【実施例】
【0048】
以下の実施例は、例示の目的のみのために提供され、決して本明細書に記載の組成物や方法の範囲を制限するものではない。開示される組成物や方法は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコルおよび試薬に制限されるものではない。特に明記しない限り、各々の例において、提示される実施例に記載された作業の実施には標準的な材料および方法を用いた。本明細書で引用される全ての発明および参考文献を、全体として参照することにより本明細書に組み込む。
【0049】
特に指示がない限り、本発明の実施では、化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養および遺伝子組換生物学の通常の技術を用いており、それは、当該技術分野の技術範囲内のものである(Ral-time PCR in Microbiology: From Diagnosis to Characterization (I. M. Makay ed. 2007); Nolan, T., et al. (2006) Quantification of mRNA using real-time RT-PCR. Nature Protocols 1, 1559-1582; Maniatis, T., et al. (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.); Sambrook, J., et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2
nd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.); Ausubel, F. M., et al. (1992) Current Protocols in Molecular Biology, (J. Wiley and Sons, NY); Glover, D. (1985) DNA Cloning, I and II (Oxford Press); Anand, R. (1992) Techniques for the Analysis of Complex Genomes, (Academic Press); Guthrie, G. and Fink, G. R. (1991) Guide to Yease Genetics and Molecular Biology (Academic Press); Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.); Jakoby, W. B. and Pastan, I. H. (eds.) (1979) Cell Culture. Methods in Enzymology, Vol. 58 (Academic Press, Inc., Harcourt Brace Jovanovich (NY); Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986); Hogan et al. (eds) (1994) Manipulating the Mouse Embryo; A Laboratory Manual, 2
nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.) などを参照のこと)。特に指示がない限り、本発明の実施では、化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNA、遺伝学および免疫学の従来技術を用いている(Maniatis et al., 1982; Sambrook et al., 2001; Ausubel et al., 1992; Glover, 1985; Anand, 1992; Guthrie and Fink, 1991などを参照のこと)。
【0050】
本明細書にて教示される特徴事項に関し、先行発明による前記の開示に先行する権限がないことを認めると解釈されるものではない。如何なる参考文献も、従来技術を構成しているとは認められない。参考文献の考察には、その著者が何を主張しているのかが述べられており、出願人はその引用書類の正確性や適切性に対して意義を申し立てる権利を保有する。多くの出版物が本明細書に引用されているが、そのような出典は、どの出版物も従来技術における一般常識の一部をなしているという承認を構成していないことが明らかに理解されるであろう。
【0051】
(実施例1−rRNA前駆体をベースとした細胞生死判別試験の計画)
【0052】
rRNA前駆体のプールは、環境中の新しい栄養素を識別する細菌によって迅速に補充される。
図1に示すとおり、大腸菌(E. coli)において、16S rRNA前駆体のプールは、定常期細胞の栄養を向上させた後に、補充される。引き続き
図1に関して、時間0の時に、大腸菌の一晩培養物を新鮮なLB培地で20倍に希釈した(矢印)。希釈の前後の時点で光学密度を記録し、rRNA前駆体および成熟16S rRNAの含有量について化学発光サンドイッチハイブリダイゼーションアッセイによって試料を分析した。白丸は培養物のOD600(右軸)、白三角形はOD600当りの16S rRNA前駆体(左軸)、黒三角形はOD600当りの成熟16S rRNAである。3つの同時に実行した培養物の平均・標準偏差を
図1に示す。
【0053】
30分ごとに分裂および倍増し、rRNAの高いコピー数を有する大腸菌とは対照的に、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)BCGは約24時間ごとに倍増し、rRNAコピーが少ない。それにもかかわらず、rRNA前駆体の補充は、この生命体に対する1分裂時間以内の栄養的向上で明確に視認できる。
図2は、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)BCGで対して実施された試験におけるそれを示しており、ここでは、rRNA前駆体の検出にスロットブロットハイブリダイゼーションアッセイを用いた(黒丸)。引き続き
図2に関して、矢印にて示された時間に、定常期のマイコバクテリウム・ボビス細胞を新鮮な7H10培地で希釈した。栄養的刺激の前後で、rRNA前駆体のコピー数と細胞密度を記録した。黒丸は、ゲノムDNAに対するrRNA前駆体の比率を示す。白三角形は、マイコバクテリウム・ボビス培地のOD600を示す。細菌性細胞中のrRNA前駆体は、全rRNAの4〜20%と豊富にあるため、増幅せずに直接検出することができた。結果として、rRNA前駆体の検出の感度はゲノムDNAの検出のそれを超えている。
【0054】
(実施例2−rRNA前駆体のレシオメトリック分析)
【0055】
RPA試験を、人の疾患を引き起こす疑いのある、飲料水から得られる2つの細菌性病原体用に開発した。そのモデルとなる種は、迅速に増殖するグラム陰性のエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)細菌と、ゆっくりと増殖するマイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)放線菌であった。プロモーターに隣接した領域はrRNA前駆体を活発に転写する細胞が豊富であろうと仮定し、両種ともに、rRNA前駆体の5’リーダー領域(成熟16S rRNAの5’末端のすぐ上流の配列)をターゲットとした。プライマー対は成熟rRNAの5’末端をまたいでいたので、テンプレートとして損傷のないrRNA前駆体が増幅に必要であった。逆方向プライマーは、成熟rRNAの半保存的な領域を認識した。順方向プライマーは、5’リーダー内の種特異的な配列を認識した。
【0056】
マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)の順方向および逆方向プライマーは、成熟16S rRNA の5’末端をまたいだ予測される237bpの増幅産物を生成するように設計したので、テンプレートとして損傷のない16S rRNA前駆体が首尾よい増幅に必要であった。cDNAの合成は、成熟rRNAの配列 5’-GCCCGCACGCTCACAGTTAAG-3’(配列番号:3)で開始した。順方向および逆方向のPCRのプライマーは、それぞれ5’-TTGGCCATACCTAGCACTCC-3’(配列番号:1)および5’-GATTGCCCACGTGTTACTCA-3’(配列番号:2)であった。逆方向プライマーは成熟rRNAの配列内にあり、一方、順方向プライマーはETS-1にあるサイトを認識した。ゲル電気泳動によるPCRでは、15個のマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)の臨床分離株および4個のマイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)の臨床分離株の核酸に適用したとき、BLAST分析で特異的に予測された種と一致した、予想通りの大きさの生成物を一貫して産出した。これら2つの近縁の種は、マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(M. avium complex、MAC)として知られる、臨床的に関連した群を含む。この反応を、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・スメグマチス(M. smegmatis)、マイコバクテリウム・テラエ(M. terrae)、マイコバクテリウム・ガストリ(M. gastri)、マイコバクテリウム・ノンクロモジェニカム(M. nonchromogenicum)、マイコバクテリウム・フレイ(M. phlei)およびマイコバクテリウム・バッカエ(M. vaccae)に適用したときには、生成物は何も観察されなかった(データは図示せず)。これらの観察により、rRNA前駆体の分析における系統発生特異性がいかに有用であるかがわかる。
【0057】
エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)の順方向および逆方向プライマーは、予測された189bpの増幅産物を生成した。成熟rRNAの配列 5’-CTACAAGACTCTAGCTGGACAGT-3’(配列番号:6)により、cDNAの合成を開始した。順方向および逆方向のPCRのプライマーは、それぞれ5’-ATTGAGCCGCCTTAACAGG-3’(配列番号:4)および5’-AACTGTTATCCCCCTCGAC-3’(配列番号:5)であった。NCBIの非冗長データベースに対して行われたBLAST分析では、エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)以外に順方向プライマーとの一致が一つも発見されなかった。近縁種のエロモナス・サルモニシダA449(A. salmonicida A449)は、相同配列を有していなかった。
【0058】
栄養的刺激下におけるrRNA前駆体の補充についての経時変化を評価するため、定常期初期のエロモナス・ハイドロフィラ ATCC 7966(A.hydrophila ATCC 7966)細胞を洗浄し、オートクレーブ処理した水道水(ATW)中に再懸濁し、曝気とともに28℃で7日間培養した。また、定常期初期のMAH菌株HMC02の細胞を洗浄し、ATW中に再懸濁し、曝気とともに37℃で14日間培養した。これらの条件は、刺激された水供給環境でrRNA前駆体のプールを枯渇させるように設計した。RPAを実施するため、水分不足型の細菌を2つのアリコートに分割し、遠心分離した。一方のペレットを培地(栄養的刺激)に、他方をATW(コントロール)中に再懸濁した。最終的な細胞密度はおよそ10
6 cfu/mL であった。エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)の栄養的刺激には普通ブイヨンを用い、MAHには10%のADCが補給されたミドルブルック7H9培地を用いた。それぞれの期間培養したあと、細胞を高エネルギービードビーティングで溶解し、酸性のフェノール−クロロホルムによってRNAを分離し、RT-qPCRでrRNA前駆体を測定した。ゲノムDNAの検量線に対する標準化を行った後、栄養的に刺激された試料とコントロール試料中のRT-qPCRの値の比を算出した。両生命体において、rRNA前駆体の刺激はかなり迅速であった。エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)における一貫したrRNA前駆体の増加には、およそ15分の栄養的刺激で十分であった。世代時間が20時間を超えるほどの、増殖の遅いマイコバクテリウム・アビウム(M. avium)に関しては、rRNA前駆体の最大の刺激におよそ4時間を要した。両生命体にとって、これらの期間は1世代時間よりも短い。
【0059】
図3は、水分不足型エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)(A)およびマイコバクテリウム・アビウム・ストレイン104(M. avium strain 104)(B)の細胞における、rRNA前駆体の栄養的刺激の経時変化を示している。rRNA前駆体の刺激比率の値は、RT-qPCRによって測定される、コントロール試料に対する刺激された試料中のrRNA前駆体の比率である。この値は、ある時点ごとでの2より多い実験の平均および標準偏差である。抽出したRNAに対するRT-qPCRの実施には、最初にスーパースクリプトIIIシステム(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用いて相補DNA(cDNA)を生成させ、Qiagen PCR精製キット(Cat# 28104, Qiagen Inc., Valencia, CA)を用いて洗浄した。cDNAの増幅には、Applied Biosystems (ABI) Power SYBR Green mix (Applied Biosystems Inc., Foster City, CA) を用いた。定量的な読み出し情報を確保するため、2つの異なる希釈で3回の反応を実施した。増幅は、ABI Prism RT-7500の96ウェルプレートで、「9600 emulation」を用い、10分95℃および(15秒95℃、30秒60℃、30秒72℃)×40サイクルの条件で行った。Ct閾値の設定には、ABIのSDSソフトウェアを用いた。
【0060】
(実施例3−rRNA前駆体の刺激比率と細胞の生存との相関)
【0061】
RPAの生存している細胞に対する特異性を評価するため、次亜塩素酸ソーダ処理を用い、生存している細胞と不活性細胞の比率を変化させたエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)細胞の懸濁液を生成させた。塩素暴露の後、その比率を生菌プレーティングによって定量化し、およそ1×10
6 cfu/mLの投入密度に対する生存率として表した。塩素処理されたおよび未処理の細胞懸濁液に対してRPAを実施するため、対のアリコートを遠心分離し、細胞のペレットを水(コントロール試料)または普通ブイヨン(刺激された試料)中に再懸濁した。1時間の栄養的刺激の後、rRNA前駆体の刺激比率を測定した。いくつかの試験においては、刺激された試料およびコントロール試料中のゲノムDNAについてもqPCRで定量化した。これにより、RPAの生存している細胞に対する特異性について、従来のDNAのqPCRで見られる特異性と比較して評価できるようになった。
【0062】
表1に、ゲノムDNAおよびrRNA前駆体の測定を行った2つの試験結果を示す。1回目の試験では、生存率が96.3%、26.9%および0.02%である試料が、3±1SD(標準偏差)よりも大きい値のrRNA前駆体の刺激比率を示した。生存している細胞が検出されない試料(生存率0%)に関しては、統計的に1.0を超えないrRNA前駆体の刺激比率を示した。したがって、RPAは、最大約99.98%の標的微生物が死滅している試料において、有意なrRNA前駆体の刺激比率の値を示した。その一方、qPCRによるエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)のゲノムDNAの検出に関しては、細胞生存率にかかわらず、全ての試料において強い陽性であった。さらに、栄養的に刺激されたアリコートとコントロールアリコートのDNAシグナルには、違いが見られなかった(図示せず)。2回目の試験において、同様の結果が確認された(表1)。この実施例から、試験1における2mg/lの次亜塩素酸塩で処理された試料のように、不活性細胞の方が5000倍以上多く存在していたとしても、生存している細胞に対するRPAの感度がいかに高いかがわかる。
【表1】
1 およそ1×10
6のインプット細菌に対して標準化した。
2 反復実施した3試料の平均±標準偏差。
【0063】
表1のプロトコルを用いた4つの試験において、生存率を変化させた、合計18個の塩素処理されたおよび未処理の試料に対し、RPAを適用した。コロニー形成単位が検出されない試料において観察されたrRNA前駆体の刺激比率は、コロニー形成単位が検出される試料において観察されたそれよりも著しく低かった(マン・ホイットニーのU検定によるp=0.0026)(
図4A)。2つの群の間には多少の重複があったが、その重複は、刺激されたまたは刺激されない試料中のゲノムDNAを定量化したときに観察されたそれよりも著しく小さいものであった(
図4B)。生存性とDNA刺激比率との間には、有意な相関が見られなかった。さらに具体的には、
図4は、生存しているエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)細胞の存在と、rRNA前駆体の刺激比率(A)、およびqPCRによって定量化される次亜塩素酸塩処理された実験懸濁液中のゲノムDNA(B)との相関を示している。rRNA前駆体の刺激比率(A)とは、コントロール試料に対する刺激された試料中のrRNA前駆体の比率であり、RT-qPCRによって測定される。この値は、試料ごとの3回の測定の平均である。ゲノムDNAのコピー数(B)は、ゲノムDNAの検量線に対して標準化し、qPCRによって定量化した。栄養的に刺激された試料(白四角形)および刺激されていない試料(白三角形)中のDNAを測定した。
【0064】
(実施例4−RPAアッセイのフィールドテスト)
【0065】
エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)は、一般的な表面水の阻害剤として、RPAのフィールドテストにとって都合のよいモデルである。ワシントン州のシアトルにある淡水および海水のサイトから、試料を採取した。各試料の一部をオートクレーブ処理し、不活性のコントロールを作り出した。オートクレーブ処理した、およびオートクレーブ処理していない試料(それぞれ300 mL)を、ろ過により濃縮した。再懸濁の後、普通ブイヨン(刺激された試料)または水(コントロール)で2つのアリコートを2倍希釈した。1時間培養したあと、遠心分離によって細菌や微粒子を濃縮し、その後、ペレット中のエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)のrRNA前駆体をRT-qPCRで測定した。標準的な方法の後、生菌プレーティングによって、試料中に生存しているエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)の数を測定した。
【表2】
1試料ごとに4回以上反復実施した測定の平均・標準偏差。
【0066】
合計で、淡水試料3つおよび海水試料1つを分析した。淡水試料は、280〜798 cfu/mLの範囲の生存しているエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)を生成した。それらの全てが、陽性のRPAのシグナルを示した(表2)。オートクレーブ処理をした試料は全てコロニー形成単位を生成せず、これらの試料中からはエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)のrRNA前駆体が検出されなかった。海水試料のエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)は6 cfu/mLであったが、エロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)のrRNA前駆体は、オートクレーブ処理の有無および試料の刺激されている/されていないにかかわらず、検出されなかった。
【0067】
この結果は、環境試料中の生存している微生物を特異的に検出する手段としてRPAが利用できることを裏付けている。RPA法を用いて、死滅した細菌性細胞やDNAだけを含む試料において観察される、偽陽性結果を除外してもよい。また、RPAを使用することで、試料またはPCR試薬の実験室汚染によって引き起こされる偽陽性を低減することができる。さらには、RPAは頑強であり、全ての細菌の生理的特徴の上に成り立っており、それ単独でまたは他の手段の補助として、食物や水の安全性分析において有用である。
【0068】
(実施例5−RPAの生物学的な感度)
【0069】
RPAを用いて、ゲノムDNAの検出に対するアッセイの感度を改善してもよい。
図5は、280 cfu/mLの生存しているエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)を含む単一の淡水湖の試料(表2の試料A2)に由来する、対の刺激されたアリコートおよびコントロールアリコートに対して行われた、反復のRT-qPCR反応の結果を示している。引き続き
図5に関して、ワシントン州シアトルのレイク・ユニオンの試料を2つのアリコートに分割し、その一方を普通ブイヨンで刺激し(黒い棒グラフ)、他方をコントロールとしてATW中に再懸濁した(白い棒グラフ)。
図5に示す結果は、サイクル閾値(Ct)とゲノムDNA検量線とを比較して算出された、試料1 mLあたりのおおよそのrRNA前駆体のコピー数として表されている。これらの各々の技術的反復において、刺激された試料中のrRNA前駆体シグナルは、コントロール試料中のそれよりも大きく上回った。
【0070】
表2におけるCt値は、どれも32〜43の範囲内にあり、すなわちシグナルが不明確で脆弱であった。これは、濃縮表面水によく見られるPCR阻害物に起因していた可能性が最も高い。これらの制限にかかわらず、刺激された試料中におけるrRNA前駆体シグナルの一貫した向上により生存しているエロモナス・ハイドロフィラ(A. hydrophila)細胞が存在するとの結論の確信が強まるので、結果は明らかに陽性であった。