(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状電極は、前記回収機構の流体噴射ノズル及び前記流体吸引部の少なくとも一方に対向する位置に前記貫通孔を形成しない貫通孔非形成領域が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電気集塵装置。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガスには、NOx、SOxの他、炭素を主成分とする粒子状物質などの有害物質が含まれている。人間が呼吸により粒子状物質を体内に吸い込むと様々な健康被害が発生することが知られており、粒子状物質を効率良く補集する電気集塵装置の開発が望まれている。
このような電気集塵装置では、補集した粒子状物質をそのまま放置すると補集効率が低下することから、補集した粒子状物質を洗い流す洗浄処理を行う必要がある。このような洗浄機能を有する電気集塵機として、例えば電気集塵機の機内におけるトンネル内の浮遊微粒子多くを含む空気を通過させる通路に形成した集塵部に下流側から対向して補集ダスト払い落とし用のエアブロー式ダスト洗浄機構を装備した電気集塵装置の補集ダスト洗浄方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃焼機関の排気管に連なり、通過する排気ガスに含まれるすすを電気的に吸着するすす吸着装置と、すす吸着装置に吸着したすすを洗浄除去してその吸着力を回復させる再生装置と、燃焼機関の排気管に連なりすすを核とする排気ガスの凝縮液化によってすすや有害排気ガスを除去する核凝縮装置とから構成した排気浄化装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、煤塵を含んだ空気を通過させる複数の集塵通路のそれぞれに放電極及び集塵極を配置して煤塵にコロナ放電を利用して電荷を与え、この煤塵にクーロン力を作用させて集塵極に補集するようにし、1つの集塵通路の入口ダンパ及び出口ダンパを閉じた状態で、水スプレーノズルによる洗浄と加熱空気による乾燥とを行うようにした電気集塵装置も提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載の従来例にあっては、ダスト等を含む空気を通過させる空気流路に電気集塵部を配置し、この電気集塵部で補集したダスト等を同様に空気流路に配置した洗浄機構で洗浄するようにしており、電気集塵部を洗浄機構で洗浄する場合には、空気流路を流れる空気を止め、且つ電気集塵部の電圧印加を停止してから洗浄を行うようにしており、洗浄中はダスト等を補集することはできないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、粒子状物質含有ガスの通過を停止させることなく、補集した粒子状物質の回収を行うことができる電気集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電気集塵装置は、軸方向に延長する放電電極と、該放電電極を半径方向に所定距離を保って覆い所要数の貫通孔を有する筒状電極と、前記筒状電極の外側を半径方向に所定距離を保って覆うケーシング電極と、前記放電電極と前記筒状電極及び前記ケーシング電極との間に高電圧を印加して、前記筒状電極内を通流する粒子状物質含有ガスの粒子状物質を帯電させて前記筒状電極の前記貫通孔を通過させて当該筒状電極の外周面及び前記ケーシング電極の内周面に補集させる高電圧源と、前記筒状電極の外周面及び前記ケーシング電極の内周面間の前記粒子状物質を補集する補集領域に配置された前記粒子状物質を回収する回収機構とを備え
、前記回収機構は、前記筒状電極及びケーシング電極の軸方向の一端側に配置し、補集した前記粒子状物質を吹き飛ばす流体噴射ノズルと、前記筒状電極及びケーシング電極の軸方向の他端側に配置した前記粒子状物質を含む流体を吸引する流体吸引部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、筒状電極の内部に粒子状物質含有ガスを通過させ、この粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質を筒状電極及びケーシング電極間の補集領域に補集し、この補集領域に補集した粒子状物質を回収する回収機構を設けたので、回収機構を粒子状物質含有ガスの通路となる筒状電極の内側とは異なる領域に配置することができ、粒子状物質含有ガスを流した状態で粒子状物質の回収を行うことができる。
また、流体噴射ノズルを補集領域の一端側に配置し、他端側に流体吸引部を設けたので、流体噴射ノズルから噴射した流体によって筒状電極及びケーシング電極で補集した粒子状物質を他端側へ吹き飛ばし、この吹き飛ばされた粒子状物質を流体吸引装置で吸引することにより、補集した粒子状物質を効果的に回収することができる。
【0009】
また、本発明の一の形態に係る電気集塵装置は、筒状筐体内を仕切板で仕切って形成した軸方向に延長する複数の電極収納部を備え、前記各電極収納部は、軸方向に延長する放電電極と、該放電電極を半径方向に所定距離を保って覆い所要数の貫通孔を有する筒状電極と、前記筒状電極の外側を半径方向に所定距離を保って覆うケーシング電極と、前記放電電極と前記筒状電極及び前記ケーシング電極との間に高電圧を印加して、前記筒状電極内を通流する粒子状物質含有ガスの粒子状物質を帯電させて前記筒状電極の前記貫通孔を通過させて当該筒状電極の外周面及び前記ケーシング電極の内周面に補集させる高電圧源と、前記筒状電極の外周面及び前記ケーシング電極の内周面間の前記粒子状物質を補集する補集領域に配置された前記粒子状物質を回収する回収機構とを備え
、前記回収機構は、前記筒状電極及びケーシング電極の軸方向の一端側に配置し、補集した前記粒子状物質を吹き飛ばす流体噴射ノズルと、前記筒状電極及びケーシング電極の軸方向の他端側に配置した前記粒子状物質を含む流体を吸引する流体吸引部とを備えていることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、筒状筐体内に仕切板で仕切って軸方向に延長する複数の電極収納部を備え、各電極収納部に、放電電極と、筒状電極と、筒状筐体及び仕切板で構成されるケーシング電極とを設けるようにしたので、各電極収納部が個別の電気集塵部となり、各電気集塵部の補集部に粒子状物質を回収する回収機構を設けることができ、電気集塵部単位で粒子状物質の回収を個別に行うことができ、回収用の使用流体量を制限して、コンプレッサや吸引ポンプの低容量化、配管の小径化、装置の小形化及びコストダウン化が可能となる。
また、流体噴射ノズルを補集領域の一端側に配置し、他端側に流体吸引部を設けたので、流体噴射ノズルから噴射した流体によって筒状電極及びケーシング電極で補集した粒子状物質を他端側へ吹き飛ばし、この吹き飛ばされた粒子状物質を流体吸引装置で吸引することにより、補集した粒子状物質を効果的に回収することができる。
【0012】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記流体噴射ノズルは、気体を噴射するように構成されていることを特徴としている。
この構成によると、流体噴射ノズルから気体を噴射するので、補集領域が乾燥状態のまま粒子状物質の回収を行うことができる。
【0013】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記流体噴射ノズルは、液体を噴射するように構成されていることを特徴としている。
この構成によると、流体噴射ノズルから液体を噴射するので、こびりついた粒子状物質でも確実に剥離して回収することができる。この場合には、流体噴射ノズルを上方側に設置することにより、重力を使用して噴射液体の流速を上げることができる。
【0014】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記液体は水、海水及び洗浄液の何れかであることを特徴としている。
この構成によれば、液体として、陸上であれば、水を使用し、船舶等であれば海水を使用し、粒子状物質の汚れが酷い場合には、洗浄液を使用して粒子状物質の回収を行う。
【0015】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記筒状電極は、前記貫通孔の開口比が前記流体噴射ノズルの流体が当該筒状電極内部に流入することを阻止する値に設定されていることを特徴としている。
この構成によれば、筒状電極の貫通孔の開口比が流体噴射ノズルから噴射した流体が筒状電極の内部に流入することを阻止する値に設定されているので、筒状電極の内部へ流体が流入して一度補集した粒子状物質を引き剥がして再飛散させてしまうことを防止し、粒子状物質の回収を確実に行うことができる。
【0016】
また、本発明の他の形態に係る電気集塵装置は、前記筒状電極が、前記回収機構の流体噴射ノズル及び前記流体吸引部の少なくとも一方に対向する位置に前記貫通孔を形成しない貫通孔非形成領域が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、筒状電極が回収機構を構成する流体噴射ノズル及び流体吸引部の少なくとも一方に対向する位置に貫通孔を形成しない貫通孔非形成領域が形成されているので、流体噴出ノズルから噴射される流体が筒状電極内に入ることを確実に防止することができ、筒状電極の内部へ流体が流入して一度補集した粒子状物質を引き剥がして再飛散させてしまうことを防止し、粒子状物質の回収を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粒子状物質含有ガスを筒状電極の内側に通流して放電電極によって粒子状物質に帯電させ、帯電した粒子状物質をクーロン力によって貫通孔を通って筒状電極の外側に移動させ、この筒状電極及びケーシング電極間の補集領域で付着補集する。この付着補集した粒子状物質を回収機構で例えば流体を利用して払拭することにより、粒子状物質含有ガスの通路とは分離された補集領域で粒子状物質の回収を行うことができ、粒子状物質含有ガスを通流した状態で粒子状物質の回収を行うことができる。
【0018】
また、本発明によれば、筒状筐体内に仕切板で仕切って軸方向に延長する複数の電極収納部を備え、各電極収納部に、放電電極と、筒状電極と、筒状筐体及び仕切板で構成されるケーシング電極とを設けるようにしたので、各電極収納部が個別の電気集塵部となり、各電気集塵部の補集部に粒子状物質を回収する回収機構を設けることができ、電気集塵部単位で粒子状物質の回収を個別に行うことができ、回収用の使用流体量を制限して、コンプレッサや吸引ポンプの低容量化、配管の小径化、装置の小形化及びコストダウン化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示す全体構成図である。
図中、1は例えば内燃機関特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる炭素を主成分とする粒子径が100μm以下の粒子状物質(PM:Particulate Matter)、特に粒子径が10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)を補集可能な電気集塵装置である。
この電気集塵装置1には、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスが供給される。
【0021】
電気集塵装置1は、
図2及び
図3に示すように、ディーゼルエンジン2から供給される粒子状物質含有ガスを導入する裁頭角錐筒状のガス案内部15と、このガス案内部15の下流側に形成された粒子状物質含有ガスを旋回流として送り出す旋回流形成部16と、この旋回流形成部16の下流側に配置された例えば断面が12面体の放電電極17を支持する電極支持部18と、この電極支持部18の下流側に配置された電気集塵部19と、最下流に配置された放電電極支持部20とを備えている。
【0022】
電気集塵部19は、放電電極17を半径方向に所定距離を保って覆う例えばステンレス製で円筒状の筒状電極21と、この筒状電極21を囲んで支持する筒状筐体を構成する角筒状のケーシング電極22とで構成されている。
ここで、放電電極18は、
図4に示すように、外周面に円周方向に90°間隔で4つの針状電極17aを形成した電極群が3組軸方向に所定間隔を保ち各電極群で円周方向に30°ずれた関係で多数形成されている。
【0023】
また、筒状電極21の円筒面には、放電電極17の針状電極部17aと対向する位置に、粒子状物質の粒子径より十分に大きい幅(例えば数mm程度)を有し、円周方向に延長する長円形の貫通孔21aが多数形成されている。この貫通孔21aの形状は、長円形とする場合に限らず、円形としてパンチングパイプを適用するようにしてもよい。
【0024】
そして、
図3に示すように、放電電極17と筒状電極21及びケーシング電極22との間に放電電極17を負極側とし、筒状電極21及びケーシング電極22を正極側とする10
3〜10
5ボルト程度の直流高電圧電源DCを接続し、さらに正極側を接地する。この状態で、放電電極17と筒状電極21の間に粒子状物質含有ガスを旋回気流として供給すると、粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質はコロナ放電を浴びて帯電する。そして、放電電極17と筒状電極21間の電界により粒子状物質にクーロン力が働き、粒子状物質が筒状電極21へ向けて運動を始める。粒子状物質は質量を持つために、慣性力によってそのまま筒状電極21の貫通孔21aを通過して筒状電極21及びケーシング電極22間の半閉空間である補集領域23に導かれる。
【0025】
この補集領域23では、流れ場は非常に緩やかなため、粒子状物質は流れ場の影響を受けにくく、粒子状物質は自分自身の電荷と筒状電極21及びケーシング電極22間の電位差による電気影像力を受けて、筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に移動付着して補集される。なお、数値解析によれば、筒状電極21内のガス流路における粒子状物質含有ガス主流の流速に比べ、補集空間23の大部分で約1/20〜1/10程度、局所的に1/4程度の流速となることが確認されている。
【0026】
さらに、ケーシング電極22の軸方向両端部が、
図2に示すように、中心開口24を有する端板25a及び25bによって閉塞され、これら端板25a及び25bの中心開口24が筒状電極21と連通されている。
筒状電極21、ケーシング電極22、端板25a及び25bで囲まれる半閉空間が粒子状物質の補集領域23とされ、この補集領域23内における端板25a及び25bに補集した粒子状物質を回収する回収機構26が形成されている。
【0027】
この回収機構26には、例えば下側の端板25aのケーシング電極22に囲まれる4隅にそれぞれ4つの流体噴射ノズル27が流体としての空気を上方に向けて筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に沿わせて噴射するように配置されている。これら流体噴射ノズル27は外部に配置されたコンプレッサ28に接続されて、このコンプレッサ28から圧縮空気が供給される。
【0028】
また、回収機構26には、例えば上側の端部25bのケーシング電極22に囲まれる4隅にそれぞれ流体噴射ノズル27と対向して4つの流体吸引部29が配置されている。これら流体吸引部29は、
図1に示すように、外部に配置されたサイクロン30を介して吸引ポンプ31に接続されて、補集領域23内で流体噴射ノズル27から噴射された流体例えば空気によって吹き飛ばされた粒子状物質を吸引して外部に排気する。
【0029】
また、筒状電極21の流体噴射ノズル27に対向する円筒面は貫通孔21aが形成されていない貫通孔非形成領域21bとされている。同様に、筒状電極21の流体吸引部29に対向する円筒面は貫通孔21aが形成されていない貫通孔非形成領域21cとされている。
さらに、筒状電極21の貫通孔21aの開口比βは、
図5に示すように、レイノルズ数を例えばRe=16としたときに、0.4〜0.5に設定することにより、抵抗係数Kが大きくなり、流体噴射ノズル27から噴射されて筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に補集された粒子状物質を吹き飛ばしながら上昇する空気流が貫通孔21aを通じて筒状電極21の内周側に入ることを阻止することができる。
【0030】
この電気集塵装置1によると、単に放電電極17及び筒状電極21間のガス流路に粒子状物質含有ガスを通流させるだけで、抽気手段としての送風機等を設ける必要がない。また、粒子状物質含有ガスの流れを妨げるダンパ等を設ける必要もないので、粒子状物質含有ガスの圧力損失を少なくすることができる。さらに、筒状電極21に形成した貫通孔21aの径を粒子状物質の粒子径にかかわらず大きな径に形成することができるので、この分の圧力損失も小さく抑制することができる。さらに、粒子状物質が補集空間23を構成する筒状電極21の外周面やケーシング電極22の内周面で補集するので、両電極21及び22の表面積に応じた多量の粒子状物質の補集を許容することができるとともに、貫通孔21aは極めて目詰まりしにくく、目詰まりによる補集障害を生じることを確実に防止することができる。さらにまた、補集空間23の流れ場が小さいために、一度補集した粒子状物質の再飛散が生じにくい。また、ダンパや送風機等の可動部が存在しないために、故障の可能性が極めて低い。
【0031】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
ディーゼルエンジン2から排気される粒子状物質含有ガスは、電気集塵装置1に供給され、ガス導入部15から旋回流形成部16で旋回気流として電気集塵部19の筒状電極21内に流される。粒子状物質含有ガスは、筒状電極21を通過する際に、前述したように、粒子状物質がコロナ放電によって帯電され、帯電された粒子状物質がクーロン力によって筒状電極21の貫通孔21aを通じて筒状電極21の外側の補集領域23に移動し、筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に付着補集される。
付着補集された粒子状物質が多くなると、回収機構26を作動させて、筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に付着補集された粒子状物質を外部に回収する。
【0032】
この場合の粒子状物質の回収は、筒状電極21の内部に粒子状物質含有ガスを通流させて、粒子状物質をコロナ放電によって帯電させて、クーロン力により貫通孔21aを通じて補集領域23に移動させる集塵状態を維持したまま4つの流体噴射ノズル27から圧縮空気を所定流量で上方に噴射する。これら流体噴射ノズル27から噴射された圧縮空気は、拡散されて筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に沿って上昇し、これらに付着補集されている粒子状物質を上方に吹き飛ばす。一方、補集領域23の上方では、4つの流体吸引部29が吸引ポンプ31で吸引されることによって空気を吸引しているので、噴射空気によって吹き飛ばされた粒子状物質が空気とともに上昇して流体吸引部29を通って外部のサイクロン30に排出される。このサイクロン30では固気分離を行って粒子状物質を分離して下方に回収し、粒子状物質を分離された空気が吸引ポンプに吸引されて外部に排気される。
【0033】
この回収機構26によって粒子状物質を回収する際に、流体噴射ノズル27の近傍の筒状電極21には貫通孔21aが形成されていない貫通孔非形成領域21bが形成されており、流体噴射ノズル27から噴射された空気が筒状電極21内に流入することを確実に防止することができる。同様に、流体吸引部29の近傍の筒状電極21にも貫通孔非形成領域21cが形成されているので、流体吸引部29で吸引される粒子状物質を含む空気のみを吸引し、筒状電極21の内部を通る粒子状物質が除去されたガスを吸引することを確実に防止することができる。
【0034】
さらに、筒状電極21の貫通孔21aの開口比βが抵抗係数Kを大きくする値である0.4〜0.5に形成されているので、粒子状物質を含む空気が貫通孔21aを通じて筒状電極21内に侵入することを確実に防止することができる。
そして、回収機構26の流体噴射ノズル27から流体を噴射しても筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に付着補集された粒子状物質が残留する場合には、流体噴射ノズル27から水、海水等の液体を噴射させ、これでも粒子状物質が残留する場合には、液体に洗浄剤を含有させて洗浄液として流体噴射ノズル27から噴射させる。このように、流体噴射ノズル27から水、海水、洗浄液等の液体を噴射させる場合には、流体噴射ノズル27を上方の端板25bに形成し、流体吸引部29を下方の端板25aに形成することが好ましい。
【0035】
このように、上記第1の実施形態によると、筒状電極21の内部を粒子状物質含有ガスが通流し、この筒状電極21の外側に粒子状物質の補集領域23を形成し、この補集領域23に補集した粒子状物質を回収する回収機構26を配置したので、筒状電極21内の粒子状物質含有ガスの通流を停止させることなく、補集領域23で補集した粒子状物質の回収を行うことができ、粒子状物質含有ガスからの粒子状物質の補集効率を向上させることができる。
【0036】
また、回収機構26を筒状電極21とケーシング電極22との間の補集領域23の軸方向の一端に流体噴射ノズル27を配置し、他端に流体吸引部29を配置した構成としたので、流体噴射ノズル27から噴射した流体を補集領域23に軸方向に通過させて、筒状電極21の外周面及びケーシング電極22の内周面に付着補集した粒子状物質を上方に吹き飛ばして流体流とともに流体吸引部29で吸引して粒子状物質を外部に回収することができる。
【0037】
このとき、筒状電極21の流体噴出ノズル27及び流体吸引部29の近傍に貫通孔非形成領域21b及び21cが形成され、これらの領域では貫通孔21aが形成されていないので、流体噴射ノズル27から噴射された流体が筒状電極21内に流入することを確実に防止することができる。
さらに、筒状電極21の貫通孔21aの開口比を抵抗係数が大きくなる値に選定することにより、流体噴射ノズル27から噴射された流体が貫通孔21aを通過して筒状電極21の内周側に侵入することを確実に防止することができ、筒状電極21の内部へ流体が流入して一度補集した粒子状物質を引き剥がして再飛散させてしまうことを防止することができる。
【0038】
なお、回収機構26で使用する流体としては、気体として空気を適用し、液体としてディーゼルエンジン2が車両用エンジンであるときには水を適用し、舶用エンジンであるときには海水を適用する。そして、液体を使用する場合には、粒子状物質の回収が不十分であるときには水又は海水に洗浄剤を添加した洗浄液を適用することが好ましい。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態を
図6について説明する。
この第2の実施形態においては、軸方向に延長する複数の電極収納部を形成することにより、電気集塵部を複数形成して集塵能力を向上させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、
図6に示すように、前述した第1の実施形態における電気集塵装置1を例えば4本分を組み合わせた大きさに相当する大きさの導電性を有する角筒状の筐体41を備えている。この筐体41の内部を平面から見て十字形状の仕切板42で仕切って軸方向に延長する4つの電極収納部43a〜43dを形成している。
【0040】
各電極収納部43a〜43dのそれぞれには、前述した第1の実施形態における
図3に示すように、ガス導入部15及び旋回流形成部16によって粒子状物質含有ガスが旋回流として導入される電気集塵部19が形成されている。
そして、筒状電極21の外側の筐体41の内面及び仕切板42によって角筒状のケーシング電極44が形成されている。また、筒状電極21が軸方向の両端で、中央部に開口34を有する端板45a及び45bによって保持され、これら端板45a及び45bで筒状電極21及びケーシング電極44間の補集領域46の上下端部が閉塞されている。
【0041】
そして、各電極収納部43a〜43dの下側の端板45aの上面に前述した第1の実施形態と同様に4つの流体噴射ノズル47が配置され、上側の端板45bの下面から上面を貫通し、流体噴射ノズル47と対向する流体吸引部48が形成されている。各電極収納部43a〜43dの流体噴出ノズル47の流体供給部は電極収納部43a〜43d毎に互いに連結されて個別の電磁開閉弁49を介して外部のコンプレッサ28に接続され、流体吸引部38も個別の電磁開閉弁50を介し、サイクロン30を介して吸引ポンプ31に接続されている。
筒状電極21の上下端部側には貫通孔非形成部21b及び21cが形成されているとともに、貫通孔21aの開口比が抵抗係数Kを増加させる値に設定されて、流体噴射ノズル47から噴射された流体が貫通孔21aを通じて筒状電極21内に侵入することを防止している。
【0042】
この第2の実施形態でも、電極収納部43a〜43dの構成が、前述した第1の実施形態における電気集塵装置1の電気集塵部19と同様の構成を有するので、各電極収納部43a〜43dで、個別に筒状電極21内を通流する粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質をコロナ放電によって帯電させ、帯電された粒子状物質をクーロン力によって筒状電極21の貫通孔21aを通じて補集領域46を形成する筒状電極21の外周面及びケーシング電極44の内周面に付着補集される。このとき、上述した第1の実施形態における電気集塵部19が4個形成されているので、粒子状物質の補集能力を4倍とすることができる。
【0043】
そして、各電極収納部43a〜43dで補集された粒子状物質を回収するには、電極収納部43a〜43dのうちの何れか1つの電極収納部例えば43aの電磁開閉弁49及び50を開状態に制御して、他の電磁開閉弁49及び50を閉状態に維持する。
これによって、電極収納部43aの流体噴射ノズル47に圧縮流体を供給して補集領域46内に上方に向けて流体を噴射するとともに、流体吸引部48から流体を吸引することにより、筒状電極21の外周面及びケーシング電極44の内周面に補集されている粒子状物質を吹き飛ばして流体流とともに外部のサイクロン30に排出して回収する。
【0044】
このように、各電極収納部43a〜43dで補集した粒子状物質の回収を個別に行うことにより、コンプレッサ等の流体供給源及び吸引ポンプ等の流体吸引源は第1の実施形態と同様に電極収納部43a〜43dの1個分で済むことになり、流体供給源、粒子状物質を回収するサイクロン30及び吸引ポンプ31の容量を減少させ、これら間を接続する配管を小径化でき、全体の装置構成を小形化することができるとともに、コストダウンが可能となる。
【0045】
上記第2の実施形態の場合には、電極収納部43a〜43dが4つであるので、このうちの1つの電極収納部を粒子状物質の回収のために粒子状物質含有ガスの通流を停止させたとしても、75%の効率で運用することができる。この効率は、形成する電極収納部数が多くなれば大きくなり、例えば電極収納部数を10とすると、そのうちの1つの電極収納部の粒子状物質含有ガスの通流を停止したとしても90%の効率で運用することができる。
【0046】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、ディーゼルエンジン2から排出される粒子状物質含有ガスに含まれる粒子状物質を除去する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の内燃機関や産業機械等から排出される任意の粒子状物質含有ガスから粒子状物質を除去することができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、電気集塵部19のケーシング電極22が角筒状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、筒状電極21を、半閉空間の補集空間23を形成して覆うことができればよく、円筒状、ハニカム形状、多角筒状等の任意の形状とすることができる。
【0047】
同様に、筒状電極21についても円筒状に限定されるものではなく、放電電極17の針状電極17aと対向する内周面と針状電極17aとの間の距離を等しくすれば任意の形状とすることができる。すなわち、上記のように断面12面体の放電電極17を使用する場合には12角筒状に形成するようにしてもよく、針状電極の突出数に合わせた任意の形状とすることができる。
【0048】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、放電電極17の針状電極17aを軸方向でずらして突出させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、針状電極17aの突出方向を同一方向とするようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、旋回流形成部16により粒子状物質含有ガスが旋回流として導入される場合について説明したが、旋回流形成部16による圧力損失を低減したい場合には、旋回流形成部16を設けずに、粒子状物質含有ガスをそのまま通流させてもよい。