(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比がリーンである酸化雰囲気において前記排気中の窒素酸化物及び硫黄成分を吸着するNOxトラップ触媒と、前記排気通路において前記NOxトラップ触媒の下流側に設けられ、前記排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒とを備え、前記空燃比をリッチとして高温及び還元雰囲気にし前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分を放出するS脱離処理を実施する内燃機関の排気浄化装置において、
前記排気通路において前記NOxトラップ触媒の上流側に設けられ、前記排気通路へ燃料を添加する燃料添加装置と、
前記燃料添加装置の下流側であって前記NOxトラップ触媒の上流側において前記排気通路から分岐し、前記NOxトラップ触媒の下流側であって前記酸化触媒の上流側において前記排気通路と合流するバイパス通路と、
前記バイパス通路上に設けられ、前記バイパス通路を流れる排気を遮断する遮断弁と、
前記遮断弁の開閉を制御する遮断弁制御手段と、
前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分を脱離するS脱離処理を実行するS脱離処理実行手段とを備え、
前記S脱離処理実行手段は、前記空燃比制御手段によって前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を理論空燃比に対してリッチとリーンとの間でスイングさせ前記NOxトラップ触媒の下流側の空燃比が定常的にリッチとなるように前記スイングのリッチ度合い及びリーン度合いを制御するとともに、前記遮断弁制御部によって前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比がリーンの場合にのみ前記遮断弁を開放させる
ことを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
前記配管内であって前記排気通路と前記バイパス通路が合流する部分に設けられ、前記排気通路を流通した排気と前記バイパス通路を流通した排気とを均一化して混合する混合部材を備える
ことを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献2の排気浄化システムは、バイパス管からNOxを含んだ排気も下流側のDPNRに流れているが、この排気には還元剤となる燃料は含まれていない。そのため、バイパス管から流れてきたNOxを下流側のDPNRにおいて浄化するために、燃料添加装置からより多量の燃料を添加して下流側のDPNRへ還元剤を供給する必要がある。また、特許文献2のシステムは、上記したように下流側のDPNRを昇温させるためにも多量の燃料を添加している。つまり、特許文献2のシステムでは、上流側のNSR(NOxトラップ触媒)に対して、必要以上の燃料が添加されることになる。これにより、上流側のNSRは、多量の燃料を添加したとしても、気化熱が奪われ温度が低下したり、一部の燃料が触媒表面に付着して触媒表面が炭化水素(HC)等に覆われてしまい排気との反応性が低下してしまうことが考えられる。
【0010】
また、NOxトラップ触媒のSパージを実施するには、NOxの放出処理時よりもNOxトラップ触媒を高温にする必要があり、これに対処すべくNOxの放出処理よりも多くの燃料を添加させる(すなわち、空燃比をよりリッチにさせる)必要があるため、燃費の悪化が懸念される。そのため、NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分を素早く放出して(言い換えると、S放出速度を高めて)燃費悪化を抑制することが好ましい。S放出速度を向上させるためには、少なくともNOxトラップ触媒の下流側の空燃比を定常的にリッチにしておくことが望まれている。
【0011】
しかしながら、NOxトラップ触媒の下流側の空燃比を定常的にリッチとすると、NOxトラップ触媒から放出される硫黄成分の大部分は硫化水素(H
2S)として大気中に放出されることになる。このH
2Sは、健康に直接影響を与えない僅かな量(レベル)であっても、人間の敏感な嗅覚ではH
2S独特の臭気を感じ取ることがある。そのため、放出されるH
2Sの量(すなわち、H
2S濃度)はできるだけ抑えることが望まれている。
【0012】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、NOxトラップ触媒を備えた排気浄化装置において、排気との反応性を低下させずにS脱離処理時におけるS放出速度の低下を招くことなく、H
2S臭気を抑制することができるようにした、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的の一つとする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)ここで開示する内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比がリーンである酸化雰囲気において前記排気中の窒素酸化物及び硫黄成分を吸着するNOxトラップ触媒と、前記排気通路において前記NOxトラップ触媒の下流側に設けられ、前記排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒とを備え、前記空燃比をリッチとして高温及び還元雰囲気にし前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分を放出するS脱離処理を実施する内燃機関の排気浄化装置
である。この排気浄化装置は、前記排気通路において前記NOxトラップ触媒の上流側に設けられ、前記排気通路へ燃料を添加する燃料添加装置と、前記燃料添加装置の下流側であって前記NOxトラップ触媒の上流側において前記排気通路から分岐し、前記NOxトラップ触媒の下流側であって前記酸化触媒の上流側において前記排気通路と合流するバイパス通路と、前記バイパス通路上に設けられ、前記バイパス通路を流れる排気を遮断する遮断弁と、を備える
。
さらに、この排気浄化装置は、前記遮断弁の開閉を制御する遮断弁制御手段と、前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分を脱離するS脱離処理を実行するS脱離処理実行手段とを備える。前記S脱離処理実行手段は、前記空燃比制御手段によって前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を理論空燃比に対してリッチとリーンとの間でスイングさせ前記NOxトラップ触媒の下流側の空燃比が定常的にリッチとなるように前記スイングのリッチ度合い及びリーン度合いを制御するとともに、前記遮断弁制御部によって前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比がリーンの場合にのみ前記遮断弁を開放させる。
【0014】
(2)前記NOxトラップ触媒が前記排気通路としての配管内に収容され、前記バイパス通路が、前記配管の外周に沿って設けられることが好ましい。すなわち、前記排気通路が、NOxトラップ触媒の周辺において内側配管と外側配管とからなる二重管構造となっており、前記NOxトラップ触媒は前記内側配管内に配置され、前記バイパス通路は前記内側配管の外周面と前記外側配管の内周面との間に設けられることが好ましい。
【0015】
(3)前記配管内であって前記排気通路と前記バイパス通路が合流する部分に設けられ、前記排気通路を流通した排気と前記バイパス通路を流通した排気とを均一化して混合する混合部材を備えることが好ましい。
(4)前記酸化触媒が、前記排気中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵材を添加されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
開示の内燃機関の排気浄化装置によれば、NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分を放出するS脱離処理を実施する際に、NOxトラップ触媒から放出された硫黄成分の大部分は還元剤としての燃料と反応してH
2Sとなり酸化触媒を通過する。このとき、酸化触媒に対してバイパス通路を経由して酸素を含んだ排気が送られることにより、酸化触媒においてH
2Sの一部をSO
2に変換することができる。つまり、NOxトラップ触媒のS脱離処理において、NOxトラップ触媒から硫黄成分が放出される速度(S放出速度)を低下させることなく、大気中に放出されるH
2Sの量を減らすことができ、H
2Sの臭気を抑制することができる。
【0018】
また、本排気浄化装置は、バイパス通路の分岐点が燃料添加装置の下流側であるため、バイパス通路には還元剤としての燃料を含んだ排気が流通する。言い換えると、例えばNOxトラップ触媒の下流側に配置された酸化触媒に燃料を供給して早期に酸化触媒を昇温したい場合に、燃料を含んだ排気の一部をNOxトラップ触媒を通過させずに酸化触媒に供給することができる。すなわち、酸化触媒に燃料を供給する場合、燃料を含んだ排気全てがNOxトラップ触媒を通過しない(すなわち、燃料を含んだ排気の一部がNOxトラップ触媒を迂回させることができる)ため、NOxトラップ触媒の表面に多量に添加された燃料の一部が付着して、NOxトラップ触媒の表面が炭化水素(HC)等の燃料に覆われてしまうことを抑制することができ、排気との反応性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0021】
[1.装置構成]
本実施形態の排気浄化装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン(内燃機関)1に適用される。
図1には、エンジン1に設けられる複数のシリンダ2のうちの一つを示すが、他のシリンダ2も同様の構成である。エンジン1のシリンダ2内には、上下方向に往復摺動するピストン3が設けられる。ピストン3は、コネクティングロッド4を介してクランクシャフト5に接続される。ピストン3は、その頂面に燃焼室となるキャビティ3aが形成されている。
【0022】
シリンダ2上部のシリンダヘッド6には、燃料噴射用のインジェクタ7が設けられる。インジェクタ7は、その先端部がシリンダ2の筒内空間に突出して設けられ、シリンダ2内に直接燃料を噴射する。インジェクタ7から噴射される燃料の噴射方向は、ピストン3のキャビティ3aに向かう方向に設定される。また、インジェクタ7の基端部には燃料配管7aが接続され、この燃料配管7aから加圧された燃料がインジェクタ7に供給される。
【0023】
シリンダヘッド6には、シリンダ2の筒内空間と連通する吸気ポート8及び排気ポート9が設けられ、これらの各ポート8,9を開閉するための吸気弁10及び排気弁11が設けられる。吸気ポート8には、エアフローセンサ19や図示しないエアクリーナやスロットルバルブ等を備えた吸気通路12が接続され、排気ポート9には排気通路13が接続される。この排気通路13には、排気通路13内に燃料を添加(噴射)する燃料添加装置14が設けられ、燃料添加装置14の下流側に排気を浄化するための排気浄化装置20が介装される。また、排気通路13には、排気通路13を流通する排気の温度を検出する温度センサ28が設けられる。
【0024】
排気浄化装置20は、排気上流側から順に配置された、前段酸化触媒21,フィルタ22,NOxトラップ触媒23及び後段酸化触媒24から構成される。
前段酸化触媒21は、排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。
【0025】
フィルタ22は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。フィルタ22の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成され、排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集される。フィルタ22では、捕集したPMを連続的に酸化させて除去し、排気を浄化する再生制御が実施される。
【0026】
NOxトラップ触媒23は、酸素過剰な酸化雰囲気(排気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態)において窒素酸化物(以下、NOxという)を硝酸塩として触媒の担体表面上に吸着し、酸素濃度が低い還元雰囲気(排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな状態)において吸着したNOxを放出して還元する機能を有する。NOxトラップ触媒23は吸着できるNOxの量(すなわち、最大量)が決まっており、NOxトラップ触媒23に吸着されたNOxの量がこの最大量(すなわち、飽和状態)に近づくと、吸着されたNOxを放出し還元浄化する制御(以下、この制御をNOxパージという)が実施される。
【0027】
NOxパージは、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を酸素濃度が低い還元雰囲気(リッチ)にし、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元剤をNOxトラップ触媒23に供給することで実施される。ここでは、NOxトラップ触媒23の上流側に設けられた燃料添加装置14から排気通路13に燃料を添加することによって、空燃比のリッチ化や還元剤の供給を行う。NOxパージの実施によって、NOxトラップ触媒23からNOxを放出させるとともに、放出されたNOxを還元して無害な窒素(N
2)に変換して排気を浄化する。
【0028】
NOxトラップ触媒23の下流側に配置された後段酸化触媒24は、前段酸化触媒21と同様、排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。ここでは、後段酸化触媒24は、排気中の酸素を吸蔵するセリア(CeO
2)等の酸素吸蔵材が添加されたものである。
【0029】
排気通路13には、NOxトラップ触媒23を迂回するバイパス通路15が設けられる。このバイパス通路15は、燃料添加装置14の下流に配置されたフィルタ22の下流側であってNOxトラップ触媒23の上流側において排気通路13から分岐し、NOxトラップ触媒23の下流側であって後段酸化触媒24の上流側において排気通路13と合流する。バイパス通路15には、バイパス通路15を流れる排気を遮断する遮断弁16が介装される。遮断弁16は、ECU30により開閉制御されることによりバイパス通路15内を流れる排気を制御する。なお、
図1は排気浄化装置のシステム構成図の例示であり、バイパス通路15は、
図1のように排気通路13に別の配管を接続することにより構成してもよく、
図2(a)に示すような二重管構造としてもよい。
【0030】
図2(a)は、排気通路13が、NOxトラップ触媒23の周辺において内側配管(配管)17と外側配管18とからなる二重管の構造となっており、内側配管17の内側が排気通路13,内側配管17の外周面と外側配管18の内周面とで囲まれた部分がバイパス通路15として構成されている。外側配管18は、排気ポート9との接続部からNOxトラップ触媒23と後段酸化触媒24との間まで延設され、上流端が開口し下流端が閉じた配管である。内側配管17は、NOxトラップ触媒23の直上流から延設され、上下流端が開口した配管である。
【0031】
外側配管18は、内側配管17と重なる二重管構造の部分において内側配管17よりも大きな径となるように拡径し、内側配管17の外周面と外側配管18の内周面との間に隙間を有する。この隙間が上記したバイパス通路15に相当する。つまり、バイパス通路15は、内側配管17の外周面に沿って設けられる。なお、内側配管17は、その軸心が外側配管18の軸心と一致するように配置される。これにより、内側配管17の外周面に沿って設けられるバイパス通路15の幅が、配管の軸方向に略均等となっている。
【0032】
内側配管17の内側には、上流側から、NOxトラップ触媒23,ガス分配リング(混合部材)27及び後段酸化触媒24が配置される。NOxトラップ触媒23及び後段酸化触媒24は、その外周に触媒保持材25,26が設けられ、この触媒保持材25,26を介してそれぞれ内側配管17の内側に保持される。内側配管17には、NOxトラップ触媒23の下流側であって後段酸化触媒24の上流側(すなわち、外側配管18の下流端に対応する部分)に一つの開口部17aが形成され、開口部17aを介して内側配管17の内外が連通される。つまり、内側配管17の外周面に設けられたバイパス通路15を流通した排気は、この開口部17aから内側配管17の内側(すなわち、排気通路13)へ流入し、排気通路13を流通する排気と合流する。
【0033】
内側配管17の内側には、開口部17aが形成された部分に、
図2(b)に示すようなガス分配リング27が嵌挿される。ガス分配リング27は中空の環状部材であって、バイパス通路15を流通し開口部17aから排気通路13内へ流入する排気を、内側配管17の周方向に分配して、排気通路13内の排気と混合させるためのものである。このガス分配リング27は、外周面に排気を流入させるためのガス流入口27aが一つ設けられ、内周面に排気を流出させるためのガス流出口27bが周方向に略等間隔に複数設けられる。ガス分配リング27は、その外周面が内側配管17の内周面に密着し、内側配管17に設けられた開口部17aとガス流入口27aとが重なるように配置される。
【0034】
バイパス通路15を流通した排気は、
図2(b)に示すように、開口部17a及びガス流入口27aからガス分配リング27内へ流入し、複数のガス流出口27bから排気通路13内へ排出される。これにより、バイパス通路15を流通した排気と排気通路13内を流通した排気とが均一化されて混合される。この開口部17a及びガス流入口27aには、バイパス通路15を流れる排気を遮断する遮断弁16が設けられる。遮断弁16は、閉状態において開口部17a及びガス流入口27aを閉鎖して排気の流通を遮断し、開状態において開口部17a及びガス流入口27aを開放して排気の流通を開放する。この遮断弁16の開閉は、ECU30に設けられた遮断弁制御部33により制御される。
【0035】
エアフローセンサ19は、吸気通路12を流通する空気量(吸気流量)を検出する。また、温度センサ28は、フィルタ22の下流側であってNOxトラップ触媒23の上流側に設けられ、NOxトラップ触媒23に流入する排気の温度を検出する。これらセンサ19,28で検出された情報は、ECU30へ送信される。
【0036】
ECU(電子制御装置)30は、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えている。ECU30の入力側にはエアフローセンサ19や温度センサ28等のセンサ類が接続され、出力側には燃料添加装置14及び遮断弁16が接続される。ECU30は、上記した再生制御やNOxパージ等の様々な制御を実施するものであるが、ここでは特に以下のSパージを実行する。
【0037】
Sパージとは、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分を定期的に放出する、いわゆるS脱離処理のことである。NOxトラップ触媒23は、排気中のNOxだけでなく、一般に排気に含まれている硫黄成分(サルファ,以下、単にSとも表現する)も吸着する。NOxトラップ触媒23は、上記したように触媒の担体表面上に吸着できるNOxの量が決まっているため、硫黄成分が吸着されることにより吸着できるNOxの量が減少してしまう。さらに硫黄成分は、上記のNOxパージでは僅かな量しか放出されないため時間とともに増加し、これによりNOxトラップ触媒23の本来の機能であるNOxを吸着する能力が低下してしまう。これを防ぐために実施されるのがSパージである。
【0038】
[2.制御構成]
次に、本実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の制御構成について、
図1及び
図2(a)を用いて説明する。なお、以下、排気浄化装置20が
図2に示す構成の場合を説明する。
ECU30は、上記のSパージを実行するために、吸着S量推定部31としての機能要素と、判定部32としての機能要素と、遮断弁制御部33としての機能要素と、空燃比制御部34としての機能要素と、Sパージ実行部35としての機能要素とを有している。
【0039】
吸着S量推定部31は、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分の量(以下、吸着S量という)S
ADを推定するものである。吸着S量S
ADは、エンジン1から排出される硫黄成分の量に依存し、エンジン1から排出される硫黄成分の量は、エンジン1において使用される燃料の量と燃料の種類とに依存する。そのため、吸着S量推定部31は、例えば前回のSパージの終了後から使用された燃料量Fを積算し、以下の式(1)に示すように、この積算使用燃料量ΣFに燃料の種類に応じた係数kを乗算することで吸着S量S
ADを推定する。係数kは、燃料の種類(例えば、日本で使用される燃料か、アメリカで使用される燃料か等)によって異なる値である。これは、使用される燃料の種類によって排出される硫黄成分の量が異なるからである。吸着S量S
ADの推定手法を式で表すと、以下の式(1)となる。
S=S
AD=ΣF×k ・・・(1)
推定された吸着S量S
ADの情報は、判定部32に伝達される。
【0040】
判定部32は、吸着S量推定部31で推定された吸着S量S
ADに基づいて、Sパージが必要であるか否かの判定と、Sパージ開始条件が成立したか否かの判定とを実施するものである。判定部32は、まず、吸着S量推定部31で推定された吸着S量S
ADと予め設定された所定値S
THとを比較し、吸着S量S
ADが所定値S
TH以上の場合にSパージが必要であると判定し、吸着S量S
ADが所定値S
TH未満の場合にSパージが必要でないと判定する。すなわち、以下の条件(2)が成立した場合はSパージが必要であると判定する。なお、この判定に用いられる所定値S
THは、例えば予め実験等によりNOxトラップ触媒23のNOx浄化性能が低下する程度に硫黄成分が蓄積したと考えられる吸着S量である。
(2)吸着S量S
AD≧所定値S
TH
【0041】
判定部32は、上記の条件(2)が成立したら、Sパージを開始できるか否か、言い換えると、Sパージを実施することができるか否か(すなわち、Sパージ開始条件が成立したか否か)を判定する。このSパージ開始条件は、例えば車両が高速道路等の道路を高速で走行中や郊外等を安定して走行中に、排気が高温で安定していることである。なお、上記の条件(2)が成立した場合であっても、Sパージ開始条件が成立しない場合は、Sパージは実行されない。
【0042】
遮断弁制御部(遮断弁制御手段)33は、バイパス通路15に設けられた遮断弁16の開閉を制御するものである。遮断弁制御部33は、Sパージが実行されていない場合は遮断弁16を常時閉鎖し、Sパージが実行されている時は、NOxトラップ触媒23に流入する排気(すなわち、NOxトラップ触媒23の上流側の排気)の空燃比がリーンの場合にのみ遮断弁16を開放し、バイパス通路15に排気を流通させる。つまり、遮断弁制御部33は、以下のSパージ実行部35の指令に基づき、空燃比制御部34の空燃比制御と連動して遮断弁16の開閉を制御する。言い換えると、遮断弁制御部33は、以下の空燃比制御部34により排気の空燃比がリーンにされた場合のみ遮断弁16を開とするように制御する。
【0043】
空燃比制御部(空燃比制御手段)34は、NOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比(A/F)を制御するものである。一般に空燃比を制御するには空気量と燃料量とを制御すればよいが、ここでは出力に影響を与えず排気の空燃比のみを制御するために、燃料添加装置14から排気通路13内に添加される燃料添加量を制御する。この空燃比制御部34は、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を増加させ、空燃比を理論空燃比よりもリーンにする場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を減少させる(又は添加される燃料量をゼロにさせる)。
【0044】
また、空燃比制御部34は、燃料添加装置14から添加される燃料量や燃料添加時間を制御することにより、排気の空燃比を制御するとともに排気の温度制御も行う。すなわち、空燃比制御部34は、排気の温度を上昇させる場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を増加させて前段酸化触媒21で酸化反応(燃焼)させ、排気の温度を低下させる場合は燃料添加装置14から添加される燃料量をゼロにさせる。
【0045】
Sパージ実行部(S脱離処理実行手段)35は、判定部32によりSパージ開始条件が成立したと判定されたときに、遮断弁制御部33及び空燃比制御部34に指令を出すことによりSパージを実行するものである。Sパージを実行するためには、以下の条件(3)及び(4)をともに成立させる必要がある。
(3)NOxトラップ触媒23の温度≧S脱離開始温度
(4)NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気がリッチ
なお、S脱離開始温度とは、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気がリッチの場合にNOxトラップ触媒23から硫黄成分が脱離し始めるときの温度であり、触媒によって異なる。
【0046】
Sパージ実行部35は、まず上記の条件(3)を成立させるために、空燃比制御部34に対して排気の温度を制御するよう指令を出し、排気の温度制御を実施させる。この指令を受けた空燃比制御部34は、燃料添加装置14から添加する燃料量を増加させ、前段酸化触媒21で酸化反応させることにより排気の温度を上昇させる。Sパージ実行部35は、排気を温度上昇させることによりNOxトラップ触媒23を昇温させ、NOxトラップ触媒23の温度をS脱離開始温度以上にする。以下、この制御を触媒昇温制御という。
【0047】
Sパージ実行部35は、触媒昇温制御を開始してから、NOxトラップ触媒23の上流側に設けた温度センサ28で検出された排気温度が所定の温度に達したらNOxトラップ触媒23がS脱離開始温度以上に昇温されたものとみなして、上記の条件(4)を成立させるために空燃比制御部34に指令を出して排気の空燃比制御を実施させる。
【0048】
Sパージが実行されると、NOxトラップ触媒23からは硫黄成分が放出(脱離)され、その大部分が排気中に含まれるHC等の還元剤と結合して硫化水素(H
2S)として放出される。このH
2Sは、人体に影響を与えない僅かな量であってもH
2S独特の臭気を有する。また、Sパージは上記の条件(3)に記載のように、NOxトラップ触媒23を昇温させる必要があることから燃費の悪化が懸念されるため、早期にSパージを終了させるために硫黄成分がNOxトラップ触媒23から放出される速度(以下、S放出速度という)を低下させない必要がある。
【0049】
これらを実現するために、ここで実施されるSパージは、上記の条件(3)及び(4)を成立させるとともに、NOxトラップ触媒23から放出されるH
2Sの一部を後段酸化触媒24において酸化させ、SO
2に変換する処理を実施する。すなわち、S放出速度を低下させることなく、NOxトラップ触媒23から放出されたH
2Sの一部をSO
2に変換してH
2Sの量を減少させてH
2S臭気を抑制する。以下、このSパージを臭気抑制Sパージといい、臭気抑制Sパージ以外のSパージを通常のSパージという。また、これらを特に区別しない場合には単にSパージという。
【0050】
Sパージを実行するためにはNOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を常にリッチにする必要があるため、Sパージ実行中は当然NOxトラップ触媒23の出口側の排気もリッチな状態となっている。ここでいうリッチな状態とは、排気中に酸素(O
2)が含まれていない状態を意味する。Sパージ実行中にこのリッチな排気を後段酸化触媒24に流入させても、排気中にO
2がなければH
2Sの一部をSO
2に変換することができない。
【0051】
そこで、臭気抑制Sパージでは、Sパージ実行部35は、空燃比制御部34に対して上記の条件(4)を成立させるための空燃比制御に加え、以下の指令(5)を出して空燃比の制御を実施する。さらにSパージ実行部35は、空燃比制御部34に対する指令(5)に連動させて、遮断弁制御部33に対して以下の指令(6)を出して遮断弁16の開閉制御を実施する。これらの制御により、Sパージ実行部35は後段酸化触媒24に酸素を含んだ排気を供給する。
(5)空燃比を理論空燃比(ストイキ)に対してリッチとリーンとの間でスイングさせる。
(6)空燃比がリーンの場合にのみ遮断弁16を開とする。
【0052】
上記の指令(5)を受けた空燃比制御部34は、燃料添加装置14により燃料を添加する時間(リッチ継続時間)と、燃料を添加しない時間(リーン継続時間)とを周期的に交互に繰り返し、空燃比(A/F)を交互にリッチ化及びリーン化させる制御を実施する。言い換えると、空燃比制御部34は、NOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比を周期的にストイキに対してリッチとリーンとの間でスイングさせて、A/F変調を実施させる。これにより、NOxトラップ触媒23の上流側の排気は、繰り返し交互にリッチな排気(酸素を含まない排気)とリーンな排気(酸素を含む排気)とになる。以下、この制御を空燃比スイング制御という。
【0053】
このとき、空燃比制御部34は、上記の条件(4)を成立させるために、空燃比スイング制御を実施しながら、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気が定常的にリッチとなるように添加燃料量を制御して、ストイキに対するリッチ度合い及びリーン度合いを制御する。例えば、空燃比制御部34は、NOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比をリッチ(A/F=12)とリーン(A/F=16)とでスイングさせることにより、NOxトラップ触媒23の周辺の空燃比は平均的に常にリッチ(A/F=14)とする。
【0054】
また、上記の指令(6)を受けた遮断弁制御部33は、空燃比制御部34によって燃料添加装置14からの燃料添加が行われていないとき(すなわち、NOxトラップ触媒23の上流側の排気の空燃比がリーンのとき)のみ、遮断弁16を開放し、それ以外のときは全て遮断弁16を閉鎖するように開閉制御を実施する。すなわち、遮断弁16が開いているのはバイパス通路15を流通させる排気中に酸素が含まれている間だけであって、それ以外のリッチ時やSパージが実行されていないときは全て閉鎖される。これにより、バイパス通路15には酸素を含んだ排気が流通し、この排気はNOxトラップ触媒23を迂回して後段酸化触媒24に供給される。
【0055】
以上の制御によって、後段酸化触媒24には、NOxトラップ触媒23から放出されたH
2Sと、バイパス通路15を流通した酸素を含んだ排気とが供給される。そして、後段酸化触媒24において、H
2Sの一部を酸化させてSO
2に変換することでH
2Sの量を減少させ、H
2S臭気を抑制する。なお、臭気抑制Sパージは、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分が放出され終わったら終了する。なお、Sパージ実行中は、NOxトラップ触媒23に残っている硫黄成分の量(残留吸着S量)が逐次算出され、この残留吸着S量がゼロになったら硫黄成分が全て放出されたことになるためSパージを終了する。すなわち、これがSパージの終了条件である。
【0056】
[3.フローチャート]
次に、
図3を用いてECU30で実行される臭気抑制Sパージの制御(S脱離処理制御)の手順の例を説明する。このフローチャートは、所定の周期T(例えば、数[s]周期)で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
【0057】
本排気浄化装置は、ドライバによるイグニッションスイッチ(図示略)のオン操作が行われ、エンジン1が始動したら以下の制御フローをスタートする。なお、フローチャート中のフラグFは、Sパージ実行部35によってSパージが実行されている場合はフラグF=1と設定され、Sパージが実行されていない場合はフラグF=0とされる。制御開始時はフラグFはF=0に設定されている。
【0058】
図3に示すように、ステップS10において、フラグFがF=0であるか否かが判定される。制御開始時はフラグFはF=0のためYESルートからステップS20へ進む。ステップS20では、NOxトラップ触媒23に吸着されている硫黄成分の量(吸着S量)S
ADが推定される。次いでステップS30において、ステップS20で推定した吸着S量S
ADが予め設定された所定値S
TH以上であるか否かが判定される。つまり、ステップS30の判定は上記の条件(2)のSパージが必要であるか否かの判定であり、判定部32によって判定される。
【0059】
吸着S量S
ADが所定値S
TH以上の場合はSパージが必要であると判定されてステップS40へ進み、判定部33によりSパージを実施することができるか否か(Sパージ開始条件が成立したか否か)が判定される。一方、ステップS30において吸着S量S
ADが所定値S
TH未満であると判定された場合及びステップS40においてSパージが実施できないと判定された場合は、いずれもリターンする。
【0060】
また、ステップS40においてSパージ開始条件が成立したと判定されたら、ステップS50においてフラグFがF=1に設定されてステップS60へ進み、空燃比制御部34による触媒昇温制御が実施されてNOxトラップ触媒23が昇温される。そして、ステップS70において、Sパージ実行部35により、空燃比制御部34及び遮断弁制御部33にそれぞれ上記の指令(5)及び(6)が出され、空燃比スイング制御及び遮断弁16の開閉制御が実施される。これにより、臭気抑制Sパージが実行される。
【0061】
ステップS80においてSパージ終了条件が成立したか否かが判定され、成立していなければNOルートからステップS10へ戻る。この場合、フラグFはF=1に設定されているため、ステップS10の判定においてNOルートからステップS60へ進む。そして、ステップS80の終了条件が成立したら、フラグFをリセットして臭気抑制Sパージを終了する。
【0062】
[4.効果]
したがって、本排気浄化装置によれば、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分を放出するS脱離処理(Sパージ)を実施する際に、NOxトラップ触媒23から放出された硫黄成分の大部分は還元剤と反応してH
2Sとなり後段酸化触媒24を通過する。このとき、後段酸化触媒24に対してバイパス通路15を経由して(NOxトラップ触媒23を迂回して)酸素を含んだ排気が送られることにより、後段酸化触媒24においてH
2Sの一部をSO
2に変換することができる。つまり、NOxトラップ触媒23のSパージにおいて、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出される速度(S放出速度)を低下させることなく、大気中に放出されるH
2Sの量を減らすことができ、H
2Sの臭気を抑制することができる。
【0063】
また、本排気浄化装置20は、バイパス通路15の分岐点Aが燃料添加装置14の下流側であるため、バイパス通路15には還元剤としての燃料を含んだ排気が流通する。言い換えると、例えば後段酸化触媒24に燃料を供給して早期に後段酸化触媒24を昇温したい場合に、燃料を含んだ排気の一部をNOxトラップ触媒23を通過させずに後段酸化触媒24に供給することができる。すなわち、後段酸化触媒24に燃料を供給する場合、燃料を含んだ排気全てがNOxトラップ触媒23を通過しない(すなわち、燃料を含んだ排気の一部がNOxトラップ触媒23を迂回させることができる)ため、NOxトラップ触媒23の表面に多量に添加された燃料の一部が付着して、NOxトラップ触媒23の表面が炭化水素(HC)等の燃料に覆われてしまうことを抑制することができ、排気との反応性の低下を抑制することができる。
【0064】
また、触媒を流れる排気は通常層流のため、NOxトラップ触媒23を排気が流通している間に排気温度は低下してしまうが、NOxトラップ触媒23が収容される内側配管17の外周に沿ってバイパス通路15を設けることにより、バイパス通路15を流れる排気によって、NOxトラップ触媒23を流れる排気の温度低下を抑制することができる。これにより、NOxトラップ触媒23の温度低下を抑制することができ、保温効果を得ることができる。
【0065】
また、内側配管17の内側であってバイパス通路15が合流する部分にガス分配リング27が設けられているため、バイパス通路15を流通してきた排気を分配しながら排気通路13内に送ることができ、排気通路13を流通した排気とバイパス通路15を流通した排気とを混合させることができる。これにより、後段酸化触媒24の一部には酸素を含んだ排気が供給され、他の部分には酸素を含まない排気が供給されるような、排気のばらつきを抑制することができ、後段酸化触媒24上での酸化反応を効率よく実施させることができる。
【0066】
また、後段酸化触媒24が排気中の酸素を吸蔵する酸素吸蔵材が添加されたものであるため、バイパス通路15から流れてくる排気中の酸素を後段酸化触媒24に吸蔵しておくことができる。これにより、酸素を含む排気が供給されていないときであっても、後段酸化触媒24においてH
2Sの一部を酸化してSO
2に変換させることができるため、H
2Sの量を減少させることができ、H
2S臭気をより低減することができる。
【0067】
また、Sパージ実行部35が、空燃比制御部34によってNOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比をストイキに対してリッチとリーンとの間でスイングさせ、遮断弁制御部33によって空燃比がリーンの場合にのみ遮断弁16を開放させる制御を実施する。これにより、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気は常時リッチとしながら、上流側の排気をリーンな状態とすることができ、このリーンな排気(すなわち、酸素を含んだ排気)をバイパス通路15から後段酸化触媒24に供給することができるため、後段酸化触媒24上での酸化反応をより効率的に実施させることができ、H
2S臭気をより低減できる。
【0068】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、判定部32によりSパージが必要であると判定された場合に、常に臭気抑制Sパージを実行しているが、例えば、吸着S量推定部31により推定された吸着S量S
ADに応じて臭気抑制Sパージを実施するか否か(すなわち、通常のSパージを実施するか)の判定を追加して、吸着S量S
ADがある所定の量以上の場合にのみ臭気抑制Sパージを実施するようにしてもよい。
【0069】
言い換えると、判定部32において、Sパージが必要であるか否かの判定に加え、Sパージが必要であると判定された場合に臭気抑制Sパージが必要であるか否かの判定を行ってもよい。これにより、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分の量が多量の場合はH
2S臭気が強くなるため、このときだけ臭気抑制Sパージを実施し、それ以外の場合は通常のSパージを実施する構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、後段酸化触媒24が酸化吸蔵材を添加されたものであるが、後段酸化触媒24はこれに限られず、酸化吸蔵材が添加されていないものであってもよい。
また、遮断弁制御部33は、Sパージ以外において遮断弁16を閉状態に制御していればよいため、空燃比がリッチのときに遮断弁16を開放してもよい。この場合、酸素を含まない排気も後段酸化触媒24に供給されることとなるが、制御構成は簡素化される。
【0071】
また、上記実施形態では、バイパス通路15から排気通路13内へ流入する入口は開口部17aの一つのみであったが、流入口の数は一つに限られない。この場合、それぞれの流入口に遮断弁16を設ける必要があるが、ガス分配リング27を配置しなくてもバイパス通路15を流通した排気と排気通路13内を流通した排気とを混合させることができる。また、流入口が開口部17aのみの場合でも、ガス分配リング27は必ずしも必要ない。
【0072】
また、上記の触媒昇温制御によりNOxトラップ触媒23がS脱離開始温度まで昇温されたかを温度センサ28の検出値で判断するのではなく、時間で判断してもよい。つまり、触媒昇温制御を開始してから所定時間が経過したらNOxトラップ触媒23がS脱離開始温度以上に昇温されたものとみなしてもよい。この所定時間は、例えば添加する燃料量と排気の流量とから排気がどの程度温度上昇するかを予め実験等により求めておき、この関係を用いて、実際に添加した燃料量と吸気通路12に設けたエアフローセンサ19で検出した吸気流量から求めた排気の流量とから排気の温度上昇を算出し、これを触媒の温度上昇に換算したときに触媒の温度がS脱離開始温度以上になるまでの時間である。
【0073】
また、上記実施形態では、遮断弁制御部33は、空燃比制御部34による制御に基づいて遮断弁16の開閉制御を実施しているが、NOxトラップ触媒23の上流側に空燃比センサを設けて、空燃比を直接検出することにより遮断弁16の開閉制御を実施してもよい。
また、吸着S量S
ADの推定は、上記の他に、例えば吸着S量とエンジン1の作動時間との関係を予め実験等により求めてマップ化しておき、エンジン1の作動時間を積算して、積算した作動時間をこのマップに適用することにより吸着S量S
ADを推定してもよい。また、例えば、吸着S量と走行距離との関係を予めマップ化しておき、前回Sパージを実施したときからの走行距離を取得してこのマップに適用することにより推定してもよい。また、マップではなく予め実験等により求めた数式を用いて推定してもよい。
【0074】
また、排気通路13に設けた燃料添加装置14の代わりに燃料噴射用のインジェクタ7を用いてもよい。
また、排気浄化装置20(前段酸化触媒21,フィルタ22,NOxトラップ触媒23及び後段酸化触媒24)は、排気通路13上に上記の順に配置されていればよく、
図1や
図2のような形状及び収納状態に限られない。例えば、NOxトラップ触媒が複数直列に設けられたような構成でもよい。また、バイパス通路15の構成も
図2のものに限られない。
また、NOxトラップ触媒を有するものであればディーゼルエンジンに限られない。