特許第5768692号(P5768692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768692
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】鋳型湯面測定装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 45/00 20060101AFI20150806BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20150806BHJP
   B22D 7/06 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B22D45/00 A
   B22D46/00
   B22D7/06 H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-265356(P2011-265356)
(22)【出願日】2011年12月4日
(65)【公開番号】特開2013-116487(P2013-116487A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】畠中 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健二
(72)【発明者】
【氏名】森下 芳和
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 芳紀
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−124699(JP,A)
【文献】 特開昭53−106341(JP,A)
【文献】 特開2007−098456(JP,A)
【文献】 特開昭53−122622(JP,A)
【文献】 特開昭55−086649(JP,A)
【文献】 特開昭55−077964(JP,A)
【文献】 実開昭54−134736(JP,U)
【文献】 実開昭55−066059(JP,U)
【文献】 米国特許第04470445(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 45/00
B22D 46/00
B22D 7/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋の底面に設けた注湯口から下方の定盤内に形成された湯道へ溶湯を供給し、定盤上の複数個所に配置されて分岐した湯道の各端部に連通する鋳型内へ溶湯を分配するようにした下注ぎ鋳造設備において、渦流距離センサと、当該渦流距離センサを下方に向けて保持し当該渦流距離センサを定盤上方で三次元の任意位置へ移動可能とした移動駆動手段と、前記渦流距離センサを各鋳型の上方所定位置へ移動させて当該鋳型内の湯面の高さを測定する湯面測定手段とを備え、かつ前記移動駆動手段は、垂直方向の任意位置へ前記渦流距離センサを移動可能とした垂直移動駆動手段を有し、前記垂直移動駆動手段はプッシュプルチェーンであって、当該プッシュプルチェーンは左右一対として設けられている下注ぎ鋳造設備における鋳型湯面測定装置。
【請求項2】
前記移動駆動手段は、前記複数個所に配置された鋳型の領域をカバーする二次元平面内の任意位置へ前記渦流距離センサを移動可能とした水平移動駆動手段をさらに有する請求項1に記載の下注ぎ鋳造設備における鋳型湯面測定装置。
【請求項3】
さらに、前記渦流センサを冷却する冷却空気供給手段を備えた請求項1又は2に記載の下注ぎ鋳造設備における鋳型湯面測定装置。
【請求項4】
前記鋳型は前記定盤上に平面視で同形のものが左右対称位置に複数配置されており、前記湯面測定手段は左右いずれかに置かれた鋳型内の湯面の高さを測定するように設定されている請求項1ないし3のいずれかに記載の下注ぎ鋳造設備における鋳型湯面測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳型湯面測定装置に関し、特に下注ぎ鋳造設備における鋳型内の湯面高さの測定に使用する鋳型湯面測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連続鋳造設備において鋳型内の湯面の高さを、渦流センサを使用して計測する湯面計が示されている。ところで、下注ぎ鋳造は図8に示すように、定盤61上に立設した注入管62の上端を、取鍋Lの底壁に設けた注湯口L1に連結し、注入管62から、定盤61内に形成された湯道611を経て定盤61上に設置した鋳型Mの底部注入口M1から鋳型M内へ溶湯Wを供給するもので、ガスの巻き込みや異物の混入が少ないインゴットを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−111248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記下注ぎ鋳造において、鋳型を複数配置してこれらに同時に注湯する場合、高温雰囲気下で各鋳型に湯面計を持ち運んで湯面を計測することは困難であり、特に、大きさ(高さ)の異なる鋳型を使用する場合には、検知距離が比較的短い渦流センサは、鋳型の高さに合わせてその設置位置を調整する必要があるため、高温雰囲気下での調整作業は事実上不可能であった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、複数の鋳型の湯面高さの測定を、人手を要することなく安全かつ精度良く速やかに行うことが可能な鋳型湯面測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、取鍋(L)の底面に設けた注湯口(L1)から下方の定盤(1)内に形成された湯道へ溶湯を供給し、定盤(1)上の複数個所に配置されて分岐した湯道の各端部に連通する鋳型(M)内へ溶湯を分配するようにした下注ぎ鋳造設備において、渦流距離センサ(4)と、当該渦流距離センサ(4)を下方に向けて保持し当該渦流距離センサ(4)を定盤(1)上方で三次元の任意位置へ移動可能とした移動駆動手段(24,33,37)と、渦流距離センサ(4)を各鋳型(M)の上方所定位置へ移動させて当該鋳型(M)内の湯面の高さを測定する湯面測定手段(5)とを備えている。前記移動駆動手段は、前記複数個所に配置された鋳型(M)の領域をカバーする二次元平面内の任意位置へ前記渦流距離センサ(4)を移動可能とした水平移動駆動手段(24,33)と、前記二次元平面内の任意位置から、垂直方向の任意位置へ前記渦流距離センサ(4)を移動可能とした垂直移動駆動手段(37)とを備えることができる。前記垂直移動駆動手段はプッシュプルチェーン(34)を備えるものとできる。また、前記プッシュプルチェーンは左右一対として設けることができる。さらに、前記渦流センサ(4)を冷却する冷却空気供給手段(44)を設けることができる。
【0007】
本第1発明においては、下注ぎ鋳造における複数の鋳型内の溶湯の湯面測定を自動化することができるから、安全かつ速やかに各鋳型内の湯面高さを測定して精度良く溶湯供給停止等の操作をすることができ、インゴットの出来高重量のバラツキを低減させることができる。異なる形状(高さ)の鋳型がある場合、はじめに最も低い鋳型の湯面の高さを測定した後、高い鋳型へ速やかに移動させることで、異なる形状(高さ)の鋳型がある場合でも出来高重量のバラツキを低減するすることができる。更に、高さが低い順から鋳型を並べておけば、さらに速やかな測定が可能となる。
【0008】
本第2発明では、前記鋳型(M)は前記定盤(1)上に平面視で同形のものが左右対称位置に複数配置されており、前記湯面測定手段は左右いずれかに置かれた任意の鋳型(M)内の湯面の高さを測定するように設定されている。
【0009】
本第2発明においては、同形(同一高さ)の鋳型は通常は同じ湯面高さになるから、複数ある同形(同一高さ)鋳型のうち任意の一つについてのみ湯面高さを測定すれば良いから、測定時間や測定周期の短縮が可能となる。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、複数の鋳型の湯面高さの測定を、人手を要することなく安全かつ速やかに行うことができるから、インゴット等の出来高重量のバラツキを大きく低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す、鋳型湯面測定装置を備えた下注ぎ鋳造設備の全体平面図である。
図2】鋳型湯面測定装置を備えた下注ぎ鋳造設備の全体側面図である。
図3】鋳型湯面測定装置の拡大平面図である。
図4】走行台車の平面図である。
図5】走行台車の垂直断面図である。
図6】走行台車の側面図である
図7】渦流距離センサの電気回路図である。
図8】従来の下注ぎ鋳造設備の概略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1には本発明の鋳型湯面測定装置を備えた下注ぎ鋳造設備の全体平面図を示し、図2にはその全体側面図を示す。図1において、定盤1上には10個の下注ぎ式鋳型Mが配置されており、これらは各5個が左右対称に位置している。図2において、左右の各鋳型Mには形状(高さ)が異なるものがあるが、左右の対称位置にある鋳型M同士は同じ形状(高さ)としてある。そして、これら鋳型Mの上方に取鍋Lが公知の構造で支持されており、取鍋Lの底壁に設けた開閉可能な注湯口L1が定盤1上に立設された注入管62に連結されて、従来技術で説明したように定盤1内の湯道を経て各鋳型Mの底部注入口に連通している。なお、湯道は、各鋳型M内の湯面が適当位置まで上昇した際に、当該鋳型Mに連通する部分で適宜遮断できるようになっている。
【0015】
鋳型湯面測定装置Dは取鍋Lの側方に配置されており(図1)、各鋳型Mの上方の、取鍋Lの底部とほぼ同一高さに配設されている(図2)。当該装置Dは右半分に配置された鋳型Mの両側を平行に延びる、移動駆動手段を構成するガイドレール21を備えている(図1)。ガイドレール21は図1における右半部の鋳型配置領域をカバーできる長さとしてある。ガイドレール21間にさらに、平行なサブレール22が架設されている。その詳細を図3に示す。
【0016】
図3図1を90度異なる方向から見た拡大平面図である。図3において、各サブレール22は両端部で互いに連結されて架台を構成しており、サブレール22に沿った上方位置にはそれぞれ回転軸23が配設されている(図6参照)。左右のガイドレール21に至る回転軸23の両端にはそれぞれローラ231が取着されて、これらローラ231がガイドレール21上に位置している。回転軸23には一端部にベベルギア232が取着してあり、当該ギア232はサブレール22に一体に設けた駆動モータ24の出力軸に取着されたベベルギア241と噛合している。これにより、駆動モータ24を正逆回転させると、これに応じてサブレール22が回転軸23を介してガイドレール21の配設方向へ正逆移動させられる。なお、回転軸23を使用することによって、チェーン等を使用するのに比して省スペース化が実現されている。
【0017】
上記サブレール22間には走行台車3が配設されている。走行台車3の平面図を図4に、その垂直断面図を図5に示す。走行台車3は平面視で長方形の基枠31を備えており、基枠31の長手方向の両端部には短辺に沿って回転軸32が配設されて各回転軸32の両端にローラ321が取着されている。これらローラ321は図6に示すようにサブレール22のコ字断面空間内に転動可能に位置している。
【0018】
回転軸32にはギア体322が設けてあり、当該ギア体322はギア体323を介して、走行台車3に一体に設けた駆動モータ33の出力軸に取着されたギア体331に噛合している。これにより、駆動モータ33を正逆回転させると、これに応じて走行台車3がサブレール22の配設方向、すなわちガイドレール21の配設方向と直交する方向へ正逆移動させられる。以上の構成により、駆動モータ24,33を回転制御することによって走行台車3を、図1における右半部に配設された鋳型Mの領域をカバーする二次元平面内の任意位置へ移動させることができる。
【0019】
走行台車3には図5に示すように左右一対のプッシュプルチェーン34が設けられている。これらチェーン34は走行台車3に垂設したガイドパネル35に渦巻状に収納されており、ガイドパネル35の中央部に設けた一対のスプロケット36がそれぞれ左右のチェーン34に係合している。左右のスプロケット36はその回転軸が、互いに噛合するベベルギア(図4)361,371を介して、走行台車3の長手方向へ配設した回転軸372に連結されている。回転軸372は駆動モータ37の出力軸に連結されて正逆回転させられるようになっており、回転軸の正逆回転に伴ってスプロケット36が互いに反対方向へ連動して回転させられる。これに伴い、左右のプッシュプルチェーン34が図5に示す収納状態から垂直下方へ引き出され、あるいは引き上げられる。
【0020】
左右のプッシュプルチェーン34の先端には保持部材41(図5)が結合されており、保持部材41には下方へ向けて渦流距離センサ4が固定されている。渦流距離センサ4は円筒状のケーシング42を備えており、ケーシング42には電線ケーブル43(図4)と冷却空気供給用の可撓ホース44が接続されている。これら電線ケーブル43と可撓ホース44は、走行台車3の左右位置に設けた巻取りドラム45,46にそれぞれ巻回されている。駆動モータ37によって各スプロケット36を回転させるとこれに伴ってプッシュプルチェーン34が垂直下方へ引き出され、チェーン34の先端に結合された保持部材41上に位置する渦流距離センサ4が、電線ケーブル43(図4)と可撓ホース44を巻取りドラム45,46から引き出しつつ、所定位置まで下降させられる(図2)。なお、プッシュプルチェーン34を使用することによって溶湯からの粉塵や輻射熱を受けても渦流距離センサ4の円滑な昇降が可能となる。
【0021】
図7には渦流距離センサ4の電気回路図を示す。なお、電気回路は湯面測定手段としての制御装置5内に設けられている。渦流距離センサ4は交流励磁される一次コイル48と、一次コイル48によって励磁される一対の二次コイル49とから構成されており、鋳型M内の溶湯湯面Lとの間の距離、すなわち湯面Lの高さに応じてインピーダンスが変化することによる差動アンプ51の出力を、帰還増幅器52で増幅しAC/DC変換器53で検波することによって湯面の高さに応じた信号53aを得ている。
【0022】
下注ぎ鋳造が開始されると、鋳型湯面測定装置の上記各駆動モータ24,33,37は制御装置5内の他の回路によってその作動が制御される。制御装置5は最初の鋳型Mの直上へ走行台車3を位置させるように駆動モータ24,33を制御する。鋳型Mの直上であることの検出は番地指定によるプログラム制御等で行う。鋳型Mの直上位置で、駆動モータ37を作動させて渦流距離センサ4を鋳型M内の湯面検出が可能な所定位置まで下降させて、湯面高さの測定を行なう。測定が終わると渦流距離センサ4は上昇させられ、走行台車3は次の鋳型Mの直上位置へ移動させられる。そして渦流距離センサ4が湯面検出可能な所定位置まで下降させられて、湯面高さの測定がなされる。
【0023】
このようにして、本実施形態では走行台車3の移動可能範囲内にある5つの鋳型Mについて、異なる湯面高さのグループ毎に、そのうち任意の一つの鋳型の湯面高さ測定を順次繰り返す。そして、押湯や満注の、所定の湯面高さになったことが検出されると溶湯が補充供給され、あるいは当該鋳型Mに至る湯道が遮断されて溶湯の供給が停止される。本実施形態では、走行台車3の移動可能範囲内の、図1の右半部の鋳型Mの湯面高さのみを測定しているが、左半部の対称位置にある同形の鋳型Mも通常は同じ湯面高さになるから、右半部の各鋳型Mへの押湯や、満注により溶湯供給を遮断する際には左半部の対応する鋳型Mへも同様の操作を行う。
【0024】
以上のようにして、本実施形態の鋳型湯面測定装置によれば、下注ぎ鋳造における複数の鋳型内の溶湯の湯面測定を自動化することができるから、安全かつ速やかに湯面高さを測定して精度良く溶湯供給停止等の操作をすることができ、インゴットの出来高重量のバラツキを低減させることができる。
【符号の説明】
【0025】
1…定盤、21…ガイドレール、22…サブレール、24…駆動モータ(移動駆動手段)、3…移動台車、33…駆動モータ(移動駆動手段)、34…プッシュプルチェーン、37…駆動モータ(移動駆動手段)、4…渦流距離センサ、5…制御装置(湯面測定手段)、M…鋳型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8