特許第5768577号(P5768577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新神戸電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5768577-蓄電セル 図000002
  • 特許5768577-蓄電セル 図000003
  • 特許5768577-蓄電セル 図000004
  • 特許5768577-蓄電セル 図000005
  • 特許5768577-蓄電セル 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768577
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/30 20060101AFI20150806BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20150806BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01M2/30 D
   H01M2/02 C
   H01M2/34 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-172874(P2011-172874)
(22)【出願日】2011年8月8日
(65)【公開番号】特開2013-37880(P2013-37880A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(72)【発明者】
【氏名】松浦 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳
(72)【発明者】
【氏名】飯田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 彰
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−158303(JP,A)
【文献】 特開2003−323930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/30
H01M 2/02
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有し他端に底部を有する金属製の缶本体と、缶本体の外周面を覆う絶縁被覆と、前記缶本体の前記開口部を塞ぐ金属製の蓋体とからなる缶の内部に、極板群が収納され、前記缶本体の前記底部が正極端子及び負極端子の一方を構成し、前記蓋体が前記正極端子及び負極端子の他方を構成する蓄電セルであって、
第1のリード線接続用端子部材が接続された第1の接続用端子部を備えた第1の端子金具が前記缶本体の前記底部に固定され、
第2のリード線接続用端子部材が接続された第2の接続用端子部を備えた第2の端子金具が前記蓋体に固定され、
前記第1の端子金具及び前記第2の端子金具は、前記第1の接続用端子部及び前記第2の接続用端子部が前記缶本体の前記外周面を覆う絶縁被覆との間に間隔を開けて且つ前記外周面に沿って延びるようにそれぞれ構成されており、
前記第1の端子金具及び第2の端子金具は、それぞれ中央部に貫通孔を有する板状の被固定部を有しており、前記被固定部が前記正極端子または前記負極端子に溶接され、前記貫通孔内に半田が充填されていることを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記第1の接続用端子部及び前記第2の接続用端子部は、互いに対向するように配置されている請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記第1のリード線接続用端子部材の端子構造と前記第2のリード線接続用端子部材の端子構造が異なる請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項4】
金属製の缶の一端に正極端子を備え他端に負極端子を備えた蓄電セルであって、
1以上のリード線端子部材が接続された1以上の接続用端子部を備えた端子金具が、前記正極端子及び負極端子にそれぞれ固定されており、
前記端子金具は、前記1以上の接続用端子部が前記缶の外周面を覆う絶縁被覆との間に間隔を開けて且つ前記外周面に沿って延びるように構成されており、
前記端子金具は、中央部に貫通孔を有する板状の被固定部を有しており、前記被固定部が前記正極端子または前記負極端子に溶接され、前記貫通孔内に半田が充填されていることを特徴とする蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2005−166493号公報には、一端に開口部を有し他端に底部を有する金属製の缶本体と、該缶本体の開口部を塞ぐ金属製の凸部を有する蓋体とからなる缶の内部に、極板群が収納されて構成される蓄電セルが示されている。この蓄電セルでは、缶本体の底部が負極端子となり、凸部を有する蓋体が正極端子となっている。この種の蓄電セルでは、負極端子を構成する缶本体の底部及び正極端子を構成する蓋体に外部の板状の被接続端子部材をそれぞれ直接接触させ、それぞれの端子部材をバネ力等で蓄電セル側に押しつける。または、缶本体の底部及び蓋体に外部の板状の被接続端子部材をそれぞれ溶接して、蓄電セルと他の電気機器等との接続を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−166493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蓄電セルでは、蓄電セルを使用する外部の被接続端子部材が特別な構造を有していなければならず、蓄電セルをもっと簡単な構造で利用したいという要求に応えることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、簡単に利用できる蓄電セルを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、周囲に広いスペースを必要とすることなく、簡単に利用できる蓄電セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が改良の対象とする蓄電セルは、金属製の缶の一端に正極端子を備え他端に負極端子を備えている。本発明では、1以上のリード線接続用端子部材が接続された1以上の接続用端子部を備えた端子金具を、正極端子及び負極端子にそれぞれ固定する。このようにすると1以上のリード線接続用端子部材にリード線を接続するだけで、正極端子及び負極端子と、負荷、他の蓄電セル、充電回路等とを簡単に接続することができる。そのため、本発明によれば、蓄電セルを簡単に利用したいという要求に応えることができる。なお1つの端子金具に複数のリード線接続用端子部材を設けても良いのは勿論である。
【0008】
本発明のより具体的な蓄電セルは、一端に開口部を有し他端に底部を有する金属製の缶本体と、缶本体の外周面を覆う絶縁被覆と、該缶本体の開口部を塞ぐ金属製の蓋体とからなる缶の内部に、極板群が収納されて構成されている。そして、缶本体の底部が正極端子及び負極端子の一方を構成し、蓋体が正極端子及び負極端子の他方を構成している。第1のリード線接続用端子部材が接続された第1の接続用端子部を備えた第1の端子金具を缶本体の底部に固定し、第2のリード線接続用端子部材が接続された第2の接続用端子部を備えた第2の端子金具を蓋体に固定する。第1の端子金具及び第2の端子金具は、第1の接続用端子部及び第2の接続用端子部が缶本体の外周面との間に間隔を開けて且つ外周面に沿って延びるようにそれぞれ構成する。なお第1及び第2のリード線接続用端子部材は、第1及び第2の端子金具を缶本体の底部及び蓋体に固定した後に、第1及び第2の接続用端子部に接続してもよいのは勿論である。
【0009】
このようにすれば、第1及び第2の接続用端子部が、缶本体の絶縁被覆によって覆われた外周面との間に間隔を開けて且つ外周面に沿って延びるように配置されるので、第1及び第2のリード線接続用端子部材の占有スペースが小さくなる。また接続されるリード線を缶本体に沿って引き回すことができるので、リード線の配置スペースも小さいものとすることができる。したがってこの具体的な蓄電セルは、広い設置スペースを必要とすることなく、簡単に利用できる。
【0010】
第1の接続用端子部及び第2の接続用端子部は、互いに対向するように配置することができる。このようにすれば、第1及び第2のリード線接続用端子部材を共通の収納スペース内に配置することができるので、さらに広い設置スペースを必要とすることがない。
【0011】
また第1のリード線接続用端子部材の端子構造と第2のリード線接続用端子部材の端子構造が異なっていると、接続される相手方のリード線の端部に固定された接続用端子部材の端子構造も異なるため、リード線の誤接続を防止できる。
【0012】
第1の端子金具及び第2の端子金具は、抵抗溶接等により正極端子または負極端子に溶接される板状の被固定部を有している。なお第1の端子金具及び第2の端子金具は、それぞれ中央部に貫通孔を有する板状の被固定部を有するように構成してもよい。この場合、被固定部を正極端子または負極端子に溶接し、貫通孔内に半田を充填すればよい。このようにすれば、半田は、第1及び第2の端子金具の被固定部と蓄電セルの端子との間と、貫通孔の内部に入り込み、半田による接合部分が広くなる。そのため、半田による接合部分の厚み寸法を小さくして、第1の端子金具及び第2の端子金具と蓄電セルの電極との接合を容易且つ確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態の蓄電セルの平面図である。
図2図1に示す蓄電セルの正面図である。
図3図1に示す蓄電セルの左側面図である。
図4図1に示す蓄電セルの右側面図である。
図5図1に示す蓄電セルに用いる第1及び第2の接続用端子部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の蓄電セルの実施の形態の一例について説明する。図1図4は、本発明の一実施の形態の蓄電セルの平面図、正面図、左側面図及び右側面図である。図1に示すように本例の蓄電セルは、セル本体1と第1の端子金具3と第1のリード線接続用端子部材5と第2の端子金具7と第2のリード線接続用端子部材9とを有している。セル本体1は、内部に図示しない極板群が収納された缶11を有している。缶11は、一端に開口部を有し他端に底部13aを有する金属製の缶本体13と、該記缶本体13の開口部を塞ぐ金属製の蓋体15とから構成されている。なお蓋体15と缶本体13との間には、絶縁ゴムパッキンが配置されている。したがって缶本体13と蓋板15とは電気的に絶縁されている。また缶本体13の外周面は、塩化ビニル等の絶縁樹脂フィルムまたは絶縁チューブからなる絶縁被覆14によって覆われている。図2に示すように、蓋体15は外部に突出する凸部15aを有している。本例では、缶本体13の底部13aが負極端子を構成し、蓋体15の凸部15aが正極端子を構成している。本実施の形態では、缶本体13の底部13aの上及び蓋体15の突出部15aを除いた部分の上に、絶縁材料からなるU字状のスペーサ16a及び16bが配置されている。このスペーサ16a及び16bは、管本体13の底部13a及び蓋体15の露出部の絶縁のために設けられている。なおこのスペーサ16a及び16bは、必ず必要なものではない。
【0015】
第1の端子金具3及び第2の端子金具7は、ニッケルまたはニッケル合金製の板材のプレス成型品からなり、いずれも同じ構造を有している。そこで、第1及び第2の端子金具3,7を1つの斜視図(図5)を用いて、その構造を説明する。図5に示すように、第1の端子金具3は、第1の被固定部17と第1の連結部19と第1の接続用端子部21とを一体に有している。第2の端子金具7も第2の被固定部23と第2の連結部25と第2の接続用端子部27とを一体に有している。第1及び第2の被固定部17,23は、矩形の部分と半円形の部分とが組み合わされた形状を有しており、中央部には貫通孔17a,23aがそれぞれ形成されている。図2及び図4に示すように、第1の被固定部17は、缶本体13の底部13a(負極端子)に抵抗溶接されている。また、また図2及び図3に示すように、第2の被固定部23は、蓋体15の凸部15a(正極端子)に抵抗溶接されている。本例では、図1及び図2に示すように、第1の接続用端子部21と第2の接続用端子部27とが互いに対向する位置関係を有するように、第1及び第2の被固定部17,23は、それぞれ負極端子及び正極端子に抵抗溶接されている。そして、第1及び第2の被固定部17,23のそれぞれの貫通孔17a,23a内には半田18,24が充填されている。図5に示すように、第1及び第2の連結部19,25は、矩形に近い形状を有しており、第1及び第2の被固定部17,23に対してそれぞれ直角に曲げられている。第1の連結部19は、第1の被固定部17と第1の接続用端子部21とを連結しており、第2の連結部25は、第2の被固定部23と第2の接続用端子部27とを連結している。第1及び第2の接続用端子部21,27は、細長い矩形形状を有しており、第1及び第2の連結部19,25の端部にそれぞれ接続している。第1及び第2の接続用端子部21,27は、缶11の外周面11aとの間に間隔を開けて且つ外周面11aに沿って缶11の長手方向に延びるように配置されている。
【0016】
図1に示すように、第1のリード線接続用端子部材5は、一般に市販されている雄型ギボシ端子であり、所定の形の帯状の金属板が丸められた形状を有している。第1のリード線接続用端子部材5は、第1の接続用端子部21にカシメ加工と半田とにより接続されている。そして、第1のリード線接続用端子部材5には、筒状の塩化ビニルのスリーブ29が被せられている。スリーブ29は、第1のリード線接続用端子部材5の保護と絶縁を図っている。
【0017】
第2のリード線接続用端子部材9も、第1のリード線接続用端子部材5と同様に、一般に市販されている雌型ギボシ端子である。第2のリード線接続用端子部材9も第1のリード線接続用端子部材5と同様に、第2の接続用端子部27にカシメ加工と半田とにより接続されている。そして、第2のリード線接続用端子部材9にも、筒状の塩化ビニルのスリーブ31が被せられている。
【0018】
本例では、以下のようにして第1の接続用端子部21と第1のリード線接続用端子部材5とを接合した。まず、第1のリード線接続用端子部材5の端部5aの内部に第1の接続用端子部21を挿入した後、端部5aをカシメた。次に、端部5aと第1の接続用端子部21とを半田付けして第1の接続用端子部21と第1のリード線接続用端子部材5とを接合した。そして、スリーブ29を第1のリード線接続用端子部材5に被せた。第2の接続用端子部27と第2のリード線接続用端子部材9との接合も同様にして行った。
【0019】
本例の蓄電セルでは、雄型ギボシ端子からなる第1のリード線接続用端子部材5に、端部に雌型ギボシ端子が固定されたリード線の雌型ギボシ端子を嵌合する。また雌型ギボシ端子からなる第2のリード線接続用端子部材9に、端部に雄型ギボシ端子が固定されたリード線の雄型ギボシ端子を嵌合する。このように第1のリード線接続用端子部材5と第2のリード線接続用端子部材9とを異なる端子構造とすると、リード線の誤接続を防止できる。
【0020】
本例の蓄電セルによれば、第1及び第2の接続用端子部21及び27が、缶本体13の絶縁被覆14によって覆われた外周面との間に間隔を開けて且つ外周面に沿って延びるように配置されるので、第1及び第2のリード線接続用端子部材3及び7の占有スペースが小さくなる。また接続されるリード線を缶本体13に沿って引き回すことができるので、リード線の配置スペースも小さいものとすることができる。したがってこの蓄電セルは、広い設置スペースを必要とすることなく、簡単に利用できる。
【0021】
なお、上記の実施の形態では、第1の接続用端子部21と第2の接続用端子部27とが缶11の外周面11aに沿って長手方向に延び、両者は互いに対向するように配置されているが、第1の接続用端子部及び第2の接続用端子部の配置位置は任意である。例えば、第1の接続用端子部を缶の外周面に沿って長手方向に延びるように配置し、第2の接続用端子部を缶から離れる方向(第1の接続用端子部から離れる方向)に延びるように配置してもよい。また、第1の端子金具の第1の接続用端子部と第2の端子金具の第2の接続用端子部とを相互に対向しないように缶の周方向において異なる位置に配置してもよい。また、第1の接続用端子部を缶の外周面に沿って長手方向に延びるように配置し、第2の接続用端子部を缶の外周面に沿って周方向に延びるように配置してもよい。
【0022】
上記の実施の形態では、第1及び第2の端子金具3及び7の第1及び第2の被固定部17,23のそれぞれの貫通孔17a,23a内に半田18,24が充填しているが、半田を充填せずに、抵抗溶接だけで第1及び第2の被固定部17,23を固定するようにしてもよいのは勿論である。
【0023】
また、上記の実施の形態では、第1及び第2のリード線接続用端子部材29及び31としてギボシ端子を用いたが、ギボシ端子以外の種々の構造の端子部材を第1及び第2のリード線接続用端子部材として用いることができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、1以上のリード線接続用端子部材にリード線を接続するだけで、正極端子及び負極端子と、負荷、他の蓄電セル、充電回路等とを簡単に接続することができる。そのため、本発明によれば、蓄電セルを簡単に利用したいという十分に要求に応えることができる。
【符号の説明】
【0025】
3,7 第1及び第2の端子金具
5,9 第1及び第2のリード線接続用端子部材
11 缶
11a 外周面
13 缶本体
13a 底部
15 蓋体
17,23 第1及び第2の被固定部
17a,23a 貫通孔
21,27 第1及び第2の接続用端子部
図1
図2
図3
図4
図5