特許第5768778号(P5768778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768778
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20150806BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B60R21/237
   B60R21/207
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-169430(P2012-169430)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28545(P2014-28545A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2014年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】本田 健作
(72)【発明者】
【氏名】後藤 喜明
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−036870(JP,A)
【文献】 特開2010−116134(JP,A)
【文献】 特開2008−087632(JP,A)
【文献】 特開2011−020502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/237
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートの前後方向に延びる区画部により、互いに上下方向に隣接する上流側チャンバ及び下流側チャンバに区画された膨張部を有するとともに、前記両チャンバを連通させる連通部を少なくとも前記区画部の後側に有し、折り畳まれることにより収納用形態にされるエアバッグと、
略上下方向へ延びる長尺状をなし、かつ一端にガス噴出部を有し、少なくとも前記ガス噴出部が、前記上流側チャンバ内の後部であって、前記下流側チャンバに接近した箇所に位置するように配置されるガス発生器と
を備え、前記乗物用シートの側方から加わる衝撃に応じて前記ガス噴出部から膨張用ガスを噴出させ、前記エアバッグを、折り状態を解消させながら、前記乗物用シートの側方で展開膨張させるようにしたサイドエアバッグ装置であって、
前記収納用形態の前記エアバッグは、非膨張展開状態のエアバッグの前記ガス発生器よりも前側部分を、前方から後方へ向けて折り畳むことにより略上下方向に細長い中間形態にする第1の折りと、前記ガス噴出部と前記区画部との間に折り返し線を設定し、前記中間形態の前記エアバッグにおいて、前記折り返し線を挟んで前記ガス発生器とは反対側の被折り返し部を同折り返し線に沿って折り返す第2の折りとが少なくとも行なわれることにより形成されたものであることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記区画部は、前記収納用形態の前記エアバッグでは略垂直状態となり、前記第2の折りの解消及び前記第1の折りの解消に伴い傾斜が緩やかな状態に変化するものである請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、一対の布部を前記乗物用シートの幅方向に重ね合わせて袋状に結合することにより形成されており、
前記区画部は、前記両布部間に架け渡されたテザーにより構成されている請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記テザーは、前記膨張部の展開膨張前には前記ガス噴出部側へ屈曲させられるものであり、
前記折り返し線は、前記ガス噴出部と屈曲状態の前記テザーにおいて最も前記ガス噴出部に近い箇所との間に設定される請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記乗物用シートは、車両の側部を構成するボディサイド部の車内側において、同車両の前方を向くように配置される車両用シートであり、
前記テザーは、前記エアバッグが展開膨張した状態では、前記乗物用シートに着座した乗員の肩部の側方に位置するものである請求項3又は4に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートの側方から乗物に衝撃が加わった場合に、その乗物用シートに着座している乗員の側方でエアバッグを展開膨張させて、乗員を衝撃から保護するサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のサイドドア等のボディサイド部に対し側突による衝撃が加わった場合に、車両用シートに着座している乗員をその衝撃から保護する装置として、エアバッグ及びガス発生器(インフレータ)を備えたサイドエアバッグ装置が有効である。エアバッグは、一対の布部を車両用シートの幅方向に重ね合わせて袋状に結合することにより形成されており、膨張用ガスにより膨張させられる膨張部を有する。ガス発生器は、略上下方向へ延びる長尺状をなし、かつ上下方向についての一端にガス噴出部を有し、上記膨張部内の後部に配置される。そして、折り畳まれることによりコンパクトな収納用形態にされたエアバッグとガス発生器とが、乗員の側方近傍、例えば、車両用シートのシートバック(背もたれ部)における車外側の収納部に収納される。
【0003】
上記構成のサイドエアバッグ装置では、側突によりボディサイド部に側方から衝撃が加わると、ガス噴出部から膨張用ガスが噴出されて膨張部内に供給される。膨張部は、膨張用ガスにより展開膨張してシートバックを破断し、前方へ飛び出す。エアバッグは、車両用シートに着座している乗員とボディサイド部との間の狭い隙間を通り、その乗員を保護し得る大きさ・形状に展開膨張する。その結果、エアバッグにより、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる側方からの衝撃が緩和される。
【0004】
上記サイドエアバッグ装置の一態様として、膨張部の内部空間を、車両用シートの前後方向に延びる区画部により互いに上下方向に隣接する上流側チャンバ及び下流側チャンバに区画したものが知られている。例えば、特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、図19に示すように、エアバッグ101を構成する一対の布部102間に、区画部としてテザー103が架け渡されている。このテザー103は、エアバッグ101の膨張部104の展開膨張前には下方に屈曲させられる。また、テザー103は、膨張部104の展開膨張時には車幅方向に緊張させられることで、膨張部104の車幅方向の膨張厚みを規制しつつ、膨張部104を上流側チャンバ105と、その上側の下流側チャンバ106とに区画する。
【0005】
そして、上下方向に細長い形状をなし、かつ上端部にガス噴出部107Aを有するガス発生器107は、そのガス噴出部107Aが下流側チャンバ106に接近した箇所に位置するように上流側チャンバ105内に配置されている。
【0006】
さらに、膨張部104内においてテザー103よりも前側及び後側には、上流側チャンバ105と下流側チャンバ106とを連通させる一対の連通部108が設けられており、両チャンバ105,106間での膨張用ガスの流通が可能となっている。
【0007】
そのため、ガス噴出部107Aからの膨張用ガスの噴出初期には、その多くが後側の連通部108を通って下流側チャンバ106に流入し、同下流側チャンバ106を上流側チャンバ105よりも先に展開膨張させ始める。
【0008】
さらに、特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、エアバッグ101の展開膨張前に下方へ屈曲させられた状態のテザー103の近傍に、両布部102を相互に接近させた状態で結合する結合部109が設けられている。この結合部109は、膨張部104が展開膨張したとき、上流側チャンバ105と下流側チャンバ106との内圧差についての調整代を大きくするために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−116134号公報(第2実施形態、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、サイドエアバッグ装置のなかには、上流側チャンバ105を下流側チャンバ106よりも先に展開膨張させたいものもある。この点、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、その構造上、ガス噴出部107Aから噴出された膨張用ガスが、噴出初期には連通部108を経由して下流側チャンバ106へ供給されるため、上記の要求に応えることが難しい。ガス発生器107を上記とは逆向きに配置すれば、下流側チャンバ106に対するよりも先に上流側チャンバ105に膨張用ガスが供給されるようになり、上記の要求に応えることができる。しかし、この構成は、ガス噴出部107Aが上側に位置するようにガス発生器107を配置しなければならないといった、ガス発生器107の配置に制約があるサイドエアバッグ装置には適用できない。
【0011】
こうした現象は、サイドエアバッグ装置が設けられた乗物であれば、車両に限らず共通して起こり得る。
なお、特許文献1に特に記載はないが、ガス噴出部107Aから噴出される膨張用ガスの一部をテザー103に当てて下方へ跳ね返し、上流側チャンバ105に供給される膨張用ガスの量を多くすることで、同上流側チャンバ105を下流側チャンバ106よりも先に展開膨張させることも考えられる。
【0012】
しかし、その場合であっても、次のような理由により、上流側チャンバ105の展開膨張の効率の点で改善の余地がある。
エアバッグ101が、仮に、一般的なエアバッグと同様の手順で収納用形態にされるものであるとすると、まず、非膨張展開状態のエアバッグ101のガス発生器107よりも前側部分101Fを、前方から後方へ向けて折り畳む第1の折りが行なわれる。この第1の折りにより、非膨張展開状態のエアバッグ101は、略上下方向に細長い中間形態にされる。次に、中間形態のエアバッグ101に折り返し線(図示略)が設定される。ここで、ガス噴出部107Aがテザー103に近いこと、結合部109がガス噴出部107Aとテザー103との間に位置すること等から、折り返し線は、テザー103を挟んでガス噴出部107Aとは反対側(上側)に設定される。
【0013】
そして、上記折り返し線を挟んでガス発生器107とは反対側の被折り返し部111を同折り返し線に沿って前下方へ折り返す第2の折りが行なわれる。この折り返しに伴い、被折り返し部111とガス噴出部107Aとの間に、膨張用ガスの入り込むスペースSが生ずる。
【0014】
このように第1の折り及び第2の折りが少なくとも行なわれることで収納用形態にされたエアバッグ101の膨張部104に対し、ガス噴出部107Aから膨張用ガスが噴出されると、その膨張用ガスの圧力が膨張部104の各部に加わる。膨張部104の各部が膨張し、折り畳まれた順とは逆の順、すなわち、第2の折り及び第1の折りの順に、折り状態が解消(展開)される。
【0015】
この解消の際、ガス噴出部107Aから噴出された膨張用ガスの一部が上記スペースSに入り込む。このスペースS内の膨張用ガスは、折り状態の解消の過程で、テザー103によって跳ね返されることなく、後側の連通部108を通って下流側チャンバ106に供給される。その分、テザー103に当たって跳ね返される膨張用ガスの量が少なくなり、上流側チャンバ105へ供給される膨張用ガスの量が少なくなって、同上流側チャンバ105の展開膨張の効率が低下する。
【0016】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ガス噴出部の配置された上流側チャンバを下流側チャンバよりも先に効率よく展開膨張させることのできるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、乗物用シートの前後方向に延びる区画部により、互いに上下方向に隣接する上流側チャンバ及び下流側チャンバに区画された膨張部を有するとともに、前記両チャンバを連通させる連通部を少なくとも前記区画部の後側に有し、折り畳まれることにより収納用形態にされるエアバッグと、略上下方向へ延びる長尺状をなし、かつ一端にガス噴出部を有し、少なくとも前記ガス噴出部が、前記上流側チャンバ内の後部であって、前記下流側チャンバに接近した箇所に位置するように配置されるガス発生器とを備え、前記乗物用シートの側方から加わる衝撃に応じて前記ガス噴出部から膨張用ガスを噴出させ、前記エアバッグを、折り状態を解消させながら、前記乗物用シートの側方で展開膨張させるようにしたサイドエアバッグ装置であって、前記収納用形態の前記エアバッグは、非膨張展開状態のエアバッグの前記ガス発生器よりも前側部分を、前方から後方へ向けて折り畳むことにより略上下方向に細長い中間形態にする第1の折りと、前記ガス噴出部と前記区画部との間に折り返し線を設定し、前記中間形態の前記エアバッグにおいて、前記折り返し線を挟んで前記ガス発生器とは反対側の被折り返し部を同折り返し線に沿って折り返す第2の折りとが少なくとも行なわれることにより形成されたものであることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、乗物に対し、乗物用シートの側方から衝撃が加わると、上流側チャンバ内の後部に配置されたガス噴出部から膨張用ガスが噴出される。この膨張用ガスの圧力が加わることで、膨張部の各部が膨張を開始し、折り状態を解消(展開)しようとする。膨張用ガスの噴出初期には、後に行なわれた第2の折りが、先に行なわれた第1の折りの解消を妨げる。
【0019】
そのため、エアバッグの折り状態の解消に際しては、まず、収納用形態のエアバッグにおいて、被折り返し部が第2の折りによる折り返しの前の状態に戻され始める(被折り返し部が折り返し線を支点として前方へ傾動され始める)ことで、同第2の折りが解消され始める。
【0020】
ここで、上記第2の折りに際しては、上流側チャンバのうちガス噴出部と区画部との間に設定された折り返し線を挟んでガス発生器とは反対側の被折り返し部が、同折り返し線に沿って折り返されている。このことから、折り返し線とガス噴出部との間に生ずるスペースは、特許文献1よりも少ない。そのため、第2の折りの解消に際し、ガス噴出部から噴出された膨張用ガスのうち、上記スペースに入り込む量は、特許文献1に比べ少ない。
【0021】
そして、第2の折りの解消途中からは、第1の折りにより折り畳まれた部分が後方から前方へ向けて戻され始める(展開され始める)ことで、同第1の折りの解消が開始される。
【0022】
上記第2の折り及び第1の折りがともに解消されていく過程で、区画部が、ガス噴出部から噴出された膨張用ガスの進行方向前側に位置するようになる。そのため、一部の膨張用ガスは区画部に当たって跳ね返され、下流側チャンバから上流側チャンバに向かう側へ、流れ方向を変えられる。
【0023】
上記折り解消の過程で、折り返し線とガス噴出部との間のスペースに入り込んだ膨張用ガスが、後側の連通部を通って下流側チャンバに流入しようとする。しかし、上述したように、上記スペースに入り込んでいる膨張用ガスの量が少ないため、連通部から下流側チャンバに流入する膨張用ガスの量は、上記特許文献1よりも少ない。
【0024】
結果として、テザーに当たって跳ね返されて上流側チャンバへ供給される膨張用ガスの量が多くなって、上流側チャンバの展開膨張の効率が向上する。
上記のようにして上流側チャンバがある程度展開膨張して、その内圧が上昇すると、同上流側チャンバ内の膨張用ガスが連通部を通って下流側チャンバ内に流入する。この流入する膨張用ガスにより、下流側チャンバが上流側チャンバに遅れて展開膨張する。
【0025】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記区画部は、前記収納用形態の前記エアバッグでは略垂直状態となり、前記第2の折りの解消及び前記第1の折りの解消に伴い傾斜が緩やかな状態に変化するものであることを要旨とする。
【0026】
上記の構成によれば、ガス噴出部から膨張用ガスが噴出される前には、エアバッグは収納用形態に維持される。収納用形態では、第2の折りにより折り返された被折り返し部が略垂直状態となっている。この折り返し部には区画部が含まれている。そのため、区画部は、折り畳まれた状態ではあるが、略垂直状態となっている。
【0027】
第2の折りの解消に際しては、被折り返し部は、最初は垂直に近い状態となる。そのため、区画部に当たって跳ね返された膨張用ガスは、上流側チャンバ内において、下流側チャンバから上流側チャンバに向かう側(下側又は上側)へ流れ方向を変えられる。この流れ方向を変えられた膨張用ガスにより、上流側チャンバが同方向へ展開膨張する。
【0028】
そして、上記被折り返し部は、第2の折り及び第1の折りの両解消が進むにつれて、前方へ傾動する。この傾動に伴い、区画部の傾斜が緩くなっていく。そのため、区画部に当たって跳ね返された膨張用ガスは、上流側チャンバ内において、下方又は上方から次第に前方へ流れ方向を変えられる。この流れ方向を変えられた膨張用ガスにより、上流側チャンバが、前方へ展開膨張する。このようにして、上流側チャンバの全体が展開膨張させられる。
【0029】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記エアバッグは、一対の布部を前記乗物用シートの幅方向に重ね合わせて袋状に結合することにより形成されており、前記区画部は、前記両布部間に架け渡されたテザーにより構成されていることを要旨とする。
【0030】
上記の構成によれば、エアバッグを構成する一対の布部間に架け渡されたテザーにより、膨張部が、ガス噴出部の配置される上流側チャンバと、配置されない下流側チャンバとに区画される。
【0031】
このテザーは、上流側チャンバ及び下流側チャンバの展開膨張の過程で、ガス噴出部から噴出された膨張用ガスを跳ね返し、同膨張用ガスの流れ方向を変える機能を発揮する。テザーは、乗物用シートの幅方向にも前後方向にも長さを有しているため、より多くの量の膨張用ガスを跳ね返して流れ方向を変えることが可能である。
【0032】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記テザーは、前記膨張部の展開膨張前には前記ガス噴出部側へ屈曲させられるものであり、前記折り返し線は、前記ガス噴出部と屈曲状態の前記テザーにおいて最も前記ガス噴出部に近い箇所との間に設定されることを要旨とする。
【0033】
上記の構成によれば、テザーは、膨張部の展開膨張前にはガス噴出部側へ屈曲させられる。テザーは、乗物用シートの幅方向に重ね合わされた状態(二つ折り状態)となることで、緊張時(展開時)の半分の大きさにされる。
【0034】
ところで、第2の折りが行なわれる対象である中間形態のエアバッグでは、前後方向の厚みが増している。これは、非膨張展開状態のエアバッグのガス発生器よりも前側部分を、前方から後方へ向けて折り畳む第1の折りが行なわれているからである。上記厚みの増加に伴い、中間形態のエアバッグでは剛性が高くなる。そのため、上記中間形態のエアバッグが厚いほど第2の折りがしづらくなる。
【0035】
一方で、テザーが配置された箇所では、エアバッグの厚みがテザーの分だけ厚くなる。
この点、請求項4に記載の発明では、折り返し線が、ガス噴出部と屈曲状態の区画部において最もガス噴出部に近い箇所との間、すなわち、エアバッグにおいてテザーの配置されていない箇所に設定される。そのため、第2の折りは、中間形態のエアバッグの中でも厚みが小さく、剛性の比較的低い箇所で行なわれることとなる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記乗物用シートは、車両の側部を構成するボディサイド部の車内側において、同車両の前方を向くように配置される車両用シートであり、前記テザーは、前記エアバッグが展開膨張した状態では、前記乗物用シートに着座した乗員の肩部の側方に位置するものであることを要旨とする。
【0037】
車両用シートに着座して車両の前方を向いた姿勢の乗員の肩部は、同乗員の上半身の中でも同車両用シートの幅方向外側へ最も多く飛び出しており、ボディサイド部に最も接近している。車両に衝撃が加わる前のボディサイド部と乗員の上半身との間隔は、肩部において最小である。
【0038】
一方、膨張用ガスにより上流側チャンバが展開膨張し、両布部の間隔が拡がると、両布部間に架け渡されたテザーがそれらの布部によって乗物用シートの幅方向に引っ張られる。テザーは緊張状態になると、上流側チャンバの上記幅方向の膨張厚みを規制する。
【0039】
請求項5に記載の発明では、上記のように膨張厚みを規制するテザーが、エアバッグが展開膨張した状態では、乗員の肩部の側方に位置する。従って、膨張部の膨張厚みは、肩部の側方において、同膨張部の他の箇所よりも小さくなる。その結果、エアバッグの膨張部は、肩部とボディサイド部との間の狭い空間においても展開膨張しやすくなる。
【発明の効果】
【0040】
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、ガス噴出部の配置された上流側チャンバを下流側チャンバよりも先に効率よく展開膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明を具体化した一実施形態において、サイドエアバッグ装置が設けられた車両用シートを乗員とともに示す側面図。
図2】一実施形態において、車両用シート、乗員及びボディサイド部の位置関係を示す平断面図。
図3】一実施形態において、車両用シート、乗員及びボディサイド部の位置関係を示す正断面図。
図4】一実施形態において、エアバッグが非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールを示す側面図。
図5】一実施形態において、シートバックの収納部に組み込まれたエアバッグモジュールを示す部分平断面図。
図6図5の状態からエアバッグがその一部を収納部内に残してシートバックから飛び出して展開膨張した状態を示す部分平断面図。
図7図4の非膨張展開状態のエアバッグが車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールを、乗員及び車両用シートとともに示す部分側断面図。
図8】一実施形態において、エアバッグの一対の布部を車両用シートの幅方向に重ね合わせて袋状に結合する前の状態を示す展開図。
図9図4におけるX−X線に沿ったエアバッグの断面構造を拡大して示す部分断面図。
図10】一実施形態を示す図であり、(A)は、エアバッグの展開膨張前におけるテザーの状態を示す部分断面図、(B)はエアバッグの展開膨張時におけるテザーの状態を示す部分断面図。
図11】一実施形態を示す図であり、(A)は、エアバッグに対し折りが行なわれる前のエアバッグモジュールを示す側面図、(B)はエアバッグに対し第1の折りが行なわれる途中の状態を模式的に示す平断面図。
図12図11のエアバッグに対し、第1の折りが行なわれることにより中間形態にされたエアバッグモジュールの側面図。
図13図12の中間形態のエアバッグに対し、第2の折り及び第3の折りが行なわれることにより収納用形態にされたエアバッグモジュールの側面図。
図14】一実施形態において、展開膨張初期のエアバッグを乗員及び車両用シートとともに示す部分側面図。
図15】一実施形態において、展開膨張する途中段階のエアバッグを乗員及び車両用シートとともに示す部分側面図。
図16】同じく、一実施形態において、展開膨張する途中段階のエアバッグを乗員及び車両用シートとともに示す部分側面図。
図17】同じく、一実施形態において、展開膨張する途中段階のエアバッグを乗員及び車両用シートとともに示す部分側面図。
図18】同じく、一実施形態において、展開膨張する途中段階のエアバッグを乗員及び車両用シートとともに示す部分側面図。
図19】従来のサイドエアバッグ装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を、乗物としての車両に適用されるサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1図18を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)についての中央部を基準とし、その中央部に近付く側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とするものとする。
【0043】
また、車両用シートには、標準的な体格を有する乗員(大人)が、標準的な姿勢で着座していることを前提としている。
図1図3に示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側(図2の上側、図3の右側)の近傍には、乗物用シートとして車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材(乗物構成部材)を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
【0044】
車両用シート12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)により傾斜角度を調整されるシートバック(背もたれ)14とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車両10に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0045】
シートバック14は、シートバック本体15と、そのシートバック本体15の幅方向についての両側部に設けられた一対のサイドサポート部16とを備えている。シートバック本体15は後側へ傾斜しており、乗員Pの上半身を後側から支える。両サイドサポート部16は、シートバック本体15から前方へ突出しており、シートクッション13に腰掛けてシートバック本体15に凭れた乗員Pの上半身の幅方向の動きを規制する。
【0046】
次に、シートバック14において、車外側のサイドサポート部16を含む車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図5に示すように、シートバック14内の車外側(図5では下側)部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部17」という)は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。サイドフレーム部17を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド18が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード19が配置されている。なお、シートパッド18は表皮によって被覆されているが、図5ではその表皮の図示が省略されている。後述する図6についても同様である。
【0047】
シートパッド18内において、サイドフレーム部17の車外側近傍には収納部21が設けられている。収納部21の位置は、車両用シート12に着座した乗員Pの斜め後方近傍となる(図2参照)。この収納部21には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。
【0048】
収納部21の車外側かつ前側の角部からは、斜め前車外側に向けてスリット22が延びている。シートパッド18の前側の角部18Cとスリット22とによって挟まれた箇所(図5において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部23を構成している。
【0049】
上記シートバック14に組み込まれるエアバッグモジュールAMは、インフレータアセンブリ30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
【0050】
<インフレータアセンブリ30>
図4及び図7に示すように、インフレータアセンブリ30は、ガス発生器としてのインフレータ31と、そのインフレータ31の外側に装着されたリテーナ32とを備えている。本実施形態では、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略上下方向へ延びる長尺状(略円柱状)をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31は、その長さ方向についての一方の端部(本実施形態では上端部)にガス噴出部31Aを有している。インフレータ31の長さ方向についての他方の端部(本実施形態では下端部)には、同インフレータ31への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0051】
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0052】
一方、リテーナ32は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ31をエアバッグ40と一緒に上記サイドフレーム部17に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略上下方向へ延びる略筒状に形成されている。リテーナ32の上部には窓部33が設けられており、ガス噴出部31Aから噴出された膨張用ガスの多くが、この窓部33を通じてリテーナ32の外部へ噴き出される。
【0053】
リテーナ32には、これを上記サイドフレーム部17に取付けるための係止部材として、複数本のボルト34が固定されている。表現を変えると、複数本のボルト34が、リテーナ32を介してインフレータ31に間接的に固定されている。
【0054】
なお、インフレータアセンブリ30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ40>
エアバッグ40は、車両10の走行中等に側突等により、衝撃が車両用シート12の側方からボディサイド部11に加わったときに、インフレータ31から膨張用ガスの供給を受ける。このエアバッグ40は、自身の一部をシートバック14内に残した状態で同シートバック14から略前方へ向けて展開膨張する(図6参照)。
【0055】
図4は、エアバッグ40が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)のエアバッグモジュールAMを示している。また、図7は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、図4の非膨張展開状態のエアバッグ40が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを、乗員P及び車両用シート12とともに示している。
【0056】
図4図7及び図8に示すように、エアバッグ40は、1枚の布片41(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線42に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ40の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部43(図7参照)といい、車外側に位置するものを布部44(図4参照)というものとする。
【0057】
なお、本実施形態では、折り線42がエアバッグ40の後端部に位置するように布片41が二つ折りされているが、折り線42が他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片41が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ40は、折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ40は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片を、袋状となるように結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ40は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
【0058】
エアバッグ40においては、両布部43,44の外形形状が、折り線42を対称軸として互いに線対称の関係にある。各布部43,44の形状・大きさは、エアバッグ40が車両用シート12及びボディサイド部11間で展開膨張したときに、その車両用シート12に着座している乗員Pの上半身の多くの部分(主として胸部PT及び肩部PS)に対応する領域を占有し得るように設定されている。
【0059】
上記布部43,44としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0060】
両布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部45においてなされている。本実施形態では、周縁結合部45は、両布部43,44の周縁部のうち、後端部(折り線42の近傍部分)を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。この点は、後述する外結合部55,56及び内結合部57についても同様である。
【0061】
上記縫製に関し、図4図7図8図11及び図14図18では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合部分を側方から見た状態を示している(図7における外結合部55等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、布部43,44の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図4における内結合部57等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合の対象となる布部43,44間や布片53,54間における縫糸の状態を示している(図7における周縁結合部45、内結合部57等参照)。すなわち、縫製が3番目の線種で表現されている図は、縫製部分を通る断面に沿った断面構造を示している。
【0062】
図4及び図7に示すように、エアバッグ40において、周縁結合部45によって囲まれた箇所は、膨張用ガスによって乗員Pの上半身(主に胸部PT及び肩部PS)の側方で展開膨張することにより、同上半身の多くの部分を拘束して衝撃から保護するための膨張部60となっている。
【0063】
なお、周縁結合部45は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する外結合部55,56及び内結合部57についても同様である。
【0064】
上記エアバッグ40の後部かつ下端部には内折り部46が設けられている。内折り部46は、エアバッグ40を構成する上記両布部43,44の後下部を他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませることにより形成されている(図9参照)。上記内折り部46により、エアバッグ40には、その後端縁(折り線42)から略前方へ延びる上縁部47と、その上縁部47の前端から斜め前下方へ延びる傾斜縁部48とが形成されている。上縁部47には、インフレータアセンブリ30を挿通させるべく、エアバッグ40の内外を連通させる横長のスリット49が入れられている。
【0065】
また、図8に示すように、車内側の布部43について、上記折り線42の近傍であって上記スリット49の上方となる複数箇所(2箇所)には、上記リテーナ32のボルト34(図7参照)を挿通させるためのボルト孔51がそれぞれあけられている。
【0066】
図8及び図10(A)に示すように、膨張部60内の上部には、区画部としてのテザー52が設けられている。テザー52は、車内側の布片53と車外側の布片54とを備えている。各布片53,54は、上下方向に対するよりも前後方向に長い長方形状に形成されている。車内側の布片53は、その上部において前後方向に延びるように設けられた長円状の外結合部55によって、車内側の布部43に結合されている。また、車外側の布片54は、その上部において前後方向へ延びるように設けられた長円状の外結合部56によって、車外側の布部44に結合されている。さらに、両布片53,54は、それらの下縁部に沿って前後方向に延びるように設けられた内結合部57によって相互に結合されている。
【0067】
このようにして、両布片53,54を有するテザー52は、車内側の布部43と車外側の布部44との間に架け渡されている。このテザー52は、図10(B)に示すように、膨張部60が展開膨張したとき、乗員Pの肩部PSの側方で車両用シート12の幅方向(車幅方向)に緊張させられた状態となり、膨張部60の同方向の厚みを規制する。このとき、外結合部55の最下部と内結合部57との間隔に、外結合部56の最下部と内結合部57との間隔を加えた寸法が、テザー52近傍での膨張部60の厚み(膨張厚み)となる。また、テザー52は、図10(A)に示すように、エアバッグ40の展開膨張前には、下方(ガス噴出部31A側)へ屈曲させられた状態となる。この状態では、テザー52は、重ね合わされる(二つ折り状態にされる)ことで、上記緊張時の半分の大きさになる。
【0068】
図4及び図7に示すように、膨張部60は、テザー52のうち外結合部55,56の各最下部を境として、それよりも下側の上流側チャンバ61と、上側の下流側チャンバ62とに区画されている。
【0069】
さらに、本実施形態のテザー52は、上流側チャンバ61及び下流側チャンバ62の展開膨張の過程で、ガス噴出部31Aから噴出された膨張用ガスを跳ね返し、同膨張用ガスの流れ方向を変える機能も有する。
【0070】
エアバッグ40の膨張部60内であってテザー52の前側及び後側には、上流側チャンバ61と下流側チャンバ62とを連通させる連通部63,64が設けられている。これらの連通部63,64により、上流側チャンバ61と下流側チャンバ62との間での膨張用ガスの流通が可能となっている。
【0071】
そして、インフレータアセンブリ30の大部分は、略上下方向へ延びる姿勢にされて、エアバッグ40内の後端部に収容されている。この状態では、ガス噴出部31Aが、上流側チャンバ61内の後部であって、下流側チャンバ62に接近した箇所に位置している。インフレータアセンブリ30の下部は、スリット49を通り、エアバッグ40の外部に露出している。リテーナ32のボルト34は、対応するボルト孔51(図8参照)に挿通されている。こうした挿通により、インフレータアセンブリ30がエアバッグ40に対し位置決めされた状態で係止されている。
【0072】
ところで、図13に示すように、上記エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ40(図4図7参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部21(図5参照)に対し、収納に適したものとするためである。この収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ40に対し、第1の折り、第2の折り及び第3の折りが行なわれることにより得られる。次に、各折りについて説明する。
【0073】
<第1の折り>
第1の折りは、図11(A)の非膨張展開状態のエアバッグ40においてインフレータアセンブリ30よりも前側部分40Fを、前方から後方へ向けて折り畳む折り態様であり、本実施形態では蛇腹折りによって実現されている。
【0074】
蛇腹折りに際しては、エアバッグ40の上記前側部分40Fにおいて、前後方向へ互いに離間した複数箇所に、上下方向に延びる折り線71がそれぞれ設定される。隣り合う折り線71の間隔は、蛇腹折りにおける折り幅となる。そして、図11(A),(B)に示すように、エアバッグ40が、これらの折り線71に沿って蛇腹状に折り畳まれる。より詳しくは、エアバッグ40は、前方から後方に向けて、一定幅ずつ交互に、折り返す方向を変えながら折り畳まれる。
【0075】
なお、第1の折りとして、上記蛇腹折りに代えてロール折りが行なわれてもよい。ロール折りに際しては、エアバッグ40の上記前側部分40Fに対し、互いに上下方向に延びる複数本の折り線が設定される。上記前側部分40Fが前方から後方に向けて、折り線に沿って順に渦巻き状に折り畳まれる。ロール折りでは、上記蛇腹折りとは異なり、前側部分40Fが同一方向に繰り返し折り畳まれる。
【0076】
さらに、第1の折りとして、上記蛇腹折り及びロール折りの両方が行なわれてもよい。この場合、上記前側部分40Fが前後方向について2つの領域に区分される。前側の領域についてはロール折りが行なわれ、後側の領域では蛇腹折りが行なわれる。蛇腹折り及びロール折りの実施順は特に限定されず、例えば、同時又は略同時に実施されてもよい。
【0077】
上記第1の折りにより、エアバッグ40は図12に示すように、上下方向に細長い中間形態となる。
<第2の折り>
第2の折りは、中間形態のエアバッグ40の上部を、前下方へ折り返す折り態様であり、上記第1の折りの後に行なわれる。この第2の折りの実施に際しては、中間形態のエアバッグ40において、ガス噴出部31Aと、屈曲状態のテザー52において最もガス噴出部31Aに近い箇所(布片53,54の下端縁)との間に、車両用シート12の幅方向に延びる折り返し線72が設定される。中間形態のエアバッグ40において、折り返し線72を挟んでインフレータアセンブリ30とは反対側部分(上側部分)が被折り返し部74とされて、矢印で示すように、折り返し線72に沿って前下方へ折り返される。この第2の折りにより、図13に示すように、被折り返し部74の分、エアバッグ40の上下方向の寸法が小さくなる。
【0078】
ところで、第2の折りが行なわれる対象である中間形態のエアバッグ40は、前後方向に厚みが増している。これは、非膨張展開状態のエアバッグ40の前側部分40Fを、前方から後方へ向けて折り畳む第1の折りが行なわれているからである。上記厚みの増加に伴い、中間形態のエアバッグ40では剛性が高くなる。そのため、上記中間形態のエアバッグ40が厚くなるに従い、第2の折りがしづらくなる。
【0079】
一方で、テザー52が配置された箇所では、エアバッグ40の厚みがテザー52の分だけ厚くなる。
この点、本実施形態では、折り返し線72が、ガス噴出部31Aと屈曲状態のテザー52において最もガス噴出部31Aに近い箇所との間、すなわち、エアバッグ40においてテザー52の配置されていない箇所に設定される。そのため、第2の折りは、中間形態のエアバッグ40の中でも厚みが小さく、剛性の比較的低い箇所で行なわれることとなる。
【0080】
<第3の折り>
第3の折りは、図12に示す中間形態のエアバッグ40の下部を前上方へ折り返す折り態様であり、上記第1の折りの後に行なわれる。第3の折りは、上記第2の折りの前に行なわれてもよいし、後に行なわれてもよい。この第3の折りの実施に際しては、中間形態のエアバッグ40において、インフレータアセンブリ30よりも下側部分に、車両用シート12の幅方向に延びる折り返し線73が設定される。中間形態のエアバッグ40において、折り返し線73よりも下側部分が被折り返し部75とされて、矢印で示すように、折り返し線73に沿って前上方へ折り返される。この第3の折りにより、エアバッグ40は図13に示すように、被折り返し部75の分だけ、上下方向の寸法がさらに小さな収納用形態にされる。
【0081】
このように、エアバッグ40を折り畳んで、収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、エアバッグ40が非膨張展開状態にされたときに比べ、前後方向にも上下方向にも寸法が小さくなっており、狭い収納部21に対しても収納に適したものとなる。
【0082】
その後、上記エアバッグモジュールAMは、結束テープ(図示略)等の保持手段によって収納用形態に保持される。
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、図5に示すように、インフレータアセンブリ30を後側に位置させ、かつエアバッグ40の多くを前側に位置させた状態で、収納部21に配設されている。そして、上述したように、リテーナ32から延びてエアバッグ40(車内側の布部43)に挿通されたボルト34がサイドフレーム部17に挿通され、ナット35によって締付けられている。この締付けにより、インフレータアセンブリ30がエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部17に固定されている。
【0083】
なお、インフレータアセンブリ30は、上述したボルト34及びナット35とは異なる部材によって車両10(サイドフレーム部17)に固定されてもよい。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに衝撃センサ81及び制御装置82を備えている。衝撃センサ81は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11(図2等参照)等に設けられており、同ボディサイド部11に側方から加わる衝撃を検出する。制御装置82は、衝撃センサ81からの検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
【0084】
さらに、車両10には、車両用シート12に着座した乗員Pを拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、各図では、このシートベルト装置の図示が省略されている。
【0085】
上記のようにして、本実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、このサイドエアバッグ装置の作用として、代表的な動作の態様(モード)について説明する。図14図18は、エアバッグ40の形態が、膨張用ガスの供給開始後、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略・簡略化されている。例えば、外結合部56は1つの長円によって表現されている。
【0086】
なお、図14図18は、エアバッグ40についてはその側面を示しているため、同図では、テザー52として実際に機能する部分(布片53,54において屈曲させられたり、緊張させられたりする部分)は、エアバッグ40の外側に現われない。しかし、この部分は、長円状をなす外結合部56のうちガス噴出部31Aに近い側の辺の奥に位置している(図10(B)参照)。すなわち、外結合部56のうちガス噴出部31Aに近い側の辺が、車幅方向について、テザー52として実際に機能する部分に対応している。そのため、図14図18では、外結合部56の上記辺を、テザー52の対応箇所として表現している。
【0087】
このサイドエアバッグ装置では、側突等により車両10(ボディサイド部11)に対し側方から衝撃が加わらないときには、制御装置82からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、インフレータ31から膨張用ガスが膨張部60に供給されない。エアバッグモジュールAMは、図13に示す収納用形態で収納部21に収納され続ける(図5参照)。
【0088】
収納用形態では、エアバッグ40において第2の折りにより折り返された部分(被折り返し部74)が略垂直状態となっている。この被折り返し部74にはテザー52が含まれている。そのため、テザー52は、蛇腹状に折り畳まれた状態ではあるが、全体として略垂直状態となっている。同様に、エアバッグ40において第3の折りにより折り返された部分(被折り返し部75)が略垂直状態となっている。
【0089】
これに対し、車両10の走行中に、側突等により車両10(ボディサイド部11)に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ81によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置82からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ31では、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスを発生する。この膨張用ガスは、上流側チャンバ61内の後部であって下流側チャンバ62に接近した箇所に配置されたガス噴出部31Aから噴出される。
【0090】
この膨張用ガスの圧力が加わることで、膨張部60の各部が膨張を開始し、折り状態を解消(展開)しようとする。膨張用ガスの噴出初期には、後に行なわれた第2の折り及び第3の折りが、先に行なわれた第1の折りの解消を妨げる。そのため、エアバッグ40の折り状態の解消に際しては、まず、収納用形態のエアバッグ40において、第2の折りによる被折り返し部74が戻され始める(折り返し線72を支点として前上方へ傾動され始める)ことで、同第2の折りの解消が開始される。同様に、収納用形態のエアバッグ40において、第3の折りによる被折り返し部75が戻され始める(折り返し線73を支点として前下方へ傾動され始める)ことで、同第3の折りの解消が開始される。
【0091】
ここで、上記第2の折りに際しては、上流側チャンバ61のうちガス噴出部31Aとテザー52との間に折り返し線72が設定されている。中間形態のエアバッグ40において、折り返し線72を挟んでインフレータアセンブリ30とは反対側の被折り返し部74が同折り返し線72に沿って折り返されている。このことから、折り返し線72とガス噴出部31Aとの間に生ずるスペースS(図11(A)参照)はないか、あったとしても少ない。いずれにしてもスペースSは、特許文献1よりも少ない。そのため、第2の折りの解消に際し、ガス噴出部31Aから噴出された膨張用ガスのうち、上記スペースSに入り込む量は、特許文献1よりも少ない。
【0092】
また、被折り返し部74が折り返し線72を支点として前上方へ傾動されることに伴い、図14図18に示すように、その被折り返し部74に含まれているテザー52の傾斜角度が次第に緩くなっていく。
【0093】
なお、第3の折りの解消についても、上述した第2の折りの解消と同様にして行なわれる。
そして、第2の折り及び第3の折りの解消途中からは、第1の折りにより折り畳まれた部分が後方から前方へ向けて戻され始める(展開され始める)ことで、同第1の折りの解消が開始される。この解消の過程で、折り返し線72とガス噴出部31Aとの間のスペースSに入り込んだ膨張用ガスGが、後側の連通部64を通って下流側チャンバ62に流入する。しかし、上述したように、上記スペースSに入り込んでいる膨張用ガスGの量が少ないため、上記のように後側の連通部64から下流側チャンバ62に流入する膨張用ガスGの量は、上記特許文献1よりも少ない。
【0094】
上記第2の折り及び第3の折りと、第1の折りとがそれぞれ解消されていく過程で、図14に示すようにテザー52が、ガス噴出部31Aから噴出された膨張用ガスGの進行方向前側に位置するようになる。テザー52は、車両用シート12の幅方向にも前後方向にも長さを有する一対の布片53,54によって形成されている。そのため、多くの膨張用ガスGはテザー52に当たって跳ね返され、下流側チャンバ62から上流側チャンバ61に向かう側へ、流れ方向を変えられる。
【0095】
ここで、テザー52は、最初(エアバッグ40の展開膨張初期)は垂直に近い状態となる(図14参照)。そのため、テザー52に当たって跳ね返された膨張用ガスGは、上流側チャンバ61内において、インフレータ31の長さ方向(上下方向)についてガス噴出部31Aの設けられていない側(下側)へ流れ方向を変えられる。この流れ方向を変えられた膨張用ガスGにより、上流側チャンバ61が同方向(略下方)へ展開膨張する。
【0096】
そして、上記被折り返し部74は、第2の折り及び第3の折りの解消と、第1の折りの解消とがそれぞれ進むにつれて、前上方へ傾動する。この傾動に伴い、図15図18に示すように、テザー52の傾斜角度が緩くなっていく。そのため、テザー52に当たって跳ね返された膨張用ガスGは、上流側チャンバ61内において、略下方から次第に前方へ流れ方向を変えられる。この流れ方向を変えられた膨張用ガスGにより、上流側チャンバ61が前方へ展開膨張する。
【0097】
上記のようにして上流側チャンバ61がある程度展開膨張して、その内圧が上昇すると、同上流側チャンバ61内の膨張用ガスGが連通部63,64を通って下流側チャンバ62内に流入する。この流入する膨張用ガスGにより、下流側チャンバ62が展開膨張を開始する。
【0098】
また、図10(B)に示すように、膨張用ガスにより上流側チャンバ61が展開膨張し、両布部43,44の間隔が拡がると、両布部43,44間に架け渡されたテザー52がそれらの布部43,44によって車両用シート12の幅方向に引っ張られる。テザー52が緊張状態になると、同テザー52の近傍では上流側チャンバ61の上記幅方向の膨張厚みが規制される。
【0099】
そして、膨張部60(上流側チャンバ61及び下流側チャンバ62)が、折り状態を解消(展開)しながら膨張(展開膨張)していくと、シートバック14のシートパッド18が同膨張部60によって押圧され、破断予定部23(図5参照)において破断される。図6に示すように、エアバッグ40は、自身の一部をシートバック14内に残した状態で同シートバック14の破断箇所から略前方へ向けて展開膨張する。
【0100】
ここで、図3に示すように、車両用シート12に着座した乗員Pの肩部PSは、同乗員Pの上半身の中でも同車両用シート12の幅方向外側(ボディサイド部11側)へ最も多く飛び出しており、ボディサイド部11に最も接近している。車両に衝撃が加わる前のボディサイド部11と乗員Pの上半身との間隔は、肩部PSにおいて最小である。
【0101】
この点、本実施形態では、膨張部60の厚みを規制するテザー52が、エアバッグ40が展開膨張した状態では、乗員Pの肩部PSの側方に位置する。従って、膨張部60の膨張厚みは、肩部PSの側方において、同膨張部60の他の箇所よりも小さくなる。その結果、エアバッグ40の膨張部60は、肩部PSとボディサイド部11との間の狭い空間においても展開膨張しやすくなる。
【0102】
そして、上記のように乗員Pの上半身とボディサイド部11との間で展開膨張した上流側チャンバ61及び下流側チャンバ62により、乗員Pの上半身に伝わる側方からの衝撃が緩和される。
【0103】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)前後方向に延びる区画部により、膨張部60が、互いに上下方向に隣接する上流側チャンバ61及び下流側チャンバ62に区画されたサイドエアバッグ装置において、非膨張展開状態のエアバッグ40に対し、少なくとも第1の折り及び第2の折りを行なうことで、同エアバッグ40を収納用形態にする。第1の折りでは、エアバッグ40のインフレータアセンブリ30よりも前側部分40Fを、前方から後方へ向けて折り畳むことにより、同エアバッグ40を略上下方向に細長い中間形態にする。第2の折りでは、ガス噴出部31Aと区画部との間に折り返し線72を設定する。そして、中間形態のエアバッグ40において、折り返し線72を挟んでインフレータアセンブリ30とは反対側の被折り返し部74を同折り返し線72に沿って前下方へ折り返すようにしている(図11(A)、図12図13)。
【0104】
そのため、区画部によって跳ね返されて上流側チャンバ61側へ流れ方向を変えられる膨張用ガスの量を特許文献1よりも多くすることができる。その結果、上流側チャンバ61を下流側チャンバ62よりも先に、効率よく展開膨張させることができる。
【0105】
(2)区画部を、収納用形態のエアバッグ40では略垂直状態にする。また、区画部を、第2の折りの解消及び第1の折りの解消に伴い傾斜が緩やかな状態に変化させるようにしている(図14図18)。
【0106】
そのため、第2の折り及び第1の折りの解消初期には、跳ね返される多くの膨張用ガスGの流れ方向を下方へ変えて、上流側チャンバ61を下方へ展開膨張させることができる。
【0107】
その後、第2の折り及び第1の折りの両解消が進むにつれて、膨張用ガスGの流れ方向を下方から前方へ変えて、上流側チャンバ61を前方へ展開膨張させることができる。
このようにして、上流側チャンバ61の全体を展開膨張させることができる。
【0108】
(3)一対の布部43,44を車両用シート12の幅方向に重ね合わせて袋状に結合することで形成されたエアバッグ40において、両布部43,44間にテザー52を架け渡すことで、区画部を形成している(図8図10(A))。
【0109】
そのため、ガス噴出部31Aから噴出された膨張用ガスの多くを、車両用シート12の幅方向にも前後方向にも長さを有するテザー52によって跳ね返して、同膨張用ガスの流れ方向を変えることができる。
【0110】
(4)第2の折りの際の折り返し線72を、ガス噴出部31Aと、屈曲状態のテザー52において最もガス噴出部31Aに近い箇所(下端縁)との間に設定している(図11(A)、図12)。
【0111】
そのため、第2の折りを、中間形態のエアバッグ40の中でも厚みが小さく、剛性の比較的低い箇所で行なうことができ、第2の折りをしやすくすることができる。
(5)展開膨張した状態のエアバッグ40において、テザー52を、車両用シート12に着座した乗員Pの肩部PSの側方となる箇所に設けることで、同肩部PSの側方では膨張部60の膨張厚みを他の箇所よりも小さくしている(図7)。
【0112】
そのため、肩部PSとボディサイド部11との間は間隔が狭いが、エアバッグ40を展開膨張しやすくすることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0113】
<区画部について>
・区画部として、テザー52に代えて、両布部43,44を相互に接近させた状態で結合する結合部(シームと呼ばれることもある)が設けられてもよい。
【0114】
<連通部63,64について>
・上流側チャンバ61及び下流側チャンバ62を連通させる連通部63,64は、少なくとも区画部(テザー52)の後側に位置することを条件に、上記実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。この場合、連通部63,64は、一箇所に設けられてもよいし、複数箇所に設けられてもよい。
【0115】
<膨張部60について>
・エアバッグ40は、その略全体が上記実施形態のように膨張部60からなるものであってもよいが、膨張用ガスGが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0116】
・膨張部60は、区画部(テザー52)により、上流側チャンバ61の下側に下流側チャンバ62が隣接するように区画されたものであってもよい。この場合には、インフレータ31として、ガス噴出部31Aを下端に有するものが用いられる。インフレータ31は、ガス噴出部31Aが、上流側チャンバ61内の後部であって、下流側チャンバ62に接近した箇所に位置するように配置される。
【0117】
<エアバッグ40の折りについて>
・エアバッグ40の折りについては、第1の折り及び第2の折りは必須であるが、その他の折りについては変更、追加及び割愛が可能である。例えば、第3の折りについては割愛されてもよい。また、第3の折りでは、中間形態のエアバッグ40においてインフレータアセンブリ30よりも下側部分が後上方へ折り返されたり、あるいは、下方から上方へ向けて、蛇腹折り、ロール折り等により折り畳まれたりしてもよい。
【0118】
<インフレータアセンブリ30について>
・インフレータアセンブリ30は、その全体がエアバッグ40内に収容されてもよい。但し、その場合であっても、ガス噴出部31Aが上流側チャンバ61内の後部であって、下流側チャンバ62に接近した箇所に位置するように、インフレータアセンブリ30が配置される。
【0119】
<エアバッグモジュールAMの収納部21について>
・車両用シート12のシートバック14に代えて、ボディサイド部11に収納部21が設けられ、ここにエアバッグモジュールAMが組み込まれてもよい。
【0120】
<その他>
・乗員Pにおいてエアバッグ40によって保護される部位は、肩部PSから胸部PTにかけての部位に限られない。本発明は、胸部PT、胸部PTから頭部にかけての部位、腰部から頭部にかけての部位等、種々の部位を側突等の衝撃から保護するサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0121】
・本発明は、シートバック14が上記実施形態とは異なる方向、例えば車両の側方を向く姿勢で車両用シート12が配置された車両において、その車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員Pを保護するサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0122】
・本発明のサイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・本発明は、車両に限らず、航空機、船舶等のほかの乗物における乗物用シートに装備されるサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
10…車両、11…ボディサイド部、12…車両用シート(乗物用シート)、31…インフレータ(ガス発生器)、31A…ガス噴出部、40…エアバッグ、40F…前側部分、43,44…布部、52…テザー(区画部)、60…膨張部、61…上流側チャンバ、62…下流側チャンバ、63,64…連通部、72,73…折り返し線、74,75…被折り返し部、G…膨張用ガス、P…乗員、PS…肩部。
図1
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