特許第5768284号(P5768284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768284
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ用発泡体ゴム材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20150806BHJP
   B60R 13/06 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CEQ
   B60R13/06
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-225751(P2013-225751)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-111731(P2014-111731A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2013年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-244775(P2012-244775)
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】木島 道夫
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−106543(JP,A)
【文献】 特開2012−017452(JP,A)
【文献】 特開昭56−016519(JP,A)
【文献】 特開2007−308723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00〜 9/42
B60J 1/02
1/10
1/16〜 1/18
5/00
B60R13/06
C08K 3/00〜 13/08
C08L 1/00〜101/14
C08G18/00〜 18/87
71/00〜 71/04
B29C67/20〜 67/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50%の圧縮量の圧縮時(往路)の荷重に対する開放時(復路)の荷重の割合を示す変化率〔変化率(%)=(開放時の荷重/圧縮時の荷重)×100〕が50%以下である架橋ゴムスポンジ材からなり、前記架橋ゴムスポンジ材にはテルペン系樹脂が配合され、ウェザーストリップと一体に押出し成形されることを特徴とするウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【請求項2】
50%の圧縮量の圧縮時(往路)の荷重が10N/cm以下であり、開放時(復路)の荷重が3N/cm以下である、請求項1記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【請求項3】
エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを含有する請求項1又は2記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【請求項4】
水の密度(1.0g/cm)に対する比重が0.05〜0.40である請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【請求項5】
吸水率が1〜100%であり、かつ、標準温度(23℃)におけるtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)が0.125以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡体ゴム材料からなるウェザーストリップ用シーラント部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はウェザーストリップ用発泡体ゴム材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体ゴム材料はシーラント部材として、トランク用ウェザーストリップ、ドアオープニング用ウェザーストリップなど、各種ウェザーストリップ製品の止水性能を必要とする部位に適用されている。
止水機能部位には不乾性シーラントを適用する製品が多くを占めているが、不乾性シーラントにも、1)製品勘合部に注入する工程で、高額な特殊設備を必要とするため製造コストが高い、2)注入量にバラツキが発生する、3)車体組み付け時に、一度組み付けるとシーラントが車体側に付着するため再組み付けができない、4)圧縮永久歪が悪い、等の問題がある。
【0003】
特許文献1は、この問題に対処したものであり、ガラス転移点が−10℃以下の合成樹脂系又はゴム系の基材であるとともに発泡した状態である粘着剤から形成されたシーラント部材が開示されており、フランジを保持する力が強く、再組付けが容易であると記載されている。
しかしながら、このゴム材は架橋されていないため、圧縮永久歪が悪いという問題がある。
【0004】
一方で、ウェザーストリップ用シーラント部材として、架橋ゴムスポンジ材が用いられているが、このシーラント部材がフランジからの“浮き上がり”という状態になり、止水性能を満足しない場合が発生するという問題があり、そのため、適用可能な製品断面及びスポンジ部の形状に制約があるという問題があった。特許文献2及び3には、架橋ゴムスポンジ材の圧縮荷重を低くすることにより柔軟性が良好となり、シール性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−87505号公報
【特許文献2】特開2011−116882号公報
【特許文献3】特開2012−17452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮荷重の低下は、スポンジの高発泡化や、気泡の連泡化(高い吸水率化)で可能であるが、それを高めるとシーラント部材の強度が低下するため、スポンジ材が破壊しやすくなる。また、高い吸水率では止水性能が劣る。
以上の問題に対処するため、ウェザーストリップ用シーラント部材として、架橋ゴムスポンジ材の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、止水性能が高く、シール性に優れる架橋ゴムスポンジ材からなる発泡体ゴム材料を提供するものであり、更には、該発泡体ゴム材料からなるウェザーストリップ用シーラント部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の構成からなるウェザーストリップ用シーラント部材である。
(1)50%の圧縮量の圧縮時(往路)の荷重に対する開放時(復路)の荷重の割合を示す変化率〔変化率(%)=(開放時の荷重/圧縮時の荷重)×100〕が50%以下である架橋ゴムスポンジ材からなり、前記架橋ゴムスポンジ材にはテルペン系樹脂が配合され、ウェザーストリップと一体に押出し成形されることを特徴とするウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
(2)50%の圧縮量の圧縮時(往路)の荷重が10N/cm以下であり、開放時(復路)の荷重が3N/cm以下である、上記(1)に記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
(3)エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを含有する、上記(1)又は(2)記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
【0009】
(4)水の密度(1.0g/cm)に対する比重が0.05〜0.40である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
(5)吸水率が1〜100%であり、かつ、標準温度(23℃)におけるtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)が0.125以上である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の発泡体ゴム材料からなるウェザーストリップ用シーラント部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、機械的強度を低減させることなく、よりソフトで止水性能が高く、シール性に優れる架橋ゴムスポンジ材であるウェザーストリップ用発泡体ゴム材料を提供することができる。該発泡体ゴム材料を用いることにより、優れたウェザーストリップ用シーラント部材を得ることができ、特に形状の制約が少ないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の止水試験に用いる段差構造を説明する図である。
図2】実施例の止水試験に用いる装置を説明する図であり、ウェザーストリップ長手方向に対して垂直方向の断面を模式的に示す図である。
図3】本発明のシーラント部材の適用例を説明する図である。
図4】本発明のシーラント部材の適用例を説明する図である。
図5】本発明のシーラント部材の適用例を説明する図である。
図6】本発明のシーラント部材の適用例を説明する図である。
図7】本発明のシーラント部材の適用例を説明する図である。
図8】架橋ゴムスポンジ材の圧縮特性の測定要領を説明する図である。
図9】架橋ゴムスポンジ材の圧縮荷重試験で見られる荷重チャートを示す図である。
図10】架橋ゴムスポンジ材の圧縮特性を示すグラフである。●は実施例1、▲は比較例1を示す。
図11】架橋ゴムスポンジ材の温度に対するtanδの変化を示すグラフである。●は実施例1、▲は比較例1を示す。
図12】架橋ゴムスポンジ材のテルペン系樹脂添加量に対する50%圧縮荷重値の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、架橋ゴムスポンジ材からなるシーラント部材のフランジからの“浮き上がり”という状態が、ウェザーストリップの車体組み付け時の勘合部の保持力に対してシーラント部材の反力が上回るために起こる現象であることを見出したことによりなされたものである。
即ち、ウェザーストリップ用シーラント部材としては、上記フランジからの浮き上がり等を防止するには、圧縮時(往路)の荷重(圧縮した際の反発力)が低いことよりも、圧縮時(往路)の荷重に対する開放時(復路)の荷重の割合(本明細書では、上記のとおり、「変化率」と称する)が低い架橋スポンジ材が相応しいことを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、発泡倍率や連泡率を従来から変化させることなく、即ち、機械的強度を低減させることなく、50%圧縮量の変化率(開放時の荷重/圧縮時の荷重)を従来よりも低下させることにより、シール性を格段に改善した発泡体ゴム材料を得ることができ、これにより優れたウェザーストリップ用シーラント部材を提供することができる。本発明では、圧縮荷重の試験で通常着目される圧縮する際にかかる荷重に着目するとともに、ウェザーストリップの車体組み付け後のフランジからの浮き上がりの抑制を目的としているため、圧縮した後に開放していく際に回復方向への荷重(開放時の荷重)に注目し、これら圧縮時と開放時の荷重の比率(変化率)が、優れたシール性能に大きく寄与していることを見出したものである。
本発明は、従来の架橋ゴムスポンジ材と同じ比重、同じ吸水率を保有しながらも、即ち、従来と同等以上の強度を確保しつつ優れたシール性を達成したものであり、50%圧縮量の際の圧縮時及び開放時の荷重、特に開放時の荷重を従来のものより大幅に低減したものが好ましい。
【0014】
本発明の発泡体ゴム材料は、50%の圧縮量の変化率(変化率=開放時の荷重/圧縮時の荷重)が50%以下、好ましくは45%以下であり、更に好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下で、特に好ましくは25%以下である。下限は1%〜5%程度である。
また、本発明の発泡体ゴム材料は、50%の圧縮量の圧縮時(往路)の荷重が10N/cm以下、好ましくは8N/cm以下であり、更に好ましくは7N/cm以下であり、より好ましくは6N/cm以下で、特に好ましくは5N/cmである。下限は通常1N/cm程度である。また、圧縮荷重の測定における、50%の圧縮量の開放時の荷重が好ましくは3N/cm以下であり、より好ましくは2N/cm以下であり、更に好ましくは1.5N/cm以下、より好ましくは1N/cm以下である。
【0015】
また、本発明の発泡体ゴム材料は、標準温度(23℃)におけるtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)が0.125以上、好ましくは0.13以上、より好ましくは0.14以上、そして更に0.15以上であることが好ましい。該tanδは、損失係数であり、その上限は、1.4程度である。更に、本発明の発泡ゴム材料は、JIS K6262に準拠した50%圧縮時の圧縮永久歪み率(Cs)が、70%以下が好ましい。
【0016】
本発明の発泡体ゴム材料は、更に、比重が好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.2〜0.4であり、吸水率が好ましくは1〜100%、より好ましくは2〜50%で、更に好ましくは5〜30%である。
【0017】
本発明の発泡体ゴム材料は、上記の50%圧縮量の変化率を満たすことにより、好ましくは、上記50%圧縮量の圧縮時の荷重及び開放時の荷重をそれぞれ満たすことにより、シール性に優れた、ウェザーストリップ用シーラント部材に適した発泡体ゴム材料を提供することができる。更には上記の比重、吸水率、tanδ、Csをも満たすことにより、止水性能が高く、遮音性、耐久性、耐錆等に優れ、ウェザーストリップ用シーラント部材に適した発泡体ゴム材料を提供することができる。
【0018】
なお、本発明の発泡体ゴム材料において、50%圧縮量の圧縮時及び開放時の荷重は、JIS K6767に準拠するものであり、比重は、JIS K7112(発行年度2007年)のA法に準拠するものであり、吸水率は、下記の測定方法により測定したものである。
【0019】
<吸水率の測定方法>
(1)試験片:
熱風加硫した厚さ2.5mm又は3mmのシート状発泡体ゴムから、巾20mm×長さ30mm又は40mmの試験片を採取する。
(2)測定装置
質量を1/1000gまで測定できる天秤、深さ150mm容積1000ML程度のガラス容器、試験片を押さえるための耐食性金網およびガラス容器を収納できる減圧装置とその減圧状態を測定するための水銀マノメータを備えた測定装置を用いる。
(3)測定方法
試験片の質量を測定し、23〜25℃に調節した蒸留水中に試験片の上端が水面より50mmの深さになるように沈める。次に23〜25℃にて3分間、17kPaの減圧下に置く。3分経過後、大気圧に戻し、そのままの状態で3分間放置する。その後水中から試験片を取り出して表面に付着している水滴を拭き取って質量を測定する。
(4)計算方法
吸水率を次式にて求める。
Wa=(W−W)/W×100
Wa:吸水率[%]
:処理前の質量
:処理前の質量
(5)結果のまとめ
吸水率はn=3の算術平均値で表示する。
【0020】
本発明のウェザーストリップ用発泡体ゴム材料は、架橋ゴムスポンジ材からなる。架橋ゴムスポンジ材は、特にその組成は限定されないが、少なくとも架橋ゴムを含み、かつスポンジであって、上記物理特性を満たす必要がある。本発明は、例えば、粘着剤を含ませることで達成できる。この粘着剤は、架橋されていてもよいし、そうでなくともよいし、その両者であってもよい。発泡体ゴム材料に粘着剤を含ませることにより、上記物理特性を満たすことが容易となり、かつ発泡体ゴム材料の取り扱い性も良好であるという利点がある。
【0021】
架橋ゴムスポンジ材組成としては、ゴム、粘着剤、架橋剤、カーボンブラック、無機系充填材、軟化剤、発泡剤、加硫促進剤等が挙げられ、適宜選択して用いることができる。なお、本発明の架橋ゴムスポンジ材は、発泡剤を用いずに、物理的に発泡させてもよい。
【0022】
ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン共重合体〔EPDM;エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体。非共役ジエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられ、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。]、スチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等を挙げることができる。特に、高耐候性や取り扱い易さの観点から、エチレン・α−オレフィン系共重合体が好ましい。
【0023】
粘着剤としては、テルペン系樹脂(例えば、テルペン重合体、テルペンフェノール共重合体、芳香族炭化水素変性テルペン重合体等)、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、シクロペンタジエン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、ロジン、変性ロジン、ロジンエステルなどが挙げられる。中でもテルペン系樹脂が好ましく、重量平均分子量は500〜1000、より好ましくは600〜900であり、ガラス転移点は30〜100℃、より好ましくは40〜90℃のテルペン系樹脂が好ましい。
【0024】
架橋剤としては、イオウ、過酸化物等が挙げられる。
無機系充填材としては、炭酸カルシウム、等が挙げられる。
軟化剤としては、液状ポリブテン、鉱油、液状ポリイソブチレン、液状ポリアクリル酸エステル等が、発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体又は重曹系化合物等が、加硫促進剤としては、チアゾール系、チウラム系等が挙げられる。
【0025】
本発明の発泡体ゴム材料は、上記成分を適宜選択して、その配合率を調整することにより製造することができる。例えば、ゴムとしてEPDMを用いた場合は、EPDM100質量部に対してテルペン系樹脂を3〜75質量部、好ましくは、10〜70質量部、さらには30〜65質量部で、特に40〜60質量部が好ましい。テルペン系樹脂の配合率が上記の範囲以上において、本願発明の圧縮荷重やtanδの閾値を十分に満足することができ、また上記範囲以下において、良好なゴムの混練作業を行うことができるため、好ましい。また、他の配合成分として、更に架橋剤を0.5〜2.0質量部、及び発泡剤を5〜30質量部用いること等が挙げられる。
【0026】
本発明の発泡体ゴム材料は、基本的には従来の架橋ゴムスポンジ材に準じて製造することができる。発泡体ゴム材料は、具体的には、上記成分を混練したものを、加熱、架橋、発泡させて得ることができる。架橋、発泡方法としては、従来公知の方法、装置を用いることができ、適宜、金型、温度、圧力、加熱並びに加圧時間等が選定される。
本発明の発泡体ゴム材料は、シーラント部材として、ウェザーストリップに具備され、止水部や、遮音又は吸音部、そして耐衝撃用の緩衝部や耐振動吸収部を形成することができるが、これら各部は、ウェザーストリップと一体に成形(例えば押出時に複合化して成形)されてもよいし、各々別々に形成後、シーラント部材を、止水部を欠いたウェザーストリップに圧着又は接着剤等を用いて装着してもよい。
【0027】
本発明の発泡体ゴム材料のシーラント部材としての適用例としては、例えば、図3〜7等に示したものを挙げることができる。図3は、ドアオープニング用のウェザーストリップ5へ本発明の発泡体ゴム材料を使用した例で、シーラント部材6を後述の止水試験に用いたウェザーストリップと同様の機能が発揮される位置に設けたものの断面を同様に示しており、断面略U字状のグリップ部5Aには車体のフランジに強固に組付く爪部5Sが設けられている。図4は、ドア用のウェザーストリップ5へ本発明の発泡体ゴム材料を使用した例で、シーラント部材6をクリップ12により固定されているウェザーストリップ5の基底部周辺に用いた他の態様の断面を示したものであり、例えば止水用としても機能する。7aは、ドアパネル、8aはボディパネル、5Tはシールリップである。図5は、ウェザーストリップ5のシール部5Bの内部にシーラント部材6を設けたもので、異音防止等の遮音性に効果がある。
図6は、グラスラン長手方向に対して垂直方向の断面を示し、グラスラン5aは、その内部にシーラント部材6を設けたものであり、異音防止等に効果がある。5Uはガラスが紙面に対して垂直方向に昇降、摺動し、又は左右方向に挿入、抜去するリップ部である。
図7も、図6と同様にグラスラン長手方向に対して垂直方向の断面を示し、グラスラン5aは、ドアサッシュ13との間にシーラント部材6を設けたものであり、ドアガラスを上昇させて閉じた際に発生する底付き音を低減する効果がある。5Uは図6と同様のリップ部であり、14はガラスである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例1及び比較例1
表1に記載した配合成分(質量部)を混練してゴム組成物とし、シート状に押出し成形して、高温雰囲気にて加硫及び発泡させて架橋ゴムスポンジ材(発泡体ゴム材料)を製造した。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、表1中、成分(a)は、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムで具体的にはEPDMであり、成分(b)は、テルペン樹脂(YSレジンTO−105(ヤスハラケミカル(株)製)であり、成分(c)は、ADCA及びOBSHであり、成分(g)は、硫黄である。
【0032】
得られた架橋ゴムスポンジ材の特性を以下により評価した。3)及び4)以外は何れも3回の平均とした。結果を表2に示した。
(1)比重:試験片は長さ約40mmを採取した。
(2)吸水率:試験片は長さ約40mmを採取した。
【0033】
(3)圧縮量50%の圧縮時と開放時の荷重:試験片は厚み2.5mm、幅5.0mmで長さ100mmとした。JIS K6767(発行年度2007年)に準拠して、図8及び図9に示す要領で、平板の金属板を用いてオートグラフにて各試料高さの35%(高さ0.88mm)まで、つまり65%までを圧縮し、65%の圧縮量に到達すると同時に、その反対向き(開放)へ金属板を動かし、その間の荷重の変化を計測し、圧縮する際と開放する際の50%圧縮量のときの値を取った。圧縮速度及び開放速度は20mm/min.で、試験片を初めて圧縮する初回の圧縮時及び開放時の荷重を適用した。表3に圧縮時の圧縮量10〜60%までのデータを示し、表4に圧縮量50%の圧縮時と開放時のデータを並べて示した。圧縮時のデータは図10にも示した。また、同じ圧縮量における圧縮時と開放時の荷重値の比率を変化率として示した。
[変化率(%)=(開放時の荷重/圧縮時の荷重)×100]
【0034】
(4)tanδ:試験機:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製RSA−G2、試験体のサイズ(幅5.5mm、長さ20mm、厚み1.5mm)、測定歪み(試験体の長さ方向への伸張、0.1〜2%で測定温度により異なる)、測定周波数1Hz、測定温度−80〜150℃、昇温速度5℃/分で実施し、23℃のものを取った。表2及び図11に、各温度におけるtanδを、表5には測定歪み(振動歪)を併記した。
【0035】
(5)TB(引張強度):JIS K6251(発行年度2006年)に準拠。2号ダンベル形状、引張速度:200mm/分。
(6)EB(伸び):JIS K6251(発行年度2006年)に準拠。2号ダンベル形状、引張速度:200mm/分。
(7)Cs(圧縮永久歪み率):JIS K6262(発行年度2006年)に準拠。50%圧縮。試験片は長さ約100mmを採取。試験温度 70℃、試験期間 22hr。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
実施例2及び比較例2
実施例1又は比較例1の架橋ゴムスポンジ材をウェザーストリップ止水部にシーラント部材として適用して、その止水性能を以下の止水試験により評価した。実施例1を実施例2へ適応し、比較例1を比較例2へ適応した。
【0041】
<止水試験>
車両の後部のトランク又はバックドアの構造を再現した止水試験の状態を図2に示す。自動車用ウェザーストリップ5はトランク又はバックドアの開口縁周縁に組み付けられ、金属製又は樹脂製の芯材5Cを有し、ボデーから突出成形されたフランジ1に嵌合するグリップ部5Aと、ドアに衝突してドア周縁からの風、水、埃、音などの浸入を防ぐ断面略円形状で中央に空洞が設けられた中空形状のシール部5Bにより構成されている。図2のように、一般的なトランク又はバックドア用のウェザーストリップ(長さ200mm)を使用した。ボデー側を再現した治具8とドア側を再現した治具7によりドア閉じ状態が再現されており,図2のウェザーストリップ5を挟んで上側が車外側で,下側が車内側に該当する。水は車外から浸入するため,図2のように前記車外側の空間9に水を貯めて車内側に水が漏れるか否か空間11にて確認した。車両のドア閉じ状態(ボデーとドアの組合せ状態)には車種毎に適正位置(正規位置)があり,本試験はその正規位置で実施した。
【0042】
本発明のシーラント部材は断面略U字状のグリップ部5Aの内側底部、つまりグリップ部5Aをフランジに嵌合した際にフランジの先端によって加圧圧縮される位置に配置されている。シーラント部材はフランジの先端によって押し込まれ、撓んだ状態にある。ここで、車体のフランジ1は2枚のパネルが重ね合わさった状態であるため、これらパネル間には図1のような段差構造が発生する。図1の段差構造のフランジ1は、厚みtが1.2、1.8、又は2.1mmのパネル2とパネル3(厚み1.3mm)を重ねて高さhの段差を設けたものである。
【0043】
図2に示すウェザーストリップ5の止水部6相当位置に厚み2.4mm、幅4.2mmの架橋ゴムスポンジ材を装着して止水部(シーラント部材)6としたウェザーストリップを実車と同様に矢印aの方向に圧縮して架橋ゴムスポンジ材を、フランジ1により厚み方向に60%圧縮して、空間9に水10を入れ、試験装置4にて止水試験を行った。実施例2の結果を表6に、比較例2の結果を表7に示す。○は、水漏れなし、×は水漏れ発生、−は未評価を示す。
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
表2〜7から、本発明の特性を満たす架橋ゴムスポンジ材(発泡体ゴム材料)をシーラント部材とした実施例2は、止水性能が比較例2に比べて優れていることが理解される。
また、本実施例では、トランク用のウェザーストリップへの適用例を示したが、人が乗降するドアの車体側開口縁周縁に取り付けられるドアオープニング用ウェザーストリップやドアの外周縁部に取り付けられるドアウェザーストリップ、又は昇降可動するドアガラスを保持するグラスランや、車両のベルトラインに付けられるベルトラインウェザーストリップ等、あらゆるウェザーストリップにおいて、従来から使用が知られている比重が0.05〜0.4の架橋又は非架橋ゴムスポンジ材全てを本発明の架橋ゴムスポンジ材に置換できる。
【0047】
実施例3〜6及び比較例3
表8に記載した配合成分(質量部)を混練してゴム組成物とし、シート状に押出し成形して、高温雰囲気にて加硫及び発泡させて架橋ゴムスポンジ材を製造した。
なお、表1とは、成分(d)のカーボンブラックのグレード(品番)が異なり、成分(c)がOBSH単独となっているが、その他の成分は同様である。従ってテルペン樹脂はYSレジンTO−105(ヤスハラケミカル(株)製)である。
【0048】
【表8】
【0049】
得られた架橋ゴムスポンジ材の圧縮荷重を実施例1と同様に評価した。但し、試験片の厚みは3mmを用いた。表9及び図12に圧縮量50%の圧縮時と開放時のデータを示す。また、変化率(変化率=開放時/圧縮時)も示した。
そして表9には比重、吸水率、及び止水試験の結果も示している。比重と吸水率は実施例1と同様にして実施した。但し、試験片は厚み3mm、長さ30mmを用いた。止水試験は実施例2と同様に実施した。つまり実施例3〜6又は比較例3の架橋ゴムスポンジ材をウェザーストリップ止水部にシーラント部材として適用して、その止水性能を評価した。
【0050】
【表9】
【0051】
表8と表9から、本発明の変化率を満たす架橋ゴムスポンジ材をシーラント部材とした実施例3〜6は、止水性能が比較例3に比べて優れていることが理解される。
【0052】
実施例7〜9
表8に記載した配合成分(質量部)において、(b)テルペン系樹脂の種類を表10に示すとおりに変更して50phr(Parts per hundred rubber)の配合量を混練してゴム組成物とし、シート状に押出し成形して、高温雰囲気にて加硫及び発泡させて架橋ゴムスポンジ材を製造した。
【0053】
得られた架橋ゴムスポンジ材の圧縮荷重を実施例1と同様に評価した。但し、試験片の厚みは3mmを用いた。表10に圧縮量50%の圧縮時と開放時のデータを示す。また、変化率(変化率=開放時/圧縮時)も示した。
そして表10には比重、吸水率、及び止水試験の結果も示している。比重と吸水率は実施例1と同様にして実施した。但し、試験片は厚み3mm、長さ30mmを用いた。止水試験は実施例2と同様に実施した。つまり実施例7〜9の架橋ゴムスポンジ材をウェザーストリップ止水部にシーラント部材として適用して、その止水性能を評価した。
【0054】
【表10】
【0055】
表10から、本発明の変化率を満たす架橋ゴムスポンジ材をシーラント部材とした実施例は、止水性能が優れていることが理解される。
【0056】
実施例10〜12及び比較例4
上記表8に記載した配合成分(質量部)を、実施例1及び比較例1と同じカーボンブラックのグレード(成分(d))で、発泡剤も同じADCA及びOBSH(成分(c))に戻し、テルペン樹脂をYSレジンTO−105(ヤスハラケミカル(株)製)にして、該テルペン樹脂の量を変更させた。これら以外は同様にして、加硫及び発泡させて架橋ゴムスポンジ材を製造した。
得られた架橋ゴムスポンジ材を、実施例3〜6及び比較例3と同様に評価した。それらの結果を表11に示す。
【0057】
【表11】
【0058】
表11から、本発明の変化率を満たす架橋ゴムスポンジ材をシーラント部材とした実施例10〜12は、比較例4に比して、止水性能が優れていることが理解される。
【0059】
以上のとおり、本発明の変化率の特性を満たす発泡体ゴム材料をシーラント部材とした実施例は、止水性能が優れている。これはウェザーストリップを車体に組み付ける際では相応の荷重を持って車体の組み付け箇所になじみながら変形し、組付け後には浮き上がる力が小さくて組付け後に直ぐに浮き上がることがなく、従ってシーラント部材に求められている隙間を無くす効果が高いことにあると考える。
また、不乾性シーラントは車体組み付け時に、一度組み付けるとシーラントが車体側に付着するため再組み付けができなかったり、周辺を汚したりすると共に、圧縮永久歪も期待できないが、本発明は架橋ゴムスポンジ材であるため車体側などへの付着も気にならず、更に圧縮永久歪にも優れるため、高い止水性が経年で保有できる。
【0060】
本発明の発泡体ゴム材料は、止水性能が高く、シール性に優れており、ウェザーストリップ用シーラント部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…フランジ、2、3…パネル、4…試験装置、5…ウェザーストリップ、5a…グラスラン、5A…グリップ部、5B…シール部、5C…芯材、5S…爪部、5T…シールリップ、5U…リップ部、6…止水部(シーラント部材)、7、8…ドア構造を再現した治具、9…空間、10…水、11…空間、12…クリップ、13…ドアサッシュ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12