(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような位置割り出し用溝や、位置決め用流路を設けると、マイクロチップの形状が複雑になり、設計の自由度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、観測用流路の位置を割り出し可能としつつ、設計の自由度を向上させることのできるマイクロチップ、マイクロチップの成形型及びマイクロチップ製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面によれば、
マイクロチップに具備される基板を成形するための成形型において、
前記基板は、
一方の面に流路用溝が形成されるとともに、当該溝に対する位置決め基準用の孔部が当該一方の面から厚み方向に形成されており、
前記一方の面にカバー部材が貼り合わされることで前記マイクロチップを形成するものであり、
当該成形型は、
第1型と、
前記第1型に対して接離可能に設けられた第2型と、を備え、
前記第1型及び前記第2型のうち、前記一方の面を成形する一方の型は、
前記溝を成形する突条と、
少なくとも前記孔部のうち、最も内径の小さくなる最小径部分を成形する柱状の第1突起部と、を有
し、
前記第1型及び前記第2型のうち、他方の型は、
前記第1突起部よりも径の大きい柱状に形成されて当該第1突起部の先端に当接し、この第1突起部と協働して前記孔部を前記基板内に貫通して成形する第2突起部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第2の側面によれば、
基板とカバー部材とが貼り合わされたマイクロチップを製造するマイクロチップ製造装置において、
前記基板は、
一方の面に流路用溝が形成されるとともに、当該溝に対する位置決め基準用の孔部が厚み方向に貫通して形成されており、
当該基板の成形型として、
本発明の成形型を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の側面によれば、
基板とカバー部材とが貼り合わされたマイクロチップにおいて、
前記基板は、
成形によって形成されることで、
一方の面に流路用溝が形成されるとともに、当該溝に対する位置決め基準用の孔部が厚み方向に貫通して形成されており、
前記孔部は、
前記基板における前記一方の面から他方の面に向かって凹設された第1凹部と、
前記他方の面から前記一方の面に向かって凹設された第2凹部とが連通して形成されており、
前記第2凹部は、前記第1凹部よりも内径が大き
く、
前記孔部を2つ有し、前記2つの孔部のうち、一方の孔部は、
当該孔部の深さ方向に垂直な断面内で、他方の孔部を中心とする円周方向の径が、当該円周方向の交差方向における径よりも小さくなり、かつ、前記他方の孔部の径と等しくなるよう形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の側面によれば、基板には、一方の面に流路用溝が形成されるとともに、当該溝に対する位置決め基準用の孔部が当該一方の面から厚み方向に形成されており、第1型及び第2型のうち、カバー部材の貼り合わされる一方の面を成形する一方の型には、溝を成形する突条と、少なくとも前記孔部のうち、最も内径の小さくなる最小径部分を成形する柱状の第1突起部とが具備されるので、孔部の最小径部分、つまり孔部の位置として特定される部分と、流路用溝とが同一の型によって成形されることとなる。従って、流路用溝と孔部の最小径部分との位置関係を成形ショット間で一定に維持することができるため、孔部の最小径部分の位置に基づいて、観測用流路の位置を正確に割り出すことができる。よって、従来の位置決め用流路を設ける必要がないため、観測用流路の位置を割り出し可能としつつ、設計の自由度を向上させることができる。また、フォーカシングなど、観測用流路の位置を割り出すための処理を測定の度に行う手間を省くことができるため、マイクロチップの使用時の制御を簡略化して、検査時間を短くすることができる。
【0012】
また、本発明の第3の側面によれば、基板には、成形によって形成されることで、カバー部材に貼り合せられる一方の面に流路用溝が形成されるとともに、当該溝に対する位置決め基準用の孔部が厚み方向に貫通して形成されており、基板における前記一方の面から他方の面に向かって凹設された第1凹部と、前記他方の面から前記一方の面に向かって凹設された第2凹部とが連通して前記孔部が形成されているので、基板の成形時には、流路用溝と、第1凹部とが第1型及び第2型のうち、一方の同一の型によって成形されていることとなる。また、第2凹部は第1凹部よりも内径が大きいので、孔部の最小径部分は第1凹部内に存在することとなる。従って、孔部の最小径部分、つまり孔部の位置として特定される部分と、流路用溝との位置関係が成形ショット間で一定に維持されていることとなるため、孔部の最小径部分の位置に基づいて、観測用流路の位置を正確に割り出し可能とすることができる。よって、従来の位置決め用流路を設ける必要がないため、観測用流路の位置を割り出し可能としつつ、設計の自由度を向上させることができる。また、フォーカシングなど、観測用流路の位置を割り出すための処理を測定の度に行う手間を省くことができるため、マイクロチップの使用時の制御を簡略化して、検査時間を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0015】
(1.検査装置)
最初に、本実施の形態における検査装置について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は検査装置1の外観構成の一例を示す斜視図であり、
図2は検査装置1の内部構成の一例を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、検査装置1は、マイクロチップ2を載置するためのトレイ10と、図示しないローディング機構によってトレイ10上からマイクロチップ2が搬入される搬送口11と、検査内容や検査対象のデータ等を入力するための操作部12と、検査結果を表示するための表示部13等とを備えている。
【0017】
また、この検査装置1は、
図2に示すように、送液部14と、加熱部15と、電圧印加部18と、検出部16と、駆動制御部17等とを備えている。
【0018】
(1−1.送液部)
送液部14は、マイクロチップ2内の送液を行うためのユニットであり、搬送口11から検査装置1内に搬入されるマイクロチップ2と接続されるようになっている。この送液部14は、マイクロポンプ140、チップ接続部141、駆動液タンク142および駆動液供給部143等を有している。
【0019】
このうち、マイクロポンプ140は、送液部14に1つ以上具備されており、マイクロチップ2内に駆動液146を注入したり、マイクロチップ2内から分析試料などの流体を吸引したりすることで、マイクロチップ2内の送液を行う。なお、マイクロポンプ140が複数具備される場合は、各々のマイクロポンプ140は独立に、或いは連動して駆動可能である。なお、マイクロチップに予め媒質や検体、試薬等を注入してある場合は、必ずしも駆動液を使った送液は不要であり、マイクロポンプのみを動作させて媒質の移動を補助してもよい。試薬や検体の投入のみにマイクロポンプを使用してもよい。
チップ接続部141は、マイクロポンプ140とマイクロチップ2とを接続して連通させる。
【0020】
駆動液タンク142は、駆動液146を貯留しつつ、駆動液供給部143に供給する。この駆動液タンク142は、駆動液146の補充のために駆動液供給部143から取り外して交換可能である。
駆動液供給部143は、駆動液タンク142からマイクロポンプ140に駆動液146を供給する。
【0021】
以上の送液部14においては、チップ接続部141によってマイクロチップ2とマイクロポンプ140とが接続されて連通される。そして、マイクロポンプ140が駆動されると、チップ接続部141を介して駆動液146がマイクロチップ2に注入されるか、或いはマイクロチップ2から吸引される。このとき、マイクロチップ2内の複数の収容部に収容されている検体や試薬等は、駆動液146によってマイクロチップ2内で送液される。これにより、マイクロチップ2内の検体と試薬とが混合されて反応する結果、目的物質の検出や病気の判定等の検査が行われる。
【0022】
(1−2.加熱部)
加熱部15は、マイクロチップ2を特定の複数の温度に加熱するために発熱する。例えば、約95℃の熱変性温度、約55℃のアニーリング温度、約70℃の重合温度の3つの温度にマイクロチップ2を加熱する。これにより、PCR法による遺伝子増幅を行う。加熱部15は、ヒータやペルチエ素子等の通電によって温度を上昇させられる素子、通水によって温度を低下させられる素子等で構成される。
【0023】
(1−3.電圧印加部)
電圧印加部18は、複数の電極を有している。これらの電極は、マイクロチップ2内の液体試料に挿入されて当該液体試料に直接電圧を印加するか、あるいは後述の通電部40に接触して当該通電部40を介して液体試料に電圧を印加することにより、マイクロチップ2内の液体試料に電気泳動を行わせるようになっている。
【0024】
(1−4.検出部)
検出部16は、発光ダイオード(LED)やレーザ等の光源と、フォトダイオード(PD)等の受光部等とで構成され、マイクロチップ2内の反応によって得られる生成液に含まれる標的物質を、マイクロチップ2上の所定位置(後述の検出領域200)で光学的に検出する。光源と受光部との配置は透過型と反射型とがあり、必要に応じて決定されればよい。
【0025】
(1−5.駆動制御部)
駆動制御部17は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成され、検査装置1内の各部の駆動、制御、検出等を行う。
【0027】
図3A,
図3Bに示すように、マイクロチップ2は、互いに貼り合わされた基板3とフィルム4とを備えている。
【0028】
基板3は、フィルム4に対する接合面(以下、内側面3Aとする)に流路用溝30を有している。この流路用溝30は、基板3とフィルム4とが貼り合わされた場合に、フィルム4と協働して微細流路20を形成する。この微細流路20には、検査装置1の検出部16による標的物質の検出対象領域として、検出領域200が設けられている。なお、微細流路20(流路用溝30)の形状は、分析試料、試薬の使用量を少なくできること、成形金型の作製精度、転写性、離型性などを考慮して、幅、深さともに、10μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、微細流路20の幅と深さは、マイクロチップの用途によって決めれば良い。なお、微細流路20の断面の形状は矩形状でも良いし、曲面状でも良い。
【0029】
また、基板3は、厚さ方向に貫通する貫通孔31を複数有している。これらの貫通孔31は、流路用溝30の端部や中途部に形成されており、基板3とフィルム4とが貼り合わされた場合に、微細流路20とマイクロチップ2の外部とを接続する開口部21を形成する。この開口部21は、検査装置1の送液部14に設けられたチップ接続部141(チューブやノズル)と接続されて、ゲルや液体試料、緩衝液などを微細流路20に導入したり、微細流路20から排出したりする。また、この開口部21には、検査装置1における電圧印加部18の電極(図示せず)が挿入可能となっている。なお、開口部21(貫通孔31)の形状は、円形状や矩形状の他、様々な形状であっても良い。また、例えば
図3Cに示すように、基板3における内側面3Aとは反対側の面(以下、外側面3Bとする)において貫通孔31の周囲を筒状に突出させ、チップ接続部141を接続しやすくしても良い。
【0030】
更に、基板3は、流路用溝30の検出領域200に対して位置決めの基準となる位置決め孔部32を1つ以上、本実施の形態においては2つ有している。
この位置決め孔部32は、検査装置1に設けられた固定ピン(図示せず)を挿入されることでマイクロチップ2の位置、ひいては検出領域200の位置を所定位置に固定するものであり、基板3における2つの角部分において厚さ方向に貫通して設けられている。
【0031】
より詳細には、
図4に示すように、位置決め孔部32は、基板3における内側面3Aから外側面3Bに向かって凹設された第1凹部32Aと、外側面3Bから内側面3Aに向かって凹設された第2凹部32Bとが連通して形成されている。
【0032】
このうち、第1凹部32Aは、基板3の厚み方向に一定の内径で形成されており、本実施の形態においては内径が2.0mmとなっている。この第1凹部32Aは、位置決め孔部32の最小径部分32Cをなしており、これにより位置決め孔部32の位置として特定されるようになっている。また、第1凹部32Aの深さは、18μm以上、0.5mm以下となっている。ここで、第1凹部32Aの深さが18μmより小さいと、第2凹部32Bを成形するための柱状の突起部(後述の可動型−突起部606B)と、内側面3Aを成形するための成形面(後述の固定型−成形面605)との間に溶融樹脂が充填され難くなってしまい、最小径が安定しない。深さが0.5mmより大きいと成形後の離型性が低下し、基板3に歪・変形が発生してしまう。
【0033】
一方、第2凹部32Bは第1凹部32Aよりも内径が大きくなっている。ここで、第2凹部32Bが第1凹部32Aよりも内径が大きいとは、第2凹部32Bの先端部(内側面3A側の端部)の内径が、第1凹部32Aの先端部(外側面3B側の端部)の内径よりも大きいことを意味する。
【0034】
なお、本実施の形態においては、以上の第1凹部32A及び第2凹部32Bのうち、第1凹部32Aは基板3の厚み方向に一定の内径となっており、第2凹部32Bは先端側ほど内径が小さくなるよう先細りに形成されているが、成形後の離型性を考慮すると、第1凹部32A及び第2凹部32Bの両方を先細り形状としても良い。また、位置決め孔部32に対して位置決め用の固定ピンを挿入し易くし、位置決め孔部32と固定ピンとのガタツキを防止する観点からは、位置決め孔部32の断面形状は円形が好ましいが、例えば3角形など、多角形としても良い。
【0035】
また、以上2つの位置決め孔部32のうち、一方の位置決め孔部32は、基板3の厚さ方向(位置決め孔部32の深さ方向)に垂直な断面内で、他方の位置決め孔部32を中心とする円周方向の径が当該円周方向の交差方向における径よりも小さくなり、かつ、他方の位置決め孔部32の径と等しくなるよう形成されていることが好ましい。より好ましくは、一方の位置決め孔部32は、他方の位置決め孔部32との隣接方向(
図3Aでは左右方向)における内径が当該隣接方向の直交方向(図中では、上下方向)における内径よりも大きくなるよう形成される。この場合には、間隔の固定された2本の固定ピンを位置決め孔部32に嵌合させてマイクロチップ2の位置を固定する場合に、位置決め精度は維持しつつも、位置決め孔部32に対する固定ピンの嵌め込み作業を容易化することができる。
【0036】
また、
図3A,
図3B,
図3Cに示すように、フィルム4は、本発明におけるカバー部材であり、本実施の形態においてはシート状となっている。フィルム4にも微細流路や孔を設けてもよいが、基板3との接合を確実に行うため、フィルム4は厚くなり過ぎないことが好ましい。検体や試薬、あるいは検査の種類によって必要な時は、電圧印加部18の電極を開口部21(貫通孔31)に挿入して電圧を印加することにより、微細流路20内の試料に電気泳動を行わせる。
【0037】
なお、開口部21の位置や形状は、例えば
図5A,
図5Bや
図6A,
図6Bに示すように、他の態様としても良い。ここで、
図5B,
図6Bは、
図5A,
図6Aにおいて太線で囲まれた部分の内部形状を示す透視図である。
図5A,
図5B,
図5Cのマイクロチップ2では、導電性の通電部40がフィルム4における基板3との対向面のうち、貫通孔31との対向位置からフィルム4の縁部までに亘って設けられている。この通電部40は、フィルム4に対して、印刷等によりパターンニングするとよい。このようなマイクロチップ2によれば、貫通孔31(開口部21)に電極を挿入することなく、フィルム4の縁部から通電部40を介して微細流路20内の流体に電圧を印加することができるため(
図5B中、右側の矢印記号を参照)、複数のマイクロチップ2を順に使用する場合であっても、電極に液体試料が付着して次回のマイクロチップ2に混入してしまうのを防止することができる。また、
図6A,
図6B,
図6Cのマイクロチップ2では、貫通孔31が流路用溝30の各端部と、当該端部の隣接位置とに並んで設けられるとともに、通電部40が、隣接する2つの貫通孔31の対向位置に亘って設けられている。このようなマイクロチップ2によれば、流路用溝30の端部の貫通孔31(開口部21)を用いて液体試料などの供給・排出を行い(
図6B中、左側の矢印記号を参照)、隣接する貫通孔31(開口部21)から通電部40を介して微細流路20内の流体に電圧を印加することができるため(
図6B中、右側の矢印記号を参照)、複数のマイクロチップ2を順に使用する場合であっても、電極に液体試料が付着して次回のマイクロチップ2に混入してしまうのを防止することができる。これらの場合であっても、
図5C,
図6Cに示すように、基板3の外側面3Bにおいては、貫通孔31の周囲を筒状に突出させ、チップ接続部141を接続しやすくしても良い。
【0038】
また、基板3及びフィルム4の外形形状は、ハンドリング、分析しやすい形状であれば良く、平面視において正方形や長方形などの形状が好ましい。1例として、10mm角〜200mm角の大きさであれば良い。また、10mm角〜100mm角の大きさであっても良い。また、流路用溝30を有する基板3の板厚は、成形性を考慮して、0.2mm〜5mmが好ましく、0.5mm〜2mmがより好ましい。流路用溝を覆うための蓋(カバー部材)として機能するフィルム4の厚さは、30μm〜300μmであることが好ましく、50μm〜150μmであることがより好ましい。
【0039】
また、基板3及びフィルム4は、樹脂によって形成される。基板3及びフィルム4に用いられる樹脂に関しては、成形性(転写性、離型性)が良いこと、透明性が高いこと、紫外線や可視光に対する自己蛍光性が低いことなどが条件として挙げられる。例えば、基板3及びフィルム4には熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィンなどを用いることが好ましい。特に好ましいのは、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、環状ポリオレフィンを用いることである。なお、基板3とフィルム4とで、同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。基板3とフィルム4とを同じ種類の材料にした場合には、互いに相溶性があるために、溶融した後に結合し易い。
【0040】
また、基板3及びフィルム4は、熱融着によって接合される。例えば、熱板、熱風、熱ロール、超音波、振動、又はレーザなどを用いて、基板3とフィルム4とを加熱することで接合する。1例として、熱プレス機を用いて、加熱された熱板によって基板3とフィルム4とを挟み、熱板によって圧力を加えて所定時間保持することで、基板3とフィルム4とを接合する。これにより、フィルム4が流路用溝30の蓋(カバー部材)として機能し、流路用溝30とフィルム4とによって微細流路20が形成されて、マイクロチップ2が製造される。なお、基板3とフィルム4とを熱融着するためには、基板3とフィルム4の界面さえ加熱できればよく、超音波、振動、レーザーを用いれば界面のみを加熱できる可能性がある。
【0041】
(3.マイクロチップの製造装置)
続いて、マイクロチップ2の製造装置について説明する。
【0042】
マイクロチップ2の製造装置は、基板3及びフィルム4をそれぞれ形成した後、両者を接合することでマイクロチップ2を製造するようになっており、
図7に示すように、基板3の成形装置5等を備えている。
【0043】
この成形装置5は、ベース50上に固定側プラテン51及び可動側プラテン52を有している。
固定側プラテン51は、ベース50に立設された平板状の部材である。この固定側プラテン51の4隅には柱状のタイバー53が設けられており、固定側プラテン51に対して垂直に延在している。
【0044】
また、可動側プラテン52は、固定側プラテン51に対向して配設された平板状の部材であり、固定側プラテン51に設けられたタイバー53によって4隅で支持されている。この可動側プラテン52は、タイバー53によってガイドされつつ、図示しない駆動機構によって水平方向(図中の矢印A,Ab方向)、つまり固定側プラテン51との接離方向に移動自在となっている。
【0045】
以上の固定側プラテン51及び可動側プラテン52の間には、成形型6が配設されており、可動側プラテン52が矢印A方向に移動することにより成形型6が型締めされ、可動側プラテン52が矢印Ab方向に移動することにより成形型6が型開きされるようになっている。
【0046】
(3−1.成形型)
図8は、成形型6の概略構成を示す断面図であり、成形空間に樹脂が充填された状態を示している。
【0047】
この図に示すように、成形型6は、第1型である固定型60と、当該固定型60に対して接離可能に設けられた第2型である可動型61とを備える成形型であり、これら固定型60及び可動型61が当接することによって、溶融樹脂Jを基板3の形状に成形するための成形空間64を互いとの間に形成するようになっている。なお、本実施の形態においては、成形型6は射出成形によって成形を行うようになっている。具体的には、固定型60及び可動型61の間には、図示しないランナやゲートが形成されるようになっており、これらランナ及びゲートを介して成形空間64内に溶融樹脂が充填されるようになっている。但し、成形型6は射出成形以外の成形方法によって成形を行っても良い。
【0048】
ここで、固定型60は、基板3の内側面3A(フィルム4側の面)を成形するものであり、固定側プラテン51に固定されている。
この固定型60には、内側面3Aの成形面として固定型−成形面605が形成されている。
【0049】
固定型−成形面605は、流路用溝30を成形する突条605Aと、少なくとも位置決め孔部32の第1凹部32Aを成形する柱状の2つの固定型−突起部605Bと、を有している。なお、一方の位置決め孔部32の径に関し、他方の位置決め孔部32を中心とする円周方向の径を、当該円周方向の交差方向における径よりも小さくする場合には、この位置決め孔部32を成形するための固定型−突起部605Bでは、前記円周方向における径を、当該円周方向の交差方向の径よりも小さくする。また、
図8では、固定型60の中央部と外周部とが異なる部材で構成されている様子を図示しているが、単一の部材で構成されることとしても良い。
【0050】
一方、可動型61は、基板3における外側面3B(内側面3Aとは反対側の面)を成形するものであり、可動側プラテン52に固定されている。
この可動型61には、外側面3Bの成形面として可動型−成形面606が形成されている。
【0051】
可動型−成形面606は、少なくとも位置決め孔部32の第2凹部32Bを成形する柱状の2つの可動型−突起部606Bを固定型−突起部605Bの対向位置に有している。この可動型−突起部606Bは、固定型−突起部605Bよりも径の大きい柱状に形成されて当該固定型−突起部605Bの先端に当接し、この固定型−突起部605Bと協働して位置決め孔部32を成形するようになっている。なお、一方の位置決め孔部32の径に関し、他方の位置決め孔部32を中心とする円周方向の径を、当該円周方向の交差方向における径よりも小さくする場合には、この位置決め孔部32を成形するための可動型−突起部606Bでは、前記円周方向における径を、当該円周方向の交差方向の径よりも小さくする。また、以上の可動型61には、成形面から出没可能なイジェクトピン(図示せず)が設けられており、成形品を可動型61から離型させるようになっている。また、
図8では、可動型61の中央部と外周部とが異なる部材で構成されている様子を図示しているが、単一の部材で構成されることとしても良い。
【0052】
なお、以上のように固定型60や可動型61を中央型と外周型とで構成することにより、流路などの微細構造を有する中央型のみを交換することができ、型全体のコスト低減や流路構成の変更に対応させやすくなるという利点がある。
【0053】
以上のような成形型6は、当該成形型6のネガ形状の原型(マスター型)を用い、電鋳加工などによって形成することできる。この場合には、成形型6を交換する度に流路用溝30と位置決め孔部32との位置関係が変化してしまうのを防止することができる。
【0054】
(3−2.基板の製造方法)
続いて、以上の成形型6を用いた基板3の製造方法について説明する。
【0055】
まず、ランナ及びゲートを介して溶融樹脂Jを成形空間64に注入した後、成形空間64内で溶融樹脂Jを加圧しつつ成形する。これにより、溶融樹脂Jが基板3の形状に成形され、内側面3Aとなる面に流路用溝30が形成され、厚み方向に貫通して位置決め孔部32が形成される。
【0056】
次に、成形物が所定温度まで冷却されたら、可動型61を固定型60から離間させることにより、固定型60から成形物を離型させる。
【0057】
次に、可動型61からイジェクトピンを突出させることにより、可動型61から成形物を離型させる。
そして、ゲートによる成形部分を成形物からカットすることにより、基板3が製造される。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、基板3には、内側面3Aに流路用溝30が形成されるとともに、当該流路用溝30に対する位置決め孔部32が厚み方向に貫通して形成されており、内側面3Aを成形する固定型60には、流路用溝30を成形する突条605Aと、少なくとも位置決め孔部32の最小径部分32Cを成形する柱状の固定型−突起部605Bとが具備されるので、位置決め孔部32の最小径部分32C、つまり位置決め孔部32の位置として特定される部分と、流路用溝30とが同一の型(固定型60)によって成形されることとなる。従って、流路用溝30と位置決め孔部32の最小径部分32Cとの位置関係を成形ショット間で一定に維持することができるため、位置決め孔部32の最小径部分32Cの位置に基づいて、微細流路20における検出領域200の位置を正確に割り出すことができる。よって、従来の位置決め用流路を設ける必要がないため、検出領域200の位置を割り出し可能としつつ、基板3の設計の自由度を向上させることができる。また、フォーカシングなど、検出領域200の位置を割り出すための処理を測定の度に行う手間を省くことができるため、マイクロチップ2の使用時の制御を簡略化して、検査時間を短くすることができる。
【0059】
また、基板3には位置決め孔部32が2つ形成されるので、流路用溝30の位置をより正確に割り出すことができる。
【0060】
また、可動型61には、固定型−突起部605Bの先端に当接し、この固定型−突起部605Bと協働して位置決め孔部32を成形する可動型−突起部606Bが具備されているので、位置決め孔部32を固定型−突起部605Bと可動型−突起部606Bとで分担して成形することができる。従って、1つの突起部のみで位置決め孔部32を成形する場合と比較して、突起部の高さを低減することができるため、成形後の離型性を向上させることができる。
また、可動型−突起部606Bは固定型−突起部605Bよりも径の大きい柱状に形成されているので、可動型−突起部606Bと固定型−突起部605Bとの角部が当接して破損してしまうのを防止することができる。
【0061】
また、固定型−突起部605Bよりも径の大きい可動型−突起部606Bが可動型61に具備されるので、可動型−突起部606Bが固定型60に具備される場合と異なり、固定型60からの離型性を向上させることができる。
【0062】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
例えば、固定型60によって内側面3Aに流路用溝30及び第1凹部32Aを成形することとして説明したが、可動型61によって成形することとしても良い。
【0064】
また、固定型−突起部605Bと可動型−突起部606Bとで位置決め孔部32を分担して成形することとして説明したが、
図9に示すように、何れか一方の突起部のみで成形してもよい。ここで、
図9では、固定型−突起部605Bのみで位置決め孔部32を成形する状態を図示している。
【0065】
また、位置決め孔部32が第1凹部32A及び第2凹部32Bを有して基板3に貫通して形成されることとして説明したが、第1凹部32Aのみを有して内側面3Aから厚み方向に凹設されることとしても良い。この場合には、成形型6には固定型−突起部605B及び可動型−突起部606Bのうち、第1凹部32Aを成形する一方の突起部のみが設けられる。
【0066】
なお、明細書、請求の範囲、図面および要約を含む2010年10月29日に出願された日本特許出願No.2010−243639号の全ての開示は、そのまま本出願の一部に組み込まれる。