特許第5768191号(P5768191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5768191
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/18 20060101AFI20150806BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   E02F9/18
   E02F9/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-549259(P2014-549259)
(86)(22)【出願日】2014年8月8日
(86)【国際出願番号】JP2014071029
【審査請求日】2015年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 光
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−157721(JP,A)
【文献】 特開2003−129523(JP,A)
【文献】 特開2004−238850(JP,A)
【文献】 特開2008−266882(JP,A)
【文献】 特開2009−103016(JP,A)
【文献】 特開2009−079422(JP,A)
【文献】 特開2010−247553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18
E02F 9/24−9/28
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回フレームと、
前記旋回フレーム上に配置されたエンジンと、
前記エンジンからの排気ガスを処理する第1排気処理装置および第2排気処理装置と、
前記エンジンの後方において前記旋回フレーム上に配置されたカウンタウェイトとを備え、
前記第1排気処理装置と前記第2排気処理装置とは、各々の長手方向が前記旋回フレームの前後方向に沿い、前記旋回フレームの左右方向の中心から端に向かって前記第2排気処理装置、前記第1排気処理装置の順に並べられ、前記第1排気処理装置の後端が前記第2排気処理装置の後端よりも前方に配置されており、
前記カウンタウェイトは、その内周面に、平面視において前記旋回フレームの左右方向の中心側よりも端側が前方に突出した段部を有し、
前記第1排気処理装置および前記第2排気処理装置を支持するブラケットをさらに備え、
前記第2排気処理装置の後端に沿う前記ブラケットの縁部は、平面視において、前記第1排気処理装置の後端に沿う前記ブラケットの縁部よりも、前記カウンタウェイト側に突出している、油圧ショベル。
【請求項2】
記第2排気処理装置の後端が前記段部よりも前記旋回フレームの左右方向の中心側の前記内周面に対向し、前記第1排気処理装置の後端が前記段部よりも前記旋回フレームの左右方向の端側の前記内周面に対向する、請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項3】
前記第1排気処理装置の長手方向寸法は、前記第2排気処理装置の長手方向寸法よりも小さい、請求項1または2に記載の油圧ショベル。
【請求項4】
旋回フレームと、
前記旋回フレーム上に配置されたエンジンと、
前記エンジンからの排気ガスを処理する第1排気処理装置および第2排気処理装置と、
前記エンジンの後方において前記旋回フレーム上に配置されたカウンタウェイトとを備え、
前記第1排気処理装置と前記第2排気処理装置とは、各々の長手方向が前記旋回フレームの前後方向に沿い、前記旋回フレームの左右方向の中心から端に向かって前記第2排気処理装置、前記第1排気処理装置の順に並べられ、前記第1排気処理装置の後端が前記第2排気処理装置の後端よりも前方に配置されており、
前記カウンタウェイトは、その内周面に、平面視において前記旋回フレームの左右方向の中心側よりも端側が前方に突出した段部を有し、
前記段部は、上方に向かうにつれて前記旋回フレームの左右方向の中心に近づく、油圧
ショベル。
【請求項5】
前記カウンタウェイトの前記内周面に凹部が形成されており、
前記凹部は、前記凹部の上側および下側よりもへこんだ形状を有している、請求項1〜のいずれか1項に記載の油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルには、排気処理装置が搭載されている。排気処理装置としては、たとえばディーゼル微粒子捕集フィルター装置(DPF)、ディーゼル酸化触媒装置(DOC)、および選択還元触媒装置(SCR)などが存在する。
【0003】
特開2011−157721号公報(特許文献1)には、DPFとSCRとを、エンジン室を形成する後方周壁の内壁面に一定間隔を隔てて配置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−157721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油圧ショベルの旋回フレーム上には、車体バランスを保持するためのカウンタウェイトを配置する必要がある。一方、エンジンからの排気ガスを処理する排気処理装置は、エンジンに近い車体後方に配置する必要があるが、旋回フレームの面積が限られているため、カウンタウェイトに接近させて配置するのが望ましい。この場合、排気処理装置がカウンタウェイトと干渉しないようにカウンタウェイトの厚みを小さくすると、カウンタウェイトの重量が低減して、油圧ショベルの車体バランスが失われる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、カウンタウェイトの重量低減を抑えるとともに、排気処理装置を適切に配置できる、油圧ショベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の油圧ショベルは、旋回フレームと、エンジンと、第1排気処理装置および第2排気処理装置と、カウンタウェイトとを備えている。エンジンは、旋回フレーム上に配置されている。第1排気処理装置および第2排気処理装置は、エンジンからの排気ガスを処理する。カウンタウェイトは、エンジンの後方において旋回フレーム上に配置されている。第1排気処理装置と第2排気処理装置とは、各々の長手方向が旋回フレームの前後方向に沿って配置されている。第1排気処理装置と第2排気処理装置とは、旋回フレームの左右方向の中心から端に向かって第2排気処理装置、第1排気処理装置の順に並べられて配置されている。第1排気処理装置の後端は、第2排気処理装置の後端よりも、前方に配置されている。カウンタウェイトは、その内周面に、平面視において旋回フレームの左右方向の中心側よりも端側が前方に突出した段部を有している。
【0008】
本発明の油圧ショベルによれば、排気処理装置の後端を前後方向にずらして配置することにより、排気処理装置をカウンタウェイトに接近させて配置でき、面積の限られた旋回フレーム上に排気処理装置を適切に配置することができる。段部よりも端側においてカウンタウェイトの内周面が前方に突出しているため、カウンタウェイトの重量低減を抑制することができる。
【0009】
上記の油圧ショベルにおいて、第1排気処理装置の長手方向寸法は、第2排気処理装置の長手方向寸法よりも小さい。このように排気処理装置を配置することで、旋回フレーム上に排気処理装置を配置するために必要な面積を低減することができる。
【0010】
上記の油圧ショベルにおいて、段部は、上方に向かうにつれて旋回フレームの左右方向の中心に近づいている。このような形状の段部を設けることにより、意匠性および強度に優れたカウンタウェイトを提供することができる。
【0011】
上記の油圧ショベルにおいて、カウンタウェイトの内周面に凹部が形成されている。凹部は、凹部の上側および下側よりもへこんだ形状を有している。カウンタウェイトに排気処理装置を受け入れる凹部を形成することで、排気処理装置をさらに後方側へ配置することが可能になる。一方、凹部よりも上側および下側を前方に突出する形状とすることで、カウンタウェイトの重量を増大することができる。
【0012】
上記の油圧ショベルは、第1排気処理装置および第2排気処理装置を支持するブラケットをさらに備えている。第2排気処理装置の後端に沿うブラケットの縁部は、平面視において、第1排気処理装置の後端に沿うブラケットの縁部よりも、カウンタウェイト側に突出している。これにより、ブラケットに搭載された排気処理装置をカウンタウェイトのより近くに配置することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、カウンタウェイトの重量低減を抑えながら、排気処理装置をカウンタウェイトの近くに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す側面図である。
図2】旋回フレーム上の各機器の配置を示す模式的な平面図である。
図3】還元剤の経路およびエンジンからの排気ガスの排気経路を模式的に示す機能図である。
図4】カウンタウェイトに対する排気処理装置の配置を示す斜視図である。
図5】カウンタウェイトの構成を示す斜視図である。
図6】排気処理ユニットの概略構成を示す平面図である。
図7】カウンタウェイトに対する排気処理装置の配置を示す第1の部分断面図である。
図8】カウンタウェイトに対する排気処理装置の配置を示す第2の部分断面図である。
図9】カウンタウェイトに対する排気処理装置の配置を示す平面図である。
図10】油圧ショベルからの排気処理装置の取り外し作業中の排気処理装置の配置を示す部分断面図である。
図11】油圧ショベルからの排気処理装置の取り外し作業中の排気処理装置の配置を示す平面図である。
図12】油圧ショベルからの排気処理装置の取り外し作業中の排気処理装置の移動経路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の思想を適用可能な油圧ショベルの構成について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す側面図である。本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、上部旋回体3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン7と、キャブ10とを主に備えている。下部走行体2と上部旋回体3とにより、油圧ショベル本体が主に構成されている。
【0017】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた一対の履帯Pを有している。下部走行体2は、一対の履帯Pが回転することにより自走可能に構成されている。
【0018】
上部旋回体3は、下部走行体2に対して任意の方向に旋回可能に設置されている。上部旋回体3は、前方左側に、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であるキャブ10を含んでいる。上部旋回体3は、後方側に、エンジン7を収納するエンジン室、およびカウンタウェイト5を含んでいる。
【0019】
なお、本実施の形態では、キャブ10内に運転員が着座した状態で、運転員の前方側(正面側)を上部旋回体3の前方側とし、運転員の後方側を上部旋回体3の後方側とし、着座状態での運転員の左側を上部旋回体3の左側とし、着座状態での運転員の右側を上部旋回体3の右側とする。以下の説明では、上部旋回体3の前後左右と油圧ショベル1の前後左右は一致しているとする。また、以下の図においては、前後方向を図中矢印X、左右方向を図中矢印Y、上下方向を図中矢印Zで示している。
【0020】
土砂の掘削などの作業を行なう作業機4は、上下方向に作動自在に、上部旋回体3により軸支されている。作業機4は、上部旋回体3の前方側の略中央部に上下方向に作動可能に取り付けられたブーム4aと、ブーム4aの先端部に前後方向に作動可能に取り付けられたアーム4bと、アーム4bの先端部に前後方向に作動可能に取り付けられたバケット4cとを有している。ブーム4a、アーム4bおよびバケット4cはそれぞれ、油圧シリンダ9によって、駆動されるように構成されている。
【0021】
作業機4は、キャブ10に搭乗しているオペレータが作業機4の先端部を見通せるように、キャブ10に対し、キャブ10の一方の側部側である右側に設けられている。キャブ10は、作業機4の取り付け部分の側方に配置されている。
【0022】
カウンタウェイト5は、採掘時などにおいて車体のバランスをとるために上部旋回体3の後部に配置された重りである。油圧ショベル1は、カウンタウェイト5の後面の旋回半径を小さくした後方小旋回型油圧ショベルとして形成されている。このため、カウンタウェイト5の後面は、上方から見て上部旋回体3の旋回中心を中心とした円弧状に形成されている。エンジン7は、上部旋回体3の後部のエンジン室内に収容されている。
【0023】
図2は、旋回フレーム31上の各機器の配置を示す模式的な平面図である。図2中の下側が上部旋回体3の前方を示し、図2中の上側が上部旋回体3の後方を示している。図2には、図1に示す油圧ショベル1において、旋回フレーム31上において還元剤タンク20から排気処理ユニットへ還元剤を供給するための配管(送り配管21および圧送配管25)の経路が図示されている。図2中の一点鎖線は、旋回フレーム31の左右方向における中心線CLを示している。
【0024】
なお、本明細書中では、還元剤および還元剤の前駆体を「還元剤」として総称するものとする。
【0025】
図1に示す下部走行体2および作業機4を駆動するための動力源であるエンジン7は、旋回フレーム31上に搭載されている。エンジン7は、旋回フレーム31のうち左右方向の中央側のセンタフレームの、後部に搭載されている。重量の大きいエンジン7は、油圧ショベル本体の前方に取り付けられた作業機4との重量バランスを考慮して、作業機4を支持するセンタブラケット33から離れており、かつカウンタウェイト5に近い、油圧ショベル本体の後方端に配置されている。エンジン7を収納するエンジン室は、上部旋回体3の後部に設けられている。
【0026】
エンジン室内には、冷却ユニット6およびファン8が収容されている。エンジン室内において、左側から右側へ向かって、冷却ユニット6、ファン8、エンジン7の順に並べられている。ファン8は、エンジン7によって回転駆動されて、エンジン室内を通過する空気の流れを発生する。ファン8は、油圧ショベル本体の左側から右側へ向かう空気の流れを発生する。冷却ユニット6は、ファン8の発生する空気の流れの上流側である、ファン8に対して左側に配置されている。エンジン7は、ファン8の発生する空気の流れの下流側である、ファン8に対して右側に配置されている。
【0027】
冷却ユニット6は、ラジエータ、インタークーラ、およびオイルクーラを含んで構成されている。ラジエータは、エンジン7の冷却水を冷却するための冷却装置である。インタークーラは、エンジン7に供給される圧縮空気を冷却するための冷却装置である。オイルクーラは、油圧シリンダ9(図1)などの、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給される作動油を冷却するための冷却装置である。
【0028】
油圧ショベル1はまた、エンジン室内に、エンジン7から排出される排気ガスを処理して浄化するための排気処理ユニットを備えている。排気処理ユニットは、排気処理装置12,14と、中継接続管13と、排気筒15と、還元剤の噴射ノズル28とを主に備えている。図2に示す平面視において、排気処理ユニットは、エンジン7に対して右側に配置されている。エンジン7には、エンジン7によって駆動されて作動油を移送する図示しない油圧ポンプが直結されている。油圧ポンプはエンジン7の右隣に配置されており、排気処理ユニットは油圧ポンプの上方に配置されている。
【0029】
排気処理装置12は、後述する排気管11(図3)によりエンジン7と接続されている。排気処理装置14は、中継接続管13により排気処理装置12と接続されている。エンジン7から排出される排気ガスは、排気処理装置12,14を順に通過して、排気筒15から大気中に排出される。エンジン7からの排気ガスの排出の流れに対して、排気処理装置12はエンジン7の下流側に配置されており、排気処理装置14は排気処理装置12の下流側に配置されている。
【0030】
排気処理装置12は、エンジン7から排出される排気ガス中に含まれる一酸化炭素および炭化水素などの未燃焼ガスを酸化して、排気ガス中の未燃焼ガスの濃度を低下させる。排気処理装置12は、たとえばディーゼル酸化触媒装置である。排気処理装置14は、還元剤との反応によって排気ガス中に含まれている窒素酸化物を還元し、窒素酸化物を無害な窒素ガスに化学変化して、排気ガス中の窒素酸化物濃度を低下させる。排気処理装置14は、たとえば選択触媒還元式の脱硝装置である。中継接続管13には、中継接続管13内に還元剤を噴射するための噴射ノズル28が設けられている。中継接続管13は、排気ガスに還元剤を噴射し混合するミキシング配管としての機能を有している。
【0031】
排気処理装置12,14は、旋回フレーム31のうち左右方向の中央側のセンタフレームから、右側のサイドフレームに亘るように配置されており、旋回フレーム31の左右方向の右側に配置されている。エンジン7の右隣に、図示しない油圧ポンプが配置されており、排気処理装置12,14は油圧ポンプの上方に配置されている。排気処理装置12,14は、旋回フレーム31から離れて配置されており、排気処理装置12,14に対して下方に、油圧ポンプが配置されている。
【0032】
排気処理装置12,14は、各々の長手方向が旋回フレーム31の前後方向に沿うように配置されている。排気処理装置12,14は、旋回フレーム31の左右方向の中心から端に向かって、排気処理装置14、排気処理装置12の順に並べられている。
【0033】
油圧ショベル1はまた、排気処理ユニットへ還元剤を供給するための、還元剤供給部を備えている。還元剤供給部は、還元剤タンク20、および還元剤ポンプ22を備えている。還元剤タンク20は、排気処理装置14で使用される還元剤を貯留する。還元剤としては、たとえば尿素水が好適に用いられるが、これに限られるものではない。
【0034】
還元剤タンク20および還元剤ポンプ22は、旋回フレーム31のうち、右側のサイドフレーム上に搭載されている。還元剤ポンプ22は、エンジン室に対して前方に配置されている。還元剤タンク20は、還元剤ポンプ22よりも前方に配置されている。還元剤タンク20は、還元剤が温度上昇して劣化することを防止するために、高温の機器であるエンジン7から離れて配置されており、たとえば旋回フレーム31の前方端に配置されている。
【0035】
還元剤タンク20と還元剤ポンプ22とは、送り配管21および戻し配管23によって、互いに連結されている。送り配管21は、還元剤タンク20から還元剤ポンプ22へ還元剤を送出するための配管である。戻し配管23は、還元剤ポンプ22から還元剤タンク20へ還元剤を戻すための配管である。還元剤ポンプ22と噴射ノズル28とは、圧送配管25によって、互いに連結されている。圧送配管25は、還元剤ポンプ22から噴射ノズル28に還元剤を移送するための配管である。
【0036】
還元剤タンク20から送り配管21を経由して還元剤ポンプ22へ移送されてきた還元剤は、還元剤ポンプ22において二分岐する。排気処理に使用されない還元剤は、還元剤ポンプ22から戻し配管23を経由して、還元剤タンク20へ戻される。排気処理に使用される還元剤は、還元剤ポンプ22から圧送配管25を経由して、噴射ノズル28へ到達し、噴射ノズル28から中継接続管13内へ噴霧される。
【0037】
エンジン7からの排気ガスは、中継接続管13を経由して排気処理装置14へ流入する。中継接続管13は、排気ガスの流れにおいて、排気処理装置14の上流側に設けられている。還元剤タンク20から吸い出された還元剤は、中継接続管13に取り付けられた噴射ノズル28を経由して、中継接続管13内を流れる排気ガス中に噴射される。還元剤は、排気処理装置14に対し排気ガスの流れの上流側に噴射される。排気ガス中に噴射される還元剤の量は、排気処理装置14を通過する排気ガスの温度、および排気ガス中の窒素酸化物の濃度に基づいて、制御されている。
【0038】
還元剤タンク20が旋回フレーム31上の前方端に配置されており、排気処理装置14が旋回フレーム31上の後方端に配置されている。この配置のため、還元剤を移送する送り配管21および圧送配管25は、油圧ショベル本体の前後方向に延び、旋回フレーム31の前方端から後方端に向かって延びている。
【0039】
旋回フレーム31のうち右側のサイドフレーム上にはまた、燃料タンク36、作動油タンク38およびメインバルブ39が搭載されている。燃料タンク36は、エンジン7に供給される燃料を貯える。作動油タンク38は、油圧シリンダ9(図1)などの油圧アクチュエータに供給される作動油を貯える。
【0040】
燃料タンク36および作動油タンク38は、重量が大きいため、旋回フレーム31上の重量バランスを考慮して、排気処理ユニットの前方の位置に配置されている。燃料タンク36への燃料の補給作業の作業性を考慮して、燃料タンク36は作動油タンク38よりも旋回フレーム31の側端近くに配置されている。燃料タンク36および作動油タンク38は、直方体状の耐圧タンクとして形成されている。燃料タンク36および作動油タンク38の前面は、メインバルブ39を収容するバルブルーム97の後壁として構成されている。
【0041】
メインバルブ39は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ39は、作動油タンク38から吸い出され図示しない油圧ポンプにより移送される作動油を、図1に示す油圧シリンダ9、図示しない走行モータおよび旋回モータなどの油圧アクチュエータに給排する。これによりメインバルブ39は、油圧ショベル1の車体および作業機4を、オペレータの運転操作に応じて作動させる。
【0042】
メインバルブ39は、燃料タンク36および作動油タンク38よりも重量が小さいため、旋回フレーム31上の重量バランスを考慮して、燃料タンク36および作動油タンク38に対し前方に配置されている。メインバルブ39は、還元剤タンク20に対し後方に配置されている。
【0043】
メインバルブ39を収容するバルブルーム97と、還元剤タンク20を収容するタンクルーム92とは、仕切板80によって仕切られている。仕切板80は、還元剤タンク20の後方、かつメインバルブ39の前方に配置されており、還元剤タンク20とメインバルブ39との間に配置されている。仕切板80は、上部旋回体3の前後方向において、還元剤タンク20とメインバルブ39との間に介在している。仕切板80は、バルブルーム97の前壁として構成されている。仕切板80は、タンクルーム92の後壁として構成されている。
【0044】
図3は、本実施の形態の油圧ショベル1における還元剤の経路およびエンジン7からの排気ガスの排気経路を模式的に示す機能図である。図3に示すように、エンジン7から排出された排気ガスは、排気管11、排気処理装置12、中継接続管13、排気処理装置14を順に経て排気筒15から車外に排気される。排気処理装置14に対して排気ガスの流れの上流側の中継接続管13に、噴射ノズル28が設けられている。
【0045】
還元剤タンク20の内部には、還元剤90が貯留されている。還元剤タンク20の内部には、還元剤タンク20から流出する還元剤90が流れる吸出管24が配置されている。吸出管24の先端には、ストレーナ(濾過器)26が接続されている。吸出管24は、送り配管21に連結されている。還元剤タンク20から吸い出された還元剤90は、還元剤ポンプ22によって移送され、送り配管21および圧送配管25を順に経由して、噴射ノズル28へ到達する。排気処理に使用されない還元剤90は、還元剤ポンプ22から戻し配管23を経由して、還元剤タンク20へ戻される。
【0046】
噴射ノズル28は、還元剤タンク20から吸い出した還元剤90を排気処理装置14に対し排気ガスの上流側に噴射する、還元剤噴射装置としての機能を有している。噴射ノズル28により、中継接続管13内を流れる排気ガス中に還元剤90が供給される。排気処理装置14において、排気ガス中に含有される窒素酸化物が還元剤90と反応することにより、排気ガス中の窒素酸化物の濃度が減少する。還元剤90が尿素水である場合、中継接続管13内において尿素水は分解してアンモニアへと変化し、窒素酸化物とアンモニアとの反応によって窒素酸化物は無害な窒素および酸素に分解される。窒素酸化物の量が適正値に低下した排気ガスは、排気筒15から排出される。
【0047】
図4は、カウンタウェイト5に対する排気処理装置12,14の配置を示す斜視図である。図5は、カウンタウェイト5の構成を示す斜視図である。図4,5には、左前方から見たカウンタウェイト5が図示されている。
【0048】
排気処理装置12,14は、受け皿状のブラケット170により支持されている。ブラケット170は、脚部に搭載されている。脚部は、後方脚部180、前方脚部191および右脚部192によって構成されている。ブラケット170は、ボルト結合により脚部に固定されている。脚部は、旋回フレーム31に固定されている。脚部は、ブラケット170を介して、旋回フレーム31に対して3箇所で排気処理装置12,14を支持している。これにより、重量の大きい排気処理装置12,14が、旋回フレーム31上に強固に支持されている。
【0049】
カウンタウェイト5は、エンジン7の後方において、旋回フレーム31上に配置されている。カウンタウェイト5は、エンジン室の後壁を構成する内周面を有している。カウンタウェイト5の内周面は、図2に示すエンジン7、ファン8、および排気処理装置12,14などの、旋回フレーム31上に搭載される各機器に対向している。図4,5に示すように、カウンタウェイト5の内周面には、カウンタウェイト5に隣接する各機器の配置を考慮するとともに、カウンタウェイト5の体積を可能な限り大きくできるように、複雑な凹凸形状が形成されている。
【0050】
後方脚部180の一部または全部を、カウンタウェイト5に形成された凹部に嵌め込むことにより、カウンタウェイト5と後方脚部180とが組み合わされて配置される。これにより図4に示すように、排気処理装置12,14をカウンタウェイト5に接近させて配置することが可能になっている。
【0051】
後方脚部180がカウンタウェイト5の内周面の凹部の内部に配置されて、後方脚部180とカウンタウェイト5とが組み合わされた、図4に示す配置においても、後方脚部180はカウンタウェイト5に固定されていない。後方脚部180を含む脚部によって旋回フレーム31に対し支持されている排気処理装置12,14と、カウンタウェイト5とは、それぞれ別個独立に旋回フレーム31上に搭載されている。
【0052】
図5に示すように、カウンタウェイト5の内周面は、第1面部分51、第2面部分52、第3面部分53、第4面部分54、および第5面部分55を有している。第2面部分52は、第1面部分51の上側に設けられている。第3面部分53は、第1面部分51の下側に設けられている。第4面部分54は、第1面部分51および第2面部分52に対し、旋回フレーム31の左右方向の右側に配置されている。第5面部分55は、第4面部分54に対し、旋回フレーム31の左右方向の右側に配置されている。
【0053】
第1面部分51と第4面部分54とは、旋回フレーム31の左右方向の中心側から端側へ向かって、第1面部分51、第4面部分54の順に設けられている。また、第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55は、旋回フレーム31の左右方向の中心側から端側へ向かって、第2面部分52、第4面部分54、第5面部分55の順に設けられている。第4面部分54は、上下方向において、第1面部分51に対し旋回フレーム31の左右方向の右側の位置と、第2面部分52に対し旋回フレーム31の左右方向の右側の位置とに亘って、形成されている。
【0054】
第1面部分51は、カウンタウェイト5の内周面の一部を構成している。第1面部分51は、第1面部分51に対して上側の第2面部分52、および第1面部分51に対して下側の第3面部分53よりも窪んでいる。第1面部分51は、第2面部分52および第3面部分53よりもへこんだ、凹部として形成されている。
【0055】
第4面部分54は、第1面部分51および第2面部分52に対して、平面視で旋回フレーム31の左右方向の端側に形成されている。第4面部分54は、第1面部分51に対して、旋回フレーム31の前方へ向けて突出している。第4面部分54は、第2面部分52に対して、旋回フレーム31の前方へ向けて突出している。
【0056】
第5面部分55は、第4面部分54に対して、平面視で旋回フレーム31の左右方向の端側に形成されている。第5面部分55は、第4面部分54に対して、旋回フレーム31の前方へ向けて突出している。
【0057】
カウンタウェイト5の内周面はまた、段部56,57を有している。第4面部分54が、第1面部分51および第2面部分52よりも旋回フレーム31の前方へ突出しているために、第1面部分51と第4面部分54との間、および、第2面部分52と第4面部分54との間に、段部56が形成されている。同様に、第5面部分55が第4面部分54よりも旋回フレーム31の前方へ突出しているために、第4面部分54と第5面部分55との間に段部57が形成されている。
【0058】
第1面部分51の、旋回フレーム31の左右方向における右側の縁部分は、第2面部分52の右側の縁部分よりも、旋回フレーム31の右端側に設けられている。第2面部分52の、旋回フレーム31の左右方向における右側の縁部分は、第1面部分51の右側の縁部分よりも、旋回フレーム31の左右方向の中心側に設けられている。段部56は、第1面部分51および第2面部分52の右側の縁部分に沿って形成されている。段部56は、上方に向かうにつれて、旋回フレーム31の左右方向の中心に近づいている。
【0059】
図6は、排気処理ユニットの概略構成を示す平面図である。排気処理ユニットは、エンジン7から排出される排気ガスを処理して浄化するためのユニットであって、排気処理装置12,14と、中継接続管13と、排気筒15と、還元剤の噴射ノズル28とを主に備えている。エンジン7から排出される排気ガスは、排気管11、排気処理装置12、中継接続管13、排気処理装置14および排気筒15の順に流れる。
【0060】
排気処理装置12,14は、各々の長手方向が旋回フレーム31の前後方向(図6中の左右方向)に沿うように配置されている。排気処理装置12,14は、旋回フレーム31の左右方向(図6中の上下方向)の中心(図6中の下方)から端(図6中の上方)に向かって、排気処理装置14、排気処理装置12の順に並べられている。排気処理装置12の長手方向寸法は、排気処理装置14の長手方向寸法よりも、小さくなっている。
【0061】
排気処理装置12は、後端12eを有している。排気処理装置14は、後端14eを有している。排気処理装置12の後端12eは、排気処理装置14の後端14eと比較して、より前方に配置されている。旋回フレーム31の前後方向において、排気処理装置12と排気処理装置14とは、ずれて(オフセットして)配置されている。旋回フレーム31の左右方向において、排気処理装置12と排気処理装置14とは、互いに隣り合って並んでいる。
【0062】
排気処理装置12,14は、受け皿状のブラケット170により支持されている。ブラケット170は、旋回フレーム31の後方側の後縁171を有している。後縁171は、縁部分172,174〜177を有している。縁部分172は、排気処理装置14の後端14eに沿って設けられている。縁部分174は、排気処理装置12の後端12eに沿って設けられている。
【0063】
図7は、カウンタウェイト5に対する排気処理装置12,14の配置を示す第1の部分断面図である。図7および後述する図8,9には、排気処理装置12,14を搭載したブラケット170が旋回フレーム31上に支持されており、カウンタウェイト5もまた排気処理装置12,14とは独立して旋回フレーム31上に支持されている状態における、排気処理装置12,14またはブラケット170とカウンタウェイト5との相対位置が図示されている。
【0064】
図7には、図5に示す第1面部分51および第4面部分54を通り、旋回フレーム31に平行な面に沿う、カウンタウェイト5の断面が図示されている。図7に示すように、排気処理装置12,14を支持しているブラケット170の後縁171は、カウンタウェイト5の第1面部分51、第4面部分54および段部56に対向して配置されている。後縁171のうち、縁部分172が第1面部分51に対向しており、縁部分174が第4面部分54に対向している。
【0065】
カウンタウェイト5は、排気処理装置12,14に対し後方に配置されている。カウンタウェイト5は、排気処理装置12,14を支持するブラケット170に対し後方に配置されている。図7に示すように、ブラケット170の縁部分172は、平面視において、縁部分174よりも、カウンタウェイト5の配置された後方側に突出している。縁部分172は、縁部分174よりもカウンタウェイト5に近く配置されている。縁部分172とカウンタウェイト5の第1面部分51との間の隙間は、縁部分174と第4面部分54との間の隙間よりも、小さくなっている。
【0066】
縁部分172と縁部分174との間に設けられている縁部分176は、カウンタウェイト5の第1面部分51と第4面部分54との間に形成されている段部56に対向している。第1面部分51は、排気処理装置14の後端14eに対向している。第4面部分54は、排気処理装置12の後端12eに対向している。第1面部分51は第4面部分よりも後方に配置されている。段部56は、第1面部分51と、第1面部分に対し前方に突出した第4面部分54との間に形成されている。
【0067】
図8は、カウンタウェイト5に対する排気処理装置12,14の配置を示す第2の部分断面図である。図8には、図5に示す第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55を通り、旋回フレーム31に平行な面に沿う、カウンタウェイト5の断面が図示されている。
【0068】
図5を参照して説明した通り、第1面部分51は、第1面部分51に対して上側の第2面部分52よりも窪んだ形状に形成されている。第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55は、第1面部分51よりも前方に突出している。ブラケット170の後縁171は、図7に示す通り、第1面部分51に対向して配置されている。第2面部分52は、ブラケット170の後縁171を上方から覆っている。そのため、図8に示すカウンタウェイト5の断面では、ブラケット170の後縁171は、カウンタウェイト5の第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55によって覆われており、視認できなくなっている。
【0069】
図9は、カウンタウェイト5に対する排気処理装置12,14の配置を示す平面図である。図9には、排気処理装置12,14およびカウンタウェイト5を上方から平面視した状態が図示されている。第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55が、第1面部分51よりも前方に突出しているために、図8と同様に、図9に示す平面視においても、ブラケット170の後縁171は視認できなくなっている。
【0070】
排気処理装置12,14は、カウンタウェイト5に固定されておらず、カウンタウェイト5とは独立に旋回フレーム31によって支持されている。そのため、カウンタウェイト5を旋回フレーム31に固定した状態のまま、排気処理装置12,14を油圧ショベル1から取り外すことが可能とされている。これにより、排気処理装置12,14のメンテナンスが容易になっている。
【0071】
一方、カウンタウェイト5が平面視においてブラケット170に重なっているために、排気処理装置12,14を支持するブラケット170をそのまま上方へ移動しても、カウンタウェイト5に干渉して排気処理装置12,14の取り外しができない。そこで、排気処理装置12,14の取り外しの際には、排気処理装置12,14を斜め上方へ移動させて、カウンタウェイト5との干渉を回避する必要がある。
【0072】
図10は、油圧ショベル1からの排気処理装置12,14の取り外し作業中の排気処理装置12,14の配置を示す部分断面図である。図10には、カウンタウェイト5の図8と同じ断面が図示されている。図10に示す2点鎖線は、図8におけるブラケット170の配置を示している。
【0073】
排気処理装置12,14を油圧ショベル1から取り外す際には、図7に示す配置から、排気処理装置12,14を旋回フレーム31の前方左側へ向けて、カウンタウェイト5から遠ざけるように移動させる。図10には、ブラケット170を、後縁171がカウンタウェイト5の第2面部分52、第4面部分54および第5面部分55に対向する位置まで斜め上方へ移動させたときの、ブラケット170の配置が図示されている。図10に示すブラケット170は、図10中に2点鎖線で示す旋回フレーム31に搭載されているときの配置と比較して、図中の左下方向へ移動している。これにより、ブラケット170とカウンタウェイト5との干渉が回避されている。
【0074】
図11は、油圧ショベル1からの排気処理装置12,14の取り外し作業中の排気処理装置12,14の配置を示す平面図である。図11には、図9と同様に、上方から平面視したカウンタウェイト5が図示されている。図11に示す2点鎖線は、図9におけるブラケット170の配置を示している。
【0075】
図11には、ブラケット170をカウンタウェイト5の上面よりも上方の位置にまで移動させたときの、ブラケット170の配置が図示されている。図11に示すブラケットは、図11中に2点鎖線で示す旋回フレーム31に搭載されているときの配置と比較して、図中の左下方向へ移動している。図10,11を比較して、図11に示す排気処理装置12,14は、図10に示す排気処理装置12,14よりも、平面視においてカウンタウェイト5からより離れた位置に移動している。これにより、ブラケット170とカウンタウェイト5との干渉が回避されている。
【0076】
図12は、油圧ショベル1からの排気処理装置12,14の取り外し作業中の排気処理装置12,14の移動経路を示す概念図である。図12に示す位置P1は、旋回フレーム31上に搭載されている排気処理装置12,14の配置を示す。位置P2は、平面視においてカウンタウェイト5と重ならない排気処理装置12,14の配置を示す。位置P3は、油圧ショベル1から取り外された排気処理装置12,14の配置を示す。図12中の2点鎖線は、位置P1から位置P2へ至るまでの排気処理装置12,14の配置、および位置P2から位置P3へ至るまでの排気処理装置12,14の配置を示す。
【0077】
図12に示すように、排気処理装置12,14およびブラケット170は、旋回フレーム31上に搭載された位置P1から、平面視においてカウンタウェイト5と重ならない位置P2まで、斜め上方へ移動する。その後、排気処理装置12,14およびブラケット170は、位置P2から位置P3まで、鉛直上方へ移動する。排気処理装置12,14およびブラケット170は、平面視においてカウンタウェイト5に重ならなくなるまで移動させた後、鉛直上方へ移動しても、カウンタウェイト5との干渉が発生することはない。
【0078】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の油圧ショベル1では、図7〜9に示すように、エンジンからの排気ガスを処理する排気処理装置12,14は、各々の長手方向が旋回フレーム31の前後方向に沿っている。旋回フレーム31の左右方向における中心線CL(図2)から旋回フレーム31の端に向かって、排気処理装置14、排気処理装置12の順に並べられている。排気処理装置12の後端12eは、排気処理装置14の後端14eよりも前方に配置されている。カウンタウェイト5は、その内周面に、平面視において旋回フレーム31の左右方向の中心側の第2面部分52と、端側の第4面部分54とを有している。図9に示すように、第2面部分52よりも第4面部分54が前方に突出しており、第2面部分52と第4面部分54との間に段部56が形成されている。
【0079】
旋回フレーム31の左右方向における中心側の排気処理装置14の後端14eよりも、端側の排気処理装置12の後端12eが前方に配置されており、排気処理装置12,14は前後方向にずれて(オフセットして)配置されている。これにより、旋回フレーム31の中心から端に近づくにしたがって前方へ向かうように湾曲しているカウンタウェイト5の外周面に沿わせて、排気処理装置12,14を配置できる。排気処理装置12,14を、上部旋回体3の後端旋回半径からはみ出ることなく旋回フレーム31の後方側に配置でき、カウンタウェイト5に接近させて配置できる。したがって、面積の限られた旋回フレーム31上において、排気処理装置12,14を適切に配置でき、旋回フレーム31の限られた面積を有効に活用することができる。
【0080】
カウンタウェイト5は、排気処理装置12,14の外形に合わせて、排気処理装置12,14を油圧ショベル1に効率よく配置できるような形状に、最適化されている。前後方向にオフセットした排気処理装置12,14に合わせて、カウンタウェイト5の内周面に、平面視において旋回フレーム31の左右方向の中心側よりも端側が前方に突出した段部56が形成されている。
【0081】
段部56よりも中心側において、カウンタウェイト5の内周面に切欠きが形成されていることにより、排気処理装置12,14をカウンタウェイト5により近づけた配置が可能になる。また、排気処理装置12,14の油圧ショベル1からの取り外し時の経路を広く確保できるので、排気処理装置12,14の油圧ショベル1からの取り外しが容易になる。段部56よりも端側において、カウンタウェイト5の内周面が前方に突出しているために、カウンタウェイト5の体積を増大できる。これにより、カウンタウェイト5の重量低減を抑制することができ、油圧ショベル1の車体バランスを維持することができる。
【0082】
また図7に示すように、排気処理装置12の長手方向寸法は、排気処理装置14の長手方向寸法よりも小さい。排気処理装置14と比較して、旋回フレーム31の前後方向に沿う長手方向の寸法が相対的に小さい排気処理装置12が、相対的に前方に配置される後端12eを有しており、かつ、旋回フレーム31の左右方向における端側に配置されている。このように排気処理装置12,14を配置することで、旋回フレーム31上に排気処理装置12,14を配置するために必要な面積を低減できる。したがって、旋回フレーム31の面積をより有効に活用することができる。
【0083】
旋回フレーム31の左右方向において、排気処理装置12,14は、互いに隣り合って配置されている。旋回フレーム31の前後方向における排気処理装置12,14の配置のずれ量は、排気処理装置12,14を連結する中継接続管13内に注入される還元剤の排気ガスとの十分な混合を考慮して、中継接続管13の長さを十分に確保できるように、設定されている。これにより、排気処理装置12,14を含む排気処理ユニットをコンパクト化できるとともに、排気処理装置14における排気処理性能を十分に確保することができる。
【0084】
また図5および図7〜9に示すように、段部56は、上方に向かうにつれて旋回フレーム31の左右方向の中心に近づいている。段部56は、第1面部分51と第4面部分54との間に形成されており、また、第1面部分51に対して上側の第2面部分52と第4面部分54との間に形成されている。図8に示す第2面部分52と第4面部分54との間の段部56は、図7に示す第1面部分51と第4面部分54との間の段部56よりも、旋回フレーム31の左右方向の中心側に設けられている。
【0085】
排気処理装置12,14の油圧ショベル1からの取り外しを容易にするためには、図7に示すカウンタウェイト5の断面形状と、カウンタウェイト5の上面の形状とを等しくするのが望ましいが、この場合、カウンタウェイト5の上面においてカウンタウェイト5の厚みが小さくなりすぎる部分ができるため、意匠性および強度の面で好ましくない。本実施形態のように、上方において下方よりも左右方向の中心側にシフトする形状の段部56を設けることにより、排気処理装置12,14を左右方向の中心側に向かって斜め上方に移動することで排気処理装置12,14の油圧ショベル1からの取り外しが可能になり、かつ、意匠性および強度に優れたカウンタウェイト5を提供することができる。
【0086】
また図5に示すように、カウンタウェイト5の内周面の一部は、第1面部分51を構成している。第1面部分51は、その上側の第2面部分52よりもへこみ、その下側の第3面部分53よりもへこんだ、凹部として形成されている。
【0087】
図7に示すように、排気処理装置14は、カウンタウェイト5の第1面部分51に向き合う位置に配置されている。カウンタウェイト5の内周面の一部を削って第1面部分51をくぼんだ形状に形成し、カウンタウェイト5に排気処理装置14を受け入れる凹部を形成することで、排気処理装置14をさらに後方側へ配置することが可能になる。一方、第1面部分51よりも上側の第2面部分52および下側の第3面部分53を、第1面部分51に対して前方に突出する形状とすることで、カウンタウェイト5の重量を増大することができ、またカウンタウェイト5の強度を向上することができる。
【0088】
第1面部分51よりも第2面部分52が前方に突出する形状としたことにより、図9に示すように、平面視においてカウンタウェイト5の一部が排気処理装置12,14に重なっている。旋回フレーム31上に搭載された排気処理装置12,14の鉛直上方に、カウンタウェイト5の一部が配置されている。排気処理装置12,14は、カウンタウェイト5によってその一部が覆われている。カウンタウェイト5は、排気処理装置12,14の一部にかぶさっている。平面視において、カウンタウェイト5の内周面は、排気処理装置12,14の後端よりも前方に存在する部分を有している。
【0089】
これにより、カウンタウェイト5の上面における厚みを十分に確保できるので、意匠性および強度に優れたカウンタウェイト5を提供することができる。このような構成としても、排気処理装置12,14を前方側に向かって斜め上方に移動することで、排気処理装置12,14の油圧ショベル1からの取り外しが可能になっている。
【0090】
また図7に示すように、油圧ショベル1は、ブラケット170をさらに備えている。排気処理装置12,14は、ブラケット170によって支持されている。排気処理装置12,14は、ブラケット170ならびに後方脚部180、前方脚部191および右脚部192を介して、旋回フレーム31に支持されている。ブラケット170は、排気処理装置12の後端12eに沿う縁部分174と、排気処理装置14の後端14eに沿う縁部分172とを有している。平面視において、縁部分172は、縁部分174よりも、カウンタウェイト5側に突出している。
【0091】
ブラケット170を図7に示す平面視においてカウンタウェイト5の壁面に略沿った形状にすることで、ブラケット170に搭載された排気処理装置12,14をカウンタウェイト5のより近くに配置できる。したがって、排気処理装置12,14を旋回フレーム31上に適切に配置することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、後方小旋回型または超小旋回型の油圧ショベルに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0094】
1 油圧ショベル、4 作業機、5 カウンタウェイト、7 エンジン、12,14 排気処理装置、12e,14e 後端、13 中継接続管、20 還元剤タンク、28 噴射ノズル、31 旋回フレーム、51 第1面部分、52 第2面部分、53 第3面部分、54 第4面部分、55 第5面部分、56,57 段部、170 ブラケット、171 後縁、172,174,175,177 縁部分、180 後方脚部。
【要約】
カウンタウェイトの重量低減を抑え、排気処理装置を適切に配置できる、油圧ショベルを提供する。エンジンからの排気ガスを処理する第1および第2の排気処理装置(12,14)は、左右方向における中心から端に向かって、第2の排気処理装置(14)、第1の排気処理装置(12)の順に並べられている。第1の排気処理装置(12)の後端(12e)は、第2の排気処理装置(14)の後端(14e)よりも前方に配置されている。カウンタウェイト(5)は、その内周面に、平面視において左右方向の中心側の第2面部分(52)と、端側の第4面部分(54)とを有している。第2面部分(52)よりも第4面部分(54)が前方に突出しており、第2面部分(52)と第4面部分(54)との間に段部(56)が形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12