(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マルチプレクサを、入力された信号のうち1つの信号を選択して出力する2つのマルチプレクサで構成するようにしたことを特徴とする請求項2若しくは請求項3記載の信号入力回路の診断装置。
【背景技術】
【0002】
プロセス制御システムは、信頼性が何より重要視される。
図15に、外部から入力されるプロセス信号および信号入力回路の動作を診断することができる診断装置の構成を示す。
【0003】
図15において、信号入力回路10はマルチプレクサ11および12、プログラマブルゲインアンプ13および14,アナログデジタル変換器15で構成される。
【0004】
マルチプレクサ11、12は4つの入力端子IN1〜IN4、選択信号入力端子SEL、および出力端子OUTを有している。マルチプレクサ11、12は、選択信号入力端子SELに入力される2ビットの選択信号に基づいて入力端子IN1〜IN4に印加される信号の1つを選択し、この選択した信号を出力端子OUTに出力する。
【0005】
マルチプレクサ11の入力端子IN1〜IN4には、それぞれ基準電圧RefA、入力信号+、基準電圧RefB、グランド電位GNDが入力される。基準電圧RefA、RefBは外部から与えられるか、信号入力回路10に内蔵される。
【0006】
マルチプレクサ12の入力端子IN2には入力信号−が入力され、IN1、IN3、IN4にはグランド電位GNDが入力される。なお、入力信号+、入力信号−は、差動入力信号のプラス側、マイナス側を意味する。また、基準電圧RefA、RefBは入力信号より大きな電圧とし、温度補正等で使用される。
【0007】
プログラマブルゲインアンプ13、14にはそれぞれマルチプレクサ11、12の出力信号が入力される。プログラマブルゲインアンプ13、14はゲインを設定できるアンプであり、入力された信号を設定されたゲイン倍してアナログデジタル変換器15に出力する。アナログデジタル変換器15は、入力された2つの信号の差分をデジタル値に変換して出力する。
【0008】
診断部20はADポート21、IOポート22、および診断操作部23で構成される。アナログデジタル変換器15が出力するデジタル値は、ADポート21を経由して診断操作部23に入力される。診断操作部23は入力されたデジタル値に基づいて信号入力回路10に入力される信号、および信号入力回路10を診断し、またIOポート22に選択信号を出力する。IOポート22は、入力された選択信号をマルチプレクサ11、12の選択信号入力端子SELに出力する。診断部20はマイクロプロセッサで構成される。
【0009】
次に、この装置の動作を説明する。マルチプレクサ11、12は、2ビットの選択信号”00”、”01”、”10”、”11”に対して、それぞれ入力端子IN1〜IN4に印加された信号を出力端子OUTに出力する。なお、マルチプレクサ11、12には同じ選択信号が入力される。
【0010】
最初に、診断操作部23は選択信号”01”を出力する。マルチプレクサ11、12は入力信号+、−を選択し、アナログデジタル変換器15は入力された入力信号の差分をデジタル値に変換して、診断部20に出力する。診断操作部23は、入力されたデジタル値が範囲外であると、入力信号(入力信号+、入力信号−)の異常であると判定する。
【0011】
次に、診断操作部23は選択信号”00”、”10”、”11”をこの順に出力する。アナログデジタル変換器15の出力デジタル値は、それぞれ基準電圧RefA、RefB、0になる。診断操作部23はこれらのデジタル値を評価し、範囲外であると基準電圧RefA、RefBあるいは信号入力回路10の異常であると判定する。信号入力回路10の異常には、選択信号を伝送する線路の異常、プログラマブルゲインアンプ13、14の異常等がある。
【0012】
特許文献1には、診断によって装置のA/D変換機能を監視して、装置の信頼性を保持することができる信号監視制御装置が記載されている。特許文献1では、制御ユニットからA/D変換コマンドと診断コマンドを出力し、A/D変換コマンドが出力されると、センサからの監視対象アナログ信号をA/D変換ユニットに入力し、診断コマンドが出力されると、基準電圧をA/D変換ユニットに入力するようにする。適切な間隔で診断コマンドを出力するようにすることにより、データサンプリングに影響を与えることなく、監視対象を監視できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような診断装置には、次のような課題があった。
基準電圧RefA、RefB、グランド電位GNDは、信号入力回路10の信号の温度補正を行う際に重要であるが、信号入力回路10の診断範囲を向上させるためには基準電圧の数を増加させなければならないので、コストが増加してしまうという課題があった。
【0015】
また、製造時の不良やトラブル時等では、故障箇所を特定できた方がよい。プログラマブルゲインアンプ13、14のゲインが倍になる倍故障や半分になる半分故障が発生したときは基準電圧RefA、RefBの値を正常値と比較することによって検出することができるが、どちらのプログラマブルゲインアンプが故障したかを判断することができないという課題もあった。
【0016】
特許文献1記載の信号監視制御装置は、A/D変換器の故障を検出することはできるが、その他の要素の故障を検出することができないという課題があった。
【0017】
本発明の目的は、診断範囲を広く取ることができ、かつ故障箇所を特定することができる、簡単な構成の信号入力回路の診断方法およびその装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
アナログ入力信号および基準電圧を信号入力回路に入力し、これらの信号を用いて診断を行う信号入力回路の診断方法において、
アナログ入力信号、基準電圧、グランド電位が入力され、
マルチプレクサを用いてこれら入力された信号のうち2つの信号を選択して、その差を演算することにより、アナログ入力信号電圧、基準電圧、基準電圧を極性反転した電圧、同じ信号の差電圧を測定する工程と、
前記アナログ入力信号電圧が想定された範囲内であるかを判定し、範囲外であると前記アナログ入力信号の異常と判定し、前記基準電圧および前記基準電圧を極性反転した電圧が範囲内であるかを判定し、両方が範囲外であると前記基準電圧が異常と判定し、前記同じ信号の差電圧が想定された範囲内であるかを判定し、範囲外であると前記マルチプレクサに選択信号を出力する選択線の異常あるいは前記マルチプレクサの固着故障であると判定する工程と、
を具備したものである。簡単な構成で多くの異常を検出することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、
アナログ入力信号および基準電圧を信号入力回路に入力し、これらの信号を用いて診断を行う信号入力回路の診断装置において、
アナログ入力信号、基準電圧、グランド電位が入力され、
これらの信号のうち2つを選択して出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサが選択した2つの信号の差を演算する差分演算部と、
を具備した信号入力回路と、
前記信号入力回路を操作して、前記アナログ入力信号電圧、前記基準電圧、この基準電圧を極性反転した電圧、および前記差分演算部に同じ信号を入力した電圧を測定し、
前記アナログ入力信号電圧が想定された範囲内であるかを判定し、範囲外であると前記アナログ入力信号の異常と判定し、前記基準電圧および前記基準電圧を極性反転した電圧が範囲内であるかを判定し、両方が範囲外であると前記基準電圧が異常と判定し、前記同じ信号の差電圧が想定された範囲内であるかを判定し、範囲外であると前記マルチプレクサに選択信号を出力する選択線の異常あるいは前記マルチプレクサの固着故障であると判定する診断部と、
を具備したものである。簡単な構成で多くの異常を検出することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記マルチプレクサと差分演算部との間に、ゲインを可変できるプログラマブルゲインアンプを配置し、
前記診断部は、前記基準電圧および前記基準電圧を極性反転した電圧を加算した電圧が想定された範囲内であるかを判定し、範囲外であると前記プログラマブルゲインアンプのゲイン異常であると判定するようにしたものである。プログラマブルゲインアンプの故障をも判定できる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2若しくは請求項3に記載の発明において、
前記マルチプレクサを、入力された信号のうち1つの信号を選択して出力する2つのマルチプレクサで構成するようにしたものである。既存の回路を利用して構成することができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項2乃至請求項4いずれかに記載の発明において、
熱電対あるいは測温抵抗体を用いた温度測定装置に適用したものである。バーンアウト電流、測温抵抗体に流す電流の異常をも検出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、3、4、および5の発明によれば、アナログ入力信号電圧、基準電圧、グランド電位から2つの電圧を選択して、この選択した電圧の差電圧を測定することによりアナログ入力信号電圧、基準電圧、基準電圧を極性反転した電圧、同じ電圧の差電圧を測定し、この測定値から異常を検出するようにした。
【0024】
基準電圧を1つにできる等簡単な構成で種々の異常を検出することができ、かつ部品点数、実装面積を削減することができる。このため、コストを削減することができるという効果がある。
【0025】
また、異常箇所を特定することができるので、製造時、あるいはトラブル時に迅速に対処できるという効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る信号入力回路の診断装置の一実施例を示した構成図である。なお、
図15と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0028】
図1において、信号入力回路の診断装置は信号入力回路30および診断部40で構成される。信号入力回路30はマルチプレクサ31、プログラマブルゲインアンプ13および14、アナログデジタル変換器15で構成される。アナログデジタル変換器15は、差分演算部に相当する。
【0029】
診断部40はADポート41、IOポート42、診断操作部43で構成される。診断部40はマイクロプロセッサで構成され、診断操作部43はこのマイクロプロセッサ上で動作するソフトウエアで実現される。
【0030】
マルチプレクサ31は、4つの入力端子IN1〜IN4、2つの出力端子OUT1、OUT2、および選択信号が入力される選択信号入力端子SELを具備している。マルチプレクサ31は、選択信号入力端子SELに入力される選択信号に基づいて、入力端子IN1〜IN4に印加される信号から2つを選択し、出力端子OUT1、OUT2に出力する。
【0031】
入力端子IN1には基準電圧Refが印加され、入力端子IN2、IN3にはそれぞれアナログ信号である入力信号Vin+、Vin−が印加される。入力端子IN4には、グランド電位GNDが印加される。入力信号Vin+、Vin−は、差動信号のプラス側、マイナス側を表している。なお、基準電圧Refは入力信号より大きな電圧とし、温度補正等に使用される。
【0032】
マルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2から出力される信号は、それぞれプログラマブルゲインアンプ13、14を経由してアナログデジタル変換器15に入力される。アナログデジタル変換器15は、入力された2つの信号の差分をデジタル値に変換して出力する。プログラマブルゲインアンプ13、14には、アナログデジタル変換器15の変換精度が最大になるように、適切なゲインが設定される。
【0033】
アナログデジタル変換器15が出力するデジタル値は、ADポート41を経由して診断操作部43に入力される。また、診断操作部43は、IOポート42を経由して、選択信号をマルチプレクサ31の選択信号入力端子SELに出力する。
【0034】
次に、この実施例の動作、すなわち診断の手順を
図2フローチャートに示す。診断操作部43はこのフローチャートに従って選択信号を出力し、アナログデジタル変換器15の出力デジタル値を評価して診断を行う。
【0035】
図2において、工程(P2−1)で入力信号を測定する。このために、
診断操作部43はマルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2に入力信号Vin+、入力信号Vin−が出力されるような選択信号を出力し、そのときのアナログデジタル変換器15の出力デジタル値を取り込む。
【0036】
次に、工程(P2−2)で基準電圧Ref、工程(P2−3)で−Refを測定する。入力信号の場合と同様に、
診断操作部43はマルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2に基準電圧Ref、―Refが出力されるような選択信号を出力し、そのときのアナログデジタル変換器15の出力デジタル値を取り込む。
【0037】
次に、工程(P2−4)〜(P2−7)で、ZERO1〜ZERO4の4つのゼロ値を測定する。
診断操作部43は、マルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2に同じ信号が出力されるような選択信号を出力し、そのときのアナログデジタル変換器15の出力デジタル値を取り込む。ZERO1〜ZERO4は、入力端子IN1〜IN4に印加された信号をそれぞれ出力端子OUT1、OUT2に出力したときの測定値である。
【0038】
最後に、工程(P2−8)で工程(P2−1)〜(P2−7)で取り込んだ測定値を用いて診断を行う。診断の詳細は後述する。
【0039】
図3に、測定項目とマルチプレクサ31の割り付けの対応表を示す。
診断操作部43は、この対応表を満たすような選択信号を、IOポート42を経由してマルチプレクサ31に出力する。
【0040】
入力信号を測定するときは、入力端子IN2、IN3に印加された信号が、それぞれOUT1、OUT2に出力されるようにする。
図1から明らかなように、OUT1には
入力信号Vin+が、OUT2には
入力信号Vin−が出力される。
【0041】
基準電圧Refを測定するときは、入力端子IN1、IN4に印加された信号が、それぞれOUT1、OUT2に出力されるようにする。OUT1には基準電圧Refが、OUT2にはグランド電位GNDが出力される。基準電圧―Refを測定するときは、IN1とIN4を逆にする。出力端子OUT1、OUT2には、基準電圧Refの極性が逆転した−Refが出力される。
【0042】
ZERO1〜ZERO4を測定するときは、出力端子OUT1とOUT2に同じ信号が出力されるようにする。ZERO1では入力端子IN1に印加された信号(基準電圧Ref)、ZERO2では入力端子IN2に印加された信号(
入力信号Vin+)、ZERO3では入力端子IN3に印加された信号(
入力信号Vin−)、ZERO4では入力端子IN4に印加された信号(グランド電位GND)が出力される。すなわち、ZEROの測定では、全ての入力端子について、出力端子OUT1、OUT2に同じ入力端子を接続するようにする。
【0043】
図4に、診断操作部43が診断する手順を示す。
図4において、50は診断の基礎となる測定値を表し、51は診断結果を、52は論理積を取ることを、53は入力された値を加算する加算部を表している。
【0044】
先ず、(A)で入力信号Vinが想定される範囲内であるかを判定し、範囲外であると入力信号Vinの異常と診断してエラーレベルAを出力する。
【0045】
次に、(B)で基準電圧Refが範囲内であるかどうかを判定し、(C)で基準電圧Refを極性反転した−Refが範囲内であるかどうかを判定する。そして、52で両方が範囲外であるかどうかを判定し、範囲外であると基準電圧Refの異常と診断して、エラーレベルB、Cを出力する。
【0046】
次に、(D)で加算部53を用いて基準電圧Refと−Refを加算し、その加算結果が想定された範囲内であるかを判定する。−RefはRefを極性反転した値なので、Refと−Refの加算値は誤差を除くと0になるはずである。この加算値が範囲外であると、プログラマブルゲインアンプ13、14のゲイン異常であると診断し、エラーレベルDを出力する。
【0047】
最後に、(E)でZERO1〜ZERO4が想定された範囲内であるかどうかを判定する。この値も誤差を除くと0になるはずである。この値が範囲外であると、選択信号をマルチプレクサ31に出力する選択線の異常等であると判断し、エラーレベルEを出力する。また、どのZEROが範囲外になるかによって、異常選択線を特定することができる。
【0048】
図5(A)に、マルチプレクサ31の出力端子が固着(選択信号に拘わらず、特定の入力端子に固定される)した場合の判定基準を示す。ZERO1〜4を測定することによって、マルチプレクサ31の固着故障を判定することができる。
【0049】
図5(A)において、ZERO2〜4が範囲外であると、出力端子OUT1、OUT2のいずれかが入力端子IN1に固着していると判定できる。同様に、
ZERO1,3,4が範囲外であると出力端子OUT1、OUT2のいずれかが入力端子IN2に固着し、
ZERO1、2、4が範囲外であると出力端子OUT1、OUT2のいずれかが入力端子IN3に固着していると判定できる。さらに、
ZERO1〜3が範囲外であると、出力端子OUT1、OUT2のいずれかが入力端子IN4に固着していると判定できる。
【0050】
ZERO1〜4の測定では、出力端子OUT1、OUT2には同じ信号が出力されるような選択信号が入力されるので、マルチプレクサ31が正常であると、アナログデジタル変換器15の出力デジタル値は小さな値(範囲内)になるはずである。従って、ZERO1〜4の1つのみ範囲内になると、そのときに選択された入力端子が出力端子に固着していると判定することができる。
【0051】
なお、ZERO1〜4の全てが範囲外であると、マルチプレクサ31に入力される選択信号が異常であるので、選択信号を伝送する線路の異常と判定できる。
【0052】
図5(B)に、プログラマブルゲインアンプ13、14のゲインが設定値の倍になる倍故障、あるいは半分になる半分故障が発生したときの判定基準を示す。なお、出力端子OUT1、OUT2には基準電圧Refが出力されるように、マルチプレクサ31に選択信号を与える。また、基準電圧Refの電圧値を同じ記号のRefで表す。
【0053】
図5(B)において、アナログデジタル変換器15の出力デジタル値が0V(範囲内)であると、プログラマブルゲインアンプ13、14のゲインはいずれも正常であると判定できる。
【0054】
アナログデジタル変換器15の出力デジタル値がRefであると、その正側入力端子に入力される信号レベルが倍になっているので、プログラマブルゲインアンプ13のゲインが倍になる倍故障が発生していると判定できる。同様に、アナログデジタル変換器15の出力デジタル値が−Refであると、その負側入力端子に入力される信号レベルが倍になっているので、プログラマブルゲインアンプ14のゲインが倍になる倍故障が発生していると判定できる。
【0055】
アナログデジタル変換器15の出力デジタル値が−Ref/2であると、その正側入力端子に入力される信号レベルが半分になっているので、プログラマブルゲインアンプ13のゲインが半分になる半分故障が発生していると判定できる。同様に、アナログデジタル変換器15の出力デジタル値がRef/2であると、その負側入力端子に入力される信号レベルが半分になっているので、プログラマブルゲインアンプ14のゲインが半分になる半分故障が発生していると判定できる。
【0056】
このように、本実施例ではマルチプレクサを1つにすることができ、かつ基準電圧Refと極性反転した−Refの両方を測定するようにしたので、基準電圧の数を1つにすることができる。このため、部品点数を少なくすることができるので、実装面積を削減し、かつ故障率を小さくすることができる。
【0057】
また、マルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2に同じ入力端子の信号が出力されるZERO1〜ZERO4を測定するようにしたので、マルチプレクサ31の出力端子の固着や選択信号を伝送する選択線の異常を判定することもできる。
【0058】
さらに、プログラマブルゲインアンプ13、14の倍故障、半分故障も判定することができる。
【0059】
なお、
図1実施例では入力信号の数を1種類としたが、入力信号が入力される入力端子の数を増やして、2種類以上の入力信号を入力するようにすることもできる。この場合、基準電圧Refおよびグランド電位の入力端子は共用することができるので、部品点数および実装面積を更に削減することができる。
【0060】
図6に、熱電対を用いた温度測定装置に本発明の信号入力回路の診断装置を適用した例を示す。なお、
図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。この実施例では、バーンアウト電流が正常であるかどうかをも判定できる。
【0061】
図6において、60は熱電対であり、マルチプレクサ31の入力端子IN1、IN2に接続される。61は電流源であり、バーンアウト電流を出力する。62はスイッチであり、バーンアウト電流をマルチプレクサ31の出力端子OUT1に供給し、また供給を停止する。63はスイッチであり、マルチプレクサ31の出力端子OUT2をグランド電位GNDに接続し、また切り離す。64は抵抗であり、マルチプレクサ31の入力端子IN3とIN4の間に接続される。入力端子IN3には、基準電圧Refが入力される。
【0062】
65は診断部であり、ADポート41、IOポート66、および診断操作部67で構成される。IOポート66はマルチプレクサ31に選択信号を出力し、またスイッチ62、63を制御する。診断操作部67は、測定値を判定して診断を行い、またIOポート66に制御信号を出力する。
【0063】
なお、マルチプレクサ31は便宜上IN1〜IN4を入力端子、OUT1、OUT2を出力端子としているが、アナログ信号を扱うマルチプレクサなので、出力端子OUT1、OUT2から入力端子IN1〜IN4に信号を伝送することもできる。
【0064】
図7は、この実施例の動作を表したフローチャートである。なお、
図2と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0065】
図7において、最初に工程(P7−1)で熱電対60を用いて温度を測定し、続いて工程(P2−2)、(P2−3)で基準電圧Ref、−Refを測定する。次に工程(P7−2)でバーンアウト電流を測定して、工程(P2−4)〜(P2−7)でZERO1〜ZERO4を測定する。そして、最後に工程(P7−3)で診断処理を行う。
【0066】
図8は、測定項目とマルチプレクサ31、スイッチ62、63の割り付け対応表である。温度を測定するときは、マルチプレクサ31の出力端子OUT1,OUT2をそれぞれ入力端子IN1,IN2に接続し、スイッチ62、63をオンにする。熱電対60の起電力はアナログデジタル変換器15に入力されてデジタル値に変換され、またスイッチ62、出力端子OUT1、入力端子IN1、熱電対60、入力端子IN2、出力端子OUT2、スイッチ63の経路に電流源61の出力電流(バーンアウト電流)が流れる。温度測定およびバーンアウト検出は従来の温度測定装置と同じなので、説明を省略する。
【0067】
基準電圧Ref、−Ref、ZERO1〜ZERO4を測定するときは、スイッチ62、63をオフにする。基準電圧Refを測定するときは出力端子OUT1、OUT2をそれぞれ入力端子IN3、IN4に接続し、―Refを測定するときは逆にする。ZERO1〜ZERO4の測定では、出力端子OUT1、OUT2をそれぞれ入力端子IN1〜IN4に接続する。これらの測定は、接続されている入力端子は異なるが、
図1実施例と同じなので、説明を省略する。
【0068】
バーンアウト電流測定では、スイッチ62、63をオンにして、出力端子OUT1、OUT2をそれぞれ入力端子IN3、IN4に接続する。バーンアウト電流(電流源61の出力電流)は、スイッチ62、出力端子OUT1、入力端子IN3、抵抗64、入力端子IN4、出力端子OUT2、スイッチ63の経路を流れる。抵抗64の両端電圧はアナログデジタル変換器15に入力され、デジタル値に変換される。このデジタル値から、電流源61の出力電流値を算出できる。
【0069】
図9に、
診断操作部67が診断する手順を示す。なお、
図4と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図9において、(A)で測定した温度が予想される範囲内であるかを判定し、範囲外であると、熱電対60の異常とする。また、(F)でバーンアウト電流検出を行い、異常であると電流源61の異常と判定する。なお、(B)〜(E)は
図4と同じなので、説明を省略する。
【0071】
なお、
図6実施例ではマルチプレクサ31の入力端子IN3に基準電圧Refを入力するようにしたが、抵抗64両端の電圧を基準電圧Refとして用いることもできる。
【0072】
図10に、測温抵抗体を用いた温度測定装置に本発明の信号入力回路の診断装置を適用した例を示す。なお、
図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図10において、74は入力端子IN1〜IN4、出力端子OUT1、OUT2を有し、マルチプレクサ31と同様の構成を有するマルチプレクサである。
【0074】
70、71は電流源、72、73はスイッチである。電流源70の出力電流I1は、スイッチ72を介してマルチプレクサ74の出力端子OUT1に入力される。電流源71の出力電流I2は、スイッチ73を介してマルチプレクサ74の出力端子OUT2に入力される。
【0075】
マルチプレクサ31と74の入力端子IN1〜IN4はそれぞれ接続される。マルチプレクサ31、74の入力端子IN1とIN2の間には、測温抵抗体75が接続される。また、同入力端子IN3とIN4の間には、抵抗76が接続される。マルチプレクサ31、74の入力端子IN4は、グランド電位GNDに接続される。
【0076】
77は診断部であり、ADポート41、IOポート78、および診断操作部79で構成される。診断操作部79は、ADポート41を経由して入力されたアナログデジタル変換器15の出力デジタル値を取り込んで診断を行い、またIOポート78を介してマルチプレクサ31、74に選択信号を出力し、スイッチ72、73に操作信号を出力する。
【0077】
この実施例では、抵抗76は抵抗値が変化しない固定抵抗であり、電流源70、71の出力電流I1、I2は変化しない定電流である。従って、抵抗76の両端電圧は基準電圧Refに相当する。
【0078】
図11は、
図10実施例の動作を示すフローチャートである。なお、
図2と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0079】
図11において、工程(P11−1)で測温抵抗体75を用いて温度測定を行う。そして、工程(P11−2)、(P11−3)で抵抗76に電流I1を流して、その両端電圧の順極性、逆極性電圧を測定し、工程(P11−4)、(P11−5)で抵抗76に電流I2を流して、その両端電圧の順極性、逆極性電圧を測定する。
【0080】
そして、工程(P2−4)〜(P2−7)でZERO1〜ZERO4を測定して、工程(P11−6)でこれらの測定値から診断を行う。
【0081】
図12は、各測定におけるマルチプレクサ31と74、スイッチ72と73の割り付け表である。なお、ZERO1〜ZERO4の測定は
図1実施例と同じであるので、説明を省略する。この測定では、マルチプレクサ74とスイッチ72、73の設定は何であってもよい(×で表している)。
【0082】
温度を測定するときは、マルチプレクサ74の入力端子IN1、IN2をそれぞれ出力端子OUT1、OUT2に接続する。電流源70の出力電流I1は測温抵抗体75と抵抗76の両方を流れ、電流源71の出力電流I2は抵抗76を流れる。この状態でマルチプレクサ31の出力端子OUT1、OUT2を入力端子IN1とIN2、IN3とIN4に接続して測温抵抗体75と抵抗76の両端電圧を測定し、これらの測定値から温度を算出する。
【0083】
電流源70の出力電流I1による測定では、マルチプレクサ74の出力端子OUT1、OUT2をそれぞれ入力端子IN3、IN4に接続して抵抗76に電流I1を流す。そして、マルチプレクサ31の出力端子OUT1とOUT2をそれぞれ入力端子IN3、IN4に接続して抵抗76両端の順極性電圧を測定し、入力端子IN3とIN4を逆にして逆極性電圧を測定する。
【0084】
電流源71の出力電流I2による測定では、マルチプレクサ74の出力端子OUT1、OUT2をそれぞれ入力端子
IN4、IN3に接続して抵抗76に電流I2を流す。そして、マルチプレクサ31の出力端子OUT1とOUT2をそれぞれ入力端子IN3、IN4に接続して抵抗76両端の順極性電圧を測定し、入力端子IN3とIN4を逆にして逆極性電圧を測定する。
【0085】
図13に、診断操作部79が診断する手順を示す。なお、
図4と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図13において、(A)で測温抵抗体75を用いて温度を測定し、この測定した温度が範囲外であると、測温抵抗体75の異常と判定し、エラーレベルAを出力する。
【0087】
次に、(B)、(C)で電流源70の出力電流I1を抵抗76に流し、抵抗76の順極性電圧、逆極性電圧を測定する。これらの測定値の両方が範囲外であると電流源70の異常と判定し、エラーレベルB、Cを出力する。
【0088】
同様に、(E)、(F)で電流源71の出力電流I2を抵抗76に流し、抵抗76の順極性電圧、逆極性電圧を測定する。これらの測定値の両方が範囲外であると電流源71の異常と判定し、エラーレベルD、Eを出力する。
【0089】
次に、(D)で電流I1による2つの測定値を加算した値を判定し、(G)で電流I2による2つの測定値を加算した値を判定して、これらの両方が範囲外であると、プログラマブルゲインアンプ13、14のゲイン異常として、エラーレベルF、Gを出力する。
【0090】
次に、(H)でZEROの測定を行い、異常であると選択線等の異常とし、エラーレベルHを出力する。これは、
図4、
図9と同じである。
【0091】
図14に、更に他の実施例を示す。(A)はマルチプレクサ31を2つのマルチプレクサで構成した例である。なお、
図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0092】
図14(A)において、80は信号入力回路であり、4つの入力端子IN1〜IN4と1つの出力端子OUTを有するマルチプレクサ81および82、プログラマブルゲインアンプ13および14、アナログデジタル変換器15で構成される。
【0093】
マルチプレクサ81と82の入力端子IN1〜IN4は相互に接続され、基準電圧Ref、入力信号+、入力信号−、グランド電位GNDが入力される。マルチプレクサ81の出力はプログラマブルゲインアンプ13に入力され、マルチプレクサ82の出力はプログラマブルゲインアンプ14に入力される。マルチプレクサ81、82には、IOポート42から選択信号が入力される。
【0094】
動作は
図1実施例と同じなので、説明を省略する。このような構成にすることにより、
図15に示した従来の信号入力回路を用いることができる。
【0095】
図14(B)は、信号入力回路がシリアルインターフェイスを有する例である。なお、同図(A)と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0096】
図14(B)において、90は信号入力回路であり、マルチプレクサ81および82、プログラマブルゲインアンプ13および14、アナログデジタル変換器15、シリアルインターフェイス91、およびセレクタ92で構成される。また、93は診断部であり、シリアルポート94、診断操作部95で構成される。
【0097】
アナログデジタル変換器15の出力デジタル値はシリアルインターフェイス91でシリアル信号に変換され、診断部93のシリアルポート94に出力される。また、診断操作部95が出力する選択信号はシリアルポート94でシリアル信号に変換され、シリアルインターフェイス91に出力される。受信した選択信号はセレクタ92で分配され、マルチプレクサ81、82に出力される。
【0098】
なお、
図1、
図6、
図10、
図14実施例ではプログラマブルゲインアンプ13、14を用いたが、ゲインが固定のアンプを用いてもよい。また、状況によってはこれらのアンプを用いなくてもよい。
【0099】
また、入力信号等の測定値をデジタル値に変換して診断部に出力するようにしたが、必ずしもデジタル値に変換する必要はなく、アナログ信号のままで診断するようにしてもよい。要は、マルチプレクサの2つの出力の差分を取る構成であればよい。
【0100】
さらに、これらの実施例では差動信号を入力するようにしたが、必ずしも差動信号でなくてもよい。差動信号でない場合には、入力信号−としてグランド電位GNDを用いればよい。