特許第5768790号(P5768790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768790
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】建物基礎部の防蟻構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/72 20060101AFI20150806BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   E04B1/72
   E04B1/64 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-209445(P2012-209445)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-62435(P2014-62435A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106448(JP,A)
【文献】 特開2006−316537(JP,A)
【文献】 米国特許第04823520(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/72
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物基礎部における土壌面の全体又は一部を、シロアリ侵入防止用のバリア層(10)によって覆うようにした建物基礎部の防蟻構造であって、前記バリア層(10)は、目開き5mmの篩を通過する粒状の徐冷スラグを、層厚が30mm以上となるように敷き詰めてなり、JIS A 1102において規定されている目開き1.18mmの篩に留まり、且つ、目開き4.75mmの篩を通過する徐冷スラグを50重量%以上含有していることを特徴とする建物基礎部の防蟻構造。
【請求項2】
布基礎(1)の立上り部(4)の内側面(4a)によって囲まれた床下の土壌面上に土間コンクリート(2)が施工されて、前記布基礎(1)の立上り部(4)の内側面(4a)と前記土間コンクリート(2)の端面(2a)とが接合された建物基礎部において、前記布基礎(1)の立上り部(4)の内側面(4a)と前記土間コンクリート(2)の端部下面(2b)との間の接合部位(6)下側の隅部に沿って、前記土壌面の一部を覆うように前記バリア層(10)を配設して、前記バリア層(10)は、前記布基礎(1)の立上り部(4)の内側面(4a)に接する垂直面(11)と、前記土間コンクリート(2)の端部下面(2b)に接する水平面(12)と、前記土壌面に接する底面(13)とを備え、前記底面(13)が前記接合部位(6)から遠ざかるように張り出した湾曲面となっている請求項1記載の建物基礎部の防蟻構造。
【請求項3】
前記バリア層(10)の縦断面において、高さ寸法30mm、幅寸法50mmの長方形状の有効領域を含ませるようにした請求項2記載の建物基礎部の防蟻構造。
【請求項4】
前記垂直面(11)の高さ寸法(H)を50mm以上、前記水平面(12)の幅寸法(W)を70mm以上とした請求項2又は3記載の建物基礎部の防蟻構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シロアリの侵入を防止して建物を保護するための建物基礎部の防蟻構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物へのシロアリの侵入を防止するための防蟻処理としては、薬剤を使用する方法が一般的に知られている。具体的には、食害を受け易い建物の木質部分に薬剤を直接散布又は含浸させたり、建物基礎部における土壌面に薬剤を直接散布又は薬剤を含浸させたシート等を敷設している。
【0003】
しかしながら、上記のように薬剤を使用する方法では、薬剤の成分による人体や動植物ならびに周辺環境への影響が懸念される。また、建物の解体等の際には、土壌に薬剤が含有されているため、残土を全て処分しなければならない。さらに、薬剤は時間が経つにつれて防蟻効果が消失するので、定期的に防蟻処理を繰り返す必要があるといった不具合があった。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献1〜5に開示されているように、建物基礎部における土壌面の全体又は一部を、無機物粒子を敷き詰めてなるバリア層や鉄鋼副産物であるスラグを敷き詰めてなるバリア層によって覆うことで、薬剤を使用することなく、防蟻効果を長期間持続させて防蟻処理の再施工を原則不要とした防蟻構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−11962号公報
【特許文献2】特開2001−11963号公報
【特許文献3】特開2006−316537号公報
【特許文献4】特開2008−121200号公報
【特許文献5】特開2010−106448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機物粒子は、敷き詰めた際にシロアリが物理的に通過し得ないように粒径が調整されている。すなわち、無機物粒子の粒径は、粒子間の隙間がシロアリの体の寸法よりも小さく、且つ、粒子自体がシロアリによって排除され得ない程度に大きくなるように、例えば0.5〜5.0mm(好ましくは2.0mm程度)に調整されている。従って、無機物粒子を敷き詰めてなるバリア層を用いる場合、細かな粒径管理が必要となるといった問題があった。
【0007】
また、無機物粒子として石やガラス等を粒状に粉砕したものを使用する場合、粒径が2.0mm程度のもの(中心粒径のもの)を多く含んでいても、シロアリがバリア層を通過してしまうことがあった。この原因としては、バリア層において粒子同士がバラバラで結合しておらず、粒子間に空隙が生じ易くなっているからであると推測される。
【0008】
一方、スラグは、水分の存在下で固まる水硬性を有していて、スラグを敷き詰めてなるバリア層においては、土壌に含まれる水分や散水によってスラグ同士が結合して硬化することから、粒径の小さなスラグが多少含まれていても、シロアリが掘り進み難く、また粒径の大きなスラグが多少含まれていても、これらスラグ間に生じる空隙を粒径の小さなスラグが埋めるため、シロアリがすり抜け難い。従って、スラグを敷き詰めてなるバリア層を用いる場合、細かな粒径管理をしなくても済み、しかも防蟻効果を良好に維持することができる。
【0009】
なお、無機物粒子として水硬性を有するセメント材料(コンクリートやモルタル)を敷き詰めてなるバリア層においては、セメント材料同士が結合して硬化することになるが、セメント材料の硬化は水和反応によるものであって、硬化前に比べて硬化後のバリア層は収縮するため、基礎とバリア層との間の接合部分が肌別れを起こし、シロアリが侵入する空隙を与えてしまう。これに対し、スラグの硬化は炭酸化反応によるものであって、硬化前と硬化後でバリア層自体の体積は変化しない、若しくは、硬化前に比べて硬化後のバリア層は若干膨張するため、上記のような不具合は生じ難くなっている。
【0010】
本発明者らは、このようなスラグを敷き詰めてなるバリア層を用いた防蟻構造の実現にあたって、各種の実験を繰り返すことで、例えば特許文献4に開示されているように、防蟻効果を良好に維持するのに好適なスラグの粒径範囲やその粒径範囲のスラグの含有量を導き出している。すなわち、スラグを敷き詰めてなるバリア層においては、少なくとも粒径が1.18〜4.75mm(実用上は1〜5mm)の範囲内のスラグを70重量%以上含有していれば、防蟻効果を良好に維持することを確認している。しかしながら、このような知見は、スラグの水硬性が十分に発揮されない屋内実験の結果に基づいて主として導き出されたものであって、再検討する余地があった。また、特定の粒径のスラグの含有率を高く維持するということは、余剰スラグの利用用途がなければ、廃棄物が生じるということになり、環境的にも望ましくない。
【0011】
本発明は、スラグを敷き詰めてなるバリア層の構成を見直して、防蟻効果を良好に維持しながらも、スラグの粒径管理が簡単であって、余剰スラグの削減を可能とし、バリア層を容易に施工することができ、スラグの使用量も低減することができる建物基礎部の防蟻構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、建物の床下に近い環境(実使用環境)を再現した屋外実験を重ねて実施していくなかで、スラグを敷き詰めてなるバリア層において、スラグの最大粒径を限定することで、粒径が1.18〜4.75mm(実用上は1〜5mm)の範囲内のスラグの含有量を70重量%以上より引き下げても、防蟻効果を良好に維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の建物基礎部の防蟻構造は、建物基礎部における土壌面の全体又は一部を、シロアリ侵入防止用のバリア層10によって覆うようにしたものであって、前記バリア層10は、目開き5mmの篩を通過する粒状の徐冷スラグを、層厚が30mm以上となるように敷き詰めてなり、JIS A 1102において規定されている目開き1.18mmの篩に留まり、且つ、目開き4.75mmの篩を通過する徐冷スラグを50重量%以上含有していることを特徴とする。
【0014】
具体的に、布基礎1の立上り部4の内側面4aによって囲まれた床下の土壌面上に土間コンクリート2が施工されて、前記布基礎1の立上り部4の内側面4aと前記土間コンクリート2の端面2aとが接合された建物基礎部において、前記布基礎1の立上り部4の内側面4aと前記土間コンクリート2の端部下面2bとの間の接合部位下側の隅部に沿って、前記土壌面の一部を覆うように前記バリア層10を配設して、前記バリア層10は、前記布基礎1の立上り部4の内側面4aに接する垂直面11と、前記土間コンクリート2の端部下面2bに接する水平面12と、前記土壌面に接する底面13とを備え、前記底面13が前記接合部位6から遠ざかるように張り出した湾曲面となっている。そして、前記バリア層10の縦断面において、高さ寸法30mm、幅寸法50mmの長方形状の有効領域を含ませるようにしている。また、前記垂直面11の高さ寸法Hを50mm以上、前記水平面12の幅寸法Wを70mm以上としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建物基礎部の防蟻構造においては、粒状の徐冷スラグを敷き詰めてなるバリア層を用いているので、薬剤を使用することなく、鉄鋼副産物の有効利用を図りながら、防蟻効果を長期間持続させて防蟻処理の再施工を原則不要とすることができる。
【0016】
しかも、バリア層の構成(徐冷スラグの最大粒径、好適粒径範囲の徐冷スラグの含有量、バリア層の形状や大きさ等)を従来のものから見直すことで、防蟻効果を良好に維持しながらも、スラグの粒径管理が簡単であって、余剰スラグの削減もできる上、バリア層を容易に施工することができ、スラグの使用量も低減することができる実使用環境により適した防蟻構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る建物基礎部の防蟻構造の縦断面図である。
図2】同じくその一部破断平面図である。
図3】同じくそのバリア層部分を拡大して示す縦断面図である。
図4】各種のバリア層を示す縦断面図である。
図5】防蟻構造の施工手順を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る建物基礎部は、図1及び図2に示すように、布基礎1と、この布基礎1によって囲まれた床下の土間部分に配された土間コンクリート2とを備えている。
【0019】
布基礎1は、フーチング部3と、このフーチング部3の上面略中央から立ち上がった立上り部4とから断面逆T字状に形成され、フーチング部3及び立上り部4の下端が土壌5に埋設されている。
【0020】
土間コンクリート2は、その周端部の端面2aが布基礎1の立上り部4の内側面4aに接合されていて、布基礎1の立上り部4の内側面4aによって囲まれた床下の土壌面の略全面を覆うようにして、土壌面上に施工されている。
【0021】
上記の建物基礎部においては、布基礎1の立上り部4の内側面4aと土間コンクリート2の端面2aとの接合部位6に生じるクラックからのシロアリの侵入を防止するために、図1及び図2に示すように、布基礎1の立上り部4の内側面4aと土間コンクリート2の端部下面2bとの間の隅部に沿って、土壌面の一部(土壌面の基礎際)を覆うようにシロアリ侵入防止用のバリア層10が配設されている。すなわち、接合部位6と土壌面の基礎際との間にバリア層10が介在された状態となっている。
【0022】
バリア層10は、粒状の徐冷スラグ(高炉徐冷スラグや転炉系スラグ)を敷き詰めることで構成されている。徐冷スラグは、鉄鋼製造工程において副産物として生成される鉄鋼スラグのうち、特に自然放冷等によって徐冷処理したものであって、アルカリ性を呈し、水分の存在下で固まる水硬性を有している。
【0023】
本発明者らは、特許文献4に開示されている知見に基づきながら、建物の床下に近い環境(実使用環境)を再現した屋外実験を重ねて実施していくなかで、徐冷スラグを敷き詰めてなるバリア層において、徐冷スラグの最大粒径を5mm以下とすることで、粒径が1.18〜4.75mm(実用上は粒径が1〜5mm)の範囲内の徐冷スラグの含有量を70重量%以上から50重量%以上に引き下げても、防蟻効果を良好に維持することが可能であることを見出した。
【0024】
そこで、上記のバリア層10においては、その層厚が30mm以上となるように、目開き5mmの篩を通過する徐冷スラグ(最大粒径が5mm以下の徐冷スラグ)が敷き詰められていて、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験」において規定されている目開き1.18mmの篩に留まり、且つ、目開き4.75mmの篩を通過する徐冷スラグ(実用上は粒径が1〜5mmの範囲内の徐冷スラグ)を50重量%以上含有させることで、良好な防蟻効果を発揮させるようにしている。
【0025】
このような粒径範囲の徐冷スラグは、一般に流通しているJISで規定された粒度区分の徐冷スラグを購入して、これらを目開き5mmの篩を通過させるだけで簡単に得ることができ、これを100重量%使用するか、若しくは、目開き1.18mmの篩に留まり、且つ、目開き4.75mmの篩を通過する徐冷スラグを50重量%以上使用して、残りを少なくとも最大粒径が5mm以下の徐冷スラグとすることで、細かな粒径管理を必要とせずに、上記のバリア層10を容易に施工することができる。
【0026】
また、上記のバリア層10は、図3に示すように、布基礎1の立上り部4の内側面4aに接する垂直面11と、土間コンクリート2の端部下面2bに接する水平面12と、土壌面に接する底面13とを備え、底面13が接合部位6から遠ざかるように張り出した湾曲面とされていて、縦断面形状(布基礎1の立上り部4の内側面4aに対して直交する縦方向の断面形状)が四半楕円形状となっている。そして、バリア層10の垂直面11の高さ寸法(層厚)Hが50mm、水平面12の幅寸法Wが70mm、断面積Sが27.5cmに設定されている。
【0027】
バリア層10を、このような形状、大きさに設定した理由について以下に説明する。上記のバリア層10と同様に、土壌面の基礎際を覆うバリア層としては、縦方向の断面形状が略長方形状となっているもの、縦方向の断面形状が略直角三角形状となっているものが広く知られている(特許文献4及び5参照)。
【0028】
一般に、この種のバリア層を施工する場合、土壌面の基礎際を掘り込むことによって切欠部を形成して、この切欠部にバリア層を配設しているが、前者のバリア層(略長方形状のバリア層)の場合、土壌面の基礎際をL字形に掘り込む必要があり、切欠部の形成が非常に面倒となって、バリア層の施工に手間がかかるといった欠点がある。
【0029】
また、後者のバリア層(略直角三角形状のバリア層)の場合、シロアリの通過阻止に有効な高さ寸法(層厚)及び幅寸法を確保しようとすると、バリア層の体積が増えることになり、これに伴ってスラグ使用量及び残土処分量が増大して、環境面での負荷が大きくなるといった欠点がある。
【0030】
この後者の場合について詳細に説明すると、これまでの屋外実験の結果により、シロアリの通過阻止に有効なバリア層の最小高さ寸法と最小幅寸法との関係は、最小高さ寸法<最小幅寸法であって、具体的には最小高さ寸法として約30mm、最小幅寸法として約50mmが必要であることが判明している。ここで、例えば図4(a)に示すように、布基礎1の立上り部4の内側面4aに接する垂直面11の高さ寸法Hを50mm、土間コンクリート2の端部下面2bに接する水平面12の幅寸法Wを50mmとして、断面積Sを12.5cm2とした場合、バリア層Bの体積は少なくて済むが、バリア層Bの縦断面(布基礎1の立上り部4の内側面4aに対して直交する縦方向の断面)において上記の最小高さ寸法や最小幅寸法を確保できない部分が生じることになって、矢印に示すようにシロアリが通過してしまうことがある。この状況は、屋外実験においても確認されている。シロアリの通過を確実に阻止するには、バリア層Bの縦断面(布基礎1の立上り部4の内側面4aに対して直交する縦方向の断面)において、少なくとも最小高さ寸法(30mm)×最小幅寸法(50mm)の有効領域(図4中、点線で囲まれた長方形状の領域)を含ませる必要があり、図4(b)や図4(c)に示すような断面形状にせざるを得ない。しかし、図4(b)に示す場合には断面積Sが32cm2となり、図4(c)に示す場合には断面積Sが30cm2となって、バリア層Bの体積は格段に増えることになる。
【0031】
これに対して、上記のバリア層10においては、土壌面に接する底面13が湾曲面となっていることから、前者のバリア層(略長方形状のバリア層)の場合と比べて、土壌面の基礎際に切欠部を簡単に形成することができ、バリア層の施工を容易にすることができる。しかも、上記のバリア層10においては、図4(d)に示すように、その縦断面(布基礎1の立上り部4の内側面4aに対して直交する縦方向の断面)に最小高さ寸法(30mm)×最小幅寸法(50mm)の有効領域を含ませても、断面積Sが27.5cm2となることから、後者のバリア層(略直角三角形状のバリア層)の場合と比べて、バリア層10の体積を減らして、スラグ使用量及び残土処分量を必要最小限に抑えることができる。バリア層10の形状、大きさを上記のように設定しているのは、このような理由による。なお、バリア層10の大きさは、必ずしも上記の大きさに限定されず、垂直面11の高さ寸法(層厚)Hを50mmよりも大きく、水平面12の幅寸法Wを70mmよりも大きくしても良い。例えば、垂直面11の高さ寸法(層厚)Hを布基礎1のフーチング部3までとし、水平面12の幅寸法Wを100mmまたは200mm程度としても良い。
【0032】
次に、上記構成の建物基礎部の防蟻構造の施工手順について説明する。まず、図5(a)に示すように、布基礎1の立上り部4の内側面4aによって囲まれた床下の土壌面の基礎際を、布基礎1の立上り部4の内側面4aに沿って掘り込んで、四半楕円形状の断面形状を有する切欠部20を形成する。
【0033】
この掘り込み後、図5(b)に示すように、切欠部20に粒状の徐冷スラグを充填して、土壌面及びスラグ充填箇所に対して転圧を行った後、図5(c)に示すように、土間コンクリート2を布基礎1の立上り部4の内側面4aに接合させながら土壌面上に施工して、土壌5及び/又は土間コンクリート2内に含まれる水分によって徐冷スラグを硬化させる。また、土壌6及び/又は土間コンクリート2に含まれる水分だけでは、徐冷スラグの硬化が十分に進まないおそれがある場合には、土間コンクリート2の施工前に、徐冷スラグに対して直接散水して、確実に硬化させるようにしている。これにより、布基礎1の立上り部4の内側面2aと土間コンクリート2の端部下面2bとの間の接合部位下側の隅部に沿って、粒状の徐冷スラグを敷き詰めてなるバリア層10が配設される。
【0034】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態の防蟻構造においては、布基礎によって囲まれた床下の土壌面の基礎際を覆うようにしてバリア層を配設していたが、床下の土壌面の全体を覆うようにしてバリア層を配設しても良く、また床下の土壌面だけでなく屋外側の土壌面の基礎際を覆うようにしてバリア層を配設しても良い。さらに、土間コンクリート上にバリア層を配設しても良いが、この場合には、土壌に含まれる水分による徐冷スラグの硬化が期待できないことから、徐冷スラグに対して直接散水して、確実に徐冷スラグを硬化させることが望ましい。
【符号の説明】
【0035】
1・・布基礎、2・・土間コンクリート、2a・・土間コンクリートの端面、2b・・土間コンクリートの端部下面、4・・立上り部、4a・・立上り部の内側面、5・・土壌、6・・接合部位、10・・バリア層、11・・バリア層の垂直面、12・・バリア層の水平面、13・・バリア層の底面、H・・垂直面の高さ寸法、W・・水平面の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5