【実施例】
【0043】
(シュー皮の配合および調製1)
以下の表1−1から1−3に示す配合を用いて、以下に記載する工程に従って、シュー皮を調製した。
【0044】
【表1-1】
【0045】
【表1-2】
【0046】
【表1-3】
【0047】
材料として、カゼインナトリウム(フォンテラ社製)、グルテン(グリコ栄養食品株式会社製)、濃縮大豆たん白(不二製油株式会社製)、グルテン分解物(シラル社製)、トレハロース(株式会社林原製)、およびイスハタ(奥野製薬工業株式会社製)を用いた。カゼインナトリウムは従来の改質剤として、グルテンはグルテン分解の有無の比較のために、そして濃縮大豆たん白はシュー皮の改質に影響すると思われるその乳化性の比較のために用いた。
【0048】
表中の配合量はベーカーズ%で表す。「ベーカーズ%」とは、配合全体量ではなく配合中の粉(薄力粉)の質量を100%として、他の材料の質量を粉に対する割合で表示したものである。すなわち、グルテン分解物1.0%とは、薄力粉が100gである場合にグルテン分解物が1.0gであることを表す。言い換えれば、薄力粉が100質量部に対してグルテン分解物が1質量部である。
【0049】
比較例1〜4および実施例1〜9のシュー皮では、改質剤を以下のように配合した:
比較例1 カゼインナトリウム、粉末グルテン、粉末濃縮大豆たん白、グルテン分解物、トレハロースどれも不使用;
比較例2 薄力粉100質量部に対して、カゼインナトリウム2.5質量部;
比較例3 薄力粉100質量部に対して、グルテン2.5質量部;
比較例4 薄力粉100質量部に対して、濃縮大豆たん白2.5質量部;
実施例1 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.0質量部;
実施例2 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物2.0質量部;
実施例3 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物4.0質量部;
実施例4 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物6.0質量部;
実施例5 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物0.9質量部+トレハロース0.1質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として1質量部);
実施例6 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.9質量部+トレハロース0.1質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が95:5、改質剤全体として2質量部);
実施例7 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物2.7質量部+トレハロース0.3質量部 (グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として3質量部);
実施例8 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物3.4質量部+トレハロース0.6質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が85:15、改質剤全体として4質量部);
実施例9 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物5.4質量部+トレハロース0.6質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として6質量部)。
【0050】
調製工程は以下の通りである:
(1)配合Aを予め混合し、篩がけしておく;
(2)銅鍋に配合Bの水と食塩を加えて加熱し、沸騰し始めたらマーガリンを添加する;
(3)マーガリンが溶解して再沸騰し始めたら火を止め、篩がけ済みの配合Aの混合物を加えて弱火で約1分間攪拌する;
(4)銅鍋を火から下ろし、全卵(配合C)を5回に分けて加えて攪拌してから、配合Dを加えて軽く攪拌する;
(5)得られたシュー生地を絞り袋に充填し、天板上に1個当たり40gで絞り出す;
(6)シュー生地を霧吹き後、オーブン内で200℃にて25分間焼成し、シュー皮を得る;そして
(7)シュー皮を放冷し、密封包装する。
【0051】
(シュー皮の品質評価1)
シュー皮を調製した翌日に、シュー皮の品質を評価した。品質評価のために、比較例1〜4および実施例1〜9から各々8個のシュー皮を用いた。
【0052】
シュー皮のボリュームアップ(膨張性)の評価のために、以下の値を求めた:
シュー皮の高さおよび幅はノギスで採寸した;
シュー皮の体積は、菜種置換法で測定した。菜種置換法とは、一定量の容器を用いて予め計量しておいた菜種を、製造後のシュー皮を入れた同容器に移し、その容器からあふれ出した菜種の体積をメスシリンダーで測定することにより得られた体積をシュー皮の体積とする方法である;
シュー皮の質量を電子天秤で計量し、体積を質量で割って比容積を求めた。
【0053】
食感は、20人のパネリストにて下記の基準にて官能評価した:
ソフトでない(硬い) 0点
ソフトである 1点
20人の平均値を算出して記載し、平均値0.8以上で「ソフトである」との総合判断とした(危険率1%)。
【0054】
結果を以下の表2−1から2−3に示す。
【0055】
【表2-1】
【0056】
【表2-2】
【0057】
【表2-3】
【0058】
改質剤無添加の比較例1のシュー皮と比較して、グルテン分解物を添加した実施例1〜4ならびにグルテン分解物およびトレハロースを添加した実施例5〜9のシュー皮はいずれも、比容積が大きく、ボリュームアップに優れ、そしてソフトな食感であった。特に実施例2〜4および6〜9のシュー皮は、従来用いられていたカゼインナトリウムを添加した比較例2のシュー皮と同等以上のボリュームアップおよびソフトな食感を示した。グルテンを添加した比較例3のシュー皮および濃縮大豆たん白を添加した比較例4のシュー皮では、比較例1のシュー皮と比較して、ボリュームアップおよび食感に特に変化が見られなかった。
【0059】
(シュー皮の配合および調製2)
以下の表3−1から3−3に示す配合を用いて、以下に記載する工程に従って、シュー皮を調製した。
【0060】
【表3-1】
【0061】
【表3-2】
【0062】
【表3-3】
【0063】
用いた材料は、上記の「シュー皮の配合および調製1」と同じである。表中の配合量はベーカーズ%で表す。
【0064】
比較例5〜8および実施例10〜18のシュー皮では、改質剤を以下のように配合した:
比較例5 カゼインナトリウム、粉末グルテン、粉末濃縮大豆たん白、グルテン分解物、トレハロースどれも不使用;
比較例6 薄力粉100質量部に対して、カゼインナトリウム1.0質量部;
比較例7 薄力粉100質量部に対して、グルテン1.0質量部;
比較例8 薄力粉100質量部に対して、濃縮大豆たん白1.0質量部;
実施例10 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物0.5質量部;
実施例11 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.0質量部;
実施例12 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.5質量部;
実施例13 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物2.0質量部;
実施例14 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物0.45質量部+トレハロース0.05質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として0.5質量部);
実施例15 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物0.95質量部+トレハロース0.05質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が95:5、改質剤全体として1質量部);
実施例16 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物0.85質量部+トレハロース0.15質量部 (グルテン分解物とトレハロースとの質量比が85:15、改質剤全体として1質量部);
実施例17 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.35質量部+トレハロース0.15質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として1.5質量部);
実施例18 薄力粉100質量部に対して、グルテン分解物1.8質量部+トレハロース0.2質量部(グルテン分解物とトレハロースとの質量比が90:10、改質剤全体として2質量部)。
【0065】
調製工程は以下の通りである:
(1)配合Aの薄力粉を篩がけしておく;
(2)銅鍋にマーガリンを除く配合Bを加えて加熱し、沸騰し始めたらマーガリンを添加する;
(3)マーガリンが溶解して再沸騰し始めたら火を止め、篩がけ済みの配合A(薄力粉)を加えて弱火で約1分間攪拌する;
(4)銅鍋を火から下ろし、全卵(配合C)を5回に分けて加えて攪拌してから、配合Dを加えて軽く攪拌する;
(5)得られたシュー生地を絞り袋に充填し、天板上に1個当たり40gで絞り出す;
(6)シュー生地を霧吹き後、オーブン内で200℃にて25分間焼成し、シュー皮を得る;そして
(7)シュー皮を放冷し、密封包装する。
【0066】
(シュー皮の品質評価2)
シュー皮を調製した翌日に、シュー皮の品質を評価した。品質評価のために、比較例5〜8および実施例10〜18から各々8個のシュー皮を用いた。評価項目および評価方法は、上記の「シュー皮の品質評価1」と同じである。
【0067】
結果を以下の表4−1から4−3に示す。
【0068】
【表4-1】
【0069】
【表4-2】
【0070】
【表4-3】
【0071】
改質剤無添加の比較例5のシュー皮と比較して、グルテン分解物を添加した実施例10〜13ならびにグルテン分解物およびトレハロースを添加した実施例14〜18のシュー皮はいずれも、比容積が大きく、ボリュームアップに優れ、そしてソフトな食感であった。特に実施例11〜13および15〜18のシュー皮は、従来用いられていたカゼインナトリウムを添加した比較例6のシュー皮と同等以上のボリュームアップおよびソフトな食感を示した。グルテンを添加した比較例7のシュー皮および濃縮大豆たん白を添加した比較例8のシュー皮では、比較例5のシュー皮と比較して、ボリュームアップおよび食感に特に変化が見られなかった。
【0072】
実施例10〜18は、実施例1〜9と比較して改質剤の添加量が少ないにも関わらず、
これらの実施例と同様に、十分にシュー皮のボリュームアップおよび食感改良効果が見られた。