特許第5768895号(P5768895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5768895-固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法 図000005
  • 特許5768895-固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768895
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 281/02 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   C07C281/02
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-545999(P2013-545999)
(86)(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公表番号】特表2014-511345(P2014-511345A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】KR2011007573
(87)【国際公開番号】WO2012091261
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0135935
(32)【優先日】2010年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512304010
【氏名又は名称】インダストリ−ユニヴァーシティ コオペレーション ファウンデイション ソガン ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フォ、ナム フェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ビョン ノ
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−134038(JP,A)
【文献】 米国特許第02865714(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 281/00−281/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表示される液相のヒドラジン誘導体と、超臨界状態の二酸化炭素7.38〜100MPaの高圧条件で反応させる固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[化学式1]
【化1】
但し、前記化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、またはアリール基である。
【請求項2】
前記高圧条件における反応は、無溶媒条件下で、または水、C〜C12のアルコール、C〜C12のエーテル、またはこれらの混合溶媒下で行われることを特徴とする、
請求項1に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項3】
前記高圧条件は、7.38〜50MPaであることを特徴とする、
請求項1または2に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項4】
前記反応における温度は、30.95〜500℃であることを特徴とする、
請求項1〜3の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項5】
前記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、無水(anhydrous)ヒドラジン誘導体であるか、またはこれの水和物であることを特徴とする、
請求項1〜4の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項6】
前記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、またはニトロ−フェニルヒドラジン、またはこれらの誘導体であることを特徴とする、
請求項1〜5の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項7】
前記ヒドラジン誘導体の水和物の水分含量は、1〜99重量%であることを特徴とする、
請求項5に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項8】
前記高圧条件における反応以後に圧力を0.01〜0.1MPaに減圧して、余剰(excess)の二酸化炭素を蒸発させる段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項1〜の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【請求項9】
前記固体カルバジン酸誘導体粉末の精製過程として、C〜C12のアルコール、テトラヒドロフラン、エーテル類、ジメチルホルムアミド類、またはこれらの混合液で洗浄する段階をさらに含むことを特徴とする、
請求項1〜の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドラジン(N)は、アンモニア(NH)気体と類似した化学的性質を有するが、常温で透明な液体であり、水と類似した融点、沸点、密度を有する。ヒドラジンは、高分子に気孔を作る気孔形成剤(forming agent)、農薬や医薬を作ることに必要な誘導体、ボイラー水の酸素除去剤、燃料電池、そしてロケットの燃料などで多様に使用されている。ヒドラジンは、非常に有毒で反応性に優れているので、無水ヒドラジン(anhydrous hydrazine)よりは一般的に水に溶かした水溶液状態で保管して使用する。それにもかかわらず、液体ヒドラジンは、漏れや気化による火事発生及び周辺の金属や物質との急激な反応により汚染を引き起こし得るため、その応用に多くの制限が伴う。
【0003】
液体ヒドラジンが有しているこのような問題点を減らすための一つの方法として、固体ヒドラジン塩(hydrazinium salt)を作ってヒドラジンの代用で使用することが提案された。ヒドラジン塩は、液体ヒドラジンに硫酸や塩酸のような酸を添加して容易に作ることができる。一例として、硫酸溶液を液体ヒドラジンに入れれば沈澱が直ちに生じつつ硫酸ヒドラジニウム(hydrazinium sulfate)に変換される。このような固体ヒドラジン誘導体は、常温で安定した固体の形態を有しており、溶液で他の化合物と反応する時は、液体ヒドラジンと類似した特性を有することができるという長所がある。しかし、これらのヒドラジン塩は、反応時に溶媒が必要であるため、反応後に溶媒分離のための追加工程が必要であり、また、残留陰イオンによって不所望の不純物が形成されるという短所がある。また、ヒドラジン塩は、溶液でヒドラジニウム陽イオン(hydrazinium cation)として存在するため、反応性や水素を発生することができる分解能力がヒドラジンに比べて顕著に落ちる。このような短所により、常温常圧で非常に安定した固体ヒドラジン塩は、その種類が多様に多く開発されたにもかかわらず、応用研究が非常に制限的に行われている。
【0004】
前記問題点を解決するために、特許文献1及び特許文献2に掲載されたように、難燃性気体である二酸化炭素を利用して固体ヒドラジンを製造した。この方法は、二酸化炭素を常圧で冷たいヒドラジン溶液に吹き込みながら製造したが、15時間以上気体を吹き込むと、徐々に二酸化炭素とヒドラジンとが混合された粘つく沈殿物が生成される。しかし、この生成物は、固体内に水分を含んでおり、主にカルバジン酸(Carbazic acid、HCO)とヒドラジニウムカルバジン酸塩(hydrazinium carbazate、NCO)とで構成されており、ヒドラジンと二酸化炭素との割合が一定しない。また、非常に粘つく固体であるので、一般的な乾燥方式を通じては粉末形態の純粋な固体ヒドラジンに分離することが非常に難しい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,551,226号
【特許文献2】米国特許第2,878,103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記常温常圧で液体であるヒドラジンと固体ヒドラジン塩物質が有しているこのような短所を解決するために、本発明者は、無水ヒドラジンのような優れた反応性を有しながらも、常温常圧で安定した固体状態で存在し、溶媒無しにも使用が容易な長所を有した固体カルバジン酸誘導体粉末を開発した。即ち、本発明は、固体カルバジン酸の誘導体粉末を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、常温常圧で液体であるヒドラジンと今まで開発された固体ヒドラジン塩が有している前記問題点を解決するために導出されたもので、高圧二酸化炭素を導入させて液体ヒドラジン誘導体と二酸化炭素との反応を通じてカルバジン酸誘導体粉末を製造することにその技術的課題がある。二酸化炭素を高圧で使用することで、水がなく副産物のない純粋なカルバジン酸誘導体粉末を製造する技術を提供する。前記高圧とは、0.5〜100MPaを意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明による固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法は、二酸化炭素を0.5〜100MPaの高圧で使用することで、二酸化炭素とヒドラジン誘導体とが早く反応して固体カルバジン酸誘導体に容易に転換され、固体化に必要な時間とエネルギーを大きく節減することができ、また、液体ヒドラジン誘導体に含有されている水の残留を最小化することができ、水と副産物の生成がほぼない純粋な固体カルバジン酸誘導体粉末を製造することができる。このような固体カルバジン酸誘導体粉末に関する製造方法は、既存には公開されていない技術であり、画期的な技術である。
【0009】
本発明を通じて開発した固体カルバジン酸誘導体粉末は、液体ヒドラジンに比べて、1)常温で安定した固体状態であるため、保管及び使用が簡便でかつ危険でなく、2)反応時に容易にヒドラジンと二酸化炭素とに分解されて無水ヒドラジンのような優れた反応性を有し、3)溶媒のない環境でも使用が可能であり、4)水を含んでいないため、無水環境で使用することができ、5)水素を生成することができる固体燃料としても使用することができるという長所を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1で分解生成物のX線回折分析(XRD)の結果である。
図2】試験例2で分解生成物のガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS) の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、液相のヒドラジン誘導体及び二酸化炭素を0.5〜100MPaの高圧条件で反応させる固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法に関する。
【0012】
前記反応における圧力は、0.5〜100MPaであることが好ましいが、圧力を0.5MPa未満に調節する時、二酸化炭素と液相のヒドラジン誘導体との反応が発生はするが、ゲル(gel)状の粘つく沈殿物が徐々に生じ、粉末としては生成されない。この沈殿物は、アルコールで数回洗浄し真空で乾燥しても、粘つく性質がそのまま残っている。この水分を含んでいる固体生成物は、カルバジン酸(carbazic acid)とヒドラジニウムカルバジン酸塩(hydrazinium carbazate)とで構成された混合物である。さらに好ましくは、前記高圧条件は1〜50MPaになってもよい。
【0013】
前記ヒドラジン誘導体は、下記の化学式1のように表示される。
【0014】
[化学式1]
【化1】
【0015】
但し、前記化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、またはアリール基である。
【0016】
前記高圧条件における反応は、無溶媒条件下で、または水、C〜C12のアルコール、C〜C12のエーテル、またはこれらの混合溶媒下で行われてもよい。特に、C〜C12のアルコール溶媒下で反応が行われる時に、より高純度のカルバジン酸誘導体を得ることができる。
【0017】
前記高圧条件の反応で、温度は、−10〜500℃に調節される。−10℃未満の温度では、反応が円滑に行われないという問題が生じ得て、500℃を超えても、大きな反応速度の向上はなすことができないからである。さらに好ましくは、0〜300℃になってもよい。
【0018】
前記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、無水(anhydrous)ヒドラジン誘導体であるか、またはこれの水化物であってもよい。
【0019】
前記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、二酸化炭素との反応により、前記カルバジン酸誘導体を生成することができる物質であれば、特に限らないが、ヒドラジン(N)、モノメチルヒドラジン(CH)、ジメチルヒドラジン((CH)、フェニルヒドラジン(C)、または2,4−ジニトルフェニルヒドラジン(C(NO)を使用してもよい。
【0020】
前記ヒドラジン誘導体水化物の水分含量は、1〜99重量%になってもよい。さらに好ましくは、30〜90重量%になってもよい。
【0021】
前記二酸化炭素は、気相、液相の二酸化炭素だけでなく、超臨界状態の二酸化炭素または固相のドライアイスも使用することができる。
【0022】
前記高圧条件における反応後に圧力を0.01〜0.1MPa水準に減圧して、余剰(excess)二酸化炭素を蒸発させる段階を追加してもよい。
【0023】
前記のような方法で固体カルバジン酸誘導体粉末を製造しても、残留粉末に水などの成分が残存し得るが、これは、水と混合可能な溶媒で洗浄することで除去可能である。例えば、アルコール類、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofurane、THF)、エーテル類(ethers)、ジメチルホルムアミド類(DMFs)などの溶媒をそれぞれ利用するか、これらを混合して洗浄することで除去可能である。即ち、前記固体カルバジン酸誘導体粉末の精製過程として、C〜C12のアルコール、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofurane、THF)、エーテル類(ethers)、ジメチルホルムアミド類(DMFs)、またはこれらの混合液で洗浄する段階をさらに含んでもよい。
【0024】
前記のように、液体ヒドラジン誘導体を二酸化炭素と高圧で反応させて固体カルバジン酸誘導体粉末を製造することができ、この粉末は、ヒドラジンと二酸化炭素とが1:1で反応して生成されたカルバジン酸(carbazic acid)形態の構造を有する。特に、化学式N・HOで表示されるヒドラジン水化物をヒドラジン誘導体として使用する場合は、生成物がカルバジン酸構造を有する化合物であり、化学式としてはHCOで表示される。
【0025】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、下記の実施例は、本発明を例証するためのものであるだけで、本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0026】
実施例1:超臨界二酸化炭素を利用した固体カルバジン酸粉末の製造
水分含量が約36重量%であるヒドラジン水化物(hydrazine hydrate)溶液3mLを反応器に入れ、二酸化炭素の圧力と反応器の温度を調整して固体カルバジン酸粉末(HCO)を製造した。二酸化炭素の圧力が7.4MPa以上で、温度は32℃以上の超臨界状態で反応した。温度は、高圧反応器をoil bathに入れて調節し、5時間の間反応させた。反応後、減圧して残留の二酸化炭素は除去し、残った固体を20mLのメタノールで5回洗浄し、真空で3時間乾燥させて固体カルバジン酸粉末を得た。
【0027】
乾燥した固体カルバジン酸粉末を水に入れれば、気体を発生しながら溶ける。発生した気体は、barium hydroxide(Ba(OH))と容易に反応してbarium carbonate(BaCO)を形成し、残った溶液の成分を質量分析機を通じて分析した結果、溶液中にヒドラジンのみが存在することを確認した。この粉末は、元素分析及び質量分析の結果、化学式としてはcarbazic acid(HCO)で表現される化合物である。使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、98%以上であった。
【0028】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.75)、H(5.30、5.31)、N(36.84、36.90)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0029】
実施例2:ドライアイス(Dry ice)を利用した固体カルバジン酸粉末の製造
前記実施例1と同一の方法で実施し、固体二酸化炭素であるドライアイスを二酸化炭素の供給源として反応を完結した。水分含量が約36重量%であるヒドラジン水化物(hydrazine hydrate)溶液3mLを反応器に入れ、ドライアイス約15gを満たした後、約100℃の温度に合わせたoil bathに入れて反応した。この時、圧力は10〜12MPa程度であり、この条件で約12時間反応した。反応後、減圧して残留の二酸化炭素は除去し、残っている少量の水をメタノールで洗浄し、真空で乾燥させてカルバジン酸粉末を得た。
【0030】
この固体粉末は、元素分析及び質量分析の結果、化学式としてはcarbazic acid(HCO)で表現される前記実施例1で得られたものと同一の化合物である。使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、98%以上であった。
【0031】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.73)、H(5.30、5.32)、N(36.84、36.92)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0032】
実施例3:二酸化炭素気体を利用した固体カルバジン酸粉末の製造
前記実施例1と同一の方法で実施し、気体二酸化炭素を投入し、約10MPaの圧力と約100℃の温度で固体カルバジン酸粉末を製造した。
【0033】
この固体粉末は、元素分析及び質量分析の結果、化学式としてはcarbazic acid(HCO)で表現される前記実施例1で得られたものと同一の化合物である。使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、96%以上であった。
【0034】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.69)、H(5.30、5.36)、N(36.84、37.02)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0035】
実施例4:水を溶媒として使用した固体カルバジン酸粉末の製造
水分含量が約36重量%であるヒドラジンハイドレート(hydrazine hydrate)0.5mLと蒸溜水2mLとを混合して反応器に入れ、二酸化炭素の圧力と反応器の温度を調整して固体カルバジン酸粉末を製造した。約10MPaの圧力と約100℃の温度で固体カルバジン酸誘導体粉末を製造した。
【0036】
この固体粉末は、元素分析及び質量分析の結果、化学式としてはcarbazic acid(HCO)で表現される前記実施例1で得られたものとほぼ同一の化合物である。使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、98%以上であった。
【0037】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.71)、H(5.30、5.34)、N(36.84、36.59)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0038】
実施例5:メタノールを溶媒として使用した固体カルバジン酸粉末の製造
前記実施例1と同一の方法で実施し、hydrazine hydrate3mLとメタノール10mLとを反応器に共に入れ、固体カルバジン酸誘導体粉末を製造した。
【0039】
この固体粉末は、元素分析及び質量分析の結果、化学式としてはcarbazic acid(HCO)で表現される前記実施例1で得られたものと同一の化合物である。使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、98%であった。
【0040】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.81)、H(5.30、5.33)、N(36.84、36.61)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0041】
実施例6:エタノールを溶媒で使用した固体カルバジン酸粉末の製造
前記実施例1と同一の方法で固体カルバジン酸粉末を製造し、メタノールの代りにエタノール10mLを使用して工程を行った。
【0042】
使用したhydrazine hydrateを基準として得られたHCOの歩留まりは、98%であった。
【0043】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、15.84)、H(5.30、5.33)、N(36.82、35.91)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0044】
実施例7:超臨界二酸化炭素を利用した固体フェニルカルバジン酸誘導体粉末
前記実施例1と同一の方法で固体カルバジン酸粉末を製造し、hydrazine hydrateの代りにphenyl hydrazine(C)をヒドラジン誘導体として使用して工程を行った。反応後、減圧して残留の二酸化炭素は除去し、残った固体を20mLのメタノールで5回洗浄し、真空で3時間乾燥させて固体フェニルカルバジン酸誘導体粉末を得た。
【0045】
乾燥した固体フェニルカルバジン酸誘導体粉末をCDClに溶かした溶液の成分をH NMRを通じて分析した結果、溶液中には二酸化炭素とphenyl hydrazineのみが存在することを確認した。使用したphenyl hydrazineを基準として得られたCCOHの歩留まりは、99%であった。
【0046】
生成物であるCCOHに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(55.25、55.18)、H(5.30、5.23)、N(18.42、18.31)
H NMR(400MHz、CDCl、27℃)δ=7.25(m、2H、phenyl)、6.83(m、3H、phenyl)、5.21(br s、1H、−NH)、3.58(br s、2H、NH
【0047】
比較例1:常圧における二酸化炭素を利用したカルバジン酸固体の製造
前記実施例1と同一の方法で実施し、圧力と温度の条件を調節し、高圧反応器の代りに丸いフラスコを使用した。ヒドラジンの含量比が64重量%程度であるヒドラジン水化物 (hydrazine hydrate)溶液3mLを、氷容器に入れられた冷たい丸いフラスコに入れ、常圧(約0.1MPa)の二酸化炭素を溶液中に吹き入れた。約8時間が経ち透明であった溶液中で少しずつゲルが形成され、溶液に10時間以上さらに二酸化炭素を吹き込めば白色の粘つく固体が生成される。この固体を前記実施例1と同一の方法でメタノールで洗浄し、ゲル状の固体を真空で乾燥させた。乾燥した後も、若干粘つく状態のヒドラジンを得た。
【0048】
使用したhydrazine hydrateを基準として得られた歩留まりは、85%程度であった。元素分析の結果が実施例1と同一の生成物であるHCOの組成に合わず、元素の割合が一定しない点からみると、この生成物は、固体内に水分が含まれており、carbazic acid(HCO)の他にもNHNH・CO・NHNHなどの他の物質が混じられていることが推定される。
【0049】
生成物であるHCOに対する元素分析(単位%)の結果
元素(計算値、実験値):C(15.79、13.83)、H(5.30、6.56)、N(36.84、39.72)
質量分析MS(EI+)m/z=32[M]+、31、29、17、15
【0050】
試験例1:固体カルバジン酸粉末の分解生成物XRD(X−ray diffraction)パターンの照射
前記実施例1と同一の方法で製造した固体粉末0.038g(0.5mmol)を100mLのBa(OH)溶液に入れて直ちに密封した。Ba(OH)水溶液は、0.1575g(0.5mmol)のBa(OH)を100mLの水に溶かして準備した。この混合溶液を50℃で10時間撹拌した後、溶液を減圧下で20mLに濃縮した。形成された白色の沈殿物をろ過器でろ過し、メタノール溶液20mLを使用して水分を除去した。この過程を3回繰り返して0.095g(0.48mmol)の白色の沈殿物を得て、XRDで分析した結果、この沈澱物質がBaCOであることを確認した。使用した固体カルバジン酸誘導体粉末を基準として得た生成物の歩留まりは、96%である。これは、図1のXRDデータでも確認可能である。実施例2〜7及び比較例1で製造した固体カルバジン酸誘導体粉末も前記方式と同様に歩留まりを測定した。その結果は、実施例2〜7及び比較例1にそれぞれ表した。
【0051】
試験例2:固体カルバジン酸粉末の分解生成物GC/MSの照射
前記実施例1と同一の方法で製造した固体カルバジン酸粉末0.5gを25mLの丸いフラスコに入れ、蒸留水5mLを加えた。白色の粉末は、気泡を発生しながら徐々に溶けて透明な溶液になり、この溶液をGC/MSで分析した結果、全てヒドラジン(HNNH)に変換されたことを確認した。これは、図2のGC/MSデータでも確認が可能である。実施例2〜7及び比較例1で製造した固体カルバジン酸誘導体粉末も前記方式と同様に測定した。その結果は、実施例2〜7及び比較例1にそれぞれ表した。
[項目1]
下記の化学式1で表示される液相のヒドラジン誘導体及び二酸化炭素を0.5〜100MPaの高圧条件で反応させる固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[化学式1]
[化1]
但し、上記化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立して水素、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、またはアリール基である。
[項目2]
上記高圧条件における反応は、無溶媒条件下で、または水、C〜C12のアルコール、C〜C12のエーテル、またはこれらの混合溶媒下で行われることを特徴とする項目1に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目3]
上記高圧条件は、1〜50MPaであることを特徴とする項目1または2に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目4]
上記反応における温度は、−10〜500℃であることを特徴とする項目1〜3の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目5]
上記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、無水(anhydrous)ヒドラジン誘導体であるか、またはこれの水和物であることを特徴とする項目1〜4の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目6]
上記化学式1で表示されるヒドラジン誘導体は、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、またはニトロ−フェニルヒドラジン、またはこれらの誘導体であることを特徴とする項目1〜5の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目7]
上記ヒドラジン誘導体の水和物の水分含量は、1〜99重量%であることを特徴とする項目5に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目8]
上記二酸化炭素は、気相二酸化炭素、液相二酸化炭素、超臨界状態の二酸化炭素、または固相のドライアイスであることを特徴とする項目1〜7の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目9]
上記高圧条件における反応以後に圧力を0.01〜0.1MPaに減圧して、余剰(excess)の二酸化炭素を蒸発させる段階をさらに含むことを特徴とする項目1〜8の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
[項目10]
上記固体カルバジン酸誘導体粉末の精製過程として、C〜C12のアルコール、テトラヒドロフラン、エーテル類、ジメチルホルムアミド類、またはこれらの混合液で洗浄する段階をさらに含むことを特徴とする項目1〜9の何れか1項に記載の固体カルバジン酸誘導体粉末の製造方法。
図1
図2