(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸本体内に複数の筆記体を前後動可能に配置し、各筆記体の後端にスライダーの前端を連結すると共に、各スライダーを前記軸本体に設けられた摺動溝に前後動自在に配置した複式筆記具であって、前記各筆記体を軸本体の後方に付勢する弾撥部材をそれぞれ配置し、それら弾撥部材のうち少なくとも一つの弾撥部材のばね定数を、他の弾撥部材と異ならしめたことを特徴とする複式筆記具。
前記シャープペンシルユニットを軸本体の後方に付勢する弾撥部材のばね定数を、ボールペンリフィルを軸本体の後方に付勢する弾撥部材のばね定数と異ならしめたことを特徴とする請求項2に記載の複式筆記具。
【発明を実施するための形態】
【0008】
作用について説明する。本発明は、軸本体内に複数の筆記体を前後動可能に配置し、各筆記体の後端にスライダーの前端を連結すると共に、各スライダーを前記軸本体に設けられた摺動溝に前後動自在に配置した複式筆記具であって、前記各筆記体を軸本体の後方に付勢する弾撥部材をそれぞれ配置し、それら弾撥部材のうち少なくとも一つの弾撥部材のばね定数を、他の弾撥部材と異ならしめている。フックの法則によれば、荷重Pとひずみ(変形)δは比例関係にあるので、特定の筆記体の弾撥部材や複数の筆記体の各弾撥部材のばね定数(比例定数)kを異ならしめることで、強さ(荷重)Pも異ならしめることができる。この強さ(荷重)Pが異なることによる操作感の違いにより、複合筆記具における特定の一本或いはそれ以上の筆記体の識別が可能となり、複合筆記具が使用しやすくなる。
【0009】
ここで、前記ばね定数kを異ならしめる手段の例を説明する。
まず、前記弾撥部材が圧縮コイルスプリングの場合、前記ばね定数kは、下記の式で表される。
k=P/δ=Gd
4/8ND
3
前記式の記号は、次の通りである。P:荷重、δ:たわみ、G:横弾性係数、d:コイルスプリング線径、N:有効巻き数、D:コイル平均径
ばね定数は、前記式の通り、横弾性係数G、線径d、有効巻き数N、コイル平均径Dで決定される。コイルスプリングの横弾性係数G、線径dが大きいとばね定数は大きくなる。逆に、有効巻き数Nが多く、コイル平均径Dが大きいとばね定数kは小さくなる。横弾性係数Gは、材料固有の値(異なる材料でも同じ値がある)で、この横弾性係数Gの値の違いから全く同寸法で製作されたスプリングでもばね定数が異なり、よって強さ(荷重)が異なることがある。
又、他にも、弾撥部材としては、捻りコイルバネや薄板ばねなどが考えられる。そして、これら捻りコイルバネや薄板ばねについても材料の直径、有効巻き数、コイル平均径や材料の板厚、板幅を変えることでばね定数を異ならしめることが出来る。
【0010】
本発明の第1実施例を
図1〜
図32に示し、説明する。尚、図中下方を前方と言い、上方を後方と言う。例として黒色と赤色の2色からなるボールペンリフィル、及びシャープペンシルユニットが摺動自在に配置されている多芯筆記具(複式筆記具)である。尚、複式筆記具の軸本体(軸筒)内に配置する筆記体としては、シャープペンシルユニットやボールペンリフィルに限らず、例えば、スタイラスペンや棒状消しゴム繰り出し体(リフィル)などでも良い。
参照符号1は、軸本体(軸筒)であり、その軸本体1は、前軸2と後軸3とより構成されている。また、本例において、前軸2は、先部材4と中軸5の螺合構造により構成されているが、凹凸嵌合で圧入されていても良いし、一体的に形成されていても良い。しかし、後述する筆記体の交換や成形の容易性を考慮すると2部材とし、着脱自在に固定した方が良い。また、前記先部材4の内径部には、先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aが形成されている。そして、その先部材4の先端には、筆記体が出没する突出孔4bが形成されている。又、先部材4の内径部には、軸本体1の長手方向に長い平面部4cが複数箇所形成されているため、軸本体1(先部材4)が透明な場合には、前記平面部4cによって得られるレンズ効果によって、内部に配置されたシャープペンシルユニット、ボールペンリフィルの色を容易に識別することができ、高級感も得られるようになる(
図1〜4、
図29を参照)。尚、本実施例では、軸本体1を透明、或いは、着色された半透明な材質によって形成しているが、これに限らず、軸本体を有色不透明な材質から形成しても良い。
【0011】
前記後軸3には、その長手方向に3個のスリット6が形成されている(
図5を参照)。本例においては、3個のスリット6が形成されているが、筆記体であるボールペンリフィルの数が2本と、シャープペンシルユニットの数が1本であるためであり、この筆記体の本数によってスリットの形成する数も変わるものである。また、スリット6は、後軸3の一方の端部まで形成されていると共に、スリット6の両側には、摺動溝7がほぼ一直線上に形成されている。又、後軸3には、摺動溝7と長手方向に略同じ長さのスライド面3aが形成されている。しかし、この摺動溝7、及びスライド面3aは、スリット6の両側の全長に渡って形成されているのではなく、中間部までしか形成されていない。スライド面3aは、後述する摺動突起12の背面を受けている。また、前記スリット6の摺動溝7よりも軸心側は、幅の狭い幅狭スリット部6aとなっている(
図6を参照)。
前記後軸3の前方には断面の形状が外側に円弧部を有する半月形をした脚部8が120度間隔の位置に形成されている。この脚部8は、スリット6が形成されることにより形成される。よって、筆記体の数によって脚部8の数は変わる。その脚部8の外接円径は、後軸3の最大外径よりも小さく形成されている(
図7を参照)。
符号9は、後軸3に一体的に形成されたクリップ部であるが、別部材で構成し後軸3に固定などしても良い。符号10は、前記クリップ部9の前方内面に形成された玉部であって、その玉部10は前記中軸5の表面に当接している。
【0012】
前記後軸3のスリット6には、透明、或いは、着色された半透明な材質からなるスライダー11が摺動自在に配置されている。該スライダー11は、ボールペンリフィル用のスライダー11Bとシャープペンシルユニット用のスライダー11Sがある。ここではボールペンリフィル用のスライダー11Bについて詳述する。このスライダー11Bの長手方向の両側には、摺動突起12が形成されており、前記スリット6に形成された摺動溝7に摺動可能に係合している(
図5、6を参照)。尚、摺動突起12と摺動溝7の係合関係は、ボールペンリフィル用のスライダー11Bとシャープペンシルユニット用のスライダー11S共、同じである。このスライダー11Bの背面には、延出部111を介して間隔をおいて2つの解除突起13、14が形成されている。本実施例においては、前記スライダー11Bの側面には、後述するシャープペンシル用のスライダー11Sの様な孔11Sfはない(
図8、
図9を参照)。
しかしながら、これに限らず、変形例としてスライダー11Bの側面に3個の孔11Sfが設けられていても良い(
図10、
図11を参照)。孔11Sfを設ける場合は、スライダー11Bの側面に設けられた3個の孔11Sfは、貫通孔と非貫通孔とから構成されている。具体的に説明すると、解除突起13の近傍に形成されている孔11Sfと、解除突起14の近傍に形成されている孔11Sfは、延出部111を貫通した貫通孔となっており、一方、スライダー11Bの前方部に形成された孔11Sfは非貫通孔となっている(
図10を参照)。そして、前記貫通孔である孔11Sfは、幅狭スリット部6aに位置しているものの、その孔11Sfの半分が幅狭スリット部6aから露出している。孔11Sfの半分程度を幅狭スリット部6aから露出させることによって、その孔11Sfに貯留されたゴミや埃を孔11Sfの両開口部から効率的に排出できるようにしているのである。一方、非貫通孔である孔11Sfの一部は、摺動突起12に位置している。即ち、摺動突起12の一部分が孔11Sfによって切り欠かれている。これによって、摺動突起12の前方部分に弾力性が発生し、多少の寸法上のばらつきが発生したとしてもスムーズな摺動動作が得られるようになる。
また、貫通した孔11Sfの内周面のほぼ中央部には、微細な突起が円周上に形成されている。内周面に円周上の突起を形成することによって、スライダーを樹脂成型品とした場合、後述するようにその成形性の向上が図られる。
尚、本例においては、孔11Sfの縦断面形状を円形としているが、楕円や三角、四角、多角形、或いはこれらの組合せた形状としても良いが、スライダー11Sを成形品とした場合には、その成形性を考慮すると丸形状が良い。また、孔11Sfの数は、本例では3箇所としているが、1個所であっても良いし、4個所や5個所などであっても良い。
【0013】
そして、スライダー11Bの孔11aには、後述する筆記体に収納されるインキの色と略同色な色を有した接続部材15の一端部(後方部15a)が着脱自在に挿着されており、その接続部材15の他端部(前方部15b)には、ポリプロピレンやナイロンなどの樹脂材質からなる円筒状のボールペンリフィル16Bが接続されている(
図9を参照)。
尚、前記ボールペンリフィル16Bは、インキを収容するポリプロピレンなどの樹脂材質で押し出し成形によって形成されたインキ収容管(パイプ部)16Baと、そのインキ収容管16Baの前方に圧入されたボールペンチップ(筆記部)16Bbなどから構成されている(
図12を参照)。インキ収容管16Baに圧入されているため、ボールペンチップ16Bbの外径は、インキ収容管16Baの外径よりも小さい。このため、インキ収容管16Baの前端部には段部が形成される。ここでは、このインキ収容管16Baの前端部を16Bfとする。尚、前記先部材4の前端部から没入状態におけるこのボールペンリフィル16Bの前端部(段部)16Bfまでの距離をAとする(
図4)。
ここで、前記スライダー11Bは、透明、或いは、着色された半透明な材質で形成されているため、その内部に位置する前記接続部材15の色や表示を容易に識別することができる。これに加え、スライダー11Bには平面部11bと曲面部11cが形成されているため、それによって得られるレンズ効果によって、前記接続部材15の色をさらに容易に識別することができるようになる(
図13を参照)。
尚、スライダー11Bは、透明、或いは、着色された半透明な材質に限らず、着色不透明な材質から形成しても良い。着色不透明部材とした場合には、その着色した色と略同色のインキが内蔵されているボールペンリフィル16Bを取り付けることで、そのボールペンリフィル16Bの色を視覚的に識別出来る。また、本実施例においては、ボールペンリフィル16Bとスライダー11Bと間に接続部材15Bを介しているが、この接続部材15Bはスライダー11Bと一体に形成しても良い。この場合にも、内蔵されているインキの色と略同色のスライダー11Bにボールペンリフィル16Bを取り付けることで、そのボールペンリフィル16Bの色を視覚的に識別出来る。
【0014】
前記接続部材15の中間部には、大径部15cが形成されており、後方部15aの孔11aに対する過度な挿入と、前方部15bの筆記体16Bに対する過度な挿入が防止されている。また、接続部材15の後方部15aには、スライダー11Bの孔11aに対する挿着・嵌合を良好なものとなすために円周状の嵌合突起15dが形成される一方、前方部15bにはボールペンリフィル16Bに空気が侵入するための平面部15eが形成されている。その平面部15eは、90度の角度をもって4方に形成されている。即ち、接続部材15の前方部15bの横断面形状は、正方形状をなしている。また、4つの平面部15eには、ボールペンリフィル16Bとの良好な係合・嵌合力を得るために突起15f、15gが部分的に形成されているが、突起同士が重ならないようになっている。即ち、4つの平面部15eに形成された各々の突起15fは、長手方向、並びに、周方向に対して異なった位置に形成されている(
図14を参照)。具体的に説明すると、前方の対向した位置に形成された突起15fと離隔して、後方にはその突起15fと90度の角度をもって突起15gが対向して形成されている(
図15、16を参照)。前記インキの消費に伴うボールペンリフィル16B内部への空気の侵入を確実なものとしていると共に、樹脂材質からなるインキ収容管16Baの塑性変形による接続部材15からの脱落を防止している。つまり、前方に形成された突起15fによってボールペンリフィル16Bが楕円状に膨出(膨出部16Bc、インキ収容管については省略する。)すると共に、後方に形成された突起15gによって、前記膨出部とは90度の角度をもって該部分も膨出部16Bdが形成される。即ち、互いが90度の方向で膨出する反面、その膨出した方向と90度回転した方向は縮径させられるため、インキ収容管16Baの内面が突起15f、15gに食い込むようになり各々の係合部がより強固になると共に、それら接続部材15とインキ収容管16Baとの相対的な回転が防止される(
図17、
図18参照;図中点線16Beは、本来のボールペンリフィル16Bの内面形状である。)。
【0015】
また、前記突起15fや15gは、その断面形状が矢型状をなしているが、前方に位置する突起15fのボールペンリフィル16への挿着側は、鈍角(α)に形成されており、一方、離脱側は鋭角(β)に形成されている。ちなみに、本例においては、挿入側を約150度に形成し、離脱側を70度に形成している(
図16を参照)。
尚、前記スライダー11Bの前端部には、後述する弾撥部材17Bの外径部を保持する延出部11dが形成されている(
図8参照)。延出部11d間の長さは、後述する弾撥部材17Bの外径よりも若干短く形成されており、これによって弾撥部材17Bは延出部11dに圧入された状態となっている。即ち、ボールペンリフィル16Bを交換する際にも弾撥部材17Bがスライダー11Bの前端部から外れないようになっている。また、前記スライダー11Bの接続部材15(後方部15a)に対する挿着力(嵌合力)は、ボールペンリフィル16Bの接続部材15(前方部15b)に対する挿着力(嵌合力)よりも弱く設定されている。即ち、ボールペンリフィル16Bをスライダー11Bに対して離脱させようとすると、ボールペンリフィル16Bと接続部材15が連結された状態でスライダー11Bから離脱する。参照符号17Bは、ボールペンリフィル16B並びにボールペンリフィル16Bに接続するスライダー11Bを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である(
図3参照)。前記弾撥部材17Bは、後述するシャープペンシルユニット16S並びに芯タンク161に接続するスライダー11Sを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材17Sより、ばね定数を高くしている。
【0016】
次に、前記中軸5について、具体的に説明する。前記前軸2の1部材である中軸5の中間部には、規制部18が形成されており、その規制部18には、筆記体16B、16Sが遊挿する3つの貫通孔19が形成されており、前記規制部18に弾撥部材17B、17Sの一端を係止させることにより、筆記体16B、16Sを後方に付勢している。また、中軸5の内側で、規制部18の後方には、長手方向に3つの溝部20が形成されており、この溝部20に前記後軸3の脚部8が摺接され、組み立て時に脚部8が案内されるようになっている。また、その溝部20は、脚部8の断面形状とほぼ同形をなしている。即ち、外側に円弧部を有する半月形となっている。
【0017】
次に、シャープペンシル用のスライダー11Sについて詳述する。このスライダー11Sの長手方向の両側には、摺動突起12が形成されており、前記スリット6に形成された摺動溝7に摺動可能に係合している(
図5、6を参照)。このスライダー11Sの背面には、延出部111を介して間隔をおいて2つの解除突起13、14が形成されている(
図19を参照)。更に、スライダー11Sの側面には3個の孔11Sfが設けられているが、それらは、貫通孔と非貫通孔とから構成されている。具体的に説明すると、解除突起13の近傍に形成されている孔11Sfと、解除突起14の近傍に形成されている孔11Sfは、延出部111を貫通した貫通孔となっており、一方、スライダー11の前方部に形成された孔11Sfは非貫通孔となっている。そして、前記貫通孔である孔11Sfは、幅狭スリット部6aに位置しているものの、その孔11Sfの半分が幅狭スリット部6aから露出している。孔11Sfの半分程度を幅狭スリット部6aから露出させることによって、その孔11Sfに貯留されたゴミや埃を孔11Sfの両開口部から効率的に排出できるようにしているのである。一方、非貫通孔である孔11Sfの一部は、摺動突起12に位置している。即ち、摺動突起12の一部分が孔11Sfによって切り欠かれている。これによって、摺動突起12の前方部分に弾力性が発生し、多少の寸法上のばらつきが発生したとしてもスムーズな摺動動作が得られるようになる。また、貫通した孔11Sfの内周面のほぼ中央部には、微細な突起が円周上に形成されている。内周面に円周上の突起を形成することによって、スライダーを樹脂成型品とした場合、後述するようにその成形性の向上が図られる。
尚、本例においては、孔11Sfの縦断面形状を円形としているが、楕円や三角、四角、多角形、或いはこれらの組合せた形状としても良いが、スライダー11Sを成形品とした場合には、その成形性を考慮すると丸形状が良い。また、孔11Sfの数は、本例では3箇所としているが、1個所であっても良いし、4個所や5個所などであっても良い。
更に、前記摺動突起12の前端面と、後述する後方筒部25の間には、後述する弾撥部材17Sの内径部を保持するため、円周の一部である円弧部11Sgが形成されている。円弧部11Sgは、対向した位置にも形成されており、2箇所ある。(
図19参照。対向した位置の円弧部11Sgは図示されていない。)。円弧部11Sgの半径は、後述する弾撥部材17Sの内径の半径よりも若干大きく形成されており、これによって弾撥部材17Sは円弧部11Sgに圧入された状態となっている。参照符号17Sは、シャープペンシルユニット16S並びに芯タンク161に接続するスライダー11Sを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材である(
図3参照)。前記弾撥部材17Sは、前記ボールペンリフィル16B並びにボールペンリフィル16Bに接続するスライダー11Bを後方に付勢するコイルスプリングなどの弾撥部材17Bより、ばね定数を低くしている。
また、本実施例においては、前記弾撥部材17Sをコイルスプリングからなしており、その弾撥部材17Sの両端に座巻き部(両端座巻き部)を設けると共に、中間の2箇所にも座巻き部(中間座巻き部)を設けている(
図3参照)。このように、少なくとも1箇所以上に中間座巻き部を設けることにより、座巻き部以外の有効巻き部を分断し、短くすることで、有効巻き部が、径方向に膨らんで撓むことを防止することが出来る。そして、弾撥部材同士や他部品との擦れによる操作性不良、擦れ傷、擦れによる異音を防止し、良好にシャープペンシルユニットを使用することが出来る。この中間座巻きを有する弾撥部材はボールペンリフィルに用いても同様の効果を得ることができ、有用であるが、シャープペンシルユニットの場合は、ボールペンリフィルの場合と比較して、シャープペンシルユニットを選択・突出させ、係止させた後も芯を繰り出すための押圧操作が必要なため、このように中間座巻き部を有する弾撥部材17Sは、より有用である。
更に、前記弾撥部材17Sにおいて、中間の2箇所に設けた座巻き部(中間座巻き部)は、両端に設けた座巻き部(両端座巻き部)より巻き数を多くするよう異ならしめても良い。両端座巻き部より中間座巻き部の巻き数を多くすることにより、組立前の弾撥部材単体状態において、弾撥部材同士が絡み合うことを防止することが出来る。シャープペンシルユニットの場合は、ボールペンリフィルの場合と比較して、シャープペンシルユニットを選択・突出させ、係止させた後も芯を繰り出すための押圧操作が必要なため、弾撥部材の全長が長くなる。よって、中間の座巻きの巻き数を増やすことは、中央部での弾撥部材同士の絡み防止に有用である。尚、本実施例においては、両端座巻き部を各3巻き、中間座巻き部を各4巻きとしている。
【0018】
シャープペンシル用のスライダー11Sの前方には、後述するシャープペンシルユニット16Sの芯タンク161を接続する連結部21が形成されている(
図19〜22、
図28参照)。前記連結部21について詳述すると、その連結部21には、前端から後方に向けて円形から8角形へと順次拡径し変化する傾斜面22aを有する角錐状の前方筒部22、および、その前方筒部22の後方であって前方筒部22の外形より小径の溝部23が形成されている。ここで前方筒部22の形状は8角形となっているが、これに限定されるものではなく、後述する芯タンク161との接続が点接触になればよい。例えば、4角形や5角形、或いは、10角形や12角形などであっても良い。また、前記溝部23の後方には、後方に向かい拡径する傾斜面24が形成されており、その傾斜面24の後方には後方筒部25が形成されている。
尚、スライダー11Sには、前記スリット6の幅より大きい幅の略半球状のツバ部11Sdが形成されている。そのツバ部11Sdにより幅広になることで、シャープペンシルユニット16Sの突出操作が向上すると共に、芯出し操作も容易に行え、また、その芯出し操作の際、スライダー11Sが後軸3の軸芯方向に没入してしまうのを防止する。
【0019】
又、シャープペンシルユニット16Sは、芯を複数本収容し金属材質で成形された芯タンク161と、その芯タンク161の前方に継ぎ手部材162を介して取り付けられた芯の把時・開放を行うチャック体163と、そのチャック体163の前方を囲繞すると共にチャック体163の開閉を行うチャックリング164、並びに、前記チャック体163を覆うように配置されたガイド筒165、そして、そのガイド筒165と前記継ぎ手部材162との間に配置され、チャック体163や芯タンク161を後方に向けて付勢するコイルスプリングなどからなる弾撥部材166とから構成されている。また、前記ガイド筒165の先端には、先部材167が螺合などの手段によって着脱自在に取り付けられており、その先部材167の内方には、繰り出された芯の後方への移動を規制するゴム状弾性体からなる芯戻り止め部材168が内設している。
シャープペンシルユニット16Sを構成する外装部品の継ぎ手部材162、ガイド筒165、先部材167の材質は、真鍮などによる金属にめっきなどの表面処理を施しても良いし、ポリアセタール、ナイロンなどによる樹脂成形品でも良い。
先部材167は、軸本体1の先端より突出して視認しやすいので、金属材質にめっきを施すのが良く、また、継ぎ手部材162やガイド筒165は、後述する芯繰り出し操作により互いに摺動するので、潤滑性のあるポリアセタール、ナイロン樹脂などにするのが良い。この場合、継ぎ手部材162とガイド筒165は、同じ樹脂でも良いが、例えばポリアセタール、ナイロン樹脂の様に異なる樹脂にした方が、より芯繰り出し操作の摺動性は良くなる。同じ樹脂にする場合は、グレードを異ならせる。このように互いに摺動する部材に硬度差をつけることにより、摺動性が向上する。
【0020】
シャープペンシルユニットSを構成する各部材の構成について、詳述する。
前記芯タンク161と継ぎ手部材162との連結は、継ぎ手部材162の後方に設けられた連結部162aが芯タンク161に嵌合することによってなし、その嵌合は、前記連結部162aの前方に設けられた大径部162bの後方段部162bAの端面に芯タンク161の前端部が当接することで、嵌合完了となる。
又、前記ガイド筒165は、その後方部外形が、後方に向かって順に大径部165a、後方に縮径するテーパー部165b、小径部165cとして形成されている。小径部165c、或いは、テーパー部165bの後端の外径は、継ぎ手部材162の縮径部162cよりも大きく、継ぎ手部材162の大径部162bの外径と略同じである。この小径部165cはあっても無くても構わないが、テーパー部165bは必要である。後述するシャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する場合に、インキ収容管16Baの前端部16Bfが、ガイド筒165に引っかかって抵抗とならないようにスムーズに収納するためである。即ち、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する場合には、他のスライダー11Bを押圧し、互いのスライダー11S、11Bの背面に形成されている解除突起13、14を衝突させることによって、スライダー11Sの係合を解除する。このときスライダー11Bは、他のスライダーであるスライダー11Sを若干押圧しているので、押圧された筆記体は、その分前進し、ガイド筒と当接してしまうことがある。しかし、他の筆記体がシャープペンシルユニットのガイド筒と当接してしまったとしても、前記テーパー部165bがあるので、ボールペンリフィル16Bの前端部16Bfによる擦れ抵抗はなく、シャープペンシルユニット16Sの後退動作(収納)をスムーズに行うことが出来る。
更に、前記弾撥部材166は、シャープペンシルユニット16Sの出没過程、及び芯繰り出し操作の過程で、他の筆記体と擦れ合って、スライド操作感が悪くなったり、急に操作が重くなったりすることを防ぐために、ガイド筒165などの内方に配置することが好ましい。
【0021】
次にシャープペンシル用スライダー11Sとシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)との連結部について詳述する。前記スライダー11Sの連結部21が芯タンク161の後端部に挿入されており、スライダー11Sの前方筒部22と芯タンク161の間には、前方筒部22の傾斜面22aと芯タンク161の内面とによって前方空間部26が形成されている。また、後方筒部25の外形を芯タンク161の内形より小さく設定することにより、各々の寸法差で後方空間部27が形成されている。また、スライダー11Sと芯タンク161の後端には隙間30が形成されている。この状態でスライダー11Sの溝部23付近の芯タンク161の外側は、径方向に小さくするようにかしめている(かしめ部28)。そのかしめ部28は、本例においては、円周状にかしめられているが、部分的にかしめても良い。このかしめ部28により芯タンク161は、スライダー11Sから脱落することなく固定される。また、前記芯タンク161の内面と前方筒部22の後端部は、その後端部の形状が8角形になっているため、点接触となっている。さらに、前記前方空間部26や後方空間部27、並びに、隙間30によりシャープペンシルユニット16Sは、回動可能に連結されている。ここで、スライダー11Sの前方筒部22は、前方に向かって縮径することで傾斜しているが、これは芯タンク161の挿入時の案内部となっている。前記前方筒部22の長さをある程度、確保することで芯タンク161の挿入時の案内と同時に芯タンク161をかしめる際の内面ガイドとしての役割を果たしている。また、前記隙間30はシャープペンシルユニット16Sのスライダー11Sに対する回動を可能にすることはもちろん、その回動時にスライダー11Sの連結部21の後端面に芯タンク161の後端面が接触しないように設定されている。これにより、シャープペンシルユニット16Sがスムーズに回動でき、出没動作が軽快に行える。また、シャープペンシルユニット16Sの回動範囲は、前記芯タンク161の後端内面が後方筒部25の表面に接触することによって規制されている。この接触によりスライダー11Sを前方に押圧したとき、芯タンク161の後端内面部が、後方筒部25に喰いつくように作用して、スライダー11Sの前方への動きをロスなく、確実にシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)に伝達することができる。
【0022】
シャープペンシル用スライダー11Sとシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)との連結部の構成は、前述した点接触の構成に限らない。
例えば、前記芯タンク161は、前記シャープペンシル用のスライダー11Sの前方の連結部21近傍において、屈曲させ(屈曲部161b;
図23(a)、(b)参照)、軸本体1に装着した際、シャープペンシルユニット16Sの前方部が軸本体1の中心軸線方向に向かうようにしても良い。この場合、前記芯タンク161は、前記スライダー11Sの前記連結部21に接着などの手段によって着脱不能に固定するなどしても良い。
また、前記連結部21には、ポリプロピレンやナイロンなどの樹脂材質、或いは金属材質からなる円筒状のシャープペンシルユニット16Sの芯タンク161がかしめ加工(かしめ部161a)によって回転不能に接続されていても良い。そのかしめ部161aは、円周状に渡って形成されている。勿論、複数方向からかしめても良いし、適宜選択が可能である。着脱自在にし、回転は不能に挿着されていても良い。
或いは、シャープペンシルユニット16Sの前方を中心方向に向けるために、前記連結部21を屈曲させても良い(
図24、
図25参照)。具体的に説明すると、前記スライダー11Sの連結部21が、前記スライダー11Sの連結部21を除く後方基部に対して角度を保たせて屈曲させている。
【0023】
次に動作について、
図3、
図26〜
図29、
図32に示し説明する。スライダー11Sを前方(
図26中左斜め上方)に押圧すると、スライダー11Sは、後軸3のスリット6並びに摺動溝7、スリット6aに案内され、弾撥部材17Sが圧縮変形されながら、シャープペンシルユニット16Sを伴い前進し、シャープペンシルユニット16Sの先端が軸本体1の先端より突出する(
図28参照)。同時に、スライダー11Sが後軸3の内方である軸芯方向に押し込まれるが、ツバ部11Sdが、後軸3のスリット6の両側の外周面に当接し、スライダー11Sの押し込みが規制される。次いで、スライダー11Sの側面部に形成されている摺動突起12の後端(
図27では上方)が、摺動溝7の前端部に係合し、シャープペンシルユニット16Sの後退作用を阻止し、シャープペンシルユニット16Sの前進位置が維持される。つまり、この摺動溝7をスリット6の中間部までしか形成しないことにより、スライダー11Sの係合をも兼ねるようになっている。
このシャープペンシルユニット16Sの突出過程において、前記スライダー11Sの後部が軸本体1の中心軸線方向に向かって沈み込み、シャープペンシルユニット16Sの前方部が軸本体1の内壁面に接近しようとするが、シャープペンシルユニット16Sは、その後部で回動可能に連結されているため、シャープペンシルユニット16Sの前方部は直線を維持した状態で突出する。
ここで、前述した様にシャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sは、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりもばね定数を低くしているため、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりも強さ(荷重)が低くなる。よって、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1から突出させる際の操作感が、ボールペンリフィル16Bを軸本体1から突出させる際の操作感よりも軽くなる。このように、ボールペンリフィル16Bとシャープペンシルユニット16Sとで突出操作時の操作感が異なることで筆記体の違いを容易に識別でき、複式筆記具が使用し易くなる。
又、シャープペンシルユニット16Sは、ボールペンリフィル16Bと比較して、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置から、更に、スライダー11Sを前進方向に操作する芯の繰り出し押圧操作が必要であり、弾撥部材17Sが付勢(圧縮)される距離(ストローク)、回数が多い。よって、ばね定数の小さい方がスプリング荷重を低く出来るので、芯の繰り出しノック圧が低くなり操作がし易くなる。
尚、このときの先部材4の前端から前記大径部162bの前方段部162bBまでの距離をBとする(
図29参照)。このシャープペンシルユニット16Sの突出状態において、前記シャープペンシルユニットの前方段部162bBは、前記ボールペンリフィル16Bの前端部(段部)16Bfよりも後方に位置している(B>A)。
ここで、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置において、スライダー11Sのツバ部11Sdの上部11Seを前方方向へ押圧操作すると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167が、前記先部材4の内径部の先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aに当接し、シャープペンシルユニット16Sの前進移動が阻止される。先部材167の外周面は複数の段部を有しており、各段部において、前方側の先部材167の外径よりも後方側の先部材167の外径の方が大きく形成されている。このため、シャープペンシルユニット16Sが前進せしめられると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167は、前記軸本体1の先部材4に当接する。ここで、さらに、スライダー11Sを押圧操作すると、芯タンク161やチャック体163が弾撥部材166の弾発力に抗して前進し、前記大径部162bの前方段部162bBが、ガイド筒165の小径部165cの後端に当接することにより前進終了となり、これが芯の繰り出し押圧操作のストロークとなる。丁度、継ぎ手部材162の縮径部162cがガイド筒165の内部に収容される状態である(このときの先部材4の前端から前記大径部162bの前方段部162bBまでの距離をCとする(
図32))。これによって芯の繰り出しがなされる。このとき、前述した通り、シャープペンシルユニット16Sの回動範囲は芯タンク161の後端内面部が後方筒部25の表面に接触することによって規制されており、この接触によりスライダー11Sを前方に押圧したとき、芯タンク161の後端内面部が後方筒部25の喰いつくように作用して、スライダー11Sの前方への動きをロスなく、確実にシャープペンシルユニット16S(芯タンク161)に伝達することができるのである。尚、芯の繰り出し押圧操作時におけるシャープペンシルユニットの最大前進状態においても、前記シャープペンシルユニットの前方段部162bBは、前記ボールペンリフィル16Bの前端部(段部)16Bfよりも後方に位置している(C>A)。
この芯繰り出し操作の過程で、スライダー11Sのツバ部11Sdが後軸3の外周面を摺接している。尚、本願発明においては、芯の繰り出し操作過程でスライダー11Sを前後動させた際に、他のボールペンリフィルのスライダー11Bと関わってしまうことはない。即ち、スライダー11S、及び、その前方に設けられたシャープペンシルユニットが単独で前後動する。このため、芯の繰り出し操作時に、ボールペンリフィル(シャープペンシルユニットを除く他の筆記体)まで僅かに前後動作してしまうようなことはない。シャープペンシルユニットの芯の繰り出し操作時には、シャープペンシルユニットのみが、軸本体1に対して前後動する。このようにシャープペンシルユニットのみが、軸本体1に対して前後動することによって、芯繰り出し操作荷重の増加がなく、良好な芯の繰り出し操作を行うことが出来る。
【0024】
次に、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納したい場合には、他のスライダー11Bを押圧する。他のスライダー11Bを押圧すると、互いのスライダー11S、11Bの背面に形成されている解除突起13、14が衝突する。この衝突作用により、押圧されている状態にあるスライダー11Sが後軸3の外側方向に押圧される。そして、この押圧作用により、前記スライダー11Sの摺動突起12と摺動溝7との係合が解除され、その解除作用により突出している状態にあるシャープペンシルユニット16Sが弾撥部材17Sの作用により後退し軸本体1内に没入し、スライダー11Sは元の後退位置まで戻ることになる。
尚、
図26(b)は、スライダー11Sが前進した状態を図示している。この状態では、後軸3は、スリット6、並びに、幅狭スリット部6aが大きな空間部となっている。この状態では勿論、更に芯の繰り出し作動を行うと、空間部にゴミや埃などの異物が入り易くなる。その結果、ゴミや埃などの異物がスリット6や幅狭スリット部6aの壁面、及び、スライド面3aに貼り付きやすい状態になっている。
但し、スリット6は外周面に近いのでゴミや埃などの異物は取り除き易く、スライド面3aは、摺動突起12の背面が接しながら摺動しているので、ゴミや埃などの異物は掻き出し易くなっている。しかし、幅狭スリット部6aは、軸心近傍に位置しているため、ゴミや埃などの異物を取り除き難くなっている。そこで、本実施例においては、シャープペンシルユニット16Sを軸本体1に収納する後退動作により、スライダー11Sの孔11Sfが、幅狭スリット部6aのゴミや埃を掻き取るように除去すると共に、孔11Sfに掻き取った異物を貯留するのである。そして、貯留した後においては、孔11Sfの幅狭スリット部6aから露出した部分から排出されるのである。
【0025】
このシャープペンシルユニット16Sの出没過程、及び芯繰り出し操作の過程において、重要なのはシャープペンシルユニット16Sが突出状態の時に、継ぎ手部材162の大径部162bの前方段部162bBが、インキ収容管16Baの前端部(段部)16Bfよりも後方に位置するように構成することである。即ち、没入状態ボールペンリフィルの段部16Bfの先部材4の前端部からの距離Aよりも、シャープペンシルユニット16Sの出没過程、及び、芯繰り出し操作の過程における、前記シャープペンシルユニット16Sの前方段部162bBの先部材の前端部からの距離BやCの方が、常に大きいという関係を満たしている(
図29〜
図32参照)。これは、前記大径部162bの前方段部162bBが、前記前端部16Bfと擦れてスライド操作感が悪くなることを防ぐためである。
また、前述したように、芯繰り出し操作は、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置において、スライダー11Sのツバ部11Sdの上部11Seを前方方向へ押圧操作すると、シャープペンシルユニット16Sの先部材167が、前記先部材4の内径部の先端側へ向かって徐々に径が小さくなる円錐部4aに当接し、シャープペンシルユニット16Sの前進移動が阻止される。ここで、さらに、スライダー11Sを押圧操作すると、芯タンク161やチャック体163が弾撥部材166の弾発力に抗して前進し、前記大径部162bの前方段部162bBが、ガイド筒165の小径部165cの後端に当接することにより前進終了となり、これが芯の繰り出し押圧操作のストロークとなる。丁度、継ぎ手部材162の縮径部162cがガイド筒165の内部に収容される状態である(
図32参照)。これによって芯の繰り出しがなされる。従って、芯の繰り出し操作の過程においても、前記大径部162bの前方段部162bBが、前記前端部16Bfと擦れてスライド操作感が悪くなることはなく、スライド操作感を良好に保つことが出来る。
先部材167にも段部が形成されているが、先端部分なので、他の筆記体と擦れ合うことはない。(
図29参照)
尚、本実施例では、シャープペンシルユニット16Sの出没過程、及び、芯繰り出し操作の過程において、前記継ぎ手部材162の大径部162bが、ボールペンリフィル16Bのインキ収容管16Baの前端部16bfよりも後方に位置するようにしているため、前記前方段部162bBだけでなく、後方段部162bAも、インキ収容管16Baの前端部16bfと擦れることがない。よって、シャープペンシルユニット16Sの没入時や、芯繰り出し過程における後退時に、継ぎ手部材162の後方段部162bAによってボールペンリフィル16Bをひっかけてしまうことがなく、この点でもスライド操作感が良好になっている。また、継ぎ手部材162の後方段部162bAによってボールペンリフィル16Bをひっかけてしまうことにより起こる、芯繰り出し操作荷重の増加もないため、スライド操作を良好に行うことができる。
【0026】
更に、弾撥部材17の変形例を説明する(弾撥部材を総称して符号17とする)。この変形例は、第1実施例でのばね定数の相違を逆転させた例である。第1実施例では、シャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sは、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりもばね定数を低くしていた。この変形例では、シャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sは、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bよりもばね定数を高くしている。
従って、第1実施例と同様、操作感が異なることで筆記体の違いを容易に識別でき、複式筆記具が使用し易くなる。又、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置(
図28参照)においては、スライダー11Sの側面部に形成されている摺動突起12の後端(
図27では上方)が、摺動溝7の前端部に係合している(ボールペンリフィル16Bでも同様)。この係合が外れないのは、シャープペンシルユニット16Sが突出する過程で圧縮された弾撥部材17Sによって、押しつけられているからである(ボールペンリフィル16Bでも同様)。シャープペンシルユニット16Sの場合は、シャープペンシルユニット16Sの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置から、更に、スライダー11Sを前進方向に操作する芯の繰り出し押圧操作がある。よって、シャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sのばね定数が高ければ、芯を繰り出す押圧操作後、スライダー11Sの摺動突起12の後端と摺動溝7の係合部が押圧解除による衝撃で万が一にも外れることはなく、シャープペンシルユニット16Sが前記軸本体1の先端より突出した前進位置が保たれることになる。
又、本実施例では、シャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sのばね定数よりも、ボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Bのばね定数を低くしている。ボールペンリフィル16Bの先端が前記軸本体1の先端より突出した前進位置から軸本体1に収納する場合、前記スライダー11Bの摺動突起12と摺動溝7との係合が解除され、その解除作用により突出している状態にあるボールペンリフィル16Bが弾撥部材17Bの作用により後退し軸本体1内に没入し、スライダー11Bは元の後退位置まで戻ることになる。ばね定数を低くしているので、後退位置に戻った時の衝撃が弱まり、ボールペンリフィル16Bに衝撃が伝播せず、インキとグリスが反転し、インキ洩れ等の不具合を万が一にも防止することも出来る。
【0027】
次に弾撥部材17おける第2実施例を示す。この変形例は、複式筆記具の軸本体(軸筒)内に配置する筆記体を同種同士に限り、その中の筆記体の少なくとも1つの弾撥部材のばね定数を異ならしめた例である(図示せず)。例として、第1実施例の複式筆記具にボールペンリフィル16Bが3本配置し、それらのインキの色を全て異ならしめ、黒色、赤色、青色としている。また、スライダー11Bを着色不透明部材からなし、各スライダー11Bの色を、前記ボールペンリフィル16Bのインキの色と略同色としている。この中で特定のインキの色、本実施例では、使用頻度が高い黒色インキのボールペンリフィル16Bの弾撥部材17だけ、ばね定数が高くなるよう異ならしめている。
従って、第1実施例と同様、操作感が異なることで使用頻度の高いボールペンリフィル16Bの黒色インキを容易に識別でき、複式筆記具が使用し易くなる。
この他、前述の通り、各スライダー11Bの色を、ボールペンリフィル16Bのインキの色と略同色としており、また、第1実施例と同様にスライダー11Bと11Sをボールペンリフィル16Bとシャープペンシルユニット11Sとで異ならしめているため、視覚によっても各筆記体が識別可能となっている。
【0028】
尚、本実施例において、スライダー11Bを透明、或いは、着色された半透明な材質から形成し、接続部材15をインキの色と略同色とした場合には、使用者の好みのインキの色を識別可能とすることが出来る。
即ち、第1実施例で述べたように、ボールペンリフィル16Bは、接続部材15が連結された状態でスライダー11Bから離脱・交換可能な構成になっている。このため、使用頻度が高い黒色を識別するだけではなく、使用者が自分の好みのインキの色、或いは、筆記体に交換しても、操作感の相違により、それを容易に識別出来るので、複式筆記具が使用し易くなる。
また、この場合にも各接続部材15の色や、ボールペンリフィル16Bとシャープペンシルユニット11Sのスライダー11B、11Sの形状の相違により、視覚によっても各筆記体が識別可能となっている。
【0029】
次に弾撥部材17おける第3実施例を示す。この変形例は、複式筆記具の軸本体(軸筒)内に配置する全て弾撥部材のばね定数を異ならしめた例である(図示せず)。例として、第1実施例の複式筆記具において、弾撥部材17のばね定数を全て異ならしめている構成である。筆記体は、シャープペンシルユニット16S、ボールペンリフィル16Bを配置し、更に、ボールペンリフィル16Bのインキの色を異ならしめ、黒色、赤色としている。また、スライダー11Bを着色不透明部材からなし、各スライダー11Bの色を、前記ボールペンリフィル16Bのインキの色と略同色としている。シャープペンシルユニット16Sの弾撥部材17Sは、ばね定数が3つの筆記体の弾撥部材の中で最も高くなるよう異ならしめている。これにより、第1実施例と同様、操作感が異なることでシャープペンシルユニット16Sと、ボールペンリフィル16Bの違いを識別することが出来る。更に、本実施例においては、同じボールペンリフィル16Bでも黒色インキボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Sのばね定数を最も低くなるよう異ならしめ、赤色インキボールペンリフィル16Bの弾撥部材17Sのばね定数を中間となるよう異ならしめたので、黒色・赤色の各色のインキを容易に識別出来、複式筆記具が使用し易くなる。
この他、前述の通り、各スライダー11Bの色を、ボールペンリフィル16Bのインキの色と略同色としており、また、第1実施例と同様にスライダー11Bと11Sをボールペンリフィル16Bとシャープペンシルユニット11Sとで異ならしめているため、視覚によっても各筆記体が識別可能となっている。