(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5769102
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】医療用照明装置
(51)【国際特許分類】
A61B 19/00 20060101AFI20150806BHJP
F21S 2/00 20060101ALI20150806BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
A61B19/00 504
F21S2/00 611
F21Y101:02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-228011(P2010-228011)
(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公開番号】特開2012-80981(P2012-80981A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】寺山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−008410(JP,A)
【文献】
特開平10−021703(JP,A)
【文献】
特開2007−088377(JP,A)
【文献】
特開2010−033743(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0219717(US,A1)
【文献】
特開2006−156074(JP,A)
【文献】
特開2007−089853(JP,A)
【文献】
特開2010−170805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 19/00
F21S 2/00
F21W 131/20 ― 131/208
F21Y 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の基台と、
該基台に沿って環状に並べて取付けられたLEDを光源とする複数個の光源手段と、
前記光源手段を覆う空洞のカバーとより構成し、
前記光源手段からの光が、前記カバーの前面に開口された開口部から照射されるように形成され、全ての光源手段よりの光が予め設定した1つの距離において集光するパターンとなるよう前記基台の外周部を内周部より前記集光方向に傾斜させ、
前記光源手段を、LEDと、該LEDの照射面に近接して取付けられ、LEDよりの光を矩形状に収束して照射するライトガイドと、該ライトガイドの放射面と隙間を介して前記カバーの前記開口部裏面に取付けられた凸レンズとより構成し、
前記ライトガイドと前記レンズとの間隔を該レンズの焦点距離より近づけると共に、前記レンズを前記LEDに対して定まった位置に配置することで、集光されたパターンの縁をぼかして照度段差を小さくしたことを特徴とする医療用照明装置。
【請求項2】
前記レンズと前記カバーの前記開口部との間に光硬化性樹脂が反応する波長をカットする材料で形成したフィルタ板に光を透過する開口部を形成し、前記フィルタ板を前記カバーに対して回転自在に取付け、光硬化性樹脂を使用する際に前記カバーの開口部にフィルタ板の前記開口部を除く部分が位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の医療用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの複数個をリング状に配置すると共に全てのLEDよりの光を予め設定した距離に集光させた医療用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における光源としてLEDを使用した照明装置としては、特開2007−88377号に開示された発明がある。この発明はLEDの発光面に光透過が可能な硝子等の材料で構成された角錐状のライトガイドに取付け、該ライトガイドによってLEDからの光が矩形状となるように構成し、該矩形状の光を対物レンズを介して拡大して照射するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−88377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した特許文献に開示されている発明にあっては、LEDを2段平行にして横方向に複数個を並べたものが開示されているが、このようなLEDの配置では、照射距離の変化によるパターン中心部での重なりが必ずしも全てで重なることがないので輝度が小さいといった問題があった。
【0005】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、同心円のリング状に複数のLEDを配置して、全てのLEDからの光を所定の距離において1つの矩形状に集光するようにしたので、実使用距離で照射パターンが変化してもパターンの中心部で全てのパターンが重なるため、パターン中心の照度が安定して確保でき、患者の口元を照射する輝度が高くなり治療が行い易くなり、また、前記矩形状の外周に光が漏れないことから患者に眩しさを与えることがない医療用照明装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医療用照明装置は前記した目的を達成せんとするもので
、リング状の基台と、該基台に
沿って環状に並べて取付けられたLED
を光源とする複数個の光源手段と、前記光源手段を覆う空洞のカバーとより構成し、前記光源手段からの光が、前記カバーの前面に開口された開口部から照射されるように形成され、全ての光源手段よりの光が予め設定した1つの距離において集光するパターンとなるよう前記基台の外周部を内周部より前記集光方向に傾斜
させ、前記光源手段を、LEDと、該LEDの照射面に近接して取付けられ、LEDよりの光を矩形状に収束して照射するライトガイドと、該ライトガイドの放射面と隙間を介して前記カバーの前記開口部裏面に取付けられた凸レンズとより構成し、前記ライトガイドと前記レンズとの間隔を該レンズの焦点距離より近づけると共に、前記レンズを前記LEDに対して定まった位置に配置することで、集光されたパターンの縁をぼかして照度段差を小さくしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の医療用照明装置は、前記レンズと前記カバーの前記開口部との間に光硬化性樹脂が反応する波長をカットする材料で形成したフィルタ板に光を透過する開口部を形成し、前記フィルタ板を前記カバーに対して回転自在に取付け、光硬化性樹脂を使用する際に前記カバーの開口部にフィルタ板の前記開口部を除く部分が位置するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は前記したように、全ての光源手段よりの光が予め設定した1つの距離において全ての光源手段よりの光が集光するパターンとなるようにしたので、このパターンでの輝度は高くなって患者の口元が明るくなるので、施術者による施術が明るい雰囲気の中で行うことができる。
【0011】
また、LEDよりの光を矩形状に収束して照射するライトガイド放射面と隙間を介してカバーの開口部裏面に取付けられた凸レンズより放射する構造としたので、全ての光源手段より放射される光は矩形状のパターンとなって患者の口元を矩形状に照射することとなり患者に眩しさを与えることがない。
【0012】
さらに、照射距離が変化した場合のパターン重なりは実使用距離で安定した明るく、重なりがずれた部分では、ライトガイドとレンズとの間隔を狭くすることで集光されたパターンの縁をぼかして照度段差を小さくしたことにより、パターン内の照度変化が緩やかで、施術者の目への負荷を軽減することが可能である。
【0013】
また、カバーに対して回転自在なフィルタ板に光硬化性樹脂が反応する波長をカットするフィルタ部と光を透過する開口部とを形成したことにより、光硬化性樹脂を扱う場合の施術には、フィルタ板を回転して光源手段よりの光をフィルタ部を介して放射することで光硬化性樹脂の硬化を防止することができ、また、光硬化性樹脂を扱わない場合の施術では、フィルタ板の開口部によって光源手段よりの光を透過させることで通常での光で施術が行える等の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る医療用照明装置の斜視図である。
【
図3】光源手段から予め設定した位置で全てのLEDよりの光によって矩形状に集光した状態を示す斜視図である。
【
図4】予め設定した集光位置より光源手段に近い位置での集光状態を示す線図である。
【
図5】
図4で設定した集光位置よりも光源手段に近い位置での集光状態を示す線図である。
【
図6】
図5での照射位置で「ぼかし」がない状態のX軸方向とY軸方向の相対照度を示すグラフである。
【
図7】
図5での照射位置でライトガイドとレンズを近づけて「ぼかし」た時のX軸方向とY軸方向の相対照度を示すグラフである。
【
図8】LEDより照射される光から光硬化性樹脂が反応する波長をカットするフィルタを回転させる構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る医療用照明装置の一実施例を
図1〜
図3と共に説明する。
1は治療椅子に着座している患者の顔に近づけたり離したりする公知のアーム装置(図示せず)に取付けて患者の口元を照明する照明装置本体にして、前記アームに取付けるためのリング状の基台1と、該基台1の前面側を覆う前記基台1と同じ大きさの中空のカバー2と、該カバー2内に収納された複数(図示では10個)の光源手段3とより構成されている。なお、前記カバー2の表面には開口部21が形成され、該開口部21には防塵のための透明板4が取付けられている。
【0016】
前記各光源手段3は、白色の光を発光するLED31と、該LED31を取付けた基板32と、一端が基板32に固定された無透過性の材料で形成された筒体33と、一端が前記LED31の照射面に近接し、他端が前記筒体33に支持された硝子やアクリル樹脂等の透明材で形成され、入光された光の輝度と色を均一化するライトガイド34と、該ライトガイド34を筒体33に固定するための支持板35と、前記筒体33の上方に固定され前記ライトガイド34から光を拡大投射する凸型のレンズ36とから構成されている。
【0017】
そして、LED31よりの光は前記ライトガイド34で導光・集光されて前記レンズ36に入光され、該レンズ36から矩形状のパターンとして放射される。4は前記カバー2の開口部21の表面に固定された防塵用の透明板である。
【0018】
このように構成した本発明の照射装置にあっては、全ての光源手段3におけるライトガイド34からの放射光が予め設定した位置A(
図3参照)に合わせ前記レンズ36の出射側先端がリング状に配置された全てのLED31を、該LED31の中心間を結ぶ円の直径に配置されるように各光源手段3を設定する。このように、光源手段3を配置することで照射装置よりの放射光は、全てのLED31よりの光の集合光となって輝度が高い状態で照射され、従って、施術者による施術を明るい雰囲気で行うことができる。
【0019】
そして、全てのLED31からの光が集合した
図3に示す位置Ammより照射装置が患者の口元に近づく位置Bと、全てのLED31からの光が集光する面積が小さくなって上下左右方向にズレが生じる(
図4参照)。さらに、患者の口元に近づく距離Cと、全てのLED31からの光が集光する面積はさらに小さくなると共に上下左右方向へのズレで生じる照度段差を各パターンの縁をぼかすことで解消できる(
図5参照)。
【0020】
また、実験を行って、ライトガイド34とレンズ36の距離が近づくようにレンズ36
の焦点距離よりレンズ36をライトガイド34側に近づけた時に、全てのLED31からの光が集光するパターンの縁がぼけて照度段差が小さくなって施術者の目への負荷を軽減することができた。
【0021】
前記位置Aの距離でパターンが明瞭な矩形状となるようにライトガイド34とレンズ36の距離を設定した時の照明パターン中心の照度分布は
図6に示すように、Y軸方向およびX軸方向のグラフにおいて、傾斜面の線に凹凸の段差が生じ、一方、ライトガイド34とレンズ36との距離を若干近づけパターンをぼかした時の照度分布は
図7に示すように、Y軸方向およびX軸方向のグラフにおいて、傾斜面の線に段差が殆ど生じなかったことから明らかなことである。
【0022】
前記した照明装置を利用しての施術に光硬化性樹脂を使用する場合に、口腔内を照明する前記無影灯の照明装置より光を照射すると光硬化性樹脂が反応し、治療中に意図しない硬化が行われてしまう。そこで、光硬化性樹脂が反応する波長をカットするフィルタを前記照明装置の前面に配置して光硬化性樹脂が反応するのを防止するフィルタ装置を
図8〜
図10と共に説明する。なお、前記した実施例と同じ符号は同一部材を示し説明は省略する。
【0023】
光源手段3の前面には光硬化性樹脂が反応する波長をカットするフィルタ板5と、該フィルタ板5に形成された開口部51を有するリング状のフィルタ板5が回転自在に取付けられ、また、フィルタ板5の外周には前記カバー2の外周に形成されたガイド孔23にガイドされた突片52が一体的に形成されている。
【0024】
このように構成したフィルタ装置にあっては、ハンドピースを使用しての施術等のように光硬化性樹脂の充填以外の施術にあっては、フィルタ板5の突片52を操作してフィルタ板5の開口部51が前記カバー2の開口部21と一致する位置までフィルタ板5を回転すると、光源手段3からの光はフィルタ板5の開口部51を介して照射されるので通常光での照明で施術を行うことが可能となる。
【0025】
そして、光硬化性樹脂を充填した時には、前記突片52を操作してフィルタ板5がカバー2の開口部21を塞ぐ位置まで回転すると、光源手段3からの光はフィルタ板5を介して照射されるので、光硬化性樹脂が反応する波長をカットすることから光硬化性樹脂の硬化が抑制される。
【0026】
前記した実施例では、フィルタ板5をカバー2の開口部21に取付けられている透明板4とレンズ36との間に配置したものについて説明したが、フィルタ板5はLED31よりの光を光硬化性樹脂が反応する波長をカットすることが目的であるので、図示していないがライトガイド
34とレンズ36との間に移動可能に配置してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
2 カバー
21 開口部
3 光源手段
31 LED
32
基板
33
筒体
34
ライトガイド
35
支持板
36 レンズ
4 透明板
5 フィルタ板
51 開口部