(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768941
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20150806BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20150806BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20150806BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
H04B1/38
H03H7/075 Z
H05K1/02 Q
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H05K3/46 U
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-542021(P2014-542021)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2013076770
(87)【国際公開番号】WO2014061448
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-229671(P2012-229671)
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英樹
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−156556(JP,A)
【文献】
特開2008−211764(JP,A)
【文献】
特開2005−166980(JP,A)
【文献】
特開2003−124769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38
H03H 7/075
H05K 1/02
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層基板と、
前記積層基板上に実装された高周波増幅回路と、
前記高周波増幅回路の直下の前記積層基板内に形成され、前記高周波増幅回路の放熱に使用されるサーマルビアと、
前記積層基板内に形成され、前記高周波増幅回路と接続され、インダクタとキャパシタとを有するLC回路とを備え、
前記積層基板は、その内層に形成されたグランド電極、および、前記グランド電極に対向する平板電極を含み、
前記グランド電極および前記平板電極は前記キャパシタを構成し、
前記サーマルビアは、前記インダクタとして使用され、
前記LC回路は、前記積層基板の積層方向から見て、前記高周波増幅回路と重なることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記LC回路は、LCフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記サーマルビアは、前記積層基板を貫通していることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記LC回路は、LC並列共振回路を有し、
前記LC並列共振回路を構成する前記インダクタは、ループ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記高周波増幅回路は、縦続接続された複数の基本増幅回路を備え、
最終段の前記基本増幅回路の直下に形成された前記サーマルビアは、前記インダクタとして使用され、
他の前記基本増幅回路の直下にスペースが形成され、前記LC回路は、前記スペースに形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記積層基板は、複数の前記グランド電極および複数の前記平板電極を含み、
それぞれの前記グランド電極はそれぞれの前記平板電極と前記キャパシタを構成する、請求項1ないし5のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波増幅回路とLC回路とを備えた高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波モジュールは、小型化、集積化等の利点を有するため、現在、広く普及している携帯電話等の無線通信装置に内蔵されている。高周波モジュールの一形態として、例えば、フィルタ回路、整合回路、増幅回路等から構成され、信号を送受信するために使用されるものがある。従来の高周波モジュールは、例えば、特許文献1ないし3に示されている。
【0003】
特許文献1および2に記載の高周波モジュールは、積層基板と高周波増幅回路とサーマルビアとフィルタ回路とを備えている。高周波増幅回路は、積層基板上に実装されている。サーマルビアは、高周波増幅回路の直下の積層基板内に形成され、積層基板を貫通している。フィルタ回路は、SAW(Surface Acoustic Wave)素子を使用したSAWフィルタで構成され、高周波増幅回路の近傍に実装されている。
【0004】
特許文献3に記載の高周波モジュールは、特許文献2と同様に、積層基板と高周波増幅回路とサーマルビアとフィルタ回路とを備えている。高周波増幅回路は、積層基板上に実装されている。サーマルビアは、高周波増幅回路の直下の積層基板内に形成され、積層基板を貫通している。特許文献3のフィルタ回路はインダクタおよびキャパシタを組み合わせたLCフィルタ回路であり、インダクタおよびキャパシタはそれぞれサーマルビア近傍の積層基板内に設けられた電極パターンにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−121147号公報
【特許文献2】特開2005−123909号公報
【特許文献3】特開2005−166980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の高周波モジュールの場合、SAWフィルタを積層基板上に実装するため、SAWフィルタを実装するためのスペースを積層基板上に確保する必要がある。
【0007】
特許文献3に記載の高周波モジュールの場合、LCフィルタ回路は積層基板内に形成される。しかし、サーマルビアが高周波増幅回路の直下に配置されているため、LCフィルタ回路を高周波増幅回路の直下に形成することができない。したがって、LCフィルタ回路を形成するためのスペースを積層基板内に確保する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、放熱性を維持しつつ、小型化された高周波モジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高周波モジュールは、以下のように構成される。高周波モジュールは、積層基板と高周波増幅回路とサーマルビアとLC回路とを備える。高周波増幅回路は、積層基板上に実装される。サーマルビアは、高周波増幅回路の直下の積層基板内に形成され、高周波増幅回路の放熱に使用される。LC回路は、積層基板内に形成され、高周波増幅回路と接続される。
積層基板は、その内層に形成されたグランド電極、および、グランド電極に対向する平板電極を含む。グランド電極および平板電極はLC回路のキャパシタを構成する。サーマルビアは、LC回路を構成するインダクタとして使用される。LC回路は、積層基板の積層方向から見て、高周波増幅回路と重なる。
【0010】
この構成では、LC回路を形成するためのスペースを別途確保する場合に比べて、高周波モジュールを小型化することができる。また、高周波モジュールの放熱性を維持することができる。
【0011】
また、本発明に係る高周波モジュールでは、LC回路は、LCフィルタでもよい。
【0012】
サーマルビアは、放熱性を良くするために大きな断面積を有する。これにより、サーマルビアは、低い抵抗値を有する。この構成では、LCフィルタのQ値を上げ、LCフィルタの減衰特性を改善することができる。
【0013】
また、本発明に係る高周波モジュールでは、好ましくは、サーマルビアは積層基板を貫通している。この構成では、高周波モジュールは十分な放熱性を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る高周波モジュールでは、LC回路がLC並列共振回路を有し、LC並列共振回路を構成するインダクタは、ループ状に形成されてもよい。この構成では、LCフィルタのQ値をさらに上げ、LCフィルタの減衰特性を改善することができる。
【0015】
また、本発明に係る高周波モジュールは、以下のように構成されてもよい。高周波増幅回路は、縦続接続された複数の基本増幅回路を備える。最終段の基本増幅回路の放熱に使用されるサーマルビアは、インダクタとして使用される。他の基本増幅回路に使用されるサーマルビアを除くことによりスペースが形成され、LC回路は、当該スペースに形成される。この構成では、所定のサーマルビアを除くことにより、高周波増幅回路の放熱性を維持しながら、高周波モジュールを小型化することができる。
また、本発明に係る高周波モジュールでは、積層基板は、複数のグランド電極および複数の平板電極を含み、それぞれのグランド電極はそれぞれの平板電極とキャパシタを構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、LC回路を形成するためのスペースを別途確保する場合に比べて、高周波モジュールを小型化することができる。また、高周波モジュールの放熱性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係る高周波モジュールの回路図である。
【
図2】第1の実施形態に係る高周波モジュールの外観斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る高周波モジュールの要部断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る高周波モジュールの積層図である。
【
図5】第2の実施形態に係る高周波モジュールの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る高周波モジュールについて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る高周波モジュールの回路図である。高周波モジュール1は、パワーアンプ12とバンドパスフィルタ13とを備える。パワーアンプ12は、本発明の高周波増幅回路に相当する。バンドパスフィルタ13は本発明のLC回路およびLCフィルタに相当する。
【0019】
バンドパスフィルタ13の一方端は、入力端子T1に接続されている。バンドパスフィルタ13の他方端は、パワーアンプ12の一方端に接続されている。パワーアンプ12の他方端は、出力端子T2に接続されている。
【0020】
入力端子T1は、キャパシタC4の一方端とキャパシタC6の一方端とに接続されている。入力端子T1とキャパシタC4,C6との接続点は、キャパシタC1とインダクタL1とから構成されるLC並列共振回路を介してグランドに接続されている。
【0021】
キャパシタC4の他方端は、キャパシタC5の一方端に接続されている。キャパシタC4,C5の接続点は、キャパシタC2とインダクタL2とから構成されるLC並列共振回路を介してグランドに接続されている。
【0022】
キャパシタC5の他方端は、キャパシタC6の他方端とパワーアンプ12の一方端とに接続されている。キャパシタC5,C6とパワーアンプ12との接続点は、キャパシタC3とインダクタL3とから構成されるLC並列共振回路を介してグランドに接続されている。
【0023】
バンドパスフィルタ13は、キャパシタC1ないしC6およびインダクタL1ないしL3の値が適宜設定されることにより、特定の周波数帯域の信号のみ通過させる。バンドパスフィルタ13は、入力された信号から不要な周波数帯域の信号を取り除く。不要な周波数帯域の信号が取り除かれた信号は、パワーアンプ12に送られる。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る高周波モジュールの外観斜視図である。
図3は、第1の実施形態に係る高周波モジュールの要部断面図である。高周波モジュール1は、積層基板11とパワーアンプ12とサーマルビア91,92とを備える。
【0025】
積層基板11は、誘電体層と電極パターンとビアホールとを備える。ビアホールは、単なる誘電体層に形成された貫通孔ではなく、貫通孔内に形成された導体を含むものである。誘電体層と電極パターンとは積層され、ビアホールは誘電体層を貫通している。なお、以下では、積層基板11の積層方向から見て略矩形状となる電極パターンを平板電極と称し、グランドとなる電極パターンをグランド電極と称し、その他の電極パターンを線路電極と称する。
【0026】
パワーアンプ12は、積層基板11の第1の主面に実装されている。サーマルビア91,92は、パワーアンプ12の直下に形成され、積層基板11を貫通している。サーマルビア91,92の一端は、パワーアンプ12に接続されている。サーマルビア91,92の他端は、グランド端子55に接続されている。グランド端子55は、積層基板11の第2の主面(第1の主面と反対側の主面)に形成されている。
【0027】
グランド電極72は、第1の主面の近くに位置する誘電体層に形成されている。グランド電極73は、第2の主面の近くに位置する誘電体層に形成されている。グランド電極72,73は、サーマルビア91,92に接続されている。平板電極85は、グランド電極72に対向するように形成されている。平板電極89は、グランド電極73に対向するように形成されている。平板電極85,89は、ビアホールと線路電極61とを介してサーマルビア92に接続されている。
【0028】
グランド電極72と平板電極85とその間に挟まれた誘電体層とは、キャパシタC11を構成する。グランド電極73と平板電極89とその間に挟まれた誘電体層とは、キャパシタC12を構成する。キャパシタC11,C12は、
図1に示すキャパシタC1を構成する。サーマルビア92と線路電極61と線路電極61および平板電極85、89を接続するビアホールとは、インダクタL1として使用される。
【0029】
また、サーマルビア92と線路電極61と線路電極61および平板電極85,89を接続するビアホールとは、積層基板の積層方向に垂直な方向から見たとき、サーマルビア92とグランド電極73との接続点を始点として、ループ状に形成されている。このように、ビアホールを使用してインダクタをループ状に形成することにより、インダクタのQ値を上げることができる。
【0030】
バンドパスフィルタ13は、キャパシタC11,C12、インダクタL1および図示されていない回路素子から構成される。バンドパスフィルタ13は、積層基板11の積層方向から見てパワーアンプ12と部分的に重なるように、配置されている。
【0031】
一般的に、キャパシタの容量を大きくする場合、キャパシタを1つの対向電極から構成すると、対向電極の主面の面積を大きくする必要がある。そして、対向電極の主面の面積が大きくなると、高周波モジュールのサイズを大きくする必要がある。しかし、キャパシタC11,C12を並列接続することによりキャパシタC1を構成すると、平板電極85,89の主面の面積を大きくすることなく、キャパシタC1の容量を大きくすることができる。そして、積層基板11の主面に垂直な方向から見て重なるように、キャパシタC11,C12を配置することで、積層基板11の主面の面積を大きくする必要がなくなる。したがって、高周波モジュール1のサイズを大きくせずに、大きな容量を等価的に有するキャパシタC1を高周波モジュール1内に形成することができる。
【0032】
図4は、第1の実施形態に係る高周波モジュールの積層図である。積層基板11は、番号順に積層された誘電体層101ないし116を備える。誘電体層101の主面は、積層基板11の第1の主面となる。誘電体層116の主面は、積層基板11の第2の主面となる。なお、
図4に示された小丸印は、ビアホールを表す。
【0033】
実装用ランド51は、誘電体層101に略矩形の形状で形成されている。パワーアンプ12は、実装用ランド51上に実装される。サーマルビア91,92,93,94は、パワーアンプ12の直下に形成され、積層基板11を貫通している。サーマルビア91,92,93,94は、グランド端子55およびグランド電極71,72,73に接続されている。
【0034】
グランド電極71は、誘電体層103の略全面に形成されている。平板電極82は、誘電体層104に形成されている。グランド電極72は、誘電体層105の略全面に形成されている。平板電極82は、誘電体層103を介してグランド電極71と対向している。平板電極82は、誘電体層104を介してグランド電極72と対向している。平板電極82とグランド電極71,72と誘電体層103,104とは、キャパシタC2を構成する。
【0035】
平板電極84,85は、誘電体層106に形成されている。平板電極86は、誘電体層107に形成されている。平板電極86は、ビアホールを介して平板電極82に接続されている。平板電極84は、誘電体層105を介してグランド電極72と対向している。平板電極84とグランド電極72と誘電体層105とは、キャパシタC3を構成する。平板電極84は、誘電体層106を介して平板電極86と対向している。平板電極84,86と誘電体層106とは、キャパシタC5を構成する。平板電極85は、誘電体層105を介してグランド電極72と対向している。平板電極85とグランド電極72と誘電体層105とは、キャパシタC1を構成する。平板電極85は、誘電体層106を介して平板電極86と対向している。平板電極85,86と誘電体層106とは、キャパシタC4を構成する。
【0036】
線路電極61は、誘電体層108ないし110に形成されている。線路電極61の一端はサーマルビア92に接続されている。線路電極61の他端は、ビアホールを介して平板電極85に接続されている。サーマルビア92と線路電極61と平板電極85,89および線路電極61を接続するビアホールとは、インダクタL1として使用される。
【0037】
線路電極62は、誘電体層108ないし110に形成されている。線路電極62の一端はサーマルビア93に接続されている。線路電極62の他端は、ビアホールを介して平板電極82,86に接続されている。サーマルビア93と線路電極62と平板電極82および線路電極62を接続するビアホールとは、インダクタL2として使用される。
【0038】
線路電極63は、誘電体層108ないし110に形成されている。線路電極63の一端はサーマルビア94に接続されている。線路電極63の他端は、ビアホールを介して平板電極84に接続されている。サーマルビア94と線路電極63と平板電極84,88および線路電極63を接続するビアホールとは、インダクタL3として使用される。
【0039】
線路電極65は、誘電体層109に形成されている。線路電極65の一端は、線路電極63に接続されている。線路電極65の他端は、バンドパスフィルタ13の出力端子であり、パワーアンプ12の入力端子に接続されている。
【0040】
平板電極87は、誘電体層113に形成されている。平板電極88,89は、誘電体層114に形成されている。グランド電極73は、誘電体層115の略全面に形成されている。平板電極88は、ビアホールを介して平板電極84と接続されている。平板電極89は、ビアホールを介して平板電極85と接続されている。
【0041】
平板電極87は、誘電体層113を介して平板電極88,89と対向している。平板電極87,88,89と誘電体層113とは、キャパシタC6を構成する。平板電極88は、誘電体層114を介してグランド電極73と対向している。平板電極88とグランド電極73と誘電体層114とは、キャパシタC3を構成する。平板電極89は、誘電体層114を介してグランド電極73と対向している。平板電極89とグランド電極73と誘電体層114とは、キャパシタC1を構成する。
【0042】
グランド端子55と高周波モジュール用入力端子56と高周波モジュール用出力端子57とは、誘電体層116に所定のパターンで形成されている。高周波モジュール用入力端子56はビアホールを介して平板電極89に接続されている。高周波モジュール用入力端子56はバンドパスフィルタ13の入力端子に対応している。
【0043】
第1の実施形態によると、パワーアンプ12の直下の積層基板11内にバンドパスフィルタ13の一部を形成する。これにより、フィルタを形成するためのスペースを別途確保する場合に比べて、高周波モジュール1を小型化することができる。なお、サーマルビアの本数を減らして、パワーアンプ12の直下の積層基板11内にバンドパスフィルタ13の全部を形成してもよい。これにより、高周波モジュール1をさらに小型化することができる。
【0044】
また、サーマルビア92,93,94は、放熱性を良くするために大きな断面積を有する。これにより、サーマルビア92,93,94は、低い抵抗値を有する。したがって、バンドパスフィルタ13のインダクタとしてサーマルビア92,93,94を使用することにより、バンドパスフィルタ13のQ値を上げ、バンドパスフィルタ13の減衰特性を改善することができる。
【0045】
すなわち、線路電極とビアホールとによりインダクタを形成し、バンドパスフィルタ13のQ値を上げようとする場合、線路電極の幅を大きくする、あるいは、ビアホールを太くする必要がある。このため、バンドパスフィルタ13のサイズ、延いては、高周波モジュール1のサイズが大きくなる。しかし、バンドパスフィルタ13では、積層基板11にすでに形成されているサーマルビア92,93,94をインダクタとして使用しているため、高周波モジュール1のサイズを大きくせず、バンドパスフィルタ13のQ値を上げることができる。
【0046】
また、サーマルビア91,92,93,94が積層基板11を貫通しているため、高周波モジュール1は、十分な放熱性を得ることができる。また、サーマルビア91,92,93,94は、低い抵抗値を有するとともに、グランド電極71,72,73に直接的に接続されている。したがって、バンドパスフィルタ13に特性の良いグランドを用いることができる。
【0047】
なお、インダクタL1,L2,L3は、ビアホールと線路電極とにより形成されてもよい。また、インダクタL1,L2,L3は、ビアホールと線路電極とによりループ状に形成されてもよい。ビアホールと線路電極により構成されたインダクタがループ状の場合、ループ状でない場合に比べてバンドパスフィルタ13のQ値を上げ、バンドパスフィルタ13の減衰特性を改善することができる。また、本発明に係るLC回路は、ハイパスフィルタまたはローパスフィルタでもよい。
【0048】
本発明の第2の実施形態に係る高周波モジュールについて説明する。
図5は、第2の実施形態に係る高周波モジュールの要部断面図である。以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0049】
高周波モジュール1Aは、第1の実施形態のパワーアンプ12に代えて、パワーアンプ12A1,12A2,12A3が縦続接続されたパワーアンプ12Aを備える。パワーアンプ12A1,12A2,12A3は、本発明の基本増幅回路に相当する。パワーアンプ12Aは、本発明の高周波増幅回路に相当する。パワーアンプ12A1,12A2,12A3は、例えば、FETまたはバイポーラトランジスタから構成される。
【0050】
サーマルビア91,92は、最終段のパワーアンプ12A3の直下にのみ形成され、パワーアンプ12A1,12A2の直下に形成されていない。バンドパスフィルタ13は、パワーアンプ12Aの略直下に形成されている。
【0051】
最終段のパワーアンプ12A3は、パワーアンプ12A1,12A2に比べて大きい負荷を有する。これにより、最終段のパワーアンプ12A3からの発熱量は、パワーアンプ12Aからの発熱量の多くを占める。したがって、パワーアンプ12A1,12A2の直下にサーマルビアを形成しなくとも、最終段のパワーアンプ12A3の直下にサーマルビア91,92を形成すれば、放熱性を維持することができる。これにより、放熱性を維持しながら、高周波モジュール1Aを小型化することができる。
【0052】
なお、所望の放熱性を得られない場合、パワーアンプ12A2の直下にもサーマルビアを形成してもよい。また、縦続接続されるパワーアンプの数は、4つ以上でもよい。この場合、サーマルビアは、最終段のパワーアンプの直下と発熱量を無視できない他のパワーアンプの直下とに形成される。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 高周波モジュール
11 積層基板
12,12A,12A1,12A2,12A3 パワーアンプ
13 バンドパスフィルタ
51 実装用ランド
55 グランド端子
56 高周波モジュール用入力端子
57 高周波モジュール用出力端子
61,62,63,65 線路電極
71,72,73 グランド電極
82,84,85,86,87,88,89 平板電極
91,92,93,94 サーマルビア
101〜116 誘電体層
C1,C2,C3,C4,C5,C6,C11,C12 キャパシタ
L1,L2,L3 インダクタ