特許第5768994号(P5768994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768994
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】車両用バッテリー冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/60 20140101AFI20150806BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01M10/60
   H01M2/10 S
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-293781(P2008-293781)
(22)【出願日】2008年11月17日
(65)【公開番号】特開2010-123298(P2010-123298A)
(43)【公開日】2010年6月3日
【審査請求日】2011年8月31日
【審判番号】不服2014-13324(P2014-13324/J1)
【審判請求日】2014年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江崎 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮下 徳英
【合議体】
【審判長】 堀川 一郎
【審判官】 中川 真一
【審判官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−100123(JP,A)
【文献】 特開2004−288527(JP,A)
【文献】 特開2006−179190(JP,A)
【文献】 特開2006−185863(JP,A)
【文献】 特開2007−227030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/50〜10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に並ぶ複数のバッテリーパックを収納したバッテリーボックス内に流入した冷却空気により前記バッテリーパックを冷却する車両用バッテリー冷却システムであって、
前記バッテリーボックスは、前記バッテリーパックに前記冷却空気を吹き付けるエアダクトを内蔵し、
前記エアダクトは、前記バッテリーパックに対して水平方向に並んで位置すると共に、断熱性を有する材質にて形成されていることを特徴とする車両用バッテリー冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用バッテリー冷却システムにおいて、
前記エアダクトは、前記冷却空気が流入する冷風流入口と、前記バッテリーパックに面した冷風吐出口とを有し、
前記冷風吐出口は、前記エアダクト内を流れる冷却空気の流れに沿って複数設けられると共に、前記冷風流入口から離れるにつれて次第に開口面積が小さくなることを特徴とする車両用バッテリー冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用のバッテリーパックを冷却する車両用バッテリー冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両駆動用の複数のバッテリーパックを水平方向に並べた状態でバッテリーボックスに収納し、このバッテリーボックス内に冷却空気を流入することで各バッテリーパックを冷却する車両用バッテリー冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この車両用バッテリー冷却システムでは、バッテリーボックスの下面に各バッテリーボックスに冷却空気を吹き付けるエアダクトが取り付けられ、このエアダクトから吐出された冷却空気をバッテリーボックスの下方から吹き付ける。
【特許文献1】特開平7−237457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の車両用バッテリー冷却システムでは、バッテリーボックスの下面にエアダクトが取り付けられているので、冷却空気がエアダクトを介してバッテリーパックからの熱を受熱してしまい、温度が上がってしまったり、地上からの熱を受けて温度が上がってしまう懸念があった。また、エアダクトから吹き上げられた冷却空気は、バッテリーパックの下方から吹き付けられた後、ほぼ水平流になって排気通路に流れていく。そのため、冷却空気は、流れの下流側にいくほどバッテリーパックからの熱を受熱して温度が上昇してしまうという問題があった。
【0005】
また、冷却空気の流れの下流側に位置したバッテリーパックには、流れの上流側に位置したバッテリーパックの熱により暖められた冷却空気が接触することになり、この下流側に位置したバッテリーパックでは熱交換効率が低下して冷却しにくくなる。そして、下流側に位置したバッテリーパックが冷却しにくいため、上流側に位置したバッテリーパックと下流側に位置したバッテリーパックとの温度差が大きくなるという問題もあった。
【0006】
そして、車両の床下と地面の最低地上高を確保するため十分なダクトの断面積を確保できず、冷却風の確保が困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、バッテリー冷却空気の温度上昇を抑えると共に、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる車両用バッテリー冷却システムを提供することを課題としている
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係る車両用バッテリー冷却システムは、水平方向に並ぶ複数のバッテリーパックを収納したバッテリーボックス内に流入した冷却空気により前記バッテリーパックを冷却する車両用バッテリー冷却システムであって、前記バッテリーボックスは、前記バッテリーパックに前記冷却空気を吹き付けるエアダクトを内蔵し、前記エアダクトは、前記バッテリーパックに対して水平方向に並んで位置すると共に、断熱性を有する材質にて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、バッテリーパックに冷却空気を吹き付けるエアダクトがバッテリーボックスに内蔵され、このエアダクトがバッテリーパックに対して水平方向に並んで位置されると共に、断熱性を有している。
すなわち、冷却空気はバッテリーパックとほぼ同じ高さ位置にて流れると共に、断熱性を有するエアダクトを通って流れる。これにより、冷却空気がバッテリーパックの熱を受熱することが防止されて、冷却空気の温度上昇が抑えることができる。また、冷却空気の下流側に位置したバッテリーパックにも十分冷たい空気を吹き付けることができるので、下流側に位置したバッテリーパックにおける冷却効率の低下を抑制できる。そのため、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる。
この結果、バッテリー冷却空気の温度上昇を抑えると共に、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の車両用バッテリー冷却システムを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムの外観を示す斜視図である。図2は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムの横断面図である。図3(a)は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムに使用するバッテリーパックを示す分解斜視図であり、(b)はバッテリーパックの外観を示す斜視図である。図4は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムのエアダクトを示す斜視図である。図5は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムを備えた車両を模式的に示す上面図である。
【0012】
実施例1の車両用バッテリー冷却システム10は、図1に示すように、バッテリー部20と、冷却部30とを備えている。そして、バッテリー部20は、バッテリーボックス21と、複数のバッテリーパック22と、エアダクト40とを有している。また、冷却部30は、ブロア31と、エバポレータ32と、送風ダクト部33と、吸気ダクト部34とを有している。
【0013】
バッテリーボックス21は、薄型長方形状を呈する中空箱であり、冷却部30に面した短手方向の一側面(以下、入口端面という)21a(図2参照)のほぼ中央に送風開口23aを有し、この入口端面21aの両側部にそれぞれ排気開口23bを有している。なお、このバッテリーボックス21の高さはバッテリーパック22を上下から狭持可能な大きさになっている。
【0014】
バッテリーパック22は、ハイブリッド車両の駆動用に使用される電源であり、薄板矩形状の複数(ここでは5個)のバッテリー体24と、各バッテリー体24の四隅に形成された貫通孔24aをそれぞれ貫通する4本の固定ネジ25と、バッテリー体24間に配置されるスペーサ26とを有している。各バッテリー体24は、高さ方向に積層され、上下に位置するバッテリー体24間の四隅にそれぞれスペーサ26が配置される。各スペーサ26は、固定ネジ25が貫通すると共に、上下に位置するバッテリー体24に狭持されることで固定される。固定ネジ25は、全てのバッテリー体24を貫通すると共に先端に螺合するナットNにより抜け止めされる。これにより、図3(b)に示すように、バッテリー体24は、スペーサ26により通風可能な隙間S1が開いた状態で積層され、全体としてほぼ直方体形状を呈するバッテリーパック22となる。
【0015】
そして、バッテリーボックス21には、複数のバッテリーパック22が水平方向に並んだ状態で収納される。ここでは12個のバッテリーパック22が、バッテリーボックス21の長手方向に沿って6個ずつ2列に並べられ(以下、それぞれをバッテリーパック列A,Bという)、各バッテリーパック列A,Bの間にはエアダクト40を配置可能なダクトスペースが空けられる。このダクトスペースは、バッテリーボックス21に形成された送風開口23aに連通している。そして、入口端面21aに対向するバッテリーボックス21の短手方向の側面(以下、折返し端面という)21bとバッテリーパック列A,Bとの間はほぼ密着状態にされる。また、入口端面21aとバッテリーパック列A,Bとのそれぞれの間には、電子機器(例えばDC/ACコンバータやコネクタ等を収納したジャンクションボックス等)を収納した電子ボックス27が配置される。さらに、バッテリーボックスの長手方向の両側面21c,21dとバッテリーパック列A,Bすなわちバッテリーパック22との間にはそれぞれ隙間S2があけられる。これにより、ダクトスペースと隙間S2とは、バッテリー体24間に設けられた隙間S1を介して連通する。さらに、各隙間S2は、それぞれ排気開口23bに連通している。
【0016】
エアダクト40は、中空角管形状を呈すると共に、断熱性を有する材質、例えば発泡ポリプロピレンや発泡ポリエチレン等により形成されている。なお、ここではエアダクト40の熱抵抗はバッテリーボックス21よりも高いものとなっており、バッテリーボックス21よりもエアダクト40の断熱性の方が高くなっている。そして、このエアダクト40は、バッテリーボックス21に内蔵されるが、このときバッテリーボックス21の長手方向に並ぶ二列のバッテリーパック列A,B間にあいたダクトスペースに配置される。これにより、エアダクト40は複数のバッテリーパック22に対して水平方向に並んで位置すると共に、バッテリーパック列A,Bと同方向に延びつつ両側がバッテリーパック列A,Bに挟まれる。すなわち、全てのバッテリーパック22はエアダクト40に隣接配置される。
【0017】
エアダクト40は、バッテリーボックス21の入口端面21aに面する短手方向端面は開放して冷風流入口41となっている。この冷風流入口41は、バッテリーボックス21の送風開口23aに対向しており、この送風開口23aを介してバッテリーボックス21外に開放している。また、バッテリーボックス21の折返し端面21bに面する冷風流入口41に対向した先端面42は閉塞され、折返し端面21bの内側面にほぼ密着される。さらに、バッテリーパック列A,Bに面する長手方向の両側面43a,43bには、複数の冷風吐出部44Aが形成されている。これらの冷風吐出部44Aは、エアダクト40内を流れる冷却空気の流れに沿って配置されている。また、各冷風吐出部44Aは、複数の冷風吐出口44を有している。これらの冷風吐出口44は、バッテリー体24間にあいた隙間S1にそれぞれ対向するように、エアダクト40の上下方向に所定距離をあけて配置される。さらに、各冷風吐出口44は、冷風流入口41側から先端面42側に向かうにつれて次第に開口面積が小さくなっている。
【0018】
一方、ブロア31はいわゆる送風機であり、図示しないファンを回転させることで吸込部31aから吸い込んだ空気を吐出部31bから排出するようになっている。
【0019】
エバポレータ32はいわゆる蒸発器であり、このエバポレータ32を通過する空気から熱を奪って内部を流れる冷媒を蒸発させる。すなわち、このエバポレータ32によりブロア31から送風された空気が冷却されて冷却空気となる。
【0020】
送風ダクト部33は、ブロア31の吐出部31bとバッテリーボックス21の送風開口23aとを連通するダクトであり、エバポレータ32を内蔵している。ここで、送風開口23aがエアダクト40の冷風流入口41に対向しているので、送風ダクト部33により吐出部31bと冷風流入口41とが連通することとなる。
【0021】
吸気ダクト部34は、ブロア31の吸気部31aとバッテリーボックス21の各排気開口23bとを連通するダクトである。ここで、エアダクト40の冷風吐出口44がバッテリー体24間の隙間S1に連通し、この隙間S1が隙間S2に連通し、隙間S2がバッテリーボックス21の排気開口23bに連通しているので、吸気ダクト部34により吸気部31aと排気開口23bとが連通することで、この吸気部31aと冷風吐出口44とが連通することとなる。なお、送風ダクト部33及び吸気ダクト部34は外気に連通していないため、冷却空気はバッテリーボックス21と送風ダクト部33と吸気ダクト部34とからなる閉空間で循環することとなる。
【0022】
そして、この実施例1の車両用バッテリーシステム10を構成するバッテリー部20及び冷却部30は、図5に示すように内燃機関2と図示しないモータジェネレータとを備えたハイブリット車両1に搭載される。このとき、バッテリー部20は車両1の内燃機関2から延びるエキゾーストパイプ3の上方に、ほぼ直交する状態で配置される。また、図示しない消音器に近接して配置されることもある。
【0023】
次に、作用を説明する。
まず、「現行の車両用バッテリー冷却システムとその課題」の説明を行い、続いて、実施例1の車両用表示装置における作用を、「冷却空気の受熱防止作用」、「バッテリーパック間の温度差抑制作用」に分けて説明する。
【0024】
[現行の車両用バッテリー冷却システムとその課題]
現行の車両用バッテリー冷却システムでは、複数のバッテリーパックが水平方向に並んだ状態でバッテリーボックス内に収納し、このバッテリーボックス内に冷却空気を流入することでバッテリーパックを冷却することが一般的に行われている。このとき、バッテリーボックス内に流入した冷却空気は、流入直後では十分に冷却され温度が低い状態であるが、バッテリーボックス内を流れることで次第にバッテリーパックから受熱し、最終的には暖められた状態でバッテリーボックスから排出される。
【0025】
そのため、冷却空気の流入口近傍に位置するバッテリーパックには温度の低い冷却空気を吹き付けることができて十分に冷却することができるが、冷却空気の排出口近傍に位置するバッテリーパックにはバッテリーボックス内を流れるうちに受熱して温度が上昇した冷却空気が吹き付けられる。そのため、この冷却空気の排出口近傍に位置するバッテリーパックに対する冷却効果が低く、流入口近傍に位置したものとの温度差が大きく生じることとなる。
【0026】
すなわち、バッテリーボックス内を流れる間に途中に位置するバッテリーパックからの熱を受熱して冷却空気の温度上昇が生じると共に、バッテリーパックの収納位置により冷却効果が大きく異なって複数のバッテリーパック間に温度差が生じている。これにより、複数のバッテリーパック間で出力や寿命にばらつきが生じ、その結果全体のバッテリー部としても早期に交換が必要になってしまう問題があった。
【0027】
以上の問題を鑑みて、本願発明では、バッテリー冷却空気の温度上昇を抑えると共に、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくするため、バッテリーボックス21内にバッテリーパック22に対して水平方向に配置されると共に、断熱性を有するエアダクト40を内蔵する構成とした。
【0028】
[冷却空気の受熱防止作用]
図6は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムにおける冷却空気の流れを示す説明図である。
【0029】
実施例1の車両用バッテリー冷却システム10においてバッテリーパック22を冷却するには、まずブロア31を駆動して吐出部31bから空気を排出する。排出された空気は送風ダクト部33を流れ、この送風ダクト部33に内蔵されたエバポレータ32を通過する際に熱が奪われて冷却空気になる。そして冷却空気は、バッテリーボックス21の送風開口23a及びエアダクト40の冷風流入口41を介してエアダクト40内に流入される。
【0030】
ここで、エアダクト40のバッテリーパック22に面した長手方向側面43a,43bにはバッテリー体24間にあいた隙間S1に連通する冷風吐出口44が形成されている。そのため、エアダクト40内に流入された冷却空気は、冷風流入口41側に位置する冷風吐出口44から順次流れ出し、バッテリー体24間の隙間S1を通過して隙間S2へと流出する。このときバッテリー体24と冷却空気との間で熱交換が行われ、バッテリー体24が冷却されると同時に冷却空気は受熱して温度上昇する。
【0031】
そして、温度上昇した冷却空気は、バッテリーパック22とバッテリーボックス21の長手方向側面21c,21dとの間にあいた隙間S2を排気開口23bに向かって流れ、排気開口23bから吸気ダクト部34へと流れ込み、再びブロア31に吸い込まれて循環する。
【0032】
このとき、エアダクト40がバッテリーパック22に対して水平方向に並んで位置すると共に、断熱性を有する材質、例えば発泡ポリプロピレンや発泡ポリエチレン等により形成されている。これにより、エアダクト40内を流れる冷却空気はバッテリーボックス21の熱から断熱され、受熱することなくエアダクト40の閉塞された先端面42まで流れることができる。すなわち、エアダクト40の断熱効果により、エアダクト40の冷風吐出口44から流れ出る冷却空気温度は冷風流入口41からの距離に拘らずほぼ一定にすることができる。そして、冷却空気の流れの上流側に位置するバッテリーパック22の熱で冷却空気が暖められることが防止され、バッテリー冷却空気の温度上昇を抑えることができる。
【0033】
また、実施例1の車両用バッテリー冷却システム10では、エアダクト40がバッテリーボックス21よりも大きい熱抵抗を有している。すなわち、エアダクト40はバッテリーボックス21よりも断熱性が高い。そのため、バッテリー部20がエキゾーストパイプ3からの熱により暖められ、バッテリーボックス21を介して内部に熱侵入があったとしても、エアダクト40内の冷却空気は断熱されて温度上昇することを防止できる。
【0034】
また、バッテリーパック22を冷却した後の空気がバッテリーボックス21の両側面21c,21dとの隙間S2を通って吸気ダクト部34へ戻るため、外部からの断熱性を高めている。
【0035】
[バッテリーパック間の温度差抑制作用]
上述のように、実施例1の車両用バッテリー冷却システム10では、エアダクト40の冷風吐出口44から流れ出る冷却空気温度は冷風流入口41からの距離に拘らずほぼ一定にできるので、バッテリーパック22の位置に拘らずほぼ一定の温度の冷却空気を吹き付けることができる。そのため、複数のバッテリーパックのいずれにおいても熱効率のばらつきがなくなり、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる。
【0036】
特に、実施例1の車両用バッテリー冷却システム10では、全てのバッテリーパック22がエアダクト40に隣接配置しており、流れ出た冷却空気の流れに沿ってバッテリーパックが並んでいない。そのため、エアダクト40から流れ出た冷却空気をダイレクトにバッテリーパック22に吹き付けることができ、冷却効率の向上を図ると共に、さらに温度差の発生を抑制することができる。
【0037】
また、エアダクト40に形成された冷風吐出口44は、エアダクト40内を流れる冷却空気の流れに沿って複数設けられると共に、冷風流入口41から離れるにつれて開口面積が小さくなっている。すなわち、流速が早くて静圧が低い冷風流入口41側では冷風吐出口44の開口面積を大きくして空気が流れ出やすくし、先端面42により冷却空気の流れが遮断されることで静圧が上がる先端面42側では冷風吐出口44の開口面積を小さくして空気が流れ出にくくする。これにより。各冷風吐出口44から吹き出される風量がほぼ均一になり、さらに複数のバッテリーパック22間の温度差を小さくすることができる。
【0038】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用バッテリー冷却システム10にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0039】
(1) 水平方向に並ぶ複数のバッテリーパック22を収納したバッテリーボックス21内に流入した冷却空気により前記バッテリーパック22を冷却する車両用バッテリー冷却システム10であって、前記バッテリーボックス21は、前記バッテリーパック22に前記冷却空気を吹き付けるエアダクト40を内蔵し、前記エアダクト40は、前記バッテリーパック22に対して水平方向に並んで位置すると共に、断熱性を有する。このため、バッテリー冷却空気の温度上昇を抑えると共に、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる。
【0040】
(2) 前記バッテリーパック22は、前記エアダクト40に隣接配置する。このため、エアダクト40から流れ出た冷却空気をダイレクトにバッテリーパック22に吹き付けることができ、冷却効率の向上を図ると共に、さらに温度差の発生を抑制することができる。
【0041】
(3) 前記エアダクト40は、前記冷却空気が流入する冷風流入口41と、前記バッテリーパック22に面した冷風吐出口44とを有し、前記冷風吐出口44は、前記エアダクト40内を流れる冷却空気の流れに沿って複数設けられると共に、前記冷風流入口41から離れるにつれて次第に開口面積が小さくなる。このため、各冷風吐出口44から吹き出される風量がほぼ均一になり、さらに複数のバッテリーパック22間の温度差を小さくすることができる。
【0042】
(4) 前記エアダクト40は、前記バッテリーボックス21よりも大きい熱抵抗を有する。これにより、バッテリーボックス21を介して内部に熱侵入があったとしても、エアダクト40内の冷却空気を断熱し、温度上昇が防止できる。
【0043】
(5) 前記エアダクト40は、前記バッテリーパック22に対して水平方向に並んで位置している。これにより、エアダクト40内を流れる冷却空気が従来例のように地面からの熱を受けず、この冷却空気の温度上昇が防止できる。さらに、車両の最低地上高の確保が容易となると共に、エアダクト40の断面積を十分確保することができて冷却風量を比較的小さなブロア31で得ることができる。そのため、ブロア31を駆動するためのバッテリーパック22の消費エネルギーを抑えられる。
【実施例2】
【0044】
実施例2は、複数のバッテリーパックの熱収支に応じて冷却空気量を設定した例である。
【0045】
まず、構成を説明する。
図7は、実施例2の車両用バッテリー冷却システムのエアダクトを示す斜視図である。
【0046】
実施例2の車両用バッテリー冷却システムは、上記実施例1の車両用バッテリー冷却システム10と同様に、車両1の内燃機関のエキゾーストパイプ3の上方に、ほぼ直交する状態で配置される。また、図示しない消音器に近接して配置されることもある。これにより、エキゾーストパイプ3のほぼ真上に位置することとなる各バッテリーパック列A,Bのうち中央に位置したバッテリーパック22は、入口端面21aの近傍に位置したバッテリーパック22や折返し端面21bの近傍に位置したバッテリーパック22よりもバッテリーボックス21外からの受熱量が大きく熱収支が大きい。さらに、エキゾーストパイプ3からの熱は下方から入力するので、中央に位置したバッテリーパック22のバッテリー体24うち、下側に位置するバッテリー体24の熱収支が最も大きくなる。
【0047】
これに対し、図7に示すエアダクト50は、バッテリーパック列A,Bのうち中央に位置したバッテリーパック22の下側に位置するバッテリー体24に対応する冷風吐出口55の開口面積が、他の位置に配置されたバッテリー体24に対応する冷風吐出口54よりも大きくなっている。
【0048】
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、対応する構成に同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
次に、作用を説明する。
実施例2の車両用バッテリー冷却システムでは、熱収支の大きいバッテリーパック22のバッテリー体24に対応する冷風吐出口55の開口面積を大きくしているので、この冷風吐出口55からの送風量を多くすることができる。そのため、熱収支の大きいバッテリー体24に積極的に冷却空気を吹き付けることができ、このバッテリー体24の熱収支が大きくても冷却効率を高めることができる。すなわち、複数のバッテリーパック間に熱収支の違いがあっても温度差を小さくすることができる。
【0050】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両用バッテリー冷却システムにあっては、実施例1の(1)〜(5)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
【0051】
(6) 前記エアダクト50は、前記冷却空気が流入する冷風流入口41と、前記バッテリーパックに面した冷風吐出口54,55とを有し、前記冷風吐出口54,55は、少なくとも複数のバッテリーパック22のそれぞれに対応して複数設けられると共に、熱収支が大きい前記バッテリーパック22に対応する冷風吐出口55の開口面積を大きくする。これにより、バッテリーパック22間に熱収支の違いが生じても、それぞれの熱収支に応じて冷却効率を設定することができ、複数のバッテリーパック間の温度差を小さくすることができる。
【0052】
さらに、エアダクト40は送風策と部33と別体になっている。これにより、エアダクト40の冷風吐出口55のみを変化させたものを造ることにより、他の部分の構造を変更することなく、車両の床下レイアウト(例えば、エキゾーストパイプ3の配設形状の差異や、床下の空気流れ状態の差異等)により異なる各バッテリーパック22の熱収支の差異に容易に対処することができる。
【0053】
以上、本発明の車両用バッテリー冷却システムを実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0054】
実施例1及び実施例2では、冷風吐出口44,54,55はエアダクト40,50の側面43a,43bに形成された開口であるが、図8に示すように、開口上下にルーバー60を設けてもよい。このルーバー60により吹き出される冷却空気の方向を調整することができ、より冷却効率の調整を的確に行うことができる。なお、このルーバー60はエアダクト40,50と一体成型されてもよいし、別体であって組み付けられてもよい。さらに、ルーバー60を冷風吐出口44,54,55の両側部に設けてもよい。
【0055】
さらに、バッテリー体24間の隙間S1を通過した冷却空気が流れる隙間S2にも断熱性を有する排気用エアダクトを設けても良い。なお、この排気用エアダクトには、隙間S1に連通する排気流入口と排気開口23bに連通する排気流出口とを形成する。これにより、一度バッテリー体24間の隙間S1を通過して温度の上がった冷却空気が再びバッテリー体24に接触することが確実に防止され、さらなる冷却効率の向上を図ることができる。
【0056】
また、エバポレータ32を持たず、ブロア31の送風によりバッテリーパック2を冷却するものにおいても適用できる。この場合には、バッテリーパック22を冷却した後の空気はブロア31へと循環せず、バッテリーボックス21から外部へ排出されるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0057】
実施例1では、車両用バッテリー冷却システム10をハイブリッド車両1に搭載した例を示したが、車両の駆動用として車両に搭載されるバッテリー部20を、ブロア31を有する冷却部30で冷却する車両用バッテリー冷却システムであれば適用でき、例えば電気自動車に搭載されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】実施例1の車両用バッテリー冷却システムの外観を示す斜視図である。
図2】実施例1の車両用バッテリー冷却システムの横断面図である。
図3】(a)は、実施例1の車両用バッテリー冷却システムに使用するバッテリーパックを示す分解斜視図であり、(b)はバッテリーパックの外観を示す斜視図である。
図4】実施例1の車両用バッテリー冷却システムのエアダクトを示す斜視図である。
図5】実施例1の車両用バッテリー冷却システムを備えた車両を模式的に示す上面図である。
図6】実施例1の車両用バッテリー冷却システムにおける冷却空気の流れを示す説明図である。
図7】実施例2の車両用バッテリー冷却システムのエアダクトを示す斜視図である。
図8】冷風吐出口の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用バッテリー冷却システム
21 バッテリーボックス
22 バッテリーパック
40 エアダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8