(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放熱用あるいは受熱用流体の内部流路を有する平板状の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法であって、互いのキャビティを対向させて配置され、型締め位置と開放位置との間で相対移動可能な一対の分割金型を準備する段階と、賦形されることにより内部流路の一部を形成すべき溶融状態の一方の熱可塑性樹脂製シートと、伝熱板を構成する他方の熱可塑性樹脂製シートとを互いに間隔を隔てて、それぞれキャビティからはみ出す形態で、開放位置の一対の分割金型の間に配置する段階と、一方の熱可塑性樹脂製シートと一対の金型の対応する金型との間に密閉空間を形成して、該密閉空間から空気を減圧することにより、一方の熱可塑性樹脂製シートを吸引して、内部流路と相補形状の凹部を表面に設けた対応するキャビティに沿って賦形して、キャビティに対向する内表面側に底部を有する第1凹溝を形成する段階と、前記一対の分割金型を型締め位置まで移動させることにより、一方の熱可塑性樹脂製シートの外表面のうち、該第1凹溝以外の平面部と、他方の熱可塑性樹脂製シートの外表面とを面溶着させて、該第1凹溝を閉鎖することにより内部流路を形成する段階と、を有することを特徴とする樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
前記一方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、前記他方の熱可塑性樹脂製シートは、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定する、請求項1に記載の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、樹脂製熱伝達ユニットとして、内部流路を流れる流体を放熱用として用いる床暖房パネルユニットを例に、以下、図面を参照しながら、その製造方法を説明する。
図1ないし
図3に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200は、2枚の樹脂製シート216、218を貼り合わせたパネル状の2層構造をなし、第1樹脂製シート216の内表面224と第2樹脂製シート218の内表面226とを面溶着することにより、内部に内部流路202が形成されている。内部流路202は、樹脂製床暖房パネルユニット200面内において蛇行するように、全体に亘って形成されている。
床暖房パネルユニット200は、第2樹脂製シート218を上側、第1樹脂製シート216を下側にして床面Fに配置され、より具体的には、たとえば床合板の上に敷設され、床暖房パネルユニット10の上には、床仕上げ材が設けられ、床暖房パネルユニット10は、第2樹脂製シート218の高い熱伝導性により上方の床仕上げ材への熱伝導を促進するように構成されている。なお、床合板および床仕上げ材は、たとえば木製が採用され、主に放熱あるいは熱伝導の観点からその厚みが適宜定められる。
【0022】
樹脂製床暖房パネルユニット200は、第1樹脂製シート216には、内部流路202の一部を形成する蛇行凹溝205が形成され、第2樹脂製シート218は、平坦に形成され、床仕上げ材との面接触をすることにより伝熱性を確保するとともに、第1樹脂製シート216に形成される蛇行凹溝205を閉鎖することにより、内部流路202を構成するようにしている。第2樹脂製シート218は、良好な伝熱性を確保する観点から、なるべく薄肉とするのが好ましく、一方第1樹脂製シート216は、樹脂製床暖房パネルユニット200としての強度を確保する観点から、少なくとも第2樹脂製シート218より厚肉とするのが好ましい。この点、後に説明するように、樹脂製床暖房パネルユニット200は、第1樹脂製シート216の材料とする熱可塑性樹脂製シートP1と、第2樹脂製シート218の材料とする熱可塑性樹脂製シートP2とを用いて、それぞれ成形して、面溶着することにより製造するが、熱可塑性樹脂製シートP1は、蛇行凹溝205を賦形することから成形の際のブロー比が高く、それに対して、熱可塑性樹脂製シートP1は、平坦であることから相対的にブロー比が低い点を考慮して、熱可塑性樹脂製シートP1については、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、一方熱可塑性樹脂製シートP2については、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定する。
内部流路202は、
図1に示すように、流入開口210から流出開口212に向かって、曲管部204と直管部206とが交互に連なる構成であり、直管部206は、互いに平行に配置されている。内部流路202の断面は、
図3に示すように、外表面220側に突出する半円状に形成されている。
より詳細には、第1樹脂製シート216の内表面224には、半円状断面の蛇行凹溝205が成形され、第2樹脂製シート218は、平坦に成形されており、それらを貼り合わせて内部流路202が形成されている。内部流路202の流路断面、特に内径、および蛇行流路の全長、湾曲部の径等は、要求される暖房機能との関係で内部流路202内を流す流体の流量等から定めればよい。
図3に示すように、第1樹脂製シート216の外表面220には、内部流路202の縁部に相当する部分に沿って、切り込み207が形成されている。これは、後に説明するように、第1樹脂製シート216の内表面224のうち蛇行凹溝205が形成される部分以外の平面部と、第2樹脂製シート218の内表面226とを面溶着する際、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2が押圧されることにより、内部流路202内に流れ込むのを防止する観点から、蛇行凹溝205の縁部を第2樹脂製シート218の内表面226に対して相対的に強く押圧することにより、形成されたものである。
【0023】
図1に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200における内部流路202の端部は、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁208に形成され、内部流路202と外部管路とは、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁部において接続されている。
図2に示すように、内部流路202の端部は、拡径の円形断面状に形成され、樹脂製床暖房パネルユニット200の外縁部で開口している。より詳細には、第1樹脂製シート216の蛇行凹溝205の内部流路202の端部に相当する位置に、第2樹脂製シート218の凹溝209が部分的に形成され、それにより、円形断面の流入開口210および流出開口212が形成されている。この内部流路202の各端部には、
図1に示すように、接続管路214の一端部が挿入される。
【0024】
このような構成の樹脂製床暖房パネルユニット200によれば、樹脂製床暖房パネルユニット200の第2樹脂製シート218が平坦に形成され、内部流路202の内部流路202の断面が樹脂製床暖房パネルユニット200の第1樹脂製シート216側に突出する半円状に形成されているので、樹脂製床暖房パネルユニット200の第2樹脂製シート218を床仕上げ材に面接触させるとともに、蛇行凹溝205の開口が第2樹脂製シート218の内表面226に臨むことから、樹脂製床暖房パネルユニット200を通る液体からの熱を薄肉の第2樹脂製シート218を通じて、床仕上げ材に効率的に伝熱可能でありこれにより効率的に床暖房が行われる。
【0025】
また、接続管路214は、外周形状が内部流路202の流入開口210および流出開口212の断面に適合する円形に形成され、接続管路214の一端部が内部流路202に挿入され、それにより、内部流路202と接続管路214との接続が気密に行われ、液体の漏れを防止できる。
【0026】
次に、このような樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置について、以下に説明する。
図4に示すように、樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置10は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置14とを有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを型締装置14に送り、型締装置14により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを成形するようにしている。ここに、2枚の熱可塑性樹脂それぞれを押し出して、型締装置14まで送るまでの装置は、同様であるので、一方のみ説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。
熱可塑性樹脂製シートP1は、内部流路202に相当する蛇行凹溝205を成形するのに用いられ、一方熱可塑性樹脂製シートP2は、蛇行凹溝205を閉鎖するのに用いられ、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面が、床仕上げ材に面接触する。
【0027】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22内に設けられたプランジャー24とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室22に移送されて一定量貯留され、プランジャー24の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて所定の長さの連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0028】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm
2以上、より好ましくは150kg/時cm
2以上である。
【0029】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
なお、一対のローラー30の代替として、熱可塑性樹脂製シートPを一対の分割金型23の間に配置する前に、たとえば、既知のクランパにより、熱可塑性樹脂製シートPの下部を挟持して下方にけん引することにより、熱可塑性樹脂製シートPの肉厚を調整してもよい。
【0030】
図4を参照して、一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、
図4に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300ミリの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
【0031】
図5および
図6に示すように、回転駆動ローラー30Aには、ローラー回転駆動手段94およびローラー移動手段96が付設され、ローラー回転駆動手段94により、回転駆動ローラー30Aは、その軸線方向を中心に回転可能とされ、一方ローラー移動手段96により、回転駆動ローラー30Aは、一対のローラー30を包含する平面内で被回転駆動ローラー30Bとの平行な位置関係を保持しつつ、被回転駆動ローラー30Bに向かって近づき、あるいは被回転駆動ローラー30Bから離れるように移動されるようにしている。
【0032】
より詳細には、ローラー回転駆動手段94は、回転駆動ローラー30Aに連結した回転駆動モータ98であり、回転駆動モータ98の回転トルクをたとえば歯車減速機構(図示せず)を介して回転駆動ローラー30Aに伝達するようにしている。回転駆動モータ98は、従来既知のものであり、その回転数を調整可能なように回転数調整装置111が付設されている。この回転数調整装置111は、たとえば電動モーターに対する電流値を調整するものでよく、後に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが押出スリット34から押し出される押出速度と、一対のローラー30の回転により熱可塑性樹脂製シートPが下方に送り出される送り出し速度との相対速度差を、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度に応じて、調整するようにしている。熱可塑性樹脂製シートPのローラーによる送り出し速度は、例えば直径100ミリの一対のローラーを用いて、送り出し方向に長さ2000ミリの熱可塑性樹脂製シートPを15秒間で送り出す場合、1ショット15秒間で約6.4回転することとなり、ローラーの回転速度は約25.5rpmと算出することができる。ローラーの回転速度を上げ下げすることで熱可塑性樹脂製シートPであるパリソンPの送り出し速度を容易に調整することができる。
【0033】
図6に示すように、被回転駆動ローラー30Bが回転駆動ローラー30Aと同調して回転駆動するように、被回転駆動ローラー30Bは、その端周面102に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な第1歯車104を有し、一方回転駆動ローラー30Aは、その端周面106に亘ってローラーの回転軸を中心に回転可能な、第1歯車104と噛み合う第2歯車108を有する。
【0034】
図5に示すように、ローラー移動手段96は、ピストンーシリンダ機構からなり、ピストンロッド109の先端が、回転駆動ローラー30Aをその軸線方向に回転可能に支持するカバー121に連結され、たとえば空気圧を調整することにより、ピストン113をシリンダー115に対して摺動させ、それにより回転駆動ローラー30Aを水平方向に移動するようにし、以て一対のローラー30同士の間隔を調整可能としている。この場合、後に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30の間に供給される前に、一対のローラー30同士の間隔を供給される熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げて(
図5(A)の間隔D1を構成する開位置)、熱可塑性樹脂製シートPが円滑に一対のローラー30の間に供給されるようにし、その後に一対のローラー30同士の間隔を狭めて、一対のローラー30により熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み(
図5(A)の間隔D2を構成する閉位置)、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すようにしている。ピストン113のストロークは、開位置と閉位置との距離となるように設定すればよい。また、空気圧を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30の間を通過する際、ローラーから熱可塑性樹脂製シートPに作用する押圧力を調整することも可能である。押圧力の範囲は、一対のローラー30が回転することにより、一対のローラー30の表面と熱可塑性樹脂製シートPの表面との間に滑りが生じない一方で、一対のローラー30により熱可塑性樹脂製シートPが引きちぎられることのないようにして熱可塑性樹脂製シートPが確実に下方に送り出されるように定められ、樹脂の種類に依存するが、たとえば0.05MPAないし6MPAである。
【0035】
図4に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを変更することが可能である。
一方、型締装置14も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0036】
図4に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向沿うように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸部が設けられる。
より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1を成形する一方の金型32Aのキャビティ116Aの表面には、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121に内部流路202の一部を構成する蛇行凹溝205を形成するように、蛇行凹溝205と相補形状の凹部119が設けられている。
凹部119はキャビティ116Aの表面において、
図1の内部流路202の向きと同じに設けられ(
図1の上下方向が、熱可塑性樹脂製シートPの押し出し方向に相当する)、後に説明するように、キャビティ116Aの水平方向の縁部には、型枠33が設置されることから、凹部119の各端部は、対応するキャビティ116Aの上下方向の縁部を抜けるように設けられる。
また、凹部119の縁に沿って、対向するキャビティ116Bに向かって突出する突出部(図示せず)を設け、それにより、一対の分割金型32を型締することにより、熱可塑性樹脂製シートP1と熱可塑性樹脂製シートP2とを溶着する際、突出部に相当する熱可塑性樹脂製シートP1の部分に対して、他の部分に比べ高い押圧力が付加され、上述のように、切り込み207が形成され、蛇行凹溝205の縁に沿って熱可塑性樹脂製シートP2の外表面との溶着性を高めるようにしてある。
【0037】
また、金型32Aのキャビティ116Aの表面には、内部流路202と相補形状の凹部119とは連通しない第2凹部(図示せず)が設けられ、後に説明するように、一対の分割金型32A,Bの型締めにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、内部流路202と連通しない密閉中空部を形成するようにしている。これにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、第1に、広い面積に亘って溶着強度を均等に精度よく維持することが困難である点、第2に、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂が内部流路202内へあふれ出すことがある、以上の問題点を回避することが可能である。
より詳細には、密閉中空部を設けることにより、面溶着面積を小さくし、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂の逃げ場を形成している。
この点において、金型32Aのキャビティ116Aの表面でなく、金型32Bのキャビティ116Bの表面に第2凹部を設けてもよいし、あるいは金型32Bのキャビティ116Bの表面の第2凹部に対応する位置にも第3凹部を設け、第2凹部と第3凹部とが協働して密閉中空部を形成してもよい。
一方、金型32Bのキャビティ116Bの表面の、キャビティ116Aの凹部119の各端部に対応する位置には、凹部(図示せず)が形成され、分割形式の金型32A,Bを型締めした際、凹部119と凹部とが協働して、
図2に示すような、円形断面の流入開口210あるいは流出開口212が賦形され、それにより、外部管路と接続可能にしている。
【0038】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、その周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着される。
ピンチオフ部118の先端部同士が当接した際の対向するキャビティ116A,Bの表面同士の間隔は、熱可塑性樹脂製シートP1の厚みおよび熱可塑性樹脂製シートP2の厚みの合計より少なくとも小さくなるように設定され、それにより、分割形式の金型32A,Bを型締する際、熱可塑性樹脂製シートP1と熱可塑性樹脂製シートP2とが面溶着可能なようにしている。なお、ピンチオフ部118は、いずれか一方の金型32A,Bに設けてもよい。
【0039】
金型32Aの外周部には、型枠33Aが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Aが、金型32Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能である。なお、図面上は省略しているが、同様に、金型32Bの外周部にも、型枠33Bを設け、型枠33Bが、金型32Bに対して金型32Aに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP2の側面に当接可能としている。
【0040】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接する。開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置、すなわち、ピンチオフ部118同士が互いに当接する位置は、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2間で、両熱可塑性樹脂製シートP1、P2から等距離の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
なお、熱可塑性樹脂製シートP1用の押出装置および一対のローラーと、熱可塑性樹脂製シートP2用の押出装置および一対のローラーとは、この閉位置に関して対称に配置されている。
【0041】
図8に示すように、分割金型32Aの内部には、真空吸引室80が設けられ、真空吸引室80は吸引穴82を介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって熱可塑性樹脂製シートP1を吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。より詳細には、キャビティ116Aの外表面に設けた凹部119により、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121に蛇行凹溝205を形成するようにしている。図示は省略しているが、分割金型32Bについても同様に、キャビティ116Bに吸引穴を介して連通する真空吸引室が設けられている。
一方、分割金型32Bには、金型32A、Bを型締したときに両金型により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
【0042】
熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、または非晶性樹脂などから形成されたシートからなる。より詳細には、熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0043】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7ミリ/分で、直径2.095ミリ、長さ8ミリのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50ミリのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0044】
また、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
さらに、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは30〜40wt%添加する。
以上の構成を有する樹脂製床暖房パネルユニット200の成形装置10を利用した樹脂製床暖房パネルユニット200の製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0045】
まず、
図4において、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ22内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0046】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。
すなわち、ピストンーシリンダー機構96を駆動することにより、
図5(B)に示すように、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。その際、ローラー30の回転によりスウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に送られている間、一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度が、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整する。
【0047】
より詳細には、スウェルした状態の熱可塑性樹脂製シートPが一対のローラー30に下方に送り出されるにつれて、鉛直方向に垂下する熱可塑性樹脂製シートPの長さが長くなり、それに起因して垂下する熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど熱可塑性樹脂製シートPの自重により薄肉化されるところ(ドローダウンあるいはネックイン)、その一方で一対のローラー30による送り出し速度を押出速度以上となるようにローラーの回転速度を調整することにより、熱可塑性樹脂製シートPは一対のローラー30により下方に引っ張られ、熱可塑性樹脂製シートPは延伸薄肉化される。
このとき、時間経過とともにローラーの回転速度を低下させて、送り出し速度を熱可塑性樹脂製シートPの押出速度に近づけるように調整する。
【0048】
たとえば、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を一定にする一方、ローラーの回転速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、ローラーの回転速度を一定にする一方、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度を時間経過とともに段階的に減少させてもよいし、ローラーの回転速度の方が大きい範囲内でローラーの回転速度および熱可塑性樹脂製シートPの押出速度ともに時間経過とともに段階的に変動させてもよい。
いずれの場合であっても、時間経過とともに、一対のローラー30の回転による熱可塑性樹脂製シートPの下方への送り出し速度と、熱可塑性樹脂製シートPの押出速度との相対速度差が縮まることから、熱可塑性樹脂製シートPの上部ほど一対のローラー30による下方への引っ張り力が低下し、相対的にこのような引っ張り力に伴う延伸薄肉化が低減され、ドローダウンあるいはネックインに伴う薄肉化を相殺し、ドローダウンあるいはネックインを有効に防止し、以て押出方向に一様な厚みを形成することが可能である。
このように一対のローラー30を用いて、熱可塑性樹脂製シートPの厚みを調整する際、熱可塑性樹脂製シートP1は、内部流路202の一部を構成する凹溝を成形することに起因してブロー比が高いことから、賦形後の最小肉厚部が所定肉厚以上となるように厚みを決定し、一方、熱可塑性樹脂製シートP2は、床仕上げ材との面接触を確保するために、円形断面の流出開口212あるいは流入開口210を成形するための凹部が形成される以外は平面状であり、熱可塑性樹脂製シートP1と比較して、ブロー比が低いことから、賦形後の最大肉厚部が所定肉厚以下となるように厚みを決定するのがよい。特に、熱可塑性樹脂製シートP1の厚みは、熱可塑性樹脂製シートP2の厚みより厚く設定するのがよい。このようなそれぞれの熱可塑性樹脂製シートP1およびP2の厚みに応じて、対向する一対のローラーを用いて厚みを調整すればよい。
【0049】
次いで、
図4に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32A,B間に配置する。これにより、熱可塑性樹脂製シートPは、ピンチオフ部118のまわりにはみ出す形態で位置決めされる。
以上の工程を、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれについて行い、熱可塑性樹脂製シートP2と熱可塑性樹脂製シートP1とを互いに間隔を隔てた状態で、分割金型32A,B間に配置する。
この場合、上述のように、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2はそれぞれ、互いに独立に、押し出しスリット34の間隔、あるいは一対のローラ30の回転速度を調整することにより、分割金型32A,B間に配置される際の厚みを調整可能である。
次いで、
図7に示すように、型枠33Aを金型32Aに対して、熱可塑性樹脂製シートP1に向かって、金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当たるまで移動させる。
【0050】
次いで、
図7および
図8に示すように、金型32Aのキャビティ116A、型枠33Aの内周面102、および金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117により構成された第1密閉空間84を通じて、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートP1をキャビティ116Aに対して押し付けて、キャビティ116Aの凹凸表面に沿った形状に熱可塑性樹脂製シートP1を賦形する。これにより、熱可塑性樹脂製シートP1には、蛇行凹溝205が
内表面117側に突出するように賦形され、内部流路202の一部が形成される。
蛇行凹溝205の形成段階と併行して、同様に、熱可塑性樹脂製シートP2と一対の金型32の対応する金型32Bとの間に密閉空間を形成して、密閉空間から空気を減圧することにより、熱可塑性樹脂製シートP2を吸引して、流入開口210および流出開口212に関連して、キャビティ116Aの凹部119と協働して相補形状をなす凹部(図示せず)を設けたキャビティ116Bに沿って賦形して、キャビティ116Bに対向する内表面側に突出する凹溝209を形成する。
なお、このような熱可塑性樹脂製シートP1およびP2の対応するキャビティ116への吸引賦形により、後に説明する金型の型締めの際、熱可塑性樹脂製シートP1およびP2同士がくっつき合って成形不良となる事態を防止することが可能である。
【0051】
次いで、
図9に示すように、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当接する型枠33Aをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP1を吸引保持するとともに、可塑性樹脂製シートP2の外表面117に当接する型枠33Bをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP2を同様に吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部118A,B同士が当接するまで両金型32A,Bを互いに近づく向きに移動させ、型締する。この場合、ピンチオフ部118A,B同士の型締方向の当接位置は、互いに離間する2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2の間となるところ、
図6に示すように、ピンチオフ部118A,B同士が当接することにより、熱可塑性樹脂製シートP1の外表面121のうち、蛇行凹溝205以外の平面部と、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させて、蛇行凹溝205を閉鎖することにより内部流路202が形成され、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205と、熱可塑性樹脂製シートP2の凹溝209とを突き合わせることにより、流入開口210および流出開口212を形成する。
【0052】
この場合、金型32Aのキャビティ116Aの表面に、凹部119とは連通しない第2凹部が設けられているので、一対の分割金型32の型締めにより、熱可塑性樹脂製シートP1の蛇行凹溝205以外の平面部と熱可塑性樹脂製シートP2の外表面とを面溶着させる際、内部流路202と連通しない密閉中空部が形成され、これにより面溶着面積が減少することで、広い面積に亘って溶着強度を均等に高精度に維持する困難性を回避するとともに、面溶着部分で押し潰された溶融状態の樹脂の逃げ場を形成することが可能である。
また、熱可塑性樹脂製シートP1に対応するキャビティ116Aの凹部119の縁に沿って、対向するキャビティ116Bに向かって突出する突出部(図示せず)を設けているので、一対の分割金型32の型締の際、他の部分に比べて高い押圧力が付加されることで、蛇行凹溝205の縁に沿って熱可塑性樹脂製シートP2の外表面との溶着性が高められ、同様に、面溶着部分で押し潰された溶融状態が内部流路202内にあふれ出すのを有効に防止することが可能である。
次いで、
図10に示すように、分割金型32A,Bを型開きして、成形された樹脂製床暖房パネルユニット200を取り出し、ピンチオフ部118A,Bの外側のバリ部分Bを切断し、これで成形が完了する。
次いで、流入開口210および流出開口212それぞれに対して外部管路を接続する。これで、樹脂製床暖房パネルユニット200が完成する。
【0053】
以上のように、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、パネル状の樹脂製床暖房パネルユニット200を次々に成形することが可能であり、押出成形により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、真空成形または圧空成形により押し出された熱可塑性樹脂製シートPを金型を用いて所定の形状に賦形することが可能である。
【0054】
成形手順として、上述のように、分割金型32を型締する前にキャビティ116と樹脂材料との間に密閉空間を形成し、キャビティ116側から樹脂材料を吸引することにより、樹脂材料を賦形するだけでなく、さらに、分割金型32を型締することにより、分割金型32内に密閉空間を形成し、この密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形してもよい。この方法によれば、吸引による賦形と、ブロー圧による賦形とを行うことにより、たとえば内部流路202の湾曲がきつい等複雑な形状の成形であっても良好な成形性を確保することができる。さらに、分割金型32を型締する際、キャビティ116側から樹脂材料を吸引しつつ密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形するのでもよい。この方法によれば、吸引によりキャビティ116の凹部に溜まった空気を除去しつつブロー圧をかけることにより、同様に良好な成形性を確保することが可能である。
【0055】
以上の樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、一方の熱可塑性樹脂製シートPについて、内部流路202の一部を構成する第1凹溝を形成するように賦形する一方、他方の熱可塑性樹脂製シートPについて、このような賦形を回避することで、賦形に伴う成形誤差を小さくしつつ、賦形された第1凹溝を単に閉鎖することで蛇行状に延びる内部流路202を精度よく形成可能である。
さらに、両方の熱可塑性樹脂製シートPに凹溝を形成したうえで、両方の熱可塑性樹脂製シートPを溶着することにより内部流路202を形成するとすれば、溶着の際の位置ずれに伴って、形成される内部流路202の断面形状が変わる可能性が高いところ、このようなリスクを回避することも可能であり、溶着の際、従来のように、高周波溶着方法を用いずに、分割金型32の型締めを利用して、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP同士を溶着することにより、高周波溶着方法に起因する樹脂の粉体の発生、あるいは樹脂の染み出し等の不都合を未然に防止することが可能である。
加えて、本樹脂製熱伝達ユニットの製造方法によれば、熱伝導面を形成するいずれかの熱可塑性樹脂製シートPの外表面を平面状とすることにより、たとえば、熱を伝達すべき床面に対して密着して突き合わせることが可能であり、効率的な熱交換が可能であるとともに、従来のように、熱媒体の流通用配管を別途製造することなしに、樹脂製熱伝達ユニットの内部に内部流路202を一体で形成することにより、効率的な製造が可能である。
【0056】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変更が可能である。
【0057】
たとえば、本実施形態においては、樹脂製熱伝達ユニットとして、内部流路を流れる流体を放熱用として用いる床暖房パネルユニットを例に説明したが、それに限定されることなく、内部流路を流れる流体を受熱用として用いる場合にも適用可能である。
また、本実施形態においては、押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを利用して、樹脂製床暖房パネルユニット200としてダイレクトに賦形・成形するものとして説明したが、それに限定されることなく、賦形・成形するのに必要な溶融状態を実現する限り、いったん押出成形し、冷却した熱可塑性樹脂製シートPを再度加熱して溶融状態とした材料を利用して賦形・成形を行ってもよい。
さらにまた、本実施形態においては、Tダイよりシート状に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを利用したが、それに限定されることなく、溶融状態の筒状パリソンを押し潰してシート状に形成するものでもよい。
加えて、本実施形態においては、樹脂製床暖房パネルユニット200を成形する際、内部流路内への溶融樹脂の流れ込み、あるいは良好な面溶着を確保するために、内部流路と連通しない密閉中空部を形成するとともに、内部流路の一部を形成する熱可塑性樹脂製シートP1の凹溝の縁部と熱可塑性樹脂製シートP2との溶着性を高めたが、それに限定されることなく、面溶着の広さ、面溶着の強さ等に応じて、いずれか一方とするのでもよい。