【実施例】
【0055】
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一部の実施例であり、以下の実施例に限定するものではない。
【0056】
成形品を成形する際に使用する材料を適宜変更し、上述した
図2〜
図6に示す成形方法で
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形した。以下に、
図1に示すインパネダクト200を成形する際に使用した材料を実施例、比較例毎に記載する。
【0057】
(実施例1)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定した値である。
また、タルクの含有量を15重量%にした。タルクの粒径は、6〜7μmのものを使用した。なお、タルクの粒径が2〜30μmの範囲であると、樹脂中でのタルクの分散性が比較的良いため好ましい。
【0058】
(実施例2)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を20重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0059】
(実施例3)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を30重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0060】
(実施例4)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を8重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0061】
(実施例5)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を15重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0062】
(実施例6)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を25重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0063】
(実施例7)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0064】
(実施例8)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0065】
(実施例9)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を20重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0066】
(比較例1)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0067】
(比較例2)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0068】
(比較例3)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0069】
(比較例4)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0070】
(比較例5)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0071】
また、使用する材料を適宜変更し、上述した
図2〜
図6に示す成形方法で屈曲部201(
図1参照)を有さない
図7に示す直線形状のダクト300を成形した。
図7に示す直線形状のダクト300は、
図1に示すインパネダクト200のような屈曲部201がなく全体に亘って直線形状になっている。以下に、直線形状のダクト300を成形する際に使用した材料を比較例毎に記載する。
【0072】
(比較例6)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0073】
(比較例7)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC9(MFR=0.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を10重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0074】
(比較例8)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0075】
(比較例9)
プロピレン単独重合体として、日本ポリプロ(株)製:商品名 ノバテック グレード EC7(MFR=1.5g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を5重量%にした。タルクは、実施例1と同様のものを使用した。
【0076】
(比較例10)
プロピレン単独重合体として、住友化学工業(株)製:商品名 ノーブレンH501(MFR=3.0g/10分)を使用した。
また、タルクの含有量を0重量%にした。
【0077】
屈曲部201を有する複雑な形状の
図1に示すインパネダクト200を成形した際の折れ肉の発生の有無と、ピンホールの発生の有無と、を表1に示す。また、屈曲部201を有さない直線形状の
図7に示すダクト300を成形した際の折れ肉の発生の有無と、ピンホールの発生の有無と、を表2に示す。また、表1に示す実施例1〜9、比較例1〜5におけるMFR(g/10分)とタルクの含有量(重量%)との関係を
図8に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
<表1、表2の結果>
表1の結果から、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(実施例3の場合)は、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生することが判明した。なお、MFRが1.5g/分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合も、実施例3と同様に、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生した。また、MFRが3.0g/分で、タルクの含有量が30重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合も、実施例3と同様に、折れ肉が発生しないが、ピンホールが発生した。このため、MFRの値にかかわらず、タルクの含有量が30重量%以上の熱可塑性樹脂シートPを使用すると、ピンホールが発生することが判明した。
また、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が0〜10重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例1,2の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
また、MFRが1.5g/10分で、タルクの含有量が0〜5重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例3,4の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
また、MFRが3.0g/10分で、タルクの含有量が0重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例5の場合)は、折れ肉が発生することが判明した。
なお、タルクの含有量を多くするに従って、インパネダクト200の表面に荒れが発生することが判明した。このため、インパネダクト200の表面の荒れを抑制するためには、タルクの含有量を折れ肉が発生しない条件下でなるべく少なくすることが好ましいことが判明した。
【0081】
また、表1、表2の結果から、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが0.5g/10分で、タルクの含有量が0〜10重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例1,2の場合)は、折れ肉が発生するが、
図7に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例6、7の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
また、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが1.5g/10分で、タルクの含有量が0〜5重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例3,4の場合)は、折れ肉が発生するが、
図7に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例8、9の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
また、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合に、MFRが3.0g/10分で、タルクの含有量が0重量%の熱可塑性樹脂シートPを使用した場合(比較例5の場合)は、折れ肉が発生するが、
図7に示す直線形状のダクト300を成形する場合(比較例10の場合)は、折れ肉が発生しないことが判明した。
【0082】
表1、表2の結果を鑑み、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、MFRが0.5g/10分以上3.0g/10分以下であり、且つ、タルクの含有量が5重量%以上30重量%未満の条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。なお、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、MFRが0.1g/10分以上3.5g/10分以下であり、且つ、タルクの含有量が5重量%以上30重量%未満の条件を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することでも、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できる。
【0083】
また、
図8に示すMFR(g/10分)とタルクの含有量(重量%)との関係を鑑み、
図1に示す屈曲部201を有する複雑な形状のインパネダクト200を成形する場合には、以下の条件式1を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、カーテン現象が発生せず、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式1・・・W≧2M
2−11M+18
但し、M:熱可塑性樹脂の230℃におけるメルトフローレート(g/10分)
W:熱可塑性樹脂に混合するタルクの量(重量%)
【0084】
また、以下の条件式2を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生せず、且つ、ピンホールが発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式2・・・30>W≧2M
2−11M+18
【0085】
また、以下の条件式3を満足する熱可塑性樹脂シートPを使用することで、折れ肉が発生せず、且つ、ダクト表面の荒れが発生しないインパネダクト200を成形できることが判明した。
条件式3・・・2M
2−11M+23≧W≧2M
2−11M+18
【0086】
なお、上述した実施形態及び実施例は、本発明の好適な実施形態及び実施例であり、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0087】
例えば、上述した実施形態及び実施例は、
図2に示す成形装置1を用いてインパネダクト200を成形することにした。しかし、
図9に示すローラ30を有する成形装置1を用いてインパネダクト200を成形することも可能である。
【0088】
図9に示す成形装置1の場合は、Tダイ28から押し出した熱可塑性樹脂シートPを一対のローラ30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整し、一対の分割金型32の間に垂下させるようにしている。この
図9に示す成形装置1であっても、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生し、熱可塑性樹脂シートPに皺が発生する。但し、
図9に示す成形装置1では、一対のローラ30を通過させて熱可塑性樹脂シートPの肉厚を調整するため、熱可塑性樹脂シートPに発生した皺を低減させることができる。しかし、熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生した状態で一対のローラ30をむりやり通過させてしまうと、熱可塑性樹脂シートPに発生した皺同士がローラ30で折り畳まれて折れ線が発生してしまう場合がある。また、熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生した状態では一対のローラ30を通過し難いため、ローラ30の上部に熱可塑性樹脂シートPが滞留し、一様な厚みの熱可塑性樹脂シートPが形成できなかったり、熱可塑性樹脂シートPに折れ線や皺が発生したりすることになる。このため、
図9に示す成形装置1であっても、
図2に示す成形装置1と同様に、樹脂成形品を成形する金型形状によっては樹脂成形品に折れ肉が発生し、金型形状に沿った形状に成形することが困難になる。従って、
図9に示す成形装置1を用いてインパネダクト200を成形する際にも、上述した条件式1〜条件式3を満足する熱可塑性樹脂シートPを形成することで、Tダイ28から押し出された熱可塑性樹脂シートPにカーテン現象が発生しないようにすることができ、折れ肉が発生しないインパネダクト200を成形することができる。なお、ローラ30を用いた場合、平均肉厚を1mm以下のインパネダクト200を成形することも可能である。また、上記実施形態においては、樹脂成形品として中空状に成形した樹脂成形品について説明したが、1枚のシートで非中空状に成形した樹脂成形品であっても本発明を適用できる。