(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、例えば、淡水から純水を製造する純水製造システムに適用される。
図1は、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1の全体構成図である。
図2は、制御部10が流量パルス信号の時間幅を計測する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図3は、制御部10が数値情報としての検出流量値を演算する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図4は、制御部10が流量フィードバック水量制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図5は、制御部10が温度フィードフォワード回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る逆浸透膜分離装置1は、加圧ポンプ2と、インバータ3と、温度検出手段としての温度センサ4と、逆浸透膜モジュールとしてのRO膜モジュール5と、流量検出手段としての流量センサ6と、制御部10と、排水弁としての第1排水弁11〜第3排水弁13と、を備える。
図1では、電気的な接続の経路を破線で示す(後述する
図4、
図6についても同じ)。
【0019】
また、逆浸透膜分離装置1は、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、濃縮水W3の排水ライン(第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13)と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
供給水ラインL1は、供給水W1をRO膜モジュール5に供給するラインである。供給水ラインL1の上流側の端部は、供給水W1の供給源(不図示)に接続されている。供給水ラインL1の下流側の端部は、RO膜モジュール5の一次側入口ポートに接続されている。
【0021】
加圧ポンプ2は、供給水W1を吸入し、RO膜モジュール5に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ2は、インバータ3(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ2には、インバータ3から、周波数が変換された駆動電力が入力される。加圧ポンプ2は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0022】
インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ3は、制御部10と電気的に接続されている。インバータ3には、制御部10から電流値信号が入力される。インバータ3は、制御部10から入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
【0023】
温度センサ4は、供給水W1の温度を検出する機器である。温度センサ4は、接続部J1において供給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、供給水W1の供給源(不図示)と加圧ポンプ2との間に配置されている。温度センサ4は、制御部10と電気的に接続されている。温度センサ4で検出された供給水W1の温度(以下、「検出温度値」ともいう)は、制御部10へ検出信号として送信される。
【0024】
RO膜モジュール5は、加圧ポンプ2から吐出された供給水W1を、溶存塩類が除去された透過水W2と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W3とに膜分離処理する設備である。RO膜モジュール5は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。RO膜モジュール5は、これらRO膜エレメントにより供給水W1を膜分離処理し、透過水W2及び濃縮水W3を製造する。
【0025】
透過水ラインL2は、RO膜モジュール5で製造された透過水W2を需要先へ送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、RO膜モジュール5の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、需要先の装置等(不図示)に接続されている。
【0026】
流量センサ6は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の流量を検出する機器である。流量センサ6として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。流量センサ6は、接続部J2において透過水ラインL2に接続されている。流量センサ6は、制御部10と電気的に接続されている。流量センサ6で検出された透過水W2の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部10へパルス信号として送信される。
【0027】
本実施形態で用いられるパルス発信式の流量センサは、偶数枚の羽根の先端部分がN極とS極とに交互に着磁された羽根車を備え、この羽根車の回転をホールICで検出することにより、透過水W2の流速に比例した時間幅のパルス信号を出力する。ホールICは、電圧レギュレータ、ホール素子、増幅回路、シュミットトリガ回路、出力トランジスタ等がパッケージ化された電子回路であり、羽根車の回転運動に伴う磁束変化に応答して、羽根車が1回転する毎に矩形波パルス信号を出力する。ここで、パルス信号の時間幅は、矩形波パルス信号の先の立下りエッジから次の立下りエッジまでの時間をいい、羽根車が1回転するときの時間に対応している。すなわち、パルス信号の時間幅は、透過水W2の流速が高いほど(流量が多いほど)短くなり、逆に透過水W2の流速が低いほど(流量が少ないほど)長くなる。
【0028】
濃縮水ラインL3は、RO膜モジュール5から濃縮水W3を送出するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、RO膜モジュール5の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、分岐部J3及びJ4において、第1排水ラインL11、第2排水ラインL12及び第3排水ラインL13に分岐している。
【0029】
第1排水ラインL11には、第1排水弁11が設けられている。第2排水ラインL12には、第2排水弁12が設けられている。第3排水ラインL13には、第3排水弁13が設けられている。第1排水弁11〜第3排水弁13は、濃縮水排出ラインL4から装置外へ排出される濃縮水W3の排水流量を調節する弁である。
【0030】
第1排水弁11は、第1排水ラインL11を開閉することができる。第2排水弁12は、第2排水ラインL12を開閉することができる。第3排水弁13は、第3排水ラインL13を開閉することができる。
【0031】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ定流量弁機構(不図示)を備える。定流量弁機構は、第1排水弁11〜第3排水弁13において、それぞれ異なる流量値に設定されている。例えば、第1排水弁11は、開状態において、RO膜モジュール5の回収率が95%となるように排水流量が設定されている。第2排水弁12は、開状態において、RO膜モジュール5の回収率が90%となるように排水流量が設定されている。第3排水弁13は、開状態において、RO膜モジュール5の回収率が80%となるように排水流量が設定されている。
【0032】
濃縮水ラインL3から排出される濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、段階的に調節できる。例えば、第2排水弁12のみを開状態とし、第1排水弁11及び第3排水弁13を閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール5の回収率を90%とすることができる。また、第1排水弁11及び第2排水弁12を開状態とし、第3排水弁13のみを閉状態とする。この場合には、RO膜モジュール5の回収率を85%とすることができる。従って、本実施形態において、濃縮水W3の排水流量は、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、回収率を65%〜95%までの間で、5%毎に段階的に調節できる。
【0033】
第1排水弁11〜第3排水弁13は、それぞれ制御部10と電気的に接続されている。第1排水弁11〜第3排水弁13における弁体の開閉は、制御部10からの駆動信号により制御される。
【0034】
制御部10は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10は、流量フィードバック水量制御として、流量センサ6の検出流量値が予め設定された目標流量値となるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより加圧ポンプ2を駆動するための駆動周波数を演算し、当該駆動周波数の演算値に対応する電流値信号をインバータ3に出力する。制御部10による流量フィードバック水量制御については後述する。
【0035】
制御部10は、パルス信号として入力された検出流量値を、数値情報としての検出流量値に置き換えて流量フィードバック水量制御に利用する。すなわち、流量フィードバック水量制御における目標流量値は、数値情報として設定されることから、比較対象の検出流量値を数値情報に変換する。この演算処理において、制御部10は、入力されたパルス信号の時間幅を計測しながら、予め設定された1パルス当たりの流量値を使用して、所定の周期で瞬間流量を演算する。そして、制御部10は、演算した直近6回分の瞬間流量(サンプル値)について、最大側の2個の値及び最小側の2個の値を除いた残りの2個の値を平均化(以下、「平均化処理」ともいう)し、当該平均化処理により得られた数値を検出流量値とする。制御部10による検出流量値の演算処理の具体例については後述する。
【0036】
また、制御部10は、供給水W1の温度に基づいて、透過水W2の回収率制御(以下、「温度フィードフォワード回収率制御」ともいう)を実行する。この温度フィードフォワード回収率制御は、上述した流量フィードバック水量制御と並行して実行される。制御部10による温度フィードフォワード回収率制御については後述する。
【0037】
次に、パルス信号として入力された検出流量値を、数値情報としての検出流量値に置き換える処理について、
図2及び
図3を参照して具体的に説明する。
図2及び
図3に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0038】
図2は、パルス信号の時間幅を計測するための処理を示している。この処理は、マイクロプロセッサに組み込まれたインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」と略する)のインプットキャプチャ機能を利用して実行される。
【0039】
ステップST101において、ITUは、カウントクロックの入力毎にタイマレジスタのカウント値M
tを1ずつ加算する。カウントクロックの周波数は、例えば、19.5kHzに設定されている。この場合、タイマレジスタのカウント値M
tは、51.2μsの間隔で1ずつ加算される。
【0040】
ステップST102において、ITUは、流量センサ6のパルス信号について、立下りエッジの割込みが検出されたか否かを判定する。このステップST102において、ITUにより、立下りエッジの割込みが検出された(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、ITUにより、立下りエッジの割込みが検出されない(NO)と判定された場合に、処理はステップST108へ移行する。
【0041】
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、ITUは、タイマレジスタのカウント値M
tをキャプチャレジスタに取り込み、その値を保持するキャプチャ動作を実行する。
キャプチャ動作が実行されると、ステップST104において、ITUは、タイマレジスタのカウント値M
tをゼロにリセットする。
【0042】
ステップST105において、ITUは、イベントレジスタのカウント値M
eを1つ加算する。このイベントレジスタのカウント値M
eは、立下りエッジの割込み回数に対応している。
【0043】
ステップST106において、ITUは、イベントレジスタのカウント値M
eが2以上であるか否かを判定する。このステップST106において、ITUにより、カウント値M
eが2以上である(YES)と判定された場合に、処理はステップST107へ移行する。また、ステップST106において、ITUにより、カウント値M
eが2未満(NO)と判定された場合に、処理はステップST101へ戻る。なお、イベントレジスタのカウント値M
eが2未満の場合は、キャプチャレジスタのカウント値M
tがパルス幅を正確に反映していない可能性があるため、後述するステップST107の処理をスキップさせている。
【0044】
ステップST107(ステップST106:YES判定)において、ITUは、キャプチャレジスタのカウント値M
tを「有効」とするフラグを設定し、処理はステップST101へ戻る。
【0045】
ステップST108(ステップST102:NO判定)において、ITUは、タイマレジスタについて、オーバーフローの割込みが検出されたか否かを判定する。オーバーフローの割込みは、パルス信号の立下りエッジが検出されないまま、タイマレジスタのカウント値M
tが上限値(例えば、16ビットカウント時は65535)を超えた場合に発生する。すなわち、タイマレジスタのオーバーフローは、透過水W2の流速がゼロ、或いは極小であり、流量センサ6の羽根車が回転運動しない場合に起こり得る。このステップ108において、ITUにより、オーバーフローの割込み検出された(YES)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。また、ステップST108において、ITUにより、オーバーフローの割込みが検出されない(NO)と判定された場合に、処理はステップST101へ戻る。
【0046】
ステップST109(ステップST108:YES判定)において、ITUは、タイマレジスタのカウント値M
tをゼロにリセットする。
ステップST110において、ITUは、イベントレジスタのカウント値M
eをゼロにリセットする。
ステップST111において、ITUは、キャプチャレジスタのカウント値M
tを「無効」とするフラグを設定し、処理はステップST101へ戻る。
【0047】
以上のステップST101からステップST111までの処理により、キャプチャレジスタには、パルス信号の先の立下りエッジが検出されてから、次の立下りエッジが検出されるまでの直近のカウント値M
tが常に保持される。
【0048】
図3は、計測されたパルス信号の時間幅に基づいて、数値情報としての検出流量値を演算するための処理を示している。
図3に示すステップST201において、制御部10は、ITUによる計時tが演算周期である100msに達したか否かを判定する。このステップST201において、制御部10により、ITUによる計時が100msに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST202へ移行する。また、ステップST201において、制御部10により、ITUによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST201へ戻る。
【0049】
ステップST202(ステップST201:YES判定)において、制御部10は、キャプチャレジスタのカウント値M
tを「有効」とするフラグが設定されているか否かを判定する。このステップST202において、制御部10により、カウント値M
tを「有効」とするフラグが設定されている(YES)と判定された場合(すなわち、
図2のステップST107の処理が行われている場合)に、処理はステップST203へ移行する。また、ステップST202において、制御部10により、カウント値M
tを「有効」とするフラグが設定されていない(NO)と判定された場合(すなわち、
図2のステップST111の処理が行われている場合)に、処理はステップST209へ移行する。
【0050】
ステップST203(ステップST202:YES判定)において、制御部10は、キャプチャレジスタに保持されたカウント値M
tの読出しを実行する。
ステップST204において、制御部10は、ステップST203で読み出したカウント値M
tと、カウントクロックの周期時間(51.2μs)を使用して、下記の式(1)により、パルス信号の時間幅W[s/p]を演算する。
W=51.2×10
−6×M
t (1)
【0051】
ステップST205において、制御部10は、1パルス当たりの流量値α[L/p]を取得する。この1パルス当たりの流量値αは、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して制御部10のメモリに入力した設定値である。なお、1パルス当たりの流量値αは、流量センサ6の設計仕様により決まる定数である。
【0052】
ステップST206において、制御部10は、パルス信号の時間幅W[s/p]、及び1パルス当たりの流量値α[L/p]を使用して、下記の式(2)により、透過水W2の瞬間流量Q
i[L/h]を演算する。
Q
i=(3600/W)×α (2)
【0053】
制御部10は、最新の瞬間流量Q
iを演算する毎に、この演算値をメモリに記憶する。メモリには、常時、直近6回分の演算値が記憶されるようになっており、最新の瞬間流量Q
iが演算されると、最も古い演算値が削除され、最新の演算値に置き換えられる。
【0054】
ステップST207において、制御部10は、最新の瞬間流量Q
iを含む直近6回分の演算値をサンプル値として、最大側の2個の値、及び最小側の2個の値を除いた残りの2個の値を平均化処理する。
ステップST208において、制御部10は、平均化処理により得られた数値を検出流量値Q
pとして確定し、当該数値をメモリに記憶する。そして、処理はステップST201へ戻る。
【0055】
ステップST209(ステップST202:NO判定)において、制御部10は、最新の瞬間流量Q
iの演算値をゼロとしてメモリに記憶する。すなわち、ステップST209の処理では、タイマレジスタのオーバーフローが発生し、キャプチャレジスタのカウント値M
tを「無効」とするフラグが設定されている場合には、流量センサ6の羽根車が回転運動していない状態であるため、瞬間流量Q
iをゼロと看做している。ステップST209の後、処理はステップST207へ移行する。
【0056】
以上のステップST201からステップST209までの処理により、100msの演算周期毎に、直近6回分の瞬間流量Q
iに対する移動平均値が、最新の検出流量値Q
pとしてメモリに記憶される。
【0057】
次に、制御部10による流量フィードバック水量制御を、
図4を参照して説明する。
図4に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0058】
図4に示すステップST301において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q
p´を取得する。この目標流量値Q
p´は、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介して制御部10のメモリに入力した設定値である。
【0059】
ステップST302において、制御部10は、ITUによる計時tが制御周期(Δt)である100msに達したか否かを判定する。このステップST302において、制御部10により、ITUによる計時が100msに達した(YES)と判定された場合に、処理はステップST303へ移行する。また、ステップST302において、制御部10により、ITUによる計時が100msに達していない(NO)と判定された場合に、処理はステップST302へ戻る。
【0060】
ステップST303(ステップST302:YES判定)において、制御部10は、最新の検出流量値Q
pをフィードバック値として取得する。取得される最新の検出流量値Q
pは、
図3のステップST208において、メモリに記憶された瞬間流量Q
iの移動平均値である。
【0061】
ステップST304において、制御部10は、ステップST303で取得した最新の検出流量値Q
pと、ステップST301で取得した目標流量値Q
p´との偏差がゼロとなるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより操作量U
nを演算する。速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、制御周期Δt(100ms)毎に操作量の変化分ΔU
nを演算し、これを前回の制御周期時点の操作量U
n−1に加算することで現時点の操作量U
nを決定する。
【0062】
速度形デジタルPIDアルゴリズムに用いられる演算式は、下記の式(3a)及び式(3b)により表される。
ΔU
n=K
p{(e
n−e
n−1)+(Δt/T
i)×e
n+(T
d/Δt)×(e
n−2e
n−1+e
n−2)} (3a)
U
n=U
n−1+ΔU
n (3b)
【0063】
式(3a)及び式(3b)において、Δt:制御周期、U
n:現時点の操作量、U
n−1:前回の制御周期時点の操作量、ΔU
n:前回から今回までの操作量の変化分、e
n:現時点の偏差の大きさ、e
n−1:前回の制御周期時点の偏差の大きさ、e
n−2:前々回の制御周期時点の偏差の大きさ、K
p:比例ゲイン、T
i:積分時間、T
d:微分時間である。なお、現時点の偏差の大きさe
nは、下記の式(4)により求められる。
e
n=Q
p´−Q
p (4)
【0064】
ステップST305において、制御部10は、現時点の操作量U
n、及び加圧ポンプ2の最大駆動周波数F´(50Hz又は60Hzの設定値)を使用して、下記の式(5)により、加圧ポンプ2の駆動周波数F[Hz]を演算する。
F=U
n/2×F´ (5)
【0065】
ステップST306において、制御部10は、駆動周波数Fの演算値を、対応する電流値信号(4〜20mA)に変換する。電流値信号の出力値I[mA]は、例えば、下記の式(6)により演算され、駆動周波数Fがゼロの場合にI=4mA、駆動周波数Fが最大駆動周波数F´の場合にI=20mAとなる。
I=F/F´×16+4 (6)
【0066】
ステップST307において、制御部10は、変換した電流値信号をインバータ3へ出力する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
【0067】
なお、ステップST307において、制御部10が電流値信号をインバータ3へ出力すると、インバータ3は、入力された電流値信号で指定された周波数に変換された駆動電力を加圧ポンプ2に供給する。その結果、加圧ポンプ2は、インバータ3から入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動される。
【0068】
次に、制御部10による温度フィードフォワード回収率制御を、
図5を参照して説明する。
図5に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0069】
図5に示すステップST401において、制御部10は、透過水W2の目標流量値Q
p´を取得する。この目標流量値Q
p´は、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
【0070】
ステップST402において、制御部10は、供給水W1のシリカ(SiO
2)濃度C
sを取得する。このシリカ濃度C
sは、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。供給水W1のシリカ濃度は、事前に供給水W1を水質分析することにより得ることができる。なお、供給水ラインL1において、不図示の水質センサにより供給水W1のシリカ濃度を計測してもよい。
【0071】
ステップST403において、制御部10は、温度センサ4から供給水W1の検出温度値Tを取得する。
ステップST404において、制御部10は、取得した検出温度値Tに基づいて、水に対するシリカ溶解度S
sを決定する。
【0072】
ステップST405において、制御部10は、前のステップで取得又は決定したシリカ濃度C
s、及びシリカ溶解度S
sに基づいて、濃縮水W3におけるシリカの許容濃縮倍率N
sを演算する。シリカの許容濃縮倍率N
sは、下記の式(7)により求めることができる。
N
s=S
s/C
s (7)
【0073】
例えば、シリカ濃度C
sが20mgSiO
2/L、25℃におけるシリカ溶解度S
sが100mgSiO
2/Lであれば、許容濃縮倍率N
sは“5”となる。
【0074】
ステップST406において、制御部10は、前のステップで取得又は演算した目標流量値Q
p´、及び許容濃縮倍率N
sに基づいて、回収率が最大となる排水流量(目標排水流量Q
d´)を演算する。目標排水流量Q
d´は、下記の式(6)により求めることができる。
Q
d´=Q
p´/(N
s−1) (8)
【0075】
ステップST407において、制御部10は、濃縮水W3の実際排水流量Q
dがステップST406で演算した目標排水流量Q
d´となるように、第1排水弁11〜第3排水弁13の開閉を制御する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST401へリターンする)。
【0076】
上述した第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
【0077】
第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1において、制御部10は、流量センサ6から出力された検出流量値Q
pが、予め設定された目標流量値Q
p´となるように、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより加圧ポンプ2の駆動周波数Fを演算し、当該駆動周波数Fの演算値に対応する電流値信号をインバータ3に出力する。
【0078】
上記速度形デジタルPIDアルゴリズムでは、前回演算した操作量からの変化分を演算し、これに前回の操作量を加算していく方式であるため、検出流量値Q
pが離散値の場合でも、目標流量値Q
p´との偏差を高速に解消することができる。このため、RO膜モジュール5の水透過係数が急激に変化した場合でも、その変化に十分に追従することができる。従って、RO膜モジュール5の水透過係数が急激に変化した場合に、透過水W2の流量が目標流量値Q
p´から大きく乖離することを抑制して、透過水W2の流量を目標流量値Q
p´に保つことができる。
【0079】
また、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1において、制御部10は、流量センサ6から出力されたパルス信号の時間幅W及び予め設定された1パルス当たりの流量値αに基づいて瞬間流量Q
iを演算し、演算した直近6回分の瞬間流量Q
i(サンプル値)について、最大側の2個の値及び最小側の2個の値を除いた残りの2個の値を平均化処理し、当該平均化処理により得られた数値を検出流量値Q
pとする。
【0080】
上記平均化処理によれば、ノイズ等の外乱により、パルス信号の時間幅Wに異常値(他の値に比べ突出して長い値又は短い値)が発生した場合でも、その突出した異常値に基づく瞬間流量Q
iの演算値は、サンプル値の対象から除外される。このため、パルス信号の時間幅Wに異常値が発生した場合でも、透過水W2の実際流量が目標流量値Q
p´から大きく乖離することが抑制される。従って、透過水W2の実際流量をより安定的に目標流量値Q
p´に保つことができる。
【0081】
また、第1実施形態に係る逆浸透膜分離装置1において、制御部10は、温度フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、逆浸透膜分離装置1において、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール5におけるシリカ系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aの構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aの全体構成図である。なお、第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
【0083】
図6に示すように、第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aは、加圧ポンプ2と、インバータ3と、RO膜モジュール5と、流量センサ6と、硬度測定手段としての硬度センサ7と、制御部10Aと、第1排水弁11〜第3排水弁13と、を備える。
【0084】
硬度センサ7は、供給水ラインL1を流通する供給水W1のカルシウム硬度(炭酸カルシウム換算値)を測定する機器である。硬度センサ7は、接続部J1において供給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、供給水W1の供給源(不図示)と加圧ポンプ2との間に配置されている。硬度センサ7は、制御部10Aと電気的に接続されている。硬度センサ7で測定された供給水W1のカルシウム硬度(以下、「測定硬度値」ともいう)は、制御部10Aへ検出信号として送信される。
【0085】
制御部10Aは、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Aは、第1実施形態の制御部10と同じく速度形デジタルPIDアルゴリズムによる流量フィードバック水量制御(
図4参照)を実行する。
【0086】
また、本実施形態の制御部10Aは、供給水W1の硬度に基づいて、透過水W2の回収率制御(以下、「水質フィードフォワード回収率制御」ともいう)を実行する。この水質フィードフォワード回収率制御は、上述した流量フィードバック水量制御と並行して実行される。
【0087】
次に、制御部10Aによる水質フィードフォワード回収率制御について説明する。
図7は、制御部10Aが水質フィードフォワード回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0088】
図7に示すステップST501において、制御部10Aは、透過水W2の目標流量値Q
p´を取得する。この目標流量値Q
p´は、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
【0089】
ステップST502において、制御部10Aは、硬度センサ7で測定された供給水W1の測定硬度値C
cを取得する。
【0090】
ステップST503において、制御部10Aは、水に対する炭酸カルシウム溶解度S
cを取得する。この炭酸カルシウム溶解度S
cは、例えば、システム管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。尚、水に対する炭酸カルシウム溶解度は、通常の運転温度(5〜35℃)では、ほぼ一定値と看做せる。
【0091】
ステップST504において、制御部10Aは、前のステップで取得した測定硬度値C
c、及び炭酸カルシウム溶解度S
cに基づいて、濃縮水W3における炭酸カルシウムの許容濃縮倍率N
cを演算する。炭酸カルシウムの許容濃縮倍率N
cは、下記の式(9)により求めることができる。
N
c=S
c/C
c (9)
【0092】
例えば、測定硬度値C
cが3mgCaCO
3/L、25℃における炭酸カルシウム溶解度S
cが15mgCaCO
3/Lであれば、許容濃縮倍率N
cは“5”となる。
【0093】
ステップST505において、制御部10Aは、前のステップで取得又は演算した目標流量値Q
p´、及び許容濃縮倍率N
cに基づいて、回収率が最大となる排水流量(目標排水流量Q
d´)を演算する。目標排水流量Q
d´は、下記の式(10)により求めることができる。
Q
d´=Q
p´/(N
c−1) (10)
【0094】
ステップST506において、制御部10Aは、濃縮水W3の実際排水流量Q
dがステップST505で演算した目標排水流量Q
d´となるように第1排水弁11〜第3排水弁13の開閉を制御する。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST301へリターンする)。
【0095】
上述した第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aにおいて、制御部10Aは、速度形デジタルPIDアルゴリズムにより透過水W2の流量フィードバック水量制御を実行する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Aにおいて、制御部10Aは、水質フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、逆浸透膜分離装置1Aにおいては、透過水W2の回収率を最大としつつ、RO膜モジュール5における炭酸カルシウム系スケールの析出をより確実に抑制することができる。
【0096】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Bの構成について、
図8を参照して説明する。
図8は、第3実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Bの全体構成図である。なお、第3実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第3実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
【0097】
図8に示すように、第3実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Bは、加圧ポンプ2と、インバータ3と、RO膜モジュール5と、流量センサ6と、電気伝導率測定手段としての電気伝導率センサ8と、制御部10Bと、第1排水弁11〜第3排水弁13と、を備える。
【0098】
電気伝導率センサ8は、透過水ラインL2を流通する透過水W2の電気伝導率を測定する機器である。電気伝導率センサ8は、接続部J5において透過水ラインL2に接続されている。電気伝導率センサ8は、制御部10Bと電気的に接続されている。電気伝導率センサ8で測定された透過水W2の電気伝導率(以下、「測定電気伝導率値」ともいう)は、制御部10Bへ検出信号として送信される。
【0099】
制御部10Bは、CPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部10Bは、第1実施形態の制御部10と同じく、速度形デジタルPIDアルゴリズムによる流量フィードバック水量制御(
図4参照)を実行する。
【0100】
また、本実施形態の制御部10Bは、透過水W2の電気伝導率に基づいて、透過水W2の回収率制御(以下、「水質フィードバック回収率制御」ともいう)を実行する。この水質フィードバック回収率制御は、上述した流量フィードバック水量制御と並行して実行される。
【0101】
次に、制御部10Bによる水質フィードバック回収率制御について説明する。
図9は、制御部10Bが水質フィードバック回収率制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートの処理は、逆浸透膜分離装置1の運転中において、繰り返し実行される。
【0102】
図9に示すステップST601において、制御部10Bは、透過水W2の目標電気伝導率値E
p´を取得する。目標電気伝導率値E
p´は、透過水W2に要求される純度の指標である。目標電気伝導率値E
p´は、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリに入力した設定値である。
【0103】
ステップST602において、制御部10Bは、電気伝導率センサ8で測定された透過水W5の測定電気伝導率値E
pを取得する。
【0104】
ステップST603において、制御部10Bは、ステップST602で取得した測定電気伝導率値(フィードバック値)E
pとステップST601で取得した目標電気伝導率値E
p´との偏差がゼロとなるように、第1排水弁11〜第3排水弁13の開閉を制御する。すなわち、濃縮水W3の排水流量を段階的に増減させることにより、要求純度の透過水W2が得られるように、膜表面の溶存塩類の濃度を変化させる。これにより本フローチャートの処理は終了する(ステップST601へリターンする)。
【0105】
上述した第3実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Bにおいて、制御部10Bは、透過水W2の流量フィードバック水量制御を実行する。このため、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第3実施形態に係る逆浸透膜分離装置1Bにおいて、制御部10Bは、水質フィードフォワード回収率制御を実行する。このため、逆浸透膜分離装置1Bにおいては、透過水W2に要求される水質を満たしつつ、透過水W2の回収率を最大限にまで高めることができる。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0107】
例えば、第1実施形態では、温度フィードフォワード回収率制御において、供給水W1の温度を検出する例について説明した。これに限らず、例えば、RO膜モジュール5で得られた透過水W2又は濃縮水W3の温度を検出してもよい。
【0108】
第2実施形態では、水質フィードフォワード回収率制御において、炭酸カルシウムの許容濃縮倍率及び透過水W2の目標流量値に基づいて、回収率が最大となる排水流量を算出する例について説明した。これに限らず、次のような手法を採用してもよい。すなわち、炭酸カルシウムの許容濃縮倍率N
cとシリカの許容濃縮倍率N
sとを比較し、小さい側の許容濃縮倍率を選択する。そして、選択した許容濃縮倍率及び透過水W2の目標流量値に基づいて、回収率が最大となる排水流量を算出する。
【0109】
第1実施形態(
図3)のステップST207では、制御部10が、最新の瞬間流量Q
iを含む直近6回分の演算値をサンプル値として、最大側の2個の値、及び最小側の2個の値を除いた残りの2個の値を平均化処理する例について説明した。これに限らず、例えば、最新の瞬間流量Q
iを含む直近8回分の演算値をサンプル値として、最大側の3個の値、及び最小側の2個の値を除いた残りの3個の値を平均化処理するようにしてもよい。すなわち、制御部10は、直近n回分の瞬間流量の演算値をサンプル値として、最大側のj個(j≧1)の値及び最小側のk個(k≧1)の値を除いた残りの(n−j−k)個の値を平均化処理すればよく、上記n,j,kの値は適宜に設定することができる。
【0110】
第1〜第3実施形態において、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W3の一部を、供給水ラインL1において、加圧ポンプ2よりも上流側に還流させる濃縮水還流ラインを設けた構成としてもよい。濃縮水還流ラインを設けることにより、膜表面での流速を高めることができるため、ファウリングの発生を抑制することができる。
【0111】
第1〜第3実施形態において、供給水W1は、地下水や水道水等の原水であってもよい。また、供給水W1は、原水を除鉄除マンガン装置、活性炭濾過装置、硬水軟化装置等により前処理した水であってもよい。
【0112】
第1〜第3実施形態では、各回収率制御において、第1排水弁11〜第3排水弁13を選択的に開閉することにより、濃縮水W3の排水流量を段階的に調節する例について説明した。これに限らず、排水ラインを分岐せずに1本とし、このラインに比例制御弁を設けた構成としてもよい。その場合には、制御部10(10A,10B)から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御弁に送信して弁開度を制御することにより、濃縮水W3の排水流量を調節することができる。
【0113】
また、比例制御弁を設けた構成において、排水ラインに流量センサを設けた構成としてもよい。流量センサで検出された流量値を、制御部10(10A,10B)にフィードバック値として入力する。これにより、濃縮水W3の実際排水流量をより正確に制御することができる。