(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768379
(24)【登録日】2015年7月3日
    
      
        (45)【発行日】2015年8月26日
      
    (54)【発明の名称】ワイヤハーネス用のプロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G   3/04        20060101AFI20150806BHJP        
   B60R  16/02        20060101ALI20150806BHJP        
   H01B   7/00        20060101ALI20150806BHJP        
   H01B   7/24        20060101ALI20150806BHJP        
【FI】
   H02G3/04 037
   B60R16/02 623T
   H01B7/00 301
   H01B7/24
【請求項の数】5
【全頁数】11
      (21)【出願番号】特願2011-9261(P2011-9261)
(22)【出願日】2011年1月19日
    
      (65)【公開番号】特開2012-152040(P2012-152040A)
(43)【公開日】2012年8月9日
    【審査請求日】2013年10月31日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田  和美
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】原  一生
              
            
        
      
    
      【審査官】
        神田  太郎
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開平8−205360(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2009−207299(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−189438(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平10−271656(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G      3/04        
B60R    16/02        
H01B      7/00        
H01B      7/24        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  車両に配索されるワイヤハーネスに外装する樹脂成形品からなるプロテクタであり、
  底壁と、該底壁の周縁から突設すると共にワイヤハーネスの入口と出口を設けた周壁を備えた本体と、該本体の上面開口を閉鎖する蓋を備え、
  前記本体の底壁と周壁に囲まれたワイヤハーネス主通路の側部空間に前記底壁からスプライス収容部を突設し、該スプライス収容部はコ字状の両側壁と連結壁を備えた外枠壁と、前記両側壁と平行に設けた中間仕切壁を備え、かつ、前記外枠壁に内嵌すると共に前記中間仕切壁用貫通穴を設けた絶縁樹脂材からなる平板状の仕切プレートを1枚以上備え、
  前記スプライス収容部の両側壁と中間仕切壁からなる垂直壁と、スプライスの個数に応じて増加して取り付ける前記仕切プレートからなる水平壁で区切られた複数のスプライス収容室を上下複数段且つ各段複数列で設けていることを特徴とするワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項2】
  前記プロテクタの本体の前記周壁の中間位置に分岐線用開口を設け、スプライスを設けた電線を前記分岐線用開口を通し、前記スプライス収容室にスプライスを収容できる構成としている請求項1に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項3】
  前記仕切プレートは、下段のスプライス収容室の全てにスプライスを収容した後に前記外枠壁に内嵌して下段のスプライスの上面で支持して取り付け、下段のスプライス収容室の天井板とすると共に中段のスプライス収容室の底板とし、
  前記中段のスプライス収容室の全てにスプライスを収容した後に再度前記仕切りプレートを取り付けて中段のスプライス収容室の天井板とすると共に上段のスプライス収容室の底板としている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項4】
  前記本体に設ける前記周壁は円弧部を有する形状とした外側壁と内側壁とからなり、前記外側壁に沿った内部空間を前記ワイヤハーネスの円弧状の主通路とし、該周壁の周方向の両端に前記ワイヤハーネスの入口と出口を設けると共に、該入口と出口の間で前記内側壁に接して前記スプライス収容部を設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項5】
  前記ワイヤハーネスの電線群中に複数のシールド線があり、これらシールド線のシールド層とアース接続電線を接続するシールド継ぎ足し用のスプライスを前記スプライス収容室に収容している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明はワイヤハーネス用のプロテクタに関し、特に、ワイヤハーネスの多数のスプライス部を効率よく収容できるようにするものである。
 
【背景技術】
【0002】
  車両に配索するワイヤハーネスは多数本の電線を集束して構成されており、電子制御される車載品の急増に伴って、ワイヤハーネスを構成する電線中に占めるシールド線の割合が多くなっている。これらシールド線は金属材からなるシールド層をアース接続する必要があり、シールド線が増加すると、シールド層をドレン線と接続するシールド継ぎ足しスプライスが増加する。大型電子制御ユニットに接続されるワイヤハーネスは多数のシールド線を含むため、該ワイヤハーネスから分岐するスプライスも多数になり、かつ、該ワイヤハーネスの端末部分に集中しやすい。
【0003】
  一方、車両に配索するワイヤハーネスは、経路規制および他部材との干渉防止を図る必要がある領域では樹脂成形品からなるプロテクタの内部を通している。前記ワイヤハーネスから多数のスプライスが分岐する場合、これらのスプライスをプロテクタの内部に収容することが好ましい。
【0004】
  従来、本出願人は特開平8−205360号公報で
図7(A)(B)(C)に示すスプライスを収容できるプロテクタ100を提供している。該プロテクタ100はワイヤハーネスの幹線110から分岐させたスプライス部120を有する枝電線111のみを通しており、プロテクタ100内の電線通路101の中間部にスプライス部保持部103を幅方向全体に並設し、各枝線のスプライス部120をそれぞれスプライス部保持部103に通して分離収容している。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−205360号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  前記特許文献1のプロテクタは、スプライスを設けたワイヤハーネスの枝線のみを通すスプライス収容専用のプロテクタである。よって、ワイヤハーネスの幹線およびスプライスが無い枝線もプロテクタに通す必要がある場合には、プロテクタが別に必要になる。その場合、2種類のプロテクタが必要となり、コスト高になる。かつ、2種類のプロテクタを配置するスペースも必要となり、スペース上の制約をうけて配置できない場合もある。
【0007】
  さらに、スプライス収容専用の前記プロテクタ100は、スプライス部保持部103を並列に設けているだけであるため、収容するスプライスの個数が多くなると、プロテクタ100の幅を大きくする必要があり、プロテクタ100が大型化し、スペース上の規制を受けやすい。
【0008】
  本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの幹線および枝線を通す1つのプロテクタ内に、スプライス収容部を設け、かつ、スプライスの個数の増大に応じてスプライス収容室を増加できるプロテクタを提供することを課題としている。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  前記課題を解決するため、本発明は、車両に配索されるワイヤハーネスに外装する樹脂成形品からなるプロテクタであり、
  底壁と、該底壁の周縁から突設すると共にワイヤハーネスの入口と出口を設けた周壁を備えた本体と、該本体の上面開口を閉鎖する蓋を備え、
  前記本体の底壁と周壁に囲まれたワイヤハーネス主通路の側部空間に前記底壁からスプライス収容部を突設し、該スプライス収容部はコ字状の両側壁と連結壁を備えた外枠壁と、前記両側壁と平行に設けた中間仕切壁を備え、かつ、前記外枠壁に内嵌すると共に前記中間仕切壁用貫通穴を設けた絶縁樹脂材からなる平板状の仕切プレートを1枚以上備え、
  前記スプライス収容部の両側壁と中間仕切壁からなる垂直壁と、スプライスの個数に応じて増加して取り付ける前記仕切プレートからなる水平壁で区切られた複数のスプライス収容室を上下複数段且つ各段複数列で設けていることを特徴とするワイヤハーネス用のプロテクタを提供している。
【0010】
  このように、本発明のプロテクタは、ワイヤハーネスのスプライスを設けた枝線およびスプライスを設けていない幹線および枝線も挿通できるものとし、プロテクタ本体の内部空間に、スプライスを設けていない幹線および枝線が挿通する主通路を前記入口から出口にかけて設けると共に、該主通路の側部にスプライスを収容する部分を並設している。    よって、前記入口から出口に向けて主通路に沿って配線するワイヤハーネスの幹線から分岐する複数の枝線のスプライスをそれぞれ前記各スプライス収容室に前記外枠壁の連結壁と反対側の開口から挿入して収容することができる。したがって、特許文献1のスプライス収容専用のプロテクタを設ける必要がない。
【0011】
  また、前記プロテクタの本体の前記周壁の中間位置に分岐線用開口を設け、スプライスを設けた電線を前記分岐線用開口を通し、前記スプライス収容室にスプライスを収容できる構成としてもよい。
【0012】
  前記構成とすると、プロテクタの入口から挿入し主通路を通すワイヤハーネスの幹線から分岐する枝線のスプライスと、前記分岐線用開口から挿入して前記幹線と合流して出口から引き出す枝線のスプライスを集中的にプロテクタ内のスプライス収容部に収容できる。
【0013】
  また、本発明のプロテクタは、前記仕切プレートを取り付けて、スプライス収容室の天井板および上段側の底板とすることで各スプライス収容室を個別隔離でき、スプライス同士の重なりによる接触や他の電線などの接触も確実に防止できる。かつ、仕切プレートの取り付け枚数を増加するだけで、スプライス収容室の個数を簡単に増加することができ、プロテクタ内の狭い空間に多数のスプライスを効率よく収容することができる。
【0014】
  具体的には、前記仕切プレートは、下段の各スプライス収容室の全てにそれぞれスプライスを収容した後に、前記外枠壁に内嵌して下段のスプライスの上面で支持して取り付け、下段のスプライス収容室の天井板とすると共に中段のスプライス収容室の底板とし、  前記中段のスプライス収容室の全てにスプライスを収容した後に再度前記仕切りプレートを取り付けて中段のスプライス収容室の天井板とすると共に上段のスプライス収容室の底板としている。
【0015】
  上段のスプライス収容室内の全てにスプライスを収容した後、さらに仕切プレートを取り付けることにより、さらにスプライス収容室の個数を増加できる。このように、仕切プレートの取付枚数を増加させるだけで、簡単にスプライス収容室を増加することができる。一方、スプライスの個数が少ない場合には、仕切プレートの個数を減らせばよく、その場合、天井となる仕切プレートを取り付けることで、スプライス収容室内にスプライスを押さえることができる。
【0016】
  前記プロテクタ本体に設ける前記周壁は円弧部を有する形状とした外側壁と内側壁とからなり、前記外側壁に沿った内部空間を前記ワイヤハーネスの円弧状の主通路とし、該周壁の周方向の両端に前記ワイヤハーネスの入口と出口を設けると共に、該入口と出口の間で前記内側壁に接して前記スプライス収容部を設けていることが好ましい。
【0017】
  プロテクタの外形はワイヤハーネスの配索経路およびプロテクタの配置スペースとの関係で規制されるが、前記周壁に設ける円弧部を比較的大きなアールとし、かつ、内側壁の外面に固定用ブラケットを設けると全体形状が略幅広長方形状となり、主通路の内周側にスプライス収容部を突出させることなく設置できる。
【0018】
  前記ワイヤハーネスの電線群中に複数のシールド線があり、これらシールド線のシールド層をアース接続する電線との継ぎ足しスプライスを前記スプライス収容室に収容することが好ましい。
【0019】
  前記のように電子制御ユニットに接続するワイヤハーネスはシールド線を多数含むため、シールド継ぎ足しスプライスが集中的に生じる。よって、これら多数のスプライスを収容できるスプライス収容室をスプライス数に応じて簡単に増設できるスプライス収容部をプロテクタの内部に設けると、該プロテクタを使い勝手の良いものとすることができる。
【0020】
  前記スプライス収容室に挿入するスプライスは端末スプライスと中間スプライスのいずれでもよい。中間スプライスではスプライス部を挟む電線を各スプライス収容室内に折り返して収容している。その際、仕切プレートで天井板を形成すると、スプライス部から折り返される電線を天井板で押さえることができる。
 
【発明の効果】
【0021】
  前記のように、本発明のプロテクタは、挿通するワイヤハーネスが多数のスプライスを有する場合に、これらスプライスを効率良く分離して収容できるため絶縁信頼性に優れた機能を有する。かつ、スプライスの個数に応じて仕切プレートの取付枚数を増やすだけでスプライス収容室を簡単に増加させることができ、スプライスが集中的にあるシールド電線を多数含むワイヤハーネス用のプロテクタとして好適に用いることができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態のプロテクタの斜視図である。
 
【
図3】前記プロテクタ本体にワイヤハーネスを挿通した状態の平面図である。
 
【
図4】(A)はスプライス収容部に取り付ける仕切プレートの平面図、(B)は仕切プレートを取り付けた状態のスプライス収容部にスプライスを収容している状態の概略図である。
 
【
図5】ワイヤハーネスに巻き付けて底壁に取り付けるバンドクリップを示す図面である。
 
【
図6】(A)は前記プロテクタに挿通するワイヤハーネスの電線群を示す概略斜視図、(B)は前記電線群に含まれるシールド線のスプライスを示す図面である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  以下、本発明のプロテクタの実施形態を図面に基づいて説明する。
  実施形態のプロテクタ1は、自動車に配索するワイヤハーネスに外装するプロテクタであり、本実施形態のプロテクタ1はエンジンルーム内に配置するものである。
  プロテクタ1は、本体2と、該本体2の上面開口に被せる蓋3とからなり、いずれも樹脂成型品である。
 
【0024】
  図2、3に示すように、前記本体2は底壁5と、底壁5の幅方向両側から突設する外側壁6と内側壁7からなる周壁を備えている。外側壁6は全体として大きな円弧で湾曲させた略C形状としている。内側壁7と外側壁6の長さ方向の両端の間に同一方向に開口するワイヤハーネスの入口8と出口9を設けている。
 
【0025】
  本体2の外側壁6は入口8側は高壁部6aとすると共に出口9側は低壁部6bとしている。低壁部6bは大きな曲率の円弧状とし、高壁部6aは直線部と曲線部を連続させて略L形状に屈曲させ、低壁部6bと高壁部6aとの間に分岐線用開口10を設けている。また、内側壁7は外側壁の高壁部6aと同一高さで突設している。
  一方、蓋3の上壁3aは本体の底壁5と同形状とし、該上壁3aの周縁には前記本体2の高壁部6aと対向する位置には低壁部3bー1、低壁部6bと対向する位置には高壁部3b−2からなる周壁3bを設けている。すなわち、ワイヤハーネスの出口9側では本体2の周壁は低くし、蓋3の高壁部3b−2で外周を囲むようにし、入口8側は本体2の周壁を高くしている。
  前記蓋3の周壁に間隔をあけてロック爪3rを突設すると共に本体2の外側壁6および内側壁7に前記ロック爪3rが挿入係止されるロック枠6r、7rを設けている。
 
【0026】
  前記本体2の内部では、外側壁6の内面に沿って湾曲した主通路11を設け、該主通路11の両端の入口8と出口9は同一方向に向けて開口し、かつ、主通路11の中間位置の外側壁6に前記分岐線用開口10を設けている。
 
【0027】
  前記本体2内には、主通路11の内周側に底壁5からスプライス収容部12を設けている。スプライス収容部12の高さは前記高壁部6aおよび内側壁7の高さと同程度の高さとしている。スプライス収容部12は両側壁12a、12bと該両側壁12aと12bの一端を連結する連結壁12cとからなる略コ字状の外枠壁12dと、両側壁12aと12bに挟まれた中間位置に平行に設けた2つの中間仕切壁12m、12nを備え、3つの略同一幅のスプライス収容室13(13a〜13c)を並列に設けている。これらスプライス収容室13は前記入口8側に位置する前記連結壁12cで閉鎖され、出口9側をスプライス挿入用の開口13pとしている。  前記スプライス収容部12の外枠壁の一方の側壁12aおよび連結壁12cは前記主通路11の内周壁を兼ねるようにしている。
 
【0028】
  プロテクタ1内に通すワイヤハーネス30を構成する電線に設けたスプライスSが3個を越える場合、スプライス収容室13を増加するために、
図4(A)に示す平板状の仕切プレート20をスプライス収容部12に内嵌するようにしている。該仕切プレート20は外枠壁12dに内嵌する形状とすると共に中間仕切壁12m、12nを貫通する貫通穴20a、20bを設けている。本実施形態では仕切プレート20を厚さ1.5mmの絶縁樹脂板で形成している。
  前記仕切プレート20は下段のスプライス収容室13a〜13cに収容したスプライスS(S1、S2、S3)の上面に乗せることにより保持され、下段となるスプライス収容室13a〜13cの上部に仕切プレート20を介して中段のスプライス収容室13d〜13fを形成できるようにしている。
 
【0029】
  さらに、中段のスプライス収容室13d〜13fの全てにスプライスSを収容した後、さらに収容するスプライスがある場合、2枚目の仕切プレート20を取り付け、上段のスプライス収容室13g〜13iを形成できるようにしている。
  このように、スプライス収容部12の両側壁12a、12bおよび中間仕切壁12m、12nからなる垂直壁と、前記仕切プレート20からなる水平壁で区切られた複数のスプライス収容室13を上下複数段且つ各段複数列で設けている。即ち、スプライスの数に応じてスプライス収容室13を増減できるようにしている。
 
【0030】
  前記プロテクタ1の本体2には内側壁7の外面に車体固定用のブラケット16Aを突設すると共に、外側壁6の外面にも固定用ブラケット16Bを突設している。
 
【0031】
  また、本体2の底壁5には、分岐線用開口10に近接した位置にクリップ係止穴14Aを設け、分岐線用開口10から引き出す複数の枝線を結束するバンドクリップ22Aのクリップをクリップ係止穴14Aに挿入係止するようにしている。また、
図5に示すように、外側壁6とスプライス収容部の側壁12aに挟まれた主通路11の中間位置にクリップ係止穴14Bを設け、主通路11を通すワイヤハーネス30の電線群に結束するバンドクリップ22Bのクリップ22cをクリップ係止穴14Bに挿入し、クリップ22cの係止羽根の係止段部22eで係止している。なお、クリップ係止穴14Bは円形とし、バンドクリップ22Bのクリップを回転可能に保持できるようにしている。
 
【0032】
  さらに、本体2の入口8を囲む外側壁6、内側壁7および底壁5の内面には主通路11に通すワイヤハーネス30に外装するコルゲートチューブ31の谷部31aに嵌合するリブ16を突設している。該コルゲートチューブ31は入口8から挿入した部分で終端し、ワイヤハーネス30の電線群を前記バンドクリップ22Bで結束し、該バンドクリップ22Bを前記クリップ係止穴14Bに係止している。よって、出口9から引き出されるワイヤハーネス30は出口9の位置では本体2に固定されず、バンドクリップ22Bの係止位置を支点として出口9から出たワイヤハーネス30を所要角度範囲で揺動自在としている。よって、クリップ係止穴14Bから出口9までの主通路11の幅はワイヤハーネス30の外径の1.5倍以上として、ワイヤハーネス30の揺動可能空間を設けている。
 
【0033】
  前記プロテクタ1の主通路に挿通する前記ワイヤハーネス30は、前記出口9の引出位置から80mm〜200mmの短寸法を隔てた端末にコネクタ33を接続している。該コネクタ33を車両に固定された電子制御ユニットからなる機器(図示せず)のコネクタ嵌合部に嵌合させるために、コネクタ33を回転しながら嵌合作業をしなければならず、よって、プロテクタ1の出口9では揺動可能としている。  
 
【0034】
  前記ワイヤハーネス30の端末のコネクタ33を接続する前記機器はエンジン制御ユニットであり、ワイヤハーネス30を構成する電線のうち、
図6(A)に示すシールド線50が多数含まれている。シールド線50は1本または複数本のコア線51を金属編組チューブからなるシールド層52で覆い、シールド層52の外周を絶縁樹脂からなるシース53で被覆している。
 
【0035】
  前記シールド層52はアース接続する必要があるため、
図6(B)に示すように、芯線51aを絶縁層51bで被覆したコア線51からシールド層52およびシース53を剥離して引き出し、引き出したコア線51の絶縁層51bを剥離して芯線51aを露出させて、その端末にコネクタ33に挿入係止する端子(図示せず)を接続している。一方、シールド層52は引き出してアース端子と接続したドレン線55とハンダ付けまたは溶接で接続し、該接続部に止水剤としてシリコーン樹脂を充填した後にスプライスシート(絶縁樹脂シート)56を巻き付けてシールド継ぎ足しのスプライスSを形成している。よって、コネクタ33に近接した位置に該シールド継ぎ足しのスプライスSが集中している。
 
【0036】
  また、前記コネクタ33にはワイヤハーネス30の電線端末と共に、分岐線用開口10からプロテクタ1に挿入するシールド線からなる枝線36の電線端末も接続する。該枝線36はワイヤハーネス30の電線と共に出口9の直前で粘着テープ37を巻き付けて結束している。よって、出口9側からプロテクタ1内に配線する電線群を見ると、ワイヤハーネス30から枝線36が分岐して分岐線用開口10から引き出されることになる。
  前記枝線36もシールド線50からなるため、コネクタ33の近傍にスプライスSが設けられている。
  本実施形態では、スプライス収容室13に収容するスプライスSの総数は7個になっており、7個のスプライス収容室13が必要となる。
 
【0037】
  なお、シールド線のシールド継ぎ足しスプライス接続以外にも、
図6(A)に示す通常電線58同士を接続してスプライスSを形成している場合もある。
  いずれの形態のスプライスSであっても、コネクタ33の近傍に位置する時、プロテクタ1内のスプライス収容室13に収容するものとしている。
 
【0038】
  前記プロテクタ1に通すワイヤハーネス30には、出口9から引き出される部分で、予め枝線36と粘着テープ37を巻き付けて結束している。かつ、ワイヤハーネス30と分岐する枝線36にバンドクリップ22Aを締結すると共に、ワイヤハーネス30にもバンドクリップ22Bを締結している。さらに、入口8に挿入する部分のワイヤハーネス30にコルゲートチューブ31を外装し、該コルゲートチューブ31とワイヤハーネス30とを粘着テープで固着している。
 
【0039】
  前記プロテクタ1へのワイヤハーネスの組みつけは、ワイヤハーネス30をプロテクタ1の主通路11に沿って収容し、枝線36を分岐線用開口10を通して引き出している。  入口8側ではコルゲートチューブ31の谷部31aにリブ16を嵌合して位置決め保持している。また、バンドクリップ22A、22Bのクリップをそれぞれクリップ係止穴14A、14Bに挿入係止する。
 
【0040】
  ついで、ワイヤハーネス30および枝線36からスプライスSを有する電線を分岐させ、スプライスSをそれぞれスプライス収容室13に挿入していく。
  スプライス収容室13は1段が3室並列しているため、7個のスプライスSを収容するには2枚の仕切プレート20(下段の仕切プレート20A、上段の仕切プレート20B)を取り付けて合計9個のスプライス収容室13を設けている。
  其の際、前記のように、下段のスプライス収容室13a〜13cにそれぞれスプライスS1〜S3を挿入した後に下段の仕切プレート20Aを取り付け、中段のスプライス収容室13d〜13fにそれぞれスプライスS4〜S6を挿入し、その後、上段の仕切プレート20Bを取り付け、上段のスプライス収容室13g〜13iを形成し、その内の1つにスプライスS7を収容している。
  上段のスプライス収容室13に収容したスプライスS7の上部は蓋3で閉鎖されるため、上段のスプライスS7の上面に更に仕切プレート20を取り付ける必要はない。
 
【0041】
  このように、全てのスプライスSをそれぞれ仕切られたスプライス収容室13に挿入した後、蓋3を本体2に被せロック結合している。
 
【0042】
  前記構成からなるプロテクタでは、収容するスプライスの個数に応じてスプライス収容室の数を容易に増加することができる。かつ、下段のスプライス収容室にスプライスSを挿入した後に仕切プレート20を被せるように取り付けるため、仕切プレート20の保持部を必要とせず、かつ、スプライスSの外径にも対応させることができる。しかも、下段のスプライスSと上段のスプライスSとを仕切プレート20で接触を遮断しているため、スプライスSを重ねた状態で収容するのを避けることができる。
 
【0043】
  なお、本発明は前記実施形態に限定されず、ワイヤハーネスの主通路は直線状であってもよく、かつ、プロテクタの出入口にワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブを位置決め保持するリブを突設した形状としてもよい。
 
 
【符号の説明】
【0044】
  1  プロテクタ
  2  本体
  3  蓋
  5  底壁
  6  外側壁
  7  内側壁
  8  入口
  9  出口
  10  分岐線用開口
  11  主通路
  12  スプライス収容部
  13(13a〜13i)  スプライス収容室
  14A、14B  クリップ係止穴
  20  仕切プレート
  22A、22B  バンドクリップ
  30  ワイヤハーネス
  31  コルゲートチューブ
  33  コネクタ