(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記代替検知制御モードにおいて、前記点火装置による点火動作の繰り返し回数を高めることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質形燃料電池装置。
前記制御手段は、前記代替検知制御モードでの前記点火促進制御において、前記複数の単セルの一端側から他端側に燃料ガスと共に流す酸化剤ガスの流量の抑制期間を延長し、前記特定の単セルから他の単セルへの火移り性を抑制することで前記複数の単セルにおける失火を防止することを特徴とする請求項4に記載の固体電解質形燃料電池装置。
前記制御手段は、前記代替検知制御モードでの前記点火促進制御において、前記改質器に供給する空気の流量を増加させ、前記改質器において部分酸化改質反応の進行を促進させることを特徴とする請求項5に記載の固体電解質形燃料電池装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0030】
本発明の一実施形態による燃料電池装置である固体電解質形燃料電池装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体電解質形燃料電池を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体電解質形燃料電池1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0031】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備えている。このハウジング6内部には、断熱材(図示せず)に囲まれて密封空間8が形成されている。この密封空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。
【0032】
この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14を備えている(
図6参照)。この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(単セル、
図5参照)から構成されている。燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0033】
燃料電池モジュール2の密封空間8の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成されている。この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガス(空気)とが燃焼し、燃焼ガス(排気ガス)を生成するようになっている。
【0034】
この燃焼室18の上方には、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器20が配置されている。上述した燃焼ガスの燃焼熱によって、改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、燃焼ガスの熱により外部から導入される酸化剤ガス(発電用空気)を加熱する熱交換器22が配置されている。
【0035】
補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
【0036】
さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガスである空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒーター46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒーター48とを備えている。これらの第1ヒーター46と第2ヒーター48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0037】
燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバーター54が接続されている。
【0038】
続いて、
図2‐
図4、
図6、
図7により、本発明の実施形態によるSOFCの燃料電池モジュール2の内部構造を説明する。
図2は、本発明の一実施形態による燃料電池装置のハウジング6が取り外された状態の燃料電池モジュール2を示す斜視図である。
図2においては、燃料電池モジュール2を構成する各燃料電池セルスタック14において、燃料電池セルユニット16が8本並ぶ方向をx軸方向としている。また、燃料電池セルユニット16が立設されて延びる方向をy軸方向とし、x軸及びy軸に直交する方向をz軸方向としている。
図3以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、
図2におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュール2を
図2のA方向から見た断面図である。
図4は、本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュール2を
図2のB方向から見た断面図である。
図6は、
図2に示す燃料電池モジュールから燃料電池セル集合体を覆うケーシングを取り外した状態を示す燃料電池モジュールの斜視図である。
図7は、
図6に示す燃料電池モジュールにおける蒸発混合器を示す斜視図である。
【0040】
図2‐
図4に示すように、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56により、全体が覆われている。
図6に示すように、燃料電池セル集合体12は、B方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状であり、上面12a、下面12b、
図2のA方向に沿って延びる長辺側面12cと、
図2のB方向に沿って延びる短辺側面12dを備えている。
【0041】
図3に示すように、燃料電池モジュール2内の密封空間8内の最下方部分には、蒸発混合器58が燃料電池セル集合体12の長辺側面12cに沿って設けられている。この蒸発混合器58は、燃焼ガスにより加熱して、水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)と酸化剤ガスである空気とを混合するためのものである。この蒸発混合器58の一端側には、
図2、
図4、
図7に示すように、被改質ガス供給管60と、水供給管62が接続されている。被改質ガス供給管60は、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44から、被改質ガス(原料ガス)及び改質用空気を導入するようになっている。
【0042】
図4に示すように、蒸発混合器58の他端側には、燃料供給管64の下端が接続されている。この燃料供給管64の上端は、改質器20の上流端に接続されている。この燃料供給管64により、燃料ガスが蒸発混合器58から改質器20へ供給されるようになっている。また、改質器20の下流端には、燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に進入して、水平方向に延びている。
【0043】
図3及び
図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。また、燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に均一に供給されるようになっている。燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路88(
図5参照)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0044】
続いて、発電用空気を燃料電池モジュール2へ供給するための構造を説明する。
図2‐4に示すように、改質器20の上方に、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12の上面12a及び短辺側面12d(
図2及び
図4の右側短辺側面)に沿って、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72が設けられている。
【0045】
なお、本実施形態においては、熱交換器22は、燃料電池セル集合体12の上面12a及び右側の短辺側面12dに沿って設けるようにしているが、これに限らず、熱交換器22を、右側の短辺側面12dのみに沿って設けても良いし、右側及び左側の両方の短辺側面12dのみに沿って設けても良いし、さらに、上面12a及び両側の短辺側面12dに沿って設けるようにしても良い。
【0046】
熱交換器22の短辺側面12dに沿って設けられた部分の下端の一端側には、
図2に示すように、発電用空気導入管74の導入口74aが取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット45から、発電用空気が、熱交換器22内に導入されるようになっている。
【0047】
図4及び
図8に示すように、熱交換器22の上側の他端側には、発電用空気流路72の出口ポート72aが形成されている。さらに、
図3に示すように、燃料電池モジュール2のケーシング56の幅方向(B方向:短辺側面方向)の両側の外側には、発電用空気供給路76が形成されている。発電用空気流路72の出口ポート72aから、発電用空気が供給されるようになっている。この発電用空気供給路76は、燃料電池セル集合体12の長手方向(長辺側面12c方向)に沿って形成されている。さらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78が、長手方向に沿って、等間隔に、形成されている。これらの吹出口78から吹き出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、下方から上方へ流れるようになっている。
【0048】
続いて、燃料ガスと発電用空気(酸化剤ガス)が燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を説明する。上述したように、熱交換器22内には、燃焼室18で燃料ガスと発電用空気(酸化剤ガス)が燃焼して生成された燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられている。
図4に示すように、これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃料電池セル集合体12の下方に位置し長手方向に延びる燃焼ガス排出室80が形成され、燃焼ガス配管70の下端側と燃焼ガス排出室80が接続されている。なお、この燃焼ガス排出室80内に、上述した蒸発混合器58が配置され、この蒸発混合器58内の燃料ガスが、高温の燃焼ガスにより、長手方向に沿って、加熱されるようになっている。さらに、燃焼ガス排出室80の下面には、燃焼ガス排出管82が接続され、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0049】
続いて、
図5を参照しながら、燃料電池セルユニット16について説明する。
図5は、本発明の一実施形態によるSOFCの燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図5に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0050】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内側(内部)に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0051】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0052】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0053】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0054】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0055】
続いて、
図9を参照しながら、本実施形態による固体電解質形燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサー類等について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による固体電解質形燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
【0056】
図9に示すように、固体電解質形燃料電池1は、制御部110を備えている。この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0057】
制御部110には、以下に説明する種々のセンサーからの信号が入力されるようになっている。可燃ガス検出センサー120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。CO検出センサー122は、本来燃焼ガス排出室80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。貯湯状態検出センサー124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0058】
電力状態検出センサー126は、インバーター54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。電力状態検出センサー126は、開回路電圧も検出できるように構成されている。発電用空気流量検出センサー128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。改質用空気流量センサー130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。燃料流量センサー132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0059】
水流量センサー134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。水位センサー136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。圧力センサー138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。排気温度センサー140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0060】
発電室温度センサー142は、
図3及び
図4に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
【0061】
燃焼室温度センサー144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。燃焼室温度センサー144は、
図3及び
図4に示すように、燃料電池セル集合体12と点火装置83との間に設けられている。燃焼室温度センサー144は、燃料電池セル84に点火されたか否かを判断するための点火確認用の温度センサー(第一温度センサー)としても機能している。排気ガス室温度センサー146は、燃焼ガス排出室80の排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0062】
改質器温度センサー148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。改質器温度センサー148は、
図3及び
図4に示すように、改質器20の入口側と出口側とのそれぞれの近傍に設けられている。外気温度センサー150は、固体電解質形燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサーを設けるようにしても良い。
【0063】
これらのセンサー類からの信号は、制御部110に送られる。制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。また、制御部110は、インバーター54に、制御信号を送り、電力供給量を制御するようになっている。
【0064】
続いて、
図10を参照しながら、本実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)による起動時の動作を説明する。
図10は、本発明の一実施形態による固体電解質形燃料電池(SOFC)の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【0065】
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、即ち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路に電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0066】
先ず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を、第1ヒーター46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。また、同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を、第2ヒーター48を経由して燃料電池モジュール2の熱交換器22へ供給する。この発電用空気は、熱交換器22を経由して、発電室10及び燃焼室18に到達する。
【0067】
この直ぐ後、燃料流量調整ユニット38から燃料ガスが供給される。この燃料ガスに改質用空気が混合され、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0068】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0069】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。
C
mH
n+xO
2 → bCO+cH
2 (1)
【0070】
この部分酸化改質反応POXは、発熱反応であるので、起動性が良好となる。この発熱反応によって昇温された燃料ガスは、燃料供給管64により燃料電池セルスタック14の下方に供給される。これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱される。燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱される。この結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能となっている。この部分酸化改質反応POXが進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0071】
部分酸化改質反応POXの開始後、改質器温度センサー148により検出された改質器20の温度、及び発電室温度センサー142により検出された燃料電池セルスタック14の温度に基づいて、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスの改質器20への供給が開始される。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応POXと後述する水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。
【0072】
このオートサーマル改質反応ATRは、熱的に内部バランスが取れるので、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。即ち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応POXによる発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応SRによる吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応ATRが進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0073】
式(2)に示すオートサーマル改質反応ATRの開始後、改質器温度センサー148により検出された改質器20の温度、及び発電室温度センサー142により検出された燃料電池セルスタック14の温度に基づいて、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給が停止されると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。
C
mH
n+xO
2+yH
2O → bCO+cH
2 (2)
【0074】
これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)の水蒸気改質反応SRが進行する。
C
mH
n+xH
2O → bCO+cH
2 (3)
【0075】
この水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であるため、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応SRが進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0076】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83により点火した後、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR、水蒸気改質反応SRが、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する。
図10に示すように、起動工程においては、発電室10内の温度上昇と、燃料電池セルスタック14の開回路電圧OCVとが相関関係にある。以上の起動処理が終了した後、燃料電池モジュール2からインバーター54に電力が取り出される。即ち、発電が開始される。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。
【0077】
発電開始後においても、改質器20の温度を維持するために、燃料電池セル84で発電に消費される燃料ガス及び発電用空気の量よりも多い燃料ガス及び発電用空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応SRで発電が進行する。
【0078】
図10に示す起動工程においては、部分酸化改質反応(POX)工程、オートサーマル改質反応(ATR)工程、及び水蒸気改質反応(SR)工程を、それぞれ単一の工程として説明したけれども、それぞれを細分化した工程とすることも好ましい。POX工程を、POX1工程及びPOX2工程に細分化し、ATR工程を、ATR1工程及びATR2工程に細分化し、SR工程を、SR1工程及びSR2工程に細分化した例を説明する。
【0079】
まず、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これらを起動させ、改質用空気(酸化剤ガス)及び発電用空気を燃料電池モジュール2に供給する。なお、供給が開始される改質用空気の供給量は10.0(L/min)、発電用空気の供給量は100.0(L/min)に設定される。
【0080】
次いで、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送って、改質器20への燃料ガス供給を開始する。これにより、改質器20へ送り込まれた燃料ガス及び改質用空気は、改質器20、燃料供給管64、マニホールド66を介して各燃料電池セルユニット16内に送り込まれる。各燃料電池セルユニット16内に送り込まれた燃料ガス及び改質用空気は、各燃料電池セルユニット16の燃料ガス流路98上端から流出する。なお、供給が開始される燃料ガスの供給量は6.0(L/min)に設定されている。
【0081】
さらに、制御部110は、点火装置83に信号を送り、燃料電池セルユニット16から流出する燃料ガスに点火する。これにより、燃焼室18内で燃料ガスが燃焼され、これによって生成した排気ガスにより、その上方に配置された改質器20が加熱されると共に、燃焼室18、発電室10、及びその中に配置された燃料電池セルスタック14の温度(以下「セルスタック温度」という)も上昇する。燃料ガス流路98を含む燃料電池セルユニット16及びその上端部位は燃焼部に相当する。
【0082】
改質器20が加熱されることにより、改質器20の温度(以下「改質器温度」という)が300℃程度まで上昇すると、改質器20内においては、部分酸化改質反応(POX)が発生する(POX1工程開始)。部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質器20は、部分酸化改質反応の発生により、その反応熱によっても加熱されるようになる。
【0083】
さらに温度が上昇し、改質器温度が350℃に達すると(POX2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を増加させる(POX2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は5.0(L/min)に変更され、改質用空気供給量は18.0(L/min)に変更される。これらの供給量は、部分酸化改質反応を発生させるために適切な供給量である。即ち、部分酸化改質反応が発生し始める初期の温度領域においては、供給する燃料ガスの割合を多くすることにより、燃料ガスに確実に着火させる状態を形成すると共に、その供給量を維持して着火を安定させる(
図9の「POX1」工程参照)。さらに、安定して着火され、温度が上昇した後には、部分酸化改質反応を生成するために必要にして十分な燃料ガス供給量として、燃料の浪費を抑えている。
【0084】
次に、改質器温度が600℃以上、且つ、セルスタック温度が250℃以上になると(ATR1移行条件)、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給を開始させる(ATR1工程開始)。これにより、改質用空気供給量は8.0(L/min)に変更され、水供給量は2.0(cc/min)にされる。改質器20内に水(水蒸気)が導入されることにより、改質器20内で水蒸気改質反応も発生するようになる。即ち、ATR1工程においては、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在したオートサーマル改質(ATR)が発生するようになる。
【0085】
セルスタック温度は、発電室10内に配置された発電室温度センサー142によって測定されている。発電室内の温度とセルスタック温度は、厳密には同一ではないが、発電室温度センサーによって検出される温度はセルスタック温度を反映したものであり、発電室内に配置された発電室温度センサーによりセルスタック温度を把握することができる。なお、本明細書において、セルスタック温度とは、セルスタック温度を反映した値を指示する任意のセンサーにより測定された温度を意味するものとする。
【0086】
さらに、改質器温度が600℃以上、且つ、セルスタック温度が400℃以上になると(ATR2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させる。また、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量を増加させる(ATR2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は4.0(L/min)に変更され、改質用空気供給量は4.0(L/min)に変更され、水供給量は3.0(cc/min)に変更される。改質用空気供給量が減少され、水供給量が増加されることにより、改質器20内においては、発熱反応である部分酸化改質反応の割合が減少し、吸熱反応である水蒸気改質反応の割合が増加する。これにより、改質器温度の上昇が抑制され、一方、改質器20から受けるガス流により燃料電池セルスタック14が昇温されることによって、セルスタック温度は改質器温度に追い付くように昇温していくので、両者の温度差が縮小され、両者は安定的に昇温されていく。
【0087】
次に、改質器温度とセルスタック温度の温度差が縮まり、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が600℃以上になると(SR1移行条件)、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気の供給を停止する。また、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量を増加させる(SR1工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は3.0(L/min)に変更され、水供給量は8.0(cc/min)に変更される。改質用空気の供給が停止されることにより、改質器20内において部分酸化改質反応は発生しなくなり、水蒸気改質反応のみが発生するSRが開始される。
【0088】
改質器温度とセルスタック温度の温度差がさらに縮まり、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が650℃以上になると(SR2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量も減少させる。また、制御部110は、発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、発電量空気の供給量も減少させる(SR2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は2.3(L/min)に変更され、水供給量は6.3(cc/min)に変更され、発電用空気供給量は80.0(L/min)に変更される。
【0089】
SR1工程では、改質器温度及びスタック温度を発電可能な温度付近まで上昇させるため、燃料ガス供給量及び水供給量を高めに保持している。その後、SR2工程では、燃料ガス流量及び水供給量を低減して、改質器温度及びセルスタック温度の温度分布を落ち着かせ、発電可能な温度範囲に安定化させる。
【0090】
制御部110は、SR2工程において、所定の低減速度で燃料ガス供給量を含む各供給量をSR2工程用の供給量に低減し、所定の発電移行期間だけ維持する。これにより、発電移行までに、改質器20や燃料電池セルスタック14等を所定の発電移行期間だけ安定した状態に保持し、燃料電池モジュール2内の改質器温度やセルスタック温度等の温度分布を落ち着かせることができる。つまり、発電移行期間は、供給量を低減後の安定化期間として機能する。
【0091】
所定の発電移行期間が経過した後、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が700℃以上であると(発電工程移行条件)、燃料電池モジュール2からインバーター54に電力を出力させ、発電工程に移行して発電を開始する(発電工程開始)。
【0092】
続いて、本実施形態に係る固体電解質形燃料電池1において、発電室温度センサー142(第二温度センサー)、燃焼室温度センサー144(第一温度センサー)、及び改質器温度センサー148(第二温度センサー)の少なくとも一つに異常(エラー)が発生した場合の処理について
図11〜
図13を参照しながら説明する。
図11は、温度センサーエラー(異常)が発生した場合の処理を説明するためのフローチャートである。
図12は、温度センサーエラーが発生した場合であって、起動期間における処理を説明するためのフローチャートである。
図13は、温度センサーエラーが発生した場合であって、発電期間における処理を説明するためのフローチャートである。
【0093】
図11に示すように、温度センサーエラーが発生すると、制御部110は、フラグF=2となっているか判断する(ステップS01)。フラグF=2となっていれば、ステップS06の処理に進み、フラグF=2となっていなければ、ステップS02の処理に進む。
【0094】
ステップS02において、制御部110は、温度センサーエラーの状況がシステム停止エラーの状況であるか判断する。具体的には、二つある改質器温度センサー148の双方が同時にエラー状態となるか、発電室温度センサー142、燃焼室温度センサー144、及び改質器温度センサー148の全てがエラー状態となっていれば、システム停止エラーの状況であると判断する。温度センサーエラーの状況がシステム停止エラーの状況となっていればステップS06の処理に進み、温度センサーエラーの状況がシステム停止エラーの状況となっていなければステップS03の処理に進む。
【0095】
ステップS03において、制御部110は、温度センサーエラーの状況が暫定運転継続エラーの状況であるか判断する。温度センサーエラーの状況が暫定運転継続エラーの状況となっていればステップS05の処理に進み、温度センサーエラーの状況が暫定運転継続エラーの状況となっていなければステップS04の処理に進む。
【0096】
ステップS04において、制御部110は、正常運転を行うものとして、フラグF=0を設定する。ステップS05において、制御部110は、異常時暫定運転継続制御を行うものとして、フラグF=1を設定する。ステップS06において、制御部110は、システム停止を行うものとして、フラグF=2を設定する。
【0097】
続いて、
図12を参照しながら、起動時の制御について説明する。ステップS11において、制御部110は、フラグF=1となっているか判断する。フラグF=1となっていれば暫定継続運転を行うためにリターンする。フラグF=1となっていなければステップS12の処理に進む。
【0098】
ステップS12において、制御部110は、固体電解質形燃料電池1の運転状態が起動期間であるか判断する。固体電解質形燃料電池1の運転状態が起動期間であれば、ステップS13の処理に進み、固体電解質形燃料電池1の運転状態が起動期間でなければ、リターンする。
【0099】
ステップS13において、制御部110は、燃焼室温度センサー144がエラー状態となっているか判断する。燃焼室温度センサー144がエラー状態となっていれば、ステップS16の処理に進み、燃焼室温度センサー144がエラー状態となっていなければ、ステップS14の処理に進む。
【0100】
ステップS14において、制御部110は、発電室温度センサー142がエラー状態となっているか判断する。発電室温度センサー142がエラー状態となっていれば、ステップS17の処理に進み、発電室温度センサー142がエラー状態となっていなければ、ステップS15の処理に進む。
【0101】
ステップS15において、制御部110は、改質器温度センサー148がエラー状態となっているか判断する。改質器温度センサー148がエラー状態となっていれば、ステップS18の処理に進み、改質器温度センサー148がエラー状態となっていなければ、リターンする。
【0102】
ステップS16において、制御部110は、燃料電池セル集合体12に含まれる燃料電池セル84(単セル)において燃料ガスに点火したか否かを判定する点火判定を、燃焼室温度センサー144による判定から、改質器温度センサー148による判定に切り替える。更に、制御部110は、点火装置83による点火頻度を10秒サイクルで3回行う頻度から、15秒点火して5秒停止を5回行う頻度へと切り替える。更に、制御部110は、点火装置83において点火プラグに印加する電圧を20%上昇させる。更に、制御部110は、点火判定において、3秒間で100℃上昇すれば点火したと判定するところ、10秒間で50℃上昇すれば点火したものと判定するように切り替える。更に、制御部110は、燃料電池セル集合体12に供給する空気の流量を10%低下させる。更に、制御部110は、改質器20に供給する空気の流量を5%上昇させる。これらステップS16の処理が終了するとリターンする。
【0103】
ステップS17において、制御部110は、燃料電池セル集合体12の温度であるスタック温度の推定を、発電室温度センサー142を用いた推定から、OCVの電圧値に基づく推定へと切り替える。
図10に示したように、スタック温度とOCVの電圧値との間には相関関係があるため、この関係を利用してスタック温度を推定するものである。更に、制御部110は、改質器20の温度値に基づく閾値は20℃上昇させる。更に、制御部110は、オートサーマル改質反応(ATR)工程への移行条件を40℃上昇させ、水蒸気改質反応(SR)工程への移行条件を20℃上昇させる。更に、制御部110は、発電工程への移行条件を満たした温度となった後、3分間は発電工程への移行を制限する制御を実行する。更に、制御部110は、発電工程に移行後10分間は、定格最大値を400Wに制限する制御を実行する。更に、制御部110は、発電工程に移行後10分間は、供給する燃料ガスの流量を5%上昇させる。これらステップS17の処理が終了するとリターンする。
【0104】
ステップS18において、制御部110は、改質器温度センサー148の内、エラー状態となっている側の改質器温度センサー148からの読み込みを禁止する。更に、制御部110は、改質器温度センサー148から読み込んだ改質器20の温度値を20℃上昇させる。更に、制御部110は、発電工程への移行条件を満たした温度となった後、3分間は発電工程への移行を制限する制御を実行する。更に、制御部110は、発電工程に移行後10分間は、定格最大値を400Wに制限する制御を実行する。更に、制御部110は、発電工程に移行後10分間は、供給する燃料ガスの流量を5%上昇させる。これらステップS18の処理が終了するとリターンする。
【0105】
続いて、
図13を参照しながら、発電時の制御について説明する。ステップS21において、制御部110は、フラグF=1となっているか判断する。フラグF=1となっていれば暫定継続運転を行うためにリターンする。フラグF=1となっていなければステップS22の処理に進む。
【0106】
ステップS22において、制御部110は、固体電解質形燃料電池1の運転状態が発電期間であるか判断する。固体電解質形燃料電池1の運転状態が発電期間であれば、ステップS23の処理に進み、固体電解質形燃料電池1の運転状態が発電期間でなければ、リターンする。
【0107】
ステップS23において、制御部110は、燃焼室温度センサー144がエラー状態となっているか判断する。燃焼室温度センサー144がエラー状態となっていれば、ステップS26の処理に進み、燃焼室温度センサー144がエラー状態となっていなければ、ステップS24の処理に進む。
【0108】
ステップS24において、制御部110は、発電室温度センサー142がエラー状態となっているか判断する。発電室温度センサー142がエラー状態となっていれば、ステップS27の処理に進み、発電室温度センサー142がエラー状態となっていなければ、ステップS25の処理に進む。
【0109】
ステップS25において、制御部110は、改質器温度センサー148がエラー状態となっているか判断する。改質器温度センサー148がエラー状態となっていれば、ステップS28の処理に進み、改質器温度センサー148がエラー状態となっていなければ、リターンする。
【0110】
ステップS26において、制御部110は、燃焼室温度センサー144からの読み込みを禁止する。ステップS26の処理が終了するとリターンする。
【0111】
ステップS27において、制御部110は、燃料電池セル集合体12の温度であるスタック温度の推定を、発電室温度センサー142を用いた推定から、改質器温度センサー148を用いた推定へと切り替える。更に、制御部110は、改質器温度センサー148が読み込んだ温度値を20℃上昇させる。更に、制御部110は、発電運転において異常であると判断する温度の上限閾値を10℃低下させると共に、下限閾値を10℃上昇させる。
これらステップS27の処理が終了するとリターンする。
【0112】
ステップS28において、制御部110は、改質器温度センサー148の内、エラー状態となっている側の改質器温度センサー148からの読み込みを禁止する。更に、制御部110は、改質器温度センサー148から読み込んだ改質器20の温度値を20℃上昇させる。更に、制御部110は、発電運転において異常であると判断する温度の上限閾値を10℃低下させると共に、下限閾値を10℃上昇させる。これらステップS28の処理が終了するとリターンする。
【0113】
上述したように本実施形態において制御部110は、燃焼室温度センサー144(第一温度センサー)の温度検出に異常が発生したか否かを判定し、当該判定の結果、燃焼室温度センサー144に異常が発生していると判断した場合に、他の温度センサー(第二温度センサー)による温度検出によって特定の単セルにおける燃料ガスの点火を検知する代替検知制御モード(
図12のステップS13,ステップS16)を実行するものである。
【0114】
本実施形態に係る固体電解質形燃料電池1は、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う固体電解質形燃料電池装置であるから、その内部に配置される燃焼室温度センサー144及び他の温度センサー(発電室温度センサー142,改質器温度センサー148)は、高温の過酷な使用環境に晒される。一方で、固体電解質形燃料電池1は、発電装置であるから温度センサーの一部に異常が発生しても、極力運転を継続することが求められる。そこで、特定の単セルにおける燃料ガスの点火を、特定の単セルの他端側の温度上昇を検出することによって検知する燃焼室温度センサー144に異常が発生した場合に、制御部110が他の温度センサーによる温度検出によって特定の単セルにおける燃料ガスの点火を検知する代替検知制御モードを実行するものとしている。このように、第一温度センサーに異常が発生した場合であっても、正常な第二温度センサーを利用して代替検知制御モードを実行することにより、温度センサーの一部に異常が発生しても、即座に運転停止することなく、使用者に使用不可という負担を負わせることがない。
【0115】
本実施形態では、燃焼室温度センサー144の代替として改質器温度センサー148を用い、制御部110は、代替検知制御モードにおいて、点火装置83による点火性能を高めるように、点火装置83の点火頻度及び点火力を変更する制御を行っている(
図12のステップS16)。
【0116】
このように、代替温度センサーである改質器温度センサー148が改質器20の温度を検出するものであるので、単セルにおける燃料ガスの点火を直接的に検知することは困難であるところ、代替検知制御モードにおいて、点火装置83による点火性能を高めるように制御しているので、点火不良状態のまま運転を継続することを回避することができる。
【0117】
本実施形態では、制御部110は、点火装置83による点火動作の後、所定期間内に所定温度上昇した場合に特定の単セルにおいて燃料ガスに点火したものと検知するものであって、代替検知制御モードにおいては、所定期間を延長すると共に、点火装置83の点火頻度を高めている。
【0118】
上述したように、燃焼室温度センサー144による点火検知から改質器温度センサー148による点火検知に切り替えているので、点火装置83による点火性能を高めたとしても、確実に点火したか否かを判断することは困難なものとなる。そこで、所定期間内に所定温度上昇した場合に特定の単セルにおいて燃料ガスに点火したものと検知するところ、その所定期間を延長する(
図12のステップS16では、3秒から10秒に延長)ことで、特定の単セルにおける点火検知の判断基準を緩和している。このように特定の単セルにおける点火検知の判断基準を緩和することに加え、点火装置83の点火頻度を高めることで、特定の単セルにおける点火の誤判断及びその誤判断に起因する誤制御を回避するものとしている。
【0119】
本実施形態では、制御部110は、代替検知制御モードにおいて、点火装置83による点火動作の繰り返し回数を高めている。点火装置83による点火動作の繰り返し回数を高めることで、特定の単セルにおける点火不良を確実に回避すると共に、特定の単セルにおいて点火しているにもかかわらず異常処理させてしまうことを回避することができる。
【0120】
本実施形態では、制御部110は、特定の単セルにおける燃料ガスの点火を促進する点火促進制御を行うものであり、制御部110は、代替検知制御モードにおいて、点火促進制御の実行期間を延長している。
【0121】
本実施形態に係る固体電解質形燃料電池1の起動工程では、部分酸化改質反応工程(POX工程)、オートサーマル改質反応工程(ATR工程)、水蒸気改質反応工程(SR工程)と工程が進行するにつれて内部温度が上昇するものであり、所定の温度を超えれば複数の単セル全てにおいて燃料ガスが自然着火する。この自然着火に至る温度帯域においては、特に内部の温度を的確に把握する必要がある。そこで、起動工程の初期工程である部分酸化改質反応工程(POX工程)では、単セルにおいて燃料ガスが着火していないとそもそもPOX反応が進行していないことを利用し、改質器20の温度を検出する改質器温度センサー148によって改質器20の温度がPOX反応による温度まで上昇していることを検出することで、単セルにおける燃料ガスの着火を検知するものとしている。更に、このような点火・失火の判断が困難である期間において、点火促進制御の実行期間を延長することで、確実に特定の単セルにおける燃料ガスの点火を促進し、失火のリスクを低減するものとしている。
【0122】
本実施形態では、制御部110は、代替検知制御モードでの点火促進制御において、複数の単セルの一端側から他端側に燃料ガスと共に流す酸化剤ガス(空気)の流量の抑制期間を延長し、特定の単セルから他の単セルへの火移り性を抑制することで複数の単セルにおける失火を防止している(
図12のステップS16)。
【0123】
特定の単セルにおける燃料ガスの点火を直接的に検知する燃焼室温度センサー144に異常が発生した場合においては、単セルにおける突発的な失火を検知することは困難である。そこで、複数の単セルに供給する酸化剤ガス(空気)の供給量を抑制することで、特定の単セルから他の単セルへの火移りを抑制することと引き換えに、複数の単セルにおける失火を防止するものとしている。
【0124】
本実施形態では、制御部110は、代替検知制御モードでの点火促進制御において、改質器20に供給する空気の流量を増加させ、改質器20において部分酸化改質反応の進行を促進させている(
図12のステップS16)。このように、点火促進制御において改質器20に供給する空気の流量を増加させ、改質器20において部分酸化改質反応の進行を促進させることで、単セルにおける燃料ガスの点火に応じた改質器20の温度上昇を促進させ、点火判定を確実に行えるものとしている。
【0125】
また上述したように本実施形態において、制御部110は、容器内温度センサー(発電室温度センサー142、燃焼室温度センサー144、改質器温度センサー148)の温度検出に異常が発生したか否かを判定し、当該判定の結果、容器内温度センサーに異常が発生していると判断した場合に、電力状態センサー(電力状態検出センサー126)による開回路電圧検出によって運転状態の制御を行う代替制御モード(
図12のステップS14,ステップS17)を実行する。
【0126】
これは、容器内温度と開回路電圧とが相関関係にあることを本発明者らが発見し、この知見に基づいて、開回路電圧を利用した運転状態の制御を行うものである。このように、容器内温度センサーに異常が発生した場合であっても、正常な電力状態センサーを利用して代替制御モードを実行することにより、容器内温度センサーの一部に異常が発生しても、即座に運転停止することなく、使用者に使用不可という負担を負わせることがない。
【0127】
本実施形態では、制御部110は、複数の温度センサー(発電室温度センサー142、燃焼室温度センサー144、改質器温度センサー148)の少なくとも一つが正常であれば電力状態検出センサー126と併用することで代替制御モードを実行し、複数の温度センサーの全てに異常が発生していれば代替制御モードを実行しない。
【0128】
上述したように開回路電圧と容器内温度とは相関関係にあるので、容器内がある程度の温度帯域の中にあることは推定することができる。しかしながら、容器内の温度を正確に知ることや、容器内の温度がどのような傾向で推移しているのかを知ることは困難である。そこでこの好ましい態様では、複数の温度センサーの少なくとも一つが正常であれば電力状態センサーと併用することで、開回路電圧による温度推定と正常な温度センサーによる温度検出とを併用することが可能となり、容器内温度の把握精度を向上することができる。また、容器内温度センサーの全てが異常であれば、代替制御モードを実行しないので、温度センサーにおける異常以外の不具合を拡大させることを防止できる。
【0129】
本実施形態では、制御部110は、発電室温度センサー142に異常が発生していると判断した場合に、電力状態検出センサー126による開回路電圧検出と、改質器温度センサー148による改質器温度検出とによって、部分酸化改質反応工程から、オートサーマル改質反応工程を経て、水蒸気改質反応工程に至るように工程を遷移させる起動工程を制御し、代替制御モードを実行する(
図12のステップS17)。
【0130】
本実施形態では、起動工程中において発電や負荷追従運転を行っていないので、容器内温度と開回路電圧との相関性はより高まる。そこで、起動工程において改質器温度検出と併用して開回路電圧検出を用いた代替制御モードを実行することで、固体電解質形燃料電池1の運転を停止せずに起動工程を進行させることができる。
【0131】
本実施形態では、制御部110は、起動工程における工程遷移の移行温度条件を、代替制御モードにおいては高い温度となるように変更する(
図12のステップS17)。
【0132】
上述したように開回路電圧と容器内温度とは相関関係にあるので、容器内がある程度の温度帯域の中にあることは推定することができる。しかしながら、容器内の温度を正確に知ることや、容器内の温度がどのような傾向で推移しているのかを知ることは困難である。そこで起動工程における工程遷移の移行温度条件を、代替制御モードにおいては高い温度となるように変更することで、容器内温度が上がらないまま工程遷移が実行されてしまうことを抑制することができ、温度センサーにおける異常以外の不具合を拡大させることを防止できる。
【0133】
本実施形態では、制御部110は、改質器温度センサー148が検出する改質器温度に基づく移行温度条件を、代替制御モードにおいては高い温度となるように変更する(
図12のステップS17)。
【0134】
このように、吸熱反応を起こす改質器20の温度が十分高くなったことを利用して工程遷移を実行することができるので、容器内の温度も必要な温度まで高くなっていると推定することを利用し、改質器温度センサー148が検出する改質器温度に基づく移行温度条件を、代替制御モードにおいては高い温度となるように変更している。従って、容器内温度が上がらないまま工程遷移が実行されてしまうことを抑制することができ、温度センサーにおける異常以外の不具合を拡大させることを防止できる。
【0135】
本実施形態では、制御部110は、起動工程から発電工程に移行する際に、水蒸気改質反応工程から発電工程への移行温度条件を満たした後、水蒸気改質反応工程を継続する期間を延長する(
図12のステップS17)。
【0136】
本実施形態では、容器内温度が十分に上がらないまま発電工程へ移行してしまうと、温度センサー以外の部分においても多大な不具合が発生するおそれがある。そこで、水蒸気改質反応工程から発電工程への移行温度条件を満たした後、水蒸気改質反応工程を継続する期間を延長することで、容器内温度をより確実に上昇させることができる。
【0137】
本実施形態では、制御部110は、起動工程から発電工程に移行した後、発電出力の上限値を、代替制御モードにおいては低い出力となるように変更する(
図12のステップS17)。
【0138】
このように、代替制御モードを実行している際に発電工程に移行した場合には、発電出力の上限値を抑制することで、容器内温度のバラつきによる影響を最小限のものとすることができる。また、発電出力を抑制することで、容器内温度を均一に上昇させる効果を奏することもできる。
【0139】
本実施形態では、制御部110は、代替制御モードでの発電工程においては、燃料利用率及び発電出力の少なくとも一方を低下させる(
図12のステップS17)。
【0140】
このように、代替制御モードでの発電工程において、燃料利用率及び発電出力の少なくとも一方を低下させることで、容器内温度が降下する要因を排除し、温度センサーにおける異常以外の不具合を拡大させることを防止できる。
【0141】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。