(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768509
(24)【登録日】2015年7月3日
    
      
        (45)【発行日】2015年8月26日
      
    (54)【発明の名称】ワイヤハーネスの止水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G   3/22        20060101AFI20150806BHJP        
   B60R  16/02        20060101ALI20150806BHJP        
【FI】
   H02G3/22
   B60R16/02 622
【請求項の数】6
【全頁数】10
      (21)【出願番号】特願2011-123673(P2011-123673)
(22)【出願日】2011年6月1日
    
      (65)【公開番号】特開2012-253877(P2012-253877A)
(43)【公開日】2012年12月20日
    【審査請求日】2013年11月29日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】100072660
【弁理士】
【氏名又は名称】大和田  和美
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】中西  和豊
              
            
        
      
    
      【審査官】
        神田  太郎
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          実開平5−62133(JP,U)      
        
        【文献】
          特開2002−058140(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2008−143325(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G      3/22
H02G      3/04        
B60R    16/02        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  車体パネルの貫通穴に装着するグロメットの被水側先端と嵌合接続するプロテクタを設け、該プロテクタから前記グロメットに連続して挿通させるワイヤハーネスの電線群は結束材で結束していない状態としており、
  前記プロテクタは、中央部を下方へ突出させると共に該中央部に押下用仕切壁を設けた縦壁と、該縦壁の上下端縁から突設した上壁および下壁とを備え、該下壁に水抜き穴を設けたプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の縦壁と対向する開口を閉鎖する蓋とを備え、  前記プロテクタ内に挿通する前記ワイヤハーネスの電線群を前記押下用仕切壁によりU形状に屈曲させると共に、隙間をあけた並列状態として挿通していることを特徴とするワイヤハーネスの止水構造。
【請求項2】
  前記プロテクタ内で前記屈曲部のグロメット側のハーネス通路を通すワイヤハーネスの電線群を並列状態とし、該電線群を並列状態に保持する器具を取り付け、または前記プロテクタ本体の縦壁内面より並列状に突設した並列保持突起の間に前記電線群を区分けして通している請求項1に記載のワイヤハーネスの止水構造。
【請求項3】
  前記プロテクタ挿通領域内でワイヤハーネスの電線群の両端に前記器具を取り付けており、該器具は櫛状本体に電線を並列して通した後に閉鎖枠で閉じる構成とし、前記ワイヤハーネスの布線工程時に取り付けている請求項2に記載のワイヤハーネスの止水構造。
【請求項4】
  前記プロテクタ本体の押下用仕切壁の両側面、または押下用仕切壁とそれぞれ対向する下壁の両側面に前記器具を着脱自在に取り付ける取付溝を設けている請求項2または請求項3に記載のワイヤハーネスの止水構造。
【請求項5】
  前記プロテクタ本体の縦壁内面より突設する並列保持突起は、該縦壁内面より水平方向に複数本を隙間をあけて突設し、突設位置は前記押下用仕切壁とグロメット連結側のプロテクタ本体の側壁との間に形成されるハーネス通路の上下2カ所である請求項2に記載のワイヤハーネスの止水構造。
【請求項6】
  前記プロテクタおよびグロメットに通すワイヤハーネスは、被水領域となる自動車のエンジンルーム内に配索し、前記プロテクタに達するまではコルゲートチューブで外装し又は粘着テープをハーフラップ巻きして外装し、前記プロテクタに連結する前記グロメットをエンジンルームと車室とを仕切るパネルの貫通穴に装着するものとしている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のワイヤハーネスの止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明はワイヤハーネスの止水構造に関し、詳しくは、自動車のエンジンルーム等の被水領域から車体パネルの貫通穴を通して車室内に配索するワイヤハーネスにおける車室内への浸水を防止するものである。
 
【背景技術】
【0002】
  車体パネルに設ける貫通穴からの浸水は、ワイヤハーネスにグロメットを装着し、該グロメットを貫通穴の周縁にシール状態で取り付けることで浸水防止を図っている。
  一方、ワイヤハーネスの電線群の隙間を毛細管現象で通って車室側へ浸水が生じる場合もある。該浸水はワイヤハーネスの電線群の間に止水剤を充填し、該止水剤の充填部で浸水を遮断して止水を図っている。この線間止水はワイヤハーネスの形成時に電線群を並列配置してシリコーン等の止水剤を塗布し、塗布した状態で電線群を丸めて防水シートを巻き付け、この状態でグロメット内に線間止水部を挿入している。
【0003】
  前記線間止水部を設けた構造とすると、車室側への止水を確実に図ることができる利点を有する。しかしながら、シリコーン等の止水剤の塗布、防水シートの巻き付け、該線間止水部のグロメットへの挿入等作業員が手作業で行う工程が比較的多く、作業手数がかかると共に作業員の熟練度による仕上精度にバラツキが生じ、改善の余地がある。
【0004】
  前記電線群中に止水剤を充填することなく電線群の隙間を通る浸水を遮断する手段として、特開昭60−96122号公報で
図8(A)(B)に示す排水構造が提案されている。該排水構造では、車体貫通穴に装着するグロメット130から離れた位置で、ワイヤハーネス100をU形状に屈曲させ、
図8(B)に示すプロテクタ110に通して、
図8(A)に示すように、粘着テープ111で巻き付け固定し、屈曲部110aを下向きに突出させて配置している。かつ、該屈曲部110aの先端にテープ111を巻き付けず、電線を露出させた排水部150を設けている。このように、屈曲部110aの最下端の電線を露出させた排水部150から電線群の隙間を通る水を排水している。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−96122号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  前記特許文献1の排水構造はワイヤハーネスの屈曲部の最下端の電線群にテープを巻き付けずに露出させているため、車両走行中に撥ね上げた小石等が電線群に衝突する恐れがあり、また車体パネルのエッジとの接触、他部品との干渉や挟み込み等の外力から電線を保護することが困難で排水部の電線に損傷が生じる恐れがある。
  さらに、撥ね上がった水が排水部から電線群中に浸水し、車室側に発生する負圧で車室側へ吸引されて浸透していく恐れがある。かつ、排水部150と車体パネルの貫通穴に装着するグロメット130との間のワイヤハーネス100の長さがかなり長いため、当該区間で電線群に巻き付けた結束テープの隙間を通して電線群中に浸水が生じることを確実に排除できず、止水精度の信頼性が低い。
【0007】
  本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの電線群に止水剤を充填せず、かつ、電線群を外部に露出させた排水部を設けることなく、ワイヤハーネスの電線群の隙間を毛細管現象で通る水を排出して車室側への浸水発生を確実に防止することを課題としている。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  前記課題を解決するため、本発明は、車体パネルの貫通穴に装着するグロメットの被水側先端と嵌合接続するプロテクタを設け、該プロテクタから前記グロメットに連続して挿通させるワイヤハーネスの電線群は結束材で結束していない状態としており、
  前記プロテクタは、中央部を下方へ突出させると共に該中央部に押下用仕切壁を設けた縦壁と、該縦壁の上下端縁から突設した上壁および下壁とを備え、該下壁に水抜き穴を設けたプロテクタ本体と、該プロテクタ本体の縦壁と対向する開口を閉鎖する蓋とを備え、  前記プロテクタ内に挿通する前記ワイヤハーネスの電線群を前記押下用仕切壁によりU形状に屈曲させると共に、隙間をあけた並列状態として挿通していることを特徴とするワイヤハーネスの止水構造を提供している。
【0009】
  前記のように、本発明では、グロメットにプロテクタを連結し、該プロテクタ内部でワイヤハーネスを押下用仕切壁に沿って屈曲させることで、下向きU形状に屈曲させ、屈曲部の下部に位置する下壁に水抜き穴を設けている。プロテクタ内に挿通するワイヤハーネスはテープ等を巻き付けて結束せずバラバラの状態とし、かつ、隙間をあけた並列状態とすることで、屈曲部で電線群の隙間を通る水滴を確実に自重落下させて排水できるようにしている。このように、車室に入る直前に配置したプロテクタにより、ワイヤハーネスの電線群中の浸水を止水剤で遮断することなく、確実に排水できる。かつ、ワイヤハーネスの電線群はバラバラの状態としているがプロテクタ内に通して保護しているため、外部材による干渉で損傷が生じることはない。  
【0010】
  前記プロテクタ内で前記屈曲部のグロメット側のハーネス通路を通すワイヤハーネスの電線群を並列状態とし、該電線群を並列状態に保持する器具を取り付け、または前記プロテクタ本体の縦壁内面より並列状に突設した並列保持突起の間に前記電線群を区分けして通している。
【0011】
  前記プロテクタ挿通領域内でワイヤハーネスの電線群の両端に前記器具を取り付けており、該器具は櫛状本体に電線を並列して通した後に閉鎖枠で閉じる構成とし、前記ワイヤハーネスの布線工程時に取り付けている。
【0012】
  また、前記プロテクタ本体の押下用仕切壁の両側面、または押下用仕切壁とそれぞれ対向する下壁の両側面に前記器具を着脱自在に取り付ける取付溝を設けることが好ましい。
【0013】
  前記プロテクタ本体の縦壁内面より突設する並列保持突起は、該縦壁内面より水平方向に複数本を隙間をあけて突設し、突設位置は前記押下用仕切壁とグロメット連結側のプロテクタ本体の側壁との間に形成されるハーネス通路の上下2カ所とすることが好ましい。
  該プロテクタ本体内にワイヤハーネスの電線群を挿通する際に前記並列保持突起の間の複数の隙間に電線群を略均等に区分けして通している。
【0014】
  また、前記プロテクタは、プロテクタ本体の中央部の下方突出形状を、前記押下用仕切壁を挟む両側壁を下方側で近接する方向に傾斜させた下向き台形状とし、側両側壁の下端間の底壁の両側または中央部に前記排水穴を設けている。かつ、グロメット連結側の傾斜側壁と押下用仕切壁の間のハーネス通路に突出するように前記傾斜側壁と前記縦壁から水返し突起を設け、前記排水穴からの浸水が生じても、前記水返し突起で落下させ排水穴から排水できるようにしている。
【0015】
  前記プロテクタ本体の上壁と下壁の突出端側にロック枠を設ける一方、プロテクタの蓋の対応位置にロック爪を設け、プロテクタ本体にワイヤハーネスの電線群を通した後に蓋をロック結合できるようにしている。かつ、プロテクタ本体に蓋を取り付けた状態でグロメット連結側の出口周縁から嵌合用の環状フランジを突設させ、グロメットの接続端側の内面に設けた環状の嵌合溝に内嵌して連結できるようにしている。一方、反対側の入口側ではワイヤハーネスの外径に対応した円筒部が突出し、該円筒部の外周面からワイヤハーネスの外周面にかけて粘着テープを巻き付けている。
【0016】
  前記プロテクタおよびグロメットに通すワイヤハーネスは、被水領域となる自動車のエンジンルーム内に配索し、前記プロテクタに達するまではコルゲートチューブで外装し又は粘着テープを巻きつけて外装し、前記プロテクタに連結する前記グロメットをエンジンルームと車室とを仕切るパネルの貫通穴に装着することが好ましい。
 
【発明の効果】
【0017】
  前記のように、本発明では、グロメットにプロテクタを連結させ、該プロテクタ内でワイヤハーネスを強制的に下向きU形状に屈曲させると共に、プロテクタ内では電線をバラバラの状態で並列配置しているため、電線群の隙間を浸透する水を確実に自重落下させて水抜き穴から排水できる。よって、止水剤を電線群の隙間に充填させる線間止水処理する必要はなく、作業工程を単純化して大幅な省力化をはかれる。かつ、止水精度にバラツキを無くすと共に、止水精度自体を高めることができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1に示すプロテクタとグロメットとの分解した状態の斜視図である。
 
【
図3】(A)はプロテクタ内にワイヤハーネスを挿通している状態の断面図、(B)はワイヤハーネスの挿通前の断面図である。
 
【
図5】ワイヤハーネスの電線群を並列保持する器具を示し、(A)は斜視図、(B)は器具とプロテクタの取付溝を示す図面である。
 
【
図6】第2実施形態のプロテクタを示す斜視図である。
 
【
図7】(A)は
図6のA−A線断面図、(B)は
図6のB−B線断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0019】
  以下、本発明のワイヤハーネスの止水構造の実施形態を図面を参照して詳述する。
  
図1乃至
図5に第1実施形態を示す。
  
図1に示すように、自動車のエンジンルーム(X)から車室(Y)に車体パネルPに穿設した貫通穴Hを通してワイヤハーネス1を配索している。該ワイヤハーネス1を構成する多数の電線2の隙間を通してエンジンルーム(X)から車室(Y)へ浸水が生じるのを防止するため、ワイヤハーネス1にはグロメット4に連続してプロテクタ5を取り付けている。
 
【0020】
  前記ワイヤハーネス1の電線2は、エンジンルーム(X)内の配索領域では樹脂成形品からなるコルゲートチューブ3内を通して防水仕様としている。該コルゲートチューブ3の前端から引き出されるワイヤハーネス1を樹脂成形品からなる前記プロテクタ5内に電線群2を粘着テープ等で結束していないバラバラにした状態で挿通している。該プロテクタ5を通した電線群2は、プロテクタ5の前端に連結したゴムまたはエラストマーで成形したグロメット4に挿通している。該グロメット4は車体パネルPの貫通穴Hの内周面にシール状態で装着する形状としている。
 
【0021】
  前記プロテクタ5は
図2に示すように、プロテクタ本体10と該プロテクタ本体10の一側面の開口に被せて閉鎖する蓋11とからなる。該プロテクタ5の内部でワイヤハーネス1を下向きU形状に屈曲させて挿通させ、該プロテクタ本体10に設けた水抜き穴12から電線群2の隙間を通る浸水を排水できるようにしている。
 
【0022】
  前記プロテクタ本体10は、
図3(A)(B)に示すように、中央部15aを下方へ突出させた略T形状の垂直方向に配置する縦壁15と、該縦壁15の上下両側縁に沿って水平方向に突出させる上壁17と下壁16とからなる。上壁17は縦壁15の水平方向の上辺に沿って直線状に延在させている。一方、下壁16は中央部を下向きに凹形状に突出させ、中央部の下壁は左右両側壁16a、16bと、該左右両側壁の下端間の底壁16cとからなる。該底壁16cの中央に前記水抜き穴12を設けている。左右両側壁16a、16bの上端に前記上壁17と平行に対向する左右両側部16d、16eを設けている。
 
【0023】
  上壁17の中央下面で且つ縦壁15の中央部15aの内面の中央には、上壁17の下面に接する上端から前記下壁16の左右両側壁16aと16bに挟まれた部分にかけて押下用仕切壁18を突設している。該押下用仕切壁18の下端18aと前記底壁16cとの間にハーネス通路20の最下部20aとなる隙間を空けて位置させている。かつ、押下用仕切壁18の左右両側面18b、18cと対向する前記左右両側壁16a、16bとの間にそれぞれハーネス通路20の通路20b、20cを設け、前記最下端の通路20aと連続させ、前記通路20c−20a−20bを連続させたU形状の屈曲通路を形成している。
 
【0024】
  前記押下用仕切壁18の下端18aは円弧状にすると共に、押下用仕切壁18の左右両側面18b、18cに蟻溝状の取付溝18d、18eを設けている。
  さらに、
図2に示すように、下壁16および上壁17の外面の突出側に間隔をあけてロック枠21を設けている。
 
【0025】
  プロテクタ本体10の上壁17と下壁16の突出端に挟まれた部分は側面開口となり、該側面開口を前記蓋11で閉鎖するものとし、蓋11の周縁で前記ロック枠21と対応する位置にロック爪22を突設している。
 
【0026】
  前記プロテクタ本体10に蓋11を取り付けた状態でグロメット4との連結側周縁から嵌合用の四角枠状とした環状フランジ29を突設している。該環状フランジ29はグロメット4の接続側の内面に設けた環状の嵌合溝23に押し込んで内嵌することで、プロテクタ5をグロメット4に連結できるようにしている。
  一方、反対側の入口側ではワイヤハーネス1の外径に対応した円筒部24を突出するように、プロテクタ本体10と蓋11からそれぞれ半円筒部24a、24bをそれぞれ突設している。該円筒部24にワイヤハーネス1に外装した前記コルゲートチューブ3の前端を挿入した後、粘着テープを巻き付けて固着するようにしている。
 
【0027】
  グロメット4は、プロテクタ5との連結側に四角筒部30を設け、その内面に前記嵌合溝23を設けている。該四角筒部30に連続して角錐形状から円錐形状へと変化させて拡径する拡径筒部31を設け、該拡径筒部31の大径側に車体係止凹部32を環状に設けている。該車体係止凹部32を車体パネルPの貫通穴Hに内嵌係止することでグロメット4を貫通穴Hにシール状態で装着するようにしている。
 
【0028】
  前記ワイヤハーネス1は
図4に示すように、ワイヤハーネス組立作業台40上で電線群2を電線受け治具41で支持しながら布線して、ワイヤハーネス1を組み立てている。この布線工程時に、プロテクタ5内を挿通する電線群2の両端に一対の器具44(44−1、44−2)を取り付け、電線群2を隙間をあけて並列保持している。
 
【0029】
  器具44は
図5に示すように、櫛状の本体44aの一端に閉鎖枠44bをヒンジ44hを介して連結してる。本体44aの櫛歯44cに挟まれた空間44dに布線する電線を順次通して並列配置している。すべての電線を布線した後に閉鎖枠44bを回転して本体44aの他端に固定し、プロテクタ5内に通す電線2の両端に器具44−1、44−2を取り付けて並列保持している。
 
【0030】
  ワイヤハーネス1をプロテクタ5内に挿通した時、器具44−1と44−2はプロテクタ本体10内で押下用仕切壁18の両側面に設けた蟻溝状の取付溝18d、18eに挿入係止するものとしている。よって、本体44aに蟻溝に嵌合する傾斜突起44gを設けている。
 
【0031】
  前記ワイヤハーネス1のプロテクタ5への取り付けは、プロテクタ5のプロテクタ本体10内に、コルゲートチューブ3から引き出したワイヤハーネス1を入口側からU形状に屈曲した通路をへて出口側へと挿通させている。ワイヤハーネス1に取り付けた前記器具44−1、44−2を器具取付溝18d、18eに挿入係止し、該屈曲通路ではワイヤハーネス1の多数の電線2を互いに隙間が保持されるように並列配置している。
 
【0032】
  前記のように、プロテクタ本体10にワイヤハーネス1を通した後に蓋11を被せ、プロテクタ本体10と蓋11とをロック結合している。該プロテクタ5の入口側とコルゲートチューブ3とを粘着テープで固着すると共に、プロテクタ5の出口側をグロメット4と嵌合接続して、ワイヤハーネスを組み立てている。
 
【0033】
  前記のようにコルゲートチューブ3、プロテクタ5、グロメット4で外装したワイヤハーネス1を自動車に配索し、
図1に示すように、グロメット4を車体パネルPの貫通穴Hに装着すると、該グロメット4に連続してプロテクタ5がエンジンルーム(X)内で車体パネルPに近接して位置することになる。
 
【0034】
  自動車走行時にエンジンルーム(X)側でワイヤハーネス1の電線群中に浸水した水が毛細管現象と車室(Y)側で発生する負圧により車室側へと浸透しても、プロテクタ5内部で下向きU字状の屈曲部で水滴が自重落下し水抜き穴12から排水できる。かつ、該屈曲部では電線2は、粘着テープ等を巻き付けて結束しておらず、バラバラの状態であり、さらに、隙間をあけて並列保持されているため、電線群の隙間を通す水分を確実に自重落下させて排水することができる。
 
【0035】
  また、ワイヤハーネスを組み立てる布線時に一対の器具44−1、44−2を通して並列保持するだけで、従来の止水剤を塗布し、該塗布領域に防水シートを巻き付ける線間止水工程を無くしているため、止水作業が簡単となり、省力化を図ることができ、製造コストを大幅に低減できる。かつ、作業員の熟練度による仕上がり精度のバラツキを無くすことができ、止水精度を高めることもできる。
 
【0036】
  前記実施形態では、ワイヤハーネス1に取り付けている器具44−1と44−2を、プロテクタ本体10内で押下用仕切壁18の両側面に設けた蟻溝状の取付溝18d、18eに挿入係止するものとしているが、該取付溝を対向する左右両側壁16a、16bに設けてもよい。なお、蟻溝状の取付溝の形状に限定されず、器具44を取り付けることができればよい。
 
【0037】
  図6および
図7に第2実施形態を示す。
  第2実施形態では、プロテクタ5のプロテクタ本体10の構成を第1実施形態と相違させ、プロテクタ本体10の内部でワイヤハーネス1の電線群を並列配置できる形状を設けている。よって、第1実施形態のようにワイヤハーネス1の布線工程で器具44を用いて配列布線する必要はなく、別部材の器具44を不要にできる。
 
【0038】
  図6に示すように、プロテクタ本体10の下方へ突出させた中央部15aの左右両側は下向きに近接させて傾斜とし下向き台形状とし、下壁16の左右両側壁16a、16bを傾斜壁としている。
 
【0039】
  押下用仕切壁18とグロメット連結側の左側壁16aとに挟まれたハーネス通路20bには、該通路の上部側に縦壁15の内面から複数本の並列保持突起30を隙間をあけてハーネス通路20bを横断するように突設している。また、該ハーネス通路20bの下部側で押下用仕切壁18の下端と左側壁16aの下端とを結ぶ位置にも複数本の並列保持突起31を間隔をあけて突設している。
 
【0040】
  上下に突設する並列保持突起30の隙間および並列保持突起31の隙間にそれぞれワイヤハーネス1の電線群2を通して行くことで、ワイヤハーネス1の電線群を隙間をあけて並列保持できる。よって、ハーネス通路20aを挿通する領域でワイヤハーネス1の電線群の隙間を伝う水滴を自重落下させることができ、底壁16cの両側に設けた水抜き穴12より排水できる。
 
【0041】
  また、押下用仕切壁18の下端18aを球状に突出させている。かつ、前記左側壁16aには下向きJ字状に突設した水返し突起33を突設すると共に、縦壁15の内面からも水返し突起34を突設している。これら水返し突起33と34を設けることで、水抜き穴12からプロテクタ本体10の内部に浸水が生じ、左側壁16a、縦壁15の内面に沿って浸透していく水があっても、水返し突起33、34により浸透を阻止できる。かつ、押下用仕切壁18の下端18aを球状に突出させているため、押下用仕切壁18に下端から水が浸水してくるのを防止できる。
 
【0042】
  他の構成は前記第1実施形態と同様であり、かつ、同様の作用効果を有するため、同一符号を付して、説明を省略する。
 
 
【符号の説明】
【0043】
  1  ワイヤハーネス
  2  電線群
  3  コルゲートチューブ  
  4  グロメット
  5  プロテクタ
  10  プロテクタ本体
  11  蓋
  12  水抜き穴
  15  縦壁
  16  下壁
  17  上壁
  18  押下用仕切壁
  44  器具