(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768797
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】格子梁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20150806BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
E04B5/43 D
E04B1/26 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234495(P2012-234495)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84645(P2014-84645A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】土方 和己
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 輝
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−11404(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3033701(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3032197(JP,U)
【文献】
特開平9−302896(JP,A)
【文献】
特開2009−97214(JP,A)
【文献】
特開2011−58253(JP,A)
【文献】
特開平9−288906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 5/02
E04B 1/26
E04B 1/58
E04C 3/12
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置した複数の木製長尺梁(1)間に、これら長尺梁(1)に対して直交するように複数の木製短尺梁(2)を架け渡して、これら長尺梁(1)及び短尺梁(2)を格子状に組み付けた格子梁構造であって、前記複数の短尺梁(2)のうちの一部又は全部は、一対の分割梁材(5)を組み合わせてなり、これら分割梁材(5)の両端部を、分割梁材(5)間に隙間(6)を確保した状態で、隣接する前記長尺梁(1)の対向する側面に取り付けた一対の接合金物(10)に接合するとともに、前記隙間(6)内に横方向に沿って配置したブレース材(30)によって前記接合金物(10)同士を連結したことを特徴とする格子梁構造。
【請求項2】
前記分割梁材(5)間の隙間(6)を、照明機器(40)を設置する設置空間とした請求項1記載の格子梁構造。
【請求項3】
前記接合金物(10)は、前記長尺梁(1)の側面に固定する第1固定片(11)と、前記一対の分割梁材(5)の前記隙間(6)を挟んで対向する対向面に固定する一対の第2固定片(12)と、前記ブレース材(30)の端部を止め付ける止め付け片(13)とを備え、前記第1固定片(11)と前記止め付け片(13)とが対向し、前記第2固定片(12)同士が対向した状態で、これら第1固定片(11)、第2固定片(12)、止め付け片(13)を方形枠状に連結してなる請求項1又は2記載の格子梁構造。
【請求項4】
前記ブレース材(30)は、ターンバックル(32)を備えている請求項1乃至3のいずれかに記載の格子梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として木造住宅の床組に適用される格子梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、木質の格子梁は、ドーム型建物や体育館等の大空間建物の屋根部に用いられていることが多い。この種の格子梁としては、相欠き加工を施した複数の木製梁を、相欠き部分を嵌合させて格子状に組み付けた構造のものが多く見受けられる。
【0003】
ところが、このような格子梁においては、木製梁の相欠き加工に手間を要するとともに、施工も面倒であって、大空間になるほど納まりも悪くなるといった不具合があった。また、相欠き加工によって木製梁に断面欠損が生じることから、木製梁の強度が損なわれて、鉛直荷重に対する曲げ剛性が低くなり易いといった不具合もあった。さらには、経年による木製梁の収縮(木痩せ)に伴って、相欠き間にクリアランスが発生して、嵌合箇所にガタつきが生じることがあり、長期に亘って鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することが難しいといった不具合もあった。
【0004】
一方、木質の格子梁として、例えば特許文献1にも開示されているように、木製梁同士を接合金物を介して接合しながら、複数の木製梁を格子状に組み付けた構造のものも提案されている。このような格子梁においては、木製梁に対する相欠き加工が不要となることから、上記のような不具合をなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−311117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木製梁同士を接合金物を介して接合した場合でも、経年による木製梁の収縮(木痩せ)に伴って、木製梁と接合金物との間にクリアランスが発生して、接合部分にガタつきが生じ易くなり、依然として長期に亘って鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することが難しいといった不具合があった。
【0007】
この発明は、上記の不具合を解消して、長期に亘って鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することができる格子梁構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の格子梁構造は、互いに平行に配置した複数の木製長尺梁1間に、これら長尺梁1に対して直交するように複数の木製短尺梁2を架け渡して、これら長尺梁1及び短尺梁2を格子状に組み付けたものであって、前記複数の短尺梁2のうちの一部又は全部は、一対の分割梁材5を組み合わせてなり、これら分割梁材5の両端部を、分割梁材5間に隙間6を確保した状態で、隣接する前記長尺梁1の対向する側面に取り付けた一対の接合金物10に接合するとともに、前記隙間6内に横方向に沿って配置したブレース材30によって前記接合金物10同士を連結したことを特徴とする。
【0009】
また、前記分割梁材5間の隙間6を、照明機器40を設置する設置空間としている。
【0010】
さらに、前記接合金物10は、前記長尺梁1の側面に固定する第1固定片11と、前記一対の分割梁材5の前記隙間6を挟んで対向する対向面に固定する一対の第2固定片12と、前記ブレース材30の端部を止め付ける止め付け片13とを備え、前記第1固定片11と前記止め付け片13とが対向し、前記第2固定片12同士が対向した状態で、これら第1固定片11、第2固定片12、止め付け片13を方形枠状に連結してなる。さらにまた、前記ブレース材30は、ターンバックル32を備えている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の格子梁構造においては、長尺梁間に短尺梁が接合金物を介して架け渡され、さらにブレース材によって接合金物同士が連結されていて、長尺梁に対してその長手方向と直交する方向に張力を与えることができるので、従来のような相欠き加工を不要としながら、長尺梁の撓みを効果的に抑えることができ、鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することができる。
【0012】
しかも、経年による長尺梁の収縮(木痩せ)に伴って、長尺梁と接合金物との間にクリアランスが発生しても、ブレース材による張力を木痩せ度合いに応じて修正することで、ガタつきをなくすことができ、長期に亘って鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することができる。特に、ターンバックル付きのブレース材を用いることで、ターンバックを回転操作するだけで張力の調整を簡単に行うことができ、施工性やメンテナンス性を高めることができる。
【0013】
また、長尺梁に比べて曲げ剛性に影響を与えない短尺梁を2分割して、それら分割梁材間の隙間内にブレース材を配置していることから、ブレース材が外部から見え難くなって、見栄えも良好に維持することができる。
【0014】
さらに、分割梁材間の隙間を、照明機器を設置する設置空間としても利用することで、照明機器を容易に見栄え良く設置することができる。さらにまた、第1固定片、第2固定片、止め付け片を方形枠状に連結した剛性の高い構造の接合金物を用いることで、分割梁材やブレース材の取付強度を高めて、長尺梁の撓みをより安定して抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態に係る格子梁構造を示す平面図である。
【
図4】同じくその接合金物付近の分解斜視図である。
【
図5】同じくその接合金物付近の分解斜視図である。
【
図6】同じくその照明機器の設置状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る格子梁構造は、例えば木造住宅の上層階の床組として用いられるものであって、
図1及び
図2に示すように、互いに平行に配置した複数の木製長尺梁1間に、これら長尺梁1に対して直交するように複数の木製短尺梁2が架け渡されて、これら長尺梁1及び短尺梁2が格子状に組み付けられている。なお、長尺梁1間の間隔及び短尺梁2間の間隔は、ともに約1mとされている。
【0017】
そして、長尺梁1の上面及び短尺梁2の上面は、同一平面上に揃えられていて、これら上面に床板3が敷設されている。また、長尺梁1及び短尺梁2によって区画形成された複数の方形枠内には、その上下方向の中間部において天井板4が嵌め込まれていて、これら天井板4よりも下方へ張り出した長尺梁1及び短尺梁2の下端部(格子梁の下端部)が、下層階の天井部に格子状のあらわし梁として露出されている。
【0018】
長尺梁1は、梁せいが約390mm、梁幅が約120mmの角材からなる。短尺梁2は、一対の分割梁材5を組み合わせてなり、各分割梁材5は、梁せいが長尺梁1と同じか或いは若干短く、梁幅が約40mmの角材からなる。そして、長尺梁1間への短尺梁2の架け渡しに際しては、
図3に示すように、一対の分割梁材5の両端部を、分割梁材5間に上下方向に貫通する隙間6を確保した状態で、隣接する長尺梁1の対向する側面に取り付けた一対の接合金物10に接合している。なお、隙間6の幅(分割梁材5間の間隔)は、約40mmとされている。
【0019】
接合金物10は、
図4及び
図5に示すように、長尺梁1の側面に固定する板状の第1固定片11と、一対の分割梁材5の隙間6を挟んで対向する対向面に固定する一対の板状の第2固定片12と、後述するブレース材30の端部を止め付ける板状の止め付け片13とを備えている。そして、第1固定片11と止め付け片13とが対向し、第2固定片12同士が対向した状態で、これら第1固定片11、第2固定片12、止め付け片13が方形枠状に連結されていて、変形の生じ難い剛性の高い構造となっている。
【0020】
第1固定片11には、複数のボルト挿入孔15が上下方向に間隔をあけて形成されている。第2固定片12には、複数のピン挿入孔16が上下方向に間隔をあけて形成されている。止め付け片13は、一対の第2固定片12の上端部間に差し渡されていて、この止め付け片13には、ボルト挿入孔17が形成されている。なお、止め付け片13のボルト挿入孔17は、第1固定片11のボルト挿入孔15及び第2固定片12のピン挿入孔16よりも上方に配置されている。
【0021】
この接合金物10は、
図4に示すように、長尺梁1に形成した横方向の貫通孔1aと第1固定片11のボルト挿入孔15とを一致させるようにして、第1固定片11を長尺梁1の側面に当接させた状態で、貫通孔1a及びボルト挿入孔15にボルト20を挿通させて、このボルト20の先端にナット21を螺合して締め付けることで、長尺梁1の側面に取り付けられている。そして、
図5に示すように、一対の分割梁材5の端部に形成した横方向の貫通孔5aと一対の第2固定片12のピン挿入孔16とを一致させるようにして、一対の分割梁材5の対向面を一対の第2固定片12に外側から当接させた状態、すなわち、一対の分割梁材5の端部間に接合金物10を挟み込んだ状態で、貫通孔5a及びピン挿入孔16にドリフトピン22を挿通させることで、一対の分割梁材5の端部が接合金物10に接合されている。
【0022】
このように、長尺梁1間に短尺梁2が接合金物10を介して架け渡されているので、従来のような相欠き加工を不要として、短尺梁2によって長尺梁1の撓みを抑えて、鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することができる。
【0023】
また、この格子梁構造においては、
図3に示すように、一対の分割梁材5の両端部が接合された接合金物10同士が、一対の分割梁材5間の隙間6内において横方向に沿って(分割梁材5に沿って)配置されたブレース材30によって連結されている。
【0024】
ブレース材30は、その両端部にボルト部31が形成され、中間部にターンバックル32が設けられた鋼製棒状材からなる。そして、このブレース材30は、
図4に示すように、ボルト部31を接合金物10における止め付け片13のボルト挿入孔17の挿通させて、このボルト部31の先端に螺合したナット33を締め付けることで、接合金物10に止め付けられている。
【0025】
そして、このブレース材30によって、対向する接合金物10に対して互いに近接する方向へ張力が与えられている。すなわち、長尺梁1に対してその長手方向と直交する方向に張力が与えられている。また、ターンバック32を回転操作してブレース材30の長さを調節することで、張力の調整を簡単に行うことができるようになっている。
【0026】
これにより、長尺梁1の撓みをより効果的に抑えることができ、しかも経年による長尺梁1の収縮(木痩せ)に伴って、長尺梁1と接合金物10との間にクリアランスが発生しても、ターンバック32を回転操作するだけで、木痩せ度合いに応じて張力を修正してガタつきをなくすことができ、長期に亘って鉛直荷重に対する曲げ剛性を良好に維持することができる。なお、ブレース材30として、靭性の高い伸縮可能な棒状材を用いるようにすれば、ガタつきに追従して張力を自然に修正することができる。
【0027】
さらに、この格子梁構造においては、
図6に示すように、分割梁材5間の隙間6がダウンライト等の照明機器40を設置する設置空間として有効利用されている。なお、照明機器40は、ブレース材30の下側において、その光源が下向きとなるように設置空間に設置されている。
【0028】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0029】
例えば、この発明の格子梁構造は、木造住宅の上層階の床組として用いるだけでなく、木造住宅の1階の床組として用いたり、木造住宅の小屋組として用いるようにしても良い。また、上記実施形態においては、全ての短尺梁を2分割してブレース材を設けていたが、要所要所の短尺梁に対してこのような構造を採用して、残りの短尺梁は分割しないようにしても良い。さらに、上記実施形態においては、分割梁材間に上下方向に貫通する隙間を確保していたが、分割梁材を上下方向に対向配置させて、これら分割梁材間に水平方向に貫通する隙間を確保するようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・長尺梁、2・・短尺梁、5・・分割梁材、6・・隙間、10・・接合金物、11・・第1固定片、12・・第2固定片、13・・止め付け片、30・・ブレース材、32・・ターンバックル、40・・照明機器