(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パラメータ調節器(244)は、パルス周波数が、前記電気刺激パルスが送出される周波数であるように調節するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細説明において、その一部を形成する添付の図面を参照し、そこには、本発明を実施することができる例示的な特定的な実施形態を示している。それらの実施形態は、十分詳細に説明され、当業者が本発明を実施することを可能にし、実施形態を組み合わせることができること、又は他の実施形態を利用することができること、及び構造的、論理的、及び電気的変更を本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることは理解されるものとする。以下の詳細説明は、実施例を提供し、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって定められる。
【0013】
本発明の開示における「実施形態」、「一実施形態」、又は「様々な実施形態」の参照は、必ずしも同じ実施形態に対してではなく、このような参照は、1つよりも多くの実施形態を考えている点に注意すべきである。
【0014】
本文献は、刺激誘発副作用を最小にしながら迷走神経を刺激して1つ又はそれよりも多くのターゲット機能を調節する方法及びシステムを説明する。迷走神経刺激(VNS)は、抑鬱症及びてんかんを含む神経疾患の治療に対して使用されている。VNSはまた、アルツハイマー病、不安神経症、心不全、及び肥満のような様々な疾患の治療に対して調査されている。
【0015】
迷走神経は、骨髄から出ており、複合機能神経支配パターンを通して人体における複数の臓器をターゲットにする。迷走神経幹内には、食道、胃腸管、腎臓及び膵臓(迷走神経の腹部枝)のような内臓器官、心臓及び肺(迷走神経の胸部枝)のような胸部器官、並びに頸の随意筋及び上気道(反回神経RLN)の複数のセグメントに出入りする神経活動を伝達する遠心性及び求心性神経繊維の両方が存在する。このような複雑性は、この治療から利益を得ることができるVNSの有効性及び患者集団全体を有意に制限している。
【0016】
VNSの治療応用における難しさは、迷走神経幹内の繊維の総数及び異なる直径を有する神経繊維の分布によって更に複雑になっている。人の迷走神経に対する動物モデルとして使用されている成犬において、頸迷走神経幹は、約20,000の有髄神経及び更に多数の無髄神経を含む。人及び犬の迷走神経の両方はまた、神経繊維の直径によって定められる共通の分類体系を共有する。これは、表1に要約するようなA(有髄)、B(有髄の副交感神経)、及びC(無髄)型繊維の古典的な名称に基づいている。
【0018】
現在、VNS治療のための電極埋め込みの典型的な部位は、患者の甲状軟骨と胸骨の間の頸部脊椎レベルにある。この位置において、迷走神経は、表1に要約したように豊富な神経繊維を含む。その結果、VNS治療に使用する刺激パラメータは、大部分は、電気パルスの様々な時間的特性(例えば、振幅、周波数、負荷サイクル)を調節することによって判断される。動物モデル及び人の患者にVNSを適用する様々な研究は、抗てんかん薬のための推奨される臨床パラメータ及びVNSの他の適用確立をもたらしている。しかし、嗄声、咳、及び疼痛のような刺激誘発副作用は、VNS治療を適用するのに依然として問題である。VNSのそれらの好ましくない影響は、(1)電気刺激中の有髄神経繊維の動員順序の反転(すなわち、より大きな直径の繊維に対する活性閾値を下げる)から生じ、(2)迷走神経内のより大きな直径の繊維の大部分は、RLNを通じて喉頭及び上気道を神経支配する。例えば、双極螺旋状神経カフ電極による迷走神経への電気刺激の送出は、神経幹内の全ての神経繊維の非選択的活性化もたらし、従って、意図しない喉頭活動を含む副作用の意図しない発生に対して殆ど制御できないことは公知である。
【0019】
本発明の方法及びシステムは、迷走神経枝の空間選択的活性化をもたらし、VNSの全体の治療効果を最大にする。本文献では、「迷走神経枝の空間選択的活性化」は、非選択迷走神経枝の活性化のような好ましくない副作用を引き起こすことなく、1つ又はそれよりも多くの選択迷走神経枝の活性化を可能にするように識別された迷走神経の特定のセグメント又は枝のような空間に電気刺激を送出することによる1つ又はそれよりも多くの選択された(又は指定された)迷走神経枝の活性化を意味する。電極配置及び/又は選択を使用して迷走神経の選択された枝又は束をターゲットとすることにより、電気刺激は、刺激誘発副作用に関連付けられた1つ又はそれよりも多くの非ターゲット神経路の活性化を最小にしながら1つ又はそれよりも多くのターゲット神経路を活性化するように送出される。一実施形態では、VNSは、この電極を通る電気刺激の送出が、好ましくない喉頭部の活動を誘発することなく心臓血管機能の望ましい調節をもたらすように、tVN上への電極の配置を可能にするようにRLNから離れた位置の胸部迷走神経(tVN)に送出されるが、RLNからは隔離される。RLNからtVNの一部分の外科的分離は、このような電極配置に対して十分な空間を生成することが必要な場合がある。別の実施形態では、頸迷走神経幹の神経束の組織分布的構成は、単一の多接触神経電極を使用してターゲット選択を可能にする。神経電極における接点は、VNSを送出するように選択され、迷走神経の1つ又はそれよりも多くの非ターゲット繊維の活性化によって引き起こされる好ましくない副作用を誘発することなく心臓血管機能の望ましい調節をもたらす。遠心性喉頭筋収縮は、本方法及びシステムを使用して回避すべき好ましくない副作用の特定の例として説明されるが、本主題は、迷走神経枝の空間選択的活性化によって好ましくない副作用制御に適用される。本方法及びシステムを使用して回避すべきこのような好ましくない副作用別の例は、(1)求心性RLN繊維の直接活性化、及び/又は(2)遠心性喉頭筋収縮によって発生する求心性RLN活動の間接的活性化によって誘発される気道反射を含む。
【0020】
図1は、VNSシステム100の実施形態及びシステム100を使用する環境の各部分を例示する図である。
図1は、頸迷走神経幹102、tVN104、及びRLN106を含むセグメント又は枝を有する迷走神経101の一部分を示している。図示の実施形態では、tVN104とRLN106の間の物理的分離は、それらが頸迷走神経幹102から分岐した後にtVN上に刺激電極136の配置を可能にする。電極136は、tVN104へのVNSの送出を可能にし、tVN104は、心臓105を含む胸部器官及びRLNを活性化しない迷走神経の更に別の枝を通る腹部器官を神経支配し、RLNは、喉頭筋(喉頭筋107で
図1では表される)を神経支配する。tVN104とRLN106の間の物理的分離は、手術によって生成するか又は部分的に生成され、それらの神経枝内の神経伝導に影響を与えることなく電極136の適切な配置を可能にすることができる。一実施形態では、tVN104及びRLN106は、略鎖骨下動脈のレベルでtVN104及びRLN106の繊維が分岐する位置へのそれらの2つの枝を含む迷走神経幹の部分を切開することによって縦方向に分離される。一実施形態では、電極136は、tVN104及びRLN106が分岐する位置から約1センチメートル内のtVN104上に置かれる。
【0021】
図1に示すようにtVN104及びRLN106を伴う用途は、本文献では特定的な例として説明されるが、本方法は、神経刺激のターゲットである迷走神経又は他の神経の他の枝に適用することができる。様々な実施形態では、第1の枝及び第2の枝を含む迷走神経幹のような神経幹の一部分を切開し、第1及び第2の枝に分離する。第1の枝は、患者の1つ又はそれよりも多くの生理的機能を制御する。第2の枝は、患者の1つ又はそれよりも多くの他の生理的機能を制御する。第1の枝は、電気刺激が送出される刺激部位を含む。第2の枝は、電気刺激パルスによって活性化することを意図しない非ターゲット枝である。以下に限定されるものではないが、第1の枝を含む1つ又はそれよりも多くのターゲット枝は、電気刺激によって活性化することを意図している。刺激電極は、第1の枝上に置かれて電気刺激の送出を可能にし、第2の枝を活性化することなく神経幹の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝(第1の枝を含む)を活性化する。
【0022】
図示の実施形態では、システム100は、埋め込み型リード130を通して電極136に電気的に接続された埋め込み型医療デバイス110を含む。埋め込み型医療デバイス110は、埋め込み型ハウジング112及び埋め込み型ハウジング112に取り付けられたヘッダ114によって封入され、リード130に接続するために設けられた神経刺激器120を含む。神経刺激器120は、
図2を参照して下に説明する。一実施形態では、埋め込み型医療デバイス110は、神経刺激器である。他の実施形態では、神経刺激器120に加えて、埋め込み型医療デバイス110は、心臓ペースメーカー、心臓除細動器/除細動器、薬物送出システム、生物学的療法デバイス、及びいずれかの他のモニタリング又は治療デバイスのうちの1つ又はそれよりも多くを含む。図示の実施形態では、リード130は、近位端132、遠位端133、及び近位端132と遠位端133の間に結合された細長本体131を含む。近位端132は、埋め込み型医療デバイス110に接続するように構成される。遠位端133は、電極136を含み又はそうでなければこれに結合される。電極136は、双極神経カフ電極である。別の実施形態では、電極136は、単極神経カフ電極であり、埋め込み型ハウジング112の一部分のような別の電極が使用される。様々な実施形態では、電極136は、神経刺激器120から送出された電気刺激によってtVN104の活性化を可能にするあらゆる形態の電極を含む。
【0023】
図1は、tVN104上の電極136の配置が、VNSを可能にして好ましくない喉頭活動を誘発することなく心臓血管機能を調節する実施形態を示すが、本主題は、一般的に、電気刺激パルスが、複数の電極又は多接触電極により送出される部位を選択することによる迷走神経枝の選択的活性化を含む。例えば、多接触電極は、tVN104及びRLN106が分岐する位置の頭方の頸迷走神経幹102に配置することができる。刺激は、多接触電極の接点の様々な組合せにより送出され、実質的にRLN106を活性化することなく、実質的にtVN104を活性化するようにVNSを可能にした1つ又はそれよりも多くの接点が選択される。
【0024】
図2は、電極236及び神経刺激器220の実施形態を示すブロック図である。電極236は、電極136の実施形態を表している。神経刺激器220は、神経刺激器120の実施形態を表している。
【0025】
神経刺激器220は、刺激回路240及び刺激制御回路242を含む。刺激回路240は、電気刺激パルスを生成し、電気刺激パルスを電極236に送出する。刺激制御回路242は、複数の刺激パラメータを使用して電気刺激パルスの送出を制御し、パラメータ調節器244及びストレージ回路246を含む。パラメータ調節器244は、電気刺激パルスの強度が、神経の1つ又はそれよりも多くの非ターゲット枝を実質的に活性化することなく迷走神経のような神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化するために提供されるように、複数の刺激パラメータのうちの1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータの調節を可能にする。一実施形態では、複数の刺激パラメータは、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数、負荷サイクル、サイクル単位、及び刺激持続時間を含む。パルス振幅は、電圧(例えば、一定の電圧パルスに対して)又は電流(例えば、一定の電流パルスに対して)として指定された各電気刺激パルス振幅である。パルス幅は、各電気刺激パルスの持続時間である。パルス周波数は、電気刺激パルスが送出される周波数であり、また連続パルス間の時間間隔であるパルス間隔として指定することができる。負荷サイクルは、刺激間隔対サイクル単位の比率である。電気刺激パルスは、刺激間隔中だけに送出される。刺激持続時間は、神経刺激治療の施行の持続時間である。サイクル単位及び刺激持続時間は、パルスの時間又は数によって指定することができ、負荷サイクルは、各サイクル単位におけるパルスの時間又は数によって指定することができる。例えば、「10%の負荷サイクル及び1秒の単位サイクルにおける20Hzのパルス周波数で送出されたパルス」は、「20パルスの単位サイクル当たり2パルスの負荷サイクルにおける20Hzのパルス周波数で送出されたパルス」と同等である。
【0026】
ストレージ回路246は、複数の刺激パラメータに関する値を格納する。一実施形態では、ストレージ回路246は、神経の1つ又はそれよりも多くの非ターゲット枝を実質的に活性化することなく、神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化するように選択された1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータに対する値を格納する。一実施形態では、パルス振幅の値は、神経の1つ又はそれよりも多くの非ターゲット枝を実質的に活性化することなく、神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化するように選択され、ストレージ回路246に格納される。
【0027】
様々な実施形態では、本文献で説明するその様々な要素を含む神経刺激器220の回路は、ハードウエア及びソフトウエアの組合せを使用して考えられている。様々な実施形態では、刺激制御回路242は、1つ又はそれよりも多くの特定の機能を実施するように構成された用途特定の回路、又はこのような機能を実施するようにプログラムされた汎用回路を使用して考えることができる。このような汎用回路は、以下に限定されるものではないが、マイクロプロセッサ又はその一部分、マイクロコントローラ又はその一部分、プログラマブル論理回路又はその一部分を含む。
【0028】
図3は、空間選択的VNSの方法300の実施形態を示す流れ図である。一実施形態では、方法300は、本文献で説明するその実施形態を含むシステム100を使用して実施される。
【0029】
310において、電極配置に対して必要な場合に、第1の枝及び第2の枝を含む迷走神経の一部分は、それらの枝において正常な神経状態に損傷を与えることなく縦方向に切開されて分離される。320において、神経カフ電極のような電極は、第1の枝上又はそれに隣接して置かれる。
【0030】
330において、電気刺激パルスは、第1の枝上に置かれた電極を通して第1の枝に送出される。340において、電気刺激パルスの送出が制御され、実質的に第2の枝を活性化することなく、第1の枝を含む迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化する。これは、電気刺激パルスの強度を制御する1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを調節する段階を含む。一実施形態では、1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータは、1つ又はそれよりも多くのターゲット枝及び第2の枝の活性化を示す神経信号及び/又は筋電信号をモニタすることによって判断される。310における外科的分離は、電極が、第1の枝上又はそれに隣接して配置され、第2の枝を実質的に活性化することなく、第1の枝を含む迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝の実質的な活性化を可能にすることができる場合には必要ではない。本文献では、実質的に神経を活性化することは、検出可能な刺激誘発神経反応を引き起こすことを意味する。このような刺激誘発神経反応は、例えば、神経の神経連絡を感知し及び/又は神経連絡によって調節する生理的機能を示す信号を感知することによって検出することができる。
【0031】
図4は、空間選択的VNSの方法400の実施形態を示す流れ図である。方法400は、tVN104である迷走神経の第1の枝とRLN106である迷走神経の第2の迷走神経とを有する方法300の実施形態を含む。一実施形態では、方法400は、本文献で説明するその実施形態を含むシステム100を使用して実施される。
【0032】
410において、電気刺激パルスは、tVN104に送出され、tVN104は、RLN106から縦方向に分離されている。420において、電気刺激パルスの強度は、RLN106によって神経支配されている喉頭筋の収縮を引き起こすことなく、迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化するように制御される。
【0033】
一実施形態では、この強度は、刺激パルスの送出に対する神経反応を表す及び/又は示す信号を感知することによって判断される。例えば、電気刺激パルスに対する頸迷走神経幹の反応を表す刺激誘発神経電図(ENG)信号が感知され、電気刺激パルスに対するRLNの反応を示す刺激誘発筋電図(EMG)が感知される。迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝は、ENG信号の振幅が指定されたENG閾値を超える時に実質的に活性化されると考えられる。喉頭筋の収縮が起こっているとは考えられず、又はRLNは、EMG信号の振幅が指定されたEMG閾値を超えていない時に活性化されるとは考えられない。一実施形態では、電気刺激パルスの強度は、パルス振幅及び/又はパルス幅を調節し、ENG信号の振幅及びEMG信号の振幅を調節する効果を観察することによって判断される。
【0034】
図5は、方法400を試験するためのシステム500を例示する図である。迷走神経101は、迷走神経幹の複数の枝を分離して識別することができる略鎖骨下動脈のレベルまで遠位側に切開される。RLN106及び迷走神経(tVN104)の残りの部分は、隔離されて個々の神経カフ電極538(RLN106上又はそれに隣接する)及び536(tVN104上又はそれに隣接する)が装着される。三極神経カフ電極566は、頸迷走神経幹102上に埋め込まれ、逆行性ENG活動を記録し、1対の隔離ステンレス鋼線を含む電極556は、喉頭筋107(例えば、後輪状披裂筋)の中の中に挿入されて喉頭EMGを測定する。
【0035】
第1の神経刺激器520Aは、電極536に電気的に接続され、電気刺激パルスをtVN104に送出する。第2の神経刺激器520Bは、電極538に電気的に接続され、電気刺激パルスをRLN106に送出する。第1の神経刺激器520A及び第2の神経刺激器520Bの各々の例は、上述のような神経刺激器220である。試験の目的のために、第1の神経刺激器520A及び第2の神経刺激器520Bは、異なる時間に第1の神経刺激器520A及び第2の神経刺激器520Bとして使用される1つのデバイス、又は同時に又は異なる時間に使用することができる2つのデバイスを含むことができる。第1の神経刺激器520A及び第2の神経刺激器520Bは、埋め込み型又は経皮的リードを通じて対応する電極に電気的に接続された各々埋め込み型デバイス又は外部デバイスとすることができる。神経感知回路560は、電極566に電気的に接続され、tVN104に送出された電気刺激パルス及びRLN106に送出された電気刺激パルスに対する頸迷走神経幹102の反応を表す刺激誘発ENG信号を感知する。ENGパラメータ生成器562は、感知ENG信号を使用して頸迷走神経幹102の反応を示すENG信号の振幅を生成する。筋電感知回路550は、電極556に電気的に接続され、tVN104に送出された電気刺激パルス及びRLN106に送出された電気刺激パルスに対する反応を示す刺激誘発EMG信号を感知する。EMGパラメータ生成器552は、感知EMG信号を使用して喉頭筋の反応を示すEMG信号の振幅を生成する。
【0036】
図6A及び
図6Bは、方法400を試験した結果を例示する図である。迷走神経の個々の枝を選択的に活性化する実行可能性は、犬モデル及びシステム500を使用して調査された。
図6A及び
図6Bは、刺激誘発ENG及びEMG活動を記録することによって得られる動員曲線を示し、それは、遠位側に胸部内に続く迷走神経のものからの喉頭を神経支配する神経の明白な分離を明らかにしている。
図6Aは、選択的RLN刺激(電極538による)中に、低閾値のA繊維(電流は0.5mA)と喉頭EMG活動の同時活性化が、それらの大きな直径の繊維と喉頭筋の間に強い相関関係を示すことを示している。対照的に、
図6Bは、選択的tVNの刺激(単極神経カフ電極が使用された電極536を通じた)が、ENG活動(電流は2mA)を活性化するために有意に高い閾値を有し、これが、約4mAでプラトーに達することを示している。4mAを超える喉頭EMG活動の活性化は、その閾値で、tVN刺激電流が隣接するRLN枝の中に溢れ出ることを示し、従って、刺激強度を調節する必要性を示している。
【0037】
これらの結果は、迷走神経の複数の枝の解剖学的分岐が迷走神経内の神経の特定の部分集合を選択的に刺激することに鑑みて、副作用を最小にしながら望ましい治療効果に到達することを示している。神経束の組織分布的構成はまた、埋め込みデバイスに対して神経インタフェースとして単一多接触神経電極の使用を可能にする。
【0038】
様々な実施形態では、空間選択的VNSは、特定の神経枝上の刺激部位及び刺激強度を選択することによって適用され、迷走神経の1つ又はそれよりも多くの非ターゲット枝を実質的に活性化することなく、迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化する。神経は、刺激誘発神経反応が検出可能である時(ENG信号の振幅が、指定されたENG閾値にあるか又はそれを超える時のような)、又は神経によって制御された生理的機能である神経誘発反応が検出可能である時(EMG信号の振幅が、指定されたEMG閾値にあるか又はそれを超える時のような)に実質的に活性化される。同様に、神経は、刺激誘発神経反応が検出可能でない時(ENG信号の振幅が、指定されたENG閾値よりも小さい時のような)、又は神経によって制御された生理的機能である神経誘発反応が検出可能である時(EMG信号の振幅が、指定されたEMG閾値よりも小さい時のような)には、実質的に活性化されない。
【0039】
図7は、空間選択的VNSの方法700の実施形態を示す流れ図である。一実施形態では、方法700は、本文献で説明するその実施形態を含むシステム100を使用して実施され、電極136は多接触電極である。
【0040】
710において、多接触電極は、tVN104及びRLN106が分岐する位置の頭方の頸迷走神経幹102上に置かれる。多接触電極の接点は、頸迷走神経幹102の束の選択的刺激を可能にするように分配される。720において、多接触電極の1つ又はそれよりも多くの接点は、RLN106によって神経支配された喉頭筋の収縮を引き起こすことなく、迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝を実質的に活性化するように選択される。電気刺激パルスは、様々な接点又は接点の組合せにより送出され、選択すべき1つ又はそれよりも多くの接点を識別する。刺激制御回路242は、多接触電極の1つ又はそれよりも多くの接点の選択を指定する1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを含む複数の刺激パラメータを使用して電気刺激パルスの送出を制御する。パラメータ調節器244は、1つ又はそれよりも多くの接点を選択する処理中に1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを調節する。この処理の終了時に選択された1つ又はそれよりも多くの接点を指定する1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータは、その後のVNS治療のためにストレージ回路246に格納される。
【0041】
一実施形態では、電気刺激パルスは、双極電極として使用する多接触電極の少なくとも2つの接点を使用して送出される。別の実施形態では、電気刺激パルスは、単極電極及び分離電極として使用する多接触電極の少なくとも1つの接点を使用して送出される。
【0042】
一実施形態では、1つ又はそれよりも多くの接点を選択するこの処理は、刺激パルスの送出に対する神経反応を表す及び/又は示す信号を感知する段階を含む。例えば、電気刺激パルスに対する頸迷走神経幹の反応を表す刺激誘発神経電図(ENG)信号が感知され、電気刺激パルスに対するRLNの反応を示す刺激誘発筋電図(EMG)が感知される。迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝は、ENGの振幅が指定されたENG閾値を超える時に実質的に活性化されると考えられる。喉頭筋の収縮が起こっているとは考えられず、又はRLNは、EMG信号の振幅が指定されたEMG閾値を超えていない時に活性化されるとは考えられない。一実施形態では、1つ又はそれよりも多くの接点を選択する処理は、多接触電極の様々な接点及び/又は接点の組合せを通して掃引する段階と、ENG信号の振幅及びEMG信号の振幅に対する調節の効果を観察する段階とを含む。
【0043】
上述の詳細説明は、例示的であって制限を意図するものではないことは理解されるものとする。他の実施形態は、以上の説明を読んで理解すると当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、従って、このような特許請求の範囲が権利を与えられた均等物の全範囲と共に添付の特許請求の範囲に関連して判断すべきである。
本発明は、以下のような態様であってもよい。
(1)生体の迷走神経を電気的に刺激する方法であって、迷走神経の第1の枝上又はそれに隣接して置かれた電極に電気刺激パルスを送出する段階、を含み、前記第1の枝は、前記迷走神経の第2の枝から分離しており、かつ該第2の枝を実質的に活性化することなく、前記電気刺激パルスによって該迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝の実質的な活性化を可能にするように選択される、ことを特徴とする方法。
(2)前記電気刺激パルスを前記電極に送出する段階は、該電気刺激パルスを埋め込み型医療デバイスから、該埋め込み型医療デバイスに結合されて該電極を含むか又はそれに結合された埋め込み型リードを通じて送出する段階を含むことを特徴とする上記(1)に記載の方法。
(3)前記電気刺激パルスを前記電極に送出する段階は、該電気刺激パルスをカフ電極に送出する段階を含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記第1の枝は、胸部迷走神経(tVN)であり、前記第2の枝は、反回神経(RLN)であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)前記電気刺激パルスによって前記迷走神経の前記1つ又はそれよりも多くのターゲット枝の前記活性化を制御する1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを調節することによって、1つ又はそれよりも多くの心臓血管機能を制御する段階を含むことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)前記電気刺激パルスに対する前記1つ又はそれよりも多くのターゲット枝の反応を表す刺激誘発神経電図(ENG)信号を感知する段階と、前記電気刺激パルスに対する喉頭筋の反応を表す刺激誘発筋電図(EMG)信号を感知する段階と、前記ENG信号の振幅及び前記EMG信号の振幅を使用して前記電気刺激パルスの強度を制御する段階と、を含むことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)生体の迷走神経を電気的に刺激する方法であって、頸迷走神経幹の一部分又は胸部迷走神経(tVN)の一部分上に置かれた電極に電気刺激パルスを送出する段階と、前記迷走神経の1つ又はそれよりも多くのターゲット枝が、反回神経(RLN)によって神経支配された喉頭筋の収縮を引き起こすことなく該電気刺激パルスによって活性化されるように、前記電気刺激パルスの前記送出を制御する段階と、を含むことを特徴とする方法。
(8)前記電気刺激パルスを前記tVNの前記部分上に置かれた前記電極に送出する段階と、前記迷走神経の前記1つ又はそれよりも多くのターゲット枝が、前記RLNによって神経支配された前記喉頭筋の前記収縮を引き起こすことなく該電気刺激パルスによって活性化されるように、前記電気刺激パルスの強度を制御する段階と、を含むことを特徴とする上記(7)に記載の方法。
(9)前記電気刺激パルスの前記強度を制御する段階は、該電気刺激パルスのパルス振幅を調節する段階を含むことを特徴とする上記(8)に記載の方法。
(10)前記電気刺激パルスを前記頸迷走神経幹の前記部分上に置かれた多接触電極に送出する段階と、前記迷走神経の前記1つ又はそれよりも多くのターゲット枝が、前記RLNによって神経支配された前記喉頭筋の前記収縮を引き起こすことなく該電気刺激パルスによって活性化されるように、前記電気刺激パルスを送出するための前記多接触電極の1つ又はそれよりも多くの接点を選択する段階と、を含むことを特徴とする上記(7)から(9)のいずれか1つに記載の方法。
(11)前記電気刺激パルスに対する前記頸迷走神経幹の反応を表す刺激誘発神経電図(ENG)信号を感知する段階と、前記電気刺激パルスに対する前記喉頭筋の反応を表す刺激誘発筋電図(EMG)信号を感知する段階と、を含むことを特徴とする上記(7)から(10)のいずれか1つに記載の方法。
(12)前記ENG信号及び前記EMG信号を使用して前記電気刺激パルスの前記送出を制御する1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを判断する段階を含むことを特徴とする上記(11)に記載の方法。
(13)前記1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを判断する段階は、指定のENG閾値を超える前記ENG信号の振幅、及び指定のEMG閾値よりも小さい前記EMG信号の振幅をもたらすように、該1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを判断する段階を含むことを特徴とする上記(12)に記載の方法。
(14)前記電気刺激パルスを前記電極に送出する段階は、埋め込み型医療デバイスから該埋め込み型医療デバイスと該電極との間に結合された埋め込み型リードを通して、該電気刺激パルスを該電極に送出する段階を含むことを特徴とする上記(7)から(13)のいずれか1つに記載の方法。
(15)前記電気刺激パルスを前記電極に送出する段階は、該電気刺激パルスを、前記tVN上に置かれるように構成されたカフ電極に送出する段階を含むことを特徴とする上記(14に)記載の方法。
(16)心臓血管機能を制御するように選択された1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを使用して前記電気刺激パルスの前記送出を制御する段階を含むことを特徴とする上記(7)から(15)のいずれか1つに記載の方法。
(17)異常な心臓血管病状を治療するように選択された1つ又はそれよりも多くの刺激パラメータを使用して前記電気刺激パルスの前記送出を制御する段階を含むことを特徴とする上記(16)に記載の方法。