(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768519
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ基板の欠陥修正装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20150806BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20150806BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02F1/13 101
G02F1/1335 505
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-132946(P2011-132946)
(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2013-3289(P2013-3289A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安士 朋江
(72)【発明者】
【氏名】清水 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸弘
【審査官】
岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/064919(WO,A1)
【文献】
特開2011−016202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02F 1/13
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも着色層が形成された修正対象基板の微小突起に、走行する研磨テープを研磨ヘッドで圧接しながら接触・摺動させて、前記微小突起を除去平坦化するカラーフィルタ基板の欠陥修正装置において、前記研磨ヘッドは、筒状の外側ヘッドに該外側ヘッドより小径の筒状または棒状の内側ヘッドが内接した、複数のヘッド集合体構造を有し、前記ヘッド集合体をテレスコピック機構で伸縮させ、前記小径の内側ヘッドを前記研磨ヘッド先端側に突出させる、または前記小径の内側ヘッドを前記外側ヘッドに嵌入することで、その先端面積または径を段階的に変化させる機構を具備することを特徴とするカラーフィルタ基板の欠陥修正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いるカラーフィルタ基板の欠陥修正装置に関し、ガラス基板あるいはTFT基板上にカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板の欠陥修正装置、及び、その欠陥修正装置を適用した欠陥修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置はコンピュータ端末表示装置、テレビ画像表示装置を中心に急速に普及が進んでいる。このカラー液晶表示装置は、アレイ基板と、このアレイ基板に所定の隙間を保持して対向配置された対向基板と、これら2つの基板間に狭持された液晶層と、から構成される液晶表示素子を備えており、アレイ基板および対向基板のいずれか一方の基板には、カラー化のために通常、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の着色層からなるカラーフィルタが設けられている。
【0003】
近年、この液晶表示装置には、高コントラスト化、高視野角化、低消費電力等の様々な要求があり、液晶表示装置のカラー表示化には必要不可欠なカラーフィルタにおいても同様の要求を達成する必要がある。一方で、カラー液晶表示装置は、その需要の増加に伴い、コストダウンに対する要求が高くなっている。カラーフィルタは、カラー液晶表示装置の部材の中でも製品価格に占める割合が高い為、より一層の低価格化が求められている。しかしながら、基板の大型化の進展に対して、カラーフィルタの製造工程でより高い歩留まりを維持する事は困難になりつつある。
【0004】
そこで、液晶表示装置用カラーフィルタ基板の製造工程において、歩留まりを改善するためにカラーフィルタ中の欠陥を修正している。一般に、対向基板として設けられる液晶表示装置用カラーフィルタ基板は、ガラス基板上に、ブラックマトリックス(以下BMと略称する)、着色画素、透明導電膜、柱状スペーサ(フォトスペーサ:以下PSと略称する)および配向制御用突起(以下MVAと略称する)が複数の工程で順次形成されている。そして、通常のカラーフィルタの画素部の大きさは、(60〜120μm)×(100〜300μm)角の大きさであり、修正箇所の大きさは、20μmΦ以上が対象となる。最近では、この修正箇所の大きさは、ますます微細化の方向にある。
【0005】
カラーフィルタの一般的な製造工程としてはフォトリソグラフィ法が挙げられ、ガラス基板の投入からはじまり、ガラス基板の事前洗浄、黒色感光性樹脂組成物の塗布、溶剤の乾燥、プレベーク、パターン露光、現像、ポストベーク、検査が行われる。その後、予めBMが形成された基板に対して、同様のフォトリソグラフィ法を適用して、前記BMの表示画面領域の開口部の所定の領域に着色感光性樹脂組成物を用いて着色画素を形成し、これを所定の色数の回数繰り返すことでカラーフィルタを形成する。
【0006】
カラーフィルタの製造工程において、代表的な不良として、表面に「異物」が付着して微小突起となる欠陥が挙げられる。カラーフィルタ基板の表面に微小突起が付着すると、アレイ基板に所定の隙間を保持して対向配置されたカラーフィルタ基板の、基板間に狭持された液晶層の厚みが均一にならず、表示装置として組み上げた後、結果として液晶表示の画質が低下してしまう。この異物には、レジスト材料の硬化片や、装置のベアリング削れ等による金属片、あるいは空気中の塵埃など、その硬さ、高さの異なる多様なバリエーションが存在する。一般に、カラーフィルタではこの欠陥を黒欠陥と称する。
【0007】
カラーフィルタの黒欠陥の修正方法として、”テープ研磨” という手法がある。テープ研磨は、例えば、特許文献1に開示されているように、突起欠陥部を研磨テープで研磨
することにより、突起を除去し、良品化する修正方法である。また、テープ研磨の修正精度及び修正良品率を向上させるための方法として、特許文献2には、対象欠陥の高さや硬さを測定し、対象によって研磨パラメータを変化させる方法が開示されており、特許文献3には、超音波を使用し、加工能率や加工精度を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−229797号公報
【特許文献2】特開2010−162654号公報
【特許文献3】特開平11−138395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のテープ研磨によるカラ−フィルタの欠陥修正装置では、1回のテープ研磨で修正が可能な面積は、主に研磨ヘッドの先端径によって左右される。修正対象欠陥の面積が、テープ研磨の修正可能面積より大きい場合には、修正位置を移動させながら、テープ研磨を繰り返すことで、修正が可能である。しかし、繰り返しにより、修正時間が増加してしまう問題がある。それに対して、修正対象欠陥の面積が、テープ研磨の修正可能面積より小さい場合、例えばフォトスペーサ(PS)や、配向用突起(MVA)等の周辺の構造物との距離が短い場合は、修正の際に周辺の構造物まで巻き込んで削り取ることとなり、その部分が最終製品において配向不良となる可能性がある問題がある。
【0010】
上記した理由により、テープ研磨の修正可能面積は、対象欠陥の大きさによって変更することが望ましいが、テープ研磨の修正可能面積を変更するには、研磨ヘッドの先端径を変化させる必要がある。しかし、従来の技術によれば、研磨ヘッドの先端径を変化させるためには、研磨ヘッドを交換する必要があり、研磨ヘッド交換のため、修正処理時間が増加するという問題があった。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス基板又はTFT基板上に着色層(RGB他)およびブラックマトリックス(BM)などの着色層が形成された液晶表示装置用カラーフィルタ基板のテープ研磨による欠陥修正装置において、研磨ヘッドの先端径を、ヘッドの交換なく変更させることが出来、修正時間の短縮化が可能なカラーフィルタ基板の欠陥修正装置と、その修正装置を適用した欠陥修正方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の請求項1に係る発明は、基板上に少なくとも着色層が形成された修正対象基板の微小突起に、走行する研磨テープを研磨ヘッドで圧接しながら接触・摺動させて、前記微小突起を除去平坦化するカラーフィルタ基板の欠陥修正装置において、前記研磨ヘッドは、
筒状の外側ヘッドに該外側ヘッドより小径の筒状または棒状の内側ヘッドが内接した、複数のヘッド集合体構造を有し、
前記ヘッド集合体をテレスコピック機構で伸縮させ、前記小径の内側ヘッドを前記研磨ヘッド先端側に突出させる、または前記小径の内側ヘッドを前記外側ヘッドに嵌入することで、その先端面積または径を段階的に変化させる機構を具備することを特徴とするカラーフィルタ基板の欠陥修正装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置では、微小突起の面積を測定し、その面積に応じて、研磨ヘッドの交換をすることなく、研磨ヘッドの先端径を変更することが可能なので、従来の修正対象では修正対象欠陥の大小により研磨ヘッドを交換することで増加していた修正時間の短縮を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る研磨ヘッドの、一実施形態での構造例を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る、研磨ヘッド伸縮のテレスコピック機構を説明する模式図である。
【
図3】本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明に係る、一例のカラーフィルタ基板及び欠陥部を示す断面模式図である。
【
図5】従来技術でのテープ研磨の一例を説明する断面模式図である。
【
図6】本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置での、テープ研磨の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を、一実施形態に基づいて以下に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る研磨ヘッドの、一実施形態での構造例を示す説明図である。この研磨ヘッドは円柱状で、
図1(a)に示すように、最小径の筒状ヘッドを研磨ヘッド先端側に突出させた先端径は30μmで、
図1(b)に示すように、小径の筒状ヘッドを外側の筒状ヘッドにすべて嵌入した場合の先端径は100μmで、4段階にその先端径を変化させることができる。
【0019】
この研磨ヘッドは、筒状の外側ヘッドにこの外側ヘッドより小径の筒状または棒状の内側ヘッドが内接した、複数のヘッド集合体構造を有し、このヘッド集合体を
図2に示すように、テレスコピック(telescopic)機構で伸縮させ、小径の内側ヘッドを研磨ヘッド先端側に突出させる、または小径の内側ヘッドを外側ヘッドに嵌入することで、その先端面積または先端径を段階的に変化させる機構を有している。ここで、テレスコピック機構は、機械などで、携帯型の望遠鏡のように、重なり合った筒が伸び縮みする構造である。伸縮効率から2〜4段が好ましい。また、研磨ヘッドの形状は、加工の容易性とその精度を考慮すると、例示した円柱状が最も好ましいが、
図1に示した上面図が楕円形あるいは多角形のものも使用可能である。
【0020】
研磨ヘッドの材質としては、SUS、炭素鋼、Ni、Fe等の金属以外にも、セラミックス、樹脂が採用可能である。テレスコピック機構での伸縮安定性と、走行する研磨テープをこの研磨ヘッドで圧接しながら接触・摺動させて、微小突起を除去平坦化するために、研磨テープを介した微小突起との接触時に形状変化の少ない剛性の高いものが好ましい。また、研磨テープと接する研磨ヘッドの先端部の平坦面は、研磨ヘッドの材質をそのまま用いても、表面加工を施してもかまわない。
【0021】
図3は、本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置の一例を示す概略図である。本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置は、少なくとも着色層形成後、検査工程で微小突起12の欠陥が検出された基板を修正対象基板11として受け入れ、平面テーブル30の所定の位置に載置する。まず、検査工程から転送された欠陥部の座標位置で、図示しない光学系を用いて、検出された微小突起の高さ及び面積を測定し、その値に対応して、本発明に係るテープ研磨機構20の研磨ヘッド21の先端部の面積および/または先端径を変化させる。
【0022】
光学系は観察機構として修正対象基板11上の微小突起(欠陥)12を照射する観察用照明光源と、微小突起(欠陥)12からの反射光を受光するラインセンサカメラ等の光学素子から成り、対象欠陥部の微小突起12を撮像し、画像処理装置で処理してその面積及び高さの測定機能を備えている。そして、上述した本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正方法を実施するうえでの重要なポイントであるテープ研磨機構20にその情報を送り、研磨ヘッド21の伸縮機構を駆動させる。図示しない駆動力変換部を介した駆動部アクチュエータから伝達される駆動力によって、研磨ヘッド21をテレスコピックで伸縮動作させて、その研磨ヘッド先端径を変化させ、走行する研磨テープ22の基板に対する接触面積を変化させる。
【0023】
テープ研磨機構20は、前述した研磨ヘッド21の伸縮機構を除いては、従来のテープ研磨技術を用いることが出来る。微小突起の面積測定結果に応じて研磨ヘッド先端径を変化させルト共に、正常な周囲との高さデータに基づいて、走行する研磨テープ22の走行スピード、修正対象基板11に対する研磨ヘッド21の押し込み量を変化させ、走行する研磨テープ22を微小突起12に圧接しながら摺動することで、この微小突起を除去平坦化する。ここで、研磨テープ22の走行経路は、巻き出しロール23からガイドロール24を介して研磨ヘッド21に導かれ、ガイドロール25を介して巻き出しロール26で巻き取られる形となり、図示しない走行駆動手段で制御される。
【0024】
画像処理装置を除いて、上記した少なくとも光学系とテープ研磨機構は、平面テーブル30上に保持された修正対象基板11に対して、三次元で任意の位置に移動可能とするための3軸駆動軸40上に配置されている。このことで、任意位置における欠陥のモニタリング、研磨除去が可能となっている。上記説明した機構に加えて、ピンアップによる製品基板の出し入れ、真空吸着による保持とパージによる脱着といった機能を有する平面テーブル30が適用される。また、本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置への基板の投入、排出には、別途産業用ロボット等を用意する。
【0025】
次に、本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を適用するカラーフィルタ基板について説明する。
図4に示すように、基板10のガラス基板には、カラー化のために通常、遮光層(ブラックマトリックス)13で区画された複数色の赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の着色画素からなる着色層14が設けられる。着色層までを形成した後、その上全面にITOをスパッタリング成膜した透明導電膜15を設け、さらにフォトスペ
ーサ(PS)16、あるいは配向制御用突起(MVA)を設けてカラーフィルタ基板とする。
【0026】
基板10としての、ガラス基板又はTFT基板上への着色層14および遮光層13の作製方法は、公知のインクジェット法、印刷法、フォトリソグラフィ法、エッチング法など何れかの方法で作製される。高精細、分光特性の制御性及び再現性等を考慮すれば、透明な樹脂中に顔料を、光開始剤、重合性モノマーと共に適当な溶剤に分散させた着色樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜にパターン露光、現像することで一色の着色層を形成する工程を各色毎に繰り返し行って着色画素を形成するフォトリソグラフィ法が一般的である。
【0027】
本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を適用する場合、少なくとも、上記した基板上への着色層14および遮光層13の作製工程において、欠陥を検出する。上記したカラーフィルタ付基板を、図示しない工程検査機で検査し、欠陥を検出した場合、微小突起(欠陥)12の位置を座標データとして記録し、本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置へ転送する。以下、欠陥修正装置における作業となる。対象となる欠陥は、着色層の黒欠陥がある。
【0028】
図5は、従来技術でのテープ研磨の一例を説明する断面模式図である。
図5(a)に示すように、正対象欠陥の面積がテープ研磨の修正可能面積より大きい場合、修正位置を移動させながらテープ研磨を繰り返すことで修正が可能である。それに対して、
図5(b)に示すように、修正対象欠陥の面積が、テープ研磨の修正可能面積より小さい場合、周辺の構造物(例えばフォトスペーサーPSや、MVA)との距離が短い場合は、修正の際に、周辺の構造物まで巻き込んで削り取ることとなり、その部分が最終製品において配向不良となる可能性がある問題がある。そこで、従来は、研磨ヘッドを先端径の小さいものに交換していた。
【0029】
本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を適用する場合、上述したように、工程検査機から送られてきたデータに基づき、修正対象基板11上に形成された着色層(RGB他)14およびブラックマトリックス(BM)13などの、カラーフィルタ用レジストを用いて形成されたカラーフィルタ層の所定の位置で、微小突起12の面積及び、周囲の着色層14の正常部分との膜厚差を測定する。例えば、欠陥面積は50μm×50μm、膜厚差は+2.0μmであった。ここで測定した微小突起12の面積から、テレスコピック機構を有する研磨ヘッド21の先端形状を、修正対象の欠陥に合わせて変化させ、本実施例では、先端径を60μmと設定してテープ研磨を実施した。その結果、着色層形成後に検出された黒欠陥を修正し、良品化することができた。
【0030】
以上説明したように、本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を用いて、着色層形成後に検出した黒欠陥の修正を実施して、着色画素を再生・良品化させることができた。本発明のカラーフィルタ基板の欠陥修正装置を用いることによって、効率的に修正が可能となる。また、その結果歩留まりが向上し、生産性向上への寄与が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
10・・基板(ガラス基板) 11・・修正対象基板 12・・微小突起(欠陥)
13・・ブラックマトリックス 14・・着色層(R、G、B)
15・・透明導電膜 16・・フォトスペーサ(PS)
20・・テープ研磨機構 21・・研磨ヘッド 22・・研磨テープ
23・・巻き出しロール 24、25・・ガイドロール 26・・巻取りロール 30・・平面テーブル 40・・3軸駆動軸