(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて、前記ロータが逆回転していると判定した場合に、前記ロック指令を出すことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて、前記ロータの回転が停止していると判定した場合に、前記ロック指令を出すことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電動圧縮機においては、電動モータのロータの回転制御を停止し、電動圧縮機の運転が停止されると、ロータの正回転の速度が減少していく。そして、ロータの正回転が停止すると、インジェクション配管からの中間圧のガス冷媒の残りがインジェクションポートを介して圧縮室に導入されて、可動スクロールが、電動圧縮機の運転時とは逆方向へ公転運動し始める。この可動スクロールの逆方向への公転運動に伴って、ロータも逆回転し始める。このようにロータが逆回転し、ロータの回転速度が所定の速度を越えた状態になると、ロータの回転制御を再開させることが困難となる。そのため、電動圧縮機の運転を再び行うためには、ロータの逆回転の速度が、ロータの回転制御を再開可能な速度になるまで減少するのを待つ必要がある。よって、電動圧縮機の運転を停止させてから、電動圧縮機の運転を再び行おうとしても、ロータの回転制御を即座に再開することができない場合があり、電動圧縮機の再運転をスムーズに行うことができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、再運転をスムーズに行うことができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動圧縮機は、可動スクロールと固定スクロールとの噛み合いにより形成される圧縮室に吸入された低圧の冷媒を圧縮して高圧の冷媒を吐出する圧縮部と、ロータを有し前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動させるモータ駆動回路と、前記圧縮室に中間圧の冷媒を導入するインジェクションポートと、前記ロータの回転制御を行う制御部と、前記電動モータの端子電圧を検出する電圧検出部と、を備えた電動圧縮機であって、前記制御部は、前記ロータの回転制御を停止する停止指令を出してから、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて、前記ロータの回転状態を判定し、前記判定に基づいて、前記ロータの回転を電気的に停止させるロック指令を出す起動準備制御を行う。
【0007】
これによれば、制御部が起動準備制御を行うことによって、ロータの回転を電気的に停止させることができる。そして、ロータの回転が停止しているため、電動圧縮機の再運転をスムーズに行うことができる。
【0008】
上記電動圧縮機において、前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて、前記ロータが逆回転していると判定した場合に、前記ロック指令を出すことが好ましい。
【0009】
これによれば、ロータが逆回転したとしても、制御部が起動準備制御を行うことによって、ロータの逆回転を電気的に停止させることができるため、電動圧縮機の再運転をスムーズに行うことができる。
【0010】
上記電動圧縮機において、前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧に基づいて、前記ロータの回転が停止していると判定した場合に、前記ロック指令を出すことが好ましい。
【0011】
これによれば、ロータの回転が停止している間に、制御部による起動準備制御が行われるため、ロータの逆回転が発生しない。また、ロータが回転しているときに制御部による起動準備制御が行われる場合と比べると、ロータを電気的に停止させるための負荷を少なくすることができる。
【0012】
上記電動圧縮機において、前記モータ駆動回路は、上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子を有し、前記制御部は、前記起動準備制御として、前記上アームスイッチング素子又は前記下アームスイッチング素子の一方のスイッチング動作をオンにするとともに他方のスイッチング動作をオフにすることで、前記ロック指令を出すことが好ましい。
【0013】
これによれば、制御部は、上アームスイッチング素子及び下アームスイッチング素子のスイッチング動作を変更するだけで、起動準備制御を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、再運転をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。なお、本実施形態の電動圧縮機は、車両に搭載されるとともに車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は金属材料製(本実施形態ではアルミニウム製)であるとともに、一端(
図1の左端)に開口121hが形成された有底筒状をなすモータハウジング12と、モータハウジング12の一端に連結された有底筒状をなす吐出ハウジング13とから構成されている。モータハウジング12内には、冷媒を圧縮するための圧縮部14と、圧縮部14を駆動させる電動モータ15とが収容されている。
【0017】
モータハウジング12の底側の端壁12aの中央部には、円筒状の軸支部121aが突設されている。モータハウジング12の開口121h側には、中央部に挿通孔21aが形成された軸支部材21が固定されている。そして、この軸支部材21とモータハウジング12とにより電動モータ15が収容されるモータ室121が区画されている。モータハウジング12内には回転軸20が収容されている。回転軸20におけるモータハウジング12の開口121h側に位置する一端は、軸支部材21の挿通孔21aの内側に位置するとともに軸受B1を介して軸支部材21に回転可能に支持されている。回転軸20におけるモータハウジング12の端壁12a側に位置する他端は軸受B2を介して軸支部121aに回転可能に支持されている。
【0018】
電動モータ15は、回転軸20と一体的に回転するロータ16(回転子)と、ロータ16を取り囲むようにモータハウジング12の内周面に固定されたステータ17(固定子)とから構成されている。
【0019】
圧縮部14は、固定スクロール22及び可動スクロール23により構成されている。固定スクロール22は、円板状をなす固定側基板22aと、固定側基板22aから立設される固定側渦巻壁22bとから構成されている。可動スクロール23は、円板状をなす可動側基板23aと、可動側基板23aから固定側基板22aへ向かって立設される可動側渦巻壁23bとから構成されている。
【0020】
回転軸20における開口121h側の端面には、回転軸20の回転軸線Lに対して偏心した位置に偏心軸20aが突設されている。偏心軸20aにはブッシュ20bが外嵌固定されている。ブッシュ20bには、可動側基板23aが軸受B3を介してブッシュ20bと相対回転可能に支持されている。
【0021】
固定側渦巻壁22bと可動側渦巻壁23bとは互いに噛み合わされている。固定側渦巻壁22bの先端面は可動側基板23aに接触しているとともに、可動側渦巻壁23bの先端面は固定側基板22aに接触している。そして、固定側基板22a及び固定側渦巻壁22bと、可動側基板23a及び可動側渦巻壁23bとによって圧縮室25が区画されている。
【0022】
可動側基板23aと軸支部材21との間には、自転阻止機構27が配設されている。自転阻止機構27は、軸支部材21における可動側基板23a側の端面に複数(
図1では一つのみ示す)設けられた円環孔27aと、可動側基板23aの端面231aの外周部に突設され円環孔27aに遊嵌されたピン27bとから構成されている。
【0023】
電動モータ15によって回転軸20が回転駆動されると、可動スクロール23が偏心軸20aを介して固定スクロール22の軸心(回転軸20の回転軸線L)の周りで公転される。このとき、可動スクロール23は、自転阻止機構27によって自転が阻止されて、公転運動のみが許容される。この可動スクロール23の公転運動により、圧縮室25の容積が減少する。
【0024】
モータハウジング12には吸入口122が形成されている。また、軸支部材21にはモータ室121と圧縮室25とを連通する吸入通路28が形成されている。さらに、吐出ハウジング13と固定側基板22aとにより吐出室131が区画されている。また、吐出ハウジング13には吐出口13aが形成されている。
【0025】
固定側基板22aの中央には吐出ポート22eが形成されている。吐出ポート22eは圧縮室25と吐出室131とを連通する。また、固定側基板22aには吐出弁22vが吐出ポート22eを覆うように取り付けられている。
【0026】
モータハウジング12の端壁12aにはカバー19が取り付けられている。カバー19とモータハウジング12の端壁12aとによって区画される空間には、電動モータ15を駆動させるためのモータ駆動回路30(
図1において破線で示す)が収容されている。本実施形態では、回転軸20の回転軸線Lが延びる方向(軸方向)に沿って、圧縮部14、電動モータ15及びモータ駆動回路30がこの順序で並設されている。
【0027】
図2に示すように、固定側基板22aには、インジェクションポート29が二つ形成されている。各インジェクションポート29は円孔状に形成されている。各インジェクションポート29は、固定側基板22aにおいて、吐出ポート22eよりも径方向外側に位置している。
図1に示すように、各インジェクションポート29にはインジェクション配管29aが接続されている。
【0028】
図3に示すように、冷暖房回路50は、電動圧縮機10、配管切換弁51、第1熱交換器52、第2熱交換器53、第1膨張弁54、第2膨張弁55及び気液分離器56から構成されている。
【0029】
配管切換弁51は、第1〜第4口51a,51b,51c,51dを有している。そして、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態(
図3において実線で示す状態)と、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態(
図3において破線で示す状態)とに切換可能になっている。
【0030】
吐出口13aには吐出配管57の一端が接続されるとともに、吐出配管57の他端は配管切換弁51の第1口51aに接続されている。配管切換弁51の第2口51bには第1配管58の一端が接続されるとともに、第1配管58の他端は第1熱交換器52に接続されている。第1熱交換器52には第2配管59の一端が接続されるとともに、第2配管59の他端は第1膨張弁54に接続されている。
【0031】
第1膨張弁54には第3配管60の一端が接続されるとともに、第3配管60の他端は気液分離器56に接続されている。気液分離器56には第4配管61の一端が接続されるとともに、第4配管61の他端は第2膨張弁55に接続されている。第2膨張弁55には第5配管62の一端が接続されるとともに、第5配管62の他端は第2熱交換器53に接続されている。第2熱交換器53には第6配管63の一端が接続されるとともに、第6配管63の他端は配管切換弁51の第3口51cに接続されている。配管切換弁51の第4口51dには吸入配管64の一端が接続されるとともに、吸入配管64の他端は吸入口122に接続されている。
【0032】
気液分離器56には、インジェクション配管29aの一端が接続されるとともに、インジェクション配管29aの他端側は、各インジェクションポート29に向かって分岐されて各インジェクションポート29に接続されている。インジェクション配管29aには逆止弁66が配設されている。
【0033】
図4に示すように、モータ駆動回路30は、上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cと、電流平滑化用のコンデンサ33とを有する。上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cにはダイオード34が接続されている。ダイオード34は、電動モータ15で発生する逆起電力を直流電源35に還流させる。
【0034】
上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのベース側は、制御コンピュータ40に信号接続されている。上アームスイッチング素子31a,31b,31cのコレクタ側は、直流電源35に接続されており、上アームスイッチング素子31a,31b,31cのエミッタ側は、電動モータ15を構成するU相、V相、W相のコイル15U,15V,15Wにそれぞれ接続されている。下アームスイッチング素子32a,32b,32cのエミッタ側は、直流電源35に接続されており、下アームスイッチング素子32a,32b,32cのコレクタ側は、コイル15U,15V,15Wにそれぞれ接続されている。
【0035】
制御コンピュータ40は、搬送波信号と呼ばれる高周波の三角波信号と、電圧を指示するための電圧指令信号とによってPWM信号を生成する。そして、制御コンピュータ40は、PWM信号に基づいて上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作を制御する。この上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作が行われることにより、直流電圧が交流電圧に変換され、交流電圧が駆動電圧として電動モータ15に印加されることにより、電動モータ15のロータ16の回転制御が行われる。よって、制御コンピュータ40は、ロータ16の回転制御を行う制御部として機能する。
【0036】
モータ駆動回路30とコイル15Wとの間には、電動モータ15の端子電圧を検出する電圧検出部41が電気接続されている。そして、電圧検出部41により検出された電圧の情報が制御コンピュータ40に送られる。
【0037】
制御コンピュータ40は、ロータ16の回転制御を停止する停止指令を出してから、電圧検出部41により検出された電圧に基づいて、ロータ16の回転状態を判定し、この判定に基づいて、ロータ16の回転を電気的に停止させるロック指令を出す起動準備制御を行う制御プログラムを備えている。本実施形態において、起動準備制御は、上アームスイッチング素子31a,31b,31cのスイッチング動作をオフにするとともに下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作をオンにすることで、ロータ16の回転を電気的に停止させるロック指令を出す。
【0038】
次に、冷暖房回路50の作用について説明する。
ロータ16が正回転すると、回転軸20を介して可動スクロール23が正方向へ公転運動する。すると、圧縮部14において圧縮動作及び吐出動作が行われて、冷媒が冷暖房回路50を循環する。そして、冷媒が吸入口122を介してモータ室121に吸入される。モータ室121に吸入された冷媒は、吸入通路28を経由して圧縮室25に吸入される。圧縮室25に吸入された低圧の冷媒は、可動スクロール23の公転運動(吐出動作)によって、圧縮されながら吐出ポート22eから吐出弁22vを押し退けて、吐出ハウジング13内の吐出室131へ吐出される。吐出室131内に吐出された高圧の冷媒は吐出口13aを介して吐出配管57に吐出される。
【0039】
冷房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第2口51bとを連通させると同時に、第3口51cと第4口51dとを連通させる第1状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第2口51b及び第1配管58を経由して第1熱交換器52に流れ込む。第1熱交換器52に流れ込んだ冷媒は、第1熱交換器52において外気と熱交換されて凝縮する。第1熱交換器52において凝縮された冷媒は、第2配管59を経由して第1膨張弁54に流れ込む。第1膨張弁54に流れ込んだ冷媒は、第1膨張弁54により減圧されて、吐出圧力(高圧)と吸入圧力(低圧)との間の中間の圧力(中間圧)となるとともに、第3配管60を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
【0040】
気液分離器56により分離された液冷媒は、第4配管61を経由して第2膨張弁55に流れ込むとともに第2膨張弁55により減圧される。第2膨張弁55により減圧された液冷媒は、第5配管62を経由して第2熱交換器53に流れ込むとともに、第2熱交換器53により室内の空気と熱交換されて蒸発することで、室内の空気が冷却される。第2熱交換器53により蒸発された冷媒は、第6配管63、第3口51c、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入口122を介してモータ室121に還流される。
【0041】
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション配管29aに流れ込む。ここで、室内の空気が冷却されるとき(冷房運転時)は、モータ室121に吸入される冷媒の温度及び圧力が高い。このため、電動圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション配管29aを閉鎖する。これにより、インジェクション配管29aから各インジェクションポート29を介した圧縮室25へのガス冷媒の導入が規制されている。
【0042】
暖房運転時には、配管切換弁51は、第1口51aと第3口51cとを連通させると同時に、第2口51bと第4口51dとを連通させる第2状態に切り換えられている。これにより、吐出配管57に吐出された冷媒は、第1口51a、第3口51c及び第6配管63を介して第2熱交換器53に流れ込む。第2熱交換器53に流れ込んだ冷媒は、第2熱交換器53において室内の空気と熱交換されて凝縮することで、室内の空気が加熱される。第2熱交換器53において凝縮された冷媒は、第5配管62を経由して第2膨張弁55に流れ込む。第2膨張弁55に流れ込んだ冷媒は、第2膨張弁55により減圧されて、吐出圧力と吸入圧力との間の中間の圧力(中間圧)となるとともに、第4配管61を経由して気液分離器56に流れ込む。気液分離器56に流れ込んだ冷媒は、気液分離器56によりガス冷媒と液冷媒とに分離される。
【0043】
気液分離器56により分離された液冷媒は、第3配管60を経由して第1膨張弁54に流れ込むとともに第1膨張弁54により減圧される。第1膨張弁54により減圧された液冷媒は、第2配管59を経由して第1熱交換器52に流れ込むとともに、第1熱交換器52において外気と熱交換されて蒸発する。第1熱交換器52により蒸発された冷媒は、第1配管58、第2口51b、第4口51d及び吸入配管64を経由して吸入口122を介してモータ室121に還流される。
【0044】
気液分離器56により分離されたガス冷媒は、インジェクション配管29aに流れ込む。ここで、室内の空気が加熱されるとき(暖房運転時)は、モータ室121に吸入される冷媒の温度及び圧力が低い。このため、電動圧縮機10側と気液分離器56側との圧力差によって逆止弁66がインジェクション配管29aを開放する。これにより、インジェクション配管29aから各インジェクションポート29を介した圧縮室25へのガス冷媒の導入が許容されている。
【0045】
そして、各インジェクションポート29を介して圧縮室25に中間圧のガス冷媒が導入されることで、圧縮室25に導入されるガス冷媒の流量が増え、暖房運転時のような高負荷運転時における電動圧縮機10の性能が向上する。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
上記構成の電動圧縮機10においては、電動圧縮機10の運転を停止するために、制御コンピュータ40は、ロータ16の回転制御を停止する停止指令をモータ駆動回路30に出す。制御コンピュータ40からモータ駆動回路30に停止指令が出されると、ロータ16の正回転の速度が減少していく。そして、ロータ16の正回転が停止すると、インジェクション配管29aからの中間圧のガス冷媒の残りが各インジェクションポート29を介して圧縮室25に導入されることにより、可動スクロール23が、電動圧縮機10の運転時とは逆方向へ公転運動しようとする。この可動スクロール23の逆方向への公転運動に伴って、ロータ16も逆回転しようとする。
【0047】
図5では、電圧検出部41により検出された電圧の変化を示している。
図5の実線L1は本実施形態の電圧の変化を示し、破線L2は比較例(ロータ16が逆回転し続ける場合の例)の電圧の変化を示している。
【0048】
図5に示すように、制御コンピュータ40が停止指令を出してから、電圧検出部41により検出された電圧は徐々に減少し、その後増加する。電圧の振幅はロータ16の回転数に比例する。すなわち、制御コンピュータ40は、電圧の振幅に基づいてロータ16の回転速度が算出可能になっている。そして、電圧検出部41により検出された電圧の振幅が20V未満になったときに、ロータ16の回転速度が、制御コンピュータ40におけるロータ16の回転制御を再開可能な速度になっていると判定される。すなわち、ロータ16が逆回転していないと判定される。また、電圧検出部41により検出された電圧の振幅が20V以上のときは、ロータ16の回転速度が、制御コンピュータ40によってロータ16の回転制御を再開することが困難である速度になっていると判定される。すなわち、ロータ16が逆回転していると判定される。
【0049】
例えば、制御コンピュータ40によってロータ16が逆回転していると判定されたとき、本実施形態では、制御コンピュータ40が、ロータ16の回転を電気的に停止させるロック指令を出す起動準備制御を行うことによって、ロータ16を電気的に停止させる。具体的には、制御コンピュータ40は、上アームスイッチング素子31a,31b,31cのスイッチング動作をオフにするとともに下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作をオンにする。これにより、ロータ16の回転が電気的に停止する。
【0050】
そして、制御コンピュータ40は、ロータ16の回転制御を再開して、上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作を制御する。さらに、上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作によって直流電圧から変換された交流電圧が電動モータ15に印加されることにより、ロータ16が正回転する。これにより、ロータ16が逆回転したとしても、電動圧縮機10の再運転がスムーズに行われる。
【0051】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)制御コンピュータ40は、ロータ16の回転制御を停止する停止指令を出してから、電圧検出部41により検出された電圧に基づいて、ロータ16の回転状態を判定し、この判定に基づいて、ロータ16の回転を電気的に停止させるロック指令を出す起動準備制御を行う。これによれば、制御コンピュータ40が起動準備制御を行うことによって、ロータ16の回転を電気的に停止させることができる。そして、ロータ16の回転が停止しているため、電動圧縮機10の再運転をスムーズに行うことができる。
【0052】
(2)制御コンピュータ40は、起動準備制御として、電圧検出部41により検出された電圧に基づいて、ロータ16が逆回転していると判定した場合に、ロック指令を出す。これによれば、ロータ16が逆回転したとしても、制御コンピュータ40が起動準備制御を行うことによって、ロータ16の逆回転を電気的に停止させることができるため、電動圧縮機10の再運転をスムーズに行うことができる。
【0053】
(3)制御コンピュータ40は、起動準備制御として、上アームスイッチング素子31a,31b,31cのスイッチング動作をオフにするとともに下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作をオンにすることで、ロック指令を出す。これによれば、制御コンピュータ40は、上アームスイッチング素子31a,31b,31c及び下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作を変更するだけで、起動準備制御を容易に行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、制御コンピュータ40は、起動準備制御として、電圧検出部41により検出された電圧に基づいて、ロータ16の回転が停止していると判定した場合に、ロック指令を出すようにしてもよい。これによれば、ロータ16の回転が停止している間に、制御コンピュータ40による起動準備制御が行われるため、ロータ16の逆回転が発生しない。また、ロータ16が回転しているときに制御コンピュータ40による起動準備制御が行われる場合と比べると、ロータ16を電気的に停止させるための負荷を少なくすることができる。なお、ロータ16の回転が停止している間に、インジェクション配管29aからの中間圧のガス冷媒の残りを除去しておくことが望ましい。そうすることによって、ロータ16の回転を停止させた状態から、ロータ16を正回転させようとする際に、各インジェクションポート29を介して圧縮室25に中間圧のガス冷媒の残りが導入されて、ロータ16が逆回転しようとすることを防止することができる。
【0055】
○ 実施形態において、制御コンピュータ40は、起動準備制御として、上アームスイッチング素子31a,31b,31cのスイッチング動作をオンにするとともに下アームスイッチング素子32a,32b,32cのスイッチング動作をオフにすることで、ロック指令を出すようにしてもよい。
【0056】
○ 実施形態において、制御コンピュータ40は、起動準備制御として、予め定められた電流を電動モータ15に供給することで、ロック指令を出すようにしてもよい。この場合、ロータ16の回転を停止可能な電流値が予め求められており、制御コンピュータ40には、その電流値が予め記憶されている。
【0057】
○ 実施形態において、制御コンピュータ40は、電圧検出部41により検出された電圧の周波数に基づいて、ロータ16の回転状態を判定してもよい。具体的には、電圧検出部41により検出された電圧の周波数が30Hz未満になったときに、ロータ16の回転速度が、制御コンピュータ40におけるロータ16の回転制御を再開可能な速度になっていると判定される。すなわち、ロータ16が逆回転していないと判定される。また、電圧検出部41により検出された電圧の周波数が30Hz以上のときは、ロータ16の回転速度が、制御コンピュータ40によってロータ16の回転制御を再開することが困難である速度になっていると判定される。すなわち、ロータ16が逆回転していると判定される。
【0058】
○ 実施形態において、電圧検出部41が、コイル15U,15V,15Wのいずれか二つの間に電気接続されていてもよい。これによれば、例えば、モータ駆動回路30とコイル15Wとの間に電圧検出部41が電気接続されている場合に比べて、ロータ16が停止したと判定される電圧が得やすい。
【0059】
○ 実施形態において、電圧検出部41は、制御コンピュータ40による停止指令が出されてから電圧の検出を開始し、制御コンピュータ40によるロック指令が出されてから電圧の検出を停止してもよい。これによれば、電圧検出部41が常に電圧を検出している場合に比べると、電圧検出部41の動作量を低減することができる。
【0060】
○ 実施形態において、各インジェクションポート29は、例えば、固定側渦巻壁22bの渦巻き状に沿った楕円状であってもよく、各インジェクションポート29の形状は特に限定されるものではない。
【0061】
○ 実施形態において、可動側基板23aにインジェクションポートがさらに形成されていてもよい。
○ 実施形態において、各インジェクションポート29を削除し、可動側基板23aにインジェクションポートを形成してもよい。
【0062】
○ 実施形態において、カバー19がモータハウジング12の周壁に固設されており、モータハウジング12の周壁とカバー19とによって区画される空間にモータ駆動回路30が収容されていてもよい。
【0063】
○ 実施形態において、圧縮部14は、例えば、ピストンタイプやベーンタイプ等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置に用いられなくてもよく、その他の空調装置に用いられてもよい。
【0064】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧の振幅に基づいて、前記ロータの回転状態を判定し、前記判定に基づいて、前記ロック指令を出す。
【0065】
(ロ)前記制御部は、前記起動準備制御として、前記電圧検出部により検出された電圧の周波数に基づいて、前記ロータの回転状態を判定し、前記判定に基づいて、前記ロック指令を出す。
【0066】
(ハ)前記制御部は、前記起動準備制御として、予め定められた電流を前記電動モータに供給することで、前記ロック指令を出す。
(ニ)前記インジェクションポートは前記固定スクロールの固定側基板に形成されている。