(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769085
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】トンネル覆工コンクリートの打設方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
E21D11/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-279760(P2011-279760)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-129991(P2013-129991A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 聡
(72)【発明者】
【氏名】矢口 博嗣
(72)【発明者】
【氏名】入江 正樹
(72)【発明者】
【氏名】今津 雅紀
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−151471(JP,A)
【文献】
特開2004−169364(JP,A)
【文献】
特開平10−204830(JP,A)
【文献】
特開2003−020898(JP,A)
【文献】
特開2008−308855(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01136650(EP,A1)
【文献】
特開平4−371699(JP,A)
【文献】
特開昭56−48469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 10/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E04G 11/04−11/34
E04G 21/02
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2基の移動式セントルをトンネル掘進方向で同方向に前進させ、覆工コンクリートを施工するトンネル覆工コンクリートの打設方法であって、
2基の前記移動式セントルを互いに所定スパンだけ間隔をもってトンネル内に設置する第1工程と、
前記移動式セントルのそれぞれを単独で順次隣接するスパンへ移動させながら覆工コンクリートを打設する第2工程と、
後方側の前記移動式セントルによる覆工が前方側の前記移動式セントルによって施工した覆工コンクリートのスパンに追い着いたときに、2基の前記移動式セントルを同時に前方へ盛り替え、後方側の前記移動式セントルを前方側の前記移動式セントルで覆工した最も前方の覆工コンクリートに隣接させて移設する第3工程と、
を有することを特徴とするトンネル覆工コンクリートの打設方法。
【請求項2】
2基の前記移動式セントルにおける打設時期が異なっていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工コンクリートの打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工コンクリートの打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削形成されたトンネル内空断面の坑をコンクリートで二次覆工する場合、坑壁面に対向する曲面状の型枠を備えた移動式セントルを坑内に配置し、坑壁面と型枠との隙間にコンクリートを打設して覆工しているのが一般的である。そして、打設後の移動式セントルで適宜養生を行った後に隣接する次の打設位置へ移動させるが、その際、隣り合うスパンの覆工コンクリート同士を連続させるため、移動式セントルの型枠の一部を既設覆工コンクリートの端部にオーバーラップさせている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、覆工コンクリートの施工においては、トンネルの掘削および一次覆工が終了した後、トンネル全長に亘って順次移動式セントルを移動させながら実施している。このとき、移動式セントルの移動、セットからコンクリート打設、養生、脱型までの1サイクルの施工に2日程度を要しているのが通常であり、この場合、打設終了から15時間から18時間をかけて養生を行ってから脱型を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−123794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように移動式セントルを用いた覆工コンクリートの施工を2日に1回の打設サイクルで行う場合、打設終了から15時間から18時間と一般の構造物と比較して極めて短い時間で脱型が行われている現状がある。そのため、工期の長期化を避けることと、打設から脱型までの時間を例えば2倍以上にすることで、十分且つ確実な脱型強度を確保することとをバランスよく達成できる施工方法が求められており、その点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、脱型強度を確保して覆工コンクリートの品質を高めることができ、しかも工期の短縮が図れるトンネル覆工コンクリートの打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るトンネル覆工コンクリートの打設方法では、2基の移動式セントルをトンネル掘進方向で同方向に前進させ、覆工コンクリートを施工するトンネル覆工コンクリートの打設方法であって、2基の移動式セントルを互いに所定スパンだけ間隔をもってトンネル内に設置する第1工程と、移動式セントルのそれぞれを単独で順次隣接するスパンへ移動させながら覆工コンクリートを打設する第2工程と、後方側の移動式セントルによる覆工が前方側の移動式セントルによって施工した覆工コンクリートのスパンに追い着いたときに、2基の移動式セントルを同時に前方へ盛り替え、後方側の移動式セントルを前方側の移動式セントルで覆工した最も前方の覆工コンクリートに隣接させて移設する第3工程とを有することを特徴としている。
【0008】
本発明では、後方側の移動式セントルで、当該打設スパンから前方側の移動式セントルまでの間の複数スパンを連続的に移動させながら打設することができ、その後方側の移動式セントルによる施工中においても前方側の移動式セントルで当該配置された打設スパンより前方の複数スパンを連続的に移動させながら打設することが可能である。
このように2基の移動式セントルによる施工をそれぞれ単独で行うことができ、しかも各移動式セントルが連続する複数のスパンを順次移動させて施工することができるので、1基の移動式セントルのみでトンネル全線の施工を行っていた従来の打設方法に比べて1基あたりにおける打設後の養生時間を長くとることができる。そのため、脱型時のコンクリート強度を十分確保することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るトンネル覆工コンクリートの打設方法では、2基の移動式セントルにおける打設時期が異なっていることが好ましい。
【0010】
本発明では、2基の移動式セントルによる打設時期をずらすことで、それぞれの移動式セントルによって行われる1サイクルの各作業が同時になるのを避けることが可能となる。例えば一方の移動式セントルが養生時の間に、他方の移動式セントルで移動、セット、打設作業を行うことができ、それらの作業を2基の移動式セントルで交互に行えるので、作業人員を増やさずに効率よく配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトンネル覆工コンクリートの打設方法によれば、2基の移動式セントルを用いてそれぞれ単独で施工することができ、且つ双方を同時に施工することが可能となるので、従来の施工速度を低下させずに各移動式セントルにおける打設後の養生時間を長くすることが可能となり、これにより脱型強度が確保され、覆工コンクリートの品質を高めることができる。しかも、2基の移動式セントルによるそれぞれの作業サイクルをオーバーラップさせることで、工期の短縮が図れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態によるトンネル覆工コンクリートの打設方法を示す概略側断面図である。
【
図2】(a)〜(d)は移動式セントルの移動工程を示す図である。
【
図3】実施例と従来例の作業サイクルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態によるトンネル覆工コンクリートの打設方法について、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1の符号1は本実施の形態によるトンネルを示している。トンネル1は、例えば発破工法や機械掘削工法などによって掘削された山岳トンネルであり、坑壁(掘削壁面)には吹付けコンクリートや支保工などの一次覆工が適宜施され、2基の移動式セントル2(2A、2B)によって二次覆工となる覆工コンクリート3が打設される。
なお、トンネル1の底盤部には、移動式セントル2による施工に先行して、インバートコンクリートが打設され、その盤上に移動式セントル2の移動用のレール(図示省略)が敷設されている。
ここで、
図1において、紙面で左右方向がトンネル進行方向Xを示しており、紙面左側をトンネル掘進方向Xで「前方」とし、その反対側の紙面右側を「後方」として以下統一して用いる。
【0015】
2基の移動式セントル2A、2Bは、前方側に第1移動式セントル2Aが配置され、この第1移動式セントル2Aの後方に所定の距離をもって第2移動式セントル2Bが配置され、各々が独立して覆工コンクリート3の打設が行えるようになっている。なお、以下の説明では、必要に応じて第1移動式セントル2Aで打設される覆工コンクリートを符号3Aを用い、第2移動式セントル2Bで打設される覆工コンクリートを符号3Bを用いる。
移動式セントル2A、2Bは、トンネル内に敷設した前記レール上を走行可能な門型の架台と、この架台に設けられる型枠21とを備えている。型枠21は、トンネル周方向に適宜分割されるが、ここではトンネル上半部に位置する上部型枠と両側壁部に配置される側部型枠との3つに分割されている。
【0016】
ここで、とくに図示しないが、これら分割された型枠のうち上部型枠は架台に設けられた複数の第1ジャッキによって坑壁に対して進退可能に設けられ、各側部型枠は上部型枠の周方向の一端にヒンジを介して連結支持されており、架台に設けられた複数の第2ジャッキによって前記ヒンジを中心に折曲げ可能な構造となっている。つまり、覆工コンクリートの打設時には、第1ジャッキおよび第2ジャッキを伸張させることで、上部型枠をその打設面が所定の高さとなるように上昇させ、一対の側部型枠もその打設面が所定位置となるように前記ヒンジを中心にして外側に開くようにして移動させてセットすることができ、反対に第1ジャッキおよび第2ジャッキを縮退させることで脱型することが可能となる。さらに、これら型枠21には、所定箇所にコンクリート打設口が設けられている。
また、移動式セントル2A、2Bは、型枠21のトンネル掘進方向Xの長さ寸法で1スパンの打設区間が設定され、例えば12m〜15mに形成されている。
【0017】
次に、上述した2基の移動式セントル2A、2Bをトンネル掘進方向Xで前方に向けて前進させ、覆工コンクリート3を施工する打設方法について、図面を具体的に説明する。
【0018】
先ず、
図2(a)に示すように、2基の移動式セントル2A、2Bを互いに所定スパン(図では9スパン)だけ間隔をもってトンネル1内に設置する(第1工程)。つまり、第2移動式セントル2Bが第1移動式セントル2Aによって最後に打設された覆工コンクリート3Aの前方に隣接するスパンS1に設置され、さらにその第2移動式セントル2Bの前方に9スパンの間隔を空けたスパンS11に第1移動式セントル2Aが設置される。第2移動式セントル2Bの覆工区間(打設区間)は符号S1〜S10のスパンとなり、第1移動式セントル2Aの覆工区間は符号S11〜S20のスパンとなる。
【0019】
なお、移動式セントル2の設置工程では、それぞれの移動式セントル2A、2Bにおいて
図1に示す型枠21の打設面を打設する覆工コンクリート3の打設面に一致するようにしてセットする。また、型枠21は、後方側に隣接する既設覆工コンクリート3の前方端部にオーバーラップするように配置するとともに、型枠21の前端部には妻型枠(図示省略)を設置する。さらに、打設箇所には、移動式セントル2の設置前に覆工コンクリート3に必要な鉄筋が予め組み立てられている。
【0020】
そして、セットした2基の移動式セントル2A、2Bにおいて、打設作業が同時とならないように時期をずらして、交互にコンクリートを打設する(第2工程)。このときの打設は、移動式セントル2内から型枠21の打設口にコンクリート供給管を配管し、トンネルの低い位置から順に打設口を移動させながら打設する。そして、型枠21の天端まで打設が完了したら、打設口を閉じ、そのままの状態で型枠21によって養生させる。さらに所定の養生時間が経過した後、脱型が行われる。脱型時には、従来と同様に型枠21を打設した覆工コンクリート3から離し、型枠21の打設面をケレン等によりコンクリートの付着残しを除去し、その表面を清掃しておく。
【0021】
次に、当該スパンの打設、養生、脱型が終了したら、移動式セントル2A、2Bをそれぞれ1スパンだけ前方に移動(
図2(a)、(b)に示す矢印X1、X2)させてセットし、
図2(b)に示すように、これらの作業工程を順次繰り返し行うことで、連続する10スパンの上記覆工区間の施工が行われる。
【0022】
そして、
図2(c)に示すように、後方側の第2移動式セントル2Bによる覆工が前方側の第1移動式セントル2Aによって施工した覆工コンクリートのスパンS11に追い着いたとき、つまり2基の移動式セントル2A、2Bのそれぞれが10スパンずつ覆工したときに、2基の移動式セントル2A、2Bを
図2(d)に示すように同時に前方へ盛り替え、後方側の第2移動式セントル2Bを前方側の移動式セントル2Aで覆工した最後の覆工コンクリート(スパンS20)の前方に隣接するスパンS21へ移設する(第3工程)。なお、
図2(d)では移設した第1移動式セントル2Aが省略されているが、スパンS21に配置される第1移動式セントル2Aの10スパン前方のスパンS31(図示省略)に移設されることになる。
そして、本打設方法では、上述した第1工程から第3工程を繰り返すことで、トンネル全線の二次覆工を行うことができる。
【0023】
ここで、
図3に示す打設サイクルは、本実施の形態の2基の第1移動式セントル2A、第2移動式セントル2Bで1サイクルを3日で施工するケース(実施例1)と、4日で施工するケース(実施例2)と、比較例として、1基の移動式セントルでトンネル全線を1サイクル2日で施工する従来のケース(従来例)を示している。
この打設サイクルによると、実施例1では各移動式セントル2A、2Bにおける打設後に39時間の養生時間が確保され、実施例2では同じく打設後に63時間の養生時間が確保される。これに対して、従来例では1サイクルで確保できる養生時間が15時間であり、本実施の形態による打設方法を採用する実施例1、2では従来例の2倍以上の養生時間が確保できる。
【0024】
このように、後方側の第2移動式セントル2Bで、当該打設スパンから前方側の第1移動式セントル2Aまでの間の複数スパンを連続的に移動させながら打設することができ、その後方側の第2移動式セントル2Bによる施工中においても前方側の第1移動式セントル2Aで当該配置された打設スパンより前方の複数スパンを連続的に移動させながら打設することが可能である。
そして、2基の移動式セントル2A、2Bによる施工をそれぞれ単独で行うことができ、しかも各移動式セントル2A、2Bが連続する複数のスパンを順次移動させて施工することができるので、1基の移動式セントルのみでトンネル全線の施工を行っていた従来の打設方法に比べて1基あたりにおける打設後の養生時間を長くとることができる。そのため、脱型時のコンクリート強度を十分確保することが可能となる。
【0025】
また、
図3に示す実施例1の3日サイクルや実施例2の4日サイクルのように、2基の移動式セントル2A、2Bの打設時期が異なっており、この打設時期をずらすことで、それぞれの移動式セントル2A、2Bによって行われる1サイクルの各作業が同時になるのを避けることが可能となる。つまり、第1移動式セントル2Aが養生時の間に、第2移動式セントル2Bで移動、セット、打設作業を行うことができ、それらの作業を2基の移動式セントルで交互に行えるので、作業人員を増やさずに効率よく配置することができる。
【0026】
上述のように本実施の形態によるトンネル覆工コンクリートの打設方法では、2基の移動式セントル2A、2Bを用いてそれぞれ単独で施工することができ、且つ双方2A、2Bを同時に施工することが可能となるので、従来の施工速度を低下させずに各移動式セントル2A、2Bにおける打設後の養生時間を長くすることが可能となり、これにより脱型強度が確保され、覆工コンクリート3の品質を高めることができる。しかも、2基の移動式セントル2A、2Bによるそれぞれの作業サイクルをオーバーラップさせることで、工期の短縮が図れる効果を奏する。
【0027】
以上、本発明によるトンネル覆工コンクリートの打設方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では2基の移動式セントル2A、2Bで打設時期をずらしているが、両移動式セントル2A、2Bにおいて同時に打設を行うようにしてもかまわない。
【0028】
また、本実施の形態では第1移動式セントル2Aと第2移動式セントル2Bとの間で9スパン設け、1回の移設によってそれぞれ10スパンずつ施工する打設方法としているが、この両セントル2A、2B間の距離(スパン数)に制限されることはない。つまり、他の設備との取合いなど施工上の計画に応じて適宜設定することが可能であり、また適宜この距離を変更することも可能である。
さらに、各移動式セントル2における打設サイクルにおいて、打設するコンクリートの配合、打設条件に応じて養生時間も適宜設定可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 トンネル
2 移動式セントル
2A 第1移動式セントル(前方側の移動式セントル)
2B 第2移動式セントル(後方側の移動式セントル)
3、3A、3B 覆工コンクリート
21 型枠