(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝熱基板支持部は、前記実装基板に実装された回路部品のうち発熱量及び発熱密度の少なくとも一方が相対的に大きい回路部品の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された従来例にあっては、制御部品を実装した制御基板及びGNDパターンを固定金具及び支柱を介して冷却板接続するようにしているので、制御基板上の制御部品から発生する熱を冷却板へ伝導させ、外部へ放熱することができる。しかしながら、上記特許文献1に記載された従来例では、制御基板及びGNDパターンと支柱との接続を、固定金具を介して行うようにしている。このため、制御基板及びGNDパターンと支柱との間の熱抵抗が大きく、制御基板上の制御部品から発生する熱を冷却板へ効率よく伝導することができないという未解決の課題がある。
【0005】
しかも、上記特許文献1に記載された従来例では、制御基板と冷却板との間の伝熱を支柱で行うので、広い断面積の伝熱経路を確保することができないとともに、伝熱長さも長いので、熱輸送量が少なくなり、制御基板と冷却板との間の伝熱効率を向上させることができないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、回路部品を実装した実装基板を小さな熱抵抗で支持すると共に、発熱回路部品の発熱を効率よく冷却体に伝熱することができる電力変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置の第1の態様は、一面を冷却体に接合する半導体パワーモジュールと、前記半導体パワーモジュールを駆動する発熱回路部品を含む回路部品を実装した実装基板と、前記実装基板を支持すると共に前記実装基板の熱を前記冷却体に伝熱させる伝熱支持板とを備えている。そして、前記伝熱支持板は、前記実装基板を前記伝熱支持板に直接接合する接合部を有している。
【0007】
この構成によると、実装基板に実装されている発熱回路部品や基板パターンの熱を、接合部を介して伝熱支持板に伝熱し、伝熱支持板から板状の断面積の大きな伝熱経路形成部材を介して冷却体に効率良く放熱することができ、実装基板の発熱回路部品の発熱を半導体パワーモジュールや実装基板を覆う筐体を介することなく冷却体に放熱することができる。また、伝熱支持板に伝熱基板支持部が一体形成されているので、両者間の熱抵抗を小さくすることができ、伝熱効率を向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係る電力変換装置の第2の態様は、電力変換用の半導体スイッチング素子をケース体に内蔵し、当該ケース体の一面に冷却部材が形成された半導体パワーモジュールと、前記半導体パワーモジュールのケース体の他面側に装着される前記半導体スイッチング素子を駆動する発熱回路部品を含む回路部品を実装した実装基板と、前記半導体パワーモジュールの冷却部材を冷却する冷却体と、前記実装基板を支持する伝熱支持板と、該伝熱支持板と前記冷却体との間に配設された直接伝熱経路を形成する板状の伝熱経路形成部材とを備えている。そして、前記伝熱支持板は、前記実装基板を支持する伝熱基板支持部を一体形成している。
【0009】
この構成によると、実装基板に実装されている発熱回路部品や基板パターンの熱を、伝熱基板支持部を介して伝熱支持板に伝熱し、伝熱支持板から板状の断面積の大きな伝熱経路形成部材を介して冷却体に効率良く放熱することができ、実装基板の発熱回路部品の発熱を半導体パワーモジュールや実装基板を覆う筐体を介することなく冷却体に放熱することができる。また、伝熱支持板に伝熱基板支持部が一体形成されているので、両者間の熱抵抗を小さくすることができ、伝熱効率を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る電力変換装置の第3の態様は、前記伝熱基板支持部は、前記実装基板に実装した回路部品が当該伝熱支持板に非接触となる間隙を形成して前記実装基板を支持している。
この構成によると、実装基板と伝熱支持板との間に実装基板に実装した回路部品が伝熱支持板に非接触となる間隙が形成されているので、間隙内に冷気の侵入が可能となり、冷却効果を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る電力変換装置の第4の態様は、前記実装基板と前記伝熱支持板との間隙に絶縁部材を配設している。
この構成によると、実装基板と伝熱支持板との間隙に絶縁部材を配設したので、実装基板と伝熱支持板との距離を短くすることができ、伝熱基板支持部の高さを短くして伝熱距離を短くし、伝熱効果を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る電力変換装置の第5の態様は、前記伝熱基板支持部が、前記実装基板に実装された回路部品のうち発熱量及び発熱密度の少なくとも一方が相対的に大きい回路部品の近傍に形成されている。
この構成によると、伝熱基板支持部が実装基板に実装された回路部品のうち発熱量及び発熱密度の少なくとも一方が相対的に大きい回路部品の近傍に配置されているので、発熱回路部品の発熱を効率良く伝熱支持板に伝熱することができる。
【0013】
また、本発明に係る電力変換装置の第6の態様は、前記伝熱基板支持部が、前記伝熱支持板上に複数形成されている。
この構成によると、伝熱支持板上に伝熱基板支持部が複数形成されているので、支持する実装基板の撓みを防止することができると共に、複数の伝熱経路を形成することができ、伝熱効率をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る電力変換装置の第7の態様は、前記伝熱支持板が、熱伝導率の良い金属材料で形成されている。
この構成によると、伝熱支持板をアルミニウム、アルミニウム合金、銅等の熱伝導率の良い金属材料で形成するので、伝熱効率をより向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る電力変換装置の第8の態様は、前記伝熱経路形成部材が、熱伝導率の良い板状金属材料で形成されている。
この構成によると、伝熱経路形成部材をアルミニウム、アルミニウム合金、銅等の熱伝導率の良い金属材料で形成するので、伝熱効率をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る電力変換装置の第9の態様は、前記実装基板及び伝熱支持板と前記伝熱経路形成部材との組を複数組備え、前記組毎に前記伝熱経路部材の高さを異ならせるとともに、当該伝熱経路形成部材が前記半導体パワーモジュールの異なる側面を通って前記冷却体に接続されている。
この構成によると、実装基板と伝熱支持板部との組が複数存在する場合に、実装基板毎に異なる放熱経路を形成することができ、伝熱効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る電力変換装置の第10の態様は、前記複数の伝熱経路形成部材が、前記冷却体と接触する連結板部を介して連結されている。
この構成によると、複数の伝熱経路形成部材が冷却体と接触する連結板部を介して連結されているので、伝熱経路形成部材と冷却体との接触面積を広くすることができ、実装回路基板に実装された発熱回路部品の発熱をより効率良く放熱することができる。
【0018】
また、本発明に係る電力変換装置の第11の態様は、前記伝熱支持板と前記伝熱経路形成部材とが一体に形成されている。
この構成によると、伝熱支持板と伝熱経路形成部材とが一体に形成されているので、両者間の連結部を省略して熱抵抗をより小さくすることが可能となり、実装基板の発熱をより効率よく冷却体に放熱することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、発熱回路部品を実装した実装基板を伝熱支持板上に一体形成した接合部としての伝熱基板支持部で支持するので、伝熱支持板と伝熱基板支持部との間の熱抵抗を小さくすることができ、発熱回路部品等の発熱を効率よく伝熱支持板に伝熱することができる。
また、伝熱支持板と冷却体との間に直接伝熱経路を形成する板状の伝熱経路形成部材が配設されているので、広い断面積の伝熱経路を形成することができ、伝熱支持板に伝熱された熱を効率よく冷却体に放熱することができる。このとき、伝熱経路が半導体パワーモジュールや実装基板を覆う筐体とは別に形成されるので、筐体自体を熱伝導率の良い材料とする必要がなく、安価な合成樹脂材で構成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。
図1は本発明に係る電力変換装置の全体構成を示す断面図である。
図中、1は電力変換装置であって、この電力変換装置1は筐体2内に収納されている。筐体2は、合成樹脂材を成形したものであり、水冷ジャケットの構成を有する冷却体3を挟んで上下に分割された下部筐体2A及び上部筐体2Bで構成されている。
【0022】
下部筐体2Aは有底角筒体で構成されている。この下部筐体2Aは開放上部が冷却体3で覆われ、内部に平滑用のフィルムコンデンサ4が収納されている。
上部筐体2Bは、上端及び下端を開放した角筒体2aと、この角筒体2aの上端を閉塞する蓋体2bとを備えている。そして、角筒体2aの下端が冷却体3で閉塞されている。この角筒体2aの下端と冷却体3との間には、図示しないが、液状シール剤の塗布やゴム製パッキンの挟み込みなどのシール材が介在されている。
【0023】
冷却体3は、冷却水の給水口3a及び排水口3bが筐体2の外方に開口されている。これら給水口3a及び排水口3bは例えばフレキシブルホースを介して図示しない冷却水供給源に接続されている。この冷却体3は例えば熱伝導率の高いアルミニウム、アルミニウム合金をダイキャスト成形や鋳造することによって形成されている。そして、冷却体3は、下面が平坦面とされ、上面が中央部3cを残して角枠状の周溝3dが形成されている。また、冷却体3には、下部筐体2Aに保持されたフィルムコンデンサ4の絶縁被覆された正負の電極4aを上下に挿通する挿通孔3eが形成されている。
【0024】
電力変換装置1は、
図2と共に参照して明らかなように、電力変換用の例えばインバータ回路を構成する半導体スイッチング素子として例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を内蔵した半導体パワーモジュール11を備えている。この半導体パワーモジュール11は、扁平な直方体状の絶縁性のケース体12内にIGBTを内蔵しており、ケース体12の下面に金属製の冷却部材13が形成されている。
【0025】
ケース体12及び冷却部材13には平面からみて四隅に固定部材としての固定ねじ14を挿通する挿通孔15が形成されている。また、ケース体12の上面には、挿通孔15の内側における4箇所に所定高さの基板固定部16が突出形成されている。
この基板固定部16の上端には、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTを駆動する駆動回路等が実装された駆動回路基板21が固定されている。
【0026】
また、駆動回路基板21の上方には、駆動回路基板21と所定間隔を保って半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTを制御する実装基板としての制御回路基板22が固定されている。この制御回路基板22には、相対的に発熱量の大きい、又は発熱密度の大きい発熱回路部品を含む制御回路等が実装されている。
さらに、制御回路基板22の上方には、制御回路基板22と所定間隔を保って半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTに電源を供給する実装基板としての電源回路基板23が固定されている。この電源回路基板23には、相対的に発熱量の大きい、又は発熱密度の大きい発熱回路部品を含む電源回路等が実装されている。
【0027】
そして、駆動回路基板21は、基板固定部16に対向する位置に形成した挿通孔21a内に継ぎねじ24の雄ねじ部24aを挿通し、この雄ねじ部24aを基板固定部16の上面に形成した雌ねじ部16aに螺合することにより固定されている。
また、制御回路基板22は、継ぎねじ24の上端に形成した雌ねじ部24bに対向する位置に形成した挿通孔22a内に継ぎねじ25の雄ねじ部25aを挿通し、この雄ねじ部25aを継ぎねじ24の雌ねじ部24bに螺合することにより固定されている。
【0028】
さらに、電源回路基板23は、継ぎねじ25の上端に形成した雌ねじ部25bに対向する位置に形成した挿通孔23a内に固定ねじ26を挿通し、この固定ねじ26を継ぎねじ25の雌ねじ部25bに螺合することにより固定されている。
また、制御回路基板22及び電源回路基板23は、伝熱支持板32及び33によって支持されている。これら伝熱支持板32及び33は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導率が高い(例えば100W・m
−1・K
−1以上)金属で制御回路基板22及び電源回路基板23と略同一外形に形成されている。
【0029】
伝熱支持板32及び33の上面には、例えば四隅位置に4本の中空の接合部として伝熱基板支持部34及び35が一体に突出形成されている。これら伝熱基板支持部34及び35は、伝熱支持板32及び33に対してバーリング加工や絞り加工を施すことにより形成されている。また、伝熱基板支持部34及び35の内周面には雌ねじ36がそれぞれ形成されている。
ここで、伝熱基板支持部34及び35の高さは、後述するように、伝熱支持板32及び33の上面に貼着した絶縁シート40aと制御回路基板22及び電源回路基板23の下面に実装した回路部品の底面との間に必要な絶縁距離を確保できる高さに選定されている。
【0030】
そして、伝熱基板支持部34及び35の上端には、制御回路基板22及び電源回路基板23が固定支持されている。これら制御回路基板22及び電源回路基板23の固定は、先ず、伝熱基板支持部34及び35の上端に、制御回路基板22及び電源回路基板23を載置する。この状態で、固定ねじ38を、制御回路基板22及び電源回路基板23に形成したねじ挿通孔37を通じて制御回路基板22及び電源回路基板23の雌ねじ36に螺合させて締め付ける。これにより、制御回路基板22及び電源回路基板23が伝熱基板支持部34及び35上に固定される。
【0031】
また、伝熱支持板32及び33に形成された伝熱基板支持部34及び35は、制御回路基板22及び電源回路基板23に実装された相対的に発熱量の大きい、又は発熱密度の大きい発熱回路部品39の近傍に配置されている。
さらに、伝熱支持板32及び33の上下面には、それぞれ絶縁材料で形成された絶縁シート40a及び40bが配設されている。伝熱支持板32及び33の上面側の絶縁シート40aによって、制御回路基板22及び電源回路基板23の下面側に実装された回路部品と伝熱支持板32及び33との間の絶縁を行う。また、伝熱支持板32及び33の下面側の絶縁シート40bによって、下面側に対向する駆動回路基板21及び制御回路基板22の上面に実装された回路部品との絶縁を図るようにしている。
【0032】
このため、駆動回路基板21及び制御回路基板22間と、制御回路基板22及び電源回路基板23間との絶縁距離を短くすることができ、半導体パワーモジュール11と電源回路基板23との間の高さを低くして小型化を図ることができる。
そして、伝熱支持板32と冷却体3との間には、半導体パワーモジュール11の右端側を通って直接伝熱経路を形成する板状の伝熱経路形成部材42が配設されている。また、伝熱支持板33と冷却体3との間にも、半導体パワーモジュール11の左端側を通って直接伝熱経路を形成する板状の伝熱経路形成部材43が配設されている。これら伝熱経路形成部材42及び43は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導率が高い(例えば100W・m
−1・K
−1以上)金属で形成されている。
【0033】
両伝熱経路形成部材42及び43は、冷却体3の上面における半導体パワーモジュール11の外周縁に対向する周溝3d内に配置されて冷却体接触板部となる角枠状の共通の底板部44を有する。したがって、伝熱経路形成部材42及び43は底板部44によって一体に連結されている。
【0034】
そして、伝熱経路形成部材42及び43と底板部44とは黒色の表面を有する。これら伝熱経路形成部材42及び43と底板部44との表面を黒色化にするには、表面に黒色樹脂をコーティングしたり、黒色塗料で塗装したりすればよい。このように、伝熱経路形成部材42及び43と底板部44との表面を黒色とすることにより、金属の素材色と比較し熱放射率が大きくなり、放射伝熱量を増やすことができる。このため、伝熱経路形成部材42及び43と底板部44との周囲への放熱が活発化され、制御回路基板22及び電源回路基板23の熱冷却を効率良く行うことができる。なお、底板部44を除いて伝熱経路形成部材42及び43のみの表面を黒色にするようにしてもよい。
【0035】
伝熱経路形成部材42は、
図2に示すように、冷却体3の周溝3d内に配置される共通の底板部44の長辺側の外周縁に一体に連結されて上方に延長する連結側板部42aと、この連結側板部42aの上端から左方に延長する上板部42bとで断面逆L字状に形成されている。連結側板部42aは、半導体パワーモジュール11の長辺側の右側面を通って上方に延長している。
【0036】
そして、連結側板部42aの底板部44及び上板部42bとの連結部を例えば円筒面の一部でなる湾曲面42c及び42dに形成している。
このように連結側板部42aと底板部44及び上板部42bとの連結部を円筒状の湾曲面42c及び42dとすることにより、上下振動や横揺れ等に対する耐振動性を向上することができる。すなわち、電力変換装置1に上下振動や横揺れが伝達されたときに連結側板部42aと底板部44及び上板部42bとの連結部に生じる応力集中を緩和することが可能となる。
【0037】
さらに、連結側板部42aと底板部44及び上板部42bとの連結部を円筒状の湾曲面42c及び42dとすることにより、連結側板部42aと底板部44及び上板部42bとの連結部を直角のL字形状とする場合に比較して熱伝導経路を短くすることができる。このため、伝熱支持板32から冷却体3までの伝熱経路を短くして、効率的な熱冷却が可能となる。
【0038】
伝熱経路形成部材43は、
図2及び
図3に示すように、冷却体3の周溝3d内に配置される共通の底板部44の長辺側の外周縁に一体に連結されて上方に延長する連結側板部43aと、この連結側板部43aの上端から右方に延長する上板部43bとで断面逆L字状に形成されている。連結側板部43aは、半導体パワーモジュール11の長辺側の左側面を通って上方に延長している。
【0039】
そして、連結側板部43aの底板部44及び上板部43bとの連結部を例えば円筒面の一部でなる湾曲面43c及び43dに形成している。
このように連結側板部43aと底板部44及び上板部43bとの連結部を円筒状の湾曲面43c及び43dとすることにより、上下振動や横揺れ等に対する耐振動性を向上することができる。すなわち、電力変換装置1に上下振動や横揺れが伝達されたときに連結側板部43aと底板部44及び上板部43bとの連結部に生じる応力集中を緩和することが可能となる。
【0040】
さらに、連結側板部43aと底板部44及び上板部43bとの連結部を円筒状の湾曲面43c及び43dとすることにより、連結側板部43aと底板部44及び上板部43bとの連結部を直角のL字形状とする場合に比較して熱伝導経路を短くすることができる。このため、伝熱支持板33から冷却体3までの伝熱経路を短くして、効率的な熱冷却が可能となる。
【0041】
そして、伝熱支持板32と伝熱経路形成部材42とが、
図2に示すように、伝熱支持板32の右方に突出した取付端部32aを、伝熱経路形成部材42の上板部42bの上面に重ね合わせた状態で固定ねじ45によって密着されて連結されている。同様に、伝熱支持板33と伝熱経路形成部材43とが、
図2に示すように、伝熱支持板33の左方に突出した取付端部33aを、伝熱経路形成部材43の上板部43bの上面に重ね合わせた状態で固定ねじ46によって密着されて連結されている。
【0042】
また、伝熱経路形成部材42及び43の共通の底板部44には、
図2及び
図3に示すように、半導体パワーモジュール11の固定ねじ14を挿通する挿通孔15に対向する位置に固定部材挿通孔44aが形成されている。さらに、底板部44の上面と半導体パワーモジュール11に形成された冷却部材13の下面との間に板状弾性部材47が介在されている。
そして、半導体パワーモジュール11及び冷却部材13の挿通孔15及び底板部44の固定部材挿通孔44aに固定ねじ14を挿通し、この固定ねじ14を冷却体3に形成された雌ねじ部3fに螺合させることにより、半導体パワーモジュール11と底板部44とが冷却体3に共締めされて固定されている。
【0043】
次に、上記第1の実施形態の電力変換装置1の組立方法を説明する。
先ず、前述したように、伝熱支持板32及び33の上下面に絶縁シート40a及び40bを貼着する。
次いで、電源回路基板23を伝熱支持板33の伝熱基板支持部35の上端に載置した状態で、固定ねじ38によって電源回路基板23と伝熱支持板33の伝熱基板支持部35とを固定して、電源回路ユニットU3を形成しておく。
【0044】
次いで、制御回路基板22を伝熱支持板32の伝熱基板支持部35の状態に載置した状態で、固定ねじ38によって、制御回路基板22と伝熱支持板32の伝熱基板支持部34とを固定して、制御回路ユニットU2を形成しておく。
一方、冷却体3の周溝3d内に、伝熱経路形成部材42及び43に共通の底板部44を、その上面と半導体パワーモジュール11に形成した冷却部材13の下面との間に板状弾性部材47を介在させた状態で、半導体パワーモジュール11とともに固定ねじ14で固定する。
【0045】
このように、半導体パワーモジュール11と伝熱経路形成部材42及び43の共通の底板部44とを同時に冷却体3に固定することができるので、組立工数を減少させることができる。また、底板部44を冷却体3に固定する際に板状弾性部材47を底板部44と半導体パワーモジュール11の冷却部材13との間に介在させるので、この板状弾性部材47によって底板部44が冷却体3の周溝3dの底部に押し付けられて、底板部44が冷却体3に確実に接触されて、広い接触面積を確保することができる。
【0046】
また、半導体パワーモジュール11には、冷却体3に固定する前又は固定した後に、その上面に形成された基板固定部16に駆動回路基板21を載置する。そして、この駆動回路基板21をその上方から4本の継ぎねじ24によって基板固定部16に固定する。
そして、継ぎねじ24の上面に制御回路ユニットU2の制御回路基板22を載置し、4本の継ぎねじ25によって固定する。さらに、継ぎねじ25の上面に電源回路ユニットU3の電源回路基板23を載置し、4本の固定ねじ26によって固定する。そして、伝熱支持板32及び33を伝熱経路形成部材42及び43に固定ねじ45及び46によって連結する。
【0047】
その後、
図1に示すように、半導体パワーモジュール11の正負の直流入力端子11aに、ブスバー50を接続し、このブスバー50の他端に冷却体3を貫通するフィルムコンデンサ4の正負の電極4aを固定ねじ51で連結する。さらに、半導体パワーモジュール11の直流入力端子11aに外部のコンバータ(図示せず)に接続する接続コード52の先端に固定された圧着端子53を固定する。
【0048】
さらに、半導体パワーモジュール11の3相交流出力端子11bにブスバー55を固定ねじ56で接続し、このブスバー55の途中に電流センサ57を配置する。そして、ブスバー55の他端に外部の3相電動モータ(図示せず)に接続したモータ接続ケーブル58の先端に固定した圧着端子59を固定ねじ60で固定して接続する。
その後、冷却体3の下面及び上面に、下部筐体2A及び上部筐体2Bを、シール材を介して固定して電力変換装置1の組立を完了する。
【0049】
この状態で、外部のコンバータ(図示せず)から直流電力を供給するとともに、電源回路基板23に実装された電源回路、制御回路基板22に実装された制御回路を動作状態とし、制御回路から例えばパルス幅変調信号でなるゲート信号を駆動回路基板21に実装された駆動回路を介して半導体パワーモジュール11に供給する。これによって、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTが制御されて、直流電力を交流電力に変換する。変換した交流電力は3相交流出力端子11bからブスバー55を介してモータ接続ケーブル58に供給し、3相電動モータ(図示せず)を駆動制御する。
【0050】
このとき、半導体パワーモジュール11に内蔵されたIGBTで発熱する。この発熱は半導体パワーモジュール11に形成された冷却部材13が冷却体3の中央部3cに直接接触されているので、冷却体3に供給されている冷却水によって冷却される。
【0051】
一方、制御回路基板22及び電源回路基板23に実装されている制御回路及び電源回路には発熱回路部品39が含まれており、これら発熱回路部品39で発熱を生じる。このとき、発熱回路部品39の近傍には伝熱支持板32及び33に一体に形成された伝熱基板支持部34及び35が配置されている。このため、発熱回路部品39の発熱は伝熱基板支持部34及び35を通じて伝熱支持板32及び33に伝熱される。このとき、伝熱基板支持部34及び35が伝熱支持板32及び33に一体に形成されているので、伝熱基板支持部34及び35の伝熱支持板32及び33との間の熱抵抗を低くすることができ、良好な熱伝導を行うことができる。
【0052】
そして、伝熱支持板32及び33には、伝熱経路形成部材42及び43が連結されているので、伝熱支持板32及び33に伝達された熱は、伝熱経路形成部材42及び43を通って共通の底板部44に伝熱される。この底板部44は、冷却体3の周溝3d内に直接接触されているので、底板部44に伝達された熱は冷却体3に放熱される。
さらに、底板部44に伝熱された熱は、その上面側から板状弾性部材47を介して半導体パワーモジュール11の冷却部材13に伝達され、この冷却部材13を介して冷却体3の中央部3cに伝達されて放熱される。
【0053】
このように、上記第1の実施形態によると、実装基板としての制御回路基板22及び電源回路基板23を支持する伝熱支持板32及び33に伝熱基板支持部34及び35を一体に形成している。このため、伝熱基板支持部34及び35と伝熱支持板32及び33との間の熱抵抗を、伝熱基板支持部34及び35を伝熱支持板32及び33とは別部材として固定ねじ等で接合する場合に比較して遥かに小さくすることができる。
【0054】
しかも、制御回路基板22及び電源回路基板23と伝熱支持板32及び33との間が円筒状の伝熱基板支持部34及び35で連結されているが、伝熱基板支持部34及び35での伝熱距離は前述した従来例に比較して格段に短い。このため、伝熱基板支持部34及び35による熱輸送量Qを増加させることができる。
【0055】
すなわち、熱輸送量Qは、下記(1)式で表すことができる。
Q=λ×(A/L)×T …………(1)
ただし、λは熱伝導率[W/m℃]、Tは温度差[℃]基板温度T1−冷却体温度T2、Aは伝熱最小断面積[m
2]、Lは伝熱長さ[m]である。
上記(1)式から伝熱最小断面積Aが同じであるとしたときには、伝熱長さLが短い方が熱輸送量Qは多くなり、本実施形態における伝熱基板支持部34及び35による熱輸送量Qを従来例に比較して増加させることができる。
【0056】
したがって、制御回路基板22及び電源回路基板23に実装された発熱回路部品39の発熱を伝熱支持板32及び33に効率良く伝熱することができ、伝熱支持板32及び33から伝熱経路形成部材42及び43を介して冷却体3に効率良く放熱することができる。
しかも、伝熱基板支持部34及び35を制御回路基板22及び電源回路基板23に実装された発熱回路部品39の近傍に配置している。このため、発熱回路部品39と伝熱基板支持部34及び35との間の伝熱距離を短くすることができ、冷却体3への放熱をより効率的に行うことができる。
【0057】
また、伝熱支持板32及び33に伝熱された発熱回路部品39の発熱は、伝熱経路形成部材42及び43を介して冷却体3に放熱される。このとき、伝熱経路形成部材42及び43がそれぞれ半導体パワーモジュール11の長辺に沿って設けられている。
このため、伝熱断面積を広くとることができ、広い放熱経路を確保することができる。しかも、伝熱経路形成部材42及び43は折れ曲がり部が円筒状の湾曲部とされているので、折れ曲がり部をL字状にする場合に比較して冷却体3までの伝熱距離を短くすることができる。このため、前述した(1)式から明らかなように、伝熱経路形成部材42及び43の伝熱長さLが短くなると、伝熱経路形成部材42及び43による熱輸送量Qは増加することになり、良好な冷却効果を発揮することができる。
【0058】
また、伝熱経路形成部材42及び43が共通の底板部44で一体化されているので、伝熱経路形成部材42及び43と底板部44との間に部品同士の継ぎ目がなく、熱抵抗を抑制することができ、より効率の良い放熱経路を形成することができる。
さらに、発熱回路部品39が実装された制御回路基板22及び電源回路基板23から冷却体3までの放熱経路に筐体2が含まれていないので、筐体2に伝熱性が要求されることがない。したがって、筐体2の構成材料としてアルミニウム等の高熱伝導率の金属を使用する必要がなく、合成樹脂材で筐体2を構成することが可能となり、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0059】
また、放熱経路が筐体2に依存することなく、電力変換装置1単独で放熱経路を形成することができるので、半導体パワーモジュール11と、駆動回路基板21、制御回路基板22及び電源回路基板23とで構成される電力変換装置1を種々の異なる形態の筐体2や冷却体3に適用することができる。筐体設計の自由度を向上させることができる。
【0060】
また、制御回路基板22及び電源回路基板23を金属製の伝熱支持板32及び33で支持しているので、制御回路基板22及び電源回路基板23の剛性を高めることができる。このため、電力変換装置1を車両の走行用モータを駆動するモータ駆動回路として適用する場合のように、電力変換装置1に
図5に示す上下振動や横揺れが作用する場合でも、伝熱支持板32及び33と伝熱経路形成部材42及び43とで剛性を高めることができる。したがって、上下振動や横揺れ等の影響が少ない電力変換装置1を提供することができる。
【0061】
なお、上記第1の実施形態においては、伝熱支持板32及び33の上下面に絶縁シート40a及び40bを貼着した場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、十分な絶縁距離が確保されていれば絶縁シート40a及び40bの一方又は双方を省略することもできる。
このように、絶縁シート40a及び40bの少なくとも一方を省略した場合には、伝熱支持板32及び33の上面及び下面の少なくとも一方の面が露出されることになる。この露出面で制御回路基板22及び電源回路基板23の周囲の発熱を吸熱することができ、制御回路基板22及び電源回路基板23の放熱効果をより向上させることができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、制御回路ユニットU2及び電源回路ユニットU3で、伝熱支持板32及び33を制御回路基板22及び電源回路基板23と同じ外形とした場合について説明した。しかしながら、本発明は上記構成に限定されるものではなく、伝熱支持板32及び33を制御回路基板22及び電源回路基板23より大きな外形として、伝熱支持板32及び33での吸熱効果をより向上させるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、発熱回路部品39を実装した基板が2種類存在する場合について説明した。しかしながら、本発明は上記構成に限定されるものではなく、発熱回路部品39を実装した基板が例えば制御回路基板22の一枚だけである場合には、
図6(a)に示すように構成してもよい。すなわち、伝熱支持板32の左側にも伝熱経路形成部材42Lを設けて、伝熱支持板32の両側に放熱経路を形成するようにしてもよい。このように構成することにより、伝熱支持板32の両側に放熱経路が形成されることにより、制御回路基板22の放熱効果をより向上させることができると共に、上下振動及び左右振動に対する剛性をより高くすることができる。
【0064】
さらには、
図6(b)に示すように伝熱経路形成部材42及び43の上板部42b及び43bを各回路ユニットU2及びU3に対向させて複数段形成して、複数の伝熱支持板32及び33を支持するようにしてもよい。この場合にも、制御回路基板22の放熱効果をより向上させることができると共に、上下振動及び左右振動に対する剛性をより高くすることができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、半導体パワーモジュール11の冷却部材13を冷却体3の上面に接触させた場合について説明した。しかしながら、本発明は上記構成に限らず、冷却部材13を、
図7及び
図8に示すように構成することもできる。
すなわち、本実施形態では、半導体パワーモジュール11に形成されている冷却部材13が冷却体3に流れる冷却水に直接接触する冷却フィン61を備えた構成とされている。これに応じて、冷却体3の中央部に開口する冷却フィン61を冷却水の通路に浸漬させる浸漬部62を形成している。
【0066】
そして、浸漬部62を囲む周壁63と冷却部材13との間にOリング等のシール部材66が配設されている。
その他の構成については前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、
図1及び
図2との対応部分には同一符号を付しその詳細説明はこれを省略する。
この構成によると、半導体パワーモジュール11の冷却部材13に冷却フィン61が形成され、この冷却フィン61が冷却水に浸漬部62で直接浸漬されているので、半導体パワーモジュール11をより効率良く冷却することができる。
【0067】
また、上記実施形態においては、伝熱支持板32及び33と伝熱経路形成部材42及び43とを別体で構成する場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものでなく、
図9に示すように、伝熱支持板33と伝熱経路形成部材43とを一体に構成するようにしてもよい。同様に、伝熱支持板32と伝熱経路形成部材42とを一体に構成するようにしてもよい。これらの場合には、伝熱支持板32及び33と伝熱経路形成部材42及び43との間に継ぎ目が形成されることがなくなるので、熱抵抗をより小さくしてより効率の良い放熱を行うことができる。
【0068】
さらに、上記実施形態では、平滑用のコンデンサとしてフィルムコンデンサ4を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、円柱状の電解コンデンサを適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明による電力変換装置を電気自動車に適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、軌条を走行する鉄道車両にも本発明を適用することができ、任意の電気駆動車両に適用することができる。さらに電力変換装置としては電気駆動車両に限らず、他の産業機器における電動モータ等のアクチュエータを駆動する場合に本発明の電力変換装置を適用することができる。