(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ接続導体線路において、前記共通接続点と前記第2のフィルタとに接続される第2の導体線路部分の長さが、前記第1の導体線路部分の長さと異なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
前記並列接続部分の一端から他端に向かう前記複数の導体線路の各導体線路において、前記複数の導体線路のうちの少なくとも1本の前記導体線路の長さが、他の前記導体線路の長さと異なっている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような従来のデュプレクサでは、送信フィルタと受信フィルタとの間のアイソレーション特性が十分でないという問題があった。アイソレーションを改善するには、送信フィルタチップと受信フィルタチップとの距離を大きく離して配置すればよい。しかしながら、その場合には、アンテナ端子に接続されている共通接続点と、送信フィルタとの間の配線距離が長くなり、または共通接続点と受信フィルタとの間の配線距離が長くなることによって、高周波電気回路における配線による電気長が長くなる。従って、送信フィルタと受信フィルタとの間の最適なインピーダンス整合から外れる。このようなインピーダンス不整合によって、挿入損失が増加するという問題がある。
【0005】
上記インピーダンス不整合を修正するには、送信フィルタや受信フィルタ内の共振子のインピーダンスを高めることも考えられる。しかしながら、この場合においても、挿入損失が増加する。
【0006】
本発明の目的は、複数の帯域通過型フィルタを備えたフィルタ装置であって、アイソレーション特性が高く、しかも挿入損失の増加が生じ難い、フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィルタ装置は、第1の端子及び第2の端子を有し、第1の通過帯域を有する第1のフィルタと、第3及び第4の端子を有し、上記第1のフィルタの第1の通過帯域と異なる第2の通過帯域を有する第2のフィルタと、第5の端子と、上記第5の端子に接続されている共通接続点とを有し、前記共通接続点が上記第1及び第2の端子の一方と、上記第3及び第4の端子の一方とに接続されている、フィルタ接続導体線路とを備え、上記フィルタ接続導体線路は、上記共通接続点と上記第1のフィルタとに接続される第1の導体線路部分と、上記共通接続点と上記第2のフィルタとに接続される第2の導体線路部分とを含み、該第1の導体線路部分は、単一の導体線路の場合に比べて電気長が短くなるように、複数の導体線路が互いに並列に接続されている並列接続部分を含んでいる。
【0008】
本発明に係るフィルタ装置のある特定の局面では、上記並列接続部分と上記第1のフィルタとに接続されている共振子がさらに備えられている。
【0009】
本発明に係るフィルタ装置の他の特定の局面では、上記並列接続部分が、機能素子を有していない。
【0010】
本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、上記フィルタ接続導体線路において、上記共通接続点と上記第2のフィルタとに接続される第2の導体線路部分の長さが、上記第1の導体線路部分の長さと異なっている。
【0011】
本発明に係るフィルタ装置のさらに他の特定の局面では、上記並列接続部分の一端から他端に向かう上記複数の導体線路の各導体線路において、上記複数の導体線路のうちの少なくとも1本の導体線路の長さが、他の導体線路の長さと異なっている。
【0012】
本発明に係るフィルタ装置の別の特定の局面では、基板がさらに備えられており、上記基板上に上記第1のフィルタ及び第2のフィルタが設けられている。
【0013】
本発明に係るフィルタ装置のさらに別の特定の局面では、上記並列接続部分の複数本の導体線路が、所定の平面内において互いに並んで設けられている。
【0014】
本発明に係るフィルタ装置の他の特定の局面では、上記並列接続部分の複数本の導体線路が、異なる高さに位置する平面に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記並列接続部分がフィルタ接続導体線路に設けられているため、アイソレーション特性に優れ、しかも挿入損失の増加が生じ難い、フィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態のフィルタ装置の物理的な構造を示す略図的平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のフィルタ装置の回路を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における第2のフィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における第1のフィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の実験例において、フィルタチップ間の間隔を変化させた場合のアイソレーション特性の変化を示す図である。
【
図7】
図7は、共通接続点と第1のフィルタとの間隔を変化させた場合の第2のフィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図8】
図8は、共通接続点と第1のフィルタとの間隔を変化させた場合の第1のフィルタの減衰量周波数特性を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態のフィルタ装置における第2のフィルタのインピーダンス特性を示すインピーダンススミスチャートである。
【
図10】
図10は、第1の実施形態のフィルタ装置における第1のフィルタのインピーダンス特性を示すインピーダンススミスチャートである。
【
図11】
図11は、第1のフィルタと第2のフィルタとを共通接続した場合の共通接続点における第1のフィルタの通過帯域すなわち送信帯域におけるインピーダンススミスチャートを示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施形態のフィルタ装置に係る概略構成図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態で用いられる並列接続部分を示す
概略構成図である。
【
図14】
図14は、本発明の並列接続部分の変形例を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明における並列接続部分の他の変形例を示す略図的斜視図である。
【
図16】
図16は、第1のフィルタに直列に共振子が接続されている回路を示す略図的回路図である。
【
図17】
図17は、
図16に示す回路によるインピーダンス調整作用を説明するためのインピーダンススミスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。フィルタ装置1はアンテナに接続される共通接続点2を有する。共通接続点2とグラウンド電位との間にはインダクタL1が接続されている。
【0019】
共通接続点2と、受信端子4a,4bとの間に第1のフィルタ5が接続されている。
【0020】
本実施形態では、フィルタ装置1はデュプレクサであり、第1のフィルタ5は、受信フィルタである。他方、共通接続点2と送信端子6との間に第2のフィルタ7が接続されている。第2のフィルタ7は送信フィルタである。
【0021】
第1のフィルタ5の共通接続点2側の端子4cが、本発明における第1の端子であり、受信端子4a,4bが第2の端子となる。また、第2のフィルタ7においては、共通接続点2側の端子8が第3の端子であり、送信端子6が第4の端子となる。共通接続点2は、第5の端子Tに接続されている。第5の端子Tは、アンテナに接続される。
【0022】
第1の端子を構成する端子4cと、第3の端子を構成する端子8とが、共通接続点2に電気的に接続されている。フィルタ接続導体線路9は、上記第5の端子Tと、共通接続点2
と第1の端子4cとを接続している第1の導体線路部分9aと、共通接続点2と第3の端子8とを接続している第2の導体線路部分9bとを有する。
【0023】
従って、第
1の導体線路部分9aが、共通接続点2と第1のフィルタ5とを接続している。また、第2の導体線路部分9bが、共通接続点2と第2のフィルタ7とを接続している。
【0024】
本実施形態の特徴は、上記フィルタ接続導体線路9において、第1の導体線路部分9aに、並列接続部分10が設けられていることにある。並列接続部分10は、互いに通信信号を通す複数の導体線路10a,10bが並列に接続されている部分である。この並列接続部分10は、同じ長さの単一の導体線路の場合に比べて、電気長が短くなる導体線路部分となる。従って、並列接続部分10の長さを物理的に長くしたとしても、電気的には短い、導体線路部分を構成することができる。
【0025】
よって、並列接続部分10の長さを長くすることにより、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7との間のアイソレーション特性を高めることができる。しかも、本実施形態では並列接続部分10は単一の導体線路の場合に比べて電気長が短い。よって、挿入損失の増加も生じ難い。この点については実験例に基づき、後でより詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、第2のフィルタ7は、本実施形態では、ラダー型フィルタである。すなわち、第3の端子8と送信端子6とを結ぶ直列腕が構成されている。この直列腕において、送信端子6側から順に、直列腕共振子S1a〜S1c、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3a,S3b及び直列腕共振子S4a〜S4cが配置されている。
【0027】
また、送信端子6側から順に第1〜第4の並列腕が、直列腕とグラウンド電位とを結ぶように設けられている。第1の並列腕は、送信端子6とグラウンド電位とを結んでいる。第1の並列腕には、並列腕共振子P1a,P1b及びインダクタL2が互いに直列に接続されている。
【0028】
第2の並列腕は、直列腕共振子S1cと直列腕共振子S2との間の接続点とグラウンド電位とを結んでいる。第3の並列腕は、直列腕共振子S2と、直列腕共振子S3aとの間の接続点とグラウンド電位とを接続している。
【0029】
第4の並列腕は、直列腕共振子S3bと直列腕共振子S4aとの間の接続点とグラウンド電位とを接続している。第2〜第4の並列腕においては、それぞれ、互いに直列に、並列腕共振子P2a,P2b、並列腕共振子P3a,P3b及び並列腕共振子P4a,P4bが接続されている。並列腕共振子P2b,P3b,P4bのグラウンド電位側端部が共通接続されている。この共通接続部分と、グラウンド電位との間にインダクタL3が接続されている。
【0030】
直列腕共振子および並列腕共振子には、SAWまたはBAWを用いた共振子を用いることができる。なお、第2のフィルタ7の構成は、ラダー型フィルタのみに限定されず、縦結合共振子型フィルタを含むことができる。
【0031】
受信フィルタを構成する第1のフィルタ5では、入力端である第1の端子4c側に、互いに直列に接続された共振子11a〜11dが設けられている。共振子11dには、縦結合共振子型の弾性波フィルタ13が接続されている。弾性波フィルタ13は、平衡−不平衡変換機能を有する帯域通過型フィルタである。弾性波フィルタ13は、奇数個のIDTを有する第1〜第4の弾性波フィルタ部13a〜13dを有する。奇数個のIDTを有する弾性波フィルタ部13a〜13dにおけるIDTの数は奇数であれば限定されない。すなわち、3IDT型、5IDT型または7IDT型などを用い得る。第1,第2の弾性波フィルタ部13a,13bが端子14aと受信端子4aとの間において並列に接続されている。また、端子14bと受信端子4bとの間において、第3,第4の弾性波フィルタ部13c,13dが並列に接続されている。第1,第2の弾性波フィルタ部13a,13bの出力端が共通接続されており、該共通接続部分とグラウンド電位との間に共振子15が接続されている。同様に、第3,第4の弾性波フィルタ部13c,13dの出力端が共通接続されている。この共通接続部分とグラウンド電位との間に共振子16が接続されている。受信端子4aと受信端子4bとの間には、インダクタL4が接続されている。
【0032】
上記第1のフィルタ5及び第2のフィルタ7の構成は、通過帯域を有するフィルタ弾性波装置、例えば帯域通過型フィルタからなる弾性波装置として公知な構成を用いればよい。本発明は、第1のフィルタ5及び第2のフィルタ7の具体的な構成については特に限定されない。
【0033】
図3は、
図2に示したフィルタ装置の回路構成を示す概略構成図である。
図3から明らかなように、共通接続点2と第1のフィルタ5との間に並列接続部分10が構成されている。並列接続部分10の実施形態の一例では、互いに一定の間隔を保って基
板の主面上に伸び、互いに長さの等しい2本の導体線路の本体部と、2本の導体線路の各両端を接続する導体線路の接続部とを備えている。導体線路の本体部の長さは導体線路の接続部の長さより長い。
【0034】
図1は、本実施形態のフィルタ装置1の物理的な構造を示す略図的平面図である。フィルタ装置1は基板21を有する。この基板21上に、図示の配線パターンが形成されている。そして、一点鎖線で示すように、基板21上に、第1のフィルタ5を構成しているフィルタチップが搭載される。
【0035】
基板21の上面には、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7とを電気的に接続する導体線路が形成されている。より具体的には、基板21の上面に、アンテナに接続される共通接続点2が導電膜により形成されている。フィルタ接続導体線路9の残りの部分も導電膜により形成されている。ここでは、共通接続点2は、送信フィルタを構成する第2のフィルタ7の下方に位置している電極ランドにより形成される。そして、この共通接続点2と送信フィルタである第2のフィルタ7とを結ぶ電気的接続部分が
図2の第2の導体線路部分9bを構成している。他方、共通接続点2から第1のフィルタ5側に向かって延びる導体線路部分が
図2の第1の導体線路部分9aである。そして、この第1の導体線路部分9a中に、上記並列接続部分10が設けられている。
【0036】
前述したように、並列接続部分10の長さを物理的に長くしても、単一の導体線路の場合に比べて、電気長は短くなる。従って、本実施形態のフィルタ装置1では、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7との距離が長くなって2つのフィルタ間の位相が変動した場合、導体線路の電気長を短くすることにより変動した位相を補正できる。それによって第1のフィルタ5と第2のフィルタ7とのアイソレーション特性を改善することができる。しかも、
図4及び
図5に示すように、挿入損失の増加も生じ難い。
【0037】
図4は、第2のフィルタの通過帯域の減衰量周波数特性を示し、
図5は第1のフィルタの減衰量周波数特性を示す。
図4及び
図5における実線は、第1の実施形態の実施例の結果を示し、破線は並列接続部分に代えて、同じ長さの単一の導体線路を用いたことを除いては同様に構成された比較例の減衰量周波数特性を示す。
【0038】
なお、上記実施例の第1,第2のフィルタ5,7の設計パラメータは以下の通りとした。
【0039】
(第1のフィルタ5の設計パラメータ)
共振子11a〜11dは下記の表1に示すように構成した。
【0041】
第1〜第4の弾性波フィルタ部13a〜13dの設計パラメータは下記の表2に示すとおりとした。なお、弾性波フィルタ部13a〜13dの設計パラメータは同一とした。ここでは、各弾性波フィルタ部13a〜13dは、奇数個のIDTを有する縦結合共振子型の弾性波フィルタ部として、7つのIDTを弾性波の伝搬方向に並べた7IDT型の縦結合共振子型の弾性波フィルタ部により構成した。すなわち、第1IDT〜第7IDTが順番に設けられている。第1IDT〜第7IDTが設けられている領域の弾性波の伝搬方向の両端部分において、一方側に第1反射器が、他方側に第2反射器が配置されている。
【0043】
共振子15,16は下記の表3に示すように設計した。
【0045】
インダクタL4の値は18nHとした。
【0046】
(第2のフィルタ7の設計パラメータ)
直列腕共振子S1a〜S1c,S2,S3a,S3b,S4a〜S4c及び並列腕共振子P1a,P1b〜P4a,P4bは、下記の表4に示すように設計した。
【0048】
インダクタL2の値は3.3nH、L3の値は1.0nHとした。
【0049】
上記実施例では、上記第1のフィルタ5と第2のフィルタ7を構成しているフィルタチップ間の間隔を、1000μmとした。
【0050】
図6は、このフィルタチップ間の間隔を100μm、1000μmまたは1500μmとした場合のアイソレーション特性を示す。
図6において、一点鎖線が100μm、破線が1000μm、実線が1500μmの場合の結果を示す。
図6から明らかなように、フィルタチップ間隔を大きくすることにより、アイソレーション特性を改善し得ることがわかる。特に、上記実施形態のように、フィルタチップ間隔を1500μmとした場合、十分なアイソレーション特性を確保しつつ、上記のような挿入損失の増加を抑制することができる。しかも、導体線路において、単に導電パターンを変更して、並列接続部分10を形成するだけでよいため、コストの増加も招き難くなる。
【0051】
上記並列接続部分10を用いたことにより、アイソレーション特性を改善するとともに挿入損失の増加を抑制し得るのは以下の理由によると考えられる。
【0052】
図6に示したように、一方のフィルタと他方のフィルタとの物理的な間隔が大きくなるほどアイソレーション特性は良好となる。他方、2つのフィルタ間の間隔を大きくすると、第1の導体線路部分9aの物理的な長さが長くなり、電気長が長くなる。従って、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7との間のインピーダンス整合が最適値からずれる。それによって挿入損失が増加すると考えられる。
【0053】
図7及び
図8は、共通接続点と第1のフィルタ5が近接した状態から上記フィルタチップ間隔を大きくした場合の特性の変化を示す。
図7及び
図8の実線に対し、
図7及び
図8の破線で示す特性は、間隔を電気的に+40[ps]大きくした場合の結果である。
図7は第2のフィルタの減衰量周波数特性を、
図8は第1のフィルタの減衰量周波数特性を示す。
【0054】
図7及び
図8から明らかなように、間隔を大きくすると、挿入損失が増加することがわかる。これは、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7との間のインピーダンス整合が最適値からずれたことが原因である。
【0055】
例えば上記実施形態のフィルタ装置1では、デュプレクサ機能を発揮させるには、送信フィルタを構成する第2のフィルタ7は
図9に示すインピーダンス特性を有する必要がある。受信フィルタを構成する第1のフィルタ5は、
図10に示すインピーダンス特性を有する必要がある。
【0056】
なお、
図9〜
図11においてTx及びRxは、それぞれ、送信周波数帯及び受信周波数帯であることを示す。すなわち、送信フィルタである第2のフィルタ7では、送信周波数帯Txにおけるインピーダンスが50Ω、受信周波数帯Rxのインピーダンスがスミスチャート上のオープン領域、すなわち無限大のインピーダンスを示す領域に位置するようなインピーダンス特性を有する必要がある。受信フィルタとしての第1のフィルタ5では、受信周波数帯Rxのインピーダンスが50Ω、送信周波数帯Txのインピーダンスがスミスチャート上のオープン領域に位置するようなインピーダンス特性を有する必要がある。
【0057】
上記のようなインピーダンス特性を有する2つのフィルタを共通接続すると、送信周波数帯においては、第2のフィルタ7のインピーダンス値である50Ωと、第1のフィルタ5のオープンなインピーダンスが並列接続され、この並列接続したインピーダンスがデュプレクサのインピーダンスとなる。この値が50Ωとなる。
【0058】
受信周波数帯においても同様である。言い換えれば、共通接続点2で共通接続される第1,第2のフィルタ5,7では、相手側のフィルタの通過帯域のインピーダンスがスミスチャート上のオープン領域からずれると、
図11に示すように、デュプレクサのインピーダンスが50Ωからずれることになる。
図7及び
図8において、挿入損失が増加しているのは、第1の導体線路部分9aの電気長が長くなることにより、受信フィルタを構成する第1のフィルタ5における送信周波数帯のインピーダンスがオープンからずれたことによると考えられる。すなわち、デュプレクサ全体のインピーダンスが50Ωからずれてしまい、挿入損失が増加していると考えられる。
【0059】
これに対して、このような挿入損失が増加している場合、受信フィルタを構成する第1のフィルタ5における送信周波数帯のインピーダンスをオープンとすればよい。
図16に示すように、第1のフィルタ5の前段直列に直列共振子S10を接続することによりインピーダンスを
図17の矢印Aの方向に修正することができる。すなわち、直列共振子S10の接続により、受信フィルタを構成する第1のフィルタ5における送信周波数帯のインピーダンスをオープンの側に近付ければよい。
【0060】
しかしながら、このようなインピーダンス調整方法では、挿入損失は依然として増加する。すなわち、配線長が増加して電気長が長くなった分を直列共振子S10の接続により修正する方法では、直列共振子S10のインピーダンスを高めて調整する必要がある。直列共振子S10が接続されることによって、第1のフィルタ5のインピーダンスの実部が高められる構成では、受信フィルタを構成する第1のフィルタ5の損失がやはり増加することとなる。
【0061】
これに対して、上記実施形態では、上記並列接続部分10を設けることにより、物理的な配線の長さを長くしても、導体線路部分の電気長を短縮し得る。上記実施形態では、インピーダンスの虚部が変化されて、電気長が短縮されると、スミスチャート上において、スミスチャートの表の中心を基準に反時計回りの方向にフィルタのインピーダンスを移動させることができる。このため、上記インピーダンス整合への影響を小さくすることができる。そのため、挿入損失の増加を抑制することが可能とされている。
【0062】
また、上記第1の導体線路部分9aに並列接続部分10を設けるだけでよいため、インピーダンスを調整するために、別の機能素子を必要としない。すなわち、インダクタLやキャパシタCを形成する必要はない。上記並列接続部分は、このような機能素子を有するものではない。従って、配線のみでインピーダンス整合を図り、挿入損失の増加を抑制することが可能とされている。また、インダクタンス成分およびキャパシタンス成分を含まない純粋な配線部分のみで構成してもインピーダンス整合が実現されるため、原理的にLC共振に起因する電磁波の放射が抑制できるため、外部の回路に影響を与え難い。さらに、外部の回路からの影響も受けがたい。
【0063】
なお、
図16に示したように、第1のフィルタ5の前段に直列共振子S10を接続してインピーダンスを調整しただけでは、挿入損失の増加を抑制できない。もっとも、本発明においては、第1の実施形態のように、第1のフィルタ5の前段に直列に共振子11a〜11dを接続してもよい。すなわち、並列接続部分10と第1のフィルタ5の間に接続されている共振子11a〜11dがさらに備えられていてもよい。その場合には、並列接続部分10を設けたことによる効果と上記共振子によるインピーダンス調整機能の双方により、アイソレーションの向上及び挿入損失の増加の抑制をはかることができる。
【0064】
図12は、本発明の第2の実施形態に係るフィルタ装置の概略構成図である。第1の実施形態では、共通接続点2と第1のフィルタ5との間の第1の導体線路部分9aに並列接続部分10が設けられていた。これに対して、
図12に略図的に示すように、並列接続部分10Bを、第2のフィルタ7側に配置してもよい。ここでは、共通接続点2と第2のフィルタ7とを接続している第2の導体線路部分に並列接続部分10Bが設けられている。
【0065】
なお、
図12に示す並列接続部分10Bのように、3本の導体線路10a〜10cが並列に接続されていてもよい。並列接続部分における並列に接続される導体線路の数は、特に限定されない。
【0066】
また、上記第1,第2の実施形態では、共通接続点に対し、第1のフィルタの第1の端子と、第2のフィルタの第3の端子とが共通接続されていたが、本発明は、第1及び第2の端子を有する第1のフィルタ5と、第3及び第4の端子を有する第2のフィルタ7とを第2の端子と第4の端子とを共通接続した構成を有するものであってもよい。すなわち、第1のフィルタの第1及び第2の端子のうちの一方と、第2のフィルタの第3及び第4の端子の一方とが共通接続点により共通接続されている構成に、本発明を広く適用することができる。
【0067】
また、
図13は、本発明の第3の実施形態で用いられる並列接続部分を示す
概略構成図である。並列接続部分10Aでは、一方端31と他方端32との間において、並列に第1の導体線路33と第2の導体線路34とが接続されている。もっとも、接続点35から第1の導体線路33を経て接続点36に至る経路と、接続点35から第2の導体線路34を経て接続点36に至る経路とが異なっている。すなわち第2の導体線路34側の経路が短くなっている。このように、並列接続部分においては、接続点35,36間の経路長が異なる導体線路を有していてもよい。
【0068】
図14は並列接続部分の変形例を示す斜視図である。並列接続部分10Cでは、導体線路10a〜10cが1つの面内において平行になるように配置されている。すなわち、1つの面内において複数本の導体線路10a〜10cが並設されている。これに対して、
図15に示す変形例の並列接続部分10Dのように、複数の導体線路10a〜10cが、多層基板の主面の法線方向、すなわち厚み方向において異なる高さ位置する平面内に分かれて配置されていてもよい。例えば厚み方向において多層基板内の異なる高さ位置にある複数の層に、導体線路10a〜10cを分けて配置し、導体線路の両端を接続電極などにより接続することにより並列接続部分を構成してもよい。
【0069】
なお、本発明は送信信号と受信信号とをフィルタにより分波するデュプレクサに適
用できるだけでなく、2つ以上の信号を分波するマルチプレクサにも適
用できる。さらに、本発明は、送信信号同士、あるいは受信信号同士をフィルタにより分波するダイプレクサにも適
用できる。各フィルタは、ラダー型弾性波フィルタのみによって構成されてもよく、あるいは縦結合共振子型弾性波フィルタのみによって構成されてもよい。また、ラダー型フィルタの共振子は、BAW共振子によって構成されてもよい。
共通接続点2に、第1のフィルタ5と第2のフィルタ7とが第1の導体線路部分9aを有するフィルタ接続導体線路9により接続されており、第1の導体線路部分9aに、単一の導体線路に比べて電気長が短い並列接続部分10が設けられている、フィルタ装置1。