特許第5768999号(P5768999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000004
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000005
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000006
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000007
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000008
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000009
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000010
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000011
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000012
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000013
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000014
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000015
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000016
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000017
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000018
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000019
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000020
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000021
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000022
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000023
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000024
  • 特許5768999-モータ制御装置および車両用操舵装置 図000025
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5768999
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】モータ制御装置および車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/00 20060101AFI20150806BHJP
   B62D 1/18 20060101ALI20150806BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H02P7/67 A
   B62D1/18
   B62D5/04
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2011-30586(P2011-30586)
(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公開番号】特開2012-170276(P2012-170276A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】千徳 稔
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−191681(JP,A)
【文献】 特開2003−333895(JP,A)
【文献】 特開2006−076333(JP,A)
【文献】 特開平11−020715(JP,A)
【文献】 特開2008−105576(JP,A)
【文献】 特開平10−164888(JP,A)
【文献】 特開平05−137380(JP,A)
【文献】 特許第3839142(JP,B2)
【文献】 特許第3854190(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0022620(US,A1)
【文献】 特開2010−213483(JP,A)
【文献】 特開2012−131330(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0012350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/00
B62D 1/18
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相モータと、
前記三相モータの第1相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子と、前記三相モータの第2相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子と、前記三相モータの第3相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子とを有し、前記第1相、第2相および前記第3相にそれぞれ対応する第1相配線、第2相配線および第3相配線からなる第1の給電回路を介して前記三相モータに接続された三相ブリッジインバータ回路と、
前記第1の給電経路を開閉するための経路開閉手段と、
前記第1相配線と前記第2相配線との間に第2の給電回路を介して接続された第1の直流モータと、
前記第2相配線と前記第3相配線との間に第3の給電回路を介して接続された第2の直流モータと、
前記第2の給電回路を開閉する第1のスイッチと、
前記第3の給電回路のうち、前記第2相配線と前記第2の直流モータとを接続する部分を開閉する第2のスイッチと、
前記第2の直流モータと前記第2のスイッチとの接続点を、第3のスイッチを介して前記第1相配線に接続するための切替回路とを含む、モータ制御装置。
【請求項2】
前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、
前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、
前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが正転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第1制御手段を含み、
前記第1制御手段は、
前記第1のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第2のスイッチをオフ状態にさせる手段と、
前記第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するローサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するローサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段とを含む、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、
前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、
前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが逆転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第2制御手段を含み、
前記第2制御手段は、
前記第1のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第2のスイッチをオフ状態にさせる手段と、
前記第1相に対応するローサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段とを含む、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
三相モータと、
前記三相モータの第1相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子と、前記三相モータの第2相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子と、前記三相モータの第3相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子とを有し、前記第1相、第2相および前記第3相にそれぞれ対応する第1相配線、第2相配線および第3相配線からなる第1の給電回路を介して前記三相モータに接続された三相ブリッジインバータ回路と、
前記第1の給電経路を開閉するための経路開閉手段と、
前記第1相配線と前記第2相配線との間に第2の給電回路を介して接続された第1の直流モータと、
前記第2相配線と前記第3相配線との間に第3の給電回路を介して接続された第2の直流モータと、
前記第2の給電回路のうち、前記第2相配線と前記第の直流モータとを接続する部分を開閉する第1のスイッチと、
前記第3の給電回路を開閉する第2のスイッチと、
前記第1の直流モータと前記第1のスイッチとの接続点を、第3のスイッチを介して前記第3相配線に接続するための切替回路とを含む、モータ制御装置。
【請求項5】
前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、
前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、
前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが正転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第1制御手段を含み、
前記第1制御手段は、
前記第2のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第1のスイッチをオフ状態にさせる手段と、
前記第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するローサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段とを含む、請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、
前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、
前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが逆転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第2制御手段を含み、
前記第2制御手段は、
前記第2のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第1のスイッチをオフ状態にさせる手段と、
前記第1相に対応するローサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するローサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段とを含む、請求項4または5に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータ制御装置を含み、
前記三相モータが電動パワーステアリング用の三相ブラシレスモータであり、
前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータのうちのいずれか一方が操舵部材の所定の第1方向位置を調整するためのチルト調整用モータであり、他方が前記操舵部材の所定の第2方向位置を調整するためのテレスコピック調整用モータである、車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ制御装置および車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用操舵装置として、電動パワーステアリング装置と、ステアリングホイール等の操作部材の位置を調整する位置調整装置とを備えたものがある。位置調整装置には、たとえば、操作部材の前後位置を調整するためのテレスコピック調整装置や操作部材の上下位置を調整するためのチルト調整装置がある。
電動パワーステアリング装置は、電動パワーステアリング用モータ(EPS(Electric Power Steering)用モータ)を含む。テレスコピック調整装置は、テレスコピック調整用モータを含む。チルト調整装置は、チルト調整用モータを含む。EPS用モータは、たとえば、三相ブラシレスモータである。テレスコピック調整用モータおよびチルト調整用モータは、たとえば、ブラシ付直流モータである。
【0003】
EPS用モータは、EPS用モータの駆動回路を含むEPS用コントローラ(EPS用ECU)によって制御されている。一方、チルト調整用モータおよびテレスコピック調整用モータは、各モータの駆動回路を含む位置調整用コントローラ(位置調整用ECU)によって制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-164888号公報
【特許文献2】特許第3839142号公報
【特許文献3】特開平5-137380号公報
【特許文献4】特許第3854190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来においては、EPS用モータ、チルト調整用モータおよびテレスコピック調整用モータを駆動するためには、EPS用モータの駆動回路と、チルト調整用モータの駆動回路と、テレスコピック調整用モータの駆動回路とが必要である。これらの駆動回路は複数のFET(電界効果トランジスタ:field Effect Transistor)等のスイッチング素子を含んでいるため、多数のスイッチング素子が必要となる。
【0006】
たとえば、EPS用モータの駆動回路を、6つのFETを含む三相ブリッジインバータ回路で構成し、チルト調整用モータの駆動回路およびテレスコピック調整用モータの駆動回路を、4つのFETを含むHブリッジ回路で構成した場合には、14個のFETが必要となる。
この発明の目的は、1つの駆動回路によって、三相モータと2つの直流モータとを駆動することが可能となるモータ制御装置を提供することである。
【0007】
この発明の目的は、1つの駆動回路によって、電動パワーステアリング用モータとチルト調整用モータとテレスコピック調整用モータとを駆動することが可能となる車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、三相モータ(6)と、前記三相モータの第1相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET1,FET2)と、前記三相モータの第2相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET3,FET4)と、前記三相モータの第3相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET5,FET6)とを有し、前記第1相、第2相および前記第3相にそれぞれ対応する第1相配線(15)、第2相配線(16)および第3相配線(17)からなる第1の給電回路を介して前記三相モータに接続された三相ブリッジインバータ回路(11)と、前記第1の給電経路を開閉するための経路開閉手段(18A,18B)と、前記第1相配線と前記第2相配線との間に第2の給電回路(21,22)を介して接続された第1の直流モータ(8)と、前記第2相配線と前記第3相配線との間に第3の給電回路(23,24)を介して接続された第2の直流モータ(9)と、前記第2の給電回路を開閉する第1のスイッチ(R1)と、前記第3の給電回路のうち、前記第2相配線と前記第2の直流モータとを接続する部分を開閉する第2のスイッチ(R2)と、前記第2の直流モータと前記第2のスイッチとの接続点を、第3のスイッチ(R3)を介して前記第1相配線に接続するための切替回路(25)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0009】
経路開閉手段によって第1の給電経路を閉鎖し、第1〜第3のスイッチをオフにすると、三相モータが三相ブリッジインバータ回路に接続されるので、三相モータを駆動させることが可能となる。一方、経路開閉手段によって第1の給電経路を開放し、第1〜第3のスイッチを制御するとともに、三相ブリッジインバータ回路内のスイッチング素子を制御することにより、第1の直流モータおよび第2の直流モータのいずれか一方または両方を駆動させることが可能となる。つまり、1つの三相ブリッジインバータ回路によって、三相モータと2つの直流モータとを駆動することが可能となる。これにより、三相モータと第1の直流モータと第2の直流モータとを駆動するために必要なFET等のスイッチング素子の数を低減させることができる。
【0010】
ところで、第1のスイッチおよび第2のスイッチをオンとし、三相ブリッジインバータ回路内の所定の2つのスイッチング素子をオンにすることにより、第1の直流モータと第2の直流モータとを直列運転することが可能である。このような動作モードを直列運転可能な動作モードと言うことにする。しかしながら、直列運転可能な動作モードにおいて、第1の直流モータと第2の直流モータとを直列運転すると、各直流モータに印加される電圧が低下するため、各直流モータのトルクが低下する。
【0011】
この発明では、第2の直流モータと第2のスイッチとの接続点を、第3のスイッチを介して第1相配線に接続するための切替回路を含んでいるので、直列運転可能な動作モードにおいて、第1の直流モータと第2の直流モータとを並列運転することが可能となる。これにより、直列運転可能な動作モードにおいて、各直流モータのトルクが低下するのを防止できる。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが正転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第1制御手段(12)を含み、前記第1制御手段は、前記第1のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第2のスイッチをオフ状態にさせる手段(12)と、前記第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するローサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するローサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段(12)とを含む、請求項1に記載のモータ制御装置である。
【0013】
第1制御手段によって前記のような制御が行なわれると、電源から第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET1)、第2の給電回路(図2の例では21,22)、第1の直流モータ(8)および第2相に対応するローサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET4)を介して接地へと電流が流れるとともに、電源から第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET1)、第3のスイッチ(R3)、第2の直流モータ(9)および第3相に対応するローサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET6)を介して接地へと電流が流れる。これにより、第1の直流モータ側から第2のスイッチを介して第2の直流モータ側に電流が流れるように第1および第2の直流モータを直列運転することが可能な動作モードにおいて、第1および第2の直流モータを並列運転させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが逆転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第2制御手段(12)を含み、前記第2制御手段は、前記第1のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第2のスイッチをオフ状態にさせる手段(12)と、前記第1相に対応するローサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段(12)とを含む、請求項1または2に記載のモータ制御装置である。
【0015】
第2制御手段によって前記のような制御が行なわれると、電源から第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET3)、第2の給電回路(図2の例では21,22)、第1の直流モータ(8)および第1相に対応するローサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET2)を介して接地へと電流が流れるとともに、電源から第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET5)、第2の直流モータ(9)、第3のスイッチ(R3)および第1相に対応するローサイドのスイッチング素子(図2の例ではFET2)を介して接地へと電流が流れる。これにより、第2の直流モータ側から第2のスイッチを介して第1の直流モータ側に電流が流れるように第1および第2の直流モータを直列運転することが可能な動作モードにおいて、第1および第2の直流モータを並列運転させることができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、三相モータ(6)と、前記三相モータの第1相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET1,FET2)と、前記三相モータの第2相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET3,FET4)と、前記三相モータの第3相に対応したハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子(FET5,FET6)とを有し、前記第1相、第2相および前記第3相にそれぞれ対応する第1相配線(15)、第2相配線(16)および第3相配線(17)からなる第1の給電回路を介して前記三相モータに接続された三相ブリッジインバータ回路(11)と、前記第1の給電経路を開閉するための経路開閉手段(18A,18B)と、前記第1相配線と前記第2相配線との間に第2の給電回路(31,32)を介して接続された第1の直流モータ(8)と、前記第2相配線と前記第3相配線との間に第3の給電回路(33,34)を介して接続された第2の直流モータ(9)と、前記第2の給電回路のうち、前記第2相配線と前記第2の直流モータとを接続する部分を開閉する第1のスイッチ(R1)と、前記第3の給電回路を開閉する第2のスイッチ(R2)と、前記第1の直流モータと前記第1のスイッチとの接続点を、第3のスイッチ(R3)を介して前記第3相配線に接続するための切替回路(35)とを含む、モータ制御装置である。
【0017】
経路開閉手段によって第1の給電経路を閉鎖し、第1〜第3のスイッチをオフにすると、三相モータが三相ブリッジインバータ回路に接続されるので、三相モータを駆動させることが可能となる。一方、経路開閉手段によって第1の給電経路を開放し、第1〜第3のスイッチを制御するとともに、三相ブリッジインバータ回路内のスイッチング素子を制御することにより、第1の直流モータおよび第2の直流モータのいずれか一方または両方を駆動させることが可能となる。つまり、1つの三相ブリッジインバータ回路によって、三相モータと2つの直流モータとを駆動することが可能となる。これにより、三相モータと第1の直流モータと第2の直流モータとを駆動するために必要なFET等のスイッチング素子の数を低減させることができる。
【0018】
ところで、第1のスイッチおよび第2のスイッチをオンとし、三相ブリッジインバータ回路内の所定の2つのスイッチング素子をオンにすることにより、第1の直流モータと第2の直流モータとを直列運転することが可能である。このような動作モードを直列運転可能な動作モードと言うことにする。しかしながら、直列運転可能な動作モードにおいて、第1の直流モータと第2の直流モータとを直列運転すると、各直流モータに印加される電圧が低下するため、各直流モータのトルクが低下する。
【0019】
この発明では、第1の直流モータと第1のスイッチとの接続点を、第3のスイッチを介して第3相配線に接続するための切替回路を含んでいるので、直列運転可能な動作モードにおいて、第1の直流モータと第2の直流モータとを並列運転することが可能となる。これにより、直列運転可能な動作モードにおいて、各直流モータのトルクが低下するのを防止できる。
【0020】
請求項5記載の発明は、前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが正転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第1制御手段(12)を含み、前記第1制御手段は、前記第2のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第1のスイッチをオフ状態にさせる手段(12)と、前記第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するローサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段(12)とを含む、請求項4に記載のモータ制御装置である。
【0021】
第1制御手段によって前記のような制御が行なわれると、電源から第1相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET1)、第1の直流モータ(8)、第3のスイッチ(R3)および第3相に対応するローサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET6)を介して接地へと電流が流れるとともに、電源から第2相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET3)、第3の給電回路(図13の例では33,34)、第2の直流モータ(9)および第3相に対応するローサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET6)を介して接地へと電流が流れる。これにより、第1の直流モータ側から第1のスイッチを介して第2の直流モータ側に電流が流れるように第1および第2の直流モータを直列運転することが可能な動作モードにおいて、第1および第2の直流モータを並列運転させることができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記第1の直流モータの正極側端子が第2の給電回路を介して前記第1相配線に接続され、前記第1の直流モータの負極側端子が第2の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの正極側端子が第3の給電回路を介して前記第2相配線に接続され、前記第2の直流モータの負極側端子が第3の給電回路を介して前記第3相配線に接続され、前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータが逆転方向に回転する動作モードにおいて、前記第1および第2の直流モータを並列運転させるための第2制御手段(12)を含み、前記第2制御手段は、前記第2のスイッチおよび前記第3のスイッチをオン状態にさせるとともに前記第1のスイッチをオフ状態にさせる手段(12)と、前記第1相に対応するローサイドのスイッチング素子、前記第2相に対応するローサイドのスイッチング素子および前記第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子をオン状態にさせる手段(12)とを含む、請求項4または5に記載のモータ制御装置である。
【0023】
第1制御手段によって前記のような制御が行なわれると、電源から第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET5)、第3のスイッチ(R3)、第1の直流モータ(8)および第1相に対応するローサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET2)を介して接地へと電流が流れるとともに、電源から第3相に対応するハイサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET5)、第3の給電回路(図13の例では33,34)、第2の直流モータ(9)および第2相に対応するローサイドのスイッチング素子(図13の例ではFET4)を介して接地へと電流が流れる。これにより、第2の直流モータ側から第1のスイッチを介して第1の直流モータ側に電流が流れるように第1および第2の直流モータを直列運転することが可能な動作モードにおいて、第1および第2の直流モータを並列運転させることができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモータ制御装置(10)を含み、前記三相モータが電動パワーステアリング用の三相ブラシレスモータであり、前記第1の直流モータおよび前記第2の直流モータのうちのいずれか一方が操舵部材の所定の第1方向位置を調整するためのテレスコピック調整用モータであり、他方が前記操舵部材の所定の第2方向位置を調整するためのチルト調整用モータである、車両用操舵装置である。
【0025】
この発明では、電動パワーステアリング用の三相ブラシレスモータ、テレスコピック調整用モータおよびチルト調整用モータを有する車両用操舵装置において、請求項1〜6記載の発明と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を含む車両用操舵装置の概略的な構成を示す模式図である。
図2】ECUの電気的構成を示す概略図である。
図3】第1モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図4】第2モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図5】第3モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図6】第4モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図7】第5モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図8】第6モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図9】第7モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図10】第8モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図11】制御部の全体的な処理の手順を示すフローチャートである。
図12】第1の実施形態の変形例を示す概略図である。
図13】この発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置であるECUの電気的構成を示す概略図である。
図14】第1モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図15】第2モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図16】第3モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図17】第4モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図18】第5モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図19】第6モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図20】第7モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図21】第8モードにおけるECUの動作を説明するための電気回路図である。
図22】第2の実施形態の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明を車両用操舵装置に適用した場合の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を含む車両用操舵装置の概略的な構成を示す模式図である。
車両用操舵装置は、ステアリングホイール(操作部材)1と、ステアリングコラム2と、電動パワーステアリング装置3と、電動テレスコピック調整装置(図示略)と、電動チルト調整装置(図示略)と、モータ制御装置としての電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)10とを備えている。
【0028】
ステアリングコラム2は、ステアリングホイール1を回転自在に支持するものである。ステアリングホイール1は、ステアリングコラム2に回転自在に支持されたステアリングシャフト4と、中間軸5とを介して図示しない転舵機構に連結されている。
電動パワーステアリング装置3は、運転者の操舵を補助するための装置である。電動テレスコピック調整装置は、ステアリングホイール1の前後位置(コラム軸方向位置)を調整するための装置である。電動チルト調整装置は、ステアリングホイール1の上下位置(コラム軸方向に対する傾動位置)を調整するための装置である。ECU10は、電動パワーステアリング装置3と、電動テレスコピック調整装置と、電動チルト調整装置とを制御するための装置である。電動テレスコピック調整装置と電動チルト調整装置とを総称して位置調整装置という場合がある。
【0029】
電動パワーステアリング装置3は、操舵補助力(アシスト力)を発生するEPS用モータ6と、EPS用モータ6の出力トルクを転舵機構に伝達するための減速機構7とを含む。EPS用モータ6は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。
電動テレスコピック調整装置は、ステアリングホイール1をコラム軸方向に移動させるための機構と、この機構を駆動するためのテレスコピック調整用モータ(以下、「テレスコピックモータ8」という)を含んでいる。テレスコピックモータ8は、この実施形態では、ブラシ付直流モータからなる。
【0030】
電動チルト調整装置は、ステアリングホイール1をコラム軸方向に対して傾動させるための機構と、この機構を駆動するためのチルト調整用モータ(以下、「チルトモータ9」という)を含んでいる。チルトモータ9は、この実施形態では、ブラシ付直流モータからなる。
EPS用モータ6、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9は、ECU10によって制御される。テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを総称して、「位置調整用モータ」という場合がある。
【0031】
図2は、ECU10の電気的構成を示す概略図である。
ECU10は、各モータ6,8,9の駆動電力を生成する駆動回路11と、駆動回路11を制御するための制御部12とを備えている。制御部12は、CPU(中央処理装置)とこのCPUの動作プログラム等を記憶したメモリ(ROM,RAM、書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0032】
駆動回路11は、EPS用モータ6(三相ブラシレスモータ)を駆動するために使用される三相ブリッジインバータ回路である。この実施形態では、EPS用モータ6を駆動するための駆動回路11が、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9を駆動するための駆動回路としても使用される。
この駆動回路11では、EPS用モータ6のU相に対応した一対の電界効果トランジスタFET1,FET2の直列回路と、V相に対応した一対の電界効果トランジスタFET3,FET4の直列回路と、W相に対応した一対の電界効果トランジスタFET5,FET6の直列回路とが、直流電源14と接地との間に並列に接続されている。以下において、各相の一対のFETのうち、電源14側のものを「ハイサイドFET」といい、接地側のものを「ローサイドFET」という場合がある。
【0033】
EPS用モータ6は、第1の給電回路15,16,17を介して駆動回路11に接続されている。具体的には、EPS用モータ6のU相界磁コイル6Uは、U相に対応した一対のFET1,FET2の間の接続点にU相配線15を介して接続されている。EPS用モータ6のV相界磁コイル6Vは、V相配線16およびEPS用リレー18Aを介して、V相に対応した一対のFET3,FET4の間の接続点に接続されている。EPS用モータ6のW相界磁コイル6Wは、W相配線17およびEPS用リレー18Bを介して、W相に対応した一対のFET5,FET6の間の接続点に接続されている。
【0034】
EPSモータ6の周囲には、EPSモータ6のロータの回転位置(ロータ回転角)を検出するための回転位置センサ19が設けられている。回転位置センサ19は、後述する車内LAN30を介して制御部12に接続されている。EPS用リレー18A,18Bによって、第1の給電回路15,16,17を開閉するための経路開閉手段が構成されている。
【0035】
テレスコピックモータ8は、U相配線15とV相配線16との間に、第2の給電回路21,22を介して接続されている。具体的には、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)は、第1接続線21および第1のリレーR1を介してU相配線15に接続されている。一方、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)は、第2接続線22を介してV相配線16に接続されている。なお、第1のリレーR1を、第1接続線21側に設けるのではなく、第2接続線22側に設けるようにしてもよい。この実施形態では、テレスコピックモータ8が正転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が車両の後方に移動し、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が車両の前方に移動する。
【0036】
チルトモータ9は、V相配線16とW相配線17との間に、第3の給電回路23,24を介して接続されている。具体的には、チルトモータ9の正極側端子(+)は、第3接続線23および第2のリレーR2を介してV相配線16に接続されている。一方、チルトモータ9の負極側端子(−)は、第4接続線24を介して、W相配線17に接続されている。チルトモータ9の正極側端子(+)と第2リレーR2との接続点は、第3のリレーR3を有する第5接続線(切替回路)25を介して、U相配線15に接続されている。この実施形態では、チルトモータ9が正転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が上方に移動し、チルトモータ9が逆転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が下方に移動する。第1、第2および第3のリレーR1,R2,R3を総称して、「位置調整用リレー」という場合がある。
【0037】
ローサイドFET2,FET4およびFET6と接地とを接続するための各接続線には、EPS用モータ6のV相、W相およびU相の相電流I,I,Iを検出するための電流センサ27V,27W,27Uがそれぞれ設けられている。これらの電流センサ27V,27W,27Uは、テレスコピックモータ8、チルトモータ9等に流れる電流を検出するために用いることが可能である。これらの電流センサ27V,27W,27Uは、制御部12に接続されている。
【0038】
制御部12には、車内LAN(CAN:Controller Area Network)30が接続されている。車内LAN30には、前述した回転位置センサ19、車速センサ31、操舵トルクセンサ32等のセンサ類、位置調整用操作部33等が接続されている。車速センサ31は、車両の速度を検出するものである。操舵トルクセンサ32は、ステアリングホイール1に与えられた操舵トルクを検出するものである。
【0039】
位置調整用操作部33は、たとえば、車両内の運転席の横に配置され、車両の側面に平行な操作面を有している。この操作面には、仮想の正方形の各コーナと各辺の中央とにそれぞれ配置された8つの位置調整キー34を備えている。8つの位置調整キー34のうち、前記仮想の正方形の各辺の中央に配置されたキーが、チルト調整またはテレスコピック調整を単独で行うための単独調整キー34,34,34,34である。
【0040】
単独調整キー34,34,34,34のうち、前記仮想正方形の上下の各辺の中央に配置された上下一対のキーがチルト調整を単独で行うためのチルト調整キー34,34である。上側のチルト調整キー34は、ステアリングホイール1の位置を上方向に移動させるためのキーであり、下側のチルト調整キー34は、ステアリングホイール1の位置を下方向に移動させるためのキーである。
【0041】
単独調整キー34,34,34,34のうち、前記仮想の正方形の前側および後側の各辺の中央に配置された前後一対のキーがテレスコピック調整を単独で行うためのテレスコピック調整キー34,34である。前側のテレスコピック調整キー34は、ステアリングホイール1の位置を前方向に移動させるためのキーであり、後側のテレスコピック調整キー34は、ステアリングホイール1の位置を後方向に移動させるためのキーである。なお、この実施形態では、テレスコピック調整キー34,34のいずれか一方と、チルト調整キー34,34のいずれか一方とが同時に押下されている場合には、押下されている2つのキーのうち一方のキー入力のみが有効なものとして受け付けられるものとする。
【0042】
前記仮想の正方形の各コーナに配置されたキーが、チルト調整とテレスコピック調整とを同時に行うための同時調整キー34FU,34FD,34RU,34RDである。各同時調整キー34FU,34FD,34RU,34RDは、それが配置されたコーナ位置に対応した方向にステアリングホイール1の位置を移動させるためのキーである。
制御部12は、電流センサ27U,27V,27W、回転位置センサ19、車速センサ31、操舵トルクセンサ32、位置調整用操作部33等からの入力信号に基づいて、リレー18A,18B,R1〜R3および駆動回路11内のFET1〜FET6を制御する。
【0043】
制御部12は、常時は、EPS用リレー18A,18Bをオン状態とし、操舵トルクセンサ32によって検出される操舵トルク、車速センサ31によって検出される車速、電流センサ27U,27V,27Wによって検出される相電流および回転位置センサ19によって検出されるEPS用モータ6の回転位置(ロータ回転角)に基づいて、EPS用モータ6を制御する。具体的には、制御部12は、操舵トルクと車速とに基づいて目標電流値を決定し、実際のモータ電流が目標電流値に近づくようにFET1〜FET6を制御する。
【0044】
制御部12は、位置調整用操作部33内のキーが操作された場合において、所定の条件を満たしているときには、EPS用モータ6の制御を中断し、操作されたキーに対応したテレスコピックモータ8および/またはチルトモータ9を制御する。
位置調整用モータ(テレスコピックモータ8またはチルトモータ9)を駆動する場合の動作モードには、第1モード〜第8モードの8種類の動作モードがある。位置調整用モータ8,9が駆動される場合には、EPS用リレー18A,18Bはオフ状態にされる。
【0045】
表1は、位置調整用モータ8,9を駆動する場合の各動作モード(第1モード〜第8モード)の内容と、第1〜第3のリレーR1〜R3および6つのFET1〜FET1のオンオフ状態を示している。表1において、○はオンを、−はオフを示している。
【0046】
【表1】
各動作モードの内容は、次の通りである。
第1モード:位置調整用モータ8,9のうち、テレスコピックモータ8のみが正転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
【0047】
第2モード:位置調整用モータ8,9のうち、テレスコピックモータ8のみが逆転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
第3モード:位置調整用モータ8,9のうち、チルトモータ9のみが正転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
第4モード:位置調整用モータ8,9のうち、チルトモータ9のみが逆転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
【0048】
第5モード:テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともにチルトモータ9が正転方向に回転するモードであり、キー34RUの操作に基づいて設定されるモードである。
第6モード:テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともにチルトモータ9が逆転方向に回転するモードであり、キー34RDの操作に基づいて設定されるモードである。
【0049】
第7モード:テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともにチルトモータ9が正転方向に回転するモードであり、キー34FUの操作に基づいて設定されるモードである。
第8モード:テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともにチルトモータ9が逆転方向に回転するモードであり、キー34FDの操作に基づいて設定されるモードである。
【0050】
図3は、第1モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第1モードでは、第1のリレーR1がオンされるとともに、第1のFET1および第4のFET4がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、第1のリレーR1、テレスコピックモータ8および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)に正電圧が印加されるので、テレスコピックモータ8が正転方向に回転する。
【0051】
図4は、第2モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第2モードでは、第1のリレーR1がオンされるとともに、第2のFET2および第3のFET3がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、テレスコピックモータ8、第1のリレーR1および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)に正電圧が印加されるので、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転する。
【0052】
図5は、第3モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第3モードでは、第2のリレーR2がオンされるとともに、第3のFET3および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、第2のリレーR2、チルトモータ9および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、チルトモータ9の正極側端子(+)に正電圧が印加されるので、チルトモータ9が正転方向に回転する。
【0053】
図6は、第4モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第4モードでは、第2のリレーR2がオンされるとともに、第4のFET4および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第5のFET5、チルトモータ9、第2のリレーR2および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、チルトモータ9の負極側端子(−)に正電圧が印加されるので、チルトモータ9が逆転方向に回転する。
【0054】
図7は、第6モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第6モードでは、第1のリレーR1および第2のリレーR2がオンされるとともに、第1のFET1、第4のFET4および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、第1のリレーR1、テレスコピックモータ8および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第5のFET5、チルトモータ9、第2のリレーR2および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともに、チルトモータ9が逆転方向に回転する。この場合には、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
【0055】
図8は、第7モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第7モードでは、第1のリレーR1および第2のリレーR2がオンされるとともに、第2のFET2、第3のFET3および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、テレスコピックモータ8、第1のリレーR1および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第3のFET3、第2のリレーR2、チルトモータ9および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともに、チルトモータ9が正転方向に回転する。この場合には、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
【0056】
次に、第5モードにおけるECU10の動作を説明する。第5モードは、この実施形態では、テレスコピックモータ8が正転方向に回転され、チルトモータ9が正転方向に回転される動作モードである。
このように両モータ8,9を回転させるには、第1のリレーR1および第2のリレーR2をオンにするとともに、第1のFET1および第6のFET6をオンすることによって、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが考えられる。この場合、テレスコピックモータ8側から第2のリレーR2を介してチルトモータ9側に電流が流れるように、両モータ8,9が直列運転される。しかしながら、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転すると、各モータ8,9に印加される電圧が低下するため、各モータ8,9のトルクが低下する。
【0057】
そこで、この実施形態では、第5モードにおいて、各モータ8,9のトルクが低下しないように、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
図9は、第5モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第5モードでは、第1のリレーR1および第3のリレーR3がオンとされ、第2のリレーR2がオフとされる。また、第1のFET1、第4のFET4および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、第1のリレーR1、テレスコピックモータ8および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第1のFET1、第3のリレーR3、チルトモータ9および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともに、チルトモータ9が正転方向に回転する。つまり、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。これにより、第5モードにおいて、両モータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0058】
次に、第8モードにおけるECU10の動作を説明する。第8モードは、この実施形態では、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転され、チルトモータ9が逆転方向に回転される動作モードである。
このように両モータ8,9を回転させるには、第1のリレーR1および第2のリレーR2をオンにするとともに、第5のFET5および第2のFET2をオンすることによって、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが考えられる。この場合、チルトモータ9側から第2のリレーR2を介してテレスコピックモータ8側に電流が流れるように、両モータ8,9が直列運転される。しかしながら、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転すると、各モータ8,9に印加される電圧が低下するため、各モータ8,9のトルクが低下する。
【0059】
そこで、この実施形態では、第8モードにおいて、各モータ8,9のトルクが低下しないように、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
図10は、第8モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第8モードでは、第1のリレーR1および第3のリレーR3がオンとされ、第2のリレーR2がオフとされる。また、第2のFET2、第3のFET3および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、テレスコピックモータ8、第1のリレーR1および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第5のFET5、チルトモータ9、第3のリレーR3および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともに、チルトモータ9が逆転方向に回転する。つまり、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。これにより、第8モードにおいて、両モータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0060】
図11は、制御部12による全体的な処理の手順を示すフローチャートである。
イグニッションキーがオンされると、制御部12は、入出力ポート(I/Oポート)を初期化する(ステップS1)。そして、制御部12は、位置調整装置の初期設定を行う(ステップS2)。具体的には、制御部12は、ステアリングホイール1の位置が所定の初期位置となるように、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9を制御する。
【0061】
次に、制御部12は、入力ポートの読み込みを行う(ステップS3)。そして、制御部12は、位置調整操作が行なわれているか否かを判別する(ステップS4)。具体的には、制御部12は、8つの位置調整キー34のオンオフ状態を調べ、これらの全てのキー34がオフであれば、位置調整操作が行なわれていないと判別する。一方、これらのキー34のうちの1つでもオンである場合には、制御部12は、位置調整操作が行なわれていると判別する。
【0062】
位置調整操作が行なわれていないと判別された場合には(ステップS4:NO)、EPS用リレー18A,18Bがオフであればそれらをオンさせた後(ステップS5)、EPS制御を一定時間行なう(ステップS6)。具体的には、制御部12は、操舵トルクと車速とに基づいて目標電流値を決定し、実際のモータ電流が目標電流値に近づくようにFET1〜FET6を制御する。この後、制御部12は、イグニッションキーのオフ操作が行なわれたか否かを判別する(ステップS7)。イグニッションキーのオフ操作が行なわれていなければ(ステップS7:NO)、ステップS3に戻る。
【0063】
前記ステップS4において、位置調整操作が行なわれていると判別された場合には(ステップS4:YES)、制御部12は、EPS用モータ6のモータ電流(EPS電流)の絶対値が所定のしきい値A(A>0)未満であるか否かを判別する(ステップS8)。具体的には、制御部12は、電流センサ27U,27V,27Wによって検出される各相の相電流I,I,Iの絶対値が所定のしきい値A未満であるか否か(全ての相電流の絶対値がしきい値A未満であるか否か)を判別する。このしきい値Aは、零に近い所定の値に設定される。
【0064】
EPS電流の絶対値が所定のしきい値A以上である場合には(ステップS8:NO)、制御部12は、操舵角が中立位置付近の不感帯ではないと判断し、ステップS7に移行する。つまり、操舵角が中立位置付近の不感帯でない場合には、運転者によって位置調整装置が行われたとしても、位置調整は行われない。
前記ステップS8において、モータ電流の絶対値が所定のしきい値A未満であると判別された場合には(ステップS8:YES)、制御部12は、操舵角が中立位置付近の不感帯であると判断し、EPS用リレー18A,18Bをオフする(ステップS9)。この後、制御部12は、位置調整モータ8,9の制御処理(位置調整制御処理)を行なう(ステップS10)。具体的には、制御部12は、8つの位置調整キー34のうち、操作されている位置調整キーに対応した動作モード(第1モード〜第8モード)で、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9の一方または両方を駆動する。なお、位置調整制御処理の終了時には、第1〜第6のFET1〜FET6および第1〜第3のリレーR1〜R3は、オフ状態とされる。
【0065】
位置調整制御処理が終了すると、ステップS7に移行する。ステップS7において、イグニッションキーのオフ操作が行なわれたと判別された場合には(ステップS7:YES)、制御部12は、EPS用リレー18A,18Bをオフする(ステップS11)。この後、制御部12は、位置調整装置の終了設定を行う(ステップS12)。具体的には、制御部12は、ステアリングホイール1の位置が所定の終了位置となるように、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9を制御する。そして、処理を終了する。
【0066】
前記第1の実施形態によれば、EPS用モータ6を駆動するための駆動回路(三相ブリッジインバータ回路)11によって、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を駆動することができる。このため、EPS用モータ6と、位置調整用モータ8,9とを駆動するために必要なFET等のスイッチング素子の数を低減させることができる。
また、前述したように、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を直列運転可能な動作モードである第5モードまたは第8モードにおいては、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を並列運転させることができる。このため、第5モードまたは第8モードにおいて、これらのモータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0067】
以上、この発明の第1の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、図2の回路図において、テレスコピックモータ8とチルトモータ8の位置を入れ替えてもよい。
また、前記第1の実施形態では、チルトモータ9の正極側端子(+)と第2のリレーR2との接続点は、第3のリレーR3を有する第5接続線(切替回路)25を介して、U相配線15に接続されている。しかし、これに代えて、図12に示すように、チルトモータ9の正極側端子(+)と第2リレーR2との接続点を、第3のリレーR3を有する第6接続線(切替回路)26を介して、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)と第1のリレーR1との接続点に接続するようにしてもよい。この場合には、チルトモータ9の正極側端子(+)と第2リレーR2との接続点は、第3のリレーR3および第1のリレーR1を介してU相配線15に接続されることになる。この場合にも、第1モード〜第8モードにおけるリレーR1,R2,R3およびFETの制御内容は、前述した制御内容と同じとなる。
【0068】
また、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)と負極側端子(−)とが反対となるように、テレスコピックモータ8の接続方向を反対にしてもよい。同様に、チルトモータ9の正極側端子(+)と負極側端子(−)とが反対となるように、チルトモータ9の接続方向を反対にしてもよい。いずれの場合にも、第1のリレーR1と第2のリレーR2とをオンとした場合に、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが可能な動作モードにおいては、前記第5モードまたは前記第8モードと同様な制御を行うことにより、これらのモータ8,9を並列運転させることが可能である。
【0069】
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と比べて、第1、第2および第3のリレーR1、R2,R3の接続位置が異なっている。なお、第2の実施形態においても、制御部12による全体的な処理の手順は、図11を用いて説明した処理手順と同じである。
図13は、この発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置であるECU10の電気的構成を示す概略図である。図13において、図2に対応する部分には、図2と同一参照符号を付してある。
【0070】
テレスコピックモータ8は、U相配線15とV相配線16との間に、第2の給電回路31,32を介して接続されている。具体的には、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)は、第1接続線31を介してU相配線15に接続されている。一方、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)は、第2接続線32および第1のリレーR1を介してV相配線16に接続されている。この実施形態では、テレスコピックモータ8が正転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が車両の後方に移動し、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が車両の前方に移動する。
【0071】
チルトモータ9は、V相配線16とW相配線17との間に、第3の給電回路33,34を介して接続されている。具体的には、チルトモータ9の正極側端子(+)は、第3接続線33を介してV相配線16に接続されている。一方、チルトモータ9の負極側端子(−)は、第4接続線34および第2のリレーR2を介して、W相配線17に接続されている。なお、第2のリレーR1を、第4接続線34側に設けるのではなく、第3接続線33側に設けるようにしてもよい。この実施形態では、チルトモータ9が正転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が上方に移動し、チルトモータ9が逆転方向に回転されるとステアリングホイール1の位置が下方に移動する。
【0072】
テレスコピックモータ8の負極側端子(−)と第1のリレーR2との接続点は、第3のリレーR3を有する第5接続線(切替回路)35を介して、W相配線17に接続されている。第1、第2および第3のリレーR1,R2,R3を総称して、「位置調整用リレー」という場合がある。
制御部12は、電流センサ27U,27V,27W、回転位置センサ19、車速センサ31、操舵トルクセンサ32、位置調整用操作部33等からの入力信号に基づいて、リレー18A,18B,R1〜R3および駆動回路11内のFET1〜FET6を制御する。
【0073】
制御部12は、常時は、EPS用リレー18A,18Bをオン状態とし、操舵トルクセンサ32によって検出される操舵トルク、車速センサ31によって検出される車速、電流センサ27U,27V,27Wによって検出される相電流および回転位置センサ19によって検出されるEPS用モータ6の回転位置(ロータ回転角)に基づいて、EPS用モータ6を制御する。具体的には、制御部12は、操舵トルクと車速とに基づいて目標電流値を決定し、実際のモータ電流が目標電流値に近づくようにFET1〜FET6を制御する。
【0074】
制御部12は、位置調整用操作部33内のキーが操作された場合において、所定の条件を満たしているときには、EPS用モータ6の制御を中断し、操作されたキーに対応したテレスコピックモータ8および/またはチルトモータ9を制御する。
位置調整用モータ(テレスコピックモータ8またはチルトモータ9)を駆動する場合の動作モードには、第1モード〜第8モードの8種類の動作モードがある。位置調整用モータ8,9が駆動される場合には、EPS用リレー18A,18Bはオフ状態にされる。
【0075】
表2は、位置調整用モータ8,9を駆動する場合の各動作モード(第1モード〜第8モード)の内容と、第1〜第3のリレーR1〜R3および6つのFET1〜FET1のオンオフ状態を示している。表1において、○はオンを、−はオフを示している。
【0076】
【表2】
各動作モードの内容は、次の通りである。
第1モード:位置調整用モータ8,9のうち、テレスコピックモータ8のみが正転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
【0077】
第2モード:位置調整用モータ8,9のうち、テレスコピックモータ8のみが逆転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
第3モード:位置調整用モータ8,9のうち、チルトモータ9のみが正転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
第4モード:位置調整用モータ8,9のうち、チルトモータ9のみが逆転方向に回転するモードであり、キー34の操作に基づいて設定されるモードである。
【0078】
第5モード:テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともにチルトモータ9が正転方向に回転するモードであり、キー34RUの操作に基づいて設定されるモードである。
第6モード:テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともにチルトモータ9が逆転方向に回転するモードであり、キー34RDの操作に基づいて設定されるモードである。
【0079】
第7モード:テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともにチルトモータ9が正転方向に回転するモードであり、キー34FUの操作に基づいて設定されるモードである。
第8モード:テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともにチルトモータ9が逆転方向に回転するモードであり、キー34FDの操作に基づいて設定されるモードである。
【0080】
図14は、第1モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第1モードでは、第1のリレーR1がオンされるとともに、第1のFET1および第4のFET4がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、テレスコピックモータ8、第1のリレーR1および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)に正電圧が印加されるので、テレスコピックモータ8が正転方向に回転する。
【0081】
図15は、第2モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第2モードでは、第1のリレーR1がオンされるとともに、第2のFET2および第3のFET3がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、第1のリレーR1、テレスコピックモータ8および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)に正電圧が印加されるので、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転する。
【0082】
図16は、第3モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第3モードでは、第2のリレーR2がオンされるとともに、第3のFET3および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、チルトモータ9、第2のリレーR2および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、チルトモータ9の正極側端子(+)に正電圧が印加されるので、チルトモータ9が正転方向に回転する。
【0083】
図17は、第4モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第4モードでは、第2のリレーR2がオンされるとともに、第4のFET4および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第5のFET5、第2のリレーR2、チルトモータ9および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、チルトモータ9の負極側端子(−)に正電圧が印加されるので、チルトモータ9が逆転方向に回転する。
【0084】
図18は、第6モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第6モードでは、第1のリレーR1および第2のリレーR2がオンされるとともに、第1のFET1、第4のFET4および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、テレスコピックモータ8、第1のリレーR1および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第5のFET5、第2のリレーR2、チルトモータ9および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともに、チルトモータ9が逆転方向に回転する。この場合には、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
【0085】
図19は、第7モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第7モードでは、第1のリレーR1および第2のリレーR2がオンされるとともに、第2のFET2、第3のFET3および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第3のFET3、第1のリレーR1、テレスコピックモータ8および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第3のFET3、チルトモータ9、第2のリレーR2および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともに、チルトモータ9が正転方向に回転する。この場合には、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
【0086】
次に、第5モードにおけるECU10の動作を説明する。第5モードは、この実施形態では、テレスコピックモータ8が正転方向に回転され、チルトモータ9が正転方向に回転される動作モードである。
このように両モータ8,9を回転させるには、第1のリレーR1および第2のリレーR2をオンにするとともに、第1のFET1および第6のFET6をオンすることによって、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが考えられる。この場合、テレスコピックモータ8側から第1のリレーR1を介してチルトモータ9側に電流が流れるように、両モータ8,9が直列運転される。しかしながら、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転すると、各モータ8,9に印加される電圧が低下するため、各モータ8,9のトルクが低下する。
【0087】
そこで、この実施形態では、第5モードにおいて、各モータ8,9のトルクが低下しないように、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
図20は、第5モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第5モードでは、第2のリレーR2および第3のリレーR3がオンとされ、第1のリレーR1がオフとされる。また、第1のFET1、第3のFET3および第6のFET6がオンとされる。したがって、電源14から、第1のFET1、テレスコピックモータ8、第3のリレーR3および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第3のFET3、チルトモータ9、第2のリレーR2および第6のFET6を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が正転方向に回転するとともに、チルトモータ9が正転方向に回転する。つまり、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。これにより、第5モードにおいて、両モータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0088】
次に、第8モードにおけるECU10の動作を説明する。第8モードは、この実施形態では、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転され、チルトモータ9が逆転方向に回転される動作モードである。
このように両モータ8,9を回転させるには、第1のリレーR1および第2のリレーR2をオンにするとともに、第5のFET5および第2のFET2をオンすることによって、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが考えられる。この場合、チルトモータ9側から第1のリレーR1を介してテレスコピックモータ8側に電流が流れるように、両モータ8,9が直列運転される。しかしながら、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転すると、各モータ8,9に印加される電圧が低下するため、各モータ8,9のトルクが低下する。
【0089】
そこで、この実施形態では、第8モードにおいて、各モータ8,9のトルクが低下しないように、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。
図21は、第8モードにおけるECU10の動作を説明するための電気回路図である。
第8モードでは、第2のリレーR2および第3のリレーR3がオンとされ、第1のリレーR1がオフとされる。また、第2のFET2、第4のFET4および第5のFET5がオンとされる。したがって、電源14から、第5のFET5、第3のリレーR3、テレスコピックモータ8および第2のFET2を通って、接地へと電流が流れるとともに、電源14から、第5のFET5、第2のリレーR2、チルトモータ9および第4のFET4を通って、接地へと電流が流れる。これにより、テレスコピックモータ8が逆転方向に回転するとともに、チルトモータ9が逆転方向に回転する。つまり、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とが並列運転される。これにより、第8モードにおいて、両モータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0090】
前記第2の実施形態によれば、EPS用モータ6を駆動するための駆動回路(三相ブリッジインバータ回路)11によって、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を駆動することができる。このため、EPS用モータ6と、位置調整用モータ8,9とを駆動するために必要なFET等のスイッチング素子の数を低減させることができる。
また、前述したように、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を直列運転可能な動作モードである第5モードまたは第8モードにおいては、チルトモータ9およびテレスコピックモータ8を並列運転させることができる。このため、第5モードまたは第8モードにおいて、これらのモータ8,9のトルクが低下するのを防止できる。
【0091】
以上、この発明の第2の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、図13の回路図において、テレスコピックモータ8とチルトモータ8の位置を入れ替えてもよい。
また、前記第2の実施形態では、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)と第1のリレーR1との接続点は、第3のリレーR3を有する第5接続線(切替回路)35を介して、W相配線17に接続されている。しかし、これに代えて、図22に示すように、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)と第1のリレーR1との接続点を、第3のリレーR3を有する第6接続線(切替回路)36を介して、チルトモータ9の負極側端子(−)と第2のリレーR2との接続点に接続するようにしてもよい。この場合には、テレスコピックモータ8の負極側端子(−)と第1のリレーR1との接続点は、第3のリレーR3および第2のリレーR2を介してW相配線17に接続されることになる。この場合にも、第1モード〜第8モードにおけるリレーR1,R2,R3およびFETの制御内容は、前述した制御内容と同じとなる。
【0092】
また、テレスコピックモータ8の正極側端子(+)と負極側端子(−)とが反対となるように、テレスコピックモータ8の接続方向を反対にしてもよい。同様に、チルトモータ9の正極側端子(+)と負極側端子(−)とが反対となるように、チルトモータ9の接続方向を反対にしてもよい。いずれの場合にも、第1のリレーR1と第2のリレーR2とをオンとした場合に、テレスコピックモータ8とチルトモータ9とを直列運転することが可能な動作モードにおいては、前記第5モードまたは前記第8モードと同様な制御を行うことにより、これらのモータ8,9を並列運転させることが可能である。
【0093】
また、前記第1および第2の実施形態では、テレスコピック調整キー34,34のいずれか一方と、チルト調整キー34,34のいずれか一方とが同時に押下されている場合には、押下されている2つのキーのうち一方のキー入力のみが有効なものとして受け付けられているが、両方のキー入力をともに有効なものとして受け付けてもよい。この場合には、前記2つのキー入力に応じて、テレスコピックモータ8およびチルトモータ9の両方が駆動されることになる。
【0094】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0095】
6…EPS用モータ、8…テレスコピックモータ、9…チルトモータ、10…ECU、11…駆動回路、12…制御部、15…U相配線、16…V相配線、17…W相配線、18A,18B…EPS用リレー、21,31…第1接続線、22,32…第2接続線、23,33…第3接続線、24,34…第4接続線、25,35…第5接続線(切替回路)、26,36…第6接続線(切替回路)、27U,27V,27W…電流センサ、34,34,34,34…単独調整キー、34RU,34RD,34FU,34FD…同時調整キー、R1…第1のリレー、R2…第2のリレー、R3…第3のリレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22