特許第5768310号(P5768310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5768310パイプの製造に用いられる中空プロファイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768310
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】パイプの製造に用いられる中空プロファイル
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/12 20060101AFI20150806BHJP
   F16L 55/16 20060101ALI20150806BHJP
   B29L 23/18 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
   B29C47/12
   F16L55/16
   B29L23:18
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-549389(P2012-549389)
(86)(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公表番号】特表2013-517957(P2013-517957A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】FI2011050033
(87)【国際公開番号】WO2011089314
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2013年10月21日
(31)【優先権主張番号】20105059
(32)【優先日】2010年1月22日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】501302256
【氏名又は名称】オイ・ケイダブリュエイチ・パイプ・アブ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】スヨバーグ,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストマン,クリスチアン
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−518681(JP,A)
【文献】 実開昭58−044582(JP,U)
【文献】 特開平08−192472(JP,A)
【文献】 米国特許第06105649(US,A)
【文献】 特表2005−503945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 47/00−47/96
B29C 51/00−51/46
B29C 53/78
B29L 23/18
F16L 9/18
F16L 11/10
F16L 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状二重壁熱可塑性パイプを製造するために用いられる中空プロファイル(1)であって、実質的に矩形の断面を有し、2つの側壁(5)と外壁(3)と内壁(4)が前記中空プロファイル内で空洞(2)を制限するとともに、前記パイプの内壁を形成するための中空プロファイルの前記内壁(4)が、前記パイプの外壁を形成するための中空プロファイルの前記外壁(3)よりも厚くなっているものにおいて、
前記内壁(4)に隣接する縁部の丸み内径(7)が、前記空洞(2)の他の2つの縁部の丸み径(6)よりも大幅に大きくなっており、
前記内壁(4)の内面が、前記中空プロファイルの空洞において、前記パイプの内側を形成する前記中空プロファイルの側で、少なくとも実質的に前記中空プロファイルの全長にわたって前記中空プロファイルの長手方向に延びるリブ(8)を備え、
パイプの内壁を形成する前記内壁(4)の厚さが、前記内壁(4)の中央部の前記リブ(8)で最大となり、前記側壁(5)に隣接して位置する前記中空プロファイル(1)の2つの側方縁部に向かって徐々に増加し、前記内壁(4)の最薄部分が、前記リブ(8)と前記縁部との間にあることを特徴とする中空プロファイル。
【請求項2】
前記リブが、前記内壁(4)の最小厚さの2倍よりも小さい高さを有していることを特徴とする請求項1に記載の中空プロファイル(1)。
【請求項3】
前記リブ(8)の幅が、前記中空プロファイルの側壁(5)の内側間の間隔の半分より小さく、前記内壁(4)の最小厚さより小さいことを特徴とする請求項2に記載の中空プロファイル(1)。
【請求項4】
前記中空プロファイル(1)が、ポリオレフィンまたはポリプロピレンの押出し成形可能な熱可塑性樹脂製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空プロファイル(1)。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、耐圧性及び環状剛性特性をさらに向上させるために、充填剤及び/または補強剤で改変することを特徴とする請求項4に記載の中空プロファイル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製プロファイル及びその製造方法に関する。特に、本発明は、実質的に矩形断面を有するとともに、螺旋状の二重壁熱可塑性樹脂パイプの製造に用いられる中空熱可塑性樹脂製プロファイルに関する。このようなプロファイル、及び中空プロファイルからなる螺旋状二重壁熱可塑性パイプの製造方法も記載している。
【背景技術】
【0002】
Weholiteとして市販されている二重壁熱可塑性パイプの製造においては、パイプの内径に応じて、中空プロファイルがドラムなどに螺旋状に巻回され、中空プロファイルの隣接するループどうしが溶接されて、パイプの筒状壁を形成する。
【0003】
このように製造されたパイプは、同量の材料を用いて製造された中実パイプに較べて、軽量で、良好な環状剛性を示し、二重壁構造によって、パイプに良好な絶縁特性が付与される。
【0004】
従来の螺旋パイプの製造に用いられる中空プロファイルは、実質的に矩形の断面を有している。典型的には、その矩形の縁部はすべて同じ大きさの丸み径で丸みを有しており、中空プロファイルの各壁の厚さもほぼ同じである。溶接後に均一の厚さを有するパイプ壁にするために、接合されるプロファイルの壁は直線状で、同じ高さを有していなければならないため、必然的に矩形の断面となる。プロファイルの孔は、材料の使用を最小限にするために、外形断面の形状に沿わすことになる。
【0005】
上述したこれらのパイプの壁構造は、そもそも、流体の無圧輸送を意図したものであり、土圧、地下水、輸送負荷などの外部圧に抵抗するように最適化されているが、パイプの内圧が増加する適用例に用いるようには意図されていない。内圧が増加すると、パイプの壁に損傷を与えるかもしれない。
【0006】
国際公開公報WO2004/076903号は、特に低圧または中圧下で流体を案内するために開発された上記の基本構造の実施例を開示している。ここで提案されている解決法は、中空プロファイルの肉厚壁に隣接する縁部の丸み内径が、空洞の他の2つの縁部の丸み径より大幅に大きい中空プロファイル構造である。さらに、中空プロファイルの壁の厚さは、この壁の中央部で最小となっており、この壁に隣接する2つの中空プロファイル側方縁部に向かって徐々に増加している。
【0007】
公知のプロファイルでは、内圧に耐えるためにパイプの強度を向上させているが、ストレスピークは、パイプの製造及び長期使用に鑑みて最適ではない箇所に設定されている。つまり、ストレスピークは、内壁の中央で、プロファイルのループ間の溶接継ぎ目に設定されている。それ自体は問題ではないが、溶接継ぎ目は、常に、材料に切れ目を作るため、発生する切欠係数によって、特に定期的に変化する負荷下における構造の損傷や不良の危険性が生じる。典型的に変化する負荷は、異なる種類の振動に関連する。パイプにとって、変化する負荷は、比較的長期間にわたって、あるいは、例えばポンピングによって生じる急な変化のいずれかにおける圧力変化によって引き起こされる可能性がある。溶接継ぎ目はまた、材料において亀裂が進行する開始点、つまり基点となる小さな亀裂や不純物を含んでいる場合がある。これらの理由から、構造設計上の主要原則は、ストレス箇所やストレスピークを、構造の切れ目から遠ざけるような構成となる形状や寸法にすることである。これは、例えば、使用する材料、構造の全体的な利用可能性、最終製品の重量などを同時に考慮しなければならないため、困難であるとされることもある。しかし、パイプの製造に弾性材料を用いると、材料の弾性がクラックの基点周囲のストレスをいくらか吸収するため、構造的な不良を招く可能性のある亀裂が拡大しにくくなる。いずれの場合も、どのような材料を用いるかに関わらず、最大ストレスが、材料ができるだけ一貫して均一となる領域に設定されるように構成する方がよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/076903号パンプレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、非加圧流体及び加圧流体を、約2バール〜3バールまでの圧力で輸送するのに適した螺旋状パイプ壁を構成するために用いることのできる代替プロファイル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ほぼ矩形の断面を有し、パイプの内側を形成するプロファイルの側の空洞に、少なくとも実質的にプロファイルの全長に沿って延びるプロファイルの長手方向に突出部を形成する中空プロファイルを提供するという概念に基づいている。従って、断面では、プロファイルは、矩形断面の下方内側にリブを備え、このリブは、実質的に矩形の中央に向かって延びている。リブの横幅は、プロファイルの全幅の50%未満である。
【0011】
記載された種類のプロファイルは、ダイとマンドレルを備えた押出しダイヘッドを介してプロファイルを押出すことによって製造される。前記ダイ及びマンドレルは環状断面を有し、ダイの内側形状がプロファイルの外側断面を形成し、マンドレルの外側断面がプロファイルの内側断面、つまり空洞の断面形状を形成する。マンドレルは、プロファイルの空洞の突起部のサイズに対応したサイズの溝を有している。
【0012】
上述の理由により、プロファイルの外側断面は、内側断面と同様に矩形を有している。
【0013】
リブを備えていない中空プロファイルの3つの壁の厚さは同じであることが好ましい。
【0014】
内径1200mmのパイプを製造するための中空プロファイルの肉厚の壁の最小壁厚対他の壁の壁厚の比率は、120:77であることが好ましく、肉厚の壁に隣接する縁部の丸み内径は24mmであることが好ましい。
【0015】
本発明によって得られる利点は大きい。プロファイルの空洞のリブによって、他の従来のプロファイルに比較して、ストレスを完全に異なる方向に分散させることができる。管構造で行われたシミュレーションでは、最大ストレスピークがリブの根元に隣接して置かれるため、溶接継ぎ目におけるストレスレベルが低下する。これにより、静荷重下における構造の強度、変荷重下における信頼性と強度の両方が高まる。そして、最大ストレスは、連続押出しによって製造される材料部分に置かれることになる。連続押出しでは、製造パラメータ及び条件が一定で、できるだけ最適に近い状態に維持されることにより、製造される材料は均一の構造を有し、亀裂の基点となる危険性のある材料欠陥を最小限に維持することができる。また、最大ストレス領域は、プロファイルの空洞に置かれる。これにより、さらに安全性が高まり、まれに内壁が破裂した場合でも、外壁は損傷を受けることなく、充分耐えることができるので、パイプで輸送される材料が漏出することも避けられる。
【0016】
パイプの内面はなめらかに溶接されるので、溶接継ぎ目の切欠係数が減少するため、耐圧性が向上する。この場合、ジョイントや金具は滑らかな表面に容易に適応させることができるため、容易に製造することができる。
【0017】
本発明は、WO2004/076903号に記載された丸み内径で実施されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】負荷時のストレスレベルを含む、本発明の一実施例によるパイプ断面の部分概略図である。
図2図1のパイプの部分の別の断面図である。
図3】第1溶接方法が用いられた場合のパイプ部分の一実施例を示す。
図4】別の溶接方法が用いられた場合のパイプ部分の一実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明を説明する。
中空プロファイルの材料として、ポリオレフィン、好ましくはHD−ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの押出し成形可能な熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂を、充填剤及び/または補強剤で改変することにより、環状剛性特性が高まるとともに、耐圧特性が高まる。規格によっては、加圧システムにおいてPEグレードで等級分けされた圧力を用いることを要件とするものもある。現在、ヨーロッパ及びアジアでは、PE80またはPE100の材料が認められており、北米では例えばPE3408が認められている。
【0020】
ここで例として挙げるパイプは、多くの顧客の要求に沿った典型的例である。寸法目標は、大きさが内径1200mmまで、最高圧が2バール、パイプ壁構造の最大ストレスレベルが5MPaである。
【0021】
図1は、本発明の一実施例によるプロファイルから製造されたパイプの一部の断面図である。隣接するプロファイル1の間の継ぎ目は明確に図示されていないが、プロファイル1の2つの空洞2の間の壁の中央に位置している。プロファイルの断面は矩形であり、2つの長い壁、つまり外壁3と内壁4、及び2つの側壁5が接合されてパイプを形成している。図から理解できる通り、プロファイルのすべての壁3、5は、ほぼ同じ厚さであり、その中空の空洞2の縁部はすべて丸みを備えている。例えば、内径1200mmの螺旋傾斜パイプの製造には、断面の外側幅が93.8mm、外側高さが75mmであるこのタイプの中空プロファイル1を使用することができる。
【0022】
本発明による中空プロファイル1によって、内圧にかなりの抵抗をもつ螺旋状パイプを製造することができる。螺旋状パイプの内壁を形成する本発明による中空プロファイルパイプの壁4は、中空プロファイルの他の壁3、5に較べて基本的に厚さが大きく、内壁4に隣接する中空空間の縁部の丸み径7は、他の2つの縁部6の丸み径より大幅に大きくなっている。好適な実施例によると、壁4の厚さはその全幅にわたって一定とはなっていない。内壁4はその中央にリブ8を備えている。リブ8は、空洞2の内部に向かって延びており、その幅が、プロファイルの側壁5の内側間の間隔の半分より小さく、内壁4の最小厚さより小さくなるような大きさを有している。つまり、管の内側に向かうよう設けられた壁の表面間の間隔は、内壁4の最小径の2倍よりも小さい。リブ8の形状は、切欠係数が最小になるように、滑らかな傾斜として内壁4に接合する滑らかな丸みの断面をもつようなものとなっている。厚さは、隆起及び側壁5の中央で最小となっており、側壁5に隣接する中空プロファイルの2つの縁部に向かって徐々に増加することにより、中空プロファイル1の空洞が、この肉厚壁においてほぼ波形の断面を有するようになっている。内径が1200mmの螺旋状パイプを製造するためには、肉厚壁4の最小厚さは12mm、中空プロファイル1の他の壁3、5の厚さは7.7mmとなる。内壁4に隣接する中空空間2の縁部における丸み径7は、最小で24mmである。
【0023】
WO2004/076903の中空プロファイルとの比較のために、本発明のパイプ断面を、FEM計算及び圧力テストを用いて分析した。図1及び2の線は、これにより得られたストレスレベルを示している。内圧下の最大ストレスは、内壁4のリブ8の傍にある。この領域は、参照番号9で示している(図2)。溶接継ぎ目領域10のストレスは5MPaに減少しており、これは、本発明の当初の目標値である。最大ストレスレベルはまた、継ぎ目領域から移動してきている。パイプ断面の外面を調べると、継ぎ目領域のストレスレベル(11、12)はより低くなっており、溶接された分割壁5、5の内側のストレス13は、より広い領域にわたって広がっており、点状ストレスは減少している。この結果から明らかなように、パイプの耐圧特性に関して、かなりの改善が、本発明による中空プロファイルよって達成される。
【0024】
図3及び4は、本発明によるプロファイルで製造された2つの異なる種類のパイプ断面を示している。ちなみに、パイプは、断面ではなく、通常1本のパイプとして製造されるものであり、これらの断面は、説明の目的のためだけに示すものである。図3では、継ぎ目14は、これらの種類のパイプを製造するために用いられる通常の方式で形成される。この例では、継ぎ目14の両側に、2つの平行な溝15が形成されている。これらの溝は、加圧された壁においてストレスピークを形成するため、壁において、最も脆弱な点となっている。しかし、パイプが適切に寸法取りされていれば、溝によるリスクはない。さらに好適な実施例を図4に示す。
【0025】
図3にも示す特徴のひとつは、プロファイルは、製造されるパイプの内側及び外側表面で部分的にのみ溶接されるということである。ストレスは構造の表面または表面近くに置かれるため、全深さにわたって継ぎ目を溶接する必要はないのである。図4の溶接継ぎ目は、溶接領域16全体にわたって平坦で、滑らかで均一な表面を形成している。これが可能であるのは、リブによってストレス分布が異なるためである。溶接が滑らかに行われると、確実に、ストレスピークを、圧力が最大になるプロファイルの外壁ではなく、リブ8の傍のプロファイルの内壁に置くことができる。滑らかな表面によって、パイプでの固定や接合が容易になるのである。
図1
図2
図3
図4