(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明における一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態である照明装置の構成を示す斜視図である。
【0036】
図2を参照すると、照明装置は、色合成光学素子1と、3つの光源3a〜3cを有する。
【0037】
色合成光学素子1は、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム1a〜1dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム1a、1dの接合面と直角プリズム1b、1cの接合面により一様な第1の平面が形成されており、この第1の平面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー2aが形成されている。直角プリズム1a、1bの接合面と直角プリズム1c、1dの接合面により、第1の平面と交差する一様な第2の平面が形成されており、この第2の平面に、誘電体多層膜からなる第2のダイクロイックミラー2bが形成されている。すなわち、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bは互いの膜面が交差するように形成されている。
【0038】
色合成光学素子1の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム1a、1c、1dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。
【0039】
光源3aは赤色の光(S偏光)を出力する。光源3bは緑色の光(P偏光)を出力する。光源3cは緑色および青色の光(S偏光)を出力する。ここで、赤色、緑色、青色は、光の三原色に対応する。
【0040】
光源3aからのS偏光の光(赤)は、直角プリズム1cの入射面から色合成光学素子1内に入射する。光源3bからのP偏光の光(緑)は、直角プリズム1dの入射面から色合成光学素子1内に入射する。光源3cからのS偏光の光(緑+青)は、直角プリズム1aの入射面から色合成光学素子1内に入射する。
【0041】
色合成光学素子1では、各入射面からのS偏光の光(赤)、P偏光の光(緑)およびS偏光の光(緑+青)が第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bによって合成される。
【0042】
図3Aは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図3Bは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0043】
カットオフ波長を透過率、または反射率が50%になる波長と定義する。P偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー2aのカットオフ波長は400nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー2aのカットオフ波長は580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー2aは、波長が580nmより短いS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0044】
第1のダイクロイックミラー2aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色の光に対して、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。また、第1のダイクロイックミラー2aは、赤色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0045】
図4Aは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図4Bは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0046】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は580nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー2bは、波長が580nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0047】
第2のダイクロイックミラー2bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー2bは、青色と緑色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー2bは、赤色の光に対してはP偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー2bは、赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0048】
図5は、光源3a〜3cとして用いられる光源の基本的な構成を示すブロック図である。
図5を参照すると、光源は、基板上に発光部51であるLEDが実装されたLEDモジュール50を有する。基板は、放熱板としての機能を兼ね備えており、不図示のヒートシンクが取り付けられている。さらに、LEDモジュール50に強制冷却装置を設けて、LEDの発光特性が安定するように温度制御を行う。
【0049】
照明装置のスイッチが入れられると、駆動回路53が、発光部(LED)51に駆動電流を供給する。電流が発光部(LED)51に流れると、発光部(LED)51が発光する。発光部(LED)51からの光は、集光光学系52により集光される。この集光光学系52からの光束を色合成光学素子1に入射させる。
【0050】
なお、集光光学系として、
図5ではレンズ形状の光学素子を用いているが、リフレクタのような反射型の光学素子を用いても構わない。また、表示素子を均一に照明するためのインテグレータとして、フライアイレンズやガラスロッドを用いても良い。さらに、偏光成分を効率良く得るために、偏光ビームスプリッタと1/2波長板を用いた偏光変換光学系など、一方の偏光成分を再利用する光学系を用いても良い。もちろん、LEDモジュール50の発光部51が偏光光を発生する光源であっても良く、あるいは発光部51に偏光変換機能を設けて、発光部51から偏光光が発生するように構成してもよい。いずれの形態も、既存の技術を組み合わせて任意に構成可能である。
【0051】
次に、光源3a〜3cのLEDモジュールの具体的な構成について説明する。
【0052】
図6Aは、光源3aに用いられる赤用LEDモジュールの構成を示す模式図である。
図6Aを参照すると、赤用LEDモジュール60は、4つのLEDチップ61a〜61dからなる発光部61を有する。LEDチップ61a〜61dはいずれも、ピーク波長が630nmである赤色LEDよりなり、それらのチップ面積はほぼ同じである。
【0053】
図6Bは、光源3bに用いられる緑用LEDモジュールの構成を示す模式図である。
図6Bを参照すると、緑用LEDモジュール70は、4つのLEDチップ71a〜71dからなる発光部71を有する。LEDチップ71a〜71dはいずれも、ピーク波長が520nmである緑色LEDよりなり、それらのチップ面積はほぼ同じである。
【0054】
図6Cは、光源3cに用いられる青用LEDモジュールの構成を示す模式図である。
図6Cを参照すると、青用LEDモジュール80は、4つのLEDチップ81a〜81dからなる発光部81を有する。LEDチップ81a〜81cはいずれも、ピーク波長が460nmである青色LEDよりなる。LEDチップ81dは、ピーク波長が520nmである緑色LEDよりなる。LEDチップ81a〜81dのチップ面積はほぼ同じである。
【0055】
上記のLEDチップ61a〜61d、71a〜71d、81a〜81dを構成する赤色、緑色および青色のLEDの発光スペクトルは、後述の
図8Bに示したものと同様である。
【0056】
各発光部61、71、81の面積は、基本的に、前述のエテンデューの制約に基づき、表示素子の面積や投射レンズのFナンバーによって決まるが、その面積決定に際しては、製造上の位置合わせマージンや照明光の照度分布の均一性を考慮する。
【0057】
赤用LEDモジュール60、緑用LEDモジュール70および青用LEDモジュール80において、発光部を構成するLEDチップは電流に対する発光特性が異なるので、その発光特性に応じて、
図5示した駆動回路によりLEDチップへの電流量を制御する。
【0058】
また、定格駆動時における各色のLEDの特性は、次のとおりである。赤色LEDの色度は、xy色度座標において(0.700,0.300)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり455lmである。緑色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.195,0.700)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり1000lmである。青色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.140,0.046)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり133lmである。
【0059】
第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対するカットオフ波長を580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献8に開示されているダイクロイックプリズムの分光特性(
図1Aおよび
図1B参照)と大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能となり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0060】
図7は、
図2に示した照明装置を用いて色光が合成される際の光路を説明するための平面図である。
【0061】
色合成光学素子1の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から入射した色光を第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bで合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から合成された色光が出射される。
【0062】
図7において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を示すものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子1の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0063】
光源3aは、赤色のS偏光を出射する。光源3aからの赤色のS偏光は、直角プリズム1cの入射面(
図7においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。
【0064】
第1のダイクロイックミラー2aは、赤色のS偏光に対しては何ら作用しないので、赤色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー2aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー2bは、赤色のS偏光を全て反射する。よって、
図7に示すように、赤色のS偏光の光束は、第2のダイクロイックミラー2bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0065】
光源3bは、緑色のP偏光を出射する。光源3bからの緑色のP偏光は、直角プリズム1dの入射面(
図7においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。
【0066】
第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bは、ともに緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のP偏光は、そのまま第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bを透過する。第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bを透過した緑色のP偏光は、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0067】
光源3cは、青色および緑色のS偏光を出射する。光源3cからの青色および緑色のS偏光は、直角プリズム1aの入射面(
図7においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子1に入射する。
【0068】
第2のダイクロイックミラー2bは、青色と緑色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色と緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー2bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー2aは、青色と緑色のS偏光を全て反射する。よって、青色と緑色のS偏光の光束は、
図7に示すように、第1のダイクロイックミラー2aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。
【0069】
上述のように、本実施形態の照明装置では、直角プリズム1aの入射面から入射した緑色および青色のS偏光と、直角プリズム1cの入射面から入射した赤色のS偏光と、直角プリズム1dの入射面から入射した緑色のP偏光とが、第1のダイクロイックミラー2aおよび第2のダイクロイックミラー2bにて合成されることで、白色光を得ることができる。
【0070】
図8Aは、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図8Bは、第1のダイクロイックミラー2aのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0071】
図9Aは、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図9Bは、第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0072】
図8Aと
図9Aから明らかなように、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光がそれらダイクロイックミラー2a、2bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0073】
また、
図8Bと
図9Bから明らかなように、緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー2a、2bにて合成できる。
【0074】
このように、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は、色合成に使用しない黄色の帯域に設定されているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0075】
一般に、赤色、緑色、青色の各光源としてLEDのような半導体光源を用い、各半導体光源からの赤色、緑色、青色の光を合成してホワイトバランスに優れた白色光を得る場合、赤色、緑色、青色の光の混色比率に対して、青色の光出力が他の色に比べて大きく、緑色の光出力が他の色に比べて小さい。この場合、光出力が相対的に小さい緑色の半導体光源に合わせて、青色と赤色の半導体光源の光出力を抑制させるため、得られる白色光の光出力も小さいものになってしまう。
【0076】
本実施形態の照明装置によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。加えて、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能である。
【0077】
次に、本願発明の照明装置の効果を説明する。
【0078】
例えば、青用LEDモジュールの発光部を4つの青色LEDで構成し、緑用LEDモジュールの発光部を4つの緑色LEDで構成し、赤用LEDモジュールの発光部を4つの赤色LEDで構成する。このような青用、緑用、赤用の各LEDモジュールからの光束を合成した場合の、合成された全光束は、6352lm(=(455+1000+133)×4)である。
【0079】
ところが、上記の合成された白色の色度は(0.299,0.271)となり、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)から青紫色の方向に大きくずれることになる。この原因は、望ましい白色を得るための光量比率に対して、緑色LEDの光出力が相対的に弱く、青色LEDの光出力が相対的に強いからである。
【0080】
ホワイトバランスをとるためには、緑の出射光束を増やす必要がある。定格の範囲内であれば、LEDに流れる電流を増大することで、出射光束を増やすことができる。しかし、緑色LEDからの出射光束を1000lmとした状態において、電流量を増大すると、定格を超えてLEDを駆動することとなり、その場合、電流量の増大に応じた光束の増加は望めない。また、定格を超えてLEDを駆動すると、LEDの寿命が短くなるだけでなく、場合によっては、LEDを破壊してしまう。
【0081】
上記のことから、通常は、緑色LEDの出射光束に合わせて、青色LEDの出射光束を133lmから80lmに抑制するとともに赤色LEDの出射光束を455lmから364lmに抑制している。この場合、全光束は5776lmとなり、明るさが9%低下することになる。
【0082】
一方、本実施形態の照明装置では、
図6Cに示したように、青用LEDモジュール80は、青色を発光する3個のLEDチップ81a〜81cと、緑色を発光する1個のLEDチップ81dとから構成される。すなわち、この青用LEDモジュールでは、上述の4つの青色LEDで構成される青用LEDモジュールと比較して、青色LEDチップの数を1個減らし、その代わりに、緑色を発光するLEDチップが1個配置されている。
【0083】
また、
図6Aに示したように、赤用LEDモジュール60は、赤色を発光する4個のLEDチップ61a〜61dからなり、
図6Bに示したように、緑用LEDモジュール70は、緑色を発光する4個のLEDチップ71a〜71dからなる。したがって、緑色のLEDチップの数は、緑用LEDモジュール70に設けられた4個のLEDチップ71a〜71dと、青用LEDモジュールに用いられた1個のLEDチップ81dとの合計5個となる。また、青色のLEDチップの数は3個となり、赤色のLEDチップの数は4個となる。これら赤色、緑色および青色の各LEDチップを全て定格で駆動した場合に、白色色度は、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)が得られる。しかも、全光束は7219lmとなり、上述の5776lmに対し25%向上できる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、LEDの光出力性能を最大限に発揮させ、混色時の光利用効率が高く、しかもホワイトバランスに優れた白色光を得ることが可能な照明装置が得られる。
【0085】
本実施形態の照明装置は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、光源3aは赤色のS偏光を出射し、光源3bは緑色および赤色のP偏光を出射し、光源3cは緑色および青色のS偏光を出射してもよい。この場合、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面に入射し、赤色のS偏光が直角プリズム1cの入射面に入射し、緑色および赤色のP偏光が直角プリズム1dの入射面に入射する。
【0086】
図11Aは、
図10に示した照明装置の色合成光学素子における、第1のダイクロイックミラー2aのP偏光に対する分光透過特性と緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図11Bは、
図10に示した照明装置の色合成光学素子における、第1のダイクロイックミラー2aのS偏光に対する分光反射特性と、赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0087】
図12Aは、
図10に示した照明装置の色合成光学素子における、第2のダイクロイックミラー2bのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図12Bは、
図10に示した照明装置の色合成光学素子における、第2のダイクロイックミラー2bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は520nmであり、青色のLED光源のピーク波長は460nmである。
【0088】
図11Aおよび
図12Aに示すように、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイックロイックミラー2bは、ともに緑色と赤色のP偏光に対しては何ら作用しない。よって、直角プリズム1dの入射面から入射した緑色と赤色のP偏光は、そのまま各ダイクロイックミラー2a、2bを透過し、その後、直角プリズム1bの出射面から出射される。なお、各ダイクロイックミラー2a、2bの赤色、緑色および青色のS偏光に対する作用は
図7に示したものと同様である。
【0089】
また、緑色および赤色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色や赤色の光がそれらダイクロイックミラー2a、2bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0090】
また、
図11Bと
図12Bから明らかなように、緑色および赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー2a、2bにて合成できる。
【0091】
図10に示した照明装置によれば、緑色の光を異なる2方向から入射させて合成することができるとともに、赤色の光を異なる2方向から入射させて合成することができる。
【0092】
図7または
図10に示した照明装置において、光源3bは、青色のP偏光をさらに出射する構成としてもよい。この場合は、青色の光も、異なる2方向から入射させて合成することができる。
【0093】
本実施形態の照明装置において、赤色、緑色、青色のうちのどの色を2方向から混色するかは、設計に応じて適宜に設定することができる。
【0094】
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態である照明装置の構成を示す斜視図である。
【0095】
図13を参照すると、照明装置は、色合成光学素子11と、3つの光源13a〜13cを有する。
【0096】
色合成光学素子11は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム11a〜11dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム11a〜11dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bが交差するように形成されている。
【0097】
色合成光学素子11の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム11a、11c、11dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。
【0098】
光源13aは赤色および緑色の光(S偏光)を出射する。光源13bは緑色の光(P偏光)を出射する。光源13cは青色の光(S偏光)を出射する。ここで、赤色、緑色、青色は、光の三原色に対応する。
【0099】
光源13aからのS偏光の光(赤+緑)は、直角プリズム11cの入射面から色合成光学素子11内に入射する。光源13bからのP偏光の光(緑)は、直角プリズム11dの入射面から色合成光学素子11内に入射する。光源13cからのS偏光の光(青)は、直角プリズム11aの入射面から色合成光学素子11内に入射する。
【0100】
色合成光学素子11では、各入射面からのS偏光の光(赤+緑)、P偏光の光(緑)およびS偏光の光(青)が第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bによって合成される。
【0101】
第1の実施形態の照明装置では、緑色および青色のS偏光が直角プリズム1aの入射面から色合成光学素子1に入射する。これに対して、本実施形態の照明装置では、緑色のS偏光は、直角プリズム11aの入射面ではなく、該入射面と対向する直角プリズム11cの入射面から、赤色のS偏光とともに色合成光学素子11に入射する。この点で、本実施形態の照明装置は、第1の実施形態の色合成光学素子1と異なる。
【0102】
図14Aは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図14Bは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0103】
P偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー12aのカットオフ波長は400nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー12aのカットオフ波長は490nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が490nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー12aは、波長が490nmより短い波長のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0104】
第1のダイクロイックミラー12aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー12aは、青色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー12aは、青色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。一方、第1のダイクロイックミラー12aは、緑色と赤色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0105】
図15Aは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図15Bは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0106】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー12bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長が490nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー12bは、波長が490nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー12bは、490nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0107】
第2のダイクロイックミラー12bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー12bは、青色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0108】
本実施形態の照明装置は、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色の帯域に設定している点で、特許文献8に開示されているダイクロイックプリズムと異なる。この相違点によれば、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能であり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴点について、以下に詳細に説明する。
【0109】
図16は、
図13に示した照明装置を用いて色光が合成される際の光路を説明するための平面図である。
【0110】
色合成光学素子11の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から入射した色光を第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bで合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から合成された色光が出射される。
【0111】
図16において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を示すものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子11の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0112】
光源13cは、青色のS偏光を出射する。光源13cからの青色のS偏光は、直角プリズム11aの入射面(
図16においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第2のダイクロイックミラー12bは、青色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー12bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー12aは、青色のS偏光を全て反射する。よって、青色のS偏光の光束は、
図16に示すように、第1のダイクロイックミラー12aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0113】
光源13bは、緑色のP偏光を出射する。光源13bからの緑色のP偏光は、直角プリズム11dの入射面(
図16においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイックロイックミラー12bは、ともに緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のP偏光は、そのまま各ダイックロイックミラー12a、12bを透過し、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0114】
光源13aは、赤色および緑色のS偏光を出射する。光源13aからの赤色および緑色のS偏光は、直角プリズム11cの入射面(
図16においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子11に入射する。第1のダイクロイックミラー12aは、緑色と赤色のS偏光に対しては何ら作用しないので、緑色と赤色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー12aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー12bは、緑色と赤色のS偏光を全て反射する。よって、緑色と赤色のS偏光の光束は、
図16に示すように、第
2のダイクロイックミラー12bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム11bの出射面から出射される。
【0115】
このように、本実施形態の照明装置によれば、青色のS偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とが合成されて白色光を得ることができる。
【0116】
図17Aは、第1のダイクロイックミラー12aのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図17Bは、第1のダイクロイックミラー12aのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0117】
図18Aは、第2のダイクロイックミラー12bのP偏光に対する分光透過特性と緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図18Bは、第2のダイクロイックミラー12bのS偏光に対する分光反射特性と赤色、緑色、青色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0118】
図17Aと
図18Aから明らかなように、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光はそれらダイクロイックミラー12a、12bにて反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0119】
図17Bと
図18Bから明らかなように、青色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の青と緑の光を、それらダイクロイックミラー12a、12bにてほとんど損失することなく合成できる。
【0120】
このように、第1のダイクロイックミラー12aと第2のダイクロイックミラー12bのカットオフ波長は、色合成に使用しない青緑(シアン)色の帯域に設定されているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0121】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きな赤色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。加えて、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0122】
本実施形態の照明装置は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図13に示した照明装置において、光源
13bは、青色または赤色のP偏光の光もしくは赤色および青色のP偏光の光をさらに出射する構成としてもよい。
【0123】
本実施形態の照明装置において、赤色、緑色、青色のうちのどの色を2方向から混色するかは、設計に応じて適宜に設定することができる。
【0124】
LEDの製造上の問題により、LEDのピーク波長が±10〜20nm程度ばらつくことが知られている。第1の実施形態では、黄色の波長帯域(560nm以上、600nm以下)にダイクロイックミラーのカット波長を設定しているので、緑色LEDのピーク波長が短波長側にばらついたものを使用するとで、色合成時の損失をより一層低減できる。第2の実施形態では、青緑(シアン)色の波長帯域(480nm以上、500nm以下)にダイクロイックミラーのカット波長を設定しているので、緑色LEDのピーク波長が長波長側にばらついたものと、青色LEDのピーク波長が短波長側にばらついたものを使用することで、色合成時の損失をより一層低減できる。このようにLEDのピーク波長のばらつきに応じて色合成光学素子を選択してもよい。
【0125】
また、LEDの光出力特性も、製造上の問題によるばらつきが大きい。青色LEDの光出力が相対的に大きな場合には、第1の実施形態のように、青色を減らして緑色を加える。逆に、赤色LEDの光出力が相対的に大きな場合には、第2の実施形態のように、赤色を減らして緑色を加える。さらに、P偏光の緑色の光路に、赤色や青色のP偏光を加えることによって、各色の光源の組み合わせや配置を選択することができる。
【0126】
このように、各実施形態の照明装置は、ピーク波長や光出力のばらつきが大きなLEDを活用することができるので有用である。
【0127】
(第3の実施形態)
図19は、本発明の第3の実施形態である照明装置の構成を示す斜視図である。
【0128】
図19を参照すると、照明装置は、色合成光学素子21と、3つの光源23a〜23cと、位相差板24とを有する。
【0129】
色合成光学素子21は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム21a〜21dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム21a〜21dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bが交差するように形成されている。
【0130】
色合成光学素子21の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム21a、21c、21dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。
【0131】
光源23aは赤色の光(S偏光)を出射する。光源23bは緑色の光(P偏光)を出射する。光源23cは緑色および青色の光(S偏光)を出射する。ここで、赤色、緑色、青色は、光の三原色に対応する。
【0132】
光源23aからのS偏光の光(赤)は、直角プリズム21cの入射面から色合成光学素子21内に入射する。光源23bからのP偏光の光(緑)は、直角プリズム21dの入射面から色合成光学素子21内に入射する。光源23cからのS偏光の光(緑+青)は、直角プリズム21aの入射面から色合成光学素子21内に入射する。
【0133】
色合成光学素子21では、各入射面からのS偏光の光(赤)、P偏光の光(緑)およびS偏光の光(緑+青)が第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bによって合成される。
【0134】
位相差板24は、色合成光学素子21の出射面(直角プリズム21
bの面)に対応対向する位置に配置されている。位相差板24が設けられている点において、本実施形態の照明装置は、第1の実施形態の照明装置と異なる。
【0135】
第1の実施形態の照明装置では、青色のS偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とが合成されて白色光を得る。つまり、色によって偏光方向が異なる光束で照明することになる。
【0136】
照明される物体に偏光依存性がある場合、反射する光量が、色によって異なってしまう。これを回避するために、本実施形態の照明装置では、色合成光学素子21の出射面から出射される色合成された光(白色光)の進行方向に位相差板24が配置されている。
【0137】
位相差板24は、1/4波長板であり、例えばポリビニルアルコールフィルムを1軸延伸し、それを保護フィルムで挟んだ構造である。1/4波長板の光学軸を45度方向に設定すると、例えば、青色のS偏光と、緑色のS偏光と、赤色のS偏光は、右回りの円偏光となり、緑色のP偏光は左回りの円偏光になる。これにより、照明光の偏光に方向性がなくなるので、物体で反射する光量が色によって異なることを解消できる。
【0138】
位相差板24は、上記の構造のものに限らない。位相差板24としては、多層フィルムよりなり、白色光の広い波長帯域で1/4波長板として作用するものが好ましい。
【0139】
また、位相差板24は、微小領域で位相差をランダムに変化させて、偏光を解消させる位相差板であってもよい。各微小領域からの照明光はある角度で広がっていくため、ランダムに異なる偏光状態が重ねあわされて、偏光特性の無い照明光が得られる。
【0140】
位相差板24は、フィルムに限定されない。位相差板24として、液晶素子のように位相差を電子的に制御できるものを用いてもよい。微小領域で印加する電圧を変えたり、液晶のセル厚を変えたりして、ランダムな位相差を与えるもの、あるいは、高速に位相差を変化させて、時間的に偏光特性を平均化させるものを、位相差板24として用いてもよい。
【0141】
照明される物体がP偏光とS偏光に対して偏光依存性がある場合には、1/2波長板の光学軸を22.5度方向に設定して、透過する偏光を±45度方向に回転させてもよい。この場合、反射光はP偏光とS偏光に対する反射光の平均値となるため、反射光が色によって異なることを解消できる。
【0142】
(第4の実施形態)
図20は、本発明の第4の実施形態である照明装置の構成を示す斜視図である。
【0143】
図20を参照すると、照明装置は、色合成光学素子21と、3つの光源23a〜23cを有する。
【0144】
色合成光学素子21は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム21a〜21dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム21a〜21dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bが交差するように形成されている。
【0145】
色合成光学素子21の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム21a、21c、21dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。
【0146】
図2に示した第1の実施形態の照明装置では、光源3aは赤色の光(S偏光)を出射し、光源3bは緑色の光(P偏光)を出射し、光源3cは緑色および青色の光(S偏光)を出射する。
【0147】
これに対して、本実施形態の照明装置では、光源23aは赤色の光(S偏光)を出射し、光源23bは青色および緑色の光(P偏光)を出射し、光源23cは緑色の光(S偏光)を出射する。
【0148】
光源23aからのS偏光の光(赤)は、直角プリズム21cの入射面から色合成光学素子21内に入射する。光源23bからのP偏光の光(青+緑)は、直角プリズム21dの入射面から色合成光学素子21内に入射する。光源23cからのS偏光の光(緑)は、直角プリズム21aの入射面から色合成光学素子21内に入射する。すなわち、緑色のS偏光を光源23cから色合成光学素子21に入射させ、青色および緑色のP偏光を光源23bから色合成光学素子21に入射させる点が、第1の実施形態と異なる。
【0149】
色合成光学素子21では、各入射面からのS偏光の光(赤)、P偏光の光(青+緑)およびS偏光の光(緑)が第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bによって合成される。
【0150】
図21Aは、第1のダイクロイックミラー22aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図21Bは、第1のダイクロイックミラー22aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0151】
第1のダイクロイックミラー22aは、P偏光で入射する光のうちの可視域の光を概ね透過し、反射しない。S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー22aのカットオフ波長は、490nmと580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー22aは、波長が490nm以下のS偏光の光および波長が580nm以上のS偏光の光を、概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー22aは、波長が490nmを超え、580nm未満の波長域のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0152】
第1のダイクロイックミラー22aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー22aは、緑色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー22aは、緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。一方、第1のダイクロイックミラー22aは、青色と赤色の光に対してはP偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0153】
図22Aは、第2のダイクロイックミラー22bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図22Bは、第2のダイクロイックミラー22bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0154】
P偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー22bのカットオフ波長は700nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー22bは、波長が700nm以下のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。一方、S偏光で入射する光に対する第2のダイクロイックミラー22bのカットオフ波長は580nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー22bは、波長が580nm以上のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。逆に、第2のダイクロイックミラー22bは、580nmより短い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0155】
第2のダイクロイックミラー22bの特性を色光に対する作用で表現すると、第2のダイクロイックミラー22bは、青色と緑色の光に対しては、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。また、第2のダイクロイックミラー22bは、赤色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー22bは、赤色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0156】
第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色と580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献8に開示されているダイクロイックプリズムの分光特性(
図1Aおよび
図1B参照)と大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能となり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0157】
図23は、
図20に示した照明装置を用いて色が合成される際の光路を説明するための平面図である。前述したように、色合成光学素子21の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から光を入射させて第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bで色光を合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から、第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bで合成された光が出射される。
【0158】
図23において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を説明するためのものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子21の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0159】
光源23cは、緑色のS偏光を出射する。光源23cからの緑色のS偏光は、直角プリズム21aの入射面(
図23においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子21に入射する。第2のダイクロイックミラー22bは、緑色のS偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー22bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー22aは、緑色のS偏光を全て反射する。よって、緑色のS偏光の光束は、
図23に示すように、第1のダイクロイックミラー22aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム21bの出射面から出射される。
【0160】
光源23bは、青色および緑色のP偏光を出射する。光源23bからの青色および緑色のP偏光は、直角プリズム21dの入射面(
図23においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子21に入射する。第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイックロイックミラー22bは、ともに青色および緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、青色および緑色のP偏光は、そのまま各ダイックロイックミラー22a、22bを透過し、その後、直角プリズム21bの出射面から出射される。
【0161】
光源23aは、赤色のS偏光を出射する。光源23aからの赤色のS偏光は、直角プリズム21cの入射面(
図23においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子21に入射する。第1のダイクロイックミラー22aは、赤色のS偏光に対しては何ら作用しないので、赤色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー22aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー22bは、赤色のS偏光を全て反射する。よって、赤色のS偏光の光束は、
図23に示すように、第2のダイクロイックミラー22bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム21bの出射面から出射される。
【0162】
このように、本実施形態の照明装置では、青色のP偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とが合成されることで、白色光を得ることができる。
【0163】
図24Aは、第1のダイクロイックミラー22aのP偏光に対する分光透過特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図24Bは、第1のダイクロイックミラー22aのS偏光に対する分光反射特性と、緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0164】
図25Aは、第2のダイクロイックミラー22bのP偏光に対する分光透過特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図25Bは、第2のダイクロイックミラー22bのS偏光に対する分光反射特性と赤色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0165】
図24Aと
図25Aから明らかなように、青色と緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の青色と緑色の光がそれらダイクロイックミラー22a、22bにて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0166】
また、
図24Bと
図25Bから明らかなように、赤色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤と緑の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー22a、22bにて合成できる。
【0167】
このように、第1のダイクロイックミラー22aと第2のダイクロイックミラー22bのカットオフ波長が、色合成に使用しない青緑(シアン)色と黄色の波長帯域に設定しているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0168】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。また、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0169】
本実施形態の照明装置は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図20に示した照明装置において、光源23bは、赤色のP偏光の光をさらに出射する構成としてもよい。
【0170】
(第5の実施形態)
図26は、本発明の第5の実施形態である照明装置の構成を示す斜視図である。
【0171】
図26を参照すると、照明装置は、色合成光学素子31と、3つの光源33a〜33cを有する。
【0172】
色合成光学素子31は、第1の実施形態と同様、直角を成す面が互いに接合された4つの直角プリズム31a〜31dからなるクロスダイクロイックプリズムである。直角プリズム31a〜31dの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bが交差するように形成されている。
【0173】
色合成光学素子31の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム31a、31c、31dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。
【0174】
図2に示した第1の実施形態の照明装置では、光源3aは赤色の光(S偏光)を出射し、光源3bは緑色の光(P偏光)を出射し、光源3cは緑色および青色の光(S偏光)を出射する。これに対して、本実施形態の照明装置では、光源33aは青色の光(S偏光)を出射し、光源33bは赤色および緑色の光(P偏光)を出射し、光源33cは緑色の光(S偏光)を出射する。
【0175】
光源33aからのS偏光の光(青)は、直角プリズム31cの入射面から色合成光学素子31内に入射する。光源33bからのP偏光の光(赤+緑)は、直角プリズム31dの入射面から色合成光学素子31内に入射する。光源33cからのS偏光の光(緑)は、直角プリズム31aの入射面から色合成光学素子31内に入射する。すなわち、緑色のS偏光を光源33cから色合成光学素子31に入射させ、赤色および緑色のP偏光を光源33bから色合成光学素子31に入射させ、青色のS偏光を光源33aから色合成光学素子31に入射させる点が、第1の実施形態と異なる。
【0176】
色合成光学素子31では、各入射面からのS偏光の光(青)、P偏光の光(赤+緑)およびS偏光の光(緑)が第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bによって合成される。
【0177】
図27Aは、第1のダイクロイックミラー32aのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図27Bは、第1のダイクロイックミラー32aのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0178】
第1のダイクロイックミラー32aは、P偏光で入射する光のうちの可視域の光を概ね透過し、反射しない。S偏光で入射する光に対する第1のダイクロイックミラー32aのカットオフ波長は、490nmと580nmである。この場合、第1のダイクロイックミラー32aは、490nm以下、および580nm以上のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第1のダイクロイックミラー32aは、490nmを超え、580nm未満の波長域のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。
【0179】
第1のダイクロイックミラー32aの特性を色光に対する作用で表現すると、第1のダイクロイックミラー32aは、緑色の光に対しては、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第1のダイクロイックミラー32aは、緑色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。青色と赤色の光に対しては、第1のダイクロイックミラー32aは、P偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。
【0180】
図28Aは、第2のダイクロイックミラー32bのP偏光およびS偏光に対する分光透過特性を示すグラフである。
図28Bは、第2のダイクロイックミラー32bのP偏光およびS偏光に対する分光反射特性を示すグラフである。
【0181】
第2のダイクロイックミラー32bのP偏光で入射する光に対するカットオフ波長は400nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー32bは、波長が400nm以上のP偏光の光を概ね透過し、反射しない。また、第2のダイクロイックミラー32bのS偏光で入射する光に対するカットオフ波長は490nmである。この場合、第2のダイクロイックミラー32bは、波長が490nm以下のS偏光の光を概ね反射し、透過しない。また、第2のダイクロイックミラー32bは、490nmより長い波長のS偏光の光を概ね透過し、反射しない。
【0182】
第2のダイクロイックミラー32bの特性を色光に対する作用で表現すると、赤色と緑色の光に対しては、第2のダイクロイックミラー32bはP偏光とS偏光をともに透過し、何ら作用しない。青色の光に対しては、第2のダイクロイックミラー32bは、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。すなわち、第2のダイクロイックミラー32bは、青色の光に対して偏光ビームスプリッタとしても作用する。
【0183】
第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bのS偏光に対するカットオフ波長を490nmの青緑(シアン)色と580nmの黄色の帯域に設定している点が、特許文献8に開示されているダイクロイックプリズム(
図1Aおよび
図1B参照)とは大きく異なる。この相違点により、良好なホワイトバランスをとるために、不足している色の光をエテンデューの制約内で補うことが可能であり、LED光源の光出力特性を最大限に発揮させることができる。この特徴について、以下に詳細に説明する。
【0184】
図29は、
図26に示した照明装置を用いて色が合成される際の光路を説明するための平面図である。前述したように、色合成光学素子31の4つの側面の内、3つの面が入射面であり、これら入射面から光を入射させて第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bで色光を合成する。残りの1面が出射面であり、この出射面から、第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bで合成された光が出射される。
【0185】
図29において、矢印付きの実線で表記した直線はそれぞれの入射光束の代表的な進行方向を説明するためのものであるが、この矢印付きの実線で表記した直線だけが入射する光線そのものを意味しているものではない。入射する光は、色合成光学素子31の入射面以下の断面積を持った光束であって、矢印付きの実線で表記した直線以外の位置、並びに角度成分を有する光線も含む。
【0186】
光源33cは、緑色のS偏光を出射する。光源33cからの緑色のS偏光は、直角プリズム31aの入射面(
図29においては、図面に向かって上方に位置する面)から色合成光学素子31に入射する。第2のダイクロイックミラー32bは、緑色のS偏光に対しては何ら作用しないので、緑色のS偏光はそのまま第2のダイクロイックミラー32bを透過する。一方、第1のダイクロイックミラー32aは、緑色のS偏光を全て反射する。よって、緑色のS偏光の光束は、
図29に示すように、第1のダイクロイックミラー32aにて90度曲げられ、その後、直角プリズム31bの出射面から出射される。
【0187】
光源33bは、赤色および緑色のP偏光を出射する。光源33bからの赤色および緑色のP偏光は、直角プリズム31dの入射面(
図29においては、図面に向かって左方に位置する面)から色合成光学素子31に入射する。第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイックロイックミラー32bは、ともに赤色および緑色のP偏光に対しては何ら作用しないので、赤色および緑色のP偏光は、そのまま各ダイックロイックミラー32a、32bを透過し、その後、直角プリズム31bの出射面から出射される。
【0188】
光源33aは、青色のS偏光を出射する。光源33aからの青色のS偏光は、直角プリズム31cの入射面(
図29においては、図面に向かって下方に位置する面)から色合成光学素子31に入射する。第1のダイクロイックミラー32aは、青色のS偏光に対しては何ら作用しないので、青色のS偏光はそのまま第1のダイクロイックミラー32aを透過する。一方、第2のダイクロイックミラー32bは、青色のS偏光を全て反射する。よって、青色のS偏光の光束は、
図29に示すように、第2のダイクロイックミラー32bにて90度曲げられ、その後、直角プリズム31bの出射面から出射される。
【0189】
このように、本実施形態の照明装置では、青色のS偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のP偏光とが合成されることで、白色光を得ることができる。
【0190】
図30Aは、第1のダイクロイックミラー32aのP偏光に対する分光透過特性と緑色および赤色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図30Bは、第1のダイクロイックミラー32aのS偏光に対する分光反射特性と青色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0191】
図31Aは、第2のダイクロイックミラー32bのP偏光に対する分光透過特性と赤色および緑色の各LED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。
図31Bは、第2のダイクロイックミラー32bのS偏光に対する分光反射特性と青色および緑色のLED光源の発光スペクトルとの関係を示すグラフである。赤色のLED光源のピーク波長は630nmであり、緑色のLED光源のピーク波長は530nmであり、青色のLED光源のピーク波長は450nmである。
【0192】
図30Aと
図31Aから明らかなように、赤色と緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の青色と緑色の光は、それらダイクロイックミラー32a、32bにて反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0193】
また、
図30Bと
図31Bから明らかなように、青色のS偏光と緑色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の青と緑の光を、ほとんど損失することなく、それらダイクロイックミラー32a、32bにて合成できる。
【0194】
このように、第1のダイクロイックミラー32aと第2のダイクロイックミラー32bのカットオフ波長が、色合成に使用しない青緑(シアン)色と黄色の波長帯域に設定しているので、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成することができる。
【0195】
第1の実施形態と同様に、本実施形態によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい赤色の光量を減らして緑色の光を加える構成となっている。したがって、望ましい混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。また、3色のLEDの光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能になる。
【0196】
本実施形態の照明装置は、緑色の光のみを異なる2方向から合成する構成に限定されるものではない。例えば、
図26に示した照明装置において、光源33bは、青色のP偏光の光をさらに出射する構成としてもよい。
【0197】
(第6の実施形態)
図32は、本発明の第6の実施形態である投射型表示装置の構成を示すブロック図である。
【0198】
図32を参照すると、投射型表示装置は、照明装置100、制御手段110、表示素子120および投射レンズ130を有する。
【0199】
照明装置100は、第1の実施形態の照明装置と同じ構成であり、色合成光学素子1と、3つの光源3a〜3cとから構成される。色合成光学素子1は、4つの直角プリズムの接合面に、誘電体多層膜からなる第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bが交差するように形成されたクロスダイクロイックプリズムである。
【0200】
色合成光学素子1の4つの側面の内、3つの面(直角プリズム1a、1c、1dの各面)から光を入射させ、色を合成する。残りの1つの側面は、合成された光の出射面である。色合成光学素子1の光の入出射面には誘電体多層膜からなる反射防止膜が施されている。
【0201】
光源3aは赤色の光(S偏光)を出射する。光源3bは緑色の光(P偏光)を出射する。光源3cは緑色および青色の光(S偏光)を出射する。ここで、赤色、緑色、青色は、光の三原色に対応する。
【0202】
光源3aからのS偏光の光(赤)は、直角プリズム1cの入射面から色合成光学素子1内に入射する。光源3bからのP偏光の光(緑)は、直角プリズム1dの入射面から色合成光学素子1内に入射する。光源3cからのS偏光の光(青)は、直角プリズム1aの入射面から色合成光学素子1内に入射する。
【0203】
色合成光学素子1では、各入射面からのS偏光の光(赤)、P偏光の光(緑)およびS偏光の光(緑+青)が第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bによって合成され、その合成された光(白色光)が出射面から出射される。
【0204】
色合成光学素子1の出射面から出射された光の進行方向に、表示素子120が配置され、この表示素子120で反射された光の進行方向に、投射レンズ130が配置されている。投射レンズ130は、表示素子120に表示された画像を不図示のスクリーン上に投影する。
【0205】
光源3a〜3cのそれぞれは、
図5に示したように、LEDモジュール50、集光光学系52および駆動回路53から構成される。LEDモジュール50は、基板上に発光部51であるLEDが実装されている。基板は放熱板を兼ねており、不図示のヒートシンクが取り付けられている。さらに、強制冷却装置によりLEDの発光特性が安定するように温度制御されている。
【0206】
制御手段110は、光源3a〜3cおよび表示素子120を制御する。
図33に、この制御手段110の構成を示す。なお、
図33においては、便宜上、制御手段110の他に、照明装置100および表示素子120が示されている。
図33に示す照明装置100は、光源3および色合成光学素子1からなる。光源3は、
図32に示した光源3a〜3cに対応するものであるが、
図33では、1つの光源として簡略化された状態で示されている。
【0207】
図33に示すように、制御手段110は、映像信号処理回路111を備える。映像信号処理回路111は、入力映像信号から各色成分の画像信号を表示素子120の駆動回路122へ順次出力して、表示素子120に色成分毎の画像を表示させるとともに、各色成分の画像表示のタイミングに合わせた同期信号を照明装置100の各光源の駆動回路53に出力して、画像表示がなされている色成分に対応する色の光源の点灯を制御する。
【0208】
映像信号処理回路111からの同期信号を受信した駆動回路53は、LEDモジュール50の発光部であるLEDに電流を供給する。LEDからの光は、集光光学系52で集光され、その集光された光が色合成光学素子1の入射面に入射する。
【0209】
なお、集光光学系52として、
図33ではレンズ形状の光学素子を用いているが、リフレクタのような反射型の光学素子を用いても構わない。また、表示素子120を均一に照明するためのインテグレータとして、フライアイレンズやガラスロッドを用いても良い。色合成光学素子1で利用する偏光成分の光を効率よく得るために、偏光ビームスプリッタと1/2波長板を用いた偏光変換光学系を用いても良い。もちろん、LEDモジュール50の発光部が偏光光を発生する光源であっても良く、あるいは発光部に偏光変換機能を設けて、発光部から偏光光が発生するように構成してもよい。いずれの形態も、既存の技術を組み合わせて任意に構成可能である。
【0210】
再び
図32を参照する。光源3aは、
図6Aに示した赤用LEDモジュール60を備え、光源3bは、
図6Bに示した緑用LEDモジュール70を備え、光源3cは、
図6Cに示した青用LEDモジュール80を備える。
【0211】
赤用LEDモジュール60の発光部は、ピーク波長が630nmである4つのLEDチップ61a〜61dからなる。緑用LEDモジュール70の発光部は、ピーク波長が520nmである4つのLEDチップ71a〜71dからなる。青用LEDモジュール80の発光部は、ピーク波長が460nmである3つのLEDチップ81a〜81cと、ピーク波長が520nmである1つのLEDチップ81dとからなる。赤色、緑色および青色のLEDチップの発光スペクトルは、
図8Bに示したものと同様である。
【0212】
赤用LEDモジュール60、緑用LEDモジュール70および青用LEDモジュール80のそれぞれの発光部の面積は、エテンデューの制約から、表示素子の面積や投射レンズのFナンバーによって決まるが、その発光部の面積の決定には、製造上の位置合わせマージンや照明光の照度分布の均一性等を考慮する。
【0213】
赤用LEDモジュール60、緑用LEDモジュール70および青用LEDモジュール80において、発光部を構成するLEDチップは電流に対する発光特性が異なるので、その発光特性に応じて、
図33に示した駆動回路53が、LEDチップへの電流量を制御する。
【0214】
定格駆動時における各色のLEDの特性は、次のとおりである。赤色LEDの色度は、xy色度座標において(0.700,0.300)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり455lmである。緑色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.195,0.700)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり1000lmである。青色LEDの色度は、xy色度座標上で(0.140,0.046)で与えられ、その出射光束は、1チップあたり133lmである。
【0215】
表示素子120は、例えば、マイクロミラーが画素毎に設けられ、ミラーの動きで光をスイッチするMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの素子である。この素子によれば、フィールドシーケンシャル方式でカラー映像を表示することができる。
【0216】
映像信号処理回路111は、映像の1フレームを時間的に赤、緑、青の各色のフィールドに分解し、駆動回路122を介して表示部121に各フィールドの色の成分の画像を表示させる。映像信号処理回路111は、フィールド画像表示と同期して、照明装置100の駆動回路53に同期信号を出力し、各色の光源を駆動して照明光の色を切り替える。駆動回路
122に供給される信号のパルス幅を変調することにより、中間調を再現することができる。
【0217】
表示されるフィールド画像の色は、赤、緑、青の3つの色に限定されない。これらの色を組み合わせたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびW(ホワイト)のフィールド画像を表示させても良い。この場合、表示されるフィールド画像の色に応じて、光源3a〜3cのうちの複数の光源を同時に点灯する。
【0218】
表示素子120は、マイクロミラーを用いたものに限定されない。表示素子120は、反射型ではなく、各画素にマイクロシャッターを設けた透過型の表示素子であってもよい。もちろん、表示素子120は、MEMSタイプ以外の表示素子であってもよい。ただし、照明光に2つの偏光成分が含まれているため、表示素子120としては、表示動作に偏光依存性が無いものが望ましい。表示素子120の表示動作に偏光依存性がある場合には、偏光変換光学系を用いて一方の偏光成分に揃えるとよい。
【0219】
第1のダイクロイックミラー2aのP偏光とS偏光に対する分光透過特性および分光反射特性は、
図3Aおよび
図3Bに示した通りである。
【0220】
第2のダイクロイックミラー2bのP偏光とS偏光に対する分光透過特性および分光反射特性は、
図4Aおよび
図4Bに示した通りである。
【0221】
以上の構成要素からなる投射型表示装置の動作を、
図32を用いて説明する。
【0222】
光源3aから出射した光(赤用LEDモジュール60から出射した光)は、赤色LEDのスペクトルを有し、S偏光で色合成光学素子1に入射する。赤色LEDのスペクトルを有するS偏光の光は、第1のダイクロイックミラー2aを透過し(
図8B参照)、第2のダイクロイックミラー2bで反射される(
図9B参照)。すなわち、赤色のS偏光の光は、第2のダイクロイックミラー2bにてその光路が90度曲げられ、その後、色合成光学素子1の出射面から出射される。
【0223】
光源3bから出射した光は(緑色LEDモジュール70から出射した光)は、緑色LEDのスペクトルを有し、P偏光で色合成光学素子1に入射する。緑色LEDのスペクトルを有するP偏光の光は、第1のダイクロイックミラー2aを透過し(
図8B参照)、第2のダイクロイックミラー2bも透過する(
図9B参照)。すなわち、緑色LEDのスペクトルを有するP偏光の光は、その光路を曲げられることなく、そのまま色合成光学素子1の出射面から出射される。
【0224】
光源3cから出射した光(青色LEDモジュール80から出射した光)は、青色LEDのスペクトルに加えて緑色LEDのスペクトルを有し、S偏光で色合成光学素子1に入射する。青色LEDのスペクトルと緑色LEDのスペクトルを有するS偏光の光は、第2のダイクロイックミラー2bを透過し(
図9B参照)、第1のダイクロイックミラー2aで反射される(
図8B参照)。すなわち、青色LEDのスペクトルと緑色LEDのスペクトルを有するS偏光の光は、第1のダイクロイックミラー2aにてその光路が90度曲げられ、その後、色合成光学素子1の出射面から出射される。
【0225】
光源3aから色合成光学素子1を介して表示素子120に照射される照明光(赤)は、±15度程度の角度広がりを有している。同様に、光源3bから色合成光学素子1を介して表示素子120に照射される照明光(緑)および光源3cから色合成光学素子1を介して表示素子120に照射される照明光(緑+青)はともに、±15度程度の角度広がりを有している。本実施形態によれば、緑色のP偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光はそれらダイクロイックミラー2a、2bで反射することはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0226】
同様に、青色と緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1のダイクロイックミラー2aと第2のダイクロイックミラー2bのカットオフ波長は十分に離れている。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、青色、緑色および赤色のS偏光の光を、それらダイクロイックミラー2a、2bにより、ほとんど損失することなく合成できる。
【0227】
上述のように、光源3a〜3cからの光は色合成光学素子1に3方向から入射する。色合成光学素子1では、3方向から入射した光は、同一の光軸となるように合成されて出射され、この色合成光学素子1から出射された光で表示素子120が照明される。表示素子120で画像に応じた強度変調された光束は、投射レンズ130に入射する。そして、投射レンズ130によって、表示素子120に表示された画像(映像)が不図示のスクリーン上に投影される。
【0228】
次に、本実施形態の投射型表示装置の効果を説明する。
【0229】
例えば、青用LEDモジュールの発光部を4つの青色LEDで構成し、緑用LEDモジュールの発光部を4つの緑色LEDで構成し、赤用LEDモジュールの発光部を4つの赤色LEDで構成する。このような青用、緑用、赤用の各LEDモジュールからの光束を合成した場合の、合成された全光束は、6352lm(=(455+1000+133)×4)である。
【0230】
ところが、上記の合成された白色の色度は(0.299,0.271)となり、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)から青紫色の方向に大きくずれることになる。この原因は、望ましい白色を得るための光量比率に対して、緑色LEDの光出力が相対的に弱く、青色LEDの光出力が相対的に強いからである。
【0231】
ホワイトバランスをとるためには、緑の出射光束を増やす必要がある。定格の範囲内であれば、LEDに流れる電流を増大することで、出射光束を増やすことができる。しかし、緑色LEDからの出射光束を1000lmとした状態において、電流量を増大すると、定格を超えてLEDを駆動することとなり、その場合、電流量の増大に応じた光束の増加は望めない。また、定格を超えてLEDを駆動すると、LEDの寿命が短くなるだけでなく、場合によっては、LEDを破壊してしまう。
【0232】
上記のことから、通常は、緑色LEDの出射光束に合わせて、青色LEDの出射光束を133lmから80lmに抑制するとともに赤色LEDの出射光束を455lmから364lmに抑制している。この場合、全光束は5776lmとなり、明るさが9%低下することになる。
【0233】
一方、本実施形態の投射型表示装置では、
図6Cに示したように、青用LEDモジュール80は、青色を発光する3個のLEDチップ81a〜81cと、緑色を発光する1個のLEDチップ81dとから構成される。すなわち、この青用LEDモジュールでは、上述の4つの青色LEDで構成される青用LEDモジュールと比較して、青色のLEDチップの数が4個から3個に減り、その代わりに、緑色を発光するLEDチップが1個配置されている。
【0234】
また、本実施形態の投射型表示装置では、
図6Aに示したように、赤用LEDモジュール60は、赤色を発光する4個のLEDチップ61a〜61dからなり、
図6Bに示したように、緑用LEDモジュール70は、緑色を発光する4個のLEDチップ71a〜71dからなる。したがって、緑色のLEDチップの数は、緑用LEDモジュール70に設けられた4個のLEDチップ71a〜71dと、青用LEDモジュール80に用いられた1個の緑色LEDチップ81dとの合計5個となる。また、青色のLEDチップの数は3個となり、赤色のLEDチップの数は4個となる。これら赤色、緑色および青色の各LEDチップを全て定格で駆動した場合に、白色色度として、標準イルミナントD65の白色色度(0.313,0.329)が得られる。しかも、全光束は7219lmとなり、上述の5776lmに対し25%向上できる。
【0235】
以上説明したように、本実施形態によれば、LEDの光出力性能を最大限に発揮させ、混色時の光利用効率が高く、しかもホワイトバランスに優れた白色光を得ることが可能な照明装置を用いて、明るい投射画像を表示できる投射型表示装置が得られる。
【0236】
本実施形態では、色合成光学素子1として第1の実施形態に示したクロスダイクロイックプリズムを用いたが、赤色LEDの光出力特性が青色LEDよりも優れている場合には、第2の実施形態に示したクロスダイクロイックプリズムを用いてもよい。この場合は、緑色を発光する4個のLEDチップが緑用LEDモジュールに実装され、青色を発光する4個のLEDチップが青用LEDモジュールに実装され、赤色を発光する3個のLEDチップと緑色を発光する1個のLEDチップが赤用LEDモジュールに実装される。
【0237】
この他にも、緑用LEDモジュールにおいて、緑色のLEDの数を減らし、赤色や青色のLEDを加えても良い。
【0238】
図6Cに示した青用LEDモジュール80は、3個の青色のLEDチップ81a〜81cと1個の緑色のLEDチップ81dが基板に実装されたものとされているが、この構成に限定されない。チップ面積が1/4である4個の緑色LEDを用い、これらを発光部の四隅など、対称形になるように配置してもよい。これにより、出射光の混色がより良好になる。
【0239】
また、
図6A〜
図6Cに示した各色用のLEDモジュールはいずれも、4個のLEDチップを基板に実装したものであるが、これに限定されない。単一の色光を発生するLEDモジュールに実装されるLEDチップは、面積が4倍の1個のLEDチップを実装しても良い。2色の色光を発生するLEDモジュールに実装されるLEDチップの数は2個以上であればよい。重要なのは、LEDチップの数ではなく、チップ面積である。混色比率との兼ね合いで、LEDモジュールに実装されるLEDチップのチップ面積を設定することが望ましい。面積が小さなLEDチップを用いることで、より細かい混色比率でチップ面積を設定できる。
【0240】
もちろん、青色LEDの光出力特性がさらに高ければ、
図6Cに示した青用LEDモジュールにおいて、2個の青色のLEDチップを2個の緑色のLEDチップで置き換えてもよい。このように、使用するLEDの光出力特性に応じて、LEDモジュールを適宜設計することが望ましい。
【0241】
また、1つの基板に複数のLEDチップを実装するのではなく、1つずつ実装したものを複数個用いて、導光板などの光学的手段を用いて合成しても良い。
【0242】
さらに、絶対光量を増加させるために、背景技術で説明したダイクロイックミラーやホログラムを用いてピーク波長の異なる複数の色光を合成する手段を併用しても良い。
【0243】
以上の説明では簡単のために、各色の表示素子、色合成光学素子、投射レンズに、波長に依存した損失が生じないものとして、各光源から出射する光束の光量の比率を用いて説明した。実際には、色によって透過特性が異なる構成部品もあるので、全白画面を表示したときに、投射レンズから出射する各色の光束の光量比率で、LEDチップの面積比率を設定するのが望ましい。
【0244】
(第7の実施形態)
図34は、本発明の第7の実施形態である投射型表示装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の投射型表示装置は、第6の実施形態の投射型表示装置の構成に位相差板140を加えてものである。位相差板140以外の構成および動作は全て第6の実施形態と同じである。
【0245】
前述したように、第6の実施形態の投射型表示装置では、青色のS偏光と、緑色のP偏光およびS偏光と、赤色のS偏光とを色合成光学素子1で合成し、その色合成光学素子1からの光で表示素子120を照明する。表示素子120に、例えばMEMSタイプのものを用いた場合、投射画像も、色ごとに偏光方向が異なる。
【0246】
第6の実施形態の投射型表示装置を、液晶シャッタメガネを用いて立体表示を行う立体表示装置に適用した場合を考える。この種の立体表示装置では、投射画像の偏光を維持することが可能なスクリーンが用いられる。このため、投射型表示装置からスクリーンに投射された画像を液晶シャッタメガネを介して観察した場合、液晶シャッタメガネに設けられた偏光板によって、透過する光の偏光方向が制限されてしまう。つまり、画像の色が変化してしまう。液晶シャッタメガネに限らず、偏光を制限する手段を用いて投射画像を観察する場合には、同様の問題が生じる。
【0247】
本実施形態の投射型表示装置では、上記の問題を解消するために、色合成光学素子1と表示素子120の間の、色合成光学素子1の出射面と対向する位置に、位相差板140が設けられている。
【0248】
位相差板140は、1/4波長板であり、例えばポリビニルアルコールフィルムを1軸延伸し、保護フィルムで挟んだ構造である。位相差板140の光学軸を45度方向に設定すると、例えば、青色のS偏光と緑色のS偏光と赤色のS偏光は、右回りの円偏光となり、緑色のP偏光は左回りの円偏光になる。これにより、投射光の偏光に方向性がなくなるので、反射する光量が色によって異なることを解消できる。
【0249】
位相差板140は、上記の構造のものに限定されない。位相差板140としては、多層フィルムよりなり、白色光の広い波長帯域で、1/4波長板として作用するものが好ましい。
【0250】
また、位相差板140は、微小領域で位相差をランダムに変化させて、偏光を解消させるような位相差板であってもよい。各微小領域からの照明光はある角度で広がっていくため、ランダムに異なる偏光状態が重ねあわされて、偏光特性の無い照明光が得られる。
【0251】
位相差板140は、フィルムに限定されない。位相差板140として、液晶素子のように位相差を電子的に制御できるものを用いてもよい。また、位相差板140として、微小領域で印加する電圧を変えたり、液晶のセル厚を変えたりして、ランダムな位相差を与えるものを用いてもよい。
【0252】
液晶シャッタメガネの偏光板の偏光軸がP偏光、あるいはS偏光に対して平行な方向である場合には、位相差板140として1/2波長板を用い、その光学軸を22.5度方向に設定して、透過する偏光を±45度方向に回転させてもよい。この場合、液晶シャッタメガネを透過する光は、P偏光とS偏光に対する透過光の平均値となるため、透過光が色によって異なることを解消できる。
【0253】
位相差板140を配置する位置は、色合成光学素子1の出射面と対向する位置に限定されない。位相差板140は、表示素子120と投射レンズ130の間、あるいは投射レンズ130の出射面と対向する位置に配置されてもよい。いずれの場合も、位相差板140を色合成光学素子1の出射面と対向する位置に配置した場合と同様の効果を得ることができる。
【0254】
上述した各実施形態による本発明によれば、以下のような作用効果を奏する。
【0255】
一般に、赤色、緑色、青色の各光源としてLEDのような固体光源を用い、各固体光源からの赤色、緑色、青色の光を合成してホワイトバランスに優れた白色光を得る場合、赤色、緑色、青色の光の混色比率に対して、青色の光出力が他の色に比べて大きく、緑色の光出力が他の色に比べて小さい。この場合、光出力が相対的に小さい緑色の固体光源に合わせて、青色と赤色の固体光源の光出力を抑制させるため、得られる白色光の光出力も小さいものになってしまう。
【0256】
本発明の一態様による照明装置は、
赤色の波長帯域にピーク波長を有する固体光源を含む第1の光源と、
緑色の波長帯域にピーク波長を有する固体光源を含む第2の光源と、
青色の波長帯域にピーク波長を有する固体光源を含む第3の光源と、
上記第2の光源から入射した第1の偏光の色光と、上記第1および第3の光源から入射した上記第1の偏光とは偏光状態が異なる第2の偏光の色光とが合成される色合成光学素子と、を有し、
上記第1乃至第3の光源のいずれか1つは、残りの2つの光源の一方に用いられた固体光源の色の波長帯域である特定の波長帯域にピーク波長を有する、少なくとも一つの固体光源をさらに含む。
【0257】
上記の構成によれば、緑色の光を異なる2方向から合成することができる。しかも、光出力が相対的に大きい青色の光量を減らして、緑色の光を加える構成となっている。したがって、最適な混色比率で三原色を合成でき、ホワイトバランスに優れた白色光が得られる。
【0258】
加えて、3色の固体光源の光出力を抑制することなく最大限に発揮させることが可能である。
【0259】
また、上記の本発明の照明装置において、
上記色合成光学素子は、
出射面と、
第1乃至第3の入射面と、
互いの膜面が交差するように設けられ、入射光をその波長に応じて選択的に反射または透過する第1および第2の膜と、を有し、
上記第1の膜は、第1の偏光の可視光のうち、上記特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、上記第1の偏光とは偏光状態が異なる第2の偏光の可視光のうち、上記特定の波長帯域の光を少なくとも反射し、
上記第2の膜は、上記第1の偏光の可視光のうち、上記特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、上記第2の偏光の可視光のうち、上記特定の波長帯域の光を少なくとも透過し、
上記第1および第2の膜の上記第2の偏光に対するカットオフ波長が、光の三原色である赤色、緑色、青色の波長帯域以外の帯域の範囲内に設定され、
少なくとも、上記第1の入射面から入射した上記第2の偏光の色光と、上記第2の入射面から入射した上記第1の偏光の色光と、上記第3の入射面から入射した上記第2の偏光の色光とが、上記第1および第2の膜を介して上記出射面から出射されるように構成してもよい。
【0260】
この構成によれば、以下のような作用効果を奏する。以下では、前述した特許文献1〜5の技術における問題点も一緒に説明する。
【0261】
一般に、誘電体多層膜よりなるダイクロイックミラーは、光の吸収が小さいという利点があるものの、入射角依存性や偏光依存性がある。垂直入射(入射角が0度)の場合、入射角依存性と偏光依存性は発生しないが、入射角が大きくなるにつれて、シフト量やカットオフ波長の設計値との乖離が大きくなるという特性がある。
【0262】
また、カットオフ特性も急峻ではなく、20nm〜30nm程度の帯域で傾斜を持っているために、この波長帯域での分離・合成効率が低下する。
【0263】
特許文献1に示されるように、ピーク波長が近接したLEDからの光については、カットオフ波長近傍での合成効率が低下する。明るさを得るために半導体チップ面積が大きなLEDを用いた場合には、レンズで平行光束化しても、光軸以外から発光する光は角度を持ってレンズから出射するため、ダイクロイックミラーの入射角依存性によって角度成分ごとに合成光の色が異なってしまう。しかも、LEDからの出射光はランダムな偏光方向であるため、どちらか一方の偏向方向の成分しか合成されない場合がある。
【0264】
このようにダイクロイックミラーを用いて複数の色光を合成する場合には、ピーク波長が離れていないと、合成する際の効率が低下し、明るい合成光が得られない。
【0265】
特許文献2〜5に示されているように、白色光の帯域内の4色、あるいは6色の光を合成する場合も、同様に、明るい光束を得ようとする場合には、平行光束以外の光が発生するため、入射角依存性や偏光依存性による光の合成効率が低下する。しかも、角度成分によって複数の色の合成される比率が異なると、投射画面上で色むらとなって現れる。
【0266】
特に、特許文献2や特許文献4、5のように、2種類の色のLEDからの光が同一方向から供給される場合には、平行光束のままでは、色光が混ざらないので、それぞれの色を均一に混色させるために、角度広がりを持たせなければならい。しかし、逆に角度広がりを持たせると、ダイクロイックミラーの入射角依存性により、他の方向から入射する光と混色する際の損失が生じる。このように、それぞれの色を均一に混色させるために、角度広がりを持たせる必要がある一方で、角度広がりを持たせると、入射角依存性による損失が生じるというトレードオフが生じる。
【0267】
上記の本発明の照明装置における色合成光学素子によれば、例えば、緑色のP偏光に対して、第1の膜(例えばダイクロイックミラー)と第2の膜(例えばダイクロイックミラー)のカットオフ波長が十分に離れた構成を提供することができる。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、P偏光の緑色の光がそれら膜にて反射されることはない。よって、入射角依存性による損失は生じない。
【0268】
また、例えば、緑色のS偏光と赤色のS偏光に対して、第1の膜と第2の膜のカットオフ波長が十分に離れた構成を提供することができる。したがって、カットオフ波長が入射角依存性によりシフトしても、S偏光の赤色と緑色の光を、ほとんど損失することなく、それら膜にて合成できる。
【0269】
したがって、平行光とは異なる角度で入射する光に対しても、効率よく色光を合成するこことができる。
【0270】
以上のように、本発明によれば、LEDの光出力性能を最大限に発揮させ、混色時の光利用効率が高く、しかもホワイトバランスに優れた白色光を得ることが可能な照明装置を提供することができる。
【0271】
また、その照明装置を用いて、明るい投射画像が得られる投射型表示装置を提供することができる。
【0272】
以上説明した各実施形態の照明装置およびそれを用いた投射型表示装置は、本発明の一例であって、その構成および動作は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【0273】
例えば、第1から第3の実施形態の照明装置や第4および第5の実施形態の照明装置と第6および第7の実施形態の投射型表示装置とを適宜に組み合わることができる。
【0274】
また、第1から第7の実施形態において、P偏光とS偏光の関係を反対の関係(P偏光の記載をS偏光の記載とし、S偏光の記載をP偏光の記載とする)としてもよい。
【0275】
さらに、第1および第2のダイクロイックミラーは、誘電体多層膜に限らず、ホログラムなどの波長選択性や偏光選択性のある光学膜でもよい。
【0276】
さらに、第1および第2のダイクロイックミラーの交差角度は90度に限らない。
【0277】
さらに、第1および第2のダイクロイックミラーは、プリズムの形状ではなく、板状のガラス等に形成してもよい。
【0278】
また、第1から第7の実施形態において、LEDに代えて半導体レーザー等の別の固体光源を用いてもよい。
【0279】
さらに、表示素子は、マイクロミラーを用いたものに限定されない。表示素子は、反射型ではなく、各画素にマイクロシャッターを設けた透過型の表示素子であってもよい。表示素子は、デジタルミラーデバイス以外のもの、例えば、液晶ライトバルブであってもよい。
【0280】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成および動作については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者が理解し得る様々な変更を行うことができる。
【0281】
この出願は、2009年9月28日に出願された日本出願特願2009−222671を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。