【実施例1】
【0015】
図1を参照して、本発明の実施例1の調律器2の動作を詳細に説明する。
図1は本実施例の調律器2の構成を示すブロック図である。調律器2は、マイクロコンピュータなどから構成され、調律器2の全体の動作を司る。マイクロコンピュータには、調律器2全体の動作制御のプログラムなどが格納されたリード・オンリー・メモリや、プログラムを実行する際に必要なワーキング・エリアとしてのランダム・アクセス・メモリ、およびクロック発振器や時間計測のタイマ機能などから構成される。
【0016】
本実施例の調律器2は、基本周期抽出部10とピッチ誤差算出部20と表示制御部30と表示処理部40と発光素子50を備える。表示制御部30は、低状態表示手段31と高状態表示手段32と一致状態表示手段33を備える。表示処理部40は、メーター表示手段41とストロボ表示手段42を備える。発光素子50は、第1の方向から第1の方向とは反対方向の第2の方向へ一列に配列されたm+1個のLED51
0〜LED51
mを備える。
【0017】
以下、実際に行われる手続きの順に説明してゆく。楽器1により演奏された音は、例えばマイクロホンまたは電気弦楽器に用いられるピックアップ等により楽音信号に変換され、入力端子を介して調律器2へ入力される。
【0018】
基本周期抽出部10は、調律器2に入力された楽音信号の基本周期を抽出する。基本周期とは、楽音に含まれる信号の中の最も周期が長い基本波成分の周期である。ピッチ誤差算出部20は、予め定められている標準周期と基本周期抽出部10の抽出した基本周期とを比較し、入力中の楽音信号のピッチ誤差を算出する。基本周期の抽出方法およびピッチ誤差の算出方法は周知のいかなる方法をも適用することができる。例えば、「特開2003−099034号公報」に記載の方法を適用することができる。ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差は、表示制御部30に入力される。
【0019】
表示制御部30は、基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期より長いことを検出した場合には、低状態表示手段31を実行させる。基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期より短いことを検出した場合には、高状態表示手段32を実行させる。基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期と等しいことを検出した場合には、一致状態表示手段33を実行させる。
【0020】
低状態表示手段31は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差を、表示処理部40を制御することにより、発光素子50に表示する。まず、低状態表示手段31は発光素子50の中央のLED51
0を発光させる。次に、発光素子50の中央のLED51
0より第2の方向側において、メーター表示手段41の発光位置を発光させる。そして、発光素子50の中央のLED51
0より第1の方向側において、ストロボ表示手段42の発光位置を発光させる。
【0021】
図2(A)に、調律器2が入力された楽音信号のピッチが標準よりも低い状態を表示する方法の一例を示す。ここでは、第1の方向は右方向であり、第2の方向は左方向である。発光素子50の中央のLED51
0をピッチ誤差0セントの位置とし、左端のLED51
1はピッチ誤差−50セントの位置とする。メーター表示手段41は、中央のLED51
0から左方向へ発光位置を順次移動させ、発光位置と中央のLED51
0との間隔がピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差に達した状態で発光位置を停止させる。ストロボ表示手段42は、右端のLED51
mから中央のLED51
0へ発光位置を順次移動させ、発光位置が中央のLED51
0へ到達した後は発光位置を右端のLED51
mへ戻し、再度右端のLED51
mから中央のLED51
0へ発光位置を順次移動させる。このとき、ピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差の絶対値が大きいほど発光位置の移動速度が早くなるように制御する。発光位置の移動速度の制御方法は、周知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、特許文献3に記載された発光位置の移動速度の制御方法を利用することができる。
【0022】
高状態表示手段32は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差を、表示処理部40を制御することにより、発光素子50に表示する。まず、高状態表示手段32は発光素子50の中央のLED51
0を発光させる。次に、発光素子50の中央のLED51
0より第1の方向側において、メーター表示手段41の発光位置を発光させる。そして、発光素子50の中央のLED51
0より第2の方向側において、ストロボ表示手段42の発光位置を発光させる。
【0023】
図2(B)に、調律器2が入力された楽音信号のピッチが標準よりも高い状態を表示する方法の一例を示す。発光素子50の中央のLED51
0をピッチ誤差0セントの位置とし、右端のLED51
mはピッチ誤差+50セントの位置とする。メーター表示手段41は、中央のLED51
0から右方向へ発光位置を順次移動させ、発光位置と中央のLED51
0との間隔がピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差に達した状態で発光位置を停止させる。ストロボ表示手段42は、左端のLED51
1から中央のLED51
0へ発光位置を順次移動させ、発光位置が中央のLED51
0へ到達した後は発光位置を左端のLED51
1へ戻し、再度左端のLED51
1から中央のLED51
0へ発光位置を順次移動させる。このとき、ピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差の絶対値が大きいほど発光位置の移動速度が早くなるように制御する。
【0024】
一致状態表示手段33は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差が0セントであることを、表示処理部40を制御することにより、発光素子50に表示する。まず、一致状態表示手段33は発光素子50の中央のLED51
0を発光させる。低状態表示手段31が直前に実行されていた場合には、発光素子50の中央のLED51
0より第2の方向側において、ストロボ表示手段42の発光位置を直前の発光位置から中央のLED51
0の方向へ順次移動させる。高状態表示手段32が直前に実行されていた場合には、発光素子50の中央のLED51
0より第1の方向側において、ストロボ表示手段42の発光位置を直前の発光位置から中央のLED51
0の方向へ順次移動させる。いずれの場合においても、ストロボ表示手段42の発光位置が中央のLED51
0へ達した状態で停止させる。
【0025】
図2(C)に、調律器2が入力された楽音信号のピッチが標準と一致している状態を表示する方法の一例を示す。メーター表示手段41は、中央のLED51
0を発光させる。ストロボ表示手段42は、一致状態表示手段33が実行される直前の発光位置から中央のLED51
0の方向へ発光位置を順次移動させる。したがって、低状態表示手段31が直前に実行されていた場合には、中央のLED51
0より右側から左方向へ発光位置が移動する。高状態表示手段32が直前に実行されていた場合には、中央のLED51
0より左側から右方向へ発光位置が移動する。発光位置が中央のLED51
0へ達した状態で発光位置を停止させる。
【0026】
このように、本発明の調律器によれば、一列に配列された一本のLED列を用いて、メーター表示とストロボ表示の両方を同時に表示することができる。利用者は目的とする奏法で必要とする調律精度や自分にとっての使いやすさ等を基準にいずれの表示を見ながらでも調律を行うこともできる。もしくは、メーター表示の方に注目しながら大まかに調律を合わせ、ストロボ表示の方に注目してより精度よく調律を合わせるようにすることもできる。本発明の調律器は必要とする発光素子が一本でよいので部品点数を削減することができる。そのため、調律器を小型化することができ、メーター表示とストロボ表示の両方を同時に表示する調律器を安価に実現することが可能となる。
【0027】
[変形例]
図3を参照して、本発明の変形例の調律器2’の動作を詳細に説明する。
図3は本変形例の調律器2’の構成を示すブロック図である。調律器2’は、調律器2と同様に、マイクロコンピュータなどから構成される。
【0028】
本変形例の調律器2’は、基本周期抽出部10とピッチ誤差算出部20と表示制御部30と表示処理部40’と発光素子50’を備える。表示処理部40’は、メーター表示手段41’とストロボ表示手段42’を備える。発光素子50’は、第1の方向から第1の方向とは反対方向の第2の方向へ一列に配列されたm+1個の多色LED52
0〜多色LED52
mを備える。多色LED52
0〜多色LED52
mは2種以上の任意の色で発光可能な発光素子である。以下では、発光素子50’が発光可能な2種の色を第1の色と第2の色として説明する。第1の色と第2の色はLEDにより発光可能な2色であればいかなる色を用いてもよいが、判別しやすいように近くない色であることが望ましい。例えば第1の色は赤とし、第2の色は青とすることができる。
【0029】
以下、実際に行われる手続きの順に説明してゆく。基本周期抽出部10は、調律器2に入力された楽音信号の基本周期を抽出する。ピッチ誤差算出部20は、予め定められている標準周期と基本周期抽出部10の抽出した基本周期とを比較し、入力中の楽音信号のピッチ誤差を算出する。表示制御部30は、基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期より長いことを検出した場合には、低状態表示手段31を実行させる。基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期より短いことを検出した場合には、高状態表示手段32を実行させる。基本周期抽出部10の検出した基本周期が予め定められている標準周期と等しいことを検出した場合には、一致状態表示手段33を実行させる。
【0030】
低状態表示手段31は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差を、表示処理部40’を制御することにより、発光素子50’に表示する。まず、低状態表示手段31は発光素子50’の中央の多色LED52
0を第1の色で発光させる。次に、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第2の方向側において、メーター表示手段41’の発光位置を第1の色で発光させる。そして、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第1の方向側において、ストロボ表示手段42’の発光位置を第2の色で発光させる。
【0031】
例えば、実施例1と同様に、第1の方向は右方向であり、第2の方向は左方向であるとする。発光素子50’の中央の多色LED52
0をピッチ誤差0セントの位置とし、左端の多色LED52
1はピッチ誤差−50セントの位置とする。メーター表示手段41’は、中央の多色LED52
0から左方向へ発光位置を順次移動させ、発光位置と中央の多色LED52
0との間隔がピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差に達した状態で発光位置を停止させる。ストロボ表示手段42’は、右端の多色LED52
mから中央の多色LED52
0へ発光位置を順次移動させ、発光位置が中央の多色LED52
0へ到達した後は発光位置を右端の多色LED52
mへ戻し、再度右端の多色LED52
mから中央の多色LED52
0へ発光位置を順次移動させる。このとき、ピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差の絶対値が大きいほど発光位置の移動速度が早くなるように制御する。発光位置の移動速度の制御方法は、周知のいかなる方法を用いてもよく、例えば、特許文献3に記載された発光位置の移動速度の制御方法を利用することができる。
【0032】
高状態表示手段32は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差を、表示処理部40’を制御することにより、発光素子50’に表示する。まず、高状態表示手段32は発光素子50’の中央の多色LED52
0を第1の色で発光させる。次に、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第1の方向側において、メーター表示手段41’の発光位置を第1の色で発光させる。そして、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第2の方向側において、ストロボ表示手段42’の発光位置を第2の色で発光させる。
【0033】
例えば、メーター表示手段41’は、中央の多色LED52
0から右方向へ発光位置を順次移動させ、発光位置と中央の多色LED52
0との間隔がピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差に達した状態で発光位置を停止させる。ストロボ表示手段42’は、左端の多色LED52
1から中央の多色LED52
0へ発光位置を順次移動させ、発光位置が中央の多色LED52
0へ到達した後は発光位置を左端の多色LED52
1へ戻し、再度左端の多色LED52
1から中央の多色LED52
0へ発光位置を順次移動させる。このとき、ピッチ誤差算出部20の算出するピッチ誤差の絶対値が大きいほど発光位置の移動速度が早くなるように制御する。
【0034】
一致状態表示手段33は、ピッチ誤差算出部20の算出したピッチ誤差が0セントであることを、表示処理部40’を制御することにより、発光素子50’に表示する。まず、一致状態表示手段33は発光素子50’の中央の多色LED52
0を第1の色で発光させる。低状態表示手段31が直前に実行されていた場合には、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第2の方向側において、ストロボ表示手段42’の発光位置を直前の発光位置において第2の色で発光させ、中央の多色LED52
0の方向へ順次移動させる。高状態表示手段32が直前に実行されていた場合には、発光素子50’の中央の多色LED52
0より第1の方向側において、ストロボ表示手段42’の発光位置を直前の発光位置において第2の色で発光させ、中央の多色LED52
0の方向へ順次移動させる。いずれの場合においても、ストロボ表示手段42’の発光位置が中央の多色LED52
0へ達した状態で停止させる。この際、中央の多色LED52
0の発光色は、第1の色、第2の色、第1の色と第2の色の混色のいずれで発光させてもよい。
【0035】
なお、本変形例では、少なくとも第1の色と、第1の色とは異なる第2の色で発光可能な多色LEDを一列に配列するように構成した例を用いて説明したが、例えば、第1の色で発光する単色LEDと第2の色で発光する単色LEDをそれぞれ一列に隣接するように配列し、例えば、メーター表示手段41’は第1の色で発光する単色LEDを発光させ、ストロボ表示手段42’は第2の色で発光する単色LEDを発光させるように構成してもよい。
【0036】
このように、本変形例の調律器によれば、メーター表示とストロボ表示がそれぞれ異なる色により発光するため、いずれの発光位置がメーター表示であり、いずれの発光位置がストロボ表示であるかを容易に区別することができ、視認性を向上することができる。例えば、ピッチ誤差がわずかでありストロボ表示の移動速度が遅い状態などでは、周波数が高い方にずれているのか低い方にずれているのかを判別するときに有用である。