポキシヘキサデカン(>95重量%)および1−ヘキサデセン(<5重量%)の混合物、両方ともeFAMEから入手できる)があげられる。有用な分散剤/金属キレート剤はn−オクチルホスホン酸(UNIPLEX OPA)である。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、官能化相溶剤または改質剤、例えばマレイン酸無水物オレフィン系ポリマーまたはポリオレフィン(例えば、PE−g−MAH、EVA−g−MAHなど)を含まない。本組成物は、相溶剤/カップリング剤、例えばエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマー(例えば、DuPontによるELVAX 40L−03(40%VA、3MI))、アミノ化OBC(例えば、The Dow Chemical CompanyによるINFUSE 9807)を含むことができる。他のカップリング剤の例としては、ビニル基およびエトキシ基を含有するポリシロキサン(例えば、Dynasylan 6498(ビニルシランオリゴマー))およびヒドロキシ末端ジメチルシロキサン(<0.1ビニルアセテート)があげられる。
【0067】
いくつかの適用において、FR系は、FR系と組み合わせて、任意選択的に微量(組成物の5重量%未満、好ましくは2重量%未満)の無機非ハロゲン化難燃剤(フィラー)および共力剤を含むことができる。無機非ハロゲン化FRフィラーとしては、例えば金属水和物、例えばアルミニウム水和物およびマグネシウム水和物、金属水酸化物、例えばマグネシウム水酸化物(Mg(OH))およびアルミニウム三水酸化物(ATH)(例えばApyral 40CD(Nabeltec))、金属酸化物、例えば二酸化チタン、シリカ、アルミナ、ハンタイト、三酸化アンチモン、酸化カリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛および酸化マグネシウム、カーボンブラック、炭素繊維、膨張黒鉛、タルク、クレイ、有機変性クレイ、炭酸カルシウム、赤リン、珪灰石、雲母、八モリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、ガラス繊維、膨張黒鉛などがあげられる。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明の組成物はシリコーン油(ポリジメチルシロキサン)を含まないが、特定の適用では、微量(組成物の<5重量%、好ましくは<2重量%)のシリコーン油を加工助剤および難燃剤ブースターとして含むことができる。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、他のポリマー、例えばポリオレフィン−ゴム・エラストマー、オレフィン−オクテンまたはオレフィン−アルキルアクリレート・コポリマー系エラストマー、機能性ポリマー(例えば、カルボン酸または酸無水物基を含む)、無水物変性オレフィン系ポリマー/ポリオレフィン、または極性基でグラフトされたポリオレフィンエラストマーを用いて、混合または希釈されない。しかしながら、いくつかの実施形態において、プロピレンおよびTPEは、特性と押出性能のバランスを調整するため、好ましい様式ではプロピレン成分「A」が組成物の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、およびより好ましくは少なくとも20重量%を構成し、TPE成分「B」が組成物の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、およびより好ましくは少なくとも20重量%を構成する程度で、1またはそれ以上の他のポリマーを用いて混合または希釈することができる。
【0069】
PP、TPEおよびFRの相対量
プロピレンポリマー(PP)および熱可塑性エラストマー(TPE)は互いに任意の簡便な方法で混合して、ポリマーマトリックスを形成し、例えば連続相としてのPPおよび不連続相または分散相としてのTPE成分、もしくはPPと共連続相としての1またはそれ以上のTPE、および不連続相または分散相としての1またはそれ以上の他のTPEを形成する。複数のプロピレンまたは複数のTPEの各々、任意の混合物が本発明で使用できる。この組成物におけるプロピレンポリマー(PP)、TPEおよびFRの相対量は幅広く変化し得るが、典型的には、PPは5〜80重量%、10〜60重量%、10〜40重量%、20〜40重量%、およびより好ましくは20重量%より多く30重量%以下、TPEは5〜80重量%、10〜50重量%、10〜40重量%、20〜40重量%および好ましくは30〜40重量%、ならびにFRは組成物の10〜70重量%、15〜50重量%、およびより典型的には30〜45重量%である。
【0070】
本発明の組成物は、PP、TPE(例えば、スチレン・ブロック・コポリマー、オレフィン系TPE、OBCなど)および、ピペラジン成分(例えば、Adeka FP2100J)を含む膨張性N−P難燃剤(FR)系を配合し、HFFRパッケージを形成する。実施形態では、本発明は、ポリオレフィンまたは熱可塑性エラストマーを単独で利用するPP/TPE系HFFRを提供し、意外にもピペラジン成分を含む前記有機N−P系膨張性FR系(特にFP2100J、PNP1Dおよび/またはBudit 3167)とともに、この組み合わせは、燃焼相乗効果、格別の難燃性を示し、同時に良好な機械的性質および150℃という高温で優れた熱変形性能をもたらす。特定の実施形態では、組成物は、W&C用にPPとTPE、例えばVERSIFY(商標)または高融点VERSIFY(商標)ポリプロピレン/エチレンコポリマーとのHFFR混合物、およびピペラジン成分(例えば、FP2100J、PNP1DまたはBudit 3167)を含むN−P系膨張性FR系を含有する。
【0071】
コンパウンディング(混練)/製造
本発明の組成物の混練は、この分野における当業者に公知の標準的な手段により実施することができる。混練設備の例は、内部バッチミキサー、例えばBanburyまたはBolling内部ミキサーである。代わりに、連続一軸または二軸ミキサー、例えばFarrel連続ミキサー、WernerおよびPfleiderer二軸ミキサー、またはBuss連続混練押出機が使用できる。利用するミキサーの種類、およびミキサーの運転条件は、組成物の特性、例えば粘度、体積抵抗率、および押出された表面の平滑性に影響を及ぼす。FRおよび任意選択の添加剤パッケージとのPP/TPEポリマー混合の混練温度は典型的に120〜220℃、より典型的に160から200℃である。最終組成物の様々な成分は任意の順序で、または同時に添加することができ、互いに混練することができるが、典型的には相溶剤(含む場合)が最初にPPと混練され、TPEは最初にFRパッケージの1またはそれ以上の成分と混練され、2つの混合物はFRパッケージの残りの任意成分および任意の添加剤と互いに混練される。いくつかの実施形態において、添加剤は予備混合マスターバッチとして添加され、これは一般に添加剤を不活性のプラスチック樹脂、例えばプラスチックマトリックス成分または低密度ポリエチレンの1つに個別にまたは一緒に分散させることにより形成される。マスターバッチは溶融混練法により形成するのが好都合である。
【0072】
製造品
特定の実施形態において、ポリマー組成物はケーブルの被覆、例えばシース、ジャケットまたは絶縁層に、公知の量で公知の方法により(例えば米国特許第5,246,783号および同第4,144,202号明細書に記載された設備および方法を用いて)適用することができる。典型的には、組成物はケーブル被覆ダイを備えた反応−押出機で調製し、成分が配合された後、組成物は、ケーブルがダイを通して引き出される際にケーブル上に押出される。次に、シースは、製品が所望する架橋の程度に達するまで、典型的には大気温度から組成物の融点未満までの温度で硬化工程に付される。硬化は反応押出機で開始してもよい。
【0073】
本発明の組成物は、W&Cと他の市場のセグメントの両方のための、高難燃性および良好な可撓性、PVCへの代替使用などを必要とする広範囲の非ハロゲンまたはハロゲンフリーFR用途に使用でき、高可撓性および/または高耐燃性を良好な湿潤絶縁抵抗とともに必要とする用途に特によく適合する。本発明の組成物から調製できる製造品の非限定的な例としては、とりわけACプラグおよびSRコネクタ、ワイヤ絶縁/ケーブルジャケット、時計ストラップ、ハンドル、グリップ、手触りが柔らかい製品およびボタン、隙間充填剤、自動車用途(ガラス・ラン・チャネル・シール、内装パネル、シール、ガスケット、ウィンドウシールおよび押出異形材を含む)、家庭用電化製品用、および低電圧用途があげられる。これらの製品は公知の設備および技術を用いて製造することができる。
【実施例】
【0074】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明する。他に言及しない限り、全ての部および百分率は重量基準である。
【0075】
原材料
下記の材料を以下の実施例で使用した。材料は乾燥するか、または他の方法(仮にあるとしても下記)で処理した。MFRはdg/分単位(ASTM D−1238;他に指定しない限り、230℃で2.16kg)、密度(d)はg/cm単位(ASTM D−792)である。
【表1】
【0076】
溶融混合/溶融コンパウンディング(混練)
樹脂バッチは、Cam Blade、大型ミキサー/測定ヘッド、2つの加熱帯を備えた3−ピース設計、およびミキサーのブレード配置に依存する350/420ml容量を備えたCW BrabenderモデルPrep−Mixer(登録商標)/測定ヘッド実験電気バッチミキサーを用いて調製した。Cam Bladeが挿入されたチャンバーの実容量は420mlであり、バッチの大きさは組成物密度で補正して、下記の計算を用いて混合ボールの適切な充填量を提供できる:バッチ重量=計算SG(500/1.58)(式「a」)。経験的関係は、約500gのバッチ重量で、充填因子を75%とし、SG約1.58で比較的良好な混合になったことに基づいている。一定のミキサー体積で、よく混合するため、バッチ重量は各バッチのSG変更で調整する。V=質量/密度;Vが定数である場合、M/D=M/DまたはM=M/D。この研究の組成物では、バッチの大きさを約360から400gとした。中剪断速のブレードとしてのCam Bladeの設計は、試験試料に対して製粉、混合および剪断力を課し、チャンバー内の材料を交互圧縮し、取り出す。ミキサーのギアオフセットは、3:2のドライブブレード・駆動ブレードギア比(ドライブブレードの3回転毎に、駆動ブレードは2回転)であり、駆動モーターからドライブブレードに動力が直接供給され、ギア操作によって駆動ブレードは混合ボール内で回転する。
【0077】
最初に、ベース樹脂を、15rpmで回転するブレードを備えた混合ボールに添加した。前記2つの加熱帯の加工温度設定点を、化合物の溶融温度に応じて、170から180℃とした。次に、ローター速度を十分な流動に達するまで40rpmに上げた。混合速度を20rpmに下げ、残りの成分(すなわち、抗酸化剤、他の液体成分)を添加した。添加剤を投入すると、ラムアームの閉鎖アセンブリが下がり、混合速度を40rpmに上げた。混合周期の持続時間は3分であった。完了すると、溶融材料は、ピンセットを用いてミキサーから出し、収集し、2枚のMylarシート間に配置し、室温で圧縮成形して平板のパンケーキとした。冷却した試料を、#3 Armature Greenerd Arbourプレスおよび大型刃物を用いて、プラーク調製および造粒用に小さな正方形および細長い片に切断した。追加の混練もHaakeミキサーを用いて実施した。混合工程または配合工程は下記の通りである。第一に特定比率のPPとTPEを190℃のHaakeミキサーに供給し(約3分)、ポリマーを溶融した。FR(FP2100J)を添加し、さらに3分間均一な混合物になるまで混合した。混合物を取り出し、室温まで冷却し、ならびに成形機のHaoli XLB−D3503501(Changzhou No.1 Plastic and Rubber Equipment Ltd.Co.)により以下の試験方法の各要件に従って圧縮成形した。
【0078】
プラーク調製
試料を、マニュアルモードで操作するGreenard Hydrolairスチームプレス(急冷冷却能を備える)を用いて圧縮成形した。試料毎に1つの8x8 50−ミルのプラークを調製した。プレスを180℃(±5℃)まで予熱した。合計85gの材料を、予め計量し、離型処理したMylarとアルミニウムシートから構成される型組立品間の50−ミルステンレス鋼プラークの中心に配置した。充填した金型を次いでプレスに500psiで3分間入れ、圧力を2,200psiまで3分間上げた。蒸気/水の切り替えは、その3分の経過15前秒とし、試料を5分間高圧設定で急冷した。
【0079】
造粒
試料は、Thomas−Whiley ED Model 4−ナイフミル(4枚の調整可能な切断ブレードが4枚の固定ブレードをもつ刃に対して刃を操作するローターを備えた製粉チャンバー;固定ブレードと調製ブレード間の間隙の大きさを0.030インチに設定;回転ヘッドの運転速度を1,200rpmに設定;6−mmスクリーン)を用いて造粒した。粒状材料は、押出またはプラーク調製用に、設備の底部にある生成物レシーバーに集めた。
【0080】
材料の乾燥
実験押出または検体調製の前に、粒状材料は真空乾燥(85℃で少なくとも6時間、高真空(<2.0”Hg))し、多孔性または材料の劣化を惹起し得る自由水分を取り除き、ホイルバッグに包み、実験押出作業前に室温まで冷却した。
【0081】
Brabenderテープ押出機
1”x0.020”「コート・ハンガー・スリット」型テープダイを備えた、3−バレルゾーン、25:1 L/D、3/4”のBrabender押出機を、圧縮比3:1の計量スクリューとともに用いた。ブレーカープレートまたはスクリーンパックは使用しなかった。ゾーン温度は供給口からダイまでそれぞれ170、175、180および180℃に設定した。真空乾燥したテープ試料は、20rpmで開始するスクリュー速度で押出され、約6メートルのテープ試料をテフロン(登録商標)で被覆された移動コンベヤーベルト(約1mのベッドの長さおよび1m/分の速度能力)上に収集した。スクリューおよびコンベヤーベルトの速度は約0.018”(0.457mm)のテープ厚さに調整した。
【0082】
引張試験試料
押出テープ試料は、73.4°F(+/−6°F)および50%(+/−5%)相対湿度(RH)で40時間(制御環境)調整した後、アーバープレスおよび
ASTM−D638 IV型引張試験片金型(4.5”の条件)で切断し、全長(11.43cm)で0.250’(7.62cm)幅の試験ゾーンをもつドッグボーン検体を得た。
【0083】
ミニ・ワイヤ・ライン
3−バレルゾーン、25:1 L/D,3/4”のBrabender押出機(0.050”(1.27mm)先端;0.080ダイ)を、圧縮比3:1計量スクリューとともに用いた。ブレーカープレートまたはスクリーンパックは使用しなかった。裸銅導体は0.046インチ(1.168mm)の公称直径をもつ18 AWG/41線であった。金型を含む全ゾーンのゾーン温度を180℃に設定した。ワイヤ被覆試料は金型から4〜5インチ(10〜13cm)の水桶で冷却した。真空乾燥した試料を25〜30rpmのスクリュー速度で押出し、0.085”(2.16mmまたは85ミル)目標直径で約0.020”(20ミル)ワイヤ被覆厚さに調整した。最短60フィート(18m)のワイヤ被覆試料を移動コンベヤーベルト(15フィート/分(4.57m/分)の速度)上で収集した。
【0084】
引張試験
INSTRON Renew 4201 65/16および4202 65/16装置で特別の2−速度プロトコルを用いて引張試験を行い、割線係数、続いて引張および破断点伸びの測定を行った。引張試験はASTM D638に従って室温で実施した。伸縮計のずれおよび弾性試験で用いられる低伸張レベルでの分解能に伴う困難を排除するために、時間ベースの変位法を用いて割線係数の歪みレベルを測定した。使用するASTM IV型ドッグボーンについて、歪みは2.0”有効長(50mm)にわたって起きると推定される。したがって、1%歪み増分は、0.50−mm顎運動に対応し、50mm/分試験速度で0.010分(0.6秒)に等しい。試料の「起動」ノイズおよびプレテンションを除去するため、「始動荷重」の割線係数は、0.4秒で計算し、1秒で1%の負荷測定、1.6秒で2%負荷、および3.4秒で5%負荷であった。1%割線負荷は1秒負荷マイナス0.4秒負荷に等しく;2%割線負荷は1.6秒負荷マイナス0.4秒負荷に等しいなど。この負荷は標準割線係数の計算で使用される;例えば2%割線係数=(2%割線負荷)測定検体断面積)。18秒(30%伸び)で、試験速度は自動的に500mm/分まで増加した後、試験の引張破断の部分を完了した。1%割線係数で5回の反復検体の標準偏差は、時間ベース歪み法を用いて、典型的には平均値の<5%であり、それに対して、標準偏差は先行の伸縮計に基づく歪み法を用いて大抵平均値の25%を上回る。この試験のINSTRONプログラムは2.0”(50mm)有効歪み長(IV型ドッグボーン)に基づくため、値は各試運転について計算した。
【0085】
熱変形/ワイヤ
この試験は、ワイヤまたはケーブルの絶縁体またはジャケットの高温下の変形に対する抵抗を明確にするために用いられる。装置は、強制循環空気オーブン、±1℃の精度をもつ温度測定装置、ならびにアンビルおよび6.4±0.2mm(0.25±0.01インチ)の直径をもつスピンドルの端の両方に平面を有し且つ300g(製品規格で指定される重量)の力を及ぼすダイヤルマイクロメーターから構成される。試験検体(被覆されたミニ・ワイヤ・ライン、長さ25mm(1”))は、重りの足部が適用される位置に印を付け、初期厚さを測定した。試験装置および検体は、特に断らない限り、特定温度の空気オーブンで1時間調整した。オーブン中の検体は、特に断らない限り、その後、重りの足部に印の位置で1時間置き、次に重りの足部から取り出し、15秒以内に印の位置の厚さを測定する。熱変形試験はUL 1581−2001に従って実施できる。各配合物について、2つの平行試料プラークは150℃でオーブン(1時間)で予熱し、150℃(1時間)で同一荷重で押圧し、重りを取り除くことなく、ASTM室(23℃)で1時間置き、プラークの厚さの変化を記録し、熱変形率を算出する。所定試験温度での変形率(HD%)は式:HD%=(T1−T2)/T1100(式「b」)から算出し、式中、T1は試験前の元の試料厚さ(mm(インチ))を表し、T2は変形後の試料厚さ(mm(インチ))を表す。
【0086】
熱変形/プラーク
熱変形試験はUL 1581−2001に従って行う。試験試料は圧縮成形(190℃)されたプラーク(1.44mm厚さ)から切断する。各配合物について、2つの平行試料プラークはオーブン(150℃、1時間)で予熱し、同一荷重(150℃、1時間)で押圧し、重りを取り除くことなく、ASTM室(23℃)で1時間置く。プラークの厚さの変化を記録し、熱変形率はHD%=(D−D)/D100%に従って算出し、式中、D=元の試料厚さで、D=変形工程後の試料厚さである。2つの平行試料の計算比は平均化される。
【0087】
VW−1燃焼
この試験は、製造ワイヤまたはケーブルの検体について、炎の鉛直伝播および燃焼粒子の滴下に対する抵抗性を確認するため、UL−1581試験規格のVW−1燃焼試験1080項に従って実施した。設定にはメタン炎(ASTM 2556規格)と特別のブンセンバーナーを含む。公称20”(50.8cm)長の試験検体を垂直に支持し、500ワットバーナー炎を45°の角度で基部近くに衝突させ、基部の綿ベッドは燃焼滴下により不合格を確証し、上端のフラグは炎の伝播による不具合を測定する所定の測定長さで不合格を示す。検体の点火は5回のバーナーの15秒暴露による。追加の要件は、検体がバーナー除去の60秒以内に自己消火することである。典型的には、試料あたり3検体が配合物スクリーニング研究用に評価される。ミニ−ワイヤ・ラインからのワイヤまたはケーブル検体は室温で調整し(最低24時間)、真っ直ぐにする。クラフトペーパー片(幅12.5±1mm(0.5±0.1”))を、ゴム側を検体に向け、その下縁は炎の内部青錐体が試料に作用する点より約254±2mm(10±0.1”)上であり、末端はともに均一に貼り付け整えられ、炎が適用される側と反対に約20mm(0.75インチ)突出する指標フラグを形成するよう、検体の周りを一回巻き付ける。平らな検体では、フラグは検体の幅広面の中心から突出する。検体、装置、および周囲空気は室温である。下方の試料支持物は、炎の内部青錐体が検体に作用する点より少なくとも50mm(2インチ)下にあり、上方の支持物はクラフト・ペーパー・フラグの上端より少なくとも50mm(2インチ)上にある。綿の連続水平層は、試験チャンバーの床に設置し、試験検体の垂直軸に中心があり、バーナーの方向を除いてあらゆる方向に75から100mm(3から4インチ)外側に広がり、上面は炎の内部青錐体の先端が検体に作用する点より約235±6mm(9.25±0.25インチ)下である。バーナー垂直線で、試験炎の高さは125±10mm(5.0±0.4インチ)に調整し、内部青錐体は長さ40±2mm(1.5±0.1インチ)である。次いでバーナーはアングルブロックに配置し、そのバレルは垂直に対して20°の角度である。アングルブロックは、検体の外面に作用する炎の内部青錐体の先端位置に15秒間移動し、15秒間遠ざける;このサイクルは、アングルブロックの円滑で素早い移動およびチャンバー空気の最小撹乱を用いて、炎5つの適用について反復する。検体の燃焼がバーナーの炎を除去した後15秒より長く持続する場合、バーナーの炎は燃焼が止まる直後まで再適用しない。試験が終了した後、排気システムが作動し、チャンバーから煙および炎を排除する。試験中および試験後、下記を記録する:a)指標フラグの非炭化%(フラグからの、単なる焦げまたは煤で覆われている部分以外の物理的損傷の最初の可視的兆候):試料と接触するクラフトペーパーの部分はフラグの部分とみなさない);b)綿の発火;綿の無炎炭化は典型的には無視される;ならびにc)バーナー炎の各適用の終了後、検体の燃焼が自己消火するまでの時間。結果には、非炭化長、綿の発火、および任意適用後のバーナー炎の除去後に検体の燃焼が60秒を超える場合の指摘を含む。
【0088】
難燃性(FR)
FR性能を特徴付けるMimic VW−1 FR試験はUL94チャンバーで200*2.7*1.9mmに限定された検体サイズで行う。検体は、遠位端に50gの加重を加えることにより、縦軸垂直線のクランプで垂れ下げる。1枚のペーパーフラグ(2*0.5cm)をワイヤの上端に適用する。炎底(バーナーオラクル(burner oracle)の最高点)からフラグ底の距離は18cmである。炎は連続45秒適用する。残炎時間(AFT)、非炭化ワイヤの長さ(UCL)、および非炭化フラグ面積百分率(非炭化フラグ)を燃焼中および燃焼後に記録する。各試料について4または5検体を試験する。下記のいずれも「不合格」に相当する:(1)検体下の綿が発火する、(2)フラグが燃え尽きる、ならびに(3)炎とともに滴下する。
【0089】
体積抵抗(VR)
体積抵抗を測定するために、Hewlett−Packard High Resistivity Meterを用いる。材料の伝導性または抵抗は特定条件下で電流または電圧降下の測定から決定される。適切な電極系を用いることにより、表面および体積抵抗は個別に測定してもよい。抵抗率は検体寸法を用いて算出される。製品検体は、穿孔する前の表面のボイド、しわ、かすれ、および亀裂について視覚的に試験し;プラークのこれらの欠陥は回避される。直径3.5インチのディスクに切断された50ミルのプラークが典型的に使用される。試験電圧は500Vに設定する。全てのVR測定で、2つの検体を調製し、3段階の順序で試験した:(1)80℃(一晩)で真空乾燥し試験し、(2)2時間蒸留水に浸漬し(試験検体#1のみ)、および(3)48時間浸漬し、試験した(試験検体#1のみ)。また、検体#2は、室温、水浸漬後48時間で直接行った。これは作業負荷を減らすために行い、重要な細目を漏らすことなく実験効率をほぼ33%までに最適化する。
【0090】
湿潤絶縁抵抗
絶縁抵抗/湿潤絶縁抵抗(IR/湿潤IR)を、Brabenderテープ押出機により調製される約10メートル長のワイヤ試料について試験した。試験前に、外被の両端を約1.5cm剥がし、銅はともにより合わせる。試料は蒸留水に浸し、IRおよび湿潤IRの両方の試験中に導体と該水間に500V DCを加えた。IR試験では、ワイヤ試料を1分間のDC適用後に耐電圧テスターにより測定した。湿潤IR試験では、ワイヤ試料を先に1時間接地した水に浸した後、下記に従って、同一方法で測定した:
【数1】
(式中、ρは絶縁体積抵抗であり、オームミリメートルで表され;Lは試験試料の浸漬長であり(ミリメートル);Rは測定絶縁抵抗であり(オーム);Dは外部ケーブル直径(ミリメートル)であり;dは導体直径(ミリメートル)であり;ならびにlgは底を10とする対数である)。
【0091】
以下の表A、BおよびEは、配合物およびポリプロピレン/熱可塑性エラストマー/難燃性化合物(PP/TPE/FR)の下記複合体の特性を載せる。例IEは本発明の実施例であり、CEは比較実施例である。配合物成分は組成物の重量パーセントで報告される。
【0092】
表AおよびBで示されるように、TPEおよびピペラジン成分を含有するFP2100J N/P系膨張性難燃剤と混合されるPPである本発明実施例(IE)は、並外れた機械的性質および難燃性能を示す。それぞれの実施例(IE1−12)は模擬VW−1耐燃性(FR)試験に合格した。意外にも、IE1−12はそれぞれ50%未満の150℃での熱変形と同時に優れた引張強度(>9MPa)および伸び(>200%)を有する。対照的に、PP、TPEおよびピペラジン成分を含まないFRで製造された比較複合体(CE1〜4)は、模擬VW−1耐燃性(FR)試験に合格しなかった。さらに、表Aに示すように、PPおよびFP2100Jを含むがTPEを含まずに製造されるCE−5は模擬VW−1FR試験に合格したが、47850psiの5%割線係数が非常に高く、伸びが貧弱で(<15%)、熱変形が不良であった。実施例IE−1からIE−12においてTPE(VERSIFYおよび/またはSEBS)が存在すると、5%割線係数は、150℃での熱変形を失うことなく、33000psi未満に減少した。
【0093】
ハロゲンフリー難燃性(HFFR)ワイヤおよびケーブル組成物の重要な顧客仕様は、引張応力>5.8MPa、引張伸び>200%および熱変形比<50%(150℃)を含む。本発明試料(IE)はHaake混合法により製造したが、伸びは二軸押出法によりさらに増大するであろう。
【表2】
【表3】
【0094】
表Cおよび表D(以下)には、配合物およびPP/TPE/FR化合物の複合体の特性を載せる。
【0095】
W&C用途で用いられる典型的な基準は、難燃性についてのVW−1試験の合格、121℃での熱変形<50%、および可撓性<35,000psiを含む。表Cにおいて、IE1およびIE2は、良好な可撓性、高い耐燃性、高い熱変形および良好な湿潤電気特性を含む全体的なバランスのとれた特性を示す。TPEおよびピペラジンを含まないFR系を含んで製造されたCE1からCE3は、特性のバランスが悪かった。OBCとVERSIFYの混合物であるCE1は、引張強度が低く、耐燃性が貧弱であった。ULDPEとVERSIFYの混合物であるCE2は、引張強度が低く熱変形が不良であった。IE1はまた、BAPPと他の固体膨張性FRとを使用することにより、良好な耐燃性および良好な可撓性が得られることを示している。CE3は121℃で貧弱な熱変形性能を示した唯一の樹脂系である。
【表4】
【0096】
表D(以下)において、IE3からIE6は、IE1およびIE2と同様に、バランスのとれた特性を示し、予想外にIE1よりさらに低い割線形数を有するが、同程度の熱変形性能を有する。Versify 3200、Versify 3300、Versify 2400はIE2からIE4において主要樹脂であり、85℃未満の融解温度(融点、m.pt.)の主要相との混合物が121℃の高温で良好な熱変形を示したことは予想外であった。
【0097】
IE3からIE5の膨張性FRの荷重レベルは、ピペラジン成分を含まない膨張性N−P FRから成る他のポリオレフィン系配合物のVW−1性能に必要な典型的荷重レベルよりはるかに低い。意外にも、IE3からIE5における良好な耐燃性は、IE3からIE5で使用されるポリマー樹脂とFRパッケージ間の燃焼相乗効果を示す。この効果は代替の膨張性FR(ピペラジン成分を含まない)を用いてCE4によりさらに証明され、これは耐燃性が貧弱で、VW−1性能要件を満たさなかった。IE3からIE5の高い体積抵抗と比較して、CE4は湿潤電気特性が貧弱であった。
【表5】
【0098】
以下の表Eは、PP/TPE/FR化合物の複合体の配合および特性を記載している。本発明の試料(IE)は、Haake混合工程の後、圧縮成形により調製した。伸びは二軸成形によって、さらに増加する。FANUK 100トン高速を用い50℃で射出成形し、温度200、210、205、200,190,50℃の温度で機械的性質の試験を行った。
【0099】
表Eにおいて、IE1〜IE7は、融点が130℃を超える高融点のVERSIFY 2400.05を含んでいる。これらの例は、PPの含有量24%において、熱変形(HD)規格に合格する。ホモPP(H110−02N)を使用すれば、必要なPP含有量をさらに21%に減らせる。異なるP−N膨張性FRパッケージでは、本発明の試料は全て堅牢なFR挙動を示す。IE8〜IE9は、融点が130℃より低いVERSIFY 2400を含んでいる。PP含有量24%では、IE8はHDの規格に不合格であった。しかし、IE8でPP含有量を27%に増やせば、IE9のようにこの例はHD規格に合格する。表Eに見られるように、融点130℃未満のVERSIFY 2400(IE−8およびIE−9)を用いる組成物に比べ、高融点のVERSIFY(IE−1〜IE−7)を使用すする組成物では、ポリプロピレンの必要量はより少なくなる。
【表6】
【0100】
以下の表Fは、実施例IE−10〜IE−11の射出成形およびワイヤ被覆の物性データを示している。IE−10およびIE−11は、高融点のVERSIFY 2400.05を含むものであり、全ての規格に合格するものである。特に、引っ張り伸びは200%を超える。これに対して、IE−12は、PPの比較的多いVERSIFY 2400を含むものであり、熱変形(HD)の規格には合格するが、引張伸びが低く、UL−62規格に合格しない。理論に縛られることは望まないが、高PP含有量による引張伸びが低いことは、射出成形時のPP結晶の配向によるものであろう。
【0101】
したがって、高融点のVERSIFY 2400.05を加えることによって、より低いPP含有量で優れた難燃性が得られる。さらに、高融点のVERSIFYを加えることによって、TPU系HFFRよりも低い密度になり、高融点のVERSIFYを使用する複合体の原材料価格は有意に低くなる。
【表7】
【0102】
本発明は先の具体的な実施形態を通して若干詳細に記載したが、これは説明が主目的である。下記の特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数の変形および修飾が当業者によって為され得る。