特許第5768374号(P5768374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768374
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】基地局装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20150806BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20150806BHJP
   H04W 52/24 20090101ALI20150806BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20150806BHJP
【FI】
   H04W72/04 132
   H04W72/08
   H04W52/24
   H04W16/32
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-3442(P2011-3442)
(22)【出願日】2011年1月11日
(65)【公開番号】特開2012-147204(P2012-147204A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 義三
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−208915(JP,A)
【文献】 特開2010−246097(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081457(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/122778(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/111392(WO,A2)
【文献】 特開2005−94672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と通信接続する基地局装置であって、
前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当てを、周波数方向に変更する割当制御部と、
前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当ての変更前における変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、前記変更前受信電力及び前記変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、前記端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、前記変更前受信電力の測定結果での値から前記変更後受信電力の測定結果での値に亘って所定値以上に増加している場合、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号を受信していると判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記他の端末装置からの上り信号を受信していると判定されると、前記他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を回避するための干渉回避処理を行う干渉回避処理部と、を備えていることを特徴とする基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置との間で無線通信を行う基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信システムにおいては、基地局装置とこれに無線接続する移動可能な端末装置とを備えたものがある。基地局装置は、端末装置との間で通信可能な通信エリア(セル)を形成する。セル内に位置する端末装置は、当該セルを形成する基地局装置との間で無線通信を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−177532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記無線通信システムにおいて、複数の基地局装置それぞれが設定する通信エリア(セル)が重複している場合、ある基地局装置から送信された信号が、近傍の他の基地局装置のセル内にある端末装置に届いてしまい、その端末装置にとって干渉信号となることがある。
さらに、上記無線通信システムでは、基地局装置として、例えば、数キロメートルの大きさのセル(マクロセル)を形成するマクロ基地局装置と、前記マクロセル内に設置され数十メートル程度の比較的小さなセル(フェムトセル)を当該マクロセル内に形成するフェムト基地局装置とを備えたものもある。このような無線通信システムでは、フェムト基地局装置が形成するフェムトセルは、そのほぼ全域がマクロセルと重複するため、相互に干渉を生じさせ易い環境といえる。
【0005】
このような干渉を抑制する方法としては、ビームフォーミングにより信号に指向性をもたせたり、干渉を与えないように送信電力やリソース割り当てを調整するといった対策が考えられる。
その一方、これら対策によって干渉を効果的に抑制するために、基地局装置側が、干渉が生じる可能性のある端末装置の存在を認識する必要がある。不必要に干渉を抑制するための処理を行うと、自基地局装置が行う通信におけるスループットを低下させてしまうおそれがあるからである。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、干渉の生じる可能性のある端末装置の存在を認識することで、効果的に干渉を抑制できる基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、端末装置と通信接続する基地局装置であって、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当てを、周波数方向に変更する割当制御部と、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当ての変更前における変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、前記変更前受信電力及び前記変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、前記端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力に基づいて、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号の受信の有無を判定する判定部と、前記判定部による判定の結果、前記他の端末装置からの上り信号を受信していると判定されると、前記他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を回避するための干渉回避処理を行う干渉回避処理部と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成の基地局装置によれば、判定部が、端末装置の上り信号のリソース割り当ての変更前後の変更前受信電力、及び、変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力に基づいて、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号の受信の有無を判定するので、他の端末装置からの上り信号が、自基地局装置に接続する端末装置の上り信号と周波数方向で重複したとしても、確実に他の端末装置の上り信号の受信の有無を判定することができる。この結果、自基地局装置が上り信号を受信していることで当該自基地局装置との間で干渉が生じる可能性が高い他の端末装置の存在を、確実に認識することができ、前記他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を効果的に抑制回避することができる。
【0009】
(2)(3)前記干渉回避処理は、前記他の端末装置からの上り信号の周波数帯域に対して、前記端末装置のリソースが割り当てられるのを制限する処理であることが好ましく、さらにこの場合、前記割当制御部は、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当てについて、周波数方向への変更と、変更したリソース割り当ての維持と、を前記他の端末装置からの上り信号の周波数帯域以外の周波数帯域の範囲で繰り返すように構成することができる。
この場合、他の端末装置の上り信号の周波数帯域以外の周波数帯域の範囲で、自基地局装置に接続する端末装置に対する上り信号のリソース割り当ての変更と維持を繰り返すので、互いの上り信号が重複するのを回避でき、自セルと他セルとの間の干渉を抑制回避することができる。
【0010】
(4)また、前記干渉回避処理は、前記端末装置の上り信号の送信電力を抑制させる処理であってもよく、この場合、他セルの上り通信に与える干渉を抑制できる。
【0011】
(5)前記干渉回避処理は、自基地局装置が送信する下り信号の送信電力を抑制させる処理であってもよく、この場合、他セルの下り通信に与える干渉を抑制できる。
【0012】
(6)さらに、他の端末装置に対する下り信号のリソース割り当てが認識できる場合には、前記干渉回避処理部は、前記端末装置に対する下り信号のリソース割り当てを、前記他の端末装置に対して下り信号のリソースとして割り当てられている周波数帯域と重複しないように調整することもできる。
この場合、自セルと他セルとの間の干渉を抑制回避することができる。
【0013】
(7)前記判定部は、前記端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、自基地局装置との間で干渉が生じる可能性があると判断できる値に設定された第一の閾値以上である場合、前記他の端末装置からの上り信号を受信していると判定することが好ましい。
この場合、判定部は、自基地局装置との間で干渉が生じる可能性があると判断できる上り信号の送信元である他の端末装置の存在を認識することができる。
【0014】
(8)さらに、前記判定部は、前記端末装置に割り当てたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、前記第一の閾値よりも小さく設定された第二の閾値よりも小さくなると、受信していると判定していた前記他の端末装置からの上り信号の受信が無くなったと判定するものであってもよい。
この場合、判定部は、他の端末装置からの上り信号の受信電力が第二の閾値よりも小さくなると、他の端末装置からの上り信号の受信が無くなったと判定するので、干渉回避処理が不必要に継続されるのを防止できる。
また、第二の閾値は、第一の閾値よりも小さく設定されているので、他の端末装置からの上り信号を受信していると判定された後、当該上り信号の受信電力が変動してその値が一時的に低下したとしても、受信が無くなったと判定されるのを防止でき、より確実に他の端末装置の存在を認識することができる。
【0015】
(9)また、本発明は、端末装置と通信接続する基地局装置であって、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当てを、周波数方向に変更する割当制御部と、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当ての変更前における変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、前記変更前受信電力及び前記変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、前記端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、前記変更前受信電力の測定結果での値から前記変更後受信電力の測定結果での値に亘って所定値以上に増加している場合、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号を受信していると判定する判定部と、前記判定部による判定の結果、前記他の端末装置からの上り信号を受信していると判定されると、前記他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を回避するための干渉回避処理を行う干渉回避処理部と、を備えていることを特徴としている。
【0016】
上記構成の基地局装置によれば、判定部が、端末装置の上り信号のリソース割り当ての変更前後の変更前受信電力、及び、変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、変更前受信電力の測定結果での値から変更後受信電力の測定結果での値に亘って所定値以上に増加している場合、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号を受信していると判定するので、自基地局装置に接近中であることから自基地局装置における上り信号の受信電力が比較的短時間で増加する他の端末装置の存在を認識することができる。この結果、自基地局装置に接近することで、当該自基地局装置との間で干渉が生じる可能性が高い他の端末装置の存在を確実に認識することができ、前記他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を効果的に抑制回避することができる。
【0017】
(10)また、本発明は、端末装置と通信接続する基地局装置であって、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当てを、周波数方向に変更する割当制御部と、前記端末装置に対する上り信号のリソース割り当ての変更前における変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、前記変更前受信電力及び前記変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、前記端末装置の上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力に基づいて、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置が自基地局装置の近傍に存在するか否かを判定する判定部と、を備えていることを特徴としている。
【0018】
上記構成の基地局装置によれば、上述のように、判定部によって、他の端末装置からの上り信号が、自基地局装置に接続する端末装置の上り信号と周波数方向で重複したとしても、確実に他の端末装置の上り信号の受信の有無を判定することができる。この結果、自基地局装置が上り信号を受信していることで当該自基地局装置との間で干渉が生じる可能性が認められる程度に、自基地局装置の近傍に位置している他の端末装置が存在していると判定することができる。この結果、自基地局装置の近傍に存在することで干渉が生じる可能性の高い他の端末装置の存在を認識することができ、干渉を回避する処理等を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の基地局装置によれば、干渉の生じる可能性のある端末装置の存在を速やかに認識することで、効果的に干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る基地局装置を備えた無線通信システムの構成を示す概略図である。
図2】LTEにおける上り及び下りそれぞれの無線フレームの概略を示す図である。
図3】LTEの下りリンクの無線フレーム(DLフレーム)の構造を示す図である。
図4図1中、フェムト基地局装置の要部構成を示すブロック図である。
図5】割当制御部が行う端末装置への上り信号のリソース割り当ての一例を示す図である。
図6】判定部による上り受信信号の受信電力の測定結果の一例を示すグラフであり、(a)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(b)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(c)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(d)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果を示している。
図7】干渉回避処理部により行われる、自基地局装置の下り信号の調整による干渉回避処理の一例を示す図であり、(a)は、送信電力を調整する場合、(b)は、リソース割り当てを調整する場合を示している。
図8】自基地局装置に接続する端末装置の上り信号のリソース割り当て調整による干渉回避処理を行ったときの一例を示した図である。
図9図8で示したリソース割り当てを行ったときの判定部による上り信号の受信電力の測定結果を示すグラフであり、(a)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(b)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(c)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(d)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果を示している。各図の縦軸は受信電力、横軸は周波数を示している。
図10】自基地局装置に接続する端末装置の上り信号の送信電力調整による干渉回避処理の一例を示す図である。
図11】変形例に係る上り受信信号の受信電力の測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔1.通信システムの構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局装置を備えた無線通信システムの構成を示す概略図である。
この無線通信システムは、例えば、LTE(Long Term Evolution)が適用される携帯電話用のシステムであり、各基地局装置と、端末装置との間において、LTEに準拠した通信が行われる。ただし、通信方式は、LTEに限られるものではない。
【0022】
本システムは、複数の基地局装置1と、複数の基地局装置1のいずれかに対して無線接続して通信を行うことができる複数の端末装置2(移動端末;Mobile Station)とを備えている。
【0023】
本システムは、複数の基地局装置1として、例えば数キロメートルの大きさの通信エリア(マクロセル)MCを形成する複数のマクロ基地局装置(Macro Base Station)1aの他、マクロセルMC内に設置され数十メートル程度の比較的小さなフェムトセルFCを形成する複数のフェムト基地局装置(Femto Base Station)1bを備えている。なお、図例では、説明を容易とするため、一つのマクロ基地局装置1aと、この基地局装置1aが形成するマクロセルMC内に設置されている一つのフェムト基地局装置1bとを示している。
【0024】
マクロ基地局装置1a(以下、マクロBS1aともいう。)は、自己のマクロセルMC内にある端末装置2との間で無線通信を行うことができる。以下、マクロBS1aに通信接続する端末装置2をMS2aともいう。
また、フェムト基地局装置1b(以下、フェムトBS1bともいう)は、例えば、屋内等、マクロBS1aの無線波を受信し難い場所等に配置され、上記フェムトセルFCを形成する。
【0025】
フェムトBS1bは、自己が形成するフェムトセルFC内にある端末装置2との間で無線通信が可能である。本システムでは、マクロBS1aの無線波が受信し難い場所等においても、その場所に比較的小さいフェムトセルFCを形成するフェムトBS1bを設置することで、MS2に対して十分なスループットでのサービスの提供を可能にする。以下、フェムトBS1bに通信接続する端末装置2をMS2bともいう。
【0026】
〔2.LTEのフレーム構造〕
本実施形態の通信システムが準拠するLTEにおいて採用可能なFDD方式においては、上り信号(端末装置から基地局装置への送信信号)と、下り信号(基地局装置から端末装置への送信信号)との間で、互いに異なる使用周波数を割り当てることで、上り通信と下り通信とを同時に行う。
また、本実施形態においては、下り側の無線通信にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、上り側の無線通信にSC−FDMA(Single Carrier−Frequency Division Multiple Access)を採用している。
【0027】
図2は、LTEにおける上り及び下りそれぞれの無線フレームの概略を示す図である。LTEにおける下り側の基本フレームである無線フレーム(DLフレーム)及び上り側の無線フレーム(ULフレーム)は、その1無線フレーム分の時間長さがそれぞれ10ミリ秒であり、#0〜#9まで10個のサブフレームによって構成されている。これらDLフレームとULフレームは、そのタイミングが揃えられた状態で、時間軸方向に配列される。
無線フレームを構成するサブフレームは、それぞれ2つのスロットにより構成されている。また、1つのスロットは、7個のOFDMシンボルにより構成されている。
【0028】
図3は、LTEの下りリンクの無線フレーム(DLフレーム)の構造を示す図である。
1つのDLフレームは、上述のように、10個のサブフレームを時間軸方向に並べて構成されている(なお、図3では、1つのDLフレームの一部を示している)。1個のサブフレームは、時間軸方向に14個のOFDMシンボル分の長さ(=1msec)を有し、周波数帯域幅が最大20MHzに設定される。
【0029】
各サブフレームの先頭には、制御情報を格納するための領域(制御領域)が確保されており、その後に、ユーザデータを格納するためのPDSCH(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)が確保されている。
上記制御領域は、各サブフレームの先頭から時間軸方向に最大で3シンボル、周波数軸方向に各サブフレームの周波数帯域幅全域に亘って確保されている。
【0030】
前記制御領域には、下り及び上りリンクの割当情報等を送信するための下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)が割り当てられる。上記PDCCHは、前記割当情報のほか、後述する上り送信電力制御に関する情報や、下りのCQI(Channel Quality Indicator)についての報告の指示等に関する情報を含んでいる。なお、PDCCHの大きさは、制御情報の大きさに応じて変化する。
【0031】
なお、制御領域には、PDCCHのほか、PDCCHに関する情報を通知するための制御チャネル構成指示チャネル(PCFICH:Physical Control Format Indicator Channel)、PUSCHに対するハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)の受信成功通知(ACK:Acknowledgement)、受信失敗通知(NACK:Negative Acknowledgement)を送信するためのハイブリッドARQ指示チャネル(PHICH:Physical Hybrid−ARQ Indicator Channel)も割り当てられる。
【0032】
ユーザデータ等が格納されるPDSCHは、複数の端末装置で共有して用いられるエリアであり、ユーザデータの他、各端末装置個別の制御情報等も格納される。
このPDSCHは、データ伝送の上での基本単位領域(無線リソース割り当ての最小単位)であるリソースブロック(RB:Resource Block)を複数有して構成されている。リソースブロックは、周波数軸方向に12サブキャリア、時間軸方向に7OFDMシンボル分の大きさを有している。
【0033】
DLフレームの周波数帯域幅が10MHzに設定されている場合、600個のサブキャリアが配列される。したがって、1つのサブフレーム中に、リソースブロックは、周波数軸方向に50個配置されることになり、1つのサブフレーム中における時間軸方向のリソースブロックの数は2個配置される。
【0034】
また、1つのDLフレームを構成する10個のサブフレームの内、先頭(一番目)のサブフレーム、及び六番目のサブフレームの所定の位置に既知信号からなる同期信号が割り当てられている。
【0035】
基地局装置1は、無線リソースであるリソースブロックの端末装置への割り当て及びリソースブロック毎の送信電力値を決定する機能を有している。また、LTEの上りリンクの無線フレーム(ULフレーム)も、DLフレームと同様に、複数のリソースブロックを有しており、DLフレームのリソースブロックの端末装置への割り当ても、基地局装置1によって決定される。
【0036】
基地局装置1が決定した下り及び上りのリソースブロック割り当ては、割当情報としてPDCCHに格納され、基地局装置1から端末装置2へ送信される。基地局装置1及び端末装置2は、決定された割り当て情報に従って、リソースブロックを使用して通信を行う。
【0037】
〔3.基地局装置の構成〕
図4は、図1中、フェムトBS1bの要部構成を示すブロック図である。ここでは、フェムトBS1bの構成について説明するが、マクロBS1aの構成も、フェムトBS1bとほぼ同様である。
【0038】
フェムトBS1bは、アンテナ3と、アンテナ3に接続された受信部4と、受信部4から与えられる上り受信信号を上り受信データとして復調し上位レイヤに出力する復調部5と、前記上位レイヤから与えられる各種送信データを変調して下り送信信号として出力する変調部6と、変調部6が出力する下り送信信号をアンテナ3から送信する送信部7と、自基地局装置1b以外の他の基地局装置1に接続する他の端末装置2からの上り信号の有無を判定する判定部8と、判定部8の判定結果に応じて干渉回避のための処理を行う干渉回避処理部9と、自基地局装置1bに接続する端末装置(MS)2bへのリソース割り当てを行う割当制御部10と、上り信号及び下り信号の送信電力を制御するための出力制御部11とを備えている。
【0039】
受信部4は、上り信号の周波数帯域のみを通過させるフィルタや、増幅器、A/D変換器等を備えており、アンテナ3が受信する受信信号よりMS2からの上り信号を取得し、これを増幅するとともにデジタル信号に変換し上り受信信号として復調部5に出力する。
【0040】
送信部7は、D/A変換器や、フィルタ、増幅器等を備えており、変調部6からデジタル信号として出力される下り送信信号を受け取り、これをアナログ信号に変換するとともに増幅しアンテナ3から下り信号として送信させる機能を有している。
【0041】
変調部6は、前記上位レイヤから与えられる送信データについて、所定のデータ単位ごとに所定の方式で変調を行うとともに、割当制御部10が行うリソース割り当てに基づいて、変調されたデータをDLフレームに割り当て、自基地局装置1bの下り送信信号を生成する機能を有している。
【0042】
出力制御部11は、自己の判断、又は、干渉回避処理部9から出力される情報等に基づいて、自基地局装置1bの下り送信信号の送信電力、及び、自基地局装置1bに通信接続するMS2bの上り送信信号の送信電力を設定する機能を有している。出力制御部11は、変調部6を制御することで、自基地局装置1bの下り送信信号の送信電力を設定する。また、出力制御部11は、MS2に上り信号の送信電力を調整させるための制御情報を変調部6に与える。変調部6は、前記制御情報を、自基地局装置1bの下り送信信号のPDCCHに格納しMS2に送信することで、MS2に上り送信信号の送信電力を調整させる。このようにして、出力制御部11は、制御情報を、自基地局装置1bに接続するMS2に送信し、当該MS2の上り送信信号の送信電力を設定制御する。
【0043】
割当制御部10は、自基地局装置1bに接続するMS2bへのリソース割り当てについて、所定時間の経過ごとに当該MS2bに対する上り信号のリソース割り当てを周波数方向に変更する。また、割当制御部10は、MS2bに対するリソース割り当てを変更するごとに、その変更した周波数帯域に関する情報を判定部8に出力する。
【0044】
判定部8は、受信部4が受信する受信電力を測定し、その測定結果から、自基地局装置1bに接続するMS2bからの上り信号以外に、他の基地局装置1に接続する他のMS2からの上り信号を受信しているか否かを判定する。判定部8は、判定の結果を干渉回避処理部9に出力する。
干渉回避処理部9は、判定部8の結果に基づいて、他の基地局装置1が形成する他セル(他の基地局装置1と他のMS2との間の通信)と、自基地局装置が形成する自セル(自基地局装置1bとMS2bとの間の通信)との間で生じる干渉を回避するための処理である干渉回避処理を行う。
【0045】
〔4.自基地局装置に接続する端末装置の上り信号のリソース割り当てについて〕
図5は、割当制御部10が行うMS2bへの上り信号のリソース割り当ての一例を示す図である。図5において、横軸は時間、縦軸は周波数を表しており、MS2bが上り信号の送信に使用する周波数帯域を時間軸に沿って示している。
【0046】
図5中、時間T〜Tの期間においては、割当制御部10は、自基地局装置1bに接続するMS2bへのリソースを使用周波数帯域の一部である周波数帯域fの範囲に割り当てている。割当制御部10は、時間T〜Tの期間では、周波数帯域f以外の範囲にリソースを割り当てない。
【0047】
割当制御部10は、時間Tにおいて、MS2bの上り信号に割り当てるリソースを周波数帯域fから周波数帯域fに変更する。そして、時間T〜Tの期間では、周波数帯域f以外の範囲にリソースを割り当てない。
【0048】
同様に、割当制御部10は、時間T〜Tの期間では、MS2bの上り信号に割り当てるリソースを周波数帯域fに変更する。
さらに、時間T〜Tの期間では、MS2bの上り信号に割り当てるリソースを周波数帯域fに変更する。なお、各時間T〜Tは、互いに隣接する時間ごとの期間の幅が周期Δtとなるように設定されている。
【0049】
このように、割当制御部10は、所定時間である周期Δtが経過するごとに、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソース割り当てを、周波数帯域f、f、fの順序で、周波数方向に変更する。
【0050】
〔5.他の端末装置の上り信号の受信判定について〕
次に、判定部8が行う他のMS2からの上り信号の受信の有無の判定について説明する。
判定部8は、受信部4が受信した上り受信信号を取得し、この上り受信信号の受信電力を測定する。判定部8は、受信電力を周波数方向における分布として得る。
また、判定部8は、受信電力の測定を、少なくとも、割当制御部10によるリソース割り当ての変更が行われるごとに行う。
【0051】
図6は、判定部8による上り受信信号の受信電力の測定結果の一例を示すグラフであり、(a)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(b)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(c)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果、(d)は、図5中、時間T〜Tの期間の測定結果を示している。各図の縦軸は受信電力、横軸は周波数を示している。
【0052】
時間T〜Tの期間において、割当制御部10は、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソースを周波数帯域fに割り当てている(図5)。よって、判定部8の受信電力の測定結果は、図6(a)に示すように、周波数帯域fに、MS2bの上り信号を受信したことによる受信電力の増加部分Sが現れる。
【0053】
また、時間T〜Tの期間において、割当制御部10は、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソースを周波数帯域fに割り当てている(図5)。よって、判定部8の受信電力の測定結果は、図6(b)に示すように、周波数帯域fに、MS2bの上り信号に対応する受信電力の増加部分Sが現れる。
【0054】
さらに、時間T〜Tの期間において、割当制御部10は、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソースを周波数帯域fに割り当てている(図5)。よって、判定部8の受信電力の測定結果は、図6(c)に示すように、周波数帯域fに、MS2bの上り信号に対応する受信電力の増加部分Sが現れる。
【0055】
増加部分Sは、図6(a)〜(c)に示すように、割当制御部10によるリソース割り当ての周波数方向への変更に応じて自基地局装置1bの使用周波数帯域内で、周期Δtの経過ごとに変化する。
【0056】
ここで、例えば、時間T〜Tの期間の間で、他の基地局装置1であるマクロBS1aに接続する他の端末装置であるMS2aがフェムトBS1bのフェムトセルFC内に移動し接近したとする。
この場合、フェムトBS1bは、MS2aからマクロBS1aに向けた上り信号を受信する可能性が生じる。
このため、時間T〜Tの期間である、図6(d)では、他の端末装置であるMS2aからの上り信号に対応する受信電力の増加部分Sが現れる。なお、図6(d)では、MS2aの上り信号のリソースは、周波数帯域fに割り当てられている。
【0057】
仮に、時間T〜Tの期間の間で、他の端末装置であるMS2aがフェムトBS1bのフェムトセルFC内に移動し接近した場合、増加部分Sが増加部分Sと重複するので、このタイミングでは、増加部分Sを認識できないが、次のタイミングである時間T〜Tの期間では、増加部分Sを認識することができる。
【0058】
判定部8は、自基地局装置1bに接続するMS2bにリソース割り当てされている周波数帯域以外の周波数帯域において、第一閾値Th以上の受信電力を検知すると、他の端末装置の上り信号を受信していると判定する機能を有している。
よって、図6(d)のように、MS2aの上り信号に対応する増加部分Sが第一閾値Thを超えている場合、判定部8は、他の端末装置からの上り信号を受信していると判定する。
【0059】
このように、判定部8は、時間Tにおけるリソース割り当ての変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、変更前受信電力及び変更後受信電力それぞれの測定結果(図6(c),(d))から得られる、MS2bの上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力に基づいて、他の基地局装置1に通信接続する他のMS2からの上り信号の受信の有無を判定する。
【0060】
判定部8は、上述したように、上記判定の結果を干渉回避処理部9に出力する。また、判定部8は、上述の受信電力の測定とそれに基づく判定を、少なくとも、割当制御部10によるリソース割り当ての変更が行われるごとに行われるように、所定の周期で随時行う。
なお、上記第一閾値Thは、自基地局装置1bと、他の基地局装置に接続する他の端末装置との関係で、干渉が生じる可能性があると判断できる受信電力に設定されている。
このため、判定部8は、自基地局装置1bとの間で干渉が生じる可能性があると判断できる他の端末装置の存在を認識することができる。
【0061】
〔6.干渉回避処理について〕
他の端末装置からの上り信号を受信している旨の判定結果が与えられると、干渉回避処理部9は、前記他の端末装置が接続する他の基地局装置1が形成する他セルと、自セルとの間で生じる干渉を回避するための干渉回避処理を行うことを決定する。自基地局装置1bが、他の基地局装置1に接続するMS2の上り信号を受信している場合、他の基地局装置1が形成する他セルと、自セルとの間で干渉が生じる可能性が高いからである。
干渉回避処理を行うことを決定した干渉回避処理部9は、自基地局装置1bの下り信号の送信電力及びリソース割り当ての少なくとも一方を調整することで、自基地局装置1bの下り信号に起因して、他セルと、自セルとの間で生じる干渉を回避する。
また、干渉回避処理部9は、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号の送信電力及びリソース割り当ての少なくとも一方を調整することで、MS2bの上り信号に起因して、他セルと、自セルとの間で生じる干渉を回避する。
【0062】
〔6.1 自基地局装置の下り信号の調整について〕
図7は、干渉回避処理部9により行われる、自基地局装置1bの下り信号の調整による干渉回避処理の一例を示す図である。
干渉回避処理部9は、自基地局装置1bの近傍に位置する他の端末装置であるMS2aに対する干渉を回避するための処理として、図7(a)に示すように、自基地局装置1bの下り信号の送信電力を下げるように調整する。
フェムトBS1bは、自基地局装置1bの下り信号の送信電力を抑制すれば、自基地局装置1bのセルを小さくすることができる。この結果、自基地局装置1bの下り信号が他の端末装置であるMS2aに到達するのを抑制することができ、自基地局装置1bの下り信号が、MS2aに対して与える干渉を抑制回避することができる。
【0063】
より具体的に、図7(a)に示すように、出力制御部11は、自基地局装置1bの基本設定として予め定められた第一の下り送信電力Pd1で自基地局装置1bの下り信号を送信する。
干渉回避処理部9は、自基地局装置1bの下り信号の送信電力を下げることで干渉回避処理を行うことを決定すると、第一の下り送信電力Pd1よりも小さく設定された第二の下り送信電力Pd2で下り信号の送信を行わせるように、出力制御部11を制御する。
【0064】
ここで、第二の下り送信電力Pd2は、自基地局装置1bに接続するMS2bとの間の通信において必要最低限のスループットを維持することができる範囲の中で、MS2aの下り通信に対して与える干渉を抑制可能な値に設定される。
【0065】
干渉回避処理部9は、上記のように出力制御部11を制御することで、下り信号の送信電力を抑制し、自基地局装置1bの下り信号がMS2aの下り通信に対して与える干渉を回避抑制する処理を行う。
【0066】
また、干渉回避処理部9は、他の端末装置であるMS2aに対して与える干渉の回避処理として、図7(b)に示すように、自基地局装置1bの下り信号のリソース割り当てを調整することもできる。
【0067】
フェムトBS1bは、他の基地局装置であるマクロBS1aがMS2aの下り信号としてリソース割り当てを行っている周波数帯域を認識している場合には、その周波数帯域と重複しないように、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する下り信号のリソース割り当てを調整する。これにより、自基地局装置1bからMS2bに向けた下り信号が、MS2aの下り通信に対して干渉を与えるのを回避することができる。
【0068】
より具体的に、図7(b)に示すように、割当制御部10が、周波数fd1からfd2の帯域幅で、自基地局装置1bに接続するMS2bに対して下り信号のリソースを割り当てているとする。
干渉回避処理部9は、MS2bに対する下り信号のリソース割り当てを調整することで干渉回避処理を行うことを決定すると、他の基地局装置であるマクロBS1aがMS2aの下り信号としてリソース割り当てを行っている周波数帯域に関する情報を取得する。
【0069】
干渉回避処理部9は、MS2aの下り信号として割り当てられているリソースの周波数帯域に関する情報を、例えば、バックボーン回線を通じてネットワーク上の上位機器から取得することができる。また、各基地局装置1が互いにX2インターフェースによる基地局間通信により通信可能である場合には、この基地局間通信によって前記情報を取得することができる。さらに、フェムトBS1bが、他の基地局装置1の下り信号を傍受するための受信部を備えている場合には、マクロBS1aの下り信号を傍受することで前記情報を取得することができる。
【0070】
図7(b)において、MS2aへの下り信号として割り当てられているリソースの周波数帯域が、周波数fd3からfd2の帯域幅であったとすると、干渉回避処理部9は、その旨を示す前記情報を上記機器やマクロBS1a等から取得する。
前記情報を取得すると、干渉回避処理部9は、MS2bに対する下り信号のリソース割り当てを、周波数fd1からfd2までの帯域幅から、周波数fd1からfd2までの帯域幅にとなるように、割当制御部10に調整させる。
【0071】
干渉回避処理部9は、上記のように割当制御部10を制御することで、MS2bに対する下り信号のリソース割り当てを調整し、自基地局装置1bの下り信号と、マクロBS1aの下り信号との重複を回避する。この結果、自基地局装置1bの下り信号に起因して、他セルと、自セルとの間で生じる干渉を回避することができる。
以上のようにして、干渉回避処理部9は、自基地局装置1bの下り信号がMS2aに対して与える干渉を回避抑制する処理を行う。
【0072】
上記干渉回避処理において、自基地局装置1bの下り信号の周波数帯域を調整する処理は、互いの下り信号の重複を回避することができるため、干渉回避の点においては、送信電力を調整する処理よりも効果的である。しかし、周波数帯域を調整する処理を行うためには、他の基地局装置1のリソース割り当てに関する情報が必要である。
【0073】
従って、干渉回避処理部9は、干渉回避処理を行うことを決定したときに、他の基地局装置1のリソース割り当てに関する情報が取得できた場合には、自基地局装置1bの下り信号の周波数帯域を調整する処理を優先的に行う。
一方、他の基地局装置1のリソース割り当てに関する情報が取得できない場合には、干渉回避処理部9は、送信電力を調整する処理を行う。
【0074】
〔6.2 自基地局装置に接続する端末装置の上り信号の調整について〕
次に、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号の調整による干渉回避処理について説明する。
図8は、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号のリソース割り当て調整による干渉回避処理を行ったときの一例を示した図である。
図8中、時間T〜Tの期間は、図5及び図6の時間T〜Tの期間に対応している。
【0075】
図6(d)で示したように、時間T〜Tの期間では、判定部8は、他の端末装置であるMS2aの上り信号を受信していると判定する。また、判定部8は、MS2aの上り信号を受信している旨の判定とともに、MS2aの上り信号の周波数帯域を示す情報を、干渉回避処理部9に出力する。
従って、干渉回避処理部9は、MS2aの上り信号を受信している旨の判定結果を得るとともに、MS2aの上り信号のリソースが周波数帯域fに割り当てられていることを認識できる。
【0076】
干渉回避処理部9は、MS2aの上り信号を受信している旨の判定結果を得ることで、干渉回避処理を行うことを決定する。
干渉回避処理を行うことを決定した干渉回避処理部9は、周波数fに対して、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソースを割り当てるのを制限する。干渉回避処理部9は、上記リソース割り当ての制限を実行するように割当制御部10を制御する。
【0077】
さらに、干渉回避処理部9は、図8に示すように、MS2bに対する上り信号のリソース割り当てが、周期Δtを経過するごとに周波数帯域f、fの間で交互に変更されるように、割当制御部10を制御する。これにより、割当制御部10は、他の端末装置であるMS2aからの上り信号の周波数帯域(f)以外の周波数帯域(f,f)の範囲で、MS2bに対する上り信号のリソース割り当てを、周期Δtが経過するごとに周波数方向に変更する。
【0078】
図9は、図8で示したリソース割り当てを行ったときの判定部8による上り信号の受信電力の測定結果を示すグラフであり、(a)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(b)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(c)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果、(d)は、図8中、時間T〜Tの期間の測定結果を示している。各図の縦軸は受信電力、横軸は周波数を示している。
【0079】
図9(a)〜(d)に示すように、MS2bの上り信号を受信したことによる受信電力の増加部分Sは、割当制御部10によるリソース割り当ての周波数方向への変更に応じて周波数帯域f、fの間で交互に現れる。
従って、周波数fに現れているMS2aの上り信号に対応する受信電力の増加部分Sと、増加部分Sとは、互いに重複することがない。
【0080】
干渉回避処理部9は、上記のように割当制御部10を制御することで、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソース割り当てを調整し、MS2bの上り信号と、MS2aの上り信号との重複を回避する。この結果、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号に起因して、他セルと、自セルとの間で生じる干渉を回避することができる。
【0081】
また、干渉回避処理部9は、MS2bの上り信号の送信電力を調整することで、他の端末装置であるMS2aの上り通信に与える干渉を回避する処理を行うこともできる。
図10は、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号の送信電力調整による干渉回避処理の一例を示す図である。
【0082】
干渉回避処理部9は、自基地局装置1bの近傍に位置する他の端末装置であるMS2aの上り信号に与える干渉を回避するための処理として、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号の送信電力を下げるように調整する。
MS2bの上り信号の送信電力を相対的に下げれば、当該MS2bの上り信号が、他の基地局装置であるマクロBS1aに到達するのを抑制でき、MS2aの上り通信に対して与える干渉を回避することができる。
【0083】
より具体的に、図10に示すように、出力制御部11は、自基地局装置1bのセルの大きさに応じて基本設定として予め定められた第一の上り送信電力Pu1で上り信号を送信するようにMS2bを制御する。
干渉回避処理部9は、MS2bの上り信号の送信電力を下げることで干渉回避処理を行うことを決定すると、第一の上り送信電力Pu1よりも小さく設定された第二の上り送信電力Pu2で上り信号の送信を行わせるように、出力制御部11を制御する。
【0084】
ここで、第二の上り送信電力Pu2は、自基地局装置1bとの間の通信において必要最低限のスループットを維持することができる範囲の中で、MS2aとの間の干渉を抑制可能な値に設定される。
干渉回避処理部9は、上記のように出力制御部11を制御することで、MS2bの上り信号の送信電力を相対的に下げ、当該MS2bの上り信号がMS2aの上り通信に対して与える干渉を回避抑制する処理を行う。
なお、MS2bの上り信号の周波数帯域は、割当制御部10によって、周波数帯域f〜fの間で周波数方向に所定の周期で変更される。
【0085】
上記干渉回避処理において、MS2bの上り信号のリソース割り当てを調整する処理は、互いの上り信号の重複を回避することができるため、干渉回避の点においては、送信電力を調整する処理よりも効果的である。
従って、干渉回避処理部9は、干渉回避処理を行うことを決定したときに、リソース割り当ての調整によって干渉回避可能な場合には、MS2bの上り信号のリソース割り当てを調整する処理を優先的に行う。
一方、互いの上り信号の重複を回避するために必要な空きリソースが無い等、MS2bの上り信号のリソース割り当ての調整によって干渉回避ができない場合には、干渉回避処理部9は、送信電力を調整する処理を行う。
【0086】
〔7.他の端末装置が自基地局装置の近傍に存在するか否かの判定について〕
判定部8は、上述のように、上り信号の受信電力の測定結果から、他のMS2からの上り信号の受信の有無の判定を行うが、干渉が生じる可能性があると判断できる程度の比較的高い受信電力で他の端末装置の上り信号が受信される場合、当該他の端末装置は、自基地局装置1bの近傍に位置していることを示している。
従って、判定部8は、上り信号の受信電力の測定結果から、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置が自基地局装置1bの近傍に存在するか否かを判定しているといえる。
【0087】
ここで、干渉回避処理部9は、上述のように、他の端末装置からの上り信号を受信している旨の判定結果が判定部8から与えられると、他の端末装置との間で干渉が生じる可能性があることから干渉回避処理を行う。
つまり、干渉回避処理部9は、他の端末装置が自基地局装置1bの近傍に存在し、当該他の端末装置との間で干渉が生じる可能性がある間、干渉回避処理を行う必要がある。
【0088】
図9(a)(及び図6(d))に示すように、時間T〜Tの期間において、他の端末装置であるMS2aの上り信号に対応する増加部分Sが第一閾値Thを超えることで、当該MS2aからの上り信号を受信していると判定すると、判定部8は、他の端末装置の上り信号を受信している旨の判定結果を干渉回避処理部9に出力する。これによって、干渉回避処理部9は、干渉回避処理を開始する。
【0089】
その後、判定部8は、図9(c)に示すように、増加部分Sが、第一閾値Thよりも小さくなったとしても、第一閾値Thよりも小さい値に設定されている第二閾値Thよりも大きければ、MS2aの上り信号を継続して受信しているものとして、他の端末装置の上り信号を受信している旨の判定結果を出力する。
【0090】
図9(d)に示すように、増加部分Sが、第二閾値Thよりも小さくなった場合、判定部8は、受信していたMS2aの上り信号の受信が無くなったと判定する。これにより、判定部8は、受信していた他の端末装置の上り信号の受信が無くなった旨の判定結果を出力する。
【0091】
つまり、判定部8は、一度、他の端末装置の上り信号を受信していると判定すると、検知された受信電力が第一閾値Thよりも小さい値に設定されている第二閾値Thよりも小さいと判定されるまで、他の端末装置の上り信号を受信していると判定する。
なお、第二閾値Thは、図9(d)に示すように、増加部分Sがバックグラウンドと判別が付かない程度に低下することで、実質的に上り信号を受信していないと判断できる値に設定されている。
【0092】
干渉回避処理部9は、他の端末装置の上り信号を受信している旨の判定結果が与えられることで、干渉回避処理を行うことを決定し、受信していた他の端末装置の上り信号の受信が無くなった旨の判定結果が与えられることで、干渉回避処理を終了することを決定する。
よって、干渉回避処理部9は、他の端末装置の上り信号を受信している旨の判定結果が与えられてから、受信していた他の端末装置の上り信号の受信が無くなった旨の判定結果が与えられるまでの間、干渉回避処理を行う。
【0093】
判定部8は、他の端末装置からの上り信号の受信電力が第二の閾値Thよりも小さくなると、他の端末装置からの上り信号の受信が無くなったと判定するので、干渉回避処理を不必要に継続するのを防止できる。
【0094】
また、第二の閾値Thは、第一の閾値Thよりも小さくかつ実質的に上り信号を受信していないと判断できる値に設定されているので、他の端末装置からの上り信号を受信していると判定された後、当該上り信号の受信電力が変動してその値が一時的に低下したとしても、受信が無くなったと判定されるのを防止でき、より確実に他の端末装置の存在を認識することができる。
【0095】
以上のように、本実施形態によるフェムトBS1bによれば、判定部8が、MS2bの上り信号のリソース割り当ての変更前後の変更前受信電力、及び、変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、MS2bの上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力に基づいて、他の基地局装置に通信接続する他の端末装置からの上り信号の受信の有無を判定するので、他の端末装置からの上り信号が、自基地局装置1bに接続するMS2bの上り信号と周波数方向で重複したとしても、確実に他の端末装置の上り信号の受信の有無を判定することができる。
【0096】
さらに、判定部8は、他の端末装置の上り信号の受信が有ることで他の端末装置が近傍に存在していると判定し、他の端末装置の上り信号の受信が無いことで他の端末装置が近傍に存在しないと判定することができる。このため、判定部8は、他の端末装置が自基地局装置1bの近傍に存在するか否かをより正確に判定することができる。
【0097】
この結果、自基地局装置1bが上り信号を受信していることで当該自基地局装置1bとの間で干渉が生じる可能性が高い他の端末装置の存在を、確実に認識することができ、他セルと、自セルとの間で生じる干渉を効果的に抑制回避することができる。
【0098】
また、上記実施形態において、干渉回避処理部9は、他の端末装置であるMS2aからの上り信号の周波数帯域f図6)に対して、自基地局装置1bに接続するMS2bのリソースが割り当てられるのを制限する。加えて、割当制御部10は、他の端末装置であるMS2aからの上り信号の周波数帯域(f)以外の周波数帯域(f,f)の範囲で、MS2bに対する上り信号のリソース割り当てを、周期Δtが経過するごとに周波数方向に変更するので、互いの上り信号が重複するのを回避できる。この結果、MS2bによる上り信号が、MS2aの上り通信に対して与える干渉を抑制回避することができる。
【0099】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。
例えば、上記実施形態において、判定部8が行う、他の端末装置の上り信号の受信判定については、自基地局装置1bに接続するMS2bにリソース割り当てされている周波数帯域以外の周波数帯域において、第一閾値Th以上の受信電力を検知すると、他のMS2の上り信号を受信していると判定する態様について例示した。
これに対して、例えば、図11に示すように、自基地局装置1bに接続するMS2bにリソース割り当てされている周波数帯域以外の周波数帯域において、予め設定される所定値以上に受信電力が増加した場合に、他のMS2の上り信号を受信していると判定するように構成してもよい。
【0100】
図11(a)〜(c)は、上記変形例に係る、図6(a)〜(c)と同様の期間における上り受信信号の受信電力の測定結果の一例を示している。
図11(b)には、他の端末装置であるMS2aからの上り信号に対応する受信電力の増加部分Sが現れているものとする。この時点では、非常に小さい電力なので受信と判定されない。
図11(c)の段階で、増加部分Sが、所定値以上の増分で受信電力が増加した場合、仮に、上記で示した第一閾値Th等以下の受信電力であっても、本形態の判定部8は、他の端末装置の上り信号を受信していると判定する。
【0101】
つまり、上記形態において、判定部8は、自基地局装置に接続するMS2bに対するリソース割り当ての変更前における変更前受信電力、及び、変更後における変更後受信電力を測定し、変更前受信電力及び変更後受信電力それぞれの測定結果から得られる、MS2bの上り信号として割り当てられたリソースの周波数帯域以外の周波数帯域における受信電力が、変更前受信電力の測定結果での値から変更後受信電力の測定結果での値に亘って所定値以上に増加している場合、他の基地局装置1に通信接続する他のMS2からの上り信号を受信していると判定する。
【0102】
上記形態では、自基地局装置に接近中であることから自基地局装置における上り信号の受信電力が比較的短時間で増加する他のMS2の存在を認識することができる。この結果、自基地局装置に接近することで、当該自基地局装置との間で干渉が生じる可能性が高い他のMS2の存在を確実に認識することができ、他の基地局装置が形成する他セルと、自基地局装置が形成する自セルとの間で生じる干渉を効果的に抑制回避することができる。
【0103】
また、上記実施形態において、割当制御部10が、自基地局装置1bに接続するMS2bに対する上り信号のリソース割り当てを、周期Δtが経過するごとに周波数帯域f、f、fの順で周波数方向に変更する場合を例示したが、ある程度確率が同じであれば、周波数方向によりランダムにリソース割り当てを変更することもできる。
また、リソース割り当ての周波数方向への変更を行う際のタイミングについても、周期Δtの経過ごとといった一定期間ごとに行う必要はなく、適宜調整することができる。
【0104】
また、上記実施形態において、干渉回避処理部9が行う干渉回避処理が、送信電力の調整、又はリソース割り当ての調整のいずれか一方を選択して行う場合を例示したが、送信電力の調整と、リソース割り当ての調整とを互いに組み合わせた干渉回避処理を行うこともできる。
【0105】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 基地局装置
1a マクロ基地局装置
1b フェムト基地局装置
2a,2b 端末装置
8 判定部
9 干渉回避処理部
10 割当制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11