特許第5768699号(P5768699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000002
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000003
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000004
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000005
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000006
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000007
  • 特許5768699-交通設備、中央装置及び交通システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768699
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】交通設備、中央装置及び交通システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/07 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   G08G1/07 C
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-276138(P2011-276138)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-127663(P2013-127663A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 充雄
(72)【発明者】
【氏名】土井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】有馬 孝義
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−079326(JP,A)
【文献】 特開2008−305090(JP,A)
【文献】 特開2006−009281(JP,A)
【文献】 特開2000−163699(JP,A)
【文献】 特開2007−323364(JP,A)
【文献】 米国特許第05345232(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置と、当該中央装置と通信可能でありかつ交通円滑化のための通常制御を行う交通設備と、を備えている交通システムであって、
前記中央装置は、
前記交通設備に対して制御用の指令を繰り返し送る処理を行う制御部と、
前記指令の送信間隔よりも短い間隔で前記災害情報の提供の有無を監視し、提供が有ると判断すると、前記交通設備に対して災害対応用の通知を送る処理を行う監視部と、を有し、
前記交通設備は、
前記災害対応用の通知を受信すると、前記通常制御から、当該交通設備に予め設定されている災害に対応する災害制御へと替えて、当該災害制御を開始する実行部を有しており、
前記交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機が含まれており、
前記監視部は、前記災害情報の提供の有無を、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で監視する
ことを特徴とする交通システム。
【請求項2】
前記実行部は、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御を独自で実行する請求項1に記載の交通システム。
【請求項3】
記実行部は、灯色を制御する信号制御機であり、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御として、災害発生地点から遠ざかる方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行する請求項1又は2に記載の交通システム。
【請求項4】
記実行部は、灯色を制御する信号制御機であり、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御として、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行する請求項1又は2に記載の交通システム。
【請求項5】
交通円滑化のための通常制御及び災害に対応する災害制御を実行する交通設備と通信可能であると共に、外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置であって、
前記交通設備に対して制御用の指令を繰り返し送る処理を行う制御部と、
前記指令の送信間隔よりも短い間隔で前記災害情報の提供の有無を監視し、提供が有ると判断すると、前記交通設備に対して災害対応用の通知を送る処理を行う監視部と、
を有しており、
前記交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機が含まれており、
前記監視部は、前記災害情報の提供の有無を、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で監視する
ことを特徴とする中央装置。
【請求項6】
外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置と通信可能であり、かつ、交通円滑化のための通常制御を行う制御機を有し、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機を含む交通設備であって、
制御用の指令を前記中央装置が前記制御機に対して繰り返し送る送信間隔よりも短い間隔であって前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で、前記災害情報の提供の有無を当該中央装置が監視し、提供が有ると判断した場合に当該中央装置が送った災害対応用の通知を、受信する受信部と、
前記受信部が前記通知を受信すると、前記通常制御から、予め設定されている災害に対応する災害制御へと替えて、当該災害制御を開始する実行部と、
を有していることを特徴とする交通設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通円滑化のための制御を行う交通設備、この交通設備に対して制御用の指令を送る中央装置、及び、これら交通設備及び中央装置を含む交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通管制センター(中央装置)は、交通の円滑化を主たる目的として、道路に設置されている交通信号機、交通情報掲示装置、ビーコン装置及び路側通信装置等の交通設備に対して制御用の指令を送り、交通信号機は、この指令に基づいて灯色の制御を行うことができ、また、交通情報掲示装置、ビーコン装置及び路側通信装置は、周囲を走行する車両等に対して各種の情報を提供する制御を行うことができる。
【0003】
具体的には、交通管制センターは、交通信号機の信号制御機に対して、例えば交通渋滞の緩和のためにサイクル、スプリット及びオフセット等の信号制御パラメータを変更するための信号制御指令を送信し、この指令を受けた信号制御機は、信号制御パラメータを変更し信号灯器の灯色を制御し、車両を滞ることなく走行させる。
また、渋滞の少ない経路を車両(ドライバ)に選択させるために、交通管制センターは、交通情報掲示装置に対して渋滞状況を掲示板に表示させるための制御指令を送信し、この制御指令を受けた交通情報掲示装置は、その渋滞状況の情報を、周囲を走行する車両(ドライバ)等に対して視覚的に報知する。
【0004】
このような交通管制センターにおいて、上記のような交通の円滑化を目的とする通常制御以外に、災害が発生した場合に、緊急の情報を、交通信号機、交通情報掲示装置、ビーコン装置及び路側通信装置等の交通設備に送信し、この交通設備によって、その周囲を走行する車両又は歩行者を安全に誘導させる等の災害に対応する災害制御を実行するための技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
例えば、地震計等のセンサを有する外部機関(例えば気象庁)において、地震波が観測され、震源から離れたある地点において所定時間経過後にその地震波が到達することが算出され、その旨の情報(緊急地震速報)が直ぐに外部機関から送信されると、交通管制センターは、これを受信し、緊急用の信号制御指令を各交通信号機に送信し、災害に対応する災害制御として、例えば交通信号機は車両灯の灯色をすべて赤にする制御を行い、地震による路面の揺れが発生する前に車両を停止させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−79326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、地震等の災害が発生した直後に、外部機関から緊急の情報(緊急地震速報)が送信され、交通管制センターが、この情報を受信し、緊急用の信号制御指令を各交通信号機に送信したとしても、以下の理由により、各交通信号機において、災害に対応する災害制御の開始が地震波の到達までに間に合わない場合がある。
【0008】
すなわち、上記のとおり、一般道路(一部は高速道路の合流部)の交通信号機を管理している交通管制センターは、交通信号機の信号制御機に対して、信号制御パラメータを変更させるための信号制御指令を繰り返し送信するが、この指令の送信周期(図6のΔt)は、例えば、1分又は2.5分等の一定の周期とされている。
そして、このような交通信号機では、このような信号制御指令を受信しても、この指令に基づく信号制御パラメータの実際の変更は、灯色が青・黄・赤と一巡する1サイクルS(図6参照)の開始時から、反映される制御となっている。
なお、特定の橋梁やトンネルに設置されている交通信号機を管理している交通管制センターは、緊急時に交通信号機の表示を赤に変えて通行止めを示すものであり、一般的には手動により操作がされる。
【0009】
したがって、交通信号機において、信号制御指令の受信タイミングと、灯色のサイクルのタイミングとがうまく合えば、つまり、図6に示すように、サイクル開始(時刻T1)の直前(時刻T0)で信号制御指令を受信することができ、信号制御パラメータが変更された場合は、災害に対応する災害制御が迅速に反映されるが、これらタイミングがうまく合わない場合(図7の場合)、つまり、サイクルの開始直後の時刻T2で信号制御指令を受信した場合は、ほぼ灯色の1サイクルSの時間(例えば5分)だけ待ってから(時刻T3)、災害に対応する災害制御が反映される。
【0010】
このように、図7の場合、交通信号機では、信号制御指令の受信時(時刻T2)から災害制御の開始時(時刻T3)まで、例えば5分程度の時間を要している。この場合、地震が発生し、交通管制センターから信号制御指令が送信され、交通信号機において、この信号制御指令に基づく信号制御がほぼ5分後に反映されたとしても、その間に地震波は到達しており、手遅れとなることがある。
【0011】
そこで、本発明は、災害に対応する災害制御を交通設備に迅速に開始させることが可能となる交通システム、災害制御を迅速に開始することが可能な交通設備、及び、災害制御を迅速に開始させることが可能な中央装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の交通システムは、外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置と、当該中央装置と通信可能でありかつ交通円滑化のための通常制御を行う交通設備とを備えている交通システムであって、前記中央装置は、前記交通設備に対して制御用の指令を繰り返し送る処理を行う制御部と、前記指令の送信間隔よりも短い間隔で前記災害情報の提供の有無を監視し、提供が有ると判断すると、前記交通設備に対して災害対応用の通知を送る処理を行う監視部とを有し、前記交通設備は、前記災害対応用の通知を受信すると、前記通常制御から、当該交通設備に予め設定されている災害に対応する災害制御へと替えて、当該災害制御を開始する実行部を有しており、前記交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機が含まれており、前記監視部は、前記災害情報の提供の有無を、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で監視することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、中央装置において、外部からの災害情報の提供の有無が短い間隔で監視され、提供が有ると判断された場合、災害対応用の通知が交通設備に対して送られ、交通設備では、この災害対応用の通知が受信されると、この通知をトリガとして、実行している通常制御が、災害に対応する災害制御へと替えられ、災害制御が迅速に開始される。すなわち、例えば、交通設備が交通信号機である場合、その信号灯器の信号表示に関して、災害に対応する災害制御が迅速に開始され、また、交通設備が、交通情報掲示装置である場合、その掲示内容に関して、災害に対応する災害制御が迅速に開始される。
なお、前記「災害情報」としては、地震が発生すると提供される緊急地震速報、事故が発生すると提供される緊急事故速報の他に、災害発生が予想されると提供される警報情報が含まれる。また、前記「指令の送信間隔よりも短い間隔」としては、例えば、交通信号制御の場合、信号制御の時間的な区切りの最小時間単位の間隔とすることができ、例えば1秒間隔とすることができる。
また、災害に対応する災害制御としては、例えば、歩行者を避難させる等して安全を確保するための安全制御や、避難のための又は災害の沈静化のための交通信号機等の優先制御が含まれる。
【0014】
また、前記交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機が含まれており、前記監視部は、前記災害情報の提供の有無を、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で監視するため、中央装置は、災害情報の提供の有無を高頻度で監視し、災害情報の提供が有ると、迅速に災害制御へと切り替えさせることが可能となる。特に、交通信号機の場合、通常制御による信号灯のサイクルの途中からであっても、災害制御へと替えて実行が開始される。
【0015】
(2)また、前記実行部は、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御を独自で実行するのが好ましい。
この場合、交通設備の実行部は、災害対応用の通知を受信すると、中央装置の存在に関わらず中央装置の機能とは独立して、交通設備に予め設定されている災害制御を独自で実行するので、例えば、災害対応用の通知を送った後に災害発生によって中央装置が故障し、災害対応用の通知を継続して行うことができない状態となっても、交通設備では災害制御を続けて実行することが可能である。
【0016】
)また、前記交通設備には、交通信号機が含まれており、この交通信号機の前記実行部は、灯色を制御する信号制御機であり、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御として、災害発生地点から遠ざかる方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行することができる。
発生する災害としては地震の他に、工場等における爆発事故や沿岸部における津波等があり、このような、ある地点における事故や避難を要する警報の場合は特に、実行部は、災害制御として、災害発生地点(災害発生想定地点を含む。以下同じ)から遠ざかる方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行するのが好ましく、この場合、災害発生地点から遠ざかる方向へ、車両及び歩行者を誘導することが可能となる。
)または、前記交通設備には、交通信号機が含まれており、この交通信号機の前記実行部は、灯色を制御する信号制御機であり、前記災害対応用の通知を受信すると、前記災害制御として、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行してもよい。
この場合、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御が実行されることで、救助や沈静化のための緊急車両を優先して災害発生地点へと向かわせることができる。
【0017】
)また、本発明の中央装置は、交通円滑化のための通常制御及び災害に対応する災害制御を実行する交通設備と通信可能であると共に、外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置であって、前記交通設備に対して制御用の指令を繰り返し送る処理を行う制御部と、前記指令の送信間隔よりも短い間隔で前記災害情報の提供の有無を監視し、提供が有ると判断すると、前記交通設備に対して災害対応用の通知を送る処理を行う監視部とを有しており、前記交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機が含まれており、
前記監視部は、前記災害情報の提供の有無を、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で監視することを特徴とする。
本発明によれば、中央装置が、外部からの災害情報の提供の有無を短い間隔で監視し、提供が有ると判断した場合、災害対応用の通知が交通設備に対して送られることから、この通知を受けた交通設備では、この通知をトリガとして、実行している通常制御が、災害に対応する災害制御へと替えられ、災害制御が迅速に開始される。
【0018】
)本発明の交通設備は、外部から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である中央装置と通信可能であり、かつ、交通円滑化のための通常制御を行う制御機を有し、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機を含む交通設備であって、制御用の指令を前記中央装置が前記制御機に対して繰り返し送る送信間隔よりも短い間隔であって前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期で、前記災害情報の提供の有無を当該中央装置が監視し、提供が有ると判断した場合に当該中央装置が送った災害対応用の通知を、受信する受信部と、前記受信部が前記通知を受信すると、前記通常制御から、予め設定されている災害に対応する災害制御へと替えて、当該災害制御を開始する実行部とを有していることを特徴とする。
本発明によれば、中央装置において、外部から災害情報の提供の有無が短い間隔で監視され、提供が有ると判断された場合、災害対応用の通知が交通設備に対して送られ、この災害対応用の通知を受信した交通設備では、この通知をトリガとして、実行している通常制御を、災害に対応する災害制御へと替え、災害制御を開始することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の交通システム及び中央装置によれば、災害に対する災害制御を交通設備に迅速に開始させることが可能となる。
また、本発明の交通設備によれば、災害に対する災害制御を迅速に開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の交通システムの実施の一形態を示す模式図である。
図2】交通システムのブロック図である。
図3】交通管理方法のフロー図である。
図4】交通システムによる災害制御への移行を説明する説明図である。
図5】爆発事故発生地点の周囲の道路を簡略化した説明図である。
図6】従来の交通システムによる災害制御への移行を説明する説明図である。
図7】従来の交通システムによる災害制御への移行を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔1. 交通システムの全体構成について〕
図1は、本発明の交通システムの実施の一形態を示す模式図である。図2は、この交通システムのブロック図である。本実施形態の交通システムは、交通管制センターが有する中央装置10と、この交通管制センター(中央装置10)が管理する管理エリアに設置されている交通信号機20、交通情報掲示装置30、ビーコン装置40及び路側通信装置50等の交通設備とを備えている。
【0022】
中央装置10は、外部機関の管理装置から送信された情報を取得可能であり、外部機関の管理装置としては、例えば気象庁の管理コンピュータ1である。管理コンピュータ1は、各地に設置された地震計等のセンサ2から信号を受信可能であり、主に震源地に近い位置に設置されたセンサ2の信号に基づいて、地震の発生を即座に検出することができる。地震の発生を検出した管理コンピュータ1は、災害発生に関する災害情報として「緊急地震速報」を送信する。
【0023】
また、管理コンピュータ1は、各地に設置された工場や発電所等の施設からの情報を受信可能であり、この施設において例えば爆発事故が発生した場合、管理コンピュータ1は、事故が発生した旨の事故情報を取得することができる。なお、この事故情報を取得する管理コンピュータ1と、地震を検出する管理コンピュータ1とは別のものであってもよいが、本実施形態では同じとして説明する。事故情報の取得は、通信回線を通じて自動的に行われてもよいが、管理者等により手動で行われてもよい。つまり、手動とは、事故が発生するとその通報を管理者が受けて、管理コンピュータ1に事故情報を入力する場合である。事故情報を取得した管理コンピュータ1は、災害発生に関する災害情報として「緊急事故速報」を送信する。
そして、中央装置10は、管理コンピュータ1から提供される「緊急地震速報」又は「緊急事故速報」を無線又は有線で受信し取得することができる。
【0024】
交通信号機20、交通情報掲示装置30、ビーコン装置40及び路側通信装置50等の交通設備それぞれは、中央装置10と通信回線によって接続されており、中央装置10と通信可能である。または、交通設備それぞれは中央装置10との間で無線を用いて通信可能であってもよい。また、交通設備それぞれは、交通円滑化のための「通常制御」を行うことができる。
【0025】
交通信号機20は、赤青黄の投光ユニットを有する信号灯器21と、この信号灯器21の点灯・消灯の制御を行う信号制御機22とを有しており、信号制御機22は、「通常制御」として、日常において車両及び歩行者の安全を確保するために、設定されたサイクル、スプリット及びオフセット等の信号制御パラメータに従って、信号灯器21の点灯・消灯の制御を行う。通常制御としては、例えば交通量の多い渋滞道路を走行する車両が従うべき信号灯器21の青の時間を、この道路に交差する交差道路を走行する車両が従うべき信号灯器21の青の時間よりも長くする優先制御等である。
【0026】
交通信号機20には、中央装置10からの送信情報に基づいて設定された信号制御パラメータにしたがって信号制御機22が信号制御を行う集中制御方式のものと、信号制御機22に予め設定されている信号制御パラメータを内蔵の時計に基づいて制御する単独制御方式のものとが含まれている。集中制御方式の交通信号機20は、中央装置10からの情報を受信する通信機能(受信部24)を有しており、また、単独制御方式の交通信号機20であっても、後に説明する災害に対応する災害制御のために、中央装置10からの情報を受信する通信機能(受信部24)を有している。
【0027】
また、集中制御方式の交通信号機20には、歩進制御を行うものと、テーブル制御を行うものとが含まれている。歩進制御は、中央装置10が短周期(例えば毎秒)で送信する歩進情報(制御用の指令)に基づいて階梯を進める制御方式であり、テーブル制御は、中央装置10から定期的又は不定期に送信される信号制御指令(制御用の指令)に基づいて信号制御機22が各階梯の時間を決定し、階梯を進める制御方式である。つまり、本実施形態の交通設備には、信号現示の切り替えの最小単位である階梯に従って信号制御が行われる交通信号機20が含まれている。
【0028】
交通情報掲示装置30は、例えば発光ダイオード(LED)を多数有する電光掲示板31と、このLEDの発光を制御する掲示板用の制御機32とを有しており、制御機32は、「通常制御」として、現在の道路の渋滞状況を周囲の車両(ドライバ)等に報知するために電光掲示板31の制御を行い、電光掲示板31のLEDを発光させ、所定の文字又は図形等を表示させる。
交通情報掲示装置30は、中央装置10と通信する通信機能(受信部24)を有しており、中央装置10から渋滞の情報を示す制御用の指令が送信され、制御機32がこの指令を受信すると、この指令に基づいて電光掲示板31の表示を更新(変更)することが可能となる。
【0029】
ビーコン装置40は、電波又は赤外線を発信するビーコンヘッド41と、この発信を制御するビーコン制御機42とを有しており、制御機42は、「通常制御」として、現在の道路の渋滞状況を周囲の車両(ドライバ)等に報知するために渋滞情報を、ビーコンヘッド41からダウンリンク情報に含ませて送信する制御を行う。このダウンリンク情報は、周囲を走行する車両5(図1参照)に搭載した車載装置6が受信可能であり、渋滞情報を受信した車載装置6は、ドライバに対して渋滞情報を音声又は画像によって報知することができる。
ビーコン装置40は、中央装置10と通信する通信機能(受信部24)を有しており、中央装置10から渋滞の情報を示す制御用の指令が送信され、制御機42がこの指令を受信すると、この指令に基づいて渋滞情報を含むダウンリンク情報を周囲に送信することが可能となる。
【0030】
路側通信装置50も、ビーコン装置40と同様の機能を有しており、無線アンテナ51と、この無線アンテナ51を用いた無線制御を行う無線制御機52とを有しており、制御機52は、「通常制御」として、現在の道路の渋滞状況を周囲の車両(ドライバ)等に報知するために渋滞情報を、無線信号に含ませて送信する制御を行う。この情報は、周囲を走行する車両5に搭載した車載装置6が受信可能であり、渋滞情報を受信した車載装置6は、ドライバに対して渋滞情報を音声又は画像によって報知することができる。
路側通信装置50は、中央装置10と通信する通信機能(受信部24)を有しており、中央装置10から渋滞の情報を示す制御用の指令が送信され、制御機52がこの指令を受信すると、この指令に基づいて従来情報を含む情報を周囲に送信することが可能となる。
【0031】
〔2. 中央装置10について〕
中央装置10は、ワークステーション又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータからなる中央処理部11、情報を画像表示する表示部12、情報を入力するインターフェースからなる入力部13、情報を記憶する記憶装置からなる記憶部14、及び、通信インターフェースからなる通信部15を有している。中央処理部11は、各交通設備のための各種情報の収集、処理、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
【0032】
中央処理部11は、中央処理部11として機能させるためのコンピュータプログラムを、コンピュータにインストールして構成されている。後述する中央処理部11の機能部(制御部16、監視部17)は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される。
【0033】
通信部15は、管理コンピュータ1が提供する災害発生に関する災害情報を受信することができ、また、各交通設備に対して制御用の指令を送信することができる。また、中央装置10では、中央装置10の管理者が入力部13を通じて情報を入力することができ、管理者とは異なる第三者から、災害発生に関する災害情報が電話等によって提供された場合、この管理者が入力部13を通じて中央装置10に災害情報を与えてもよい。このように、中央装置10は、外部(管理コンピュータ1又は第三者)から提供される災害発生に関する災害情報を取得可能である。
【0034】
制御部16は、各交通設備に対して制御用の指令を定期的又は不定期で繰り返し送る処理を行う機能を有している。例えば、制御部16は、制御用の指令を含む情報を生成し、この制御用の指令を含む情報を、所定の周期Δt1(図4(A)参照)で、通信部15を通じて送信させる処理を行う。この所定の周期(第1の周期Δ1)は、1分から2.5分までの所定の値(一定値)に設定される。
【0035】
監視部17は、管理コンピュータ1からの災害情報の提供の有無を監視する監視機能と、この監視機能によって「提供が有る」と判断されると交通設備に対して災害対応用の通知を、通信部15を通じて送る処理を行う通信用機能とを有している。
具体的に説明すると、地震及び事故等の災害が発生すると早急に災害情報(緊急地震速報又は緊急事故速報)が提供されるが、災害の発生の予知は困難であるため、この情報はいつ提供されるか中央装置10は予測不能である。そこで、監視部17は、災害情報の提供の有無を、前記制御用の指令の送信間隔(第1の周期Δt1)よりも短い間隔(第2の周期Δt2)で監視を継続する(Δt1>Δt2)。監視部17は、通信部15を通じて第2の周期Δt2毎に受信した受信信号の種類を判別し、受信信号に災害情報(災害情報を識別する符号)が含まれていれば「提供が有る」と判断する。
【0036】
「提供が有る」と判断すると、中央装置10に予め設定されている(記憶部14に記憶されている)災害対応用の通知として「緊急地震速報発令」又は「緊急避難発令」を示す情報を、送信信号に含ませ、通信部15を通じて交通設備へと、前記判断の直後にこの送信信号を送信する。災害発生に関する災害情報として、緊急地震速報の提供があった場合、監視部17は「緊急地震速報発令」を示す情報を送信し、緊急事故速報の提供があった場合、監視部17は「緊急避難発令」を示す送信情報を送信する。
【0037】
そして、この災害対応用の通知、つまり「緊急地震速報発令」又は「緊急避難発令」を示す情報の送信は、間隔をあけて複数回にわたって行ってもよいが、本実施形態では、1つの緊急地震速報(又は緊急事故速報)に対して、1回のみである。なお、この災害対応用の通知を送信した時点では、交通設備それぞれは「通常制御」を実行している状態にある。
【0038】
監視部17が監視を行う周期である第2の周期Δt2について説明する。第2の周期Δt2は、例えば、1秒以下の一定周期とすることができ、この場合、監視部17は、災害情報の提供の有無を、1秒以下の周期で監視する。なお、第2の周期Δt2は、1秒以下であり100ミリ秒以上の値に設定することができる。
また、第2の周期Δt2は、交通信号機20における階梯(ステップ)について時間をカウントする際の最小時間単位以下の周期とすることができ、この場合、監視部17は、災害情報の提供の有無を、前記最小時間単位以下の短い周期で監視する。なお、階梯は、交通信号機20における信号現示の切り替えの最小単位であり、また、前記階梯について時間をカウントする際の最小時間単位とは、信号制御の時間的な区切り、つまり、信号灯色の切り替えを行う時間的な区切りの最小時間単位(例えば1秒)である。
以上より、本実施形態では、第2の周期Δt2を「1秒」とする。この一定の短周期(第2の周期Δt2)の間に受信された信号から、監視部17は災害情報を見つける。なお、本実施形態では、第2の周期Δt2を前記最小時間単位である「1秒」とするが、これよりも長い周期としてもよい。
【0039】
中央装置10が有している記憶部14には、災害発生地点と、その災害により災害対応用の通知を行うべき地域との対応関係が、予め設定されている。なお、管理コンピュータ1から送信される災害情報には、災害の発生地点に関する位置情報が含まれている場合、この災害情報を受信した中央装置10は、災害発生地点を認識することが可能となる。
例えば、記憶部14には、地震発生地点と、その地震により「緊急地震速報発令」を送信すべき地域との対応関係が、予め設定されている。例えば、震源地から半径100kmの範囲が「緊急地震速報」を送信すべき地域として設定されている。また、爆発による事故発生地点と、その事故発生により「緊急避難発令」を送信すべき地域との対応関係が、予め設定されている。例えば、事故発生地点から半径20kmの範囲の地域が「緊急避難発令」を送信すべき地域として設定されている。これにより、災害情報の提供があると、中央装置10は、災害対応用の通知を迅速に送信することが可能となる。なお、後にも説明するが、この災害対応用の通知は、災害が発生したことのみを通知する信号であり、各交通設備が実施する災害対応のための具体的な制御内容の情報については、含まれていない。
【0040】
〔3. 交通設備について〕
以下の説明では、交通設備を主に交通信号機20として説明する。
交通信号機20は、上記のとおり、信号灯器21と信号制御機22とを有しており、信号制御機22は、マイコン等のコンピュータからなる。信号制御機22は、信号制御機22として機能させるためのコンピュータプログラムを、コンピュータにインストールして構成されている。この信号制御機22が有する後述の機能部(実行部23)は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることで発揮される。
また、交通信号機20は、中央装置10から送られる災害対応用の通知を受信するための、通信インターフェースからなる受信部24を備えている。
【0041】
実行部23は、信号灯器21の灯色の制御を行う機能を有している。つまり、サイクル、スプリット及びオフセット等の信号制御パラメータに基づいて信号灯器21の灯色を制御する。
また、中央装置10が送信した災害対応用の通知である「緊急地震速報発令」又は「緊急避難発令」を示す送信情報を受信部24が受信すると、これをトリガとして、実行部23は、通常制御から、災害に対応する災害制御へと替えて、この災害制御を開始する機能を有している。なお、この災害に対応する災害制御は、信号制御機22に予め設定されている制御アルゴリズム(プログラム)に従って実行される制御であり、この制御アルゴリズムは、信号制御機22の記憶部(記憶装置)に記憶されている。
【0042】
したがって、「緊急地震速報発令」又は「緊急避難発令」を示す情報を受信すると、実行部23は、災害に対応する災害制御用の制御アルゴリズムに従って、信号灯器21の制御を開始する。通常制御から災害制御への切り替えは「緊急地震速報発令」又は「緊急避難発令」を示す情報を受信すると直ぐに実行される。つまり、通常制御が途中であってもその通常制御を中断して、災害制御が実行される。
【0043】
実行部23は、上記のとおり、サイクル、スプリット及びオフセット等の信号制御パラメータに基づいて信号灯器21の灯色を制御する機能を有しており、さらに、上記の災害制御として、この信号制御パラメータを変更したり灯色をすべて赤にしたり等の制御を実行する。この信号制御パラメータの変更によって信号灯器21の灯色の変化のタイミング等が変更されたり、強制的に灯色を赤にしたりするが、これは上記制御アルゴリズムに基づくものであり、制御アルゴリズムは、複数種類について、信号制御機22に設定されている。
【0044】
例えば、本実施形態では、中央装置10から送信された災害対応用の通知が「緊急地震速報発令」を示す情報である場合と、「緊急避難発令」を示す情報である場合との、二種類の制御アルゴリズムが設定されている。
「緊急地震速報発令」である場合、実行部23は、災害制御として、一般道路の交通信号機20では、信号制御パラメータを変更することによって、例えば、特定の地域に設置されている車両用の信号灯器21の灯色を全て赤にする制御を実行し、歩行者を優先的に避難させる。また、高速道路、橋梁、トンネル等の歩行者や自転車の灯器が無い交通信号機20では、全て赤にする制御を実行すればよい。
「緊急避難発令」である場合、実行部23は、災害制御として、信号制御パラメータを変更することによって、災害発生地点から遠ざかる方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行したり、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行したりする。なお、この優先制御の具体例については、後にも説明する。
このように、交通信号機20では、災害対応用の通知を受信した後の処理は、災害対応用の通知の種類により異なる。
【0045】
〔4. 交通管理方法について〕
以上の構成を備えた交通システムにおける、中央装置10による災害対応用の通知方法、及び、交通設備による災害制御の実施方法を含む交通管理方法について説明する。
気象庁の管理コンピュータ1は、センサ2を用いて地震発生を監視している。また、管理コンピュータ1は、各地から爆発事故等の発生に関する事故情報を受け付け可能な状態にある。管理コンピュータ1は、地震の発生を検出すると、災害発生に関する災害情報として緊急地震速報を送信し、事故情報を取得すると、災害発生に関する災害情報として緊急事故速報を送信する。
【0046】
〔4.1 提供される災害情報が緊急地震速報である場合〕
図3は、交通管理方法のフロー図である。中央装置10は、管理コンピュータ1からの災害情報の提供の有無を短周期(上記第2の周期Δt2)で監視する。本実施形態では、災害情報の提供の有無を毎秒監視する(ステップSt1)。
中央装置10は、災害情報の提供の有無を監視し、提供が有ると判断すると(ステップSt2の「有る」)、つまり、中央装置10が緊急地震速報を受信すると、通信回線を通じて、通常制御を実行している交通信号機20等の交通設備に対して、災害対応用の通知として「緊急地震速報発令」を示す情報を即座に送信する(ステップSt3)。
上記のとおり、中央装置10には、災害発生地点と、その災害により災害対応用の通知を行うべき地域との対応関係が予め設定されているので、災害地点の情報を取得した中央装置10は、対応する地域に存在している交通信号機20に対して「緊急地震速報発令」を送信する。
【0047】
「緊急地震速報発令」を示す情報を受信した交通設備それぞれは、通常制御を実施しているが、その途中であっても中断して、災害制御を開始する(ステップSt4)。交通設備側にとって「緊急地震速報発令」は災害制御を開始するためのトリガ信号となる。
【0048】
交通設備が交通信号機20である場合の具体例を説明する。図4(A)は、中央装置10の制御部16が、各交通信号機20に対して「制御用の指令」を、2.5分の周期Δt1で定期的に送るタイミングを示している。図4(A)の矢印Kが「制御用の指令」を送信し受信した時刻である。この「制御用の指令」は、通常制御用の指令であり、交通信号機20が「通常制御」を行うために用いられる情報である。
歩進制御を行う第1の交通信号機20では「制御用の指令」は歩進信号であり、この歩進信号に基づいて階梯を進める。また、テーブル制御を行う第1の交通信号機20では「制御用の指令」は信号制御指令であり、この信号制御指令に基づいて各階梯の時間を決定し、階梯を進める。
【0049】
図4(B)は、第1の交通信号機20の信号灯器21の灯色が青・黄・赤と一巡するサイクルSを示している。図4(B)の点aがサイクルSの開始点である。
図4(C)は、第1とは別に設置されている第2の交通信号機20の信号灯器21の灯色が青・黄・赤と一巡するサイクルSを示している。図4(C)の点bがサイクルSの開始点である。第1と第2の交通信号機20のサイクルSの開始は時間的に異なっている。
【0050】
第1と第2の交通信号機20それぞれにおいて「通常制御」を実施している状態では、「制御用の指令」を受信すると(時刻T1)、次のサイクルSの開始(a、b)に合わせて「制御用の指令」を反映する。つまり、図4(B)の第1の交通信号機20では、次のサイクルSの開始(時刻T2)と合わせて、歩進信号に基づいて新たに階梯を進め、図4(C)の第2の交通信号機20では、次のサイクルSの開始(時刻T3)と合わせて、信号制御指令に基づいて新たに各階梯の時間を決定し、階梯を進める。
【0051】
そして、第1と第2の交通信号機20が通常制御を実施している状態で、地震が発生し、管理コンピュータ1が緊急地震速報を送信し、緊急地震速報を監視していた中央装置10がこの速報を受信すると(図3のステップSt1,St2)、直ぐに災害対応用の通知として「緊急地震速報発令」を送信する(時刻T4、ステップSt3)。
第1と第2の交通信号機20それぞれは、この「緊急地震速報発令」を受信すると(時刻T4+α、αは微小な時間)、これをトリガ信号として「通常制御」を中断して「災害制御」を開始する(図3のステップSt4)。つまり、サイクルSの途中であっても「災害制御」が開始される。
【0052】
第1と第2の交通信号機20それぞれの実行部23は、「緊急地震速報発令」を一旦受信すると、中央装置10の存在に関わらず中央装置10の機能とは独立して、災害制御を独自で実行する。そして、この実行部23は、一定時間経過後(例えば5分後)に、自動的に災害制御を中止し通常制御に復帰する(図3のステップSt5)。
【0053】
以上のように、管理コンピュータ1が送信した災害情報が「緊急地震速報」である場合、中央装置10は一刻でも早く「緊急地震速報発令」を送信するのが望ましいことから、中央装置10は、災害情報の提供の有無の監視と、トリガ信号となる「緊急地震速報発令」の送信とに専念した処理が実行され、各交通設備が行う災害制御の具体的内容についての情報は、指令(情報)に含ませないで送信する。これは、例えば、中央装置10は、多数の交通設備(交通信号機20)を管理対象としているので、緊急地震速報を受けてから、これら交通設備各々の制御情報(例えば信号制御パラメータ)を更新させるために、その更新のための制御用の指令情報を生成していると、時間を多く要してしまい、この結果、交通設備において災害制御の開始が遅れてしまうことから、本実施形態では、災害制御の具体的内容については、指令(情報)を送信しない。
【0054】
また、中央装置10による「緊急地震速報発令」の送信は、1つの緊急地震速報に対して、1回のみである。そして、交通設備の実行部23は、この「緊急地震速報発令」を一旦受信すると、災害制御を独自で実行する。つまり、実行部23は、「緊急地震速報発令」を一旦受信すると、中央装置10の存在に関わらず中央装置10の機能とは独立して、災害制御を独自で実行する。このため、例えば、中央装置10が「緊急地震速報発令」を送った後に、発生した災害によって故障し、「緊急地震速報発令」をその後継続して行うことができない状態となっても、交通設備では災害制御を継続して実行することができる。
仮に、交通設備が「緊急地震速報発令」を受信している間について、災害制御を実行する構成である場合は、中央装置10が地震によって故障し「緊急地震速報発令」を送信することができない状態となると、災害制御も停止されてしまうが、本実施形態によれば、災害制御を交通設備独自で実行及び継続することができる。
【0055】
〔4.2 提供される災害情報が緊急事故速報である場合〕
中央装置10は、災害情報の提供の有無を監視し(図3のステップSt1)、提供が有ると(ステップSt2の「有る」)、通信回線を通じて、通常制御を実行している交通信号機20等の交通設備に対して、災害対応用の通知として「緊急避難発令」を示す情報を即座に送信する(ステップSt3)。
そして、この「緊急避難発令」を示す情報を受信した交通設備それぞれは、通常制御を実施しているが、その途中であっても中断して、災害制御を開始する(ステップSt4)。交通設備側にとって「緊急避難発令」は災害制御を開始するためのトリガ信号となる。交通設備(交通信号機20)における災害制御の開始のタイミングは、図3で説明した「緊急地震速報発令」の場合と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0056】
上記のとおり、交通信号機20の信号制御機22は、信号制御パラメータに基づいて信号灯器21の灯色を制御する機能を有しており、また、災害対応用の通知として「緊急避難発令」や緊急避難用の「信号制御情報」を交通信号機20が受信すると、災害制御として、信号制御パラメータを変更する制御や灯色を全て赤にする等の制御等を実行する。本実施形態では、災害制御として、災害発生地点から遠ざかる方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行する。この「緊急避難発令」に基づく災害制御の具体例を以下説明する。
【0057】
図5は、緊急避難原因を爆発事故とした場合の説明図であり、爆発事故発生地点Pの周囲の道路を簡略化した説明図である。C1〜C13は交差点であり、各交差点に交通信号機20が設置されている。これら交通信号機20では、爆発事故の発生前は、通常制御が実施されている。なお、以下では、爆発事故の場合を説明するが、津波等の災害発生が予測される警報等においても、同様の処理が実施される。
【0058】
爆発事故が発生すると、中央装置10はその災害地点の情報を取得する。この情報の取得は、中央装置10の管理者が手動で行ってもよいが、例えば災害発生予想地点が予め中央装置10に設定されており、この設定情報に基づいて取得してもよく、さらには、管理コンピュータ1からの災害情報に基づいて取得してもよい。
上記のとおり、中央装置10には、災害発生地点と、その災害により災害対応用の通知を行うべき地域との対応関係が予め設定されているので、災害地点の情報を取得した中央装置10は、対応する地域に存在している交通信号機20に対して「緊急避難発令」を送信する(図3のステップSt3)。
【0059】
すると、各交通信号機20では、災害制御が開始されるが(ステップSt4)、本実施形態では、事故発生地点Pから逃避する経路に対して優先制御を実行する。
この優先制御は、交通信号機20の信号制御機22が単独で行うことができ、予め設定されている制御アルゴリズムに従って実行される。図5の場合、事故発生地点Pから離れる東西方向それぞれの道路の信号灯器21の灯色を全て、該当方向の青時間を優先した制御とする。そして、この優先制御は、災害対応用の通知を行うべき地域の交通信号機20全てに対して一斉に行われる。
これにより、図5の破線の矢印で示しているように、車両及び歩行者は、事故発生地点Pから安全にかつ迅速に離れることができる。
また、この優先制御は、信号制御機22が単独で行うのとは別に、又は、単独で行うのに併せて、中央装置10が制御内容を送信した情報に基づいて行われてもよい。
【0060】
そして、災害制御の解除、つまり、通常制御への復帰は、自動であってもよいが、本実施形態では、中央装置10の管理者の操作に基づいて、中央装置10から解除の信号を各交通信号機20へ送信することに基づく。これにより、災害が治まったことを確認して通常制御に復帰させることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、災害制御として、事故発生地点Pから逃避する経路に対して各交通信号機20が優先制御を実行する場合を説明したが、これ以外として、交通信号機20の実行部は、災害対応用の通知を受信すると、災害制御として、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御を実行してもよい。
この場合、災害発生地点へ近づく方向に向かう道路を優先とする優先制御が実行されることで、救助や沈静化のために消防車や救急車等の緊急車両を優先して災害発生地点へと向かわせることができる。
【0062】
上記の各実施形態では、交通設備として主に交通信号機20の場合を説明したが、交通情報掲示装置30であってもよく、この場合、通常制御及び災害制御では、文字又は図形による情報を表示する。通常制御では、渋滞緩和のための表示を行うが、災害制御に切り替わると、特に爆発事故等による災害制御の場合、その事故発生地点へ接近することを禁止する情報、事故発生地点から離れる避難方向を示す情報等が表示される。また、文字又は図形による表示は、交通情報提供システム(AMIS)による情報であってもよい。
【0063】
以上、本実施形態に係る交通システムによれば、中央装置10において、災害情報の提供の有無が短い周期で監視され、「提供が有る」と判断された場合、災害対応用の通知を交通信号機20等の交通設備に対して送る処理が行われ、交通設備では、この災害対応用の通知が受信されると、この通知をトリガとして、実行している通常制御が、その途中であっても中断して、予め設定されている災害制御へと替えられ、災害制御が迅速に開始される。すなわち、交通信号機20の場合、その信号灯器21の信号表示に関して、災害に対応する災害制御が迅速に開始される。また、交通設備が交通情報掲示装置30である場合、その掲示内容に関して、災害に対応する災害制御が迅速に開始される。
【0064】
上記の実施形態はすべて例示であり本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での変更が含まれる。
上記の実施形態では、交通設備それぞれは、中央装置10と通信回線によって接続されており、中央装置10と通信可能であると説明したが、この通信回線は、有線、無線を問わない。
また、図5では、災害制御として、東西両方向に向かう道路を優先する優先制御を実施する場合について説明したが、これに限らず、例えば、事故発生地点から放射方向に向かう道路を優先する優先制御を実施してもよい。また、他の災害制御としては、災害発生源へ向かう方向へ車両が進入するのを抑制する制御を行ったり、緊急車両を優先して走行させるための制御を行ったりしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1:管理コンピュータ 10:中央装置 16:制御部 17:監視部 20:交通信号機(交通設備) 23:実行部 24:受信部 30:交通情報掲示装置(交通設備) Δt1:第1の周期 Δt2:第2の周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7