(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768690
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】多段バンド式粘性物乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/04 20060101AFI20150806BHJP
C02F 11/12 20060101ALI20150806BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
F26B17/04 B
C02F11/12 BZAB
B09B3/00 303Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-264275(P2011-264275)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-117333(P2013-117333A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁則
(72)【発明者】
【氏名】能登 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞樹
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−174654(JP,A)
【文献】
特公昭32−004948(JP,B1)
【文献】
実開昭49−071867(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/04
B09B 3/00
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性物を乾燥するための多段バンド式乾燥装置であって、
前記粘性物を搬送する少なくとも2段のバンドが上下方向に重なっているとともに、前記バンドで搬送されている粘性物に温風を送風する温風送風手段を備えており、
かつ、
前記粘性物が、上から1段目のバンドに供給された後、該バンドの折り返し点を該バンド面に付着した状態で搬送される付着性を有しており、
上から1段目のバンドと2段目のバンドの回転方向が同じであることを特徴とする多段バンド式粘性物乾燥装置。
【請求項2】
上から1段目のバンドの周回点近傍に、バンドに付着している粘性物を払い落とす手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の多段バンド式粘性物乾燥装置。
【請求項3】
前記温風送風手段は、装置の上方から下方に向けて温風を送風することを特徴とする請求項1または2に記載の多段バンド式粘性物乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料などの粘性物を効率的に乾燥することができる多段バンド式粘性物乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥などの粘性物の有効利用や製品化等を図る場合、先ずは汚泥などの粘性物を乾燥させる処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そこで、そのような汚泥などの粘性物の乾燥処理のために、海産物等の乾燥に利用されているバンド式乾燥装置を用いることが考えられる。バンド式乾燥装置は、特許文献2や特許文献3等に記載されているが、その一例を
図3に示すように、海産物等の被乾燥物を搬送する網目状のコンベアベルト(バンド)50を上下方向に複数段備えており、それらのバンド50で搬送されている被乾燥物に対して熱風や温風を送風することで、被乾燥物を乾燥するようになっている。その際、被乾燥物は各段のバンド50の折り返し点で落下して次の段のバンド50に載り移る。
【0004】
なお、特許文献2に記載のバンド式乾燥装置(多段バンド式乾燥装置)では、熱風や温風が装置の上方から下方に向けて通風するようになっており、特許文献3のバンド式乾燥装置(多段バンド式乾燥装置)では、熱風や温風が装置の下方から上方に向けて通風するようになっている。
【0005】
ちなみに、バンド式乾燥装置は、バンドが一段のみの場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−050458号公報
【特許文献2】特開平02−069135号公報
【特許文献3】実開平06−031479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2、3に記載のバンド式乾燥装置(多段バンド式乾燥装置)を用いて汚泥などの粘性物を乾燥させようとした場合、以下のような問題が生じる。
【0008】
すなわち、粘性物は付着性が高いので、乾燥途中の1段目バンドの折り返し点でバンド面から離脱しないことが起こる。この原因としては、粘性物のバンド面への配置のされ方(粘性物同士の重なりや接触)、通風状態、粘性物の性状の不均一さ、などによる。バンドから離脱しなかった粘性物が一巡してくると、その上に新たに供給された粘性物が載ってしまい、その結果、被乾燥物の厚みが増して、乾燥が非効率になる。
【0009】
それに対して、1段目バンドの折り返し点で汚泥などの粘性物をバンドから離脱させる方法として、1段目バンドの折り返し点にスクレーパを設ける方策が考えられるが、この場合、1段目バンドからの離脱は促進されるものの、一部の粘性物はスクレーパで押し潰されて、バンドの網目が粘性物で埋まってしまう。その結果、通風に偏流が生じて乾燥が非効率になり、また、通風の圧力損失が増大して乾燥に要する消費エネルギーが増大する。さらに、バンドの網目のクリーニング頻度が高くなる。
【0010】
これを回避する方法として、1段目バンドの折り返し点で汚泥などの粘性物がバンドから自重によって離脱する程度まで充分に乾燥するように、送風温度の上昇や風量の増大、あるいは、バンドの長さを長くして滞留時間を長くするなどの方策が考えられるが、この場合、乾燥に要する消費エネルギーや乾燥装置の設置面積が増加してしまう。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料などの付着性の高い粘性物を、乾燥に要する消費エネルギー増大や乾燥装置の設置面積の増大を回避しつつ、安定して所定の含水率まで乾燥することができる多段バンド式粘性物乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0013】
[1]粘性物を乾燥するための多段バンド式乾燥装置であって、前記粘性物を搬送する少なくとも2段のバンドと、前記バンドで搬送されている粘性物に温風を送風する温風送風手段を備えており、かつ、上から1段目のバンドと2段目のバンドの回転方向が同じであることを特徴とする多段バンド式粘性物乾燥装置。
【0014】
[2]上から1段目のバンドの周回点近傍に、バンドに付着している粘性物を払い落とす手段を設けたことを特徴とする前記[1]に記載の多段バンド式粘性物乾燥装置。
【0015】
[3]前記温風送風手段は、装置の上方から下方に向けて温風を送風することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の多段バンド式粘性物乾燥装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、汚泥、畜糞、食品、食品残渣、化成品、肥料などの付着性の高い粘性物を、乾燥に要する消費エネルギー増大や乾燥装置の設置面積の増大を回避しつつ、安定して所定の含水率まで乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】通常の多段バンド式乾燥装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、汚泥を乾燥する場合を例にして述べる。
【0019】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る多段バンド式汚泥乾燥装置10Aを示す図である。
【0020】
ここで、汚泥を多段バンド式乾燥装置で乾燥する場合、汚泥を所定の形状(例えば、板状、棒状)にしてから1段目バンドに載せることになる。
【0021】
図1に示すように、この実施形態1に係る多段バンド式汚泥乾燥装置10Aは、乾燥装置本体11の内部に複数段のバンド(ここでは、1段目バンド12と2段目バンド13と3段目バンド14)を備えているとともに、脱水汚泥1が貯留されている汚泥貯留槽7から汚泥ポンプ8によって供給されてきた汚泥を所定の形状に成形する成形ノズル15と、乾燥後の汚泥を排出する乾燥汚泥排出装置16を備えている。温風は、温風発生熱交換器19で未利用排熱などと熱交換して所定の温度とし、乾燥装置本体11に送風されて、1段目バンド12および2段目バンド13および3段目バンド14で搬送されている汚泥2を乾燥するようになっている。その際、汚泥(成形汚泥)2からの臭気をできるだけ抑制しながら乾燥するためには、170〜240℃の温風によって汚泥2の表面に殻を形成させ、その後に所定の含水率までより低温の温風で乾燥する。なお、温風は、大半は循環ファン18によって温風発生熱交換器19と乾燥装置本体11内を循環され、一部は空気導入ファン17によって大気から導入され、一部は図示しない排気処理装置によって排気される。
【0022】
その上で、この実施形態1においては、汚泥2が高含水率で付着性があるため、1段目バンド12の折り返し点では汚泥2が自重では離脱せず、1段目バンド12の折り返し点をバンド面に付着した状態でさらに搬送され、その間に汚泥2の自重で離脱する程度まで乾燥が進むと、落下して2段目バンド13に移る。
【0023】
ここで、一般に多段バンド式乾燥装置では、上段と下段のバンドの回転方向は逆向きであるが、この実施形態1では、2段目バンド13は1段目バンド12と同方向に回転させる。
【0024】
1段目バンド12の折り返し点で被乾燥物(汚泥)すべてが離脱する程度まで乾燥させるには、通風量の増大や温度の上昇による乾燥速度の向上が必要となり、乾燥に要する消費エネルギーの増大に繋がる。
【0025】
しかし、1段目バンド12の折り返し点から周回点までの区間も利用して、さらに乾燥を行うことで、通風量の増大や温度の上昇を行うことなく、汚泥2を1段目バンド12から2段目バンド13に移行させることができる。そして、2段目バンド13が1段目バンド12と同方向に回転しているので、1段目バンド12から離脱した汚泥2は、2段目バンド13の周回開始点の近くに移行することとなり、2段目バンド13上にて充分な乾燥区間を確保することができるので、乾燥装置本体11から排出される乾燥物の含水率のばらつきは小さく、安定した品質の乾燥物を製造することができる。
【0026】
ここで、2段目バンド13の速度は1段目バンド12の速度と同じでも違っていても構わない。
【0027】
上記のようにして、この実施形態1においては、バンドの表裏両面において乾燥を行わせることにより、各段のバンド長さの短縮、送風温度・風量の低下に繋がり、乾燥装置の設置面積や乾燥に要する消費エネルギーの削減が可能となる。
【0028】
なお、この実施形態1では、
図1に示すように、温風発生熱交換器19で発生させた温風を乾燥装置本体11の上方から下方に向けて通風するようにしているが、それは以下のような理由である。
【0029】
すなわち、前述したように、汚泥2からの臭気をできるだけ抑制しながら乾燥するためには、170〜240℃の温風によって汚泥2の表面に殻を形成する必要がある。その際に、特許文献3のように、乾燥装置の下方から上方に向けて通風させる場合は、1段目バンドでの温風温度を170〜240℃にするためには、乾燥装置の下方から通風される温風の温度をそれ以上に高くすることになるので、最下段バンド上の比較的含水率の低い汚泥が焦げたり、発火したりする恐れがある。
【0030】
それに対して、1段目バンドについては下方から上方に温風を通風させ、2段目以降のバンドについては上方から下方に温風を通風させるように、1段目バンドと2段目バンドの間に温風通風用のノズルを設置する方策が考えられるが、この場合は、乾燥装置内の構造が複雑になってしまい、乾燥装置のコストの上昇や、メンテナンス性が難しくなる恐れがある。
【0031】
したがって、汚泥全体の乾燥用の温風は乾燥装置本体11の上方から下方に向けて通風することが望ましい。
【0032】
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2に係る多段バンド式汚泥乾燥装置10Bを示す図である。
【0033】
この実施形態2の基本的構成は実施形態1と同様であるが、この実施形態2では、それに加えて、1段目バンド12の折り返し点と周回点との間に払い落とし手段(ここでは、スクレーパ)21を設けてある。これによって、1段目バンド12から自重で落下する程度まで乾燥が進まなかった汚泥2をその位置で強制的に払い落とす。
【0034】
この払い落とし手段21は、通常、乾燥装置の設置面積を小さくする目的で、1段目周回点付近の2段目バンド13の端部上方となるよう配置される。払い落とし手段21としては、スクレーパの他に、バンドに振動を付与する手段や風の力で吹き飛ばす手段などが考えられる。
【0035】
払い落とし手段21に達する時点においては、汚泥2の表面の殻は乾燥して充分な強度を有しているので、汚泥2の内部の未乾燥な部分がバンドの網目を埋めることはない。
【符号の説明】
【0036】
1 脱水汚泥
2 成形汚泥
7 汚泥貯留槽
8 汚泥ポンプ
10A 多段バンド式汚泥乾燥装置
10B 多段バンド式汚泥乾燥装置
11 乾燥装置本体
12 1段目バンド
13 2段目バンド
14 3段目バンド
15 汚泥成形ノズル
16 乾燥汚泥排出装置
17 空気導入ファン
18 循環ファン
19 温風発生熱交換器
21 払い落とし手段(スクレーパ)
50 コンベアベルト(バンド)