特許第5768331号(P5768331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768331
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】排気管内燃料噴射システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20150806BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20150806BHJP
   F01N 3/029 20060101ALI20150806BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20150806BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   F01N3/02 321B
   F01N3/02 321Z
   F01N3/36 C
   F02B37/00 301G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-134520(P2010-134520)
(22)【出願日】2010年6月11日
(65)【公開番号】特開2011-256852(P2011-256852A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】川島 幸博
(72)【発明者】
【氏名】貴志 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】新谷 勲
【審査官】 赤間 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−329019(JP,A)
【文献】 特開平08−232759(JP,A)
【文献】 実開平03−077019(JP,U)
【文献】 特開平08−144753(JP,A)
【文献】 実開昭53−101962(JP,U)
【文献】 特開2009−156068(JP,A)
【文献】 特許第4407843(JP,B2)
【文献】 特開2004−197635(JP,A)
【文献】 特開2005−264756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00〜3/38
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに排気アダプタを介して排気管を、前記排気アダプタの下端部に位置するように接続し、前記排気アダプタに、その排気アダプタの排気通路に対して燃料を斜め下方に向かって噴射する燃料噴射弁を設け、その燃料噴射弁により噴射された燃料が、前記燃料噴射弁と反対側の前記排気通路に形成された凹状の内壁部に衝突すると共に前記排気通路の排気ガスと混合されて前記排気管内に供給される排気管内燃料噴射システムであって、
前記排気アダプタの下端部に前記排気管の先端フランジ部を接続するための下部フランジ部を設けると共に、これら先端フランジ部及び下部フランジ部のフランジ面に燃料がかからないように遮蔽する筒状の遮蔽部を設け、前記遮蔽部が前記下端フランジ部の内壁を下方に突出ないし延出させて前記排気管内に突出した状態に設けられると共に、燃料が衝突する前記遮蔽部の内壁部が、前記排気通路の凹状の内壁部の最深部より内側に位置するように設けられることを特徴とする排気管内燃料噴射システム。
【請求項2】
前記排気管の径方向に該排気管と前記遮蔽部との間に燃料を滲み込ませないための所定の隙間を設けたことを特徴とする請求項1記載の排気管内燃料噴射システム。
【請求項3】
前記排気アダプタの下部フランジ部と前記排気管の先端フランジ部との間にモリブデンコートが施されたガスケットを介設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気管内燃料噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)の再生を行うために排気アダプタに設けた燃料噴射弁により排気管内に燃料を直接噴射する排気管内燃料噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出されるPMをDPFと呼ばれるフィルタで捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減する排気ガス浄化システムとして、DPFと、DPFの上流側に設けられたDOC(Diesel Oxidation Catalyst)とからなる連続再生型DPF装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この連続再生型DPF装置では、排気ガス温度が約350℃以上の時には、DPFに捕集されたPMは連続的に燃焼して浄化され、DPFが自己再生されるが、排気ガス温度が低い場合には、DOCの温度が低下して活性化しないため、PMを酸化してDPFを自己再生することが困難となる。その結果、PMがDPFに堆積してDPFの目詰まりが進行し、排圧上昇の問題が生じる。
【0004】
PM堆積量は、DPF前後の排気の差圧を計測する差圧センサの出力値に比例するため、差圧センサの出力値が所定の差圧を超えたときに、ECU(Engine Control Unit)がフィルタの目詰まりを検出し、DPF再生を開始する。
【0005】
排気ガス浄化システムでは、シリンダ(筒)内において燃料のマルチ噴射(多段遅延噴射)やポスト噴射(後噴射)を行うことにより、DPFに流入する排気ガスの温度を強制的に上昇させて、DPFに捕集したPMを燃焼除去するDPF再生が行われている。マルチ噴射は、エンジンから排出される排気ガスの温度を昇温し、DOCを触媒活性温度まで昇温させるために行われる。ポスト噴射は、多量の未燃燃料を排気ガス中に供給し、供給した未燃燃料をDOCにて酸化(燃焼)させることで、DPF入口における排気ガス温度をPMが燃焼する温度以上に上昇させるために行われる。
【0006】
DPF再生が開始されると、ECUが燃料噴射や排気スロットル、排気ブレーキバルブを制御し、排気ガス温度を上昇させ、DPFに堆積したPMが燃焼される。このDPF再生においては、ポスト噴射を行うことにより、エンジンオイルに微量ながら燃料が混入するため、所謂ダイリューションと呼ばれる現象が発生する。このダイリューションにより、エンジンオイルの希釈が進むとエンジンの故障を招く虞がある。
【0007】
一方、前記ポスト噴射によるダイリューションの発生を防止し、再生制御効率を向上させるために、排気管に設けた燃料噴射弁により排気管内に燃料を直接噴射するようにした排気管内燃料噴射システムも提案されている。この排気管内燃料噴射システムにおいては、エンジンに設けられるターボチャージャの排気アダプタに燃料噴射弁を設けることがエンジンの組み立て上、好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−16713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記排気管内燃料噴射システムにおいては、排気アダプタの下端部に排気管の先端部を接続する構造上、前記燃料噴射弁より噴射された燃料が排気アダプタと排気管の接続部分にかかり、この接続部分から燃料漏れを発生することが懸念される。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気アダプタと排気管の接続部分からの燃料漏れを防止することができる排気管内燃料噴射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、エンジンに排気アダプタを介して排気管を、前記排気アダプタの下端部に位置するように接続し、前記排気アダプタに、その排気アダプタの排気通路に対して燃料を斜め下方に向かって噴射すると共に、噴射された燃料が前記排気通路の内壁部に衝突するように燃料噴射弁を設け、その燃料噴射弁により噴射された燃料が、前記排気通路の排気ガスと混合されて前記排気管内に供給される排気管内燃料噴射システムであって、前記排気アダプタの下端部に前記排気管の先端フランジ部を接続するための下部フランジ部を設けると共に、これら先端フランジ部及び下部フランジ部のフランジ面に燃料がかからないように遮蔽する筒状の遮蔽部を設け、前記遮蔽部が前記下端フランジ部の内壁を下方に突出ないし延出させて前記排気管内に突出した状態に設けられると共に、燃料が衝突する前記遮蔽部の内壁部が凹状に形成され、燃料が衝突する前記排気通路の凹状に形成された内壁部の最深部より内側に位置するように設けられることを特徴とする。
【0012】
前記排気管の径方向に該排気管と前記遮蔽部との間に燃料を滲み込ませないための所定の隙間を設けていることが好ましい。
【0013】
前記排気アダプタの下部フランジ部と前記排気管の先端フランジ部との間にモリブデンコートが施されたガスケットを介設していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排気アダプタと排気管の接続部分からの燃料漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明の実施形態に係る排気管内燃料噴射システムを備えた排気ガス浄化システムを示す図である。
図2】排気管内燃料噴射システムにおけるエンジン回りの構成を概略的に示す斜視図である。
図3】排気アダプタの一例を示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図4】排気アダプタと排気管の接続部の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0017】
先ず、図1を参照して本実施の形態に係る排気管内燃料噴射システムを備えた排気ガス浄化システム1について説明する。この排気ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンともいう。)10の排気管11に排気ガス浄化装置の一つである連続再生型DPF(或いはDPD:Diesel Particulate Defuserともいう)装置12を備えている。この連続再生型DPF装置12は、排気ガス中のPMを捕集するDPF12bと、このDPF12bの上流側に設けられたDOC12aとを備えている。前記DPF12bは、CSF(Catalyzed Soot Filter)からなる。連続再生型DPF装置12の下流の排気管11には、サイレンサ13が配置されている。排気ガスGは、連続再生型DPF装置12により浄化されて、浄化された排気ガスGcとしてサイレンサ13を経由して大気中に放出される。
【0018】
前記DOC12aは、多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。DPF12bは、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネルの入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウオールフロータイプのフィルタ等で形成されている。このフィルタの部分に白金や酸化セリウム等の触媒を担持している。排気ガスG中のPM(粒子状物質)は、多孔質のセラミックの壁で捕集(トラップ)される。
【0019】
そして、前記DPF12b上のPMの堆積量を推定するために、DPF12bの前後に接続された導通管にはDPF12b前後の差圧を検出する差圧センサ31が設けられている。また、連続再生型DPF装置12の下流側の排気管11には、排気絞り手段としての排気スロットル弁14が設けられ、連続再生型DPF装置12の上流側の排気管11には、排気ブレーキ20が設けられている。
【0020】
連続再生型DPF装置12内のDOC12aの上流側には、DOC12aに流入する排気ガスの温度を検出するDOC入口排気温度センサ32が設けられ、DOC12aとDPF12bとの間には、DPF12bに流入する排気ガスの温度を検出するDPF入口排気温度センサ33が設けられている。
【0021】
エンジン10の吸気管15には、吸気口からエンジン10側にかけて、エアクリーナ16、MAFセンサ(吸入空気量センサ)17、ターボチャージャ36のコンプレッサ36b、吸気スロットル弁(インテークスロットル)18が設けられている。吸気スロットル弁18は、吸気マニホールド37への吸気量を調整するためのものである。排気マニホールド38から排出された排気ガスは、ターボチャージャ36のタービン36a、排気ブレーキ20を通って、連続再生型DPF装置12に流入するようになっている。ターボチャージャ36は、エンジン10に搭載されており、そのタービン36aの出口側に排気通路51を形成する後述の排気アダプタ50の下端部に排気管11の先端部が接続されていると共に、排気アダプタ50に排気管11内に燃料を直接噴射するための燃料噴射弁52が設けられている。
【0022】
また、吸気マニホールド37と排気マニホールド38には、エンジン10から排出される排気ガスの一部を吸気マニホールド37に戻すためのEGR管19が接続され、このEGR管19には、吸気マニホールド37に戻す排気ガスを冷却するEGRクーラ39と、吸気マニホールド37に戻す排気ガス量であるEGR量を調整するEGR弁21とが設けられている。
【0023】
MAFセンサ17、DOC入口排気温度センサ32、DPF入口排気温度センサ33、車速センサ34、エンジン回転数センサ35からの信号は、エンジン10の全般的な制御を行うと共に、DPF再生制御も行う制御装置であるECU(電子制御ユニット)40に入力され、このECU40からの制御信号により、排気スロットル弁14、排気ブレーキ20、吸気スロットル弁18、EGR弁21、燃料噴射装置22、燃料噴射弁52等が制御されるようになっている。
【0024】
排気ガス浄化システム1は、総ポスト量算出部と、蓄積ダイリューション量演算部と、再生インターバル測定部と、強制再生部とを備えており、これらはECU40に搭載されている。
【0025】
総ポスト量算出部は、1回のDPF再生に要した総ポスト量を算出するようになっている。蓄積ダイリューション量演算部は、DPF再生毎のダイリューション量を積算すると共に、走行によって減少するダイリューション量を減算して、蓄積ダイリューション量を演算するようになっている。再生インターバル測定部は、DPF再生終了から次のDPF再生開始までの再生インターバルを測定するようになっている。強制再生部は、DPF12bのPM堆積量が所定量を超えたとき、蓄積ダイリューション量が所定の閾値未満であり、かつ再生インターバルが所定の閾値以上であるという条件(以下、自動再生条件という)を満たせば、車両の走行中に自動でDPF再生する自動再生を行うようになっている。また、強制再生部は、自動再生中には、自動再生ランプ(緑色)24を点灯するようになっている。
【0026】
また、強制再生部は、DPF12bのPM堆積量が所定量を超えたとき、自動再生条件を満たさなければ、車両の停車中に手動でDPF再生する手動再生を行うようドライバーに促し、車両の停車中にドライバーの操作により手動再生を行うようになっている。強制再生部は、DPF12bのPM堆積量が所定量を超え、かつ自動再生条件が満たされないときには、手動再生ランプ(橙色)23を点滅させることで、ドライバーに手動再生を促す(警告する)ようになっている。また、強制再生部は、手動再生中には、手動再生ランプ(橙色)23を点灯させ、手動再生中であることを表示するようになっている。さらに、強制再生部は、ドライバーが停車中に手動再生ボタン(DPF手動再生実行スイッチ)25を押すことにより、手動再生を実行するようになっている。
【0027】
ここで、PM堆積量は、差圧センサ31で検出したDPF12b前後の差圧、或いは車速センサ34で検出した車速を基に演算した走行距離に基づいて検出される。つまり、強制再生部は、DPF12b前後の差圧が所定の閾値を超えたとき、あるいは、走行距離が所定の閾値を超えたときに、DPF12bのPM堆積量が所定量を超えたと判断する。
【0028】
DPF再生では、DOC入口排気温度センサ32、あるいはDPF入口排気温度センサ33で検出される排気ガス温度が第1判定値(DOCの活性温度、例えば250℃)より低い時には、燃料のマルチ噴射とポスト噴射又は排気管内噴射を行って、エンジン10から排出される排気ガスの温度を上昇させ、DOC入口排気温度センサ32あるいはDPF入口排気温度センサ33で検出される排気ガス温度が第1判定値以上になったときに、ポスト噴射又は排気管内噴射を行うPM燃焼除去制御を実施し、DPF12bの強制再生を行う。PM燃焼除去制御では、必要に応じてマルチ噴射とポスト噴射又は排気管内噴射を組み合わせる。なお、手動再生においては、排気ガス温度が第1判定値以上となるまで排気ブレーキ20を閉じ、排気ガス温度を急速に上昇させるようになっている。また、手動再生においては、PM燃焼除去制御時に排気スロットル弁14を閉じて排気絞りを行い、排気ガス温度を上昇させるようになっている。
【0029】
DPF再生を行うために前記ターボチャージャ36の排気アダプタ50に燃料噴射弁52を設けて排気管11内に燃料を直接噴射するようにした排気管内燃料噴射システムにおいては、前記排気アダプタ50の下端部に前記排気管11の先端部が接続されるため、その接続部分に燃料噴射弁52からの噴射燃料がかかり、接続部分から燃料が滲み出して燃料漏れを生じる虞がある。そこで、この問題を解消するために、図2図4に示すように、前記排気アダプタ50の下端部には前記排気管11の先端フランジ部53を接続するための下部フランジ部54が設けられていると共に、これら先端フランジ部53及び下部フランジ部54のフランジ面53a,54aに燃料がかからないように遮蔽する筒状の遮蔽部55が前記排気管11内に突出した状態に設けられている。この遮蔽部55は、排気アダプタ50内の排気通路51の内壁を下方に突出ないし延出させることにより排気アダプタ50の下端部に一体形成されている。
【0030】
前記遮蔽部55の外径dは例えば70mmとされ、遮蔽部55の突出長さhは例えば16.5mmとされる。前記排気管11の径方向には前記遮蔽部55と前記排気管11との間に毛細管現象で燃料を滲み込ませないための所定の隙間sが設けられている。この隙間sは、例えば2.7mmとされる。また、前記排気アダプタ50の下部フランジ部54と前記排気管11の先端フランジ部53との間には、耐熱性及び滑り易い性質を有するモリブデンコートを施したガスケット56が介設されている。
【0031】
前記排気アダプタ50の下部フランジ部54には複数のスタッドボルト57が植え込まれ、これらスタットボルト57にナット58をねじ込むことにより下部フランジ部54に対して排気管11の先端フランジ部53が接続されている。
【0032】
一方、前記排気アダプタ50には、その排気通路51に対して燃料が排気ガスに混合され易いように燃料を斜め下方に向かって噴射するために、燃料噴射弁52が排気管11の軸心(軸心線)cから所定の角度αで伸びて取付けられている。排気アダプタ50の上側部には、ターボチャージャ36のタービン36aに接続される上部フランジ部59が設けられている。また、排気アダプタ50の上下中間部には前記燃料噴射弁52を取付けるための燃料噴射弁取付け部60が設けられ、この燃料噴射弁取付け部60には燃料噴射弁52の先端部を挿入するための挿入孔61が設けられている。
【0033】
前記挿入孔61に挿入された燃料噴射弁52の先端部52aの噴霧孔62が高温の排気ガスに晒されることにより排気ガス中の燃料成分が噴霧孔62に付着堆積することを防止するために、前記燃料噴射弁52の先端部52aが前記排気アダプタ50内の排気ガス流に接しないように排気アダプタ50内の排気通路51の内壁部から径方向外方に離間させて配置されている。具体的には前記排気アダプタ50の排気通路51の内壁部には、排気通路51から前記挿入孔61の先端部に向かって漸次縮径した円錐状の凹部63が設けられていると共に、燃料噴射弁52の先端部52aが更に挿入孔61の先端部と前記凹部63とが交わる境界から遠ざけて(後退させて)設けられている。
【0034】
また、前記燃料噴射弁取付け部60には、燃料噴射弁52の先端部52aの周りを冷却するための冷却水通路64が設けられ、この冷却水通路64には図示しない冷却水配管65を介してエンジンの冷却水が循環されるようになっている。
【0035】
以上の構成からなる排気管内燃料噴射システム5によれば、エンジン10に排気アダプタ50を介して排気管11を接続し、前記排気アダプタ50に設けた燃料噴射弁52により排気管11内に燃料を直接噴射する排気管内燃料噴射システム5であって、前記排気アダプタ50の下端部に前記排気管11の先端フランジ部53を接続するための下部フランジ部54を設けると共に、これら先端フランジ部53及び下部フランジ部54のフランジ面53a,54aに燃料がかからないように遮蔽する筒状の遮蔽部55を前記排気管11内に突出した状態に設けているため、フランジ面53a,54aに燃料がかかることがなく、排気アダプタ50と排気管11の接続部分からの燃料漏れを防止することができる。
【0036】
また、前記排気管11の径方向に該前記排気管11と前記遮蔽部55との間に燃料を滲み込ませないための所定の隙間sを設けているため、燃料漏れを更に防止することができる。
【0037】
更に、前記排気アダプタ50の下部フランジ部54と前記排気管11の先端フランジ部53との間にモリブデンコートが施されたガスケット56を介設しているため、モリブデンコートの耐熱性及び滑りやすい性質により対向する先端フランジ部53と下部フランジ部54のフランジ面53a,54a間の振動による滑りを許容しつつシール性を確保することができる。
【0038】
また、排気管内直接噴射ではポスト噴射と異なりダイリューションを起こさないため、排気ガス浄化システムにおいてダイリューション量の加算をしないことにすることにより手動再生要求頻度が減り、ユーザの利便性が向上する。
【符号の説明】
【0039】
5 排気管内燃料噴射システム
10 ディーゼルエンジン
11 排気管
12 連続再生型DPF装置
12a DOC
12b DPF
36 ターボチャージャ
50 排気アダプタ
52 燃料噴射弁
53 先端フランジ部
54 下部フランジ部
53a,54a フランジ面
55 遮蔽部
56 ガスケット
s 所定の隙間
図1
図2
図3
図4