【実施例1】
【0028】
図1は本発明の一実施例に係るヘッドスペース試料導入装置の概略構成図である。なお、同図では試料導入部100はスプリット方式を採っているが、スプリットレス方式でもよいことは当然である。また、既に説明した
図8と同一の構成要素には同一符号を付し、特に要しない限り詳しい説明を省略する。
【0029】
本実施例におけるヘッドスペース試料導入装置は、試料容器11におけるガス漏れの有無を判定する機能を備えたものであり、基本構成は既に説明した
図8と同じであるが、特徴的な構成要素として、流路F3上の分岐管T1と電磁弁SV2の間の領域に当該領域における流路内のガス圧力を測定するための圧力センサ70を備えている。また、制御部200には漏れ判定部82が設けられると共に、通知部84が接続されている。
【0030】
制御部200は、上記の漏れ判定部82に加えて、動作制御部81及び記憶部83を含んでいる。動作制御部81は、試料導入部100の電磁弁SV1、SV2、流路切替バルブ20、圧力制御装置(APC)61、流量制御装置(AFC)62、及び圧力センサ70等の動作を制御する。漏れ判定部82は、前記圧力センサ70による測定結果に基づいて試料容器11におけるガス漏れの有無を判定する。記憶部83は、ハードディスク装置等の記憶装置を含み、漏れ判定部82による判定結果等を記憶する。
【0031】
なお、圧力制御装置61は、ガスボンベ等を含む加圧用ガス源(図示略)とガス入口41とをつなぐ接続流路、該接続流路に設けられた圧力計、及び該流路を開閉するための開閉弁(いずれも図示略)を内蔵しており、該圧力計の測定値が予め設定された目標値P
1より低いときには前記開閉弁を開き、該圧力計の測定値が前記目標値P
1より高いときには前記開閉弁を閉じるように制御を行う構成となっている。
【0032】
制御部200は、例えば汎用のパーソナルコンピュータにより構成することができ、該コンピュータにインストールされた専用の制御/処理ソフトウエアを実行することにより、各種の制御やデータ処理の機能を達成することができる。なお、制御部200は専用のハードウェアによって構成してもよい。
【0033】
通知部84は、漏れ判定部82による判定結果をユーザに通知するものであり、例えばモニタ等の表示装置を備え、該モニタに判定結果を表示するものとすることができる。また、通知部84は、スピーカ等の音声出力手段を備えたものとし、前記表示装置による通知に加えて又は代えて音声による判定結果の通知を行うものとしてもよい。
【0034】
前記の試料導入部100において、流路F1及び流路切替バルブ20のポートaから分岐管T1までの領域が本発明における試料ガス導入流路に相当する。また、流路F2及び前記接続流路が加圧用ガス導入流路に相当し、流路F3が排気用流路に相当する。また、電磁弁SV1、SV2がそれぞれ本発明における第1開閉バルブ及び第2開閉バルブに相当する。
【0035】
続いて、本実施例に係るヘッドスペース試料分析装置によるガス分析装置への試料ガス導入時の動作について、
図2のフローチャートを参照しつつ説明を行う。
【0036】
はじめに、電磁弁SV1、SV2を閉鎖し、流路切替バルブ20をロード状態にした上で、試料導入部100にセットされた複数の試料容器(図示略)のうち一つの試料容器11の蓋12にニードル10を突き刺し、該ニードル10の先端を試料容器11内の上部空間に位置させる(ステップS11)。続いて、試料容器11を図示しない加熱手段によって所定の温度に加熱して、試料容器11内の試料を気化させる。その後、電磁弁SV1を開放し、前記加圧用ガス源から圧力制御装置61を介してガス入口41に加圧用ガスを導入する。これにより、ガス入口41から導入された加圧用ガスが電磁弁SV1→分岐管T1→ポートb→ポートc→計量管30→ポートf→ポートa→ニードル10を経て試料容器11に導入される(ステップS12)。
【0037】
このとき、電磁弁SV1を開いた瞬間(即ち加圧工程の開始直後)から漏れ判定部82により圧力センサ70の測定値がモニタリングされ、
図3に示すような圧力曲線が作成される。一方、記憶部83には予め試料導入部100の配管構成や加圧用ガスの送出条件から予め算出された理想的な(即ち、試料容器11におけるガス漏れがないと仮定した場合の)圧力曲線が記憶されている。そして、加圧工程が完了した時点(又は加圧開始から所定の時間が経過した時点)で漏れ判定部82が、圧力センサ70の測定値から作成した圧力曲線と前記理想的な圧力曲線を比較し、例えば両者の一致度が予め定められた閾値以上であるか否かに基づいて試料容器11からガスが漏れているか否かを判定する(ステップS13)。
【0038】
なお、前記のステップS12において、電磁弁SV1が開放された直後は、上述の圧力制御装置61内に設けられた圧力計の測定値が目標値P
1より低くなるため、該圧力制御装置61内の開閉弁が開いて流路F2に加圧用ガスが流入し、その後、前記圧力計の測定値が徐々に高くなっていき、該測定値が目標値P
1を超えた時点で前記開閉弁が閉じられて流路F2への加圧用ガスの供給が停止する。
【0039】
従って、試料容器11からのガス漏れがない場合、加圧工程における前記圧力センサ70の測定値は、
図3中の線Aのように、加圧工程の開始直後に急上昇し、前記目標値P
1に到達した後は横ばいの状態となる。これに対し、試料容器11からガスが漏れている場合には、流路F2に供給された加圧用ガスが試料容器11から外部に抜けるため、前記圧力センサ70の測定値は
図3中の線Bのように目標値P
1よりも低い値で横ばいとなるか、あるいは、
図3中の線Cのように目標値P
1に到達するが、加圧工程開始から目標値到達までに要する時間が長くなる。
【0040】
そこで、本実施例における漏れ判定部82は、圧力センサ70の測定値から作成した圧力曲線が上記の理想的な圧力曲線(
図3中の線A)とほぼ一致していた場合には、試料容器11からのガス漏れは発生していないと判断し、
図3中の線Bや線Cのように理想的な圧力曲線Aと大きく異なっていた場合には、試料容器11からガスが漏れていると判定する。なお、上記のような圧力曲線の作成は行わず、加圧開始後の所定の時刻における圧力センサ70の測定値と当該時刻における理想的な圧力値として予め算出された値とを比較することにより試料容器11からのガス漏れの有無を判定するようにしてもよい。
【0041】
上記のステップS13において試料容器11からのガス漏れがあると判定した場合は、通知部84によってその旨をユーザに通知する(ステップS20)と共に、加圧工程の開始直後から前記判定が完了するまでの間に取得された圧力センサ70の測定値及び/又は前記ステップS13における判定結果を記憶部83に記録し(ステップS21)、電磁弁SV1を閉じて試料導入部100の動作を停止する。なお、記憶部83への測定値や判定結果の記録は、漏れ判定部82での判定の結果にかかわらず行うようにしてもよい。
【0042】
一方、ステップS13において試料容器11からのガス漏れがないと判定した場合は、電磁弁SV1を閉じ、その状態で一定時間待機する(ステップS14)。
【0043】
このとき、電磁弁SV1を閉じた瞬間(即ち平衡化工程の開始直後)から漏れ判定部82により圧力センサ70の測定値がモニタリングされ、
図4に示すような圧力曲線が作成される。一方、記憶部83には予め試料導入部100の配管構成や加圧用ガスの送出条件から予め算出された理想的な(即ち、試料容器11におけるガス漏れがないと仮定した場合の)圧力曲線が記憶されている。そして、平衡化工程が完了した時点(又は平衡化工程の開始から所定の時間が経過した時点)で漏れ判定部82が、圧力センサ70の測定値から作成した圧力曲線と前記理想的な圧力曲線を比較し、例えば両者の一致度が予め定められた閾値以上であるか否かに基づいて試料容器11からガスが漏れているか否かを判定する(ステップS15)。これにより、圧力センサ70の測定値から作成した圧力曲線が理想的な圧力曲線(例えば
図4中の線D)とほぼ一致していた場合には、試料容器11からのガス漏れはないと判断され、
図4中の線Eのように理想的な圧力曲線Dと大きく異なっていた場合には、試料容器11からガスが漏れていると判定される。なお、ここでも上記のような圧力曲線の作成は行わず、平衡化工程開始後の所定の時刻における圧力センサ70の測定値と当該時刻における理想的な圧力値として予め算出された値とを比較することにより試料容器11からのガス漏れの有無を判定するようにしてもよい。
【0044】
上記のステップS15において試料容器11からのガス漏れがあると判定した場合は、通知部84によってその旨をユーザに通知する(ステップS20)と共に、平衡化工程の開始直後から前記判定が完了するまでの間に取得された圧力センサ70の測定値及び/又は前記ステップS15における判定結果を記憶部83に記録し(ステップS21)、試料の導入を中止する。なお、記憶部83への測定値や判定結果の記録は、漏れ判定部82での判定の結果にかかわらず行うようにしてもよい。
【0045】
一方、ステップS15において試料容器11からのガス漏れがないと判定した場合は、続いて、電磁弁SV2を開放する。すると、試料容器11内の試料から発生した気体成分を含む試料ガスがニードル10から流路F1に流入し、流路切替バルブ20を経て計量管30に流入する。これにより、前記試料ガスが計量管30内に採取される(ステップS16)。なお、このとき計量管30に流入したガスの一部は、流路切替バルブ20、分岐管T1、及び流路F3を経てガス出口51から排出される。一方、上記工程の間、キャリアガスはガス入口42から流路F4→ポートd→ポートe→流路F5の順に通過してカラムに流れている。
【0046】
その後、流路切替バルブ20をインジェクション状態に切り替えると、ガス入口42から供給されるキャリアガスが、流路F4→ポートd→ポートc→計量管30→ポートf→ポートe→分岐管T2の順に通過してカラムへと流れるようになる。これにより、計量管30に保持されていた所定量の試料ガスがキャリアガスの流れと共にカラムに導入される(ステップS17)。なお、このとき流路切替バルブ20のポートeから流れ出して分岐管T2に至ったキャリアガス及び試料ガスの一部は、所定のスプリット比でスプリット流路F6に流入してガス出口52から排出される。
【0047】
カラムへの試料ガスの導入が完了したら、流路切替バルブ20をロード状態に切り替え、電磁弁SV1、SV2を閉鎖した状態で、試料容器11からニードル10を抜き取る(ステップS18)。そして、試料導入部100にセットされた全ての試料容器についてカラムへの試料ガスの導入が完了したか否かを判定する(ステップS19)。ここで、全試料の導入が完了していた場合には、試料導入部100の動作を終了する。一方、未導入の試料があった場合には、ステップS11に戻り、全試料の導入が完了するまでステップS11〜S19の動作を繰り返し実行する。
【0048】
以上の通り、本実施例に係るヘッドスペース試料導入装置によれば、流路F3の電磁弁SV2よりも上流側に圧力センサを設けたことにより、加圧工程及び平衡化工程における試料容器11内の圧力を測定することができ、これにより試料容器11からガスが漏れているか否かを知ることができる。
【0049】
なお、上記の例では加圧工程と平衡化工程のそれぞれにおいてガス漏れの判定を行う構成としたが、前記両工程のいずれか一方のみでガス漏れ判定を行うようにしてもよい。なお、平衡化工程で判定を行う場合には小規模なガス漏れであっても検出することができるが、正確な判定を行うためには比較的長時間に亘って圧力センサ70の測定値をモニタリングする必要がある。そこで、比較的大規模なガス漏れのみを検出できればよい場合には、加圧工程のみにおいてガス漏れ判定を行うようにすることが望ましい。
【0050】
また、上記の例ではガス漏れの発生をユーザに通知した後、自動的に試料導入部100の動作を停止する構成としたが、前記通知の際に、試料導入部100の動作を停止するか継続するかをユーザに選択させるようにしてもよい。また、ガス漏れが発生していると判定された場合に試料導入部100の動作を停止するか継続するかを予めユーザが設定して記憶部83に記憶させておき、該設定に従って試料導入部100の動作を制御するようにしてもよい。なお、ユーザが試料導入部100の動作を継続することを選択した場合でも、圧力センサ70の測定値及び/又は漏れ判定部82での判定結果が記憶部83に記録されるため、後で記録を参照して、ガス漏れが発生していた試料についてのみ分析をやり直すといったことが可能である。また、ガス分析装置による分析結果が適切でなかった場合に、後で記録を参照することにより原因を解明することもできる。
【0051】
また更に、上記の実施例では分岐管T1と電磁弁SV2の間に圧力センサ70を設けたが、このほか、電磁弁SV1と分岐管T1の間、分岐管T1と流路切替バルブ20のポートbの間、又は流路F1上のいずれかの位置に圧力センサ70を設けた場合でも上記同様の機能を達成することができる。また、加圧時のみにおいてガス漏れ判定を行う場合には、圧力制御装置61と電磁弁SV1の間に圧力センサ70を設けることもできる。また、圧力制御装置61内に設けられた圧力計の測定値に基づいて上記のような加圧工程におけるガス漏れ判定を行う構成とすることもできる(この場合、該圧力計が本発明における圧力センサに相当する)。
【実施例2】
【0052】
続いて、本発明に係るヘッドスペース試料導入装置の他の実施例について説明する。
図5は本実施例に係るヘッドスペース試料導入装置の概略構成図である。なお、同図では試料導入部100はスプリット方式を採っているが、スプリットレス方式でもよいことは当然である。また、既に説明した
図8と同一の構成要素には同一符号を付し、特に要しない限り詳しい説明を省略する。
【0053】
本実施例におけるヘッドスペース試料導入装置は、ニードル10の詰まりの有無を判定する機能を備えたものであり、基本構成は既に説明した
図8と同じであるが、特徴的な構成要素として、流路F3上の分岐管T1と電磁弁SV2の間の領域に当該領域における流路内のガス圧力を測定するための圧力センサ70を備えている。また、制御部200には詰まり判定部85が設けられると共に、通知部84が接続されている。
【0054】
制御部200は、上記の詰まり判定部85に加えて、動作制御部81及び記憶部83を含んでいる。動作制御部81は、試料導入部100の電磁弁SV1、SV2、流路切替バルブ20、圧力制御装置(APC)61、流量制御装置(AFC)62、及び圧力センサ70等の動作を制御する。詰まり判定部85は、前記圧力センサ70による測定結果に基づいてニードル10の詰まりの有無を判定する。記憶部83は、ハードディスク装置等の記憶装置を含み、詰まり判定部85による判定結果等を記憶する。
【0055】
なお、圧力制御装置61は、ガスボンベ等を含む加圧用ガス源(図示略)とガス入口41とをつなぐ接続流路、該接続流路に設けられた圧力計、及び該流路を開閉するための開閉弁(いずれも図示略)を内蔵しており、該圧力計の測定値が予め設定された目標値P
1より低いときには前記開閉弁を開き、該圧力計の測定値が前記目標値P
1より高いときには前記開閉弁を閉じるように制御を行う構成となっている。
【0056】
制御部200は、例えば汎用のパーソナルコンピュータにより構成することができ、該コンピュータにインストールされた専用の制御/処理ソフトウエアを実行することにより、各種の制御やデータ処理の機能を達成することができる。なお、制御部200は専用のハードウェアによって構成してもよい。
【0057】
通知部84は、詰まり判定部85による判定結果をユーザに通知するものであり、例えばモニタ等の表示装置を備え、該モニタに判定結果を表示するものとすることができる。また、通知部84は、スピーカ等の音声出力手段を備えたものとし、前記表示装置による通知に加えて又は代えて音声による判定結果の通知を行うものとしてもよい。
【0058】
前記の試料導入部100において、流路F1及び流路切替バルブ20のポートaから分岐管T1までの領域が本発明における試料ガス導入流路に相当する。また、流路F2及び前記接続流路が加圧用ガス導入流路に相当し、流路F3が排気用流路に相当する。また、電磁弁SV1、SV2がそれぞれ本発明における第1開閉バルブ及び第2開閉バルブに相当する。
【0059】
続いて、本実施例に係るヘッドスペース試料分析装置によるガス分析装置への試料ガス導入時の動作について、
図6のフローチャートを参照しつつ説明を行う。
【0060】
はじめに、試料導入部100にセットされた複数の試料容器(図示略)のうち一つの試料容器11の蓋12にニードル10を突き刺し、該ニードル10の先端を試料容器11内の上部空間に位置させる(ステップS31)。その後、上述の加圧工程(ステップS32)、平衡化工程(ステップS33)、試料ガス採取工程(ステップS34)、及び試料ガス導入工程(ステップS35)を実行する。なお、これらの工程は、試料採取のための基本的動作であり、既に説明した
図8の装置と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0061】
その後、試料ガス導入工程(ステップS35)が完了した時点で、流路切替バルブ20をロード状態に切り替える。そして、電磁弁SV1、SV2を閉鎖した状態で、試料容器11からニードル10を抜き取り(ステップS36)、SV1を開いて加圧用ガスを流路F1に導入する。このとき、電磁弁SV1を開いた瞬間から詰まり判定部85により圧力センサ70の測定値がモニタリングされ、
図7に示すような圧力曲線が作成される。一方、記憶部83には予め試料導入部100の配管構成や加圧用ガスの送出条件から予め算出された理想的な(即ち、ニードル10の詰まりがないと仮定した場合の)圧力曲線が記憶されている。そして、電磁弁SV1を開いてから所定の時間が経過した時点で詰まり判定部85が、圧力センサ70の測定値から作成された圧力曲線と前記理想的な圧力曲線を比較し、例えば両者の一致度が予め定められた閾値以上であるか否かに基づいてニードル10が詰まっているか否かを判定する(ステップS37)。
【0062】
なお、前記のステップS37で電磁弁SV1が開放された直後は、上述の圧力制御装置61内に設けられた圧力計の測定値が目標値P
1より低くなるために該圧力制御装置61内の開閉弁が開き、ガス入口41から流路F2へ加圧用ガスが流入する。このとき、ニードル10の詰まりがない場合には、前記加圧用ガスがニードル10の先端から外部に抜けるため、流路F2、F1、及び流路F3の分岐管T1から電磁弁SV2の間における流路内の圧力は殆ど上昇しない。そのため、このときの圧力センサ70による測定値は例えば
図7中の線Fのようになる。これに対し、ニードル10が詰まっていた場合には、加圧用ガスの流入に伴って流路F2、F1、及び流路F3の分岐管T1から電磁弁SV2の間における流路内の圧力が上昇するため、このときの圧力センサ70による測定値は
図7中の線G又は線Hのようになる。
【0063】
なお、
図7中の線Gのように圧力センサ70による測定値が目標値P
1に到達した場合には、前記圧力制御装置61内の圧力計による測定値も目標値P
1を超えるため、前記の開閉弁が閉鎖されてガス入口41からの加圧用ガスの流入が停止する。一方、
図7中の線Fや線Hのように圧力センサ70による測定値が目標値P
1に到達しなかった場合には、圧力制御装置61内の圧力計による測定値も目標値P
1に到達せず、前記の開閉弁が閉鎖されないため、電磁弁SV1を閉じるまではガス入口41から流路F2に加圧用ガスが流入し続けることとなる。
【0064】
本実施例における詰まり判定部85は、例えば圧力センサ70の測定値から作成した圧力曲線が上記の理想的な圧力曲線(
図7中の線F)とほぼ一致していた場合には、ニードル10の詰まりは発生していないと判断し、
図7中の線G又はHのように理想的な圧力曲線Fと大きく異なっていた場合には、ニードル10が詰まっていると判定する。なお、上記のような圧力曲線の作成は行わず、電磁弁SV1の解放後、所定の時刻における圧力センサ70の測定値と、当該時刻における理想的な圧力値として予め算出された値とを比較することによりニードル10の詰まりの有無を判定するようにしてもよい。
【0065】
上記のステップS37においてニードル10の詰まりがあると判定した場合は、通知部84によってその旨をユーザに通知する(ステップS39)と共に、電磁弁SV1を閉鎖する。そして、上記ステップS36、S37でニードル10を試料容器11から抜き取ってSV1を開いた直後から前記判定が完了するまでの間に取得された圧力センサ70の測定値及び/又は前記ステップS37における判定結果を記憶部83に記録し(ステップS40)、試料導入部100の動作を停止する。なお、記憶部83への測定値や判定結果の記録は、詰まり判定部85での判定の結果にかかわらず行うようにしてもよい。
【0066】
一方、上記のステップS37において、ニードル10の詰まりがないと判定された場合には、電磁弁SV1を閉鎖し、続いて、試料導入部100にセットされた全ての試料容器についてカラムへの試料ガスの導入が完了したか否かを判定する(ステップS38)。ここで、全試料の導入が完了していた場合には、試料導入部100の動作を終了する。一方、未導入の試料があった場合には、ステップS31に戻り、全試料の導入が完了するまでステップS31〜S38の動作を繰り返し実行する。
【0067】
以上の通り、本実施例に係るヘッドスペース試料導入装置によれば、流路F3の電磁弁SV2よりも上流側に圧力センサを設けたことにより、電磁弁SV2を閉鎖した状態で加圧用ガスを流路F2に導入したときに該ニードルに掛かる圧力を測定することができ、これにより、ニードル10が詰まっているか否かを容易に知ることができる。
【0068】
また、上記の例ではニードル10が詰まっていることをユーザに通知した後、自動的に試料導入部100の動作を停止する構成としたが、前記通知の際に、試料導入部100の動作を停止するか継続するかをユーザに選択させるようにしてもよい。また、ニードル10が詰まっていると判定された場合に試料導入部100の動作を停止するか継続するかを予めユーザが設定して記憶部83に記憶させておき、該設定に基づいて試料導入部100を制御するようにしてもよい。なお、ユーザが試料導入部100の動作を継続することを選択した場合でも、圧力センサ70の測定値及び/又は漏れ判定部82での判定結果が記憶部83に記録されるため、後で記録を参照して、ニードルの詰まりが発生していた試料についてのみ分析をやり直すといったことが可能である。また、ガス分析装置による分析結果が適切でなかった場合に、後で記録を参照することにより原因を解明することもできる。
【0069】
なお、上記の例では、一つの試料容器について試料ガスのガス分析装置への導入を完了する毎にニードルの詰まりを判定する構成としたが、判定を行うタイミングは上記に限定されるものではなく、例えば、最初の試料容器にニードルを刺入する前にも上記のような詰まりの判定を行うようにしてもよい。これにより、ニードルが詰まっていることに気付かずに試料容器にニードルを刺入してしまい、貴重な試料を無駄にしてしまうのを防ぐことができる。また、予め定められた個数の試料容器について試料ガスのカラムへの導入を完了する毎に判定を行う構成としたり、ユーザの指示に応じて適宜のタイミングで判定を行う構成としたりしてもよい。
【0070】
また更に、上記の実施例では分岐管T1と電磁弁SV2の間に圧力センサ70を設けたが、電磁弁SV1と分岐管T1の間、分岐管T1と流路切替バルブ20のポートbの間、圧力制御装置61と電磁弁SV1の間、又は流路F1上のいずれかの位置に圧力センサ70を設けた場合でも上記同様の機能を達成することができる。また、圧力制御装置61内に設けられた圧力計の測定値に基づいて上記のようなニードルの詰まり判定を行う構成とすることもできる(この場合、該圧力計が本発明における圧力センサに相当する)。
【0071】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、上記実施例では、試料容器におけるガス漏れの有無の判定、又はニードルの詰まりの有無の判定のいずれか一方を行う構成としたが、一台の装置でその両方を行う構成としてもよい。この場合、制御部200には漏れ判定部82と詰まり判定部85の両方を設けるものとする。