(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂(A)からなる外層(1)と、該外層(1)から剥離して減容変形可能なポリアミド樹脂組成物からなる内層(2)とを積層させた少なくとも二層からなり、前記外層(1)に、前記の外層(1)と内層(2)との間に外気を導入するための外気導入孔が形成されている積層剥離容器の内層用ポリアミド樹脂組成物であって、
前記内層用ポリアミド樹脂組成物が、
メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とから構成されるポリアミド樹脂(a)、及び
炭素数6〜18の直鎖脂肪族成分から構成されるポリアミド樹脂(b)
を含有し、温度23℃、湿度50%RHにおける引張弾性率が2000MPa以下であり、かつ該ポリアミド樹脂組成物中の前記ポリアミド樹脂(a)の含有率が20〜75質量%である、積層剥離容器の内層用ポリアミド樹脂組成物。
前記ポリアミド樹脂(a)を構成する直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記ポリアミド樹脂(b)が、ナイロン6/66、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
前記ポリアミド樹脂(a)を構成するジカルボン酸成分が、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸及びイソフタル酸を含有し、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とのモル比(炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸/イソフタル酸)が50/50〜99/1である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
熱可塑性樹脂(A)からなる外層(1)と、該外層(1)から剥離して減容変形可能なポリアミド樹脂組成物からなる内層(2)とを積層させた少なくとも二層からなり、前記外層(1)に、前記の外層(1)と内層(2)との間に外気を導入するための外気導入孔が形成されている積層剥離容器であって、前記ポリアミド樹脂組成物が、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物である、積層剥離容器。
請求項6に記載の積層剥離容器を製造する方法であって、前記熱可塑性樹脂(A)を外層(1)とし、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を内層(2)としてダイレクトブロー成形し、前記外層(1)に、前記の外層(1)と内層(2)との間に外気を導入するための外気導入孔を形成する、積層剥離容器の製造方法。
【背景技術】
【0002】
外層と、該外層から剥離して減容変形可能な内層とを積層させた少なくとも二層からなり、外層と内層との間に外気を導入するための外気導入孔が外層に形成された積層剥離容器が知られている(例えば特許文献1を参照)。この容器によれば、内層内に保存された内容物の減少に伴って、外気導入孔から外層と内層との間に外気が導入されることで内層が外層から剥離し、外層が変形することなく内層のみが減容変形する。その結果として、内容物を完全に使い切るまで内容物が空気に直接接触することなく、内容物の酸化を防止することができる。
【0003】
このような積層剥離容器では、外層用樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンが使用され、内層用樹脂として、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が使用されている。特許文献1には、内層用樹脂として、低密度ポリエチレン製樹脂との相溶性がほとんどないナイロン製樹脂が記載されている。
【0004】
積層剥離容器については年々改良が進んでいる。そのため、それに用いられる内層用樹脂についても更なる検討が求められているが、十分ではない。
例えば特許文献2には、曲げ弾性率が10000kg/cm
2以下の柔軟性を有する合成樹脂が記載されており、具体的には、曲げ弾性率が650kg/cm
2であるナイロン6共重合体が記載されている。特許文献2に記載された積層剥離容器では、容器底部に形成されたシール部の層間剥離を防止する観点から、曲げ弾性率が10000kg/cm
2を超える腰の強い樹脂材料を使用することができなかった。
これに対し、特許文献1に記載された積層剥離容器では、容器底部に形成されたシール部の層間剥離を、外層と内層との間に外気を導入するための外気導入孔として積極的に利用している。そのため、特許文献2が記載された当時は内層用樹脂として使用できなかった材料であっても、容器の構造改良の結果として使用可能となったものもある。その一方で、特許文献1には、好適な材料としてナイロン製樹脂が一般的に記載されているにすぎず、いかなるナイロン製樹脂が好適であるのか具体的に開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)からなる外層(1)と、該外層(1)から剥離して減容変形可能なポリアミド樹脂組成物からなる内層(2)とを積層させた少なくとも二層からなり、前記外層(1)に、前記の外層(1)と内層(2)との間に外気を導入するための外気導入孔が形成されている積層剥離容器の内層用ポリアミド樹脂組成物である。本発明のポリアミド樹脂組成物をこのような積層剥離容器の内層用材料として用いることで、積層剥離容器の外層と内層との剥離性に優れ、内層内に保存された内容物の減少に伴って外層が変形することなく内層のみが減容変形し、かつ酸素透過係数が低く酸素バリア性に優れる。
【0010】
積層剥離容器は、内層内に保存された内容物の減少に伴って、外層が変形することなく内層のみが減容変形する機能を有する。そのため、積層剥離容器における内層は、外層との剥離性に優れることが要求されるとともに、内容物の減少に伴って忠実に減容変形することが要求される。一方、内層が外層から剥離する際に、外層と内層との間に外気が導入されるため、内層用材料としては酸素バリア性を有することが求められる。
【0011】
一般に、ガスバリア性が高い樹脂材料としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が知られている。しかし、EVOH及びPVAは、吸湿しやすく、高湿度下ではガスバリア性が低下するという欠点がある。積層剥離容器の内層は外層から剥離する際に外気と接触するので、EVOH及びPVAは積層剥離容器の内層用材料としては適していない。一方、MXD6は、耐湿性の問題はないものの柔軟性に劣り、内容物の減少に伴って忠実に減容変形することができず、積層剥離容器の内層用材料としては適していない。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、MXD6に代表される特定のポリアミド樹脂(a)とナイロン6等の直鎖脂肪族成分から構成されるポリアミド樹脂(b)とを特定の比率でブレンドしたポリアミド樹脂組成物を積層剥離容器の内層として使用すると、積層剥離容器の外層と内層との剥離性に優れ、内層内に保存された内容物の減少に伴って外層が変形することなく内層のみが減容変形し、かつ酸素透過係数が低く酸素バリア性に優れることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされるに至ったものである。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とから構成されるポリアミド樹脂(a)、及び炭素数6〜18の直鎖脂肪族成分から構成されるポリアミド樹脂(b)を含有する。
【0014】
<ポリアミド樹脂(a)>
本発明に用いられるポリアミド樹脂(a)は、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とから構成される。
【0015】
ポリアミド樹脂(a)を構成するジアミン成分は、優れた酸素バリア性を発現させる観点から、メタキシリレンジアミンを70モル%以上、好ましくは80モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%以上100モル%以下含む。
【0016】
メタキシリレンジアミン以外のジアミン成分としては、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラフェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ポリアミド樹脂(a)を構成するジカルボン酸成分は、優れた酸素バリア性を発現させる観点から、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上、好ましくは80モル%以上100モル%以下、より好ましくは90モル%以上100モル%以下含む。
【0018】
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できる。これらの中でも、優れた酸素バリア性を発現させる観点から、アジピン酸及びセバシン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アジピン酸がより好ましい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ジカルボン酸成分として、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸との混合物を使用する場合、ポリアミド樹脂(a)が結晶化しにくくなるため成形加工性を向上させることができ、また、内容物を充填して保存している間にポリアミド樹脂(a)が結晶化して柔軟性が低下するのを防止することができる。炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸とイソフタル酸とのモル比(炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸/イソフタル酸)は、好ましくは50/50〜99/1、より好ましくは70/30〜95/5である。
【0021】
ポリアミド樹脂(a)の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分とからなる塩を水の存在下に加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法によりポリアミド樹脂(a)を製造することができる。また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によってもポリアミド樹脂(a)を製造することができる。この場合、反応系を均一な液状態で保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。重縮合時に分子量調整剤として少量のモノアミンやモノカルボン酸を加えてもよい。
【0022】
ポリアミド樹脂の重合度の指標としては、相対粘度が一般的に使われる。本発明に用いられるポリアミド樹脂(a)の相対粘度は、成形時のドローダウン防止や成形加工性の観点から、好ましくは2.5〜4.5、より好ましくは2.6〜4.3、更に好ましくは2.7〜4.2である。
なお、ここで言う相対粘度は、ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t
0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
0
【0023】
また、ポリアミド樹脂(a)の融点は、成形加工性の観点から、160〜250℃の範囲にあることが好ましくは、より好ましくは170〜245℃、更に好ましくは180〜240℃である。
【0024】
<ポリアミド樹脂(b)>
本発明に用いられるポリアミド樹脂(b)は、炭素数6〜18の直鎖脂肪族成分から構成される。
ポリアミド樹脂(b)は、炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジアミン成分と炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸成分とから構成されるものであってもよく、炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸成分から構成されるものであってもよい。また、炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸成分としては、炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸が分子内で脱水縮合したラクタムを使用することもできる。また、ポリアミド樹脂(b)は、これらの成分の共重合体であってもよい。
【0025】
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジアミン成分としては、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸成分としては、ポリアミド(a)で説明したものと同様であり、好ましい範囲も同様である。
炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジアミン成分と炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸成分とから構成されるポリアミド樹脂としては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから構成されるナイロン66等が挙げられる。
【0026】
炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸成分としては、6−アミノヘキサン酸や12−アミノドデカン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸が分子内で脱水縮合したラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウロラクタムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭素数6〜18のω−アミノカルボン酸成分又はそのラクタムから構成されるポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
【0027】
また、上記成分の共重合体としては、ナイロン6/66やナイロン6/12を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミド樹脂(b)としては、柔軟性及び機械的強度の観点から、ナイロン6/66、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66及びナイロン6からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることがより好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂(b)の製造は、特に限定されるものではなく、任意の方法、重合条件により行うことができる。ポリアミド樹脂(b)がジアミン成分とジカルボン酸成分とから構成されるものである場合には、上述のポリアミド樹脂(a)と同様に製造することができる。また、ポリアミド樹脂(b)がω−アミノカルボン酸成分又はそのラクタムから構成されるものである場合には、ω−アミノカルボン酸の重縮合又はラクタムの開環重合により製造することができる。
ポリアミド樹脂(b)の相対粘度、及び融点の好ましい範囲は、ポリアミド樹脂(a)と同様である。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)及び(b)を溶融混練することで得ることができる。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)及び(b)以外の材料を含有してもよく、任意の添加剤を含有してもよい。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の含有率は、積層剥離容器の内層用材料として用いたときの外層と内層との剥離性に優れること、柔軟性に優れ内容物の減少に伴って忠実に減容変形すること、及び酸素バリア性に優れることのすべてを満たす観点から、20〜75質量%である。ポリアミド樹脂(a)の含有率が20質量%未満の場合には、十分な剥離性及び酸素バリア性を得ることができない。ポリアミド樹脂(a)の含有率が75質量%を超える場合には、柔軟性に劣り、内容物の減少に伴って忠実に減容変形することができない。
【0031】
一般的に、樹脂の弾性率が高くなるほど、応力を緩和できなくなるため、層間剥離が起こりやすくなる。本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)が骨格中に芳香環を有するため、直鎖脂肪族成分から構成されるポリアミド樹脂(b)を単独で用いるときに比べて弾性率は高くなり、剥離性が向上する。加えて、熱可塑性樹脂(A)としてポリエチレンのような直鎖脂肪族成分から構成される樹脂を外層に使用する場合、構造が類似しているポリアミド樹脂(b)はある程度の密着性を有するが、構造の相違が大きいポリアミド樹脂(a)を加えることにより密着性は大きく低下し、剥離性が向上する。
一方、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(a)が骨格中に芳香環を有するので、弾性率が比較的高く、比較的硬質である。そのため、ポリアミド樹脂(a)の含有率が多すぎると、柔軟性に劣り、内容物の減少に伴って忠実に減容変形することができない。
【0032】
なお、ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の含有率の好ましい範囲は、使用されるポリアミド樹脂(a)及び(b)の種類によって異なり、また、剥離性の観点から積層剥離容器の外層に使用される熱可塑性樹脂(A)の種類によっても異なる。そのため、ポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の含有率は、20〜75質量%の範囲内で、ポリアミド樹脂組成物中に使用されるポリアミド樹脂(a)及び(b)並びに積層剥離容器の外層に使用される熱可塑性樹脂(A)の種類に応じて適宜設定される。
例えば、ポリアミド樹脂(b)が非常に軟質なナイロン6/66のときは、ポリアミド樹脂(a)の含有率は20〜75質量%が好ましく、ポリアミド樹脂(b)がナイロン6/66に比べて柔軟性がやや劣るナイロン6のときは、ポリアミド樹脂(a)の含有率は20〜60質量%が好ましい。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、積層剥離容器の内層用材料として用いたときの外層と内層との剥離性に優れること、及び柔軟性に優れ内容物の減少に伴って忠実に減容変形することを満たす観点から、温度23℃、湿度50%RHにおける引張弾性率が2000MPa以下であり、好ましくは300〜2000MPa、より好ましくは300〜1500MPa、更に好ましくは500〜1000MPaである。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、積層剥離容器の内層用材料として使用される。
積層剥離容器は、熱可塑性樹脂(A)からなる外層(1)と、該外層(1)から剥離して減容変形可能なポリアミド樹脂組成物からなる内層(2)とを積層させた少なくとも二層からなり、前記外層(1)に、前記の外層(1)と内層(2)との間に外気を導入するための外気導入孔が形成された構造を有する。
【0035】
積層剥離容器は、前記構造を有するものであれば特に限定されず、特開2004−231280号公報や特開平8−310534号公報に記載された構造であってもよい。例えば、容器口部に、ディスペンサーポンプを組み合わせたキャップを取り付けたポンプ式容器であってもよい。また、外層をスクイズ変形可能で復元自在な可とう性を有する構成とし、逆止弁を配したキャップを取り付けたスクイズ式容器であってもよい。
【0036】
積層剥離容器の外層用材料として使用される熱可塑性樹脂(A)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を好ましく用いることができる。熱可塑性樹脂(A)としては、成形加工性やコストを考慮すると、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
積層剥離容器がポンプ式容器である場合には、熱可塑性樹脂(A)は比較的硬質であることが好ましく、高密度ポリエチレンやポリプロピレン等を好ましく用いることができる。一方、積層剥離容器がスクイズ式容器である場合には、熱可塑性樹脂(A)は比較的軟質であることが好ましく、低密度ポリエチレンやポリエステル等を好ましく用いることができる。
【0037】
外気導入孔の位置は特に限定されず、特開平8−310534号公報に記載されているように容器口部の外層に形成されていてもよく、特開2004−231280号公報に記載されているように容器底部の外層に形成されていてもよい。
【0038】
本発明の積層剥離容器は、ダイレクトブロー成形により製造することができる。具体的には、複数の押出機と円筒ダイからなる多層ダイレクトブロー装置を用いて、熱可塑性樹脂(A)を外層とし、本発明のポリアミド樹脂組成物を内層として共押出しで円筒状パリソンを形成し、該パリソンをチューブ状に押出し、該パリソンを10℃〜80℃程度に温調した金型で挟み、パリソン下部をピンチオフするとともに融着させ、冷却しないうちに高圧の空気等によってブローして、該パリソンを膨らませてボトル状、チューブ状、タンク状等の容器の形状に成形される。
【0039】
ここで、用いるダイレクトブロー装置は特に限定されず、単一の円筒ダイと単一の金型からなる装置、複数の円筒ダイと複数の金型を持ち合わせた装置、又はロータリー式のダイレクトブロー装置であってもよい。
【0040】
また、あらかじめ、金型内にインモールドラベルを挿入し、容器表面に、ラベルを貼付するインモールドラベル法を用いてもよい。また、インモールドラベル法に関わらず、ラベルを貼付ける場合、ラベル貼付け前に、フレーム処理やコロナ処理をすることが好ましい。さらに、金型内にサンドブラスト加工を施しフロスト状の外観にすることも可能である。
【0041】
外気導入孔は、特開平8−310534号公報に記載されているように、積層容器を成形した後に外層のみをくり抜いて形成してもよく、特開2004−231280号公報に記載されているように、ダイレクトブロー成形と同時に形成してもよい。特開2004−231280号公報では、ダイレクトブロー成形時に容器底部に形成されたシール部の層間剥離を外気導入孔として積極的に利用している。
【0042】
本発明の積層剥離容器における層厚みは特に限定されないが、外層の厚みは、好ましくは300〜3000μm、より好ましくは500〜2000μm、更に好ましくは700〜1000μmであり、内層の厚みは、好ましくは30〜300μm、より好ましくは50〜200μm、更に好ましくは70〜150μmである。
【0043】
本発明の積層剥離容器の酸素透過係数(単位:cc・mm/m
2・day・atm)は、好ましくは0.080以下、より好ましくは0.070以下、更に好ましくは0.065以下、より更に好ましくは0.055以下、特に好ましくは0.050以下である。酸素透過係数が上記範囲内であれば酸素バリア性が良好である。なお、酸素透過係数の測定方法及び測定条件は実施例に記載のとおりである。
【0044】
本発明の積層剥離容器によれば、内層内に保存された内容物の減少に伴って内層が減容変形するため、内容物を完全に使い切るまで内容物が空気に直接接触することなく、内容物の酸化を防止することができる。そのため、本発明の積層剥離容器に保存される内容物への酸化防止剤や防腐剤等の使用量を低減することができる。
本発明の積層剥離容器は酸素バリア性に優れ、種々の物品の保存に適しているが、1回の使用量が少量である物品の保存に特に適している。好ましい被保存物としては、醤油、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング等の液体調味料;点眼薬等の医薬品;シャンプー、リンス、洗剤等の雑貨品を挙げることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における各種評価は下記の方法により行った。
【0046】
(1)ポリアミド樹脂の相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100mLに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mlを取り、25℃の恒温層中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また同様の条件で96%硫酸そのものの落下時間(t
0)を測定した。t及びt
0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0【0047】
(2)ポリアミド樹脂の融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製「DSC−60」)を使用し、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/minで260℃まで昇温し、ポリアミド樹脂の融点を測定した。
【0048】
(3)外層/内層厚み
容器を半分の高さで水平に切断し、パーティング部を起点として45°間隔で外層、内層それぞれの厚みを測定し、平均値を算出した。
【0049】
(4)層間剥離強度
JIS K6854に準拠し、T型剥離試験により内層と外層との層間剥離強度を測定した。試験片は、容器胴部を垂直方向に10mm幅で切断して作製した。剥離速度は100mm/minとした。なお、もともと剥離していたもの、及び測定値が検出限界以下のものは、「値なし」とした。
【0050】
(5)内層の引張弾性率
JIS K7127及びK7161に準拠し、(株)東洋精機製作所製ストログラフを使用して内層の引張弾性率を測定した。試験片は、容器胴部の内層を垂直方向に10mm幅で切断して作製した。チャック間距離50mm、引張速度50mm/mmとし、測定環境は温度23℃、湿度50%RHとした。
【0051】
(6)内層の減容変形性
先端が丸みを帯びた円錐状の治具に容器底部を押し付け、外層のピンチオフを剥離させて外層と内層の間への吸気を行うための空隙を設けた後、容器の口を真空ポンプと接続し、容器内を5秒間減圧した後、外層を切断し、以下に示す基準で内層の減容変形性を目視にて評価した。なお、真空ポンプとして日本ビュッヒ(株)製「ダイヤフラムポンプV−700」を使用した。
A:内層は全て剥離し、隙間なく収縮している。
B:内層は全て剥離しているが、収縮しきれていない。
C:内層が剥離しきれていない。
【0052】
(7)容器の酸素透過係数
ASTM D3985に準拠し、酸素透過率測定装置(MOCON社製「OX−TRAN2/61」)を使用して容器の酸素透過率を測定した。測定環境は温度23℃、容器外部の湿度50%RH、容器内部の湿度100%RHとした。得られた酸素透過率から、容器胴部の平均厚み、及び容器の表面積を用いて、酸素透過係数(単位:cc・mm/m
2・day・atm)を算出した。
【0053】
製造例1
(ポリアミド樹脂(a−1)の製造)
分縮器、全縮器、圧力計、窒素導入口、液体注入口、樹脂抜き出しバルブ、撹拌機を備えた内容量50リットルの加熱ジャケット付きSUS製反応缶に、アジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム17.3g(0.16mol)、酢酸ナトリウム12.1g(0.15mol)を仕込み、反応缶内部を窒素置換した。次いで、窒素を10ml/minの速度で流通させながら、常圧下で反応缶を170℃まで加熱し、アジピン酸を完全に融解させた後、メタキシリレンジアミン13980g(102.6mol)の滴下を開始した。メタキシリレンジアミンの滴下中は重縮合により生成する水を系内から除去しつつ、反応系内が固化しないように連続的に昇温した。100分かけてメタキシリレンジアミンを全量滴下し、かつ反応缶内温を250℃まで昇温した。次いで常圧のまま10分かけて内温を260℃に上げた後、内温を260℃に保持しつつアスピレーターと圧力調節器を使用して反応缶内を600mmHgまで10分かけて減圧し、600mmHgで重縮合反応を継続した。撹拌機のトルクを観察しながら十分に樹脂の粘度が高くなった時点で撹拌を止め、窒素により反応缶内を0.2MPaに加圧してから反応缶底の樹脂抜き出しバルブを開けてポリマーをストランド状にして抜き出し、水冷後ペレタイザーにてペレット化して、約25kgのポリアミド樹脂のペレットを得た。
【0054】
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱伝対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーにポリアミド樹脂のペレットを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。さらに昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で70分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド樹脂(a−1)を得た。得られたポリアミド樹脂(a−1)の相対粘度は3.5、融点は237℃であった。
【0055】
製造例2
(ポリアミド樹脂(a−2)の製造)
ポリアミド原料のうちジカルボン酸成分を、アジピン酸13495g(92.3mol)、イソフタル酸1705g(10.3mol)に変更したこと以外は製造例1と同様にしてポリアミド樹脂(a−2)を得た。得られたポリアミド樹脂(a−2)の相対粘度は3.4、融点は222℃であった。
【0056】
実施例等において以下の樹脂を使用した。
<外層用熱可塑性樹脂(A)>
A−1:高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HB420R」、MFR=0.2g/10min(JIS K6922−2))
A−2:ポリプロピレン(日本ポリプロピレン(株)製「ノバテックPP EC9」、MFR=0.5g/10min(JIS K7210))
【0057】
<内層用ポリアミド樹脂(b)>
b−1:ナイロン6/66(宇部興産(株)製「UBEナイロン 5033B」、相対粘度:4.1、融点:196℃)
b−2:ナイロン6(宇部興産(株)製「UBEナイロン 1030B」、相対粘度:4.1、融点:220℃)
【0058】
<内層用熱可塑性樹脂(c)>
c−1:エチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製「EVAL F101B」)
【0059】
実施例1
外層用単軸押出機、内層用単軸押出機、アダプター、パリソンコントローラー付き円筒ダイ、金型、エアブロー装置等を備えた二層ダイレクトブロー容器成形装置を使用し、外層用押出機ホッパー内へ、熱可塑性樹脂A−1のペレットを投入し、押出機シリンダー温度を200〜220℃、アダプター温度を230℃に設定、また、内層用押出機ホッパー内へ、ポリアミド樹脂a−1とポリアミド樹脂b−1を質量比75:25の割合でドライブレンドした混合ペレットを投入し、押出機シリンダー温度を240〜260℃、アダプター温度を250℃、ダイ温度を245℃に設定してパリソンを押し出し、ダイレクトブロー法によって内容積400ml、胴部外層厚み約900μm、内層厚み約100μmのネジ口栓付き二層ボトルの成形を行った。
得られたボトルの外層/内層厚み、層間剥離強度、内層の引張弾性率、内層の減容変形性、および酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例2〜8
熱可塑性樹脂(A)、ポリアミド樹脂(a)、ポリアミド樹脂(b)の種類、質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてネジ口栓付き二層ボトルの成形を行った。
得られたボトルの外層/内層厚み、層間剥離強度、内層の引張弾性率、内層の減容変形性、および酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
比較例1〜5
熱可塑性樹脂(A)、ポリアミド樹脂(a)、ポリアミド樹脂(b)、及び内層用熱可塑性樹脂(c)の種類、質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてネジ口栓付き二層ボトルの成形を行った。
得られたボトルの外層/内層厚み、層間剥離強度、内層の引張弾性率、内層の減容変形性、および酸素透過係数を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明のポリアミド樹脂組成物を内層として用いた積層剥離容器は、積層剥離容器の外層と内層との剥離性に優れ、内層の減容変形が良好であり、しかも酸素透過係数が低く酸素バリア性に優れる。
一方、内層を構成するポリアミド樹脂組成物がナイロン6/66のみからなる比較例1の積層剥離容器は、内層と外層との剥離強度の値が高いため、内層の減圧変形性に劣るものであった。内層を構成するポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の割合の高い比較例2、4では、内層の弾性率が高すぎるため、減圧変形性に劣るものであった。内層を構成するポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂(a)の割合の低い比較例3では、内層と外層との剥離強度の値が高く、内層の減圧変形性に劣るものであった。内層を構成する材料がエチレンビニルアルコール共重合体である比較例5の積層剥離容器は、内層と外層との剥離強度の値が高いため、内層の減圧変形性に劣るものであった。